モバP「招き猫は猫又の夢を見るのか」 (101)

モバマスSSです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1382864999

ちなみに古典シリーズです。

他のシリーズを書いていたりして、遅れてしまいすみません。

事務所
幸子「お疲れ様です」

文香「あ…、お疲れ様です」

幸子「あ、どうも…お疲れ様です」

文香「…はい」

幸子「……」

文香「……?」

幸子「あ、Pさんいますかー?」

P「ん?呼んだか?」

幸子「はい。ちょっといいですか?」

P「あぁ、どうした?」

幸子「あ、これ事務所にでも置いてもいいですよ」

P「ん?なんだこれ」

幸子「招き猫みたいです。家にあったみたいなんですけど、どうせだったら事務所に置く方がいいかなって両親が」

P「そうか。分かった。それじゃ機会を見て置いておくな」

幸子「まぁ、ボクもほとんど見たことないんで、よく知らないんですけどね」

P「まぁ、あの白い招き猫が入ってるんだろうな」

幸子「でしょうね。って、それよりもなんで、ドアの近くに鷺沢さんが立ってるんですか?ちょっとびっくりしたんですけど」ヒソヒソ

P「あぁ、あれな。俺と頼子以外と話すのも目を合わせるのも得意じゃないって言ってたし、いきなりレッスンに放り込むより、まず事務所の皆と仲良くなってからにしようと思ってな」

幸子「なるほど…でも、あんなとこにいなくても」

幸子(Pさんは平気って言うのが、少し癪なんですけど)

P「俺も思ったんだけどな。頑張りますって言ってあそこにずっといるんだよな」

幸子「意外に自分で決めたら頑固なんですかね?」

P「さぁな。とりあえず、話してきたらどうだ?」

幸子「え、ボクがですか?」

P「ここには幸子しかいないだろう。幸子なら出来るって」

幸子「ま、まぁ、ボクなら簡単ですよ、こんなこと」

P「それじゃ、頼んだ。何かあったらそこにいるから呼んでくれ」

幸子「あ…」

幸子(べ、別に、そんなに気負わなくてもいいですよね…)

幸子「あ、あの…」

文香「…はい」

幸子「こっちに座ってお茶でも飲みませんか?」

文香「そう…ですね」

幸子「それじゃ、ボクが――」

文香「あ、私も行きます。普段から淹れ慣れてるので…」

幸子「そうなんですか?」

文香「えぇ…人様に見せる…ものじゃないけれど」

幸子「それじゃ、今日は淹れて貰ってもいいですか?」

文香「…はい」

給湯室

文香「…あの」

幸子「なんですか?」

文香「その…見られると緊張するんですけど…」

幸子「そうですか?」

文香「えぇ…あ」

幸子「どうかしましたか?」

文香(でも、アイドルになるんだったら…視線にも慣れなきゃなのかな?)

文香「い、いえ、やっぱり、もっと見て下さい…」

幸子「は、はぁ…。いえ、そこまで見たいわけじゃないんですけど」

文香「あ…、すみません。あの、変な意味じゃ…」

文香(うぅ…恥ずかしい)カァァ

幸子「…中々美味しいですね」

文香「そうですか…それは良かったです」

幸子「ボクに飲まれるなんてこのお茶も幸運ですね」

文香「そうなの…ですか?」

幸子「そうでしょう。そうに決まってます」ドヤ

文香「なるほど…」

幸子「い、いや、どうなんですかね…」

幸子「時に鷺沢さん」

文香「…はい」

幸子「結局どうやってスカウトされたんですか?」

文香「どうやって…ですか?」

幸子「えぇ。この間言いましたが、どうやらPさんは本屋の危機に立ち向かったわけじゃないですし」

文香「その…なんといいましょうか…」

幸子「まさか…ストーカーでもされましたか?」

文香「い、いえっ、決してそんなことは…」

幸子「良かったです。ボクのPさんがそんなことをしてなくて」ホッ

文香「ボク…の?」

幸子「そうですよ。Pさんはボクのですっ!」ドヤ

文香「プロデューサーさんは、誰のものでもありませんよ?」

幸子「う。わ、分かってますよ。それくらい」

文香「そうでしたか…すみません」

文香「でも…余程信頼されているのですね」

幸子「と、当然ですよ。それで何があったんですか?」

文香「えーと…その…」

幸子「はい」

文香「……その、秘密です」カァァ

ちひろ「ふふーん♪」

P「どうかしたんですか?」

ちひろ「いえ、どうですかこれ?」

P「お、招き猫ですか」

ちひろ「そうなんですよ。この事務所に何か足りないなーって思ってたんですよ」

泰葉「そういう時ってダルマさんじゃないんですかね?」

P「言われてみれば…どうなんですかちひろさん?」

ちひろ「うちの事務所だったら何個いるんですか…」

P「言われてみれば確かにな」

泰葉「小っちゃいダルマさんでも一杯必要ですね」

ちひろ「地震とかで倒れてきたら怖いんですけどそれ…」

泰葉「確かに怖いかもしれませんね…」

P「そう言えば、ダルマって都市伝説であったなぁ…」

ちひろ「いいです。どう考えても怖そうなんで」

泰葉「あはは…。あ、そうだ、これ見て下さいよ」

P「ん?どうした?お、蘭子とのツーショットか」

泰葉「はい。この間撮影の合間に撮ったんですよー」

P「二人共良い顔してるなー」

ちひろ「きゃはっ。て感じですね」

P「そうですね。ちひろさん今の表情、写真に撮っておきましょうか?」

ちひろ「や、止めて下さいよっ! あんなの残されたら恥ずかしくて死んじゃいますって」

泰葉「可愛かったですけどね」

すみません中座します。

P「生で見てみたいなぁ」

泰葉「え…ここでですか?」

P「まぁ、他に誰もいないし」チラッ

泰葉「まぁ…一回だけですよ?」

ちひろ「えぇ、泰葉ちゃんもどうぞ」

泰葉「どうぞって…。…きゃは☆」

パシャ

泰葉「え?」

P「撮れましたか?」

ちひろ「えぇ、ばっちりです!」

泰葉「え?え?」

P「いやー、貴重なシーンが撮れてよかったよ。あ、ちひろさん送って下さい」

ちひろ「はーい」

泰葉「なにしてるんですかっ!ダメ、ダメですよっ!」

P「いいじゃないか」

泰葉「ダメでっすってば…うう恥ずかしい。えいっ」バッ

P「あ」

泰葉「今の内に……え?」

P「どうかしたか?」

泰葉「いえ、待ち受けが」

P「待ち受けがどうかしたのか?」

泰葉「いえ、前に撮ったプリクラなんでちょっとびっくりしたんです」

ちひろ「え、二人で撮りに行ったんですか?」

P「いえ、違いますって。周子たちと泰葉が撮った奴です」

ちひろ「あぁ、あれですか」

泰葉「……」ジー

P「どうかしたか?」

泰葉「今、私は自分との葛藤と闘っているところなんです」

P「…一体なんの話だ?」

泰葉「…よしっ!はい。お返しします」

P「一体なんだったんだ…?って待ち受け変えたのか」

泰葉「はい。あの時の私の顔がちょっと暗かったので。あ、今度皆で撮ってきますね」

ちひろ「これって、さっきの写真ですね」

P「こうして見ると…中々撮るの上手いですねちひろさん」

ちひろ「被写体がいいですから。それに褒めても何も出ませんよー」

泰葉「なんか色々出てきそうですけど」

P「ちひろさん。はいチーズ」

ちひろ「え、えっ、えーっと、あぁ!」

P「焦ってるちひろさんてレアだよなぁ泰葉」

泰葉「そうですね。あ、後で送っておいてください」

ちひろ「ちょ、ちょっと…!」

幸子「お疲れ様です」

凛「お疲れ様」

P「お疲れ様二人共」

凛「お疲れ」

P「おう。ってあれ、菜々さんもいなかったか?」

凛「あれ?」

幸子「大丈夫ですか?」

菜々「へ、平気です…」ゼェゼェ

P「どうしたんですか?」

菜々「いえ、ちょっと。今日はレッスンがハードで…」

P「湿布でも貼りましょうか?」

菜々「へ、平気ですよ。ナナはJKで17歳ですから!」

凛「それじゃ、私が貼って貰ってもいい?」

P「え?凛にか?」

凛「ちょっと疲れちゃってさ。明日に残したくないし。ダメ?」

P「え――」

ちひろ「分かりました。それじゃ、私が貼りますね。プロデューサーさんだと色々問題ありそうですし」

P「ま、まぁそうですね」

凛「む…。まぁ、しょうがないよね。それじゃ、ちひろさんお願いしていい?」

ちひろ「何だか釈然としないんですけど…それじゃ、仮眠室で」

菜々「な、ナナもいいですか?凛ちゃんがやってるならいいですよね?」

ちひろ「どうぞー」

P「…凛は優しいな」

幸子「そうなんですか?」

P「多分だけど、菜々さんの為に言い出したんじゃないのかな?」

幸子「なるほど…確かに言われてみればそんな気もしますね」

幸子「…ん?」

P「どうかしたか?幸子」

幸子「いえ、大したことではないんですけど…」

P「奥歯に物が挟まったような言い方だな」

幸子「いや、招き猫買ったんだなって」

幸子(ボクが渡したのはまだ置いてないですし)

P「招き猫?」

P(あぁ、ちひろさんが買ったあれか…)

P「ちひろさんが買ったんだよ」

幸子「そうなんですか」

P「なんとなく似合うよなちひろさんと招き猫」

幸子「似合いますよね。ちなみにボクは何が似合いますかね?やっぱりカワイイ動物ですかね?」

P「なんだろうなぁ…」

ガチャ

菜々「きゅぴぴぴーん☆ ナナは復活しましたよっ!」

P「あ、お帰りなさい」

幸子「いきなり元気になりましたね…」

菜々「ちょっと、ウサミンパワーが不足してただけですよー。ご心配おかけしました」キャハ

P「ここ、事務所なんでそこまで飛ばさなくても…」

菜々「なんのことですか?ナナはいつも自然体ですよ」

周子「おはようございまーす」

P「お、周子か。おはよう」

周子「おはよ。……ん?」クンクン

P「どうかしたか?」

周子「いや、なんか湿布臭くない?」

P「そうか?」

鷲沢さんと幸子一緒だったのになんで?と思ったら別の日なのか

周子「気のせいかな?菜々さんはどう思う?」

菜々「えっ!? ナナじゃないですよ?」

周子「なら気のせいかな」

菜々「え、なんでナナだけに聞いて終わりなんですか?」

周子「え?だって…ねぇ?」

菜々「意味あり気に視線をPさんに投げないで下さいよっ!」

P「ははは…」

幸子「Pさん、ちょっといいですか?」

P「ん?どうした?」

幸子「ちょっと、そこの机を借りていいですか?宿題をしたいので」

P「いいぞ」

幸子「はい。ありがとうございます」

P「幸子は偉いなぁ…」

幸子「何を当たり前なことを…。ボクが偉いのは当然じゃないですかっ」ドヤ

P「宿題なんて学校でやってたからなぁ…」

幸子「学校は勉強する所です。宿題は家でやるから宿題って言うじゃないですか」

P「耳が痛い限りだな…」

幸子「それに、学校で慌てて宿題やってたらかっこ悪いじゃないですか」

P「そうか?」

幸子「えぇ、ボクはカワイくて、カッコよくないとダメなんですからっ!」

P「偉いな、幸子は。何か食べるか?」

幸子「え?そうですね。チョコでもあれば…」

P「ほれ」

幸子「…よく持ってましたね」

P「俺も仕事で疲れた時とかに食べるしな」

幸子「なるほど。それじゃ、いただきます」

>>22
一応区切りで時間が進んでいる場合もあります。

分かりづらくてすみません。

事務所

幸子「よしっ!終わりと…」

幸子(あれ?)

幸子「なんで招き猫が移動してるんでしょう?」

幸子(邪魔だったんでしょうか…?)

卯月「あ、幸子ちゃんだ。やっほー」

幸子「あ、どうも」

卯月「ジーっとなにか見てたみたいだけど何かあったの?」

幸子「あ、ちひろさんが招き猫を買ったみたいで…」

卯月「招き猫かー。お金でも降ってくるといいなー」

幸子「でも、小判とか降ってきたら痛そうですよね」

卯月「う…確かにたんこぶになっちゃったら嫌だなぁ」

美嘉「二人とも何してるの?」

卯月「あ、美嘉ちゃんだ」

幸子「招き猫をですね――」

美嘉「ふーん。で、その話に出てきた招き猫はどこにあるの?」

卯月「あ、そうそう。それ、私も気になってたんだよねー」

幸子「だからそこに…あれ?」

幸子(いなくなってる…?)

幸子「どこかに行ったみたいです」

卯月「生きてるわけじゃないのに不思議だね」

美嘉「ってか、思うんだけどさ、招き猫てもう少し痩せた方が可愛くない?」

卯月「えー。コロコロしてて可愛いなーって思うけど」

美嘉「あ、そうだ。卯月呼びに来たんだった」

卯月「え?なにかあったの?」

美嘉「ラジオの収録があるんだって」

卯月「そうなんだー」

美嘉「そうなの。それじゃ、行こっか」

卯月「うん。幸子ちゃんじゃあねー」

美嘉「バイバイ★」

幸子「あ、頑張ってくださーい」

ちひろ「あ、幸子ちゃん勉強してたんですね」

幸子「えぇ、まぁ、ボクにかかればすぐに終わりましたけど」

ちひろ「流石ですねー」

幸子「あ。そう言えば一つ聞きたいことがあるんですけど」

ちひろ「なんですか? 勉強はあんまり自信ないんですけど…」

幸子「違いますよ。えーとですね…招き猫見せて貰っていいですか?」

ちひろ「あれ?幸子ちゃんに言いましたっけ?」

幸子「えーと…Pさんに聞いたんですよ」

ちひろ「なるほど…。別にいいですけど、撫でたらご利益があるとかそういう類のものじゃないですよ?安物ですし」

幸子「それでもいいですから」

ちひろ「それじゃ…はい。これです」

幸子「え…?」

幸子「これ以外にはないんですか?」

ちひろ「そんな何個も買うものじゃないですからね」

幸子「言われてみれば確かに…。でも、さっき違う招き猫を見たんですよ。事務所で」

ちひろ「これ以外にですか?プロデューサーさんが買ったんですかね?」

幸子「ちひろさんが買ったって言ってましたけど…」

ちひろ「野良招き猫みたいなもんなんでしょうか…」

幸子「なんかご利益とは無縁な感じですね」

ちひろ「そうですね。ま。いずれにしても私が持ってるのはこれだけですよ」

幸子「そうですか。ありがとうございます」

ちひろ「いえいえ。そう言えば、今日はこのままプロデューサーさんに送って貰うんですか?」

幸子「え…あ、もうこんな時間なんですね」

ちひろ「暗くなってきたんで、プロデューサーさんに言っておきますね」

幸子「ありがとうございます。ちひろさん」

ちひろ「いえいえ、可愛いカワイイ幸子ちゃんの為ですから」

幸子「そ、そうなんです。ボクがカワイイからですねっ!」

ちひろ(可愛いなー幸子ちゃん)

事務所

P「お疲れ様です」

ちひろ「あ、お疲れ様です」

P「はい。あ、悪いな幸子こんな時間になっちゃって」

幸子「特には気にしてないですけどね」

P「それじゃ、帰るか」

幸子「えぇ、そうしましょう」

車内

P「宿題終わったか?」

幸子「えぇ、カワイイボクにかかれば一瞬でしたよ」

P「そうか、流石だな」

幸子「そういえば、ちひろさんに招き猫見せて貰いました」

P「そうか」

幸子「それで…ボクが見たのと違ったんですけど」

P「見間違いじゃないのか?」

幸子「そんなことはないと思いますけど…挙げてる手が違いましたし」

P「お、そうなのか」

幸子「はい。それに色も違いましたし…」

P「完全な別物だな」

幸子「ちなみに挙げてる手で意味が変わったりするんですか?」

P「知らないなぁ。頼子とか、文香なら知ってるんじゃないかな。今度聞いてくよ」

幸子「ありがとうございます」

P「あ、そうだ。卯月達のラジオで幸子がゲストに決まったよ」

幸子「そうなんですか?」

P「うん。いきなりで悪いけど平気か?」

幸子「も、勿論ですよっ!」

P「流石幸子だな。ってこう考えると幸子だけが見た招き猫ってご利益あるのかもな」

幸子「そう考えると嬉しいですね。やっぱり、猫もカワイイボクに懐くんですね」ドヤ

P「ははは」

幸子「む。その反応は信じてませんね」

P「それじゃ、おやすみ」

幸子「はい。ありがとうございます。おやすみなさい」


幸子「ラジオですか…やった♪」

幸子(ボクのカワイさを電波に乗せて伝えることが出来るなんて最高ですねっ!)

翌日

事務所

P「あ、鷺沢さんちょっと…」

文香「はい…。なんでしょうか?」

P「招き猫って挙げてる手で意味が違ったりしますか?」

文香「唐突ですね…。はい。恐らくは。片方がお金を、反対はお客さんを招いていた気がします…」

P「そう聞くと、どっちも欲しくなりますね」

文香「両手を挙げてしまうと、お手上げになってしまったはずなのでそれは…」

P「言われてみれば、そうですね」

文香「そう…ですよね」

P「……」

文香「……?」

P「あ、質問はそれだけです。ありがとうございます」

文香「あ…でしたら、一つだけ私から…いいですか?」
P
「はい。どうぞ」

文香「これなんですけど…読みましたか?」

P「えぇ、少し前に読みましたけど」

文香「よかった…! あ、あの…お時間があればでいいんですが…」

P「はい」

文香「その…お話をしたいんですけど…だめですか?」

P「いえ、別に構いませんけど。お昼休みにでもどうですか?」

文香「はっ、はい…!ありがとうございます」

P「いえいえ。そういう話をする機会が少ないのでこっちも嬉しいです」

文香「そ、そんな、その…どうもありがとうございます」カァァ

文香(まだ、心臓がバクバク言ってる…)

P「話は変わりますが、どうです?そろそろレッスンでも受けてみますか?」

文香「あ、はい。その…個人的には、年が近い人でも喋れるようになった…と思いますので」

P「それは良かったです」

文香「も、勿論、まだ…完全に目を合わせて話せるというわけではないですけど…」

P「それでも大分進歩ですね。それじゃ、次から入れておきます」

文香「はい。お願いします。あ、お茶でもいかがですか…?」

P「頂いていいですか?」

文香「はい…喜んで」ニコッ

すみません。
中座します。

幸子「結局、あの招き猫はなんだったんでしょう…」

幸子(野良なんてあり得ませんし)

ガチャ

幸子「お疲れ様です」

文香「あ…お疲れ様です」

幸子「お疲れ様です。って二人でなにしてるんですか」

文香「えっ…。あ、こ、これは違いますっ!」バッ

幸子「あ、いえ、そこまで反応されなくても。隣に座ってたくらいで」

文香「ううう…」カァァ

P「お、幸子か。そう言えば聞いておいたぞ」

幸子「はい?あぁ、招き猫のことですか?」

P「そうそう」

文香「あ、輿水さんの質問だったんですね…」

P「そうだな。えーと、確か――」

幸子「なるほど…」

P「ちなみに幸子が見たのはどっちなんだ?」

幸子「あまり自信がないんですが、左だと…」

P「そうなのか。ちなみに色に意味はあるんですか?」

文香「ない…ということはないでしょうが…。流石にそこまでは…すみません」シュン

P「あ、いや、別にそこまで落ち込まないで下さい」

幸子「そ、そうですよ」

文香「いえ…そこまで落ち込んでいる…というわけでは」

幸子「な、ならいいんですけど」

ガチャ

泰葉「お疲れ様でー…って三人で何してるんですか?」

蘭子「闇に飲まれよーっ!む、怪しげな密会か。黒き――」

P「お、泰葉と蘭子か。おはよう」

泰葉「おはようございます。蘭子ちゃんじゃないですけど、もしかして…秘密のお話でもしてるんですか?」ジー

蘭子「…はっ!まさか、本当に悪魔復活の儀式を…!」

P「別にそういうわけじゃないよ」

泰葉「ならいいですけど…」

蘭子「ふん。残念だわ」

文香「え?え?」

文香(えっと、悪魔がどうとかって…どういうことなんだろう?)

P「そう言えば、この間の写真出来てたぞ。見るか蘭子?」

蘭子「み、見る…!うわぁ」キラキラ

幸子「いつのですか?」

P「この間雑誌の撮影があってさ。その時のだよ」

泰葉「あ、猫ちゃんがいる。可愛いー」

蘭子「やはり、黒猫は凶兆の象徴。この魔王に相応しい存在と言えようぞ」

P「梟でもよかったんだけどな」

蘭子「…う。出来れば…それは遠慮したい…です」

文香「あぁ、なるほど…合点がいきました」

泰葉「何がですか?」

文香「神崎さんがどういう人なのか」

蘭子「なんと。我が真意を理解してくれるのか新たなる同志よ!」

文香「えっと…その…ちょっとだけなら」

幸子「あ、そう言えば、黒だったかもしれないですね…」

事務所
幸子「あ、いました。あそこに」

泰葉「え、どこでしょうか?」

幸子「あの資料棚の上です」

文香「どこ…でしょうか?」

幸子「見えないんですか?」

P「見えないな…」

蘭子「不可視の黒猫かっ!?」キラキラ

幸子「じっくり見て見ると招き猫じゃない気が…」

P「そうなのか?」

幸子「普通に黒猫っぽいんですよ…」

泰葉「何だか、ちょっとだけ縁起が悪いですね」

泰葉「幸運を呼ぶ招き猫が縁起が悪い黒猫だったなんて」

幸子「そ、そうですね」

幸子(皆、見えてないからボクがなんとかしないと)ジー

幸子「……」

P「何もしてこないんだったら気にしなくていいぞ幸子」

幸子「そうですか?ならいいですけど」

蘭子「黒猫か…見たかったなぁ…」ボソ

P「また、撮影で一緒に撮って貰えばいいじゃないか。そう言えば、皆いつ頃帰るんだ?」

泰葉「あ、それじゃ、そろそろ…」

幸子「ボクもお願いしますね」

蘭子「それなら私も…」

文香「あ、最後でいいので…出来たら」

P「分かった。それじゃ送っていくな」

車内

幸子「そう言えばちひろさんは今日はお休みなんですか?」

P「うん。理由は聞いてないけど休むってさ。まぁ、電話はこっちに転送するから問題ないんだけど」

幸子「ならいいですけど」

文香「……」

文香(久々にこんなに喋った気が…します)

蘭子「同士泰葉よ。この画像なんだが…」

泰葉「あ、可愛い。お人形さんですねー」

蘭子「この間ふと立ち寄った店で――」

P(二人共仲良くなったなぁ…)

泰葉「それじゃ、ありがとうございます」

蘭子「闇に飲まれよっ!」

文香「闇に…?」

P「お疲れさま」

幸子「それじゃお疲れ様です」

P「あぁ、じゃあな。もし、なにかあったら教えてくれ」

幸子「はい。それでは」

ニャー

P(ん?今何か聞こえた気が…)

文香「…お疲れ様です」

P「それじゃ、最後になっちゃいましたが、送っていきますね」

文香「はい…わざわざすみません」

P「いえいえ、気にしないで下さい」

文香「…やはり、プロデューサーさんや頼子さんと話すのが一番落ち着きます…」

P「まぁ、付き合いがそれなりに長いですからね」

文香「それも…そうですね」

文香「しかし…聞いた話通りですね」

P「何がですか?」

文香「とても…楽しい事務所です」

P「それはよかったです」

文香「黒猫は…正直私も見たかったです」

P「今度蘭子と二人でペットショップでも行って来たらどうですか?」

文香「ぷ、プロデューサーさんも一緒だったら…行きたい…です」

P「そうですか?」

文香「は…はい」

P「そうですね…。今度時間があれば」

文香「そ、それは分かっています。皆さんとの兼ね合いもあるでしょうし…」

文香「そもそも…皆さんのプロデューサーさんですし…」

P「そうですね。皆の仕事次第ですね」

文香「そ、そうです。そうなんですっ」

P「どうかしましたか?」

文香「い、いえ…なんでも」

文香「そう言えば…少し考えたのですが」

P「何をですか?」

文香「不可視の黒猫のことです」

P「あぁ、幸子だけが見える招き猫のことですか?」

文香「…はい」

文香「…猫又ではないでしょうか」

P「猫又ですか?」

文香「はい。猫又です。あの尻尾が二つに分かれている」

P「妖怪の類じゃないでしたっけ」

文香「文献には…そう書かれていると思いますよ」

P「どんな妖怪でしたっけ?」

文香「そうですね…古今著聞集などには人を騙すなど書かれていた気がしますが…」

P「あまり穏やかじゃないですね」

文香「…すみません。でも…何もしてこないみたいですし…」

文香「あ、あの…不安にさせるようなことを言って、すみません」

P「いえ、平気ですよ」

P(しかし、猫又か…)

幸子の部屋

幸子「全くなんだったんでしょうね…」

幸子「見間違いってことはないでしょうけど…」

幸子「やっぱり、ボクがカワイイせいで不思議なものが見えてしまうんですかね」

幸子「…流石にそれはないですね」

幸子(自分で言ってて悲しくなりましたし…)

幸子「明日は…お昼からお仕事ですね」

ニャー

幸子「……ん?」

幸子(猫の鳴き声?)

幸子「まさか…ね」

幸子(もしかして…どこかの棚の上とかに)キョロキョロ

幸子「あ…」

幸子(いた…)

幸子「ど、どうしましょう。Pさんに電話すべきなんでしょうか。いや、でも、もしかしたら迷い込んで…いや、鍵は全部閉めてましたし…」

幸子「と、とりあえず…猫じゃらしの代わりになる物とかないかな…」



幸子「よしっ、これで…。ってどこ行ったんでしょう」

幸子「何だか気味が悪いですね。今日は早く寝ましょう」

幸子(そういえば、黒い体に黄色い目ってボクの次くらいにはカワイイですね…)

翌日

事務所

幸子「おはようございまーす」

ちひろ「あ、おはよう幸子ちゃん」

幸子「おはようございます。あれ、Pさんは?」

ちひろ「皆の送り迎えに行ってますよ」

幸子「そうですか」

ちひろ「何か御用があったんですか?」

幸子「いえ、そういうわけじゃないんですけど」

ちひろ「そうですか」

幸子「はい」

ちひろ「そう言えば、雨まだ降ってませんか?」

幸子「えぇ、平気でしたよ。ちょっと雲行きが怪しいですけど」

ちひろ「雨降らないで欲しいですよね…」

幸子「そうですね」

幸子「あ…」

ちひろ「どうかしましたか?」

幸子「いえ、なんでもないです」

幸子(またいた…)

幸子「と言うか、尻尾が二本もあるんですね」

幸子(何か特別な猫なんでしょうか…)

ちひろ「あ、黒猫さんですね。どうしたんでしょう」

幸子「え。見えるんですか?」

ちひろ「見えるもなにもここにいるじゃないですか」キョトン

幸子「ですよね」

幸子(良かった…ボク以外にも見える人がいて)

ちひろ「私が招き猫を買った時からいるんですけど、一緒に付いてきちゃったんですかね?」

ニャー

幸子「ど、どうなんでしょう」

ちひろ「あ、もしかして、招き猫って言ってたのはこの子のことですか?」

幸子「えぇ、そうなんですよ」

フー

幸子「あれ?」

ウー

幸子「何かもの凄い怒ってませんか?」

ちひろ「あ、本当ですね。どうかしたんですかね」

幸子(何か言おうとしているんですかね…?)ジー

ちひろ「あ、危ないですよ」

幸子「いや、でも…」

フー

幸子「あっ!」

ちひろ「どこか行っちゃいましたね…」

ちひろ(消えたって言うんでしょうか)

幸子「窓に傷があるんですけど」

ちひろ「あっ!もう…こういうのって何となるのかなぁ…」

幸子(何て書いてあるんだろう…)

幸子「どこかで見た覚えが…」

ちひろ「あ、これ買ってくれば何とかなりそう。プロデューサーさんにお願いしておこうっと」

幸子「あっ!」

ちひろ「ど、どうかしたんですか?」

幸子「風、龍、曻、疾、厺って書いてあるんですけど」

ちひろ「難しい漢字ですね…」

P「お疲れ様です」

ちひろ「えぇ!?もう帰ってきたんですか?」

P「え、何か不味かったですか?」

ちひろ「ちょっと補修材を買ってきて貰おうかなって思ってたんですけど…」

P「補修材?何か壊したんですか?」

ちひろ「えーと…話すとややこしいんで省略しますけど、窓にキズが…」

P「あらら…何か書いてあるんですか?」

幸子「えーと、どこかで見たことがあるんですけど…」

P「どういう意味なんだろうな」

周子「お疲れ様でーす」

杏「もう、無理…」

P「お、二人共お疲れ」

杏「飴くれ」

P「ほれ」

杏「あん。んっ!?これチョコじゃん」

P「あ、間違えた。許してくれ」

杏「口の中ベタベタになるから好きじゃないんだよねー」モグモグ

周子「その割にはしっかり食べてるよね。ってか、そんな所でなにしてんの?」

P「あぁ。ちょっとな」

周子「ふぅん?」

周子「なんて書いてあるかってのを考えてるんだね」

P「そういうことだ」

周子「アタシはパスだな。シューコはそういうこと考えるのは得意じゃないから」

杏「なにしてんのさ」

周子「あ、そうだ。杏ならこういうの得意なんじゃないの?」

杏「いや、そんなことないよ。だって杏は杏だし」

周子「いや、意味分かんないだけど…」

幸子「あ、分かりました」

P「お、流石だな」

幸子「フフーン。こんなのカワイイボクに掛かればお茶の子さいさいですよ」ドヤ

幸子「龍が昇る風と言うのは、竜巻のことじゃないでしょうか」

P「なるほどなぁ…」

幸子「それで、後ろの二文字は早く去れって書いてあるんじゃないでしょうか」

周子「おー、すごーい。流石だね」

幸子「当然ですよっ!」

幸子(まぁ、先日宿題で見ていたからなんですけどね)

クイクイ

杏「どうでもいいんだけどさー」

P「ん?」

杏「纏めると、竜巻が来るから早く逃げろって言ってんじゃないの?」

P「あ」

ちひろ「そう言えばそうですね」

周子「でも、まだ、これが本当か分からないでしょ?」

幸子「多分…本当の気がします」

P「そうなのか?」

幸子「えぇ、はっきりは言えませんが、その…ボクを信じてくれませんか?」

周子「やけに自信満々だねー」

幸子「…えっと、そのですね…」

幸子(猫が書いたなんて言ったら信じて貰えないでしょうし…えーと…)アタフタ

P「分かった。とりあえず、窓から離れた場所に避難しよう。万全を期して荷物も持って」

周子「んー了解。杏、行くよ」

杏「ソファごと動かしてくれるといいなって」

P「ちゃんと動け」ヒョイ

杏「あ、これ楽ちんだ。それいけー」

ちひろ「一応、パソコンの電源切って、書類仕舞っておきました」

P「すみません」

幸子「あの…もし、これで何も起きなかったら…その…」

P「別に何もないさ。気にするなって」ナデナデ

幸子「あ、はいっ。ありがとうございます」

ちひろ(いいなぁ…)

ロッカー室

周子「何も起きないね」

杏「杏は寝るから何かあった起こして」

P「そのまま永眠することもあるがいいな?」

杏「…うーん。しょうがない。それじゃ、ちょっとだけ起きてるよ」

周子「けど、ロッカーだと狭いし、何も出来ないんだよね」

ちひろ「あ、そう言えば、他の皆には…」

P「さっき電話しておきました。皆、安全な所に避難してくれたそうです」

周子「仕事が出来る男は違うねー」

杏「杏のことも養えー」

P「お前は自分の印税で生きていくんだろうが…」

ガシャーン

幸子「ひっ!」ギュ

ちひろ「きゃっ」ギュー

周子「ひゃっ」ビクッ

杏「おおお?」

P「大丈夫か!?」

幸子「な、なんとか」

ちひろ「は、はい」

杏「うわー」

周子「杏もう平気だよ」

杏「あ、そ?しかし、なんの音だろ?」

幸子「あの、Pさん申し訳ないんですけれど…」

P「あ、いいぞ。暫く掴まってて」

幸子「ありがとうございます」ギュー

ちひろ「あ、出来たら私も…」オズオズ

周子「アタシも面白そうだから…いい?」

杏「モテモテだねー…」

P「治まったかな…?」

ちひろ「みたいですね」

幸子「一体何があったんでしょう…」

周子「うわっ…なにこれ」

P「どうかし…うわぁ…」

P「ガラス割れてるな…」

ちひろ「幸い、他に目立った傷はないですけど」

ピリリリ

P「あ、ちょっと出てきます」

P「はい。こち――」

菜々『だ、大丈夫でしたかっ!?』

P「あ、ナナさんですか?」キーン

菜々『はい、ナナです。Pさんは、皆は大丈夫でしたか?』

P「えぇ、なんとか」

菜々『よ、よかったぁ…』ハァ

菜々『速報で流れて来たんですよっ。場所見てると事務所の辺りだなぁって思ったらいても立ってもいられず!』

P「ありがとうございます。そちらは大丈夫ですか」

菜々『えぇ。だって、ナナはもう、ち…じゃなくて、ウサミン星ですから』

P「なるほど。そちらも気を付けて下さいよ?」

菜々『はい。分かりましたー。それでは失礼しまーす』

P「ふぅ…。だ―」

ピリリリ

P「今度は誰だ?」

P「はい。こち――」

楓『大丈夫でしたか?』

P「その声は楓さんですか?」

楓『えぇ、その通りです』

P「平気ですよ。窓がちょっと割れたくらいで」

楓『それは平気なんでしょうか…』

P「平気ですよ」

楓『それならいいですが。それでは、かみのみー』

P「相変わらずだな…」

P(まぁ、らしいと言えばらしいか)

事務所

P「…ふぅ」

ちひろ「あ、お疲れ様です。どこからですか?」

P「ここにいないアイドル全員から連絡が来ましたよ。心配してるようでした」

周子「そうなんだ。うわ、結構飛び散ってるなぁ…」

P「気を付けろよ?」

周子「ちゃんと、箒とチリトリ使ってるし」

杏「杏も危ないからソファで寝てるし」

P「お前も何かしろよ…」

周子「それにしてもさ、よく文字が書いてあるなんて分かったね幸子ちゃん」

周子「もう、割れちゃって見えないけど多分注目してなかったら見えないレベルだと思うんだけど…」

幸子「…猫がいたんです」

周子「猫?あの、にゃーって鳴く?」

幸子「はい。まぁ、尻尾が二本あったり、招き猫のポーズを真似ていたりしたんですけどね」

ちひろ「実は、私もそれを見てまして…」

P「それで、猫がいきなり消えたから、そこを見たら何か書いてあったって感じか?」

幸子「そうですね。そんな感じです」

周子「不思議なこともあるもんだねー。尻尾が二本もある時点で不思議なんだけど」

ちひろ「そうですね。中々可愛い猫ちゃんでしたよ」

P「幸子を助けてくれたのかもしれないな」

幸子「なんでボクなんかを?」

P「そりゃ、幸子がカワイイからだろ」

杏「…んふっ」

幸子「なっ、そ、そういうことはですね。場所と時間を…」カァァ

周子「Pさん言いたいことは分かる。だけどねぇ…」

ちひろ「朴念仁ですねぇ…」

ちひろ(いつか刺されますよ…)

P「とりあえず、アイドルは、今日はもう帰ろう。ちひろさんは俺と補修でもしますか」

ちひろ「そうですね。何か盗られたら嫌ですし…」

P「もし、業者の方に連絡がつくんだったらしてくれますか?」

ちひろ「あ、はい。それでは、お気を付けて下さい」

P「はい。ニュースを見る限りもう治まったみたいですけど一応注意しますね。とりあえず、順番に送っていくから」

幸子「あ、どうもありがとうございます」

周子「ありがたいけど車とかって大丈夫なのかな?」

P「多分傷だらけだろうな…」



P「予想通りだけどちょっとだけ悲しいな」

周子「まぁ保険が利くかもしれないし」

杏「あんまり大きくなかったみたいだね。ちょっと杏たちの所みたいに窓が割れただけみたいだし」

幸子「それは不幸中の幸いでしたね」

P「道路も傷んでないみたいだし何とか走れそうだ」

杏「家に着いたら起こしてねー」

P「はいはい…」

車内

P「そういえば、その猫はもういないのか?」

幸子「そう言えば…見ないですね」

P「本当に幸子を助けてくれたのかもな」

幸子「そうなんですかね…」

P「招き猫が招いたのは幸子を助ける猫又だったのかもな」

杏「それじゃ、猫招きだよね」



幸子「それじゃあ、ありがとうございました」

周子「じゃあねー」

P「お疲れさま」

周子「しかしまー、中々凄かったよね」

P「流石に周子でも怖かったか?」

周子「んー、どうだろうね。てか、流石にってなによ。あたしも女の子なんだけど」

P「幸子が降りてからちゃっかり助手席に来たから何かあったのかと思ってさ」

周子「そうだねぇ、正直ちょっと怖かったかも。あんな体験初めてだったし」

P「怖かったのか」

周子「まぁ、ほんのちょっとね。杏とか見たら気が抜けちゃったけど」

P「杏は動じなかったな本当に」

周子「…そう言えばさー」

P「どうした?」

周子「鷺沢さんだっけ?あの人いつからレッスン来るの?」

P「今度から徐々に混ぜていこうかと」

周子「ふーん。そうなんだ。てっきり、事務員になるのかと思ってさ」

P「流石に事務員のスカウトまでやってないって。…あ」

周子「どうしたの?」

P「そう言えば、あと少しで誕生日だった気がする」

周子「へー。それじゃ、正式なデビュー記念も兼ねてレッスンを始めた日にすればいいじゃん」

P「そうだな」

周子「しかし、よくもまぁ、色んな子をスカウトしてくるね」

P「怒ってるのか?」

周子「別に。そういうわけじゃないけどさ。ただ…ちょっとね」

P「ん?」

周子「京都でアタシがお母さんと喧嘩しないで、家飛び出さなかったらここにはいないじゃん?」

P「まぁ、そうだな」

周子「だから誰でもいいのかなとは思う時がなくはないよ」

P「そんなことはないけどな」

周子「分かってるんだけど、なんて言ったらいいか…分からないや」

杏「そんなこと言ったら杏は、宅急便の人が間違えなかったらここにいないで、家で寝てるよ」

周子「あ、起きてたんだ」

杏「まぁ、微睡んでたけどね。それに、もしかしたら熱出して孤独死してたかも」

P「そんなこと言ったら俺だってちひろさん達に会わなかったらこの仕事してないしな」

杏「ふーん。そうなんだ」

周子「そういや、そういう話は聞かないよね」

P「まぁ、大して面白くないしな」



周子「それじゃ、ありがと」

杏「家まで送ってくれればいいのに」

P「俺はまだ仕事があるからな。それじゃ二人共お疲れ様」

事務所

P「お疲れ様です」

ちひろ「あ、お疲れ様です。とりあえず業者の方には連絡付きまして二時間後には来てくれるそうです」

P「そうですか」

ちひろ「とりあえず、どうしましょう。新聞紙で補修しておきますか?」

P「そうしましょうか」

ちひろ「とりあえず準備だけしておきました」

P「流石です」

ちひろ「当然です。事務員なんで」ドヤ

P「しかし、不思議な出来事でしたね」

ちひろ「ですねぇ」

P「しかし、尻尾が二本あったって本当ですか?」

ちひろ「はい。そう見えましたよ」

P「そうですか」

ちひろ「妖精か何かだったんですかね」

P「さぁ…そう言えば、幸子から招き猫を貰ったんですよ」

ちひろ「え、そうなんですか?」

P「まだ、箱から出してないんですけどね」

ちひろ「そうなんですか。それじゃ、飾っておきましょうか」

P「そうですね。えーと…こっちにあ。あった」

P「よっと…。あれ?」

ちひろ「どうかしましたか?」

P「いや、なんでもないです」

ちひろ「なんだか私のと比べてスリムですね」

ちひろ(昨日見た猫に似ている気がしますが気のせいですかね…?)

ちひろ「どうせだったらプロデューサーさんの机の両脇に置いておきましょうか」

P「なんだか、違和感ないですか?」

ちひろ「言われてみればそうですね。それじゃ、纏めて置いておきますね」

P「せめてそうしてください」

ちひろ「あれ?この招き猫、どうやら尻尾が二本あるみたいですね」

P「不思議ですねぇ」

ちひろ「そうですね」

事務所

業者「これで平気だと思います」

ちひろ「大変な時期にありがとうございます」

業者「いえいえ。それでは失礼します」

P「ありがとうございました」

バタン

ちひろ「ふぅ。終わりましたね。これで帰れます」

P「もう外も暗いし送っていきますよ」

ちひろ「あ、すみません。お願いします」

P「いえいえ。それでは行きましょうか」

ちひろ「あ、はい」

翌日

事務所

P「おはようございまーす」

P(まぁ、まだ誰もいないわけだけど)

P「しかし、猫又か付喪神か幻か知らないけどありがとうございます」

ニャー

P「…ん?」

P(まさかな…?)

ガチャ

頼子「おはよう…ございます」

文香「…おはよう、ございます」

P「お、二人一緒か。おはよう」

頼子「えぇ…そこで一緒になりまして…それより、大丈夫でしたか?」

P「あぁ、見ての通り業者さんに直して貰ったよ」

文香「あ、招き猫を飾ったん…ですか?」

P「ん?あぁ、ちひろさんのと幸子のなんだけどな」

頼子「そうなんですか。…ただどっちも左手というのが気になりますね」

P「やっぱり、二個置くなら対の方が見栄えはいいよな」

頼子「はい…。でも、そこまで分かっているのに敢えてということは何かしら理由が…あることですから…構わないと」

P「それはよかった。黒は縁起が良くないからとか言われたらどうしようかと」

頼子「…黒は寧ろ縁起がいいと思いますが…?」

P「そうなのか?」

頼子「元々黒猫は、夜でも目が見えるので…「福猫」として魔除けや幸運の象徴とされていますし…」

P「そうだったのか」

文香「それにしても…黒い方は笑っているように見えますね…」

P「言われてみれば確かに」

文香「物には神が宿るといいますし…案外――」

ガチャ

幸子「おはようございまーす。今日もいい天気ですね。ボクが益々カワイくなってしまいますね」

P「お、幸子おはよう」

幸子「おはようございます。あ、飾ったんですね」

P「あぁ、どうだ?」

幸子「悪くないんじゃないですかね」

P「あ、そう言えば、幸子は朝から仕事だったな。ちひろさんが来たら送っていくよ」

幸子「あ、どうもありがとうございます」

P「それと、今日から鷺沢さんもレッスン始めるから、頼子は面倒じゃなかったら色々教えてやってくれないか?」

頼子「…はい。構いませんよ」

文香「よろしく…お願いします」

ガチャ

ちひろ「おはよう…って皆さん早いですね」

P「あ、ちひろさん来たみたいだし、幸子、行くか」

幸子「はい。そうしましょう」


車内

幸子「そう言えばですね」

P「うん」

幸子「あの招き猫のことを両親に聞いてみたんですが、なんでも大分前からウチにあったそうです。左手はお客さんを招くってことらしくて、ボクの仕事が増えるようにって事務所に」

P「なるほどな」

幸子「まぁ、その効果はあったみたいですね」

P「そうだな。でも、その効果もあるかもしれないけど、それに加えて幸子が一生懸命だから今の結果があるんだからな」

幸子「それは勿論そうですよっ!知らなかったんですか?」

幸子「ボクは、いつも一番カワイくなければいけませんからねっ!」ドヤ

P(それが許されるのも実力が伴って来てるからなんだよな…)

幸子「…あ」

幸子(もしかして、あの日、あの時Pさんがボクの家の前を通ったのも、あの猫に招かれたのかも…)

P「どうかしたか?」

幸子「な、なんでもないです。そんなことより、ボクはこのまま一番になるんだからちゃんと見てて下さいよっ!」

P「あぁ、ちゃんとプロデュースで証明してやるって」

幸子「ボクがカワイイってことを見せつけて、Pさんの視線を独り占めしちゃいますから、覚悟しておいて下さいねっ☆」ドヤ

本文は終わりです。

見て下さった方ありがとうございました。

一応解説です。
今回は、江戸時代の浮世草子である青木鷺水『新玉櫛笥』の一節より引用しました。

その一説を要約します。
人々が洞窟にいた時、突然入口に恐ろしい熊が現れました。

酷く怒っており、今にも中の人々を喰い[ピーーー]勢いでした。

皆の気が動転する中、一人の若者が自分を犠牲にして皆を逃がすという選択をしました。

そして、熊の元に飛び出すと熊は彼の服を掴んで大岩の上に置きました。

この世の終わりだと思った次の瞬間、その洞窟から龍が現れ、そのまま天に昇っていきました。

振りだした雨はいつの間にか止んでおり、熊の姿を探したが姿はありませんでした。

そして、彼らがいた洞窟は跡形もなくなっていました。

元々龍が天に昇る時は気候が変化するという前兆があり、それを察知した熊は彼らを助けようとしたのでした。

しかし、言葉の通じぬ熊に脅えるばかりで出て来ませんでした。

勇気を持って行動した者のみが救われるという物語です。

招き猫や、猫又に付いては恐らく説明は不要でしょうから省きます。

付喪神は何年も使われたモノはいつしか神様になるというものです。

何年も生きると猫も猫又になると考えると近いものがあるかもしれません。

何かあれば答えられる範囲で答えます。

それでは失礼しました。

おっつおっつ。
しかしなんでちっひにも猫が見えたんだろ。

>>93
そうですね。とりあえずは、波長があったとでも考えておいて下さい。

あ、>>90の殺すが消えてますね…。

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