純一「僕に足りないものが分かった!」美也「わっ!?」(416)

たつかな

立ってしまったか

美也「に、にぃに? いきなりどうしたの? びっくりしたじゃない」

純一「僕に足りないものが分かったんだよ、美也!」

美也「にぃにに足りないもの?」

純一「ああ、これで僕にも彼女ができるぞ!」

美也「・・・彼女・・・」ズキ

純一「・・・美也・・・?」

美也「う、ううん、なんでもない。で、何がにぃにに足りないって分かったの?」

純一「よくぞ聞いてくれた! それはな――」

美也「それは?」ゴクリ

純一「ID腹筋だよ!」

美也「!?」

美也「にぃに・・・? 何を言っているの?」

純一「何ってID腹筋だよ、美也は知らないのか?」

美也「分かる、分かるよ・・・ID腹筋でしょ・・・」

純一「ああ、そうさ。これから僕は毎日ID腹筋をする!」

美也「!!」

純一「そうすればきっと僕にも彼女ができるよ!」

美也「・・・だよ・・・」

純一「え?」

美也「無理だよ・・・ID腹筋なんて・・・」

純一「美也・・・?」

美也「だって、ID腹筋だよ? いつ神IDが出るかも分からないのに・・・」

純一「・・・そんな、そうそうすごいIDなんて出るもんじゃないだろ・・・」

美也「そうだけどさあ、でも出ちゃったらどうするの?」

純一「そりゃあ、その時はやるしかないだろ・・・」

美也「みゃー、こないだ見ちゃったんだよ、ID腹筋スレで3万近い数字だったIDを!」

純一「さ、3万だって・・・?」

美也「そうだよ・・・多分あの人、やってないよ・・・」

純一「・・・かもな・・・」

美也「にぃにだって、そんなの出ちゃったら、やらないでしょ?」

純一「・・・いや、やるよ、僕は」

美也「にぃに!?」

純一「だって、僕は決めたんだ・・・全力でID腹筋するって、ね」キリッ

美也「にぃに・・・」ドキッ

純一「まぁ、3万とか出ちゃったらどうなるか分からないけどね、ははっ」

美也「も~、笑い事じゃないよ!」

純一「大丈夫大丈夫。確かに確率は0じゃないけど、そう簡単に出ないだろ?」

美也「そうだけど・・・」

純一「むしろ、出ないから神IDなんて呼ばれるんじゃないか」

美也「まぁ・・・それは・・・」

純一「だから大丈夫だよ」ポンポン

美也「ふぇ?///」

純一「美也は僕の事を心配してくれたんだろ? 主に僕の腹筋を」ナデナデ

美也「ふゎ・・・そ、そんな・・・みゃーは・・・ただ・・・///」

純一「ありがとな、美也。にぃには頑張ってやり遂げてみせるよ」

美也「・・・うん・・・みゃーも応援してるからね」

純一「ははっ、そりゃ心強いや!」

美也「にっしっし! 千人力だよ!」

純一「さーて、それじゃ今日のIDチェックと行くか!」カチャカチャ

美也「・・・うー・・・」ドキドキ

純一「なんだよ、緊張してるのか?」

美也「だ、だって・・・そんなすごいのは出ないって思ってるけどさ・・・」

純一「心配性だなぁ、美也は」ナデナデ

美也「うぁ・・・ふみゃぁ///」

純一「さ、今日のIDは、と・・・」ッターン!!

以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 20XX/11/29(金) 20:39:47.66 ID:123456780
テス

純一「神IDktkrwwwwwwwwwwwwww」

美也「記念真紀子wwwwwwwwwww」

美也「って違ーーーーーーーーーーーーう!!」ガッシャーン

美也「ちょっと、にぃに! なんでよりにもよってこんなタイミングでこんなID引いてくるの!?」

純一「・・・」

美也「身体を張ったギャグにもほどがあるよ、にぃに!」

純一「・・・」

美也「あーもう、見てみなよ・・・にぃにの書き込んだレス番が真っ赤になってる・・・」

純一「・・・」

美也「えっと・・・いち、じゅう、ひゃく・・・い、1億?2345万6780回・・・だよ」

純一「・・・」

美也「にぃに・・・呆然とする気持ちは分かるけど、現実を見ないと・・・」

純一「・・・ははっ・・・」

美也「に、にぃに・・・? まさかあまりの事に壊れちゃったんじゃ・・・」

純一「これは、試練なんだよ、美也」

美也「し、試練?(なんか変なこと言い出した・・・)」

純一「これを乗り越えてこそ、僕は彼女が作れるんだ!」

美也「え、えぇっ!?」

純一「そうだよ! そんな簡単に4回や10回のID腹筋で彼女ができたら苦労しないんだ!」

美也「そ、それは・・・まぁ、そうかも」

純一「でも、1億回の腹筋なんてやり終える事ができたら、もうそれは・・・」

美也「それは?」

純一「真・純一だよ!」

美也「は、はあ?」

純一「よおおおおおし、やってやる! 僕はやってやるぞ、美也!」

美也「・・・っ・・・分かった・・・頑張って、にぃに・・・」

純一「うおおおおおおおおおおおおおお!!」グイングイン

美也(言えないよ・・・あんなに燃えてるにぃにに向かって、にぃにはそのままのにぃにで良いなんて、言えないよ・・・)パタン

2時間後

美也(さすがに、うおおおおって声は聞こえなくなったけど・・・まだやってるみたい)

美也「・・・何か差し入れ持ってってあげようかな?」ピーン

美也「そうだ! 確かキッチンに・・・」トコトコ

美也「あったあった、これを混ぜて~っと♪」

美也「にっしっし、にぃに、喜ぶかな~?」

コンコン

純一「・・・っ・・・っ・・・み、美也・・・か・・・っ?」グイングイン

美也「にぃに、きなこミルク作ってきたよ~」

純一「おおっ!」

美也「せっかくのID腹筋だからね、少しでも身につく方が良いでしょ?」

純一「やるじゃないか美也! ちょうどノドが乾いてたんだ、早速飲んで良いか?」

美也「もっちろんだよ、そのために持ってきたんだから!」

純一「じゃあ失礼して・・・」ゴキュゴキュ

美也「ど、どうかな?」

純一「ああ、ちょっとノドに絡みつく感じがするけど美味しいぞ! ありがとな、美也!」

美也「自慢の妹でしょ?」フフーン

純一「そうだな、美也は最高の妹だよ」ナデナデ

美也「ふぁぁ・・・///」

美也「で、今何回くらいやったの?」

純一「まだ500回くらいかな・・・」

美也「・・・それはそれで凄いけど・・・1億の前には霞んで見えるよ、にぃに」

純一「まぁね・・・けど、千里の道も一歩から、1億のID腹筋も1回からだよ」

美也「何それ」プッ

純一「それじゃ僕は続きやるよ」

美也「あ、うん。じゃあ頑張ってね、にぃに」

純一「ああ、差し入れありがとな、美也」

美也「どういたしましてだよ、にっしっし~」パタン

純一「・・・美也もいつの間にか他人を気遣える女の子になってたんだなぁ・・・」グイングイン

翌朝

ピピピッ ピピピッ ピッカチッ

美也「・・・朝・・・」モソモソ

美也「・・・寝る前にも様子見に行ったけど、まだやってたよね、にぃに・・・」コシコシ

美也「・・・もう、終わったかな・・・?」モソモソ

美也「・・・終わってないよね・・・常識的に考えて・・・」ギシッ

美也「・・・んしょっと・・・うー、さぶ・・・」ギィィ

美也「にぃに~? 起きてる~?」コンコン

純一「美也か?」

美也「入るね~」

美也(起きてるなんて珍しい・・・いや、もしかしたら寝てないのかも)ギィ

むわっ

美也「蒸し暑い!! 汗臭っ!!!」ガーン

純一「おいおい、1日最初の挨拶は『おはよう』だろ?」

美也「それどころじゃないよ! にぃに! この部屋臭うよ! ていうかなに!? 暖房でもつけてたの!?ってくらい暑いよ!」

純一「え、そうか?」

美也「そうだよ! それにこの汗の臭いは酷いよ!」

純一「酷いとか言うなよ・・・でもそんなに臭うかな?」

美也「臭いすぎてクラクラするよ!」

純一「劇物みたいな言い方するなよ・・・」

美也「みゃーは別に嫌いじゃないけどさぁ!」

純一「えっ?」

美也「はっ・・・ち、ち、違くて・・・そうじゃなくて・・・え、えっと、にぃにってばまさか徹夜でID腹筋してたの?」

純一「ああ、そういえばもう朝なんだな」

美也「本当に徹夜で・・・」

純一「まぁまだ終わってないからな、仕方ないだろ」

美也「ちなみに一晩でどのくらいやったの?」

純一「えーっと・・・ひぃ、ふぅ、みぃ・・・とりあえず400万回かな?」

美也「多っ! ええっ!? どういうこと!?」

純一「? どういうことってなんだ?」

美也「だって昨日、2時間で500回だったじゃない」

純一「そうだっけ?」

美也「そうだよ! それだってすごいって思ったのに・・・一晩・・・8時間で400万回って・・・」

純一「言われてみたらそうか」

美也「不正? チートしたの、にぃに!?」

純一「いや、なんか無心でID腹筋してたらなんか段々速度が上がってた」

美也「そんな!?」

純一「試しにやってみせようか?」

美也「う、うん」

純一「よっ」グン  パァンッ

美也「!? い、今、音が後から・・・」

純一「これでも今のはゆっくりやったんだぞ」

美也「にぃにの腹筋運動が・・・音を置き去りにした・・・!」

純一「まぁ秒速400回は超えてると思うよ」

美也「マッハなの!?」

純一「そうでなきゃ一晩で400万回はこなせないよ」

美也「そ、そうかもしれないけど・・・」

純一「それにまだ1億2千万がほぼ手つかずで残ってるからね、まだまだ頑張らないと」

美也「そ、そうだね・・・って、にぃに、学校は?」

純一「うーん・・・やっぱ行かなきゃだめか?」

美也「当たり前でしょ!」

純一「仕方ないな・・・続きはまた後にするよ・・・」

美也「もう・・・学校休んでID腹筋するつもりだったの・・・?」

純一「ははっ、早く終わらせたくてさ」

美也「1つの事にのめりこむとすぐ周りが見えなくなるんだから・・・」

純一「返す言葉もないや」

美也「ところで、にぃに」

純一「ん?」

美也「シャワーした方が良いよ」

純一「・・・そんなに臭うか?」

美也「うん」

純一「・・・いってくる・・・」ショボーン

美也(もしかして割と落ち込んじゃったかな・・・言い過ぎたかも・・・)

美也(そ、それにしても・・・)

美也(くんくん)

美也(・・・にぃにの部屋・・・すごい汗の臭いだよ・・・)

美也(・・・にぃににぎゅーってされて包まれてるみたいな・・・///)

美也(・・・も、もうちょっと嗅いでよっかな・・・にしし・・・///)スンスン

純一「あーサッパリした」

母「あら純一、珍しいわね、こんな時間に起きてるなんて」

純一「おはよう、母さん」キリッ

母「え、あ、あぁ、お、おはよう・・・」ポッ

純一「いつもありがとね」キリッ

母「な、何よ急に改まって・・・」ドキッ

純一「いつも起きる頃には母さんいないからさ」キリッ

母「も、もう、バカね・・・親なんだから良いのよ・・・」ドギマギ

純一「ははっ、それでも感謝してるんだよ。それじゃ支度してくるから」キラーン

母「えっ、あ、あぁ、はい」ドキドキ

母(やだ・・・私ったら・・・息子にときめくなんて・・・どうかしてるわ・・・///)

純一「あれ? 美也? なんでまだ僕の部屋にいるんだ?」

美也「わっ!? にぃに!? もう出てきたの!? (ていうか上半身何も着てないし!)」

純一「もうって・・・30分くらい経ってるけど・・・?」

美也「えっ、も、もうそんな時間!?」

純一「何やってたんだよ、まさか僕のベッドで・・・」

美也「」ドキッ

純一「つい二度寝しちゃったか?」

美也「ち、違うもん! にぃにじゃないんだからそんな事しないよーだ!」パタパタ

純一「あっ、み、美也! ・・・まぁいっか、制服に着替えよっと」

美也(・・・び、ビックリした・・・にぃにのベッドの臭い嗅いだの気づかれてないよね・・・)

美也(そ、それにしても・・・にぃにの身体・・・なんか引き締まってて・・・すっごいカッコよかったな・・・)ポー

美也「はっ、いけないけない! 学校の準備しなくちゃ!」

純一「美也、いくぞ」

美也「う、うん」

美也(にぃにが先に玄関で待ってるなんて、なんか不思議・・・)

美也(それに・・・なんだか今日のにぃには妙にしゃきっとしてて・・)

美也(・・・にぃにってこんなにカッコ良かったっけ・・・)

美也(そ、そりゃあ、にぃには前からカッコ良いけど///)

純一「お、梅原だ、おーい」

梅原「その声は、大将・・・ん? た、大将?」

純一「なんだよ梅原、化かされたみたいな顔して?」

梅原「た、大将だよな? 橘純一だよな?」

純一「それ以外の何かに見えるのか?」

梅原「い、いや、わりぃ。なんだか今日の大将は見違えるようだぜ」

純一「そうか?」

梅原「ああ、なにかあったのか、逆に心配になるくらいだ」

純一「それはそれで酷いな・・・」

梅原「美也ちゃん、大将に何か変わった事はなかったかい?」

美也「なんか、昨日突然、『僕はこれからID腹筋するんだー』って」

梅原「ID・・・腹筋・・・!? お、おい、マジかよ大将・・・そんな荒行に手を出すのか?」

純一「ああ、梅原。僕はやるぞ。そして彼女を作って、クリスマスを一緒に過ごすんだ!」

梅原「大将・・・へへっ、まさか大将の口からそんな台詞が聞けるたぁよぉ!」

純一「梅原にも心配かけたな・・・ごめんな」

梅原「よせやい! 良いって事よ! 俺と大将の仲じゃねえか!」

純一「・・・ああ、ありがとな、梅原」

梅原「おう! そういう事なら俺も応援するぜ、ちなみに昨日は何回やったんだ?」

美也「そ、それが・・・」

純一「実はまだ終わってないんだ・・・」

梅原「何だ何だ? カッコ良い事言ってそれはちとカッコ悪いんじゃないか?」

美也「・・・でも、にぃ・・・お兄ちゃん、一晩で400万回はやったんだよ?」

梅原「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

梅原「1億2千万だぁ!?」

純一「うん、まさか初日から神ID引き当てるとは思わなかったよ」

美也「にぃにの間の悪さと言ったらないよねぇ」

梅原「・・・待て、それってもしかして昨日の夜9時前くらいに書き込んだか?」

純一「あー・・・そのくらいだったかもしれないけど・・・もしかして」

梅原「そのスレ俺もいたんだよ! 家の手伝い中に携帯から見たらすげえIDだったから思わず記念に・・・」

美也「梅ちゃん、携帯厨だったの・・・?」

梅原「た、たまに見るだけだよ! いつもはPCからだよ!」

美也「そっか・・・それならまぁ許す」

梅原「ほっ・・・いやそれにしてもまさかあのIDが大将だったとはな・・・」

純一「世間は狭いな」

梅原「全くだ」

梅原「おーっす」

マサ「おっ、梅原と橘か、おっす」

ケン「あれ? 橘イメチェンした?」

純一「いや? してないけど?」

ユウジ「えー、ホントかよ? なんかいつもと雰囲気違うぞ」

梅原「コイツ、昨日からID腹筋始めたんだってよ」

マサ「なん・・・だと・・・」

ケン「マジかよ・・・お前が勇者か」

ユウジ「尊敬するわ・・・」

純一「大げさだよ・・・」


絢辻(・・・あれが橘くん? 昨日と全然違うじゃない・・・)

棚町「セーーーーフ!!」ドタドタ

純一「おっ、薫。今日は遅刻しなかったんだな」

棚町「まーね・・・って、アンタ純一?」

純一「・・・今日の僕はそんなに変なのか?」

棚町「うん」

純一「即答!?」

棚町「なんていうか、爽やかでかっ・・・」

純一「かっ?」

棚町「かっ・・・カップアイス食べたいわ」

純一「意味が分からないぞ!?」

棚町(あ、危ない危ない、危うく純一の事をカッコ良いって言いそうになっちゃたわ)

棚町(で、でも、今日の純一・・・本当に・・・///)ポーッ

梅原「・・・やれやれ、大将も罪作りな男だねえ」ボソッ

純一「ん? なんだよ梅原」

梅原「いーや、なんでもねえよ」

キーンコーン

高橋「はーい、みんな席についてー」ガラッ

高橋「それじゃ出席取るわよー」

ハーイ

絢辻(さっき梅原君たちが話していたID腹筋・・・)

絢辻(橘くんがあんなに雰囲気変わったのはそれが原因なのかしら)

絢辻(後でググらないと・・・)

高橋「橘くん」

純一「はいっ」キリッ

高橋「っ!?///」ドキッ

田中「先生、どうかしたんですかぁ?」

高橋「な、なんでもないわ。えーと次は・・・田中さん」

田中「はーい」

高橋(・・・な、何かしら・・・この胸の鼓動・・・ううん、私は知っている・・・これは、あの時と同じ・・・よね)ドキドキ

棚町「・・・え、純一のことが・・・?」

田中「う、うん・・・///」

棚町「どうしちゃった訳? 昨日まではそんな事、一言も言わなかったじゃない」

田中「そうなんだけど、今朝から、なんか、橘くんが気になっちゃって・・・///」

棚町「・・・はぁ・・・」

田中「で、でも、その、橘くんの事は、その、薫の方が・・・」

棚町「・・・ただの中学からの腐れ縁ってだけよ・・・」

田中「薫・・・」

棚町「仮に、アタシが純一のこと好きだって言ったら、恵子は諦めてくれる訳?」

田中「それは・・・い、今ならまだ・・・」

棚町「・・・はぁ・・・本当にどうしちゃったのかしらね」

田中「薫?」

棚町「見てみなさいよ、クラスの女子を」

田中「え?」

ヒソヒソ ザワザワ

田中「心なしか、橘くんに視線が集中してるような・・・」

棚町「心なしか、どころの話じゃないわよ・・・女子も男子も純一の事見てるわ」

田中「な、なんで?」

棚町「ま、女子の方は恵子と似たようなもんじゃない? 全員じゃないとしてもさ」

田中「そ、そんなぁ!?」

棚町「男子は好奇心とか、あとはちょっと妬ましいってのもあるのかもね」

田中「嫉妬?」

棚町「昨日まで女子からはむしろちょっと引かれてた純一がいきなりこれじゃね」

田中「あ、あぁ・・・」

棚町「とりあえず梅原にでも話しを聞いてみようか」

田中「ええっ!?」

棚町「このクラスで純一の事を知りたければ、アタシか梅原に聞けってね。ちょっと、梅原!」

棚町「ID腹筋?」

梅原「ああ、昨日から始めたらしいぜ。今朝、本人と妹の美也ちゃんに聞いた」

棚町「よく分からないけど、要は腹筋なの?」

梅原「まぁ、そうだな」

田中「それってあの、寝っ転がって、膝立てて、手を頭の後ろに置いて・・・」

棚町「上半身を上げたり下げたりする筋トレ? よね?」

梅原「そうだな」

棚町「そんなん、結構誰でもやってそうなもんじゃない。なんでそんなんであんなに・・・」

梅原「一晩で400万回もやれるヤツは大将くらいだろ」

棚町「はぁ!?」

田中「よ、よんひゃくまん・・・?」

梅原「俺も聞いた時は驚いたけどな・・・」

棚町「め、メチャクチャだわ・・・」


絢辻(え、なに? 腹筋400万回!? そんなの一晩どころか1年かかってもできないでしょうが! 
    そんな世迷い言信じるなんてバカじゃないの!?)

桜井「純一~!」

純一「おっ、梨穂子じゃないか、どうしたんだ?」

桜井「あのね、数学の教科書忘れちゃって・・・貸してくれない?」

純一「ああ、それくらいお安いご用だよ」

桜井「ありがと~」

純一「ははっ、今日は僕が貸せるから良いけど、次も上手くいくとは限らないんだから気をつけろよな」コツン

桜井「!!///」

純一「ほら、チャイム鳴るぞ」

桜井「う、うん・・・あり、がと、純一・・・」

桜井(どうしたんだろ・・・今日の純一、すごくカッコ良いよ・・・うう、顔赤くなってないかなあ///)

桜井(それに、コツンて触られちゃった・・・えへへ・・・今日は良い日だなあ///)ドスドス

先生「こら、廊下は静かに走りなさい!」

桜井「は、はぁい~!」

キーンコーン

純一(昼休みだ・・・よし、今日はラーメンを食べるぞ!)ガタッ

棚町「ね、ねぇ、純一」

純一「ん? どうした、薫?」

棚町「アンタ、今日はお昼ご飯どうすんの?」

純一「ラーメンにするつもりだよ」

棚町「ふーん・・・じゃあアタシも一緒に行こうかしら」

純一「おっ、薫もラーメンの気分か?」

棚町「まぁ、そんなとこね」

純一「よし、それじゃ行こうか」ダッ

棚町「あっ、コラ! 待ちなさいよ!」

田中(・・・頑張ってね、薫・・・)

中多「あ・・・」

七咲「せん・・・ぱい?」

純一「あれ? 七咲に中多さんじゃないか。2人とも今日は学食?」

七咲「は、はい」

純一「そっか、僕たちもこれからなんだけど、一緒に食べる?」

七咲「えっ・・・そ、そうですね、それも、良いかもしれません・・・///」

純一「そっか、中多さんは? 嫌なら無理にとは・・・」

中多「いっ、いえ! そそそそんなことありませんっ!」

純一「そ、そう? それなら良かったけど・・・良いよな、薫?」

棚町「ここでアタシが反対できる訳ないでしょうに・・・別に構わないわよ」

純一「そうか、優しいな、薫は」

棚町「バッ・・・な、あ、アンタは・・・何言って・・・///」

七咲「・・・」

中多「・・・」

純一「あぁ、今日もラーメンは美味しいなあ!」

棚町「なんかすごい美味しそうに食べるわね・・・ちょっとちょうだいなっと!」パクッ

純一「か、薫! なんて事するんだよ! ったく・・・まぁ良いけどさ・・・」

棚町「んー、おいし。てーんきゅ」

七咲「あ、あの・・・」

純一「ん? どうした、七咲」

七咲「その・・・橘先輩と、棚町先輩は・・・お付き合いされてるんでしょうか?」

棚町「えっ、や、やっぱりそう見えちゃう!?///」

純一「いや、付き合ってないよ。さっきも言った通り、中学からの付き合いってだけさ」

中多「・・・」ホッ

棚町「・・・チッ・・・」ズルズル

純一「ま、将来どうなるかは分からないけどな」キラーン

棚町「!?」ブフォッ

純一「うわぁっ!?」

棚町「ご、ごめ・・・」

純一「ははっ、大丈夫だよ。火傷するほど熱い訳でもないしね」

中多「あ、あの、私、ハンカチあるので拭きますね」サッ

純一「え、そ、それなら僕も自分の・・・」

中多「だ、大丈夫ですから!」

純一(何が大丈夫なんだろう・・・でもせっかくの厚意だし、無碍にはできないよな)

七咲(あ、あの紗江ちゃんがこんな積極的になるなんて・・・)

純一「ありがとう、中多さん、だいぶ綺麗になったよ」

中多「い、いえ・・・///」カァッ

七咲「・・・」

森島「なんだか賑やかなのはココかしら? 随分楽しそうにしてるじゃない」

塚原「ちょっと、はるか・・・って、あら、七咲? それにキミは・・・」

純一「森島先輩に塚原先輩?」

棚町(ま、また別の女子・・・!? しかもすごい美人じゃないの・・・)

森島「わぉ、可愛い女子からラーメンをぶちまけられるなんて、ドラマティックね!」

棚町「う・・・ご、ごめん」

純一「それはもう良いって。怪我はなかったんだしさ」

棚町「う、うん・・・」

塚原「うーん、ブレザーはシミが目立たないから良いとして、ワイシャツは・・・」

森島「茶色くなっちゃったわねえ」

塚原「こっちは早めになんとかした方が良いわね。橘くん、悪いけどシャツ脱いでくれる?」

純一「ええっ!?」

七咲「!?」

中多「!?」

棚町「!?」

森島「わぉ! ひびきちゃん、ダイタン!」

塚原「なっ、何を勘違いしてるのよ!///」

塚原「水泳部の部室に乾燥機があるから、それを使えばすぐ着られるようになるわ」

七咲「あ、なるほど。確かにそうですね」

塚原「水着用だから、厳密には衣服用とは違うけれど、あとはドライヤー使えば大丈夫よ」

純一「なんだかすみません、わざわざ・・・」

塚原「良いのよ。うちの七咲もお世話になってるみたいだし、こないだの件でお詫びもできるしね」

純一「こないだの・・・って、ああ、でもあれは塚原先輩が悪い訳じゃ・・・」

塚原「まぁ、正確にははるかのせいね」

森島「うっ、ひびきちゃんイジワル・・・」

塚原「ふふっ。さ、時間が惜しいわ、早速脱いでもらって良いかしら」

純一「はいっ」グイッ

棚町「え・・・」

塚原「!?」

森島「わぁぉ・・・」

七咲「う・・・」ゴクリ

中多「わぁ・・・」

純一「じゃ、お願いします、塚原先輩」

塚原「え、あ、あぁ、うん、そ、そうね、じゃあお預かりします///」

純一「先輩? どうかしたんですか?」

塚原「えっ!? ううん、なにもないけど?///」

純一「そうですか? それなら良いんですけど・・・」

塚原「じゃ、じゃあ早速洗っちゃうね!」

純一「はい、お願いします」


棚町(じゅ、純一のヤツ・・・いつの間にあんな良いカラダに・・・///)

塚原(と、年下の男の子だと思ってたら・・・///)

森島(すごく引き締まった身体してるのね・・・犬みたいな可愛い顔してるのに・・・ちょっとドキッとしちゃった///)

七咲(先輩・・・鍛えてるんだ・・・全然そんな感じしないのに・・・すごい・・・///)

中多(男の人の身体ってあんまり見た事なかったけど・・・すごくたくましかった・・・しぇんぱい、カッコ良いですぅ・・・///)

塚原「こ、これで大丈夫かな」パンッ

純一「ありがとうございます。午後の授業に間に合いそうで良かったです」

塚原「そ、そうね」

純一「よっ、と・・・」

一同「!?」

森島「ちょ、ちょっと待って///」

純一「はい?」

森島「も、もう一回シャツ着てみてくれないかな?」

純一「え? 脱いで着直すってことですか?」

森島「うんうん」

純一「はぁ・・・森島先輩の頼みとあれば別に構いませんが・・・」

棚町(森島先輩GJ!)

塚原(はるか・・・今のは満点よ!)

純一「んしょっ・・・」グッ

森島「そこでストップ!!」ビシッ

純一「えっ!?」ビクッ

森島「・・・」ジーッ

純一「あ、あの・・・? どうかしましたか・・・?」

棚町「・・・」ジーッ

塚原「・・・」ジーッ

七咲「・・・」ジーッ

中多「・・・」ジーッ

純一「薫に七咲、中多さん、それに塚原先輩まで・・・!? な、何見てるんですか!?」

森島「ここよ・・・こう、シャツを着るために腕を上げるでしょ」

塚原「そうする事でちょっとインナーのTシャツが持ち上がってるわね」

棚町「そしてその向こう側には・・・」

七咲「先輩の8つに割れた腹筋が・・・」

中多「ま、まさに絶景ですね・・・」

純一(い、一体なんの話をしてるんだ!?)

森島「そしてこの背中側も良いのよねえ」

塚原「私はシャツからちらっと覗く胸筋と鎖骨も良いと思うけど」

七咲「確かに!」

棚町「これは盲点だったわね・・・」

中多「塚原先輩、天才です・・・」

森島「むむむ、やるわね、ひびきちゃん・・・」

キーンコーン

純一「あ、予鈴・・・」

授業中

絢辻(全く・・・どこ行ってたのよ・・・授業開始ギリギリに戻ってくるなんて・・・)

絢辻(あれからID腹筋について調べたけれど・・・)

絢辻(決定的な因果関係はいまだ謎のまま・・・)

絢辻(曰く、スレタイに釣られた男の末路)

絢辻(曰く、引きこもりたちの荒行)

絢辻(曰く、パンドラの箱の探求)

絢辻(・・・ぶっちゃけ意味が分からなかったわ・・・)

絢辻(放課後、本人から直接聞いちゃおうかしら)チラッ

純一「・・・」キリッ

絢辻(・・・///)

絢辻(はっ、だ、ダメよ、詞! 授業に集中しないと・・・)

先生「はい、絢辻さん、ここの答えは? 聞いてたなら答えられるよな?」

絢辻「ヤルタ会談です」

先生「せ、正解です・・・(聞いてたのか!)」

キンコーン

純一「よっし、今日はまっすぐ帰るか!」

棚町「あん? 何よ、今日は寄り道とかしないの?」

純一「ああ、帰って腹筋の続きだよ」

棚町「腹筋も良いけど、たまには薫さんに付き合ってどこか遊びに行くとかない訳?」

純一「ははっ、それも楽しそうだけどな」

棚町「っ・・・な、何よ、随分素直じゃない///」

純一「そうか? でも本音だからなぁ、薫といると楽しいし、気心が知れてるしな」

棚町「あ、ぅ・・・///」

純一「薫?」

棚町「ああああああアタシ、今日バイトだから!!」ダダダッ

純一「えっ・・・あ・・・い、行っちゃった・・・どうしたって言うんだ、薫のやつ?」

梅原(俺は今、大将が恐ろしいぜ・・・!)

絢辻「橘くん」

純一「絢辻さん、どうかしたの?」

絢辻「悪いんだけど、高橋先生に頼まれている仕事があるんだけど、手伝ってくれないかな?」

純一「良いよ。でも、どんなこと?」

絢辻「重い教材を運ばなきゃならないのよ」

純一「それなら最初から男子に頼めば良いのにね」

絢辻「でも、私はクラス委員だから・・・」

純一「そうかもしれないけれど、絢辻さんはか弱い女子なんだしね」ニコッ

絢辻「なっ・・・あ、わ、私は、べ、別に・・・///」

純一「絢辻さん?」

絢辻「ほ、ほら、さっさと行って終わらせるわよ///」

純一「あ、うん!」

絢辻(・・・なんか、ああやって女の子扱いされるのって、すごく久しぶり・・・)

絢辻(ちょっとくすぐったいけど・・・悪い気分じゃないわね・・・///)

高橋「あ、あら、橘くん?」

純一「失礼します」

絢辻「彼にも手伝ってもらおうと思いまして」

高橋「そ、そうなの?」ススッ

絢辻「?」

高橋(な、なんで髪なんて気にしてるのよ、私ったら・・・)

高橋「えっと、それじゃあ資料室に行きましょうか、一緒についてきてくれる?」

絢辻「は、はい」

純一「はいっ」

絢辻(もしかして高橋先生・・・橘くんのこと・・・? いや、まさかね)

高橋「ここよ」ガラッ

純一「う、埃臭いですね」

高橋「あまり人が入らないのよね・・・ええっと電気電気・・・」パチッ

絢辻「確かに、初めて入りました」

高橋「でしょう? えっとー、これね。あとこれと、これと、これも」

絢辻「・・・これ全部ですか?」

高橋「・・・ごめんね?」

絢辻「いえ、橘くんがいますし、大丈夫です」

純一「いえ、高橋先生、これなら最初から男子を呼んでください」

高橋「えっ?」

純一「たまたま僕が手伝えたから良いですけど、もし男子が捕まらなかったらどうするんですか」

高橋「そ、それは」

純一「絢辻さんは真面目で責任感が強いから、そうなったら1人でやろうとするに決まってます」

高橋「・・・そうね」

純一「もし怪我でもしたら大事ですよ」

高橋「・・・橘くんの言うとおりだわ。ごめんなさいね、絢辻さん。先生が浅慮だったみたい」

絢辻「い、いえ、私は別に・・・」

高橋「橘くん」

純一「はい?」

高橋「私が言える事じゃないけど、これからも絢辻さんのこと、助けてあげて?
    いつも彼女には私のサポートで苦労かけてるから・・・」

純一「僕で良ければ喜んで手伝いますよ」

絢辻「!!」

高橋「そう、ありがとう。それにできれば私の事も・・・」

純一「え?」

高橋「な、なんでもない、なんでもないわ・・・///」

純一「? ・・・それじゃあこれ運んじゃいますね」

絢辻「あ、私も運ぶから・・・」

高橋「お、重いわよ?」

純一「ははっ、大丈夫ですよ」ヒョイッ

高橋「へっ?」

絢辻「ちょ・・・」

純一「で、これをどこに持っていけば良いんです?」

高橋「あ、ああ・・・だ、第二視聴覚室へ・・・」

純一「分かりました」スタスタ

高橋「・・・あれ、全部で50キロはあるんだけど・・・」

絢辻「あっさり持ち上げましたね・・・」

高橋(以前は頼りない感じの子だったのに・・・こんなに頼もしいなんて・・・)

絢辻「はっ、第二視聴覚室って鍵がないと入れないですよね?」

高橋「そうだったわ! た、橘くん、待って~!」タタッ

絢辻(私の事、助けてくれる、のかな・・・橘くん・・・///)

絢辻「ありがとうね、助かっちゃった」

純一「ううん、全然大丈夫。また何かあったら言ってよ」

絢辻「うん、そうさせてもらうね。橘くんが頼りがいのある人って分かったし」

純一「ははっ、そんな事ないよ」

絢辻「そんな事あるわよ。あんなに力持ちだなんて思わなかったもの」

純一「腹筋やってたら何故か腕にまで筋肉ついちゃってね・・・途中からダンベル持って腹筋したからかなあ」

絢辻「あぁ、そう言えばなんかそんな事をクラスで話してたわね。面白い冗談よね、400万回って」

純一「あはは、そうでしょ? でも本当なんだよね、信じてもらえないと思うけど」

絢辻「・・・全然信じないって訳じゃないけど、400回くらいじゃないの?」

純一「いやあできるだけ早く1億2千万回やらなきゃいけなくてね」

絢辻「・・・は?」

純一「多分この週末は腹筋ばっかりしてると思うよ。我ながら暗い週末だなあ、ははっ」

絢辻(え、まさか本当に? ・・・本当に400万回・・・!?)

上崎(・・・なんなの? いったい何が起きちゃってるの!?)

上崎(あの人の部屋の灯りが一晩中ついてるのもおかしいと思ったけど)

上崎(ちゃんと朝ご飯を食べてから登校するし・・・)

上崎(しかもなんかすごくカッコ良くなってるし!)

上崎(あの人と同じクラスの子たちもザワザワしてたし)

上崎(その上、最近ちょっと近づいてた女の子たちがいきなり急接近してるし!)

上崎(もう、いろんな事が多すぎて、訳が分からなくなっちゃうよ!)

上崎(と、とにかく、あの人がこれ以上カッコ良くなるのを止めなきゃ!!)

上崎(以前のままの彼で良いんだから・・・それで良いんだから・・・!)

上崎(で、でもどうしたら良いんだろう・・・)

俺とこのスレはどこに向かっているんだ・・・

美也(逢ちゃんと紗江ちゃんに、にぃにの事たくさん聞かれた)

美也(こないだもちょっと聞かれたけど・・・あの時とは様子が全然違った)

美也(・・・昼休みに、にぃにと何かあったのかな・・・)

美也(・・・2人とも、にぃにの事、好き、なのかな)ズキ

美也(もしそうだとしたら・・・みゃーは2人の事、応援できるのかな)ズキン

美也(また胸が痛い・・・痛いよ、にぃに・・・)

上崎「・・・美也ちゃん」

美也「・・・もしかして、裡沙ちゃん?」

上崎「そうだよ・・・久しぶり、美也ちゃん」

美也「・・・どうか、したの?」

上崎「単刀直入に言うけど、美也ちゃん、橘くんがこれ以上カッコ良くなって良いと思う?」

美也「・・・え・・・」

上崎「橘くんは、元からカッコ良いけど、それにみんな、気づいてなかった」

上崎「でも、今日、いろんな人が、たくさんの人がそれに気づいたの」

上崎「理由は分からないけど・・・でも」

美也「・・・ID腹筋だよ・・・」

上崎「・・・うそ・・・ID腹筋!? う、嘘だよね・・・橘くんが・・・ID腹筋なんて・・・」

美也「嘘じゃないよ・・・にぃには一晩中それをやってたの・・・」

上崎「・・・だから、あんなにカッコ良く・・・」

美也「・・・うん・・・」

上崎「・・・でもID腹筋ってことは、これからもどんどんカッコ良くなるよね」

美也「多分ね」

上崎「そうしたら、橘くんのことを好きになる人がもっと増えるかもしれない」

美也「・・・」

上崎「それで良いの?」

美也「・・・どういうこと」

上崎「美也ちゃんのにぃにが、みんなの橘くんになって」

美也「・・・!」

上崎「そしていつか、誰かの彼氏になるかもしれないってこと」

美也「誰かの・・・」

上崎「美也ちゃんじゃない、誰かの・・・ね」

美也「・・・」

上崎「そんなの、耐えられるの?」

美也「・・・」

上崎「嫌だよね? 美也ちゃん」

美也「・・・だったら、なに?」

上崎「橘くんを止めるなら今だよ」

美也「止める・・・? にぃにを・・・?」

上崎「そうだよ、美也ちゃん・・・橘くんの大事な妹の美也ちゃんにしかできないんだよ」

美也「にぃにの・・・大事な妹・・・」

美也「・・・よ」

上崎「え?」

美也「・・・いよ・・・」

上崎「いいよ?」

美也「できないよ・・・」

上崎「!? なんで!? だってにぃにが取られちゃうんだよ!? 他の女に!」

美也「・・・だって・・・」

上崎「それで、上手くいけば良いけど、また振られたり、捨てられたりしたら・・・!」

美也「だって!」

『僕に足りないものが分かったんだよ、美也!』
『これを乗り越えてこそ、僕は彼女が作れるんだ!』
『美也は僕の事を心配してくれたんだろ? 主に僕の腹筋を』
『よおおおおおし、やってやる! 僕はやってやるぞ、美也!』

美也「にぃにが自分で決めたんだもん! 頑張るって! 乗り越えて彼女を作るんだって!」

上崎「!!」

美也「だから裡沙ちゃんは邪魔しないで! にぃにが頑張るの、邪魔しないでよ!」ダッ

上崎「あっ、美也ちゃん!?」

スローモーション。

裡沙ちゃんの制止を振り切って、この胸の気持ちを振り切りたくて、ただ全力で駆け出した。

裡沙ちゃんが何か言ってる。でもそれを無視して、とにかくそこから離れようとした。

何も聞こえなかった。

裡沙ちゃんの声も、車のスキール音も。

気づいた時には、顔を真っ青にして叫ぶ裡沙ちゃん――ねぇねが

そして、目前に迫ろうとしているトラック、運転手のおじちゃんが驚いた顔でこっちを――。

上崎「いやあああああああああああああああああああっ!!!」

運転手「うわあああああああああああっ!!!!」

美也「――にぃに・・・」

最後に、にぃにに会いたかったなぁ・・・。

純一「呼んだか、美也」

美也「――にぃ、に・・・?」

上崎「・・・え・・・?」

その場で、トラックは完全に停止していた。

それはブレーキが間に合ったからじゃないのは、タイヤがまだ少し空回りしているのを見ても分かる。

ただそこに、トラックの衝撃を受けて微動だにしない防壁が存在したからだ。

美也「にぃに・・・」

純一「・・・ID腹筋しといて良かったな・・・」

美也「にぃにぃ・・・!」

純一「美也、怪我ないか?」

美也「にぃにぃぃぃぃぃぃ!!」

純一「全く、美也は時々周りが見えなくなるよな」

美也「そ、それはにぃにも、同じで・・・うっ、ひぐっ、うううっ」

純一「ははっ、似たもの兄妹ってことだな」

美也「こ、これからも、美也のにぃにでいてくれるの?」

純一「何言ってるんだよ。僕はいつまでも美也のにぃにさ」

美也「ホントにホント?」

純一「本当に本当だよ」ナデナデ

美也「あ・・・///」

純一「それにしても、鍛えるって大事だな・・・それ次第で大切な人を守れるかもしれないんだから」

美也「た、大切・・・」

純一「さっ、帰ってID腹筋の続きだ!」

美也「え~、まだやるの~?」

純一「当たり前だよ! あと1億回以上も残ってるんだからな!」

美也「もう、にぃにったら~!」

おわり

眠くなったので終わらせたよ
でも大体思ってた通りのエンディングなんだよ
もうちょっと梨穂子ラブリー七咲ひびきちゃんまやちゃん絢辻さんは掘り下げたかったけど断念した

じゃあ腹筋してけよ、おまえら
俺は寝る

なんで残ってるし

ぬるぽ

>>335
おめでとう

ちょっとおまけ劇場

高橋「はぁ・・・」

高橋(今日は遅くなっちゃったな・・・仕事がなかなか手につかなかったわ)

高橋(それもこれも・・・)

高橋(橘くん・・・///)

高橋(まさか年下の男の子・・それも生徒に諭されるなんて・・・)

高橋(恥ずかしかったけど、でも、妙に嬉しかった・・・///)

高橋(全く、男子三日会わざれば刮目せよとは言うけどね・・・)

高橋(ホント、ビックリしちゃったな)

高橋(真面目な橘くん・・・カッコ良かった・・・///)

高橋(だ、だめだよだめよ! 私は教師であの子は生徒なんだから・・・///)

高橋(年だって離れてるし・・・ってそういう問題じゃないでしょ・・・///)

高橋(・・・橘くん、年上とか嫌いかしら・・・?///)

純一「あれ? 高橋先生?」

高橋「!?」ビクッ

高橋「た、橘くん!? こ、こここんな時間に何してるの?」

純一「ちょっと妹に買い物を頼まれてしまいまして・・・」ポリポリ

高橋「あ、ああ、そうなの・・・危ないから、早く帰りなさいね」

純一「危ないのは、先生も同じですよ」

高橋「え?」

純一「女性がこんな時間に1人で歩いてたら、危ないって事です」

高橋「わ、私は大人だから・・・」

純一「そんなの関係ないですよ、女性は女性です」ニコッ

高橋「あ、あう・・・///」

純一「家の近くまで送りますね」

高橋「あ・・・うん・・・///」

高橋(だめよだめよ、男子生徒にそんな事させるなんて教師失格も良いところよ!
    ああでもでもこういう感じずっとなかったし、橘くんカッコ良いし・・・あああどうしたら///)

純一「?」

高橋(け、結局家に着くまで言い出せなかった・・・)

高橋「こ、このマンションよ」

純一「分かりました。それじゃあ僕はここで失礼します」

高橋「え・・・」

純一「それじゃ月曜に」

高橋「ま、待って」

純一「はい?」

高橋「・・・上がってかない?」

純一「えぇっ!? で、でも・・・///」

高橋(て、照れてる・・・? も、もしかして脈あり・・・なの・・・?///)

高橋「寒いんだから、お茶でも飲んで行きなさい。風邪ひいても困るし」

純一「せ、先生が良いって仰るなら・・・///」

高橋「そ、そうしなさい。子どもは厚意に素直に甘えるものよ」

純一「それじゃ、お言葉に甘えます・・・///」

高橋(や、やった・・・!)パァァ

カチコチ カチコチ

高橋(時計の秒針がやけに大きく聞こえるわね・・・///)

ドキドキ

高橋(心臓の音が聞こえそう・・・私、なんでこんな緊張してるの・・・?///)

純一(な、なんか言われるまま先生の部屋に上がっちゃったけど、これって大変な事なんじゃ・・・///)

純一(大人の女性の部屋なんて初めて入ったけど・・・な、なんか良い匂いがする///)

高橋「ね、ねぇ・・・」

純一「はいっ!?」

高橋「そ、その・・・橘くん、何かあったの?」

純一「何か・・・ですか?」

高橋「ええ・・・昨日と今日で、橘くんの雰囲気がだいぶ違うようだから・・・」

純一「特にこれっていうのもありませんが・・・強いて挙げるならID腹筋かな・・・?」

高橋「あ、ID腹筋ですって・・・!?」

高橋(ID腹筋・・・懐かしい響きね・・・)

高橋(あの人もやってたっけな・・・ID腹筋・・・)

純一「せ、先生? どうかしたんですか?」

高橋「い、いえ・・・ちょっと昔を主出しちゃって・・・」ポロ

純一「先生!?」

高橋「や、やだ・・・なんで涙なんか・・・あはは・・・だ、ダメねぇ・・・」ポロポロ

高橋「うっ・・・ひぅ・・・と、とまらな・・・うぅっ・・・」ポロポロ

純一(こ、こんな時、どうしたら良いんだ? ぼ、僕は)

1.優しく抱きしめる
2.優しくハグする
3.優しく包み込む

純一(ぜ、全部一緒じゃないか・・・! で、でも仕方ない・・・)

純一「・・・先生・・・」ギュ

高橋「あ、た、橘くん・・・!?」ドキッ

純一「何も言わないでください・・・」

高橋「あ・・・う・・・///」ドキドキドキ

純一「誰も見てないですから・・・気が済むまで泣いてください」

高橋「・・・橘くんが見てるじゃない・・・」

純一「こうしてれば、先生の顔は見えないですよ」ギュ

高橋「・・・あ・・・///」

高橋(やだ・・・お、男の人って・・・こんなにたくましいの・・・?)

高橋(それに・・・なんか良い匂いがする・・・)スゥ

高橋(すごく、落ち着く・・・)

高橋「・・・ごめんね、橘くん・・・もうちょっとだけ、このままで・・・いさせて・・・///」

純一「はい、良いですよ」

高橋(バカ・・・カッコ良い男の子にこんな風に優しくされたら・・・惚れちゃうじゃない・・・)

純一(せ、先生の髪、なんかすごく良い匂いがするぞ・・・! そ、それに柔らかい・・・!)

純一(お、落ち着け・・・落ち着くんだ・・・ID腹筋してた時の事を思い出すんだ、橘純一!)

高橋「あはは・・・」

純一「せ、先生?」

高橋「ダメね、私ったら・・・教師なのに、生徒に慰めてもらっちゃったわ・・・///」

純一「だめなんかじゃ・・・ないですよ・・・」

高橋「え?」

純一「先生はいつもカッコ良いし、厳しいけど優しくて、みんなの憧れなんです!」グッ

高橋「あ・・・た、橘くん、ちょっと痛い・・・」

純一「あ、す、すみません・・・」パッ

高橋(あ・・・離れちゃった・・・)

高橋「・・・」

純一「・・・」

高橋「橘くんは、どうなの?」

純一「え・・・?」

高橋「橘くんから見て、私は、どうなの・・・?///」ドキドキ

純一「せ、先生は・・・す、すごく綺麗だし・・・スタイルも良いし、美人ですし・・・」

高橋「ちょ、あ、う・・・///」カーッ

純一「す、すみません///」

高橋「私って・・・魅力あるのかしら・・・?///」

純一「それはもう!!」クワッ

高橋「ほ、本当に?」

純一「はい!」

高橋「絶対?」

純一「はいっ!」

高橋「そっか・・・」スッ

純一「わ・・・せ、先生・・・?」

高橋「・・・じっとしてて・・・」クイッ

純一「は、い・・・」

高橋「・・・」

純一「・・・ん・・・」

チュンチュン チュン

高橋(朝・・・?)

高橋(や、やってしまったわ・・・よりによって教え子と・・・!)

高橋(ちょっとどころかずっごく痛かったけど・・・でも、嬉しかった・・・///)

高橋(当分忘れられそうにないわね///)

純一「ん・・・先生・・・?」

高橋「あ、じゅ・・・じゃなくて、橘くん・・・」

純一「2人っきりの時は、名前で良いと思いますよ、昨晩みたいに」ニコッ

高橋「ば、バカ・・・///」ギュッ

純一「あ、い、今くっつくと・・・朝の生理現象が・・・///」

高橋「あ・・・う・・・・・・も、もう一回、しちゃう?///」

純一「・・・麻耶・・・」ギュッ

高橋「・・・純一・・・」ギュッ


美也「みゃーのまんま肉まんまだ・・・?」

おわり

出かけるから終わり
ちょおまの時より麻耶ちゃんが橘さんに惚れ込んじゃったらこうなってもおかしくはないよね

いやぁ、ID腹筋って良いものですね!

事後に定評のある人ですね、わかります

変わらないものはマスターカードで

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