魔王「お前の泣き顔が見てみたい」(1000)

魔王「・・・おかしい」

側近「・・・・・・そうですね」

勇者が来ない。
30年に一度、この魔界に降り立ち、鎧を全身を同胞の
血で濡らし、この地に暴虐を巻き散らす化け物ーーー勇者という人間。

その畏怖の存在は、20年前に訪れるはずだった。

魔王「何も起こらなければ良いのだが・・・」

側近「・・・というかあと何回このやり取りすれば気がすむん
  です?」

魔王「む、良いではないか。こうしないと気が緩んでしま
  ってなぁ・・・・」

5年前に先代魔王の後を継いだ魔王は、勇者という化け物
に会った事がない。勇者について知っていることは、
自分を殺すことだけに命をかけ、魔物の滅亡を望む人間
という事だけだ。

勇者が来ないということに、不安だけでなく幾らかの安堵が隠れていることも
確かだった。

勇者「・・・あの~、すみません」

魔&側「「ーーーーーッ!!!」」

そこに立っていたのは、みすぼらしい佇まいの人間の男だった。
旅人の服を身に纏い、首につけている黒い首輪は目につい
たが、杖代わりに手に持っているのはただのヒ
ノキの棒だけで、武器らしいものは何も持っていない。
顔は魔王の種族の中でも類を見ない程整っていたが、全体として
まとめるとやはりただの貧相な人間だった。

魔王「・・・何者だ、貴様。」

勇者「一応、勇者やってます」ニコッ

魔王「笑えない冗談だな」

そんなわけあるか、純粋にそう思った。伝承の勇者とこの眼で
見る勇者とは明らかに違いがあったからだ。
殺気を感じない、いや、殺気どころか覇気すら感じない
。というかそもそもその風格がこの男には存在しなか
った。こんな弱そうな人間が勇者のはずがない。

勇者「うぅッ・・・・。なんか凄いけなされてる気がする・・・」

魔王「・・・本当に貴様は勇者、なのか?」

勇者「やっぱりそうですよね・・・、疑問系はいっちゃいま
  よね・・・でも勇者なんです・・・、ごめんなさい」

うん、やっぱりこいつは勇者ではないな。
と、ここで我と取り戻した側近が叫んだ。

側近「勇者ッ!よくもぬけぬけと一人でここでッ!
   死んでもらいます!!」

魔王「待て」

側近「魔王様ッ!?」

魔王「よく見ろ、こんなナリの勇者がいるか。第一
  弱そうだ」

側近「そんな馬鹿なことが・・・・あれ?」

その勇者は「やっぱり納得しちゃいますよね・・・ごめんなさ
い・・・弱そうで、勇者に見えなくて・・・」とかぶつぶつ言って
背中を小さくしていた。

側近の方も我を取り戻すのに時間がかかりそうだ。

魔王「・・・で、だ。人間、お前はこの魔界の中心に何を
  しに来た。話せ。」

勇者「話が早くて助かります!用件というのは
  ですね・・・」

この言葉から、全てが始まったのだ。

勇者「雑用でも何でも良いのでこの城で働かせてもらえま
 せんか?」ニコッ

魔&側「・・・ぇぇええええッ!!?」

魔王「・・・こほん、だが勇者、お前は私の同胞を散々殺して
  この城までやってきた、もちろんこの城の者達もな。
  そんな道理は通らない事ぐらい貴様にもわかるだろう・・・?」

勇者は弱弱しい事で呟いた。

勇者「でも僕、魔物は一度も殺したことなんかないんですけど・・・」

魔王「何・・・だと・・・?」

側近が復活した。

側近「大体、この城の頂上まで来るに一回も戦わずに来れる
   なんてありえないじゃないですか!」

勇者「ああ、それは魔法でちょちょいと」

何のこともないかのように「難しい事じゃないですよ」と
付け足した。

側近「そんな馬鹿な事がッ・・・!」

魔王が片手で制す。

魔王「貴様のいう事が本当ならば確かに勇者なのかもな」

側近「魔王様!?」

魔王「(まぁ、待て・・・、仮にこの人間が勇者ではないとしてもこの私に存在を感じ取らせないほどの魔法使いだ、
  ・・・下手に手を出せばこちらが殺られる)」

魔王「(それに勇者だとしても敵意はないようだ、何事もないのであればそれに越した事はない。
  私達は戦いを望んでいるわけではないのだから。)」

側近「(・・・・それは・・・)」

勇者「あの・・・それで僕はここで働かせてもらえるのでしょうか・・・?」

それに魔王は応じる。

魔王「ああ、許可しよう」

魔王「当然、貴様が勇者だという事は皆の者にはふせる」

言う必要はないと思うが、と念のために確認をとる。

勇者「僕はここで働ければ何でもいいですよ?」

側近「・・・私はそんなの認めたくありません・・・」

魔王は呆れながら

魔王「私とてこんな事は不本意だが、仕方のない事だ」

と諭した。

勇者は具合が悪そうにあはは、と乾いた笑みを顔に
浮かべた。

魔王「さて、勇者よ。ここで働くのならこの城の
  者に挨拶でもしてきたらどうだ」

勇者「それはそうですね。では失礼します」

魔王「・・・さて、どうしたものか」

側近「・・・あの者は本当に勇者なのでしょうか?」

魔王「それは私にもわからん。ただ、わかるのはあの人間
  が私とは比較にならない程の魔力を持ち、敵意のかけらさえも
  持っていないという事ぐらいか」

側近「私もあのような勇者は見たことがありません」

側近「これまでの勇者は皆、殺気と狂気に満ち溢れていました
   から・・・・」

魔王「とりあえず今のところは雑用・・・という形を維持する
  しかないな」

勇者が魔王の雑用など聞いたこともないがな、と笑う。

側近「もう、笑っている場合じゃないんですよ?」

魔王城の厨房室に鈍い音が響く。

勇者「うぅ・・・、いたた・・・」

勇者が頬をさすりながら床にへたりこんでいた。

厨房室の魔物「人間臭ぇっていってんだろ!まったく・・・
  なんで魔王様は人間なんか雇ったんだ!!」

勇者「あはは、それは色々ありまして・・・」

厨房室の魔物「笑ってんじゃねぇ、胸糞わりぃ!」バキッ

勇者「ふぎゃっ」

そこで声がかかる。

厨房室の魔物2「もうその辺でやめときなよ、その人間は
  何したってんだい?ただ挨拶に来ただけじゃないか」

厨房室の魔物「だがよ・・・」

どうやら止めてくれた魔物はこの魔物よりも上の立場に
あるらしい。

厨房室の魔物「ほら、あんたも今日のところは戻りな」

勇者「はい、ありがとうございます」

勇者「あの」

厨房室の魔物1「・・・なんだよ」

勇者「これから暫くの間よろしくお願いします」

厨房室の魔物1「・・・ッ!また殴れてぇのかテメェッ!!」ブンッ

勇者「わわっ、ごめんなさいっ」ダッ

厨房室の魔物1「ったくよぉ・・・」チッ

厨房室の魔物2「・・・何が不満なんだい?人間にしては
   いい奴じゃないか」

厨房室の魔物1「・・・うるせぇっ」

心底愉快そうな顔で魔王は勇者に尋ねた。

魔王「・・・で同じような事を延々と繰り返してきてその顔か」

勇者「とりあえず皆さんに挨拶できてよかったですよ~」

あはは、と何も無かったかのように笑う。・・・笑うその顔は不気味だが。

勇者「後半は一度も殴られないで挨拶を終えられたん
  ですよ?皆さんやさしいですね」ニコ

それはもはや殴るところがないからだ、というのが喉まででかかったが抑える。

魔王「フフッ・・・お前はなんだかおかしな奴だな」

勇者「それは光栄ですね」

勇者はそれに答えるように、恭しくお辞儀をしてみせた。

側近「・・・・こんな夜中に何をしているのですか」

勇者「こんばんわ側近さん。あ、あとすみません雑用なのに部屋なんか
   使わせてもらっちゃって・・・・」

側近「何か企んでいるつもりではありませんよね」

勇者「えっ、いやっ、そんな事全然考えてないですっ」

首をぶんぶんと振り否定するが、逆に肯定しているようにしか見えない。

勇者「窓から景色を見てただけですよぉ。ほら、魔王城ってすごく高いから
   とても綺麗なんですよね」

側近「それだけの為に起きていた、というのはやはりおかしいです」

勇者「うっ、・・・・本当の事を言えばですね。僕は寝る必要がないんですよ」

側近「・・・・どういう意味ですか」

勇者「いや、言葉通りの意味なんですけど・・・。他に意味なんてないから困りましたね」

側近「・・・わかりました、もう結構です」

勇者「あっ、側近さん」

側近「・・・・何か?」

勇者「おやすみなさい」ニコ

側近「・・・明日から早いので覚悟してください」


一ヶ月後

魔王「・・・相変わらずだな」

勇者「面目ないです・・・・」

勇者は申し訳なさそうに頭をさげた。

側近「全く・・・・!一ヶ月たってもロクに雑用さえできないなんて・・・この人間の食事、今日も抜こうかしら」

勇者「うえぇ・・・勘弁してくださいよ~」

もう三日間何も食べてないんですよ~、と泣きそうな顔で懇願した。

魔王「ふふ・・・、まぁそう邪険になるな。勇者が仕事できないのは城の者からはぶかれてるからという事ぐらい
  側近もわかっているだろう?」

あといい加減人間じゃなくて勇者と呼んでやれ、と微笑を浮かべながら付け足した。

側近「これのっ!どこがっ!勇者なんですか!?見てて情けないったらありはしませんよ!」

魔王「・・・それ以上言ったら勇者が小さくなりすぎて消えるぞ」

勇者の縮小具合は魔法でも使ってるのか?というくらい凄かった。

兵士1「失礼します。側近殿、お伝えしたい事が」

側近「・・・はい、今そちらに行きます」

魔王「・・・どうした」

兵士1「・・・」

兵士1は何も答えない。

魔王「・・・・ッ!!何がいう事があるならば、ここで言えば良い
  だろう!!」

魔王の体から怒りと共に魔力があふれる。
顔を歪ませ、その口から呻くように言葉が零れ落ちる。

魔王「・・・・・・・・そんな私が魔王の座に居座っているのが気にくわないというのか・・・!」

兵士1「ひっ・・・!・・・あの、この城の辺境の村に八岐大蛇が出現したと報告があったのですが・・・はい」

魔王「八岐大蛇、だと・・・!?いかん、すぐに戦闘の準備を!」

八岐大蛇、前触れもなく現れ、山の如き巨躯を動かす
毎に大地が震え、あらゆる魔法を無効化する龍の鱗を
身に纏い、八つの首を持つ、《災害》の二つ名を持つ魔物。

ーーーーそんな化け物が村を襲えばどうなるかは考えるまでもないだろう。

側近「行ってはいけません」

魔王「・・・邪魔をするな!」

側近「子供のような事を言わないでください。貴方様はこの先何百年のも間この魔界をお導きになるお方・・・、
  今ここでその命を危険にさらすわけにはいけません」

魔王「ここで命をかけずに・・・何が王だというのだ!!」

勇者「じゃぁ、僕がいってきましょうか?」

勇者は元の大きさに戻っていた。

魔王「・・・な、」

八岐大蛇は魔王ですら一人では苦戦を強いられる程の相手。
それをこの人間は気負いもなく口にしてみせた。

側近「八岐大蛇がどういう化け物なのかわかってるんですか・・・・?」

勇者「いや、全然知りませんよ?会ったこともないですし」

魔&側&兵「・・・・」

暫しの沈黙の後、魔王が口を開いた。

魔王「現状はどうなってる」

兵士1「はい、鳥族部隊が既に村に到着していますが、あと数時間ももつかどうか、というところでしょうか・・・・」

魔王「・・・よし、兵士1は城門に龍族、狼族部隊を配置させろ、・・・・指示は私が城門に到着したら下す。」

兵士1「・・・よろしいので?」

兵士1は側近の方に目を向ける。

側近「駄目に決まっているでしょう」

魔王「うるさい!私は行くと言ったら行くのだッ!」

勇者「あの~、無視ですか・・・?」

勇者がまた小さくなった。

側近「はぁ・・・、本当に魔王様は子供ですね」

その言葉に魔王は不敵に口を吊り上げ

魔王「はっ、私の5倍生きてるババアの側近よりはマシだ」

とはき捨てた。まるで心臓に杭を刺されたかのように
側近の表情が歪むが、その表情はすぐに凶暴な笑みに塗り替えられる。

側近「・・・・・・どうやらお仕置きが必要みたいですねぇ」

魔王「いつまで世話係顔してるつもりだ・・・?」

勇者「・・・ちょっと僕の話を聞いてくださいよ!」

泣きそうな顔で勇者が口をはさんだ。

魔王「・・・なんだ」

勇者「だから僕が行くって・・・」

魔王「ふざけている場合ではないのだ!」

この状況下でまだ戯言をぬかすとは、面白い奴だと
思ったが思い違いだったか、と内心で失望していると

勇者「・・・しょうがないですね」スタスタ

勇者は窓に向かって歩き始めた。

魔王「おい、ここは最上階だぞ。一体」

ーーーどれだけの高さがあると思っているのだ、と言う前に

勇者「じゃあ、いってきます」タン

いつもの穏やかな笑みを浮かべながら飛び降りた。

魔&側「・・・・ぇええええええええええ!?」

勇者「わぁ、高いなぁ」

絶賛落下中にも関わらず勇者はその笑みを崩さない。その右手に魔方陣が描かれる。

勇者「流石にこのまま落ちたら怪我しそうだしなぁ・・・、ほっ」

左手には異なる魔方陣が輝き、両手を下にかざす。
すると紋様と紋様が溶けるように交じり合う。

勇「急がないとね」

その瞬間、ドンッ という音と共に、勇者の体はかき消え
その軌道が二つの光の残像によって赤い空に描かれた。

側近「なんて速さなの・・・!?」

魔王「魔法の・・・同時発動だと!?そんなものは今まで聞いたことが・・・!」

本来魔法というものは一つの役割の為に《元始の魔王》が生み出した
ものだ。元々重複ができるように作られていない。

魔王「勇者・・・か。何て怪物だ」

側近「・・・魔王様」

魔王「・・・なんだ、話せ」

側近「歴史上の勇者の中でも・・・あんな事をしてのけるのはあの人間だけです」

鳥族1「早く地下に避難するんだ!」

村では民の避難が行われていた。地下があるのは勇者一行による
被害を最小限に抑える為のもので、日頃から訓練をしているからか
民の避難も速やかだった。

鳥族1「このままいけばなんとか被害は食い止められるか・・・・!」

仲間の悲鳴と共に大気を震わす程の咆哮が響き渡る。

鳥族2「ぐあああぁッ!!」

八岐大蛇「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

鳥族1「くッ、東ももう長くはもたねぇか・・・!早く、早く来てくれッ・・・・!!」

民の一人がこちらに必死の形相で走ってくる。

鳥族1「おい、何をしている!ここは危険だ!戻れ!!」

だがその民はその場を動かず上空を飛ぶ鳥族1に何かを叫んでいる。

鳥族1「チィッ・・・!!」スタン

鳥族1「何してやがる!!死にてぇのか!」

エルフの女「お願いです!助けてください!お願いです!」

鳥族1「あぁ、助けてやる!だから早く逃げろっつってんだろ!」

エルフの女「違うんです!娘が・・・娘がいないんです!」

鳥族1「何だと・・・!?おい、あんたどこから逃げてきたんだ」

エルフの女「ひ、東です!」

鳥族1「よりによって東かよ!あぁもう畜生!!」バサッ

翼に力を込める。

鳥族1「おいあんた!ガキは必ず助けてやっからあんたは逃げろ!」

エルフの女「はい・・・!あ、ありがとうございます!」タッ

鳥族1「畜生、畜生・・・!誰も死なしてたまるかってんだ
   よ・・・!罪のねぇ民が死ぬのは勇者でもうたくさんなんだっ!!」

鳥族1はさらにあらん限りの力を翼に込める。もう二度と
、自分の目の前で民を殺させない為に。

辺境の村ーーー東

殺戮の音が鳴り響く中、少女は家の影でうずくまって震えていた。

エルフ少女「みんな・・・怖いよぉ」ポロポロ

鳥族3「ぐはぁッ!・・・ここまでか・・・!」ドサ

鳥族4「くそッ、このままでは・・・!」

八岐大蛇「グルルル・・・・」

鳥族3の視界が少女の姿を捉える。

鳥族3「なんてことだ・・・・。おい!鳥族4!」

鳥族4「大声出すんじゃない!殺されるぞ!」

鳥族3「そんなのはどうでもいい!ここに・・・まだ民が残ってるんだ!!」

鳥族4「何だと・・・!?」

化け物にやられた同胞たちが視界に入る。

鳥族4「くそッ・・・・!まだ死ぬわけにはいかないじゃないか!!」

助けて、ぽつりと少女は呟く。
城の兵士の方が来てくれた。助かるかもしれないと思った。
でもそれは間違いだった。自分の為にあの化け物と
戦ってくれた兵士様は簡単に殺されてしまった。
死が自分に近づいてくる。その度に大地は震え、その八つの顎から炎が漏れる。
ーーーーー死にたくない。

エルフ少女「・・・助けて」

誰に助けを求めているわけではない、ただ言葉が漏れる。

八岐大蛇「ギャォオオオオオオオオオオオオオオ!」

その死は口から灼熱の炎を吐き出した。空気がちりちり
と焼けていく。死が少女の目前まで迫る。

少女はああ、本当に私は死んでしまうんだ、どうせなら
お母さんとお父さんにもっといい子にして喜ばせてあげ
たら良かった、と思う。その心の中はとても静かで、
別の自分が今の私を見ているようだった。

だが死が少女を飲み込むことはなかった。

勇者「・・・随分と遅くなってしまいました」

エルフ少女『もう行っちゃうんですか?』

勇者『そうだね』

エルフ少女『でっ、でもこれからも私達が危険にさらされた時は
      助けに来てくれるんですよね』

勇者『・・・ごめん、ずっと守り続ける事はできないかもしれない』

エルフ少女『・・・そうなんですか』

勇者『絶対なんて言葉は存在しないんだ、・・・わかってほしい』

エルフ少女『・・・じゃあ私、強くなります!勇者様が助けにこれなくても
      村を守れるように!』

勇者『ああ、お願いするよ。約束だ』ニコ

エルフ少女『はいっ!約束です!』

私はこの目の前に現れた人間を知っていた。3年前に
私達の村を訪れた勇者と名乗る人間、私が小さい頃に
森に迷い込んでしまって泣いていた時に出会った人間、

いつも私を助けてくれた人間。

でも村に来てから2年ほど経った頃に村を出たはずだった。
もう勇者様に助けてもらわなくてもいいように、私は強くなった筈なのに。
私の魔法はあの怪物には全然効かなくても、もう泣かないと約束したのに。

エルフ少女「勇者様、・・・私っ、約束・・・」ポロポロ

勇者「もう充分すぎるくらいだよ」

あの時と何も変わらない、私を安心させる笑みを向けて、

勇者「あとは僕にまかせて」

勇者様は怪物を見据えた。

誰か見てる人いるのかな・・・・

八岐大蛇「ギャオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

憤怒に塗られた咆哮が響き渡る。獲物を横取りさせた為
か、十六つの憎しみの目を勇者に向ける。

勇者「これならまだ助けられますね」

勇者はそれに見向きもせず、鳥族達を見渡す。
その時には恐るべき速度で鋼鉄の鞭の如き尻尾がうなり
をあげて迫っていたが、突然勇者の後ろに現れた魔法陣に容易く弾かれた。

勇者「僕は貴方を殺したくない」

微笑んでいるがその目には何の感情も映していない。

八岐大蛇「グルル・・・・」

軽く唸り声をあげ、ゆっくりを勇者の前に八つの頭を差し出した。

勇者「もう二度とこの周辺には近づかないてほしい。・・・お前の一族
  にはそう伝えておけ」

私には目前のまるで御伽噺のような光景を信じる事ができなかった。

エルフ少女「嘘・・・あの八岐大蛇を手懐けるなんて・・・」

鳥族3「・・・・お前、雑用の人間・・・か」

勇者「覚えててくれて光栄ですよ」ニコ

勇者の手には白い魔方陣が創られている。

鳥族4「回復、魔法なんて・・・代物、ポンポン使いやがって・・・お前何者だよ・・・」

勇者「皆さんを治してる・・・ただの人間ですよ。安心して
  ください、命さえあれば助けられますから」

鳥族1「・・・おい」

その目には殺気が篭っている。

勇者「・・・なんでしょうか?」

鳥族1「しらばっくれてんじゃねぇ・・・・!!」ジャリン

鞘から鈍く輝く刀剣が抜かれる

鳥族1「お前・・・勇者なんだろ?」

勇者「・・・そうだったらどうします?」

鳥族1「お前を・・・殺す!!」

鳥族1「お前が来てから城の中は変わった・・・!!どいつもこいつ
   も腑抜けになってんだよ・・・!!」

勇者「・・・」

鳥族1「この八岐大蛇の襲撃もそうなんだろ・・・?お前が
   来たら直ぐに収まったもんなぁ・・・!おまけに殺さなかったんだって?
   どう考えても正気の沙汰じゃねぇ」

鳥族1「なぁ勇者さんよ・・・。お前らはあとどれだけ俺たち
   を苦しめれば気が済むんだ?この襲撃の件を経て
   信頼を得た後でお前は何をする気なんだ?」

鳥族1「なぁ・・・教えてくれよ!!」ビュッ

剣が勇者の足元に刺さる

鳥族1「・・・その剣ととって俺と戦え」

勇者「・・・ずいぶんと優しいんですね」

だが勇者は動かない。

鳥族1「その剣をとれといってんだよ!!!」

エルフ少女「やめてください!」

鳥族1「お前はあの女のガキか・・・!」

助かったのか、と一瞬気が緩みそうになったのを引き締める。

エルフ少女「勇者様は・・・この方は怖い人なんかじゃ
   ないです・・・!・・・どうして決め付けるんですか?!」

鳥族1顔がビキリと歪む。

鳥族1「何もわかってねえな・・・何もわかってねえよ。
   何だ、同胞だけじゃなくこんな子供まで洗脳したってのか・・・?」

エルフ少女「そんな酷い言い方ッ・・・」

鳥族1「勇者共が今まで何をしてきたか本当にわかって
   んのかッ?!!お前の村だって今まで一体何回
   勇者共に襲われたと思ってんだ!?お前はその化け物に騙されてんだよ・・・・!」

エルフ少女「それでもこの人は違うんです・・・!化け物
   なんかじゃ・・・ッ」

勇者「もういい・・・もう充分だよ、ありがとう」ニコ

エルフ少女「でも・・・」

勇者「僕から離れた方がいい。なに、大丈夫だよ」

僕はこういうのにはもう慣れてるからね、と微笑みながら呟いた。

鳥族1「・・・ずいぶん余裕じゃねぇか、なぜ剣をとらねぇ」

勇者「あなたを殺す気なんかさらさらありませんからね」

鳥族1「・・・・あ?」

勇者「あッ、でもできれば僕も今はまだ死にたくないんですよ」

あはは、と困ったような表情を浮かべる。

鳥族1「・・・もういい。お前の都合など知ったことか」ジャキ

鳥族1「お前ら勇者共もいきなり何の罪もねぇ民を皆殺し
   にしてきたんだ・・・・、俺にその権利がねぇとは言わせねぇ!!」ダッ

エルフ少女「勇者様・・・!!」

くそったれが。

俺にだってわかってんだ、この勇者が他の奴らとは違うって事ぐらい。
八岐大蛇がこの野郎のせいじゃねぇって事ぐらい目を見ればわかる。
だがよ、こいつに本当に危険がねぇかどうかはわから
ねぇじゃねぇか。ほんの少しの危険性でも見逃すわけにはいかねぇんだ。
こいつが少し指を動かすだけで俺なんか簡単に殺される
んだろうな、だからよ
俺の命でこいつの化けの皮を剥いでやるよ。

目にも追えない速さで勇者の心臓に向かって剣突が繰り出される。

さぁ見せろ!!お前の本性をよ!!

だが勇者は決して動かない、鳥族1を見据えたまま。

・・・こいつッ!!避けないつもりかッ!!・・・くそ!俺も後には引けねぇ!

鳥族1「うぉおおおあああああ!!!」

ドスッ・・・・・・

場に静寂が満ちる。・・・その静寂をついたのは少女の震える声だった。

エルフ少女「いや・・・・、やだよそんなのぉ・・・」ポロポロ

翡翠色の瞳に映されたのは、勇者が胸を剣で貫かれた姿だった。

かすれる声が漏れた。その声は震えている。

鳥族1「・・・・なぜ・・・避けなかった」

勇者「そりゃぁ・・・信じてましたからね」ニコ

勇者「やっぱり鳥族1さんはやさしい方ですよ、こうして
   僕は生きてるんだから」

鳥族1「ハハッ・・・急所をずらした事もお見通しかよ」

無償に笑いたくなった。

鳥族1「なんかもう・・・いいや、俺の負けだ」

・・・こんなに馬鹿みたいに何でも信じる奴が命を奪えるわけねぇじゃねえか。

エルフの少女はうずくまってエグエグ泣いている。

鳥族1「おいガキ」

エルフ少女「・・・・ッ!・・・貴方は絶対に許しません」キッ

鳥族1「安心しろ、お前の勇者様は生きてる。ピンピンしてるぞ」

勇者「いやっ、急所は外れてるけどすごく痛いですからっ!」

エルフ少女「勇者様っ!」ダッ

頭から勇者に突っ込んだ。

勇者「ふぎゃっ・・・・死んじゃう」

皆さん優しい・・・。
かなり書き溜めてるから長いけどよろしく

その数時間後、狼族部隊、龍族部隊と共に側近が到着
した。結果的に八岐大蛇による村の被害は東の一部分のみで誰も命を落とすことはなかった。


魔王「勇者、何と礼を申せばよいか・・・本来ならば
   私自身がやらなければいけなかったものを」

勇者「ん~、でもあの状況で動けるのは僕だけでしたし」

側近「それにあの八岐大蛇が襲撃したにもかかわらず
  民も兵も誰も命を落とさずにすんだなんて・・・どっちが化け物なのかわかりませんね」

勇者「側近さんの精神攻撃にはどんな防御魔法も効きそうにないです・・・」

こほん、と魔王は咳をする。その顔は少し赤い。

魔王「で、だな勇者よ。これだけの功績をあげたお前に
   だな、こほん。わ、私から何かしてやれる事があるならばやってやってもよいぞ?」

側近は何か得心したかのように手をポンと叩いた。

側近「まぁ、誘惑ですか?」

魔王「違うわ阿呆っ!!」スパーン

魔王「・・・・で、何かしてほしいことはあるか?」チラッ

勇者「う~ん、そういうのはあまり考えた事がありませんからねぇ」

魔王「そ、そうか」

勇者「・・・・あっ、今一つ思いつきました!」

魔王「準備はまだか?」

その声は少し弾んでいる。

側近「もう少し待ってください。魔王が少しの間でも城を
   離れるなんて特例中の特例なんですから・・・村がとても近い
   から許可がなんとかとれたんですよ?」

魔王「それはそうだが・・・」ウズウズ

側近「魔王のこんな姿をあの人間が見たらどう思うか・・・」ハァ

魔王「なぜそこで勇者が出てくるのだ?・・・む、その前に勇者はどこに行ったのだ?」

側近「もう、さっき部屋を出て行ったのを見てなかったんですか
   ・・・。あの人間は一足先に村へ向かったそうですよ?」

魔王「勇者め、先に行くなんて卑怯な奴なんだ」

側近「・・・」

魔王「ええい、そんな目で私を見るでない!仕方ないだろう?
   私が外に出るなんて一体何年ぶりだと思っている!」

側近「・・・たった8年ですが?」

魔王がクワッと目を見開く。

魔王「8年も、だ!今まで生きてきた時間の約半分だぞ?正直言って息がつまる!」

子供のように喚く魔王を横目に見ながら

側近「・・・本当ここにあの人間がいなくて良かったです」

とやるせなそうに呟いた。

・・・もしここに勇者がいたら魔王の尊厳が急激に降下
を始めていただろう。

訂正 

魔王「勇者め、先にいくなんて卑怯な奴だ」

ーーーー辺境の村

勇者を満面の笑みで出迎えたのはエルフ少女だった。

エルフ少女「勇者様っ!来てくれたのですね!」ダッ

勇者「うん、今は何かと手が足りないんじゃないかと
   思ってね。あとでまた城の者が来ると思う。魔王様も来るよ」ニコ

エルフ少女「ま、魔王様が来るって本当ですか!?」

勇者「うん、少し遅れてくるみたいだけどね」

エルフ少女「新しく就任なされた魔王様ってどんな御方なんですか?」

勇者「・・・すごく純粋な御方だよ」ニコ

エルフ少女「むっ!その笑みに何か危険な匂いを感じま
  したよ!さては魔王様は女性ですね?」

勇者「おぉ、よくわかったね」

エルフ少女「ふぐぐぐ!権力なんかに私、負けません!
  私まだ子供ですし!これからですし!うわーーーん!」ダッ

いきなり涙目になって走り去ってしまった・・・。

勇者「2年ぶりに会ったからまだたくさん話したい事あったのになぁ・・・」

ーーー辺境の村・東


村長「勇者殿、お久しぶりですな~」ニコ

勇者「こちらこそどうも~、ご無事で何よりです」ニコ

一瞬にしてのんびりした空気が周辺を支配する。

村長「いやはや、もうこれで何度村を助けてもらったかわかりませんなぁ」

勇者「・・・東の一部に被害をだしてしまったのは申し訳ないですけどね。よっ」

角材を持ち上げ、肩に担いだ。民の一人が声を上げる。

「勇者さんこっちにその角材持ってきてくれ!」

勇者「今行きます~、あ、村長またあとで」タッ

村長「人間が皆勇者殿の様であれば、人と魔物が憎しみ合う
  事は・・・・・・ふふ、意味のない事だとわかっていても
  勇者殿を見ていると何度もそう思ってしまう」


城の者が村に到着してからは修復速度は上がり、日が
落ちる前には村はほぼ元通りになった。・・・・当然魔王が着く頃には。

魔王「・・・私が来た意味はあったのだろうか」

側近「じゃあ戻りましょう」

魔王「待て」ガシッ

側近「ならそんな事を言ってないで民と城の者達に労いの言葉でもかけたらどうです?」

魔王「むむむ、最近私に対する口が悪すぎるのではないか?」

側近「だったらもう少し魔王らしく堂々としてください」

魔王は顔をしかめた。

魔王「むぅ、そう言われてはかなわんな」

村長「お目にかかれて光栄でございます魔王様」

魔王「うむ、此度の件はご苦労だったな」

民幼女「あっ、魔王様だ!」

元気な声を上げて子供が魔王のもとへ駆け寄ってくる。

村長「こら!魔王様の前でそんなはしたない!」

魔王「よい」

民幼女「わぁ!魔王様ってきれいなお姉さんなんだぁ!
  私魔王様に初めて会っちゃった」

魔王「き、綺麗・・・?そういう事はよくわからないが礼を
   言っておくべきなのだろうな・・・」ニコ

民幼女「うん!私の種族の中ではすっごく綺麗な方だよ!あ、あとね!魔王様にお礼が言いたいの!」

魔王「お礼・・・?」

うん!と花が咲くような笑みを顔一杯に広げて幼女は魔王に言った。

民幼女「えっと、私達みんなを助けてくれて、ありがとうございました!」

魔王の瞳が見開かれた。そして顔に微笑みを浮かべて幼女の頭を撫でる。

魔王「・・・私は何もしていない。礼を言うなら城の者や・・・勇者に言えばいい」

民幼女「うん、もうみんなにお礼を言いにいったんだけどね!
   みんな言ってたよ!お礼は魔王様に言ってくれ、って!」

魔王「・・・何?」

民幼女「だってね?確かに自分達はこの村を助けたけど、
  それができたのも魔王様が素早く決断してくれた
  からだって!この村を助ける事ができたのも、
  元通りにできたのも魔王様のお陰だからって!」ニコッ

民幼女「やっぱりお母さんの言った通りだった!魔王様
  は私達魔物の事をいつも考えてくれていて、いつも
  助けてくれる凄い御方だって言ってたもん!」

魔王「・・・っ!」

だめだ、泣くことは許されない。私はこの子の前では《魔王》なのだから。

民幼女「魔王様はこれからも私達が危ない時は助けてくれるんだよね!」

魔王「・・・ああ、そうだな」ニコ

あふれ出る想いを必死に抑えて笑みをつくる。
そして魔王は自分の首から首飾りを外し、その子の首にかけた。

側近「魔王様ったら・・・」ハァ

民幼女「わぁ~、きれー。これくれるの!?」

村長「ま、魔王様!?」

魔王「いいんだ、元々私はこういう物にあまり興味がないからな」ニコ

魔王はその子の頭をやさしく撫でた。

魔王「その首飾りにかけて誓おう。私は必ず皆を守ると」

魔王が勇者を倒し、また倒される存在だと誰が決めたのか。
そうではないのだ。今ならわかる、魔王とは民の事を
考え、守る存在なのだ。たとえ私がまだ魔王たるに未熟だとしても、もう私に迷いはない。

魔王「・・・あそこにいるのは勇者か」

村長は静かな声で答える。

村長「・・・はい。かれこれもう3時間は」

魔王「なぜあいつは墓の前で祈っているのだ?」

村長「あの墓には・・・歴代の勇者一行達の犠牲になった民達が眠っているのです」

魔王&側近「・・・・・・ッ!!」

昔を懐かしむように村長は言葉を続ける。

村長「・・・勇者様がこの村にいた頃は毎日ここで何時間も祈っていたものです」

側近「やはりあの人間はここに来たことがあるのですね?」

そうでなければ民の勇者へ対する態度の説明がつけられない。

魔王「城に来るにはこの村を通らなければならないからな。・・・勇者はどうやって村を通るこ
  とができたのだ?」

村長「勇者様がわざわざ私の所へ来て頼んだのですよ。
  やる事があるんです、ここを通させてもらえませんか、と」

魔王「貴方はそれを許可したのか?」

村長は困ったように笑う。

村長「まさか、そんな事を許可する筈がないでしょう?あの勇者ですよ?
  そんな危険な存在を魔王様の城へ近づかせるなど考えただけで恐ろしい」

魔王「・・・それで?」

村長「ええ、本当ならすぐに村から追い出したかったのですが、村の外の森で
  エルフ少女を助けられたという事もあったので少しだけ滞在を許可したんです」

村長「それに勇者ほどの力をもつならこの村を通るのは
  力ずくでも容易な筈なのに何故私に許可を求めたのかが疑問でしたからね」

側近「・・・ですが民はあの人間の滞在なんて許せないのでは?」

村長「それは当たり前ですよ、なにせこの村はこれまで
  幾度も勇者一行に苦しめられてきたのですから」

村長「勇者様の民の墓で祈りを捧げる行為も民の怒りの
  琴線に触れたのかもしれません」

村長「民の勇者様に対する行動は私の目から見ても凄まじい
   物でした。勇者様に対する罵倒、暴力、・・・魔法によ
   る攻撃さえありました。おそらく食事をまともに
   摂ることさえできなかったのではないでしょうか」

魔王「・・・」

村長「しかし勇者様は必ずそれに謝罪を返すだけで
  反撃をする事は一度もありませんでした」

村長「・・・私にはその光景がまるでこの村に歴代の勇者達が
  民に与えてきた恐怖、憎悪、怒り、悲しみの全てを勇者様
  お一人で背負っているかのようにも見えました。」

村長「そのような状態が半年は続きました。しかし私は
  こう思うようになりました。この勇者はこれまでの
  勇者とは違うのではないか、と」

村長「森の主が村をいきなり襲ってきた時のことです。
  その時は民のほとんどが狩りに出かけていて守りが
  手薄だったのです。村への侵入を許してしまいまし
  た」

側近「それをあの人間が・・・」

村長「はい。私は心から後悔していました。ああ、もし
  最初から勇者様とちゃんと接していれば村を
  主から守ってくれたかもしれないのに、と都合の
  良いものですね。私達は勇者様にこれまで何を
  してきたのかを考えれば希望などない筈なのに」

村長は自嘲的な笑みを浮かべる。

村長「ですが勇者様は私達の村を助けてくださりました。
  疾風の如き速さでその場に駆けつけ、主を打ち倒したのです。」

村長「私達は勇者様に言いました、そいつを殺してしまえ
  、と。ですが勇者様は何と言ったと思いますか?」

村長「この魔物おいしそうじゃないですよね、と言ったんですよ」

くっく、と村長は堪えきれずに笑う。

村長「つまり勇者様はこう言いたかったのでしょう。
  生きる糧にする為に殺すのはかまわないが、私情の為に殺す事はできないと」

村長「その時からでしょうか。民の勇者様に対する態度
  が徐々に徐々にゆっくりと和らいでいったのは」

村長「今から半年前にここを出る頃にはもうすっかり
  私達の家族のようになりました。できれば
  ずっと村にとどまってほしかったのですがね」

未だに祈りを続けている勇者に目を向ける。

村長「・・・このような事をあの方は何度繰り返して
   きたのでしょうか・・・。どれだけの魔物の心
   を救ってきたのでしょうか。私などでは想像もできません」

魔王「・・・」

村長「・・・さて私の長話もここまでです。お付き合い頂いて有難うございました。」

魔王「・・・いや、有意義な時間だったよ」

村長「ただ、これだけはわかっていただきたいのです」

魔王「・・・何だ?」

村長「勇者様は魔王様にとって危険な存在などでは決して
  ありません。必ず貴方様のお力になるということを・・・」

ーーーー魔王城

勇者「いやぁ、本当申し訳ないです。遅くなっちゃって」

あはは、といつもの笑みを浮かべて勇者が戻ってきた。

側近「全くもってその通りですね。雑用という立場とちゃんと弁えて下さい」

勇者「うっ・・・、ご、ごめんなさい・・・」

側近「謝るだけなら誰でもできます。態度で示してください」

勇者が小さくなった。

魔王「まあ今日くらい良いではないか、何をイラついているんだ?」

側近「魔王様も魔王様ですよ!あの首飾りがどんなに
  貴重なものがわかってるんですか!?」

魔王「ええと、マくやらなんとかだな」

側近「魔具ですよ!魔具!魔法が籠もっている装飾品な
  んてそうそうないのに・・・!」

魔王「いいんだ、あれは私の誓いの証なのだからな」

その声は静かだが、確かに熱が篭っていた。

側近「・・・なんだか魔王様変わりましたね。この人間のせいですか?」

魔王「ち、違う」

勇者「・・・・何がですか?」

魔王「勇者!お前は雑用だろう!さっさと行け!」クワッ

勇者「は、はいぃ!」ダッ

側近「・・・」ジトー

魔王「・・・な、なんだその目は」

「あいつが勇者か・・・」

「まさかあの雑用が勇者だとはな・・・」

「いますぐ殺してやりてぇが・・・」

「ああ、辺境の村を救ったらしいじゃないか」

「くそっ、敵なのか味方なのかハッキリしてほしいもんだな・・・」

勇者「な、なんかいつもより皆さんの視線が鋭いような・・・」

後ろから声がかかる

鳥族1「よう」

勇者「あっ、鳥族1さん!この前はどうも・・・」

鳥族1「前置きはいいからよ、ちょっと話そうぜ」

勇者「でも僕仕事が・・・」

鳥族1「こんな状況で仕事なんかできねぇよ。お前雑用
  なんだから兵士に付き合うのも仕事の内だろ?」

勇者「そうですか・・・、ばれちゃいましたか・・・。
  あっ、わざわざ伝えてくれてありがとうございます!」

鳥族1「ああ、別にかまわねぇ」

鳥族1「正直な所、荒れてるな。お前が敵なのか味方なのか判断もつかねぇ状態だ」

勇者「あはは、それは当たり前ですよね~」

鳥族1「見たところ余裕そうだが・・・お前これからどうするつもりだ?」

勇者「いや、どうもしませんけど・・・・」

鳥族1「・・・本気か?」

勇者「ええ、こういうのは慣れてますからね」ニコッ

鳥族1「はは・・・お前はそういう奴だったな」

鳥族1「・・・一ついいか」

空気が少し張り詰める。

勇者「・・・なんなりとどうぞ?」ニコ

鳥族1「なんでお前はこの城の者達の中に知ってる奴が
  何人もいることを隠してる。・・・お前が口止め
  したんだろ?僕の事を知らない振りをしてくださいってな」

勇者「あはは・・・みなさんしゃべっちゃったんですか」

困ったように勇者は笑う

鳥族1「馬鹿が、俺は目を見れば大抵の事はわかるって
  言っただろうが。あいつらは絶対に口を割らなかったぜ」

勇者「・・・貴方は怖いですね」

鳥族1「前から疑問に思うことがあった。たまにお前と
  他の奴を見かけるとき明らかにお前の相手の目つきが
  お前を嫌っている物じゃなかったからな。」

鳥族1「お前はここに来るまでに多くの村や集落を訪れた
  んだろ?そんだけ知り合いが多くて城の中にはだれ
  も僕の事を知りませんなんて事はありえねぇ」

勇者「・・・」

鳥族1「・・・そもそもこの状況も元からお前が城の者と知り合
  いがいることを隠さなければ起きなかったんじゃねぇか?」

勇者「・・・それじゃ駄目なんですよ」

鳥族1「あ?」

勇者「確かに鳥族1さんの言う通りにしていたら城の方々
  が僕を見る目は今ほど厳しくなかったかもしれません」

勇者は穏やかに言葉を続ける。

勇者「ですが城の友人が勇者は危険ではない、と
  聞かせれても本当に納得できますかね?納得した
  としてもそれは表面上だけで、心の底には僕に対する
  不信感は消えない筈です」

鳥族1「・・・だったら初めからお前の事を知らない方が
   いいってか」

確かに俺だったら聞いただけじゃ納得なんかできねぇ。

勇者「ええ、自分で感じた事以上に信じられるものはあり
  ませんから」ニコ

鳥族1「・・・そりゃその通りだ」

勇者「僕が危険なのか危険じゃないのかは城の方達に
  自分自身で判断してほしいんです。・・・危険かどうか
  なんて事は僕にもわからないんですからね」

鳥族1「・・・そうかい、じゃぁせいぜい城の奴らにボコボコにされるこったな」

鳥族1が手を振りこの場を離れて歩き出す。

勇者「あっ、鳥族1さん!」

鳥族1「・・・何だ」

勇者「話してくれて、ありがとうございました。
  やっぱり貴方は優しい方です」ニコ

鳥族1「・・・お前に言われたくねぇってんだ、ボケが」スタスタ

勇者はその後ろ姿を見送り、静かな声で呟いた。

勇者「・・・僕は優しくなんかない、ただの臆病者なんですよ」

魔王「で、またそうなったか」

勇者「・・・ふぁい」

勇者の顔は約1,5倍に膨らんでいる。

側近「そんな馬鹿げた姿晒してないでさっさと回復魔法でも
  使えば良いでしょうに」

勇者「へふれふぁほふぉおわつかへいたくないんえすよ」

側近「何を言っているのか全然わかりませんね」

それから勇者は話せるようになるまで30分ほど要した。

勇者「・・・ええと、何を言ってたんでしたっけ?」

側近「その腫れた顔をさらに倍の大きさにしますよ?」

勇者「そうでした!魔法の話でしたねっ!」キリッ

魔王「そういえば前から疑問に思っていたんだ・・・」

言葉を続ける。

魔王「どうしてお前は魔法をあまり使わないのだ?」

魔王「城から飛び降りた際の飛行する魔法といい
  あの村で使って見せたという高度な回復魔法、
  それだけではお前は並ならぬ魔法使いだろう?」

勇者「いやあ、照れますね~」テレテレ

側近「ふざけないでください」ガスガスガスガス

勇者「・・・ッ!!腿にヒザは勘弁してくださいよぉ!」

魔王「・・・こほん、だがお前はそれを日常で使う事はな
  いな。自分の怪我の時、修復の為に村へ向かうときも徒歩だったではないか」

勇者「ああ、それは魔力がもったいないからですよ?」

魔王「・・・魔力なら休めば回復するではないか」

勇者「あれ、言ってませんでしたっけ?僕の魔力が回復する事はないって」

そんな事あるわけがない、と思ったが思い直す。

魔王「・・・お前に有り得ないなんて事は通用しないか」

勇者「あはは、そんなにすんなりわかってもらえるとは
  思ってませんでしたけどね」

側近「・・・その首輪が原因ですか?」

側近は勇者の首につけられた黒い首輪に目を向ける

勇者「ぉお!流石側近さんです!ご名答ですよ!・・・なぜわかったんです?」

魔王「私はわからなかったのに・・・」

側近「首輪から幽かな違和感を感じられますから。」

まぁそこまで気にするほどではありませんが、と付け足す。

勇者「う~ん、じゃあこれでどうです?まだ違和感は感じますか?」

側近「・・・・!いえ、全く・・・」

先ほどの違和感は嘘のように掻き消えていた。

勇者「あはは、やっぱりまだ完璧には押さえ込めていな
  かったんですね~。詰めが甘かったなぁ」

魔王「その首輪は何時から着けているんだ?」

勇者「う~ん、大体30年前ぐらいですかねぇ」

魔&側「・・・・・・ッ!!!」

魔王「ど、どういう事だ?人間の寿命は100年と聞いていたが・・・・」

勇者の外見がおかしい。人間は20歳を超えたら肉体が衰え始
めると聞いていた。勇者はどう考えても30歳を超えていない
、肉体が全く衰えていないのだ。

勇者「それはすっごく前の事ですよね?」

側近「それは・・・そうですが」

確かに人間に関する情報ははるか昔から伝えられてきた
もので、確実に信憑性があるわけではない。

勇者「変わったんですよ、人も。今の人間の寿命は300歳を超えていますから」

魔王「3倍だと・・・・!?」

生物の寿命を決めるのはその肉体と魔力の許容量だ。
人間の肉体自体は今も変わっていない筈だ。

魔王「・・・それほどの魔力をもつようになったのか」

勇者「ええ、そうです」

魔王「・・・なあ勇者よ」

勇者「・・・・なんですか?」

魔王「・・・何故そんなにお前は辛そうな顔をしている」

何故お前は辛くて、悲しくて、悔しくて、痛くてたまらないかの
ような顔をしているんだ。人間が力を持つようになった
んだ、お前は喜んでも良いのではないか?

勇者「えっ、今そんな顔してました?」ニコ

・・・その笑みの下に何を抱えているんだ?

魔王「まあいい、・・・で、お前もその影響でその若い姿のままなのか?」

勇者「・・・」

勇者の笑みがわずかに強張るのがわかった。

遅くなってごめんなさい;
重くなって飛ばされてました
今から書きます

魔王「頼む、教えてくれ・・・」

お前の事が知りたい。

側近「魔王様・・・」

勇者「・・・・あはは、僕の事が知りたいなんて言われたのは
  生まれて初めてですよ」

その笑い方は今までで見たことがなかった。その笑い方
は子供のように無邪気で、だがとてもぎごちない。

勇者「そうですね・・・、どこから話せば良いですかね。
   一つ、昔話でもしましょうか?題名は・・・そうですね・・・」

勇者「加護と祝福を受けなかった勇者の誕生の物語」

勇者「ある王国のはずれの村にその子は生まれました」

勇者「そしてその親はその赤ん坊を恐ろしく思い
  村の外の森の奥深くに捨てました」

勇者「その赤ん坊は化け物でした。長い間何も食べずに
  そのままにされていても死ぬことはありませんでした」

勇者「そこにある男の人が通りかかりました。その男の
  人はその赤子をかわいそうに思い、自分が育てることにしました。」

勇者「この国では子供が新しく生まれると必ず《神の祝福》
  を受けさせる為に王国へ向かう義務がありました。
  それは他の国でも同様でした。そうすることで
  その子供は病なく健やかに生きることができます」

勇者「でもその男の人はその赤子を王国に連れて行く事は
  ありませんでした。その男の人は王国を嫌っていたのです」

勇者「それから数年が経ちました。村の子供は普通の
  人間の3倍の速度で成長するその少年を気味が悪いと
  執拗にいじめました。毎日毎日化け物、化け物と
  呼ばれて過ごしました」

勇者「しかしその少年は絶対にやりかえしませんでした。
   自分を拾ってくれた男の人、父の教えだからです。
   その少年の体は傷ついてもすぐに治りました。
   でも心はなかなか治りませんでした」

勇者「父だけはいつもその少年にとても優しくしてくれ
  ました。少年もそんな父の事が大好きでした。
  父だけが少年の味方でした」

勇者「10歳になる前日、少年は父に王国に行きたいと
  お願いしました。10歳になると王国に行き、
  <神の加護>を受けているかどうかを調べる
  しきたりがあったからです。《神の加護》を
  受けているとわかると、その子は勇者に
  なる事ができます」

勇者「少年はもう皆から化け物と呼ばれるのは嫌でした。
  勇者になれば皆も自分に優しくしてくれる、そう信じました」

勇者「でも父は自分が王国に行くのを許してはくれません
  でした。少年がどんなにお願いしても駄目でした。
  少年は絶望しました。」

勇者「このまま化け物を呼ばれ続けるのなら、と少年は
  死ぬことに決めました。そして崖から飛び降りたのです。」

勇者「少年は死にませんでした。全身がどんなにぐちゃ
  ぐちゃになっていても、みるみるうちに体が
  元に戻っていくのです」

勇者「少年は自分に恐怖しました。自分はなんて化け物
  なんだ、と。もう死ぬことができない少年に
  残された道は王国に行く事だけでした」

勇者「少年は父には何も告げずに王国へ行きました。
  教会の人は少年にきみを何年も待っていた、と
  言いました。少年はもしかしたら勇者になれる
  かもしれないと嬉しくなりました」

勇者「少年は<神の加護>を受けているかを調べるために
  薬を飲まされました。そこで少年の意識は消えました。」

勇者「次に目を覚ました時に少年は絶叫しました。
  辺り一面が血の海だったのです。周りをみると
  たくさんの教会の人達が横たわっているのがわかりました」

勇者「ああ、自分がやったのだ、すぐにわかりました。
  少年は泣きました。少年の心では複数の命を
  奪った事に耐えることはできませんでした」

勇者「それからすぐに教会の人たちが少年の下に
  やってました。君は何も悪くない、そう言われま
  した。でもそんな言葉はもうその少年の心には届きませんでした」

勇者「そして少年は王国の王の前に連れてこられました。
  少年はとても信じられませんでした。自分なんかが
  このような御方の前にいるなんて、と」

勇者「少年は懇願しました、自分を殺してくださいと。
  少年は自分がどんな化け物なのかということ、
  複数の命を奪ってしまった事を泣きながら訴えました。」

勇者「王様は少年にある黒い首輪をかけました。すると
  驚くことに自分の内にある力が半減したのが感じ
  とれたのです。しかしそれでも自分が化け物の
  ような力を持っていることには変わりませんでした」

勇者「少年は自分が恐ろしいと言いました。
   この自分の内にある力が恐ろしくてたまらないと」

勇者「王様はやさしく言いました。その命を奪ってしまっ
  たなら、その者達の分まできみは出来ることをする
  義務がある、と。」

勇者「そして王様は言いました。きみは勇者になるのだ、と」

勇者「そうして世界に<神の加護>も<神の祝福>も
  持たない勇者がこの世界に誕生したのでした」

勇者「・・・と話はここまでで終わりです」ニコ

魔&側「・・・・・・」

勇者「もうわかりますよね」

勇者「僕は勇者なんかじゃない・・・・」

勇者は笑う。

勇者「ただの化け物なんです」ニコ

魔王「・・・だがお前が他の人間と違って3倍の速度で成長
  しているなら何故・・・」

勇者「ああ、僕の肉体年齢は昔の人間で言えば18歳ぐらい
  で止まってるんですよ。僕の力が20歳から始まる
  老化をダメージとして排除してるんですよ」

側近「でも顔の傷は・・・自動的に治らないんですか?」

勇者「それは意識的に止めてるんです。この老化を止める
  魔法を止めるのは今もできないままなんですけどね」

魔力がもったいないです、と勇者は困ったように笑う。

勇者「老化と止めるのにも魔力を使いますからね」

言いにくそうに側近が尋ねる。

側近「あの・・・・その父親はどうなったのですか?」

勇者「死にましたよ?」

側近「・・・」

勇者「僕が勇者になってからすぐに、僕を取り戻す為に
  王国へ一人で攻めたらしいです。まぁ返り討ちに
  あったんですけどね」

勇者「あの時ほど泣いた事はなかったなぁ・・・。あ、
  昔は僕ってすごく泣き虫だったんですよ?」

あはは、と勇者は笑う。

魔王「・・・なぜ笑ってそんなことが言える」

その声は震えている。

側近「魔王様・・・」

魔王「なぜお前は笑っていられるのだ!泣きたいのなら
  泣けばいいだろう!?」

勇者「・・・笑うしかないじゃないですか。泣けば何か
  解決するんですか?・・・誰が助けてくれるんですか」

勇者「ましてや僕は救う側ですし、助けるためには
  安心を与えなきゃいけないでしょう?こんな
  化け物でも・・・・一応僕は勇者ってことになってるんですからね」

魔王「お前が泣けば私が救ってやる」

勇者「・・・・・・っ!!」

勇者の顔がくしゃりと歪む。

魔王「試しにやってやろうか」

魔王が勇者をやさしく抱きしめる。

魔王「・・・お前は化け物なんかじゃないよ」

勇者「あはは・・・・・・・そんなくしゃ、くしゃな顔で言い、ますか、普通・・・」

魔王「・・・・うるさい奴だ。・・・・ここまでしてやっても
  お前は泣かないのだな」ギュ

勇者「・・・泣くのは死んでからって決めてますから」

側近の咆哮が雰囲気がぶち壊した。

側近「ナニ勝手に魔王様に触れとんじゃ貴様ァアアアアアアア
  アアアアア!!!!」バッキィイイイ

勇者「ふげらばっ!!」ブシャァア

勇者の体が錐揉み回転しながら見事なアーチを描く。
その軌跡を勇者の血が美しい弧円を描く。

側近「このっ!雑用のっ!分際でっ!!」ドガッガスッバキッ

勇者「な、泣いちゃう!ごふッ、違う意味で泣きそう!あと
  一発一発が重いよ?!ぐはぁッ」

魔王「・・・まぁ頑張れ」

ーーーーーーーー約1年後


魔王「・・・勇者もすっかりここに馴染んだものだな」

側近「そうですね」

「おい!勇者ちょっとこっちきてくれ!」

「あとでこっちもよろしくね!」

「おいおい!まだか勇者!」

勇者「は、はい!今すぐ!」ダダダダダ

魔王「なんだかもう別の意味で大変そうだな・・・」

側近「もう城の中では勇者=雑用みたいな意味になってますね・・・」

魔王「代わりに私が暇なのだが・・・」

側近「仕事してください」

勇者「や、やっと今日は大体の仕事終わったかな・・・」

鳥族1「よっ」

勇者「ど、どうも鳥族1さん・・・」

鳥族1「今日も忙しそうだな」

勇者「ええ、お陰様で・・・」

鳥族1「あぁ、そうだ。狼族部隊の連中がな、また
  組み手しようってよ」

勇者「あぁ・・・・、ほんとですかぁ・・・・」ニコ

泣きそうな顔で笑った。

鳥族1「あとお前に伝えときたい事があってよ」

勇者「はい、なんです?」

鳥族1「遠征に行ってた兵がよ、お前の事見たって
  言ってたんだよ。流石にそんなの・・・」

勇者が目を逸らした

鳥族1「・・・・・ってあんのか?なんだお前話聞くときは相手の
   目を見るって礼儀も知らねぇのか、おい」ガシッ

勇者「な、なにもしりもふぁん」

鳥族1「・・・何か知ってんだな?」パッ

勇者「うぅ・・・、鳥族1さん以外ならごまかせたのに・・・」

鳥族1「何を知ってる?話せ、おい」ギロッ

勇者「・・・魔法ですよぉ、魔法」

鳥族1「ま、さか・・・・分身ってやつか?はは・・・とうとう
  ありえねぇぞ、おいおい・・・・」

勇者「・・・別に信じてくれなくてもいいんですけどね」

鳥族1「そんな事・・・可能なのか・・・?」

勇者「できますよ~、でもまぁけっこう魔力食うし、
  あの魔法って魔力を使うっていうか分けるって感覚で発動させますからね」

鳥族1「そりゃ・・・・すげぇな」

勇者「でも魔方陣の構築も構成も死ぬほど面倒くさいから
  一気に何体もってわけにはいかないんですけど」

鳥族1「それでお前はその分身を使って何をするつもりなんだ?」

勇者「・・・・やっぱり鋭いですね」

勇者「いずれわかりますよ。安心してください。絶対に悪い事にはなりませんから」

あの人間がこの城に来て約1年半。
今のところはまだ何も起きていない。
でもきっとあの人間は尻尾を出す筈・・・・。
城の者達が、・・・たとえ魔王様があの人間を信用してい
ても、私だけはあの人間を疑い続けなければいけない。
私は魔王の側近、魔王様を、あの子を守らなくてはいけないのだから。

ーーーーーーーーーーーーー8年前

「今の魔王様ももう長くはないだろう。・・・・長年勇者共に与えられてきた傷は深い」

側近「・・・・はい」

「そこでお前には次期魔王の世話をしてほしいのだ」

側近「私が・・・・世話係ですか?」

「そうだ。次期魔王に姿が似ているのはお前ぐらいなものだからな。それに同じ女だ」

側近「私と同じ・・・・人型。相当な魔力をお持ちなのですね」

魔物で人の姿に似ている者は珍しい。
当然人に似ている為に、その肉体は並の魔物に劣るのだ。

「・・・お前と同様にな」

「すでにその者は城に到着しているようだ、会ってみるがいい」

その小さな魔王は側近に満面の笑みを向けている。
絹糸のように艶やかな金色の髪をなびかせてこちらに
走ってきた。

魔王「お姉さんが私のお世話をしてくれるの?これから
   よろしくお願いします!って言ったほうがいいのかな?」

・・・・こんな小さい子が、魔王だなんて。

側近「・・・・はい、こちらこそ宜しくお願い致します」

側近「・・・・一体どういう事ですか!?」ダンッ

「・・・何がだ?」

側近「・・・・あんな小さい子が次期魔王だなんて聞いていません」

その声が震えている。

「はは、魔王に同情するつもりか?・・・そんなものは無駄
にしかならん。魔王がいなければ我らは滅ぶ、必要な犠牲
なのだ。お前が一番良くわかっているのではないのか?」

側近「・・・・ッ!!」

「それにあの小娘は充分に魔王たりえる魔力を有している。
・・・・・300年ぐらいは城を守れるのではないか?」

側近「・・・・・このッ」

「お前が無駄に事を計ることはないのだ、側近よ。・・・ただ
お前はあの小娘に魔王の意義を与えていれば良いのだ。
魔王は戦い、我らは事を計るのが役目なのだからな」

魔王「ねぇねぇ側近さん!」

側近「・・・何でございましょう」

魔王「すっごく暇なんだけどなぁ?」

魔王が上目遣いで側近を見つめ、小首を傾げて尋ねる。
いわゆるカワイイ攻撃である。

側近「そうですか」

側近には効果がないようだ・・・・。

魔王「・・・うぅー、暇暇暇暇ーーーー!!!なんか一緒にやろうよ側近さんっ!」

側近「その言葉遣いの矯正、魔法の訓練、掃除などでしたらかまいませんよ」

魔王「うぇっ、そんなの楽しくないよっ!?」

魔王はくしゃっと顔をしかめた。

魔王「うう、やっぱり村の方が楽しかったなぁ・・・・」

側近「・・・・」

魔王「・・・・ねぇ側近さん」

側近「なんでしょうか」

魔王「・・・・魔王になることって、悲しい事なのかな」

ぽつり、ぽつりと魔王は言葉を続ける。

魔王「私が次の魔王になるってきまって・・・・・お父さんとお母さん、泣いてたんだ」

魔王「どうして泣いてたのかな?城の人たちは誇らしい事って言ってたのになぁ・・・・」

側近「・・・それは、」

私は何もこの子に感じてはいけない。

側近「・・・・・とても誇らしい事なのだと思います」ニコ

だが自分の胸にささる痛みが止むことはなかった。

ーーーーーーーーー1年後

魔王「どうして外に出ちゃ駄目なの!?」

その目は涙で赤く腫れている。

側近「・・・貴方様は魔界にとって重要なお方ですから」

魔王「そんなのわからないよ!」

側近「貴方様を危険にさらすわけにはいかないのです」

魔王「だったら魔王なんかやめる!言葉遣いだって直さない!
  魔法の練習だって、全部、全部止める!!」

側近「・・・それはできません。・・・・・もう決まった事ですから」

魔王「・・・・・もういい、出てってよ」

側近「・・・・わかりました、失礼します」バタン

魔王「お父さん、お母さん・・・・もう会えないの?」ポロポロ

側近「・・・・いつまでこんな事を続ければいいのよ」

側近「・・・落ち着きましたか?」

魔王「・・・うん」

側近「・・・貴方様は一年前、私に魔王になる事は良い事な
  のか、と聞きましたね」

魔王「うん」

側近「正直、私は誇らしい事などとは少しも思っておりません」

魔王「・・・・えっ」

側近「私の兄は・・・・・現代魔王なのです」

魔王「・・・・じゃあ今の魔王って側近さんのお兄さんなの?」

側近「・・・そうです。兄とは言っても、200歳程年上ですが」

側近は静かに言葉を続ける。

側近「兄は魔王として城を、魔界を約300年守り続けました。
  そして魔王である事を今も誇りに思っています。
  ・・・・今ではもう立つ事さえできないのに」

側近は唇を血が出る程かみ締める。

魔王「側近さん・・・」

側近「誇りと引き換えに命を失うなどこんなにも馬鹿げた事
  はありません、そう私は思います」

魔王は力なく笑う。

魔王「じゃあ・・・・私もいつか勇者に殺されちゃうんだね」

側近「そうはなりませんよ」

魔王「・・・どうして?」

側近「私が守りますから」

ーーーーーーーーーーーーーー2年後

「魔王就任、おめでとうございます」

魔王「うむ」

「これからの魔界は貴方様にかかっています。
貴方様の御力で勇者一行を幾度もはねのけて
いただける事を期待していますぞ」

魔王「・・・わかっている」

魔王「・・・・少し一人になりたい、下がれ」

「「はっ」」

城の者達が部屋を出て行く。そしてやがてその扉は
また開かれた。

側近「魔王様、就任おめでとうございます」ニコ

魔王「側近っ!久しぶりっ」ダッ

魔王は側近に抱きつく。側近はクスリと笑った。

側近「もう、言葉使いはどうしたんですか?」

魔王「うぅ、あの話し方、年寄りっぽくてちょっと・・・・」

魔王は急に沈痛な面持ちになった。

魔王「側近の兄さんの事は残念だったね・・・・」

側近「・・・・・兄は最後まで笑って逝きました」

魔王「・・・すごいお方だね、私なんか全然だよ」

側近「・・・兄のようになってはいけないのですよ?」

魔王はにっこりと笑う。

魔王「わかってる」

ーーーーーーーーーーーーーーーー3年後

魔王「やはり私では力不足、か」

魔王は自傷気味に笑う。

側近「辺境の村に森の主が来るのを事前に止められなかったのは
  貴方の責任ではありませんよ」

魔王「だが側近もわかるだろう?城の者全員が私を信じている
  わけではない」

側近「これから皆に慕われるような魔王になれば良いのですよ」ニコ

魔王「・・・・側近」

側近「何でしょうか」

魔王「・・・・本当に皆から慕われる魔王とは何なのかな?死ぬまで
  勇者一行から城を守り続ける魔王がそうなのか?」

側近「・・・それは」

魔王「他の道はないのか?人と魔物が手を取り合って共に平和を
  得る事は本当にできないのか・・・?人と話し合うことは本当にできないのか?」

側近「・・・・それはこの魔界の歴史が示していますよ」

その声は重く、冷たい。

魔王「・・・私は魔族の為に本当に必要な事をしたいんだよ、側近」ニコ

側近「・・・魔王様」

・・・なんて優しい魔王。
でもその道は最も辛く、苦しい道。
純粋すぎる貴方一人では耐え切れないかもしれない。
だから私は貴方様を命を懸けて守ろう。これからもずっと、いつまでも。

ーーーーーーーーーーーーーーーー2年後


側近「もうっ!あの人間はどこにいったのですか!?」スタスタ

「・・・・・・・・す」

側近「これはあの人間の声・・・・?」

今は城の中で誰も使っていない筈の部屋から勇者の声がしたのだ。

側近「一体何を話しているの・・・・?」

勇者「ええ・・・・、もうすぐです」

側近が聞いたこともないほど冷たく鋭い声。

「そうか、だが期限は明日までだ。」

勇者「・・・・申し訳ございません」

「良い、律儀にお前が王国を出てから20年も待った甲斐が
あったというものだ」

勇者「はい。必ずや貴方様のお望みに応えられるような
  戦果を持ち帰りましょう」

勇者「・・・・必ず王様に魔王の首を」

王「うむ」

側近「・・・・・・・・・・嘘・・・・よね」

側近「はっはっ」タッタッ

・・・早くこの事を魔王様に伝えなければ

勇者は嘘をついていた。
魔物を救う気などなかったのだ。
ここにくるまで村に立ち寄ったのは今度攻める時に
警戒心を根こそぎ奪う為。
この城に来たのも魔族の戦力の要を潰す為。
いつも浮かべていたあの笑みさえ嘘だったのか。
1年前に魔王様に対して浮かべたあの表情さえ・・・

早く、早くこの事を・・・

ぽたり、と床に滴が落ちる。

側近「はっ・・・・はっ・・・・・・・・・・どう伝えればいいのよ・・・・うっ」ポロポロ

言えない。
言える訳がない。

なぜ私が泣いているのかはわからない。
こんな事などわかっていた事ではなかったのか。
それとも私もあの人間を心の底では・・・

側近「うっ・・・ひっく・・・・・・もう・・・・勇者を信じる
  しかないじゃないのよ・・・・・」ポロポロ

側近「・・・・勇者」

勇者「うぇっ」ビクッ

勇者「ど、どうも側近さん・・・本日はお日柄も良く」ビクビク

側近「・・・・」

勇者「・・・・あれ?今日は殴らないんですね。ってぇえ!?
  今僕の事勇者って・・・・」

側近「・・・・私は貴方の事を信じますよ、・・・・勇者」スタスタ

勇者「・・・・ありがとうございます」

勇者はその後姿を見送る

勇者「・・・そっかぁ・・・見られちゃったんだな・・・」

勇者「それでも僕の事を信じてくれたのか・・・」

魔王「ううむ、暇だな」

側近「・・・・・そうですね」

勇者「どうも」

魔王「む、なんだか結構久しい気がするぞ・・・、仕事は良いのか?」

側近「・・・・・ッ!」

勇者「・・・・・はい、仕事は今日全て休んできましたから」ニコ

・・・・その笑みに何が含まれているのか

側近「・・・・・」

勇者「少し、お話したい事があるんです」

魔王「・・・・話とは何だ?」

勇者「はい、今日をもってここを辞めさせていただこうと思いまして」ニコ

魔王「・・・・どういう事だ」

勇者「言葉通りの意味ですよ?だからですね・・・・」

勇者「記念作りに魔王様と一度戦ってみたいなぁ、と」ニコ

側近「信じてるって・・・・言ったのに・・・・ッ!!!」ダッ

側近「勇者ァアアアアアアアアアア!!!!!」

魔王「そ、側近?!」

側近は城の歴戦の兵士とは比べ物にならないほどの
早さで魔方陣を組み立てる。

勇者「遅すぎですよ」ブン

勇者が軽く手を横に振るっただけで魔法陣がこなごなに
砕け散った。

側近「なっ・・・!?」

勇者「少し大人しくしててください」

一瞬にして側近の自由が拘束される。

側近「・・・・・・ッ!・・・・・・魔王様・・・!!逃げ、て・・・・・・ッ!!」

勇者「そんな状態でよく喋れますねぇ・・・・・」

魔王「・・・・・勇者、貴様本当に何のつもりだ?」ギロッ

勇者「・・・やっとですか、戦闘態勢に入るの遅すぎですよ?」

勇者「言ったじゃないですか、これはただの記念作りだって、遊びですよ遊び」

魔王「遊びで側近にこんな事まで・・・・・!!!私はお前の事
  を誤解していたようだな」

勇者「・・・・いいから早くやりましょうよ」

側近「や・・・・・め、て・・・・・」ポロポロ

ぎしり、と魔王の顔が歪む。

魔王「いいだろう・・・・!!やってやる・・・・!!!」

魔王「・・・・どうした、来ないのか」

勇者「そんな言葉を吐ける程、貴方に余裕なんてない筈なんですがね」ニコ

勇者「・・・・お先にどうぞ?」

勇者は魔王に恭しくお辞儀をしてみせる

魔王「どこまでも・・・・嘗めた奴だ」

魔王の膨大な魔力が魔方陣に転換され、掌に巨大な魔弾が構築される。

魔王「・・・どうだ、これでもお前はそんな口が利けるのか?」

勇者は退屈そうに口を開く。

勇者「あはは・・・そんなに僕と戦いたくありませんか?
  勇者はこんな事しない、勇者は優しい、って今でも思ってるんですか?」

勇者「・・・・側近さんでも殺してみれば貴方の気も変わるんですかね」

勇者はいつものあの笑みを浮かべた。

魔王「・・・・もう、いい」

その声には殺気が篭っている。

魔王「お前はやはり《勇者》だったのだな」

ゴッッッッ!!!!!! という音と共に唸りを上げて魔弾が
勇者に放たれた

勇者「・・・そんな顔で泣かないでくださいよ」

勇者は目の前に迫る魔弾を前にして笑みを浮かべたまま、
そうぽつりと呟いた。

側近「(・・・・ッ!まさか・・・・!)」

耳が割れるほどの轟音が城中に響いた。その魔弾の余波
で城の頂上の屋根の半分が吹き飛ぶ。・・・そして静寂が訪れた。

魔王「・・・どうせお前にはかすり傷一つついてはいないのだろう?」

魔王は自傷気味にはき捨てる。勇者の姿は巻き上がった
粉塵のせいで確認することはできない。

魔王「お前に勝てるとなどは思っていない、だが魔王として私は最後まで戦おう」

側近「魔王様!」

魔王「な、何!?拘束が解けたのか!」

側近「ああ、魔王様、貴方は何ということを・・・」

魔王「・・・どういう事だ」

側近は数時間前に勇者と王様のやり取りの件について話した。

魔王「なん・・・だと」

魔王の顔が蒼白に染まる。

側近「・・・おそらく勇者はわざと魔王様を嗾け、魔王様が自分を殺すように・・・」

震える声で側近は呟く。

魔王「ゆ、勇者・・・・、どこにいるのだ?・・・勇者ぁあああ!!」

悲痛な叫びに応える声は聞こえない。

魔王「う、・・・ぅぁああぁああああああああああ!!」

勇者「か、勝手に殺さないでくださいよぉ・・・」

弱弱しい声で勇者はそう呟いた。

魔&側「ひゃうっ!?」

そういえばよく目を凝らすと人影が見える。

魔王「お、お前よくも私を騙し・・・・・」

そこから言葉が出なかった。我が目を疑った。
服はずたずたに破れ、その服は真紅に染まり、ところ
どころがおかしな方向に曲がっている。
その血に染まった顔はあの笑みを浮かべていた。

勇者「あはは、ちょっと死ぬかと思いましたね・・・。ごほっ・・・流石魔王様です」ニコ

魔王「あ、・・・・あ・・・そん、な」ガタガタ

自分に対する嫌悪で体が小刻みに震える。これは私がやったのだ。

側近が勇者に駆け寄る。

側近「勇者!大丈夫ですか!?今、回復魔法を・・・・」

側近の手を勇者が掴む。

勇者「しなくていいですよ・・・。これは僕に対する罰です
  から。回復魔法なら自分で今やってます。まあ、
  ぎりぎり立てるぐらいまでで止めますけどね」

魔王「・・・なぜこんな事をしたんだ、お前ならあんな魔弾
  ぐらい軽く止められるだろう?」

魔王の手はまだ軽く震えている。

勇者「元々魔弾自体はくらう予定だったんですけどね。
  魔王様の泣いている顔を見たら防御魔法を使う
  気になれなかったんですよ・・・・」

魔王「・・・馬鹿だな、お前は本当に・・・」

側近「・・・勇者はこれからどうするつもりなんですか?」

勇者「これから王国へ向かいます。魔王討伐の期限は明日ですから」

魔王「そんな体で行くのは無茶だ!」

勇者「大丈夫ですよ。歩いていくわけじゃないですから、
  それに徒歩じゃ1日で王国に着きませんし」

夥しい数の足音が響いてくる

兵士達「一体何があったのですか!?」

側近「後で説明しますから、今は出て行ってもらえますか」ギロッ

兵士達「は、はい」

ぞろぞろと部屋を出て行った。

側近「どうして勇者はこのような事を・・・?」

勇者「王国に僕が魔王に敗北した事を知らせる為ですよ」

魔王「・・・・勇者」

勇者「人間の魔法に関する技術はもはや魔物を超えてい
  ます。並大抵の事では誤魔化すことができないんですよ」

魔王「私と戦ったのもその為なのか・・・?」

勇者「ええ、そのお陰で僕の体には魔王様の残留魔力
  が残ってますから、少しぐらいなら誤魔化せるはずです」

魔王「そういう事なら事前に話してくれれば・・・!」

勇者は穏やかな顔で魔王に告げる。

勇者「僕と本当に戦いましたか?」

魔王「・・・・それは」

勇者「・・・もう時間もありませんからね」

側近「それならもっと前に話していれば良かったのでは?」

勇者はすこし困ったような顔になった。

勇者「うぅ、・・・痛い所つきますね」

勇者「・・・それは楽しかったからですよ」ニコ

側近「・・・それはどういった・・・」

勇者「僕が最初に来たときの事を覚えていますか?」

魔王「ああ、見たときからおかしな奴だと思ったぞ?」

勇者「うっ、それはちょっとおいときまして・・・最初は
  僕も大変だったんですよ。皆さんからボコボコに
  されたり、食事五日間連続なしとかされたり」

側近「それは誰の事を言ってるんですか?」ガスッ

勇者「ぐはっ!うぅ・・・怪我してるのに容赦ないですね」

勇者「でもそれも時間が経つにつれてだんだん皆さん
  も僕に対してそんなに厳しくなくなっていって
  、そこからだんだんと楽しくなってきたんですよ」

側近「・・・・」

勇者「ちゃんと話ができるようになってからは皆さん
  の事がよくわかるようになって・・・・仕事もちゃんと
  やらせてもらえるようになって」

勇者は満面の笑みを浮かべて話を続ける。

勇者「今となっては逆に僕に話しかけてくれたりして、
  毎日忙しいですけど色んな方と笑って話せて」

勇者「そんな生活が僕にとってはすごく大事になった
  ですよね、魔王様や側近さんや皆さん全員がいる生活が」

勇者「村の人たちだってそうです。僕がここまでくるまで
  に出会った人たちも本当に良い方達ばかりで、辛い事も多かったですけど」

魔王「勇者・・・・」

勇者「だから僕はどんなに辛くなっても限界までこの
  生活を続けたかった、続けたかったんです」ニコ

勇者「でも、もうその時は来ました」

魔王「ああ、・・・・そうだな」

勇者「魔王様、お願いしたいことがあるんですが」

魔王「・・・言ってみろ」

勇者「人と、・・・・人間と協定を結んでくれませんか?」

魔王「・・・無理だな」

勇者「何故ですか?」

魔王「人間は、奴らは私達に対する敵対心が強すぎる。
  それに勇者は今の人間は強い魔力を有していると
  言ったな。仮に奴ら一人ひとりが勇者一行の一人
  と同等の働きができるとするならば危険が高すぎる」

勇者「その為に僕がいるんです」ニコ

勇者「それに全ての人間が魔物を嫌っているわけでは
  ありませんよ?」

側近「そんなことは・・・・ありえるかもしれませんね」

・・・このような人間がいるなら。

魔王「それでもだな・・・」

勇者「なら信じてください、僕の事を」

魔王「・・・魔王が勇者を信じる・・・か」

魔王「あはっ、あははは!本当にお前は面白い奴だっ」

魔王は腹を抱えて笑う。

魔王「ふふっ・・・・いいだろう、その冗談呑んでやる」ニコ

勇者「ありがとうございます」ニコ

勇者「では僕は先に王国に行ってるので後を追ってきてくださいね」

魔王「王国の下町にあるお前の家を見せる約束、忘れるなよ?」ニヤ

勇者「うっ、い、いってきますっ」ドンッ

赤く焼けた空を見上げて魔王は呟いた。

魔王「あの飛行魔法、今度教えてもらいたいものだな」

側近「そうですね・・・」

魔王「・・・それと側近、お前さっき勇者と何をを長々と話してた?」

側近は勇者のような笑みを浮かべる。

側近「・・・・些細なことですよ」ニコ

10時間後

ーーーーーーーーーーーー王国のはずれの村

村人1「ひっひっぃいいい!!!ば、化け物め、今頃何しに
  きやがった!!ここには何もねぇぞ!!」

勇者「・・・すぐに出て行きますから、安心してください」ニコ

勇者が村の中を歩くたびに悲鳴があがる。
来るな、化け物。
悪魔め。どこかへ消えろ。

勇者は涼しい顔をして歩き続ける。

・・・やがてある墓標に行き着いた。

勇者「あはは、埃と雑草だらけ、ひどいね、掃除しないと」

勇者「久しぶり、父さん」ニコ

・・・・やばい、俺6時には落ちなきゃいけないのに
まだ書き溜めの4割しか投下できてない;

ーーーーーーーーーーーー約30年前

家の前にある少年が立っている。
その顔は暗く、沈んでいたが、やがて手で自分の顔が
モニュモニュ揉むと笑顔になった。よし、と少年はドアを開ける。

少年「ただいま!父さん!」バタン

父「おう!おかえり!遅かったなぁ、今日も友達と遊んできたのか?」ニカッ

少年「う、うん!そうなんだ!」ニコ

一人森の中で時間を潰していた、などとは当然言えない。

少年「今日のご飯は何?」

父「くくく、聞いて驚け!今日はグリズリーを使った肉鍋
  だぁーーー!!!」ドーン

少年「わぁ、お肉たくさん入ってるね!」

父「おう!たくさん食えよ?」

少年「もぐもぐ・・・ねぇ父さん」

父「なんだ?」

少年「・・・僕、もうすぐ10歳だよね?」

父の顔がびきりと固まる。

父「・・・・・・・ああ、そうだな」

少年「僕、王国に行きたいんだけど・・・・」

父「駄目だ」ギロッ

少年「ど、どうして?」

父「駄目なもんは駄目だ。他の事なら何でも許してやるが
  王国に行くのだけは駄目だ」

少年「・・・・どうしてさ、どうして駄目なの?理由がなきゃわからないよ!」

少年の目に涙がたまる。

父「・・・・・ッ!!お前は知らなくていい事だ。知っていい事と
  知ってはいけない事があるんだ。」

少年「・・・・ねぇ、父さんも僕には言わないでくれてるけど知ってるんでしょ?」

少年「僕が化け物って呼ばれてる事」

すみません;
ss書いたの初めてでして、もうすこし詳しく教えていただければと;

忍法帖lv5しかないけどもっとすぐに投下できると思ったんです;
!ninja死んでたからその隙にスレ立てたんですけど・・・・俺が馬鹿でした

早く投下したらしたで規制食らうからそれは気にしなくていいかと

あとVIPで二つ目たてると結構叩かれる
でも気にせず投下していく人も結構いるからそれは>>1次第

ss速報なら保守しなくても落ちるこ
とないし、規制も緩い
ただ、ss速報ならもう一度最初から投下するのが望まれるかもしれないけど、結局>>1の自由

>>166
詳細な説明有難うございます。

vipで二つ目を立てるのはやめときます・・・・。
ss速報でlvが10になったら出直してこようと思います。

皆さんに不快な思いをさせて申し訳ないです;

というかもう完結まで書き溜めてるんですけどssのくせに量が
多すぎたな、と自分でも思います

>>173
別に良いじゃん
てか何でもいいから続きくれww

>>174 では時間の許す限り続きを書かせていただきます。

父「・・・・・・」

少年は震える声で言葉を続ける。

少年「本当は今日一人で森にいたんだよ?それだけじゃ
  ない、ずっと、ずっと!ずっと前から僕は一人で森にいたんだ!!」ポロポロ

少年「もう嫌なんだよ・・・・化け物って呼ばれるのはもう嫌なんだ」

父「・・・お前は化け物なんかじゃねぇ、俺の息子だ」

少年「でも!!みんなは違う!父さんは僕の事を認めて
  くれてもみんなは違うんだよ父さん!!」

少年はもう目から溢れるものを止めようともしない。

少年「勇者になれば!!みんなだけじゃなくて父さんも
  喜んでくれると思ってたのに!!」

父は少年を抱きしめた。

父「今だけは、今だけは我慢してくれ。頼む・・・・ッ!!!」ポロポロ

少年「今って・・・・いつまで僕は我慢すればいいんだよぉ・・・ひっく」

少年「父さんはああ言ってくれたけど・・・・やっぱり僕
  にはもう耐えられないよ」

20メートルはあろうかという崖の上に少年は立っていた。

少年「ごめん、父さん」タンッ

目を閉じながら少年は願う。

少年「次に生まれてくる時は皆と同じように生まれますように・・・」ギュ

ゴチャッッ!!! その直後に鈍い音が響き渡った。

・・・もう僕は死んだのかな?
真っ暗で何も見えないよ。
天国にいけたのかな、地獄にいっちゃったのかな?
地獄かもしれないな、父さんにひどい事言っちゃったから。
あ・・・、だんだん目が見えるようになってきた。

だがその光景は地獄でも天国でもなかった。

少年「なん、だよ・・・・これぇ・・・・」

そこに拡がっていたのは血、血、血。
手足はぐちゃぐちゃに折れ曲がり、内蔵のいたる所が
飛び出している。おそらく目が見えなかったのは
頭も潰れていたからだろう。

少年は絶叫する。

少年「なんでこんなになっても僕は生きてるんだよぉおおおおおおお!!!!!!!」

べきべき、めきめき、と歪な音をたてながら少年の意に
反して体が再生する。

僕は化け物。
その絶対的な事実が少年の頭を埋め尽くす。

少年「・・・・僕は死ぬこともできないんだ」ポロポロ

少年に出来ることは・・・ただ泣くことだけだった。

少年「・・・・王国に行こう」

誰に言うでもなくぽつり、と少年は呟いた。

少年「僕みたいな化け物が皆に認められるには勇者になるしかないんだ・・・・」

ーーーーーーーーーーー王国・下町

少年「わぁ・・・・、すごいや」

目の前に広がる光景は、少年に衝撃を与えていた。
材木ではなく石材で形作られる家の数々、そしてその遠方にそびえる城は
とても言葉では言い表せない程の絢爛さを誇っている。
その門には豪華な装飾が施されており、城壁には外敵を絶対的に遮断する
魔法が無数に組み込まれている。それらの全てが王国の強大さを物語っていた。

どん、と唐突に背中に何かが当たった。

少年「うわっ」

下町女「あら、ごめんね僕。大丈夫?」

どうやら女の人の荷物が自分に当たったらしい。

少年「だ、大丈夫です」

そう、と女は笑って去っていったが、少年はそれどころではなかった。

少年「ここでなら・・・・、僕はただの少年なんだ」

その事実は少年にわずかな希望を与えた。

てかあと半分ちょっとだろうまくいけば完結できる

ーーーーーーーーーー王国・教会

教会男1「そうですか、貴方はここに勇者になる為にやってきたと?」

少年「は、はい」

教会男1「・・・・ですが、貴方は生まれたときに《神の祝福》を受けていま
    せんね?もしそうなら残念ながら貴方では・・・・」

少年「・・・・やっぱりそうですよね、村生まれの僕なんかじゃ勇者になれる
  わけ・・・・ないんだ」

少年は視界が絶望に染まるのを感じた。

教会男1「・・・・今、村生まれと言いましたか?」

少年「はい・・・、そうですが」

教会男1「もしや・・・・君の名前は少年というのでは?」

少年「・・・・はい。どうして僕の名前を・・・・?」

教会男1はにこり、と笑う。

教会男1「君の事をずっと待っていたのですよ」

>>183 それはちょっと厳しいかもしれないです・・・

「とうとうこの時が来たのか」

「まさか奴の方からのこのこやってくるとはな」

「これが成功すれば王は世界の全てを手に入れなさる」

「今まで10年もの間我らを欺いてきた《王国の英雄》でさえも、もはや
 我らの邪魔はできんよ、くはは」

僕は勇者になれるって教会の男の人が言ってくれたんだ。
これでやっと僕もみんなに認められる。
もう僕は化け物なんかじゃない。
勇者なんだ。

教会男1「この聖水を飲みなさい、そうすれば次に目覚めた時には・・・」

少年は頷き、渡された聖水を飲み干した。

教会男1「君は《勇者》だ」

少年「あ・・・・れ」グラッ

その瞬間、少年の意識は暗転した。少年が最後に見たのは、教会の男の
魔物のように凶暴な笑みだった。

あ・・・・れ・・・・。
僕は勇者になれたのかな?
体がうまく動かないよ、どうしてだろ?目を開けなきゃ・・・・

少年「何・・・これ」

少年は何も身に纏うものは纏っていない。その上手足には強固な鎖が
繋がれており、体には血で魔方陣が描かれてる。目を動かせば
自分は30メートルもの巨大な魔方陣の中央にいる事がわかった。
遠くで教会の人が騒いでいるのがぼんやりと聴こえる。

「馬鹿なッ!!なぜ奴は起き上がっている!?」

「・・・・化け物め、奴に与えた睡眠薬は一万人分相当の量を凝縮したものだぞ・・・・!!」

「こうなってしまっては・・・・、アレを使うしかないようだ」

合図の声と共に教会の人間達は皆一斉に巨大な魔方陣に手をつけた。
少年に対する魔法が発動する。

少年の絶叫が教会の地下に響いた。

少年「あぎゃ、ぐがぁあああああぁああがががががががあああああ!!!」

崖から落ちた時とは比べ物にならない激痛が少年を襲う。
痛みに暴れまわりたくても鎖がそうはさせない。

教会男1「これでも死なないとは・・・・、やはり王の仰っていた通りだったか。
  全く恐ろしい化け物だよ、お前は」

男は少年に近づく。その手にナイフとある水晶のような珠を持って

教会男1「・・・・少し大人しくしていてくれよ?」

そう言ってナイフを少年の胸に突き刺し、その傷をこじ開ける。

少年「あがっ!?ぐがぁああが・・・・ッ!!!」

教会男1「こいつをお前の中に入れればお前は《勇者》になれるんだ」

教会の男がその珠を傷口に近づける。

なんで・・・、なんでボクだケが。
なンデボクダケガ。
コンナメに遭ワナキャイケナインダ。
ボクハナニモシテナイノニ、・・・・・・ボクをイジメルのワオマエタチカ?

ぷつん、と少年の頭の中で何かが切れた。

ガキンッ!!! と何かが千切れた音がした。

教会男1「・・・・なんだ今の」グキャ

だらりと糸が切れた人形のように教会の男は倒れる。
その時、教会の人間達は何を見たのかを知るものは今はもういない。

「ば、化け物・・・・・」ガチガチ

「い、命だけは助けてくれ・・・・」ガタガタ

少年「なんだよ」

少年は呟く。血の涙をながしながら

少年「・・・・そんな目で僕を見るなよ」

少年は笑っていた。

少年「・・・・うっ」

少年のいる場所は静まりかえっている。

少年「どうして僕・・・・、確か教会で聖水ももらって・・・・うぅ、頭が痛いよぉ」

ぬるり、と急に足元に生暖かい感触を感じる。

少年「うわっ!な、何これ・・・・・、え・・・・?」

自分のいる部屋に明かりはなく、明確に判断する事はできない。

少年「これって・・・・・血?ま・・・・さ、か」

少年の顔が蒼白にそまる。すぐに明かりと灯す魔法を行使した。
だが明かりに照らされる少年の顔は赤い。

少年「・・・・・ぁ、・・・・あ・・・・・あぁ」ガチガチ

目の前の光景を信じる事ができない。
殺戮と破壊。この二つの言葉以外にこの状況を表す事はできない。

・・・・・・・・・これを僕がやったんだ。

少年「う、うぁああああああああああああああああああああああああ!!!!」

少年がどれだけ後悔し、悲しみ、泣き叫んでも・・・・・一度自分が奪った
命が再び元に戻る事はなかった。

・・・・もう僕に出来る事は何もないんだ、もう何も。
死ぬこともできない、命を助ける事もできない、それどころが
多く人の命を奪ってしまった、生きるためではなく、ただ殺した。
もはや僕に勇者になる資格は、ない。

・・・・・僕は何のために生まれてきたのかな。

教会の人間が少年の下に駆けつけたのは、一時間ほど経ってからだった。

教会女1「・・・貴方が責任を負う必要はありませんよ」

やさしい声で少年を諭す。

少年「・・・・・はい」

だがその声は少年の心には届かない。

教会女1「さぁ、行きましょうか」

少年「・・・・行くって、どこに行くんですか」

教会の女は微笑む。

教会女1「・・・・王様がお待ちです」ニコ

その1のいう用事はどれくらいかかるんだ?
出来る事なら保守頑張るぞ

ーーーーー王国・城

王「おぉ、会いたかったぞ、少年よ」

ゆったりとした声が応接間に響く。その端整な顔立ちに
皺が加わり、より荘厳な雰囲気がかもし出されている。

少年「お目にかかれて光栄でございます、陛下」

こんな僕なんかが会っていい方ではない、と少年は思う。

王「もう少しくだけた口調でもよい」ニコ

少年「・・・何故陛下は僕などに会おうと思われたのですか?」

王「少年の話は村から届いている」

少年「・・・・・・ッ!!」

では王は知っているんだ、本当の僕を。

王「少年の事を化け物、などとは私は思わんよ。むしろ特別な力がある
  と誇るべきだろう」

少年は震える声で呟く。

少年「・・・・・本当にそうでしょうか」

>>192 自分が使ってるPCは家族共有でして・・・、親が帰ってきたら死亡なんです;
    申し訳ありません・・・

少年「僕はこの力のせいで死ぬこともできないんです。先ほども教会
  で・・・・・多くの命を奪いました」

王「・・・・それは、難儀であったな」

少年「・・・・・それだけ、ですか?」

王「だがそれは少年の意志でやったわけではないのだろう?」

少年「・・・殺した事は事実です。僕は死ななければならないんですよ・・・!
  これ以上命を奪わないために!早く!」

少年は泣き叫んだ。

少年「でも駄目なんですよぉ・・・!僕じゃ、僕じゃ自分で死ねないんですよ!
  お願いします・・・僕を殺してください、お願いします・・・・!」ポロポロ

王「・・・・そうだな。少年は多くの命を奪っただろう、そのそれぞれにこれからの
 未来があった筈だ。・・・お前はそれを奪った」

少年「・・・・・はい」

王「だがそれで償いになるのか?少年が死ぬことでそれを償いきれると?」

少年「・・・・・それは・・・」

王「なら別の形で償いべきではないのか?」

少年「・・・・そんな事できるのでしょうか」

王「《勇者》となるのだ少年よ、《勇者》となり、より多くの人々の未来を救うのだ」

少年「・・・勇者にはなれません、この力がある限り・・・・!!僕はまた
  命を奪ってしまうかもしれない!」

王「・・・・・・いや、その力を弱めることなら、できる」ニコ

・・・・嘘だ。
この力がどれだけのものなのかは僕が一番よくわかってる。

王「戦士長、アレをここへ」

戦士長「はっ」

少年「そんな事・・・・本当にできるのでしょうか」

王「おそらくは、な」

少年は何故かこの時の王の表情に違和感を感じた。

戦士長「お持ちしました」スッ

それは黒い首輪だった。少年は一目見てそれに異常な魔法がかかっていること
を理解する。

王「うむ、少年よ。それを首につけるのだ」

少年「はい」

少年は潔くその首輪を首に着けた。
恐らくこの首輪は危険だ。自分の本能が拒否反応を起こしている。
だがこれで良いんだ、と少年は思う。

少年「うぐっ!」

首輪を着けた瞬間に体に激痛が走る。
それからじろじろと体の中が蝕まれていくのがわかった。
自分の中の力が殺されていく。そしてそれに呼応して力が再生する。
やがてその殺戮と再生は自分の半分ほど力が減ったところで止まった。
それと共に自分の力に対する恐怖が薄れていく。

王「・・・・どうだ?」

少年「は、い。信じられませんが、・・・・本当に力が減りました」

王「少年よ、・・・・・《勇者》をやってくれるか?私はお前にやってもらい
  たいのだよ」

少年「・・・・王の御心のままに」

この弱まった力なら僕にも扱えるかもしれない。
この化け物の力を命を助けるために使えるかもしれないんだ。
なら僕は勇者になるしかない。

・・・父の死を聞いたのはそれから五日後の事だった。
父が王国へ一人で攻め入り、返り討ちにあったとの事だ。
・・・・おそらく僕を取り戻す為に。

勇者「暫しの間、城を空ける事をお許しください、陛下」

王「良い。勇者の父への手向け、存分にしてくるがいい」

勇者「有難きお言葉、失礼します」スッ

勇者の後ろを見送り、王は一人、笑う。

王「さて、どう動く?勇者よ」

ーーーーーーーーーー王国のはずれの村

村人「・・・・おめぇか」

勇者「・・・・ご無沙汰してます」

村人「はっ、えらくなったようだがな、ここじゃ誰もお前の事を勇者と
  呼ぶ奴はいねぇぞ」

勇者「それは、わかってますよ。僕の父の墓は、どこにありますかね」

村人「・・・・お前らの家の傍だ。作ってやっただけ有難く思えよ」

勇者は唇をかみ締める。

勇者「有難う・・・・ございます」

勇者は自分の家へと向かった。父の墓を目の前にして、勇者は笑う。

勇者「・・・・小さいお墓だね」

墓にぽろぽろと滴が落ちる。

勇者「ごめんなさい、父さん」

勇者「この家にいるのは、・・・・もう僕一人だけなんだ」

数日離れていただけなのにひどく懐かしく感じる家
の中を見渡す。

勇者「・・・・これは?」

勇者はテーブルの上に一冊の本を見つけた。
勇者は椅子に座り、本を開く。するとそこに父の字があった。

勇者「父さん・・・・?」

息子へ


お前がこれを開いているなら、俺は死んだんだろうな。

俺が死んだのはお前のせいじゃない。俺がお前をもっとちゃんと
見てやれなかったからだ。・・・・本当にすまん。

・・・この本には俺の全てが書いてある。もちろんお前に初めて会った
時のこともな。

もっと前にこの事を話していれば良かったのに、と今は思う。
だがこれは決してお前の為を思って話さないでいたんだ。
だからこれから書いてある、まぁ話すことは楽しいことじゃない。

でもお前にはもう伝えると決めた。・・・・さぁ紙をめくるんだ。
お前にはここから話そうと思う。

・・・・俺が《王国の英雄》と呼ばれていた頃について

                          お前の父より

勇者「・・・・父さん」ペラッ

勇者は本のページをめくると魔法が発動した。

父『よう、開いちまったんだな、息子よ』

勇者「・・・・・本当に父さんなの・・・・?」

父『それ以外だったらなんだってんだよ?』

勇者の頬から涙が伝う。

勇者「・・・・・どうして死んだんだよぉ」ポロポロ

父『・・・・男にはやらなきゃなんねぇ時があるってことだよ』

父『あ、一言いっとくがこの喋っている俺は正真正銘の俺じゃねぇからな。
  簡単に言えばこの本に俺の記憶と意識を複製したんだ。まぁそんな
  の簡単にできるわけねぇから完璧じゃないって意味でな』

勇者「父さん、そんな魔法が使えたんだ・・・・・」

父『おうよ!崇めていいんだぜ!?なんたって俺は《勇者》だったん
  だからな!!お前の先輩だ!』

勇者「・・・・・嘘、でしょ?」

父『だから全部話すって言っただろ?俺は300年前に魔王を打ち倒した
  《王国の英雄》って呼ばれた勇者だ』

父『まぁ、本当に伝えたいことはそんな事じゃねぇんだけどな』

父『俺は王国で生まれ育ったんだ。お前は村で育ったからわかんなかった
  だろうが、王国では憎むべき敵は魔物、魔物を殺す事は名誉って
  なんとも馬鹿らしい洗脳教育が流行っててな』

父『・・・・俺もその洗脳された馬鹿の一人だった。俺は10歳の時に
  《神の加護》を受けているって発覚してな。勇者の素養があったんだ』

勇者「そうなんだ・・・・」

父『俺は浮かれてたよ。周りから勇者様、勇者様って言われてな。魔法だ
  ってその辺の魔法使いなんか俺の足元にも及ばなかった』

父『だから勘違いしてたんだ。勇者になるってことがどういう事かをな』

父は静かに言葉を続ける。

父『俺が24歳ぐらいになってよ。とうとう魔王討伐の命が下されたんだ』

父『でもそのころには俺も流石に異変に気づいてな。どう考えても
  4人だけで魔王討伐って無茶だろってな』

父『4人の他にも魔王と戦える奴はごろごろいるのになんで4人で行かな
  きゃいけないんだって俺は何度も王に問い詰めたさ。でも王は
  そういう決まりなのだ、の一点張りだった』

父『だから俺達は行ったよ、4人だけでな。まるで死刑台に送られる
  囚人みたいだったぜ?ははは』

勇者「・・・・・」

父『最初は良かったよ。人間界だと殺すのに罪悪感も感じねぇ姿、知能
  を持った奴しかいなかったからな。だが魔界では違った。
  どう考えても俺たちと同じ知能と、感情を持った奴らがいたのさ。
  いや、俺たち人間なんかよりずっと頭の良い奴もいたぜ?』

父『そんな奴らを殺して心は痛まないのかって?そりゃ痛むさ、だがよ。
  そんなもんは麻痺しちまうのさ。あの時は何でも恨んだ。4人だけで
  この痛みを背負わされなきゃいけなかったことを、仲間が俺以外
  皆死んじまった事をな』

父『死んでった仲間は俺になんて言ったと思う?勇者、お前ならできる、
  だからお前だけでも生きろ、そう言ったんだ。そんな俺はどう
  すりゃいい?』

父『俺にできるのはその責任から逃げることだけさ。痛みから逃げないと俺が
  壊れちまう。逃げる為に殺して殺して殺して・・・・・結果的に俺に
  残されたのは魔王の抹殺の命と魔物に対する憎悪だけ』

父『魔物達に俺の姿はどう映ったんだろうな・・・・、よっぽどの化け物
  に映ったに違いねぇ。お前よりもよっぽどな。・・・・話し合えば
  分かり合えたかもしれねぇのになぁ・・・・』

勇者「・・・・父さん」

父『最終的に俺は魔王を殺しちまった。どうやったかなんて覚えてねぇよ。
  命からがら城に逃げ戻った俺は英雄扱いだ。・・・・だが俺にはもう
  何も残っちゃいなかった。そんな俺が《王国の英雄》だと?
  ふざけんじゃねぇよ』

父『だが俺には人並みの王国へ対する憎しみだけは残ってたらしくてな。
  俺はどんな事でも《王国の英雄》の伝を使って王国の事を
  調べて調べて調べまくってやった』

父『・・・・そして俺は人間として知っちゃぁならねぇ事を知った。
  それがばれて王国から追放さ、まぁ命あっただけマシだけどな』

父『そっからの俺は魂が抜けたみたいになっちまってな。全てがもう
  どうでも良くなっちまったが、3人の事が頭から離れなくってよ、
  ・・・・・死ねなかった。それがあいつ等との最後の約束だからよ』

父『それで俺は王国のはずれの村に住むことに決めたんだ。近かったし、
  それに村に入ってくる魔物を人から守ることで俺の心を慰めたかった
  んだよな。俺は良い事してる、ってな大した偽善だろ?』

勇者「そんな事・・・・ないよ」

父『・・・・そんな生活が300年続いたよ。いつものように俺は森で飯の為に
  適当な獲物を探してたらよ。森の奥である赤子を見つけたんだ』

勇者「・・・・・それが・・・」

父『そう、お前だよ』

父『俺は急いでその赤子に駆け寄ったよ。餓死してるだろうとは
  思ったけどな』

勇者「でも僕は死んでなかった」

父『・・・・そうだ。俺はお前をその時見た瞬間にわかった、ああ、この子は
  特別な存在なんだ、とな。そして同時に思ったんだ、この子がこの
  先どのように生きていくのかをな』

父『皆から化け物と呼ばれる事は容易に想像できた。それだけじゃない、
  皆がこの子を災厄の子として殺そうとするだろう、と』

父『なんて悲しい運命を背負った子だ、と思った。だからこそ俺は
  お前を自分で育てようと思ったんだ。自分で運命を選択できる日まで
  俺がお前を守り通そうと思った。まあ、そうする事で俺がしたことの
  罪を償いたかったのかもしれないがな』

勇者「・・・・・そして今が選択の時なんだね」

父『ああ、できればお前がもっと成長してから選択させてやりたかった
  んだがな。さて、これから俺がお前に話すことは全て最も重要かつ
  本当の事だ。覚悟はいいな?その上でお前が自分の運命を決めるんだ』

勇者「うん、受けてたつよ」

勇者「・・・・・全てわかったよ、父さん。この王国のことも、魔界のことも
  ・・・全部」

その声は落ち着いている。

父『・・・・・ならお前の選択を聞かせてもらおうか』

勇者「今の話が本当でも僕の選択は変わらない、僕は・・・・」

勇者「・・・・人間と魔物が共存できる世界を作るよ」

父『ああ・・・・、それがお前の選択ならもう言うべき事はねぇ・・・。お前なら 、できる』

父『最後に一言言ってもいいか・・・・、もう、この魔具の魔力が切れそうだ』

勇者「なんでも言ってよ、父さん」

父『お前と、・・・・過ご・・・せた、10年間は・・・・何よりも幸せだった』

勇者「・・・・じゃあ、僕も一言」

勇者はもう泣いてはいない。

勇者「僕、本当に父さんの息子で良かったよ」ニコ

父『は、・・・・・は、最後の、最後に、嬉しい、事言いやが・・・・』

・・・・もう父の声は聞こえない。

勇者「おやすみ」

勇者は穏やかな顔で、そう告げた。

ーーーーーーーーーーーー30年後

勇者「確かに勇者になってから辛いことも悲しいこともあったけど、
  ・・・・・楽しい事もたくさんあったよ?」

勇者は父の墓に話しかける。

勇者「やっぱり父さんの言った通り、ちゃんと魔物さん達だって話せば
   僕の事をわかってもらえた」ニコ

勇者「初めてだったよ。・・・・僕の事を化け物ってわかってても純粋に僕の事
   を見てもらえたのは」

勇者「皆僕に普通に接してくれて、あれほど嬉しい事はなかった。
   やっぱり30年前の選択は間違ってなかったんだって、今は
  はっきりとそう思えるんだ・・・。父さんのお陰だよ」

勇者「・・・僕がこれからやろうとする事は、もしかしたら人も魔物も
  全ての生き物達が喜ぶ事ではないかもしれない」

勇者「でも皆は僕の事を信じてくれたんだ。・・・・だから僕も自分の事を最後
  まで信じてみるよ。じゃあ父さん」

穏やかな笑みを浮かべて、

勇者「いってきます」

勇者は歩き出す。

キリがいいので、そろそろこの辺でやめた方がいいような気がするのですが・・・・?

先が気になって仕方がない
頼むから続けてくれ

いつまで保守すれば続きが読める?

>>221 ではあと30分頑張ります

永かった。
私のしてきた事の全てが、今日報われる。
やっと、やっと私は世界の運命を掌握する事ができる。
・・・・世界の王になるのだ。

王「・・・・久しいな」

王はその者を見据える。

王「勇者よ」

勇者「ええ、お久しぶりです。陛下」

あとドンくらいあるの

>>222 恐らく今日中は無理だと思います・・・申し訳ありません; 

王「話は聞いている。・・・随分なやられ様だな」

勇者「・・・申し訳ありません。私の力が至らなかったばかりに王様のご期待
  に副うことがかなわず」

王「良い。20年間、よく《勇者》をやってくれた」

王にどす黒い笑みに口を歪めた。

王「・・・・もう休め」

その瞬間、巨大な魔方陣が勇者を中心に展開される。

勇者「これは・・・・・ッ!!」

王「・・・お前にこの魔法を破壊する魔力がもう残っていないことなどもう
  わかっている」

勇者「・・・・ッ!!ぐっあっ・・・・がっ!?」ビキビキ

勇者はこの激痛を知っている。何故かはわからないが体が覚えている。

王「くはは、どうだね。30年振りの激痛の味は」

>>224 あと4,5割ぐらいでしょうか・・・

勇者「それは・・・どういう、事だ・・・・ッ」

王「ああ、そうだった。お前は覚えていないのだったなぁ、30年前の
  あの事を」

王「しかしこの20年間のお前の《勇者》としての働きは素晴らしいもの
  だったよ」

心底愉快ような笑みを浮かべて王は言葉を続ける。

王「・・・お陰で今度こそ魔族を一匹残らず殲滅できる」

勇者「・・・・王、貴方は・・・・ッ!!」

王「何も私が知らなかったとでも?お前がこの20年間何をしていたかを、
 私がそこまで無能だとでも思ったか」ドカッ

勇者「ぐっ・・・・」

王「いやはや、この20年間お前がずっと魔族に媚を売ってくれたお陰で
 随分と奴らの守りが薄くなった。その点については感謝している」

王は勇者の血に濡れた金色の髪を掴みあげる。

王「だがそんな事はどうでも良いのだよ」

王の笑みが一層深まる。

王「私にとって重要な事はお前に《勇者》として奴らとの壁を薄くする
 ことではない。その20年という期間こそが必要だったのだ!!」ガスッ

王「そうだ。・・・・全てはお前を殺す為だ、勇者」

勇者「ごほっ・・・・殺すなら30年前に殺せば良かっただろう」

王「ああ、ああそうだな。できるならそうしていた。」

王の表情が狂喜から憤怒に切り替わる。

王「だが殺せなかったのだよ!!お前は!その力を半減させたとしても
  この私でさえ!殺す事ができなかったのだ!・・・ああ、なんという化け物だろうな」

王「逆に殺そうとすれば、その力が暴走しこちらが皆殺しにされる可能性
  があったのだよ。・・・だから私はお前に楔を打ち込んでおいたのだ」

勇者は激痛に脂汗を滲ませながらかすれた声を漏らす。

勇者「・・・・それがこの首輪、か」

王「ああ、そうだ。その首輪はただの魔具ではない。呪われた魔具なのだよ。
  なにせお前ほどの存在にその力が届くのだからな。それを創り出した
  存在はある意味お前と同様の存在と言えるだろう」

王「・・・・その魔具は《元始の魔王》が創り出したものなのだよ」

1は親が寝てから戻ってくることは出来ないかね?

痛みを驚愕が上回る。

勇者「《元始の魔王》と僕が・・・・同じ・・・だと?」

王「・・・そうだ。お前がただの化け物だとでも?笑わせるな。・・・
  私はお前以上にお前の事を知っている」

王「そうだな、冥土の土産に教えてやろう。大昔の伝承だ、もっとも
 この事を事細かに知っているのは今では私ぐらいしかいないだろうがな」

王「・・・この伝承ではお前という存在は《神の子》と呼ばれている」

勇者「《神の子》・・・・?」

王「そうだ。真に《神の祝福》と《神の加護》を受けた者のことと記さ
  れている。私から見ればただの呪いにしか見えんがね、・・・簡潔
  に言い直してやろうか」

王「生まれでたその時から世界を改変するほどの魔力を有している存在、
  それを《神の子》というのだ」

>>230 できないです、ごめんなさい;

王「魔法を行使するという事はその一定空間における事象改変を行う事
 と同義だという事はお前も知っている筈だ。そしてその規模はその
 対価として消費される魔力量によって左右される」

勇者「・・・・」

王「・・・初めて《神の子》がこの世に生まれ出たのは遥か昔の事だ。
 そのときの世界には・・・・・魔族などというおぞましい存在はいなかった。
 もちろん魔界もな」

勇者「・・・・そん、な」

王「・・・もうわかる筈だ。元々魔族など存在しなかったのだ、本来
 この世を支配するべきは人間なのに!!それを《神の子》は邪魔をした!!
 魔物を、魔界を作り出したのはその《神の子》なのだ!!!!!そしてその
 《神の子》は自身の存在を創りかえ、・・・・《元始の魔王》となった」

王「当時我ら人間が有していた技術は奴らが生み出した魔法の前に
 完膚なきまでに叩きのめされた。そのせいで我らは世界の半分に
 追いやられたのだ。その世界の半分を人間界、その片割れを魔界
 と今では呼ばれるようになったがな」

王「奴らが人間界に攻めてくる事はなかった。脆弱な魔物を除いてな。
  それは強い魔力を持つ者は魔界の赤い空の下でないとその力を
  充分に発揮できないからだ、と今ではわかっているが。だがたとえ
  脆弱な魔物であっても、ごく僅かな魔力しか持たない我ら人間に
  とっては恐怖の対象である事に変わりはない・・・・!!我らは常に
  恐怖にさらされて生きていたのだ」

王「だがそこで我らの救世主になったのも新しく生まれた《神の子》
  だったのだ。人間共はほんの一部を除いてその《神の子》を
  救世主だと信仰した、私は違うがな」

王「そして《元始の魔王》に一人で立ち向かう《神の子》の勇気溢れる
 その様を見て人間は奴を《勇者》と呼ぶようになった」

つまり明日まで保守すればいいのか

王「《元始の魔王》と《勇者》元々同じ存在だ。結果はおのずとわかるだろう?」

勇者「・・・・相討ち」

王「・・・・そうだ。そこから魔族と人間の力は徐々に均衡を保つようになり今に至る」

勇者「・・・今では人の方が勝る、か」

王は狂喜に顔を歪める。

王「・・・そうだ。今では我らの方が強く、賢い」

バリンッ と何かが壊れた音がした。

王「・・・ほう、その残り少ない魔力でこの巨大な魔法陣を壊すとはな。力
 だけではないようだ」

勇者「・・・でもそれは幾万もの魂を縛ってまでやる事じゃない」

勇者は立ち上がる。

王「・・・・やはり知っていたか」

王がその笑みを変える事はない。

>>235 皆さんに負担をかけてしまうと自分が心苦しいです・・・・

ーーーーーーーーーーーー11時間前

勇者「側近さん、すこしお時間よろしいですか?」

側近「・・・別にかまいませんが」

魔王が話に割り込む。

魔王「なんだ、何を話すのだ?」

勇者「本当に、くだらない事なんです」ニコ

魔王は口をへの字に変えた。

魔王「むむ、くだらない事ならここで話せるだろう?」

勇者「・・・魔王様は僕を信じてくれないんですか?」

魔王「うぐ・・・なんだかお前はずるいぞ!」

もういい!と言って魔王は歩いていってしまった。

側近「・・・・これは」

側近は防音魔法が張られていることに気づく。

勇者「ええ、これから話す事は本当に聞かれたら困る事なので・・・」

一息入れて、勇者は口を開く。

勇者「側近さん、貴方には全てをお話します」

勇者はいつもの笑みを浮かべてはいない。

勇者「まず貴方には今の人間の実態をお話したいと思います」

側近「・・・・はい」

勇者「側近さんは疑問に思ったことはありませんか?勇者一行はなぜ
  30年周期で攻めてくるのか、・・・なぜたった4人だけなのか」

側近「・・・そういえば勇者は一人でしたね」

勇者「この役目は僕一人で充分ですからね」

側近「確かにそれについて考えた事はあります。ですがいくら考えても
  それを知る方法がないので。・・・あと一つ質問してもいいですかね」

勇者「どうぞ」

側近「どうして貴方はここに来るのが他の勇者よりも20年遅かったの
  ですか?」

勇者「・・・どう言えば良いでしょうか、そうですね。魔王討伐の任務期間
  は本当は20年なんですけど僕以外の勇者は皆2年もかからないで
  魔王城に到達してるんです、だからでしょうか」

側近「なっ!?・・・で、ではなぜ30年周期なのですか」

側近は言葉を続ける。

側近「だっておかしいじゃないですか。《神の祝福》と《神の加護》を
  受けた人間が30年に一人ずつ都合良く生まれるなんて」

勇者「・・・その認識自体が間違ってるんですよ」

側近「それは、どういう・・・・?」

勇者「本当の勇者なんて、この世にはいないんですよ。これまでの勇者は
  全員・・・・人工的に作られたんですから」

側近「・・・嘘」

勇者「残念ながらこれは真実ですよ、これはその《勇者》本人から聞いた事なんですから」

側近「・・・それは」

勇者「ええ、僕の父です」

勇者「人は強欲ですから、今までずっと魔法と強い魔力を手に入れる研究を
  続けてきたんでしょうね。・・・・どんな手段を使っても」

勇者「まず最初に始めたのは魔族の肉体の移植です。これも長年の間
  人体実験を繰り返してきたみたいですが、結局拒否反応が強すぎて断念したらしいです」

側近「なんてひどい事を・・・・」

勇者は表情を変えずに言葉を続ける。

勇者「次に人は魔具を集め始めたんです。その魔具を元にして研究設備も
  一気に段階が進んだらしいですよ?その成果もあって遂に肉体的な実験
  から魔力への実験へと移行できるようになりました」

勇者「そして人は弱い魔物ぐらいなら魔具を使って殺せるようになった
  んですよ。そのお陰で人は恐ろしい事を発見しました」

側近「何が・・・わかったんですか」

勇者「魔物の肉体が死んでも魔力の反応が少しの間残ってたんですよ。
  そこから人はこう結論づけました」

勇者「魔物には肉体と魔力を繋ぎとめる何かの源が存在しているのでは
   ないか、と。・・・・それを人は《魂》と呼びました」

勇者「人はすぐに《魂》を抽出する研究を進めました。そして長年の
  研究の結果、ついに《魂》を抽出し結晶化する事に成功したんです」

側近「・・・その結晶が体内に入っている者が《勇者》なのですか?」

勇者「・・・その結晶を人は《魂のオーブ》と呼びましたが、《魂のオーブ》
  が体に入っている人間全てを《勇者》と呼ぶわけではありません。
  当然拒絶反応は存在しますからね、肉体の移植と比べると危険度は
  下がりますが」

勇者「適正があるんですよ」

側近「適正・・・・?」

勇者「はい、ずっと研究をしてきた人々、《教会》は新しく生まれる
  子供に《神の祝福》という名の実験を始めました。《魂のオーブ》
  のほんの一欠けらをその赤子の体内に入れるんですよ。ほんの
  一欠けらなら拒絶反応はほとんどないので」

側近「・・・・」

取り敢えず明日まで保守する流れでいいの?

勇者「その欠片が体内に入った赤子達は欠片の中の何百もの魔物の魂
   と適応しながら育っていきます。ある子は肉体の強い魔物の
   魂と反応して戦士の素質を、また魔法に長けた魔物の魂に
   反応して魔法使いとしての素質を、という風に」

勇者「それを適正といいます。そしてごくまれに複数の魔物との適正が
  ある子がいるんです」

側近「・・・それを調べるのが《神の加護》なのですか」

勇者はにこりと笑う。

勇者「・・・流石側近さんです。そしてその審査に受かった子は
  《魂のオーブ》の珠を新たに体に埋め込まれます」

側近「・・・・それが」

側近の声は震えている。

勇者「はい、その子供は《勇者》と呼ばれます」

>>245 えっ、そんな迷惑をかけるわけにはいかないです

側近「本当に勇者の言うとおりなら・・・・・」

勇者「そうです。今生きているほとんどの人間の体内には欠片が入って
  いるんですよ。考えれば当たり前の事ですよね、勇者一行の勇者
  だけが特別だったとしたら他の3人はとてもついてこれるわけ
  ありませんから」

側近「・・・なら私達魔族を簡単に滅ぼせるのでは?人間全体が手を組めば
  私達を上回る戦力になる筈です」

勇者「・・・人間だからこそできないんですよ。力を持った人間は人間界の
  弱い魔物にもはや恐れる事はありません、言い換えれば協力
  する必要がないんですよ」

勇者「初めは手を取り合っていた国々も、個々に力を持つにつれて
  他の国を押しのけて我が我がと国の頂点に立とうとしました」

勇者「そしていつしか人間界には十つの巨大な王国が君臨していました。
  でも人間同士の殺し合いを嫌った国々はある提案をしたんです」

勇者「30年に一度、順番に王国から勇者を含めた4人を魔王城に送り出す。
  そしてその王国の勇者が魔王を討ち取ったならば次に魔王が
  倒されるまでその王国が全ての主導権を得ることにしよう
  じゃないか、と」

・・・・勇者は何を言っているの?
嘘よ、嘘に決まってるじゃない、そんな事。
人間の内輪もめの為に、私達魔族は苦しめられてきたというの?

側近「・・・・・ふざけないで」

勇者「・・・え?」

側近は勇者の首を掴み、床に思い切り押し倒す。

側近「ふざけないでよ!!!貴方どうしてそんな事が言えるのよ!?
   私達がどんな思いで日々を暮らしていたか知ってるくせに!!」

勇者は側近の手を掴み、その目を静かに見据える。

勇者「・・・幸い王国単体では魔族を全て滅ぼす事はできません。だから
  魔族は今もこうして存在していられる」

側近「・・・・貴方は何が言いたいのよ、私に絶望を与えたいの?」

勇者「・・・・僕がこの状況を壊してみせますよ」

静かに勇者はそう言った。

側近「・・・貴方何を言っているの?」

勇者「・・・言い換えるならば、今の人間の力を半減させます。今の魔族で
  人間を追い込めるぐらいには」

側近「・・・・人と魔物が共存できるようにするって言ってたじゃないの、
  貴方、やっぱりおかしいわよ」

勇者「僕は魔王様を信じてますから」ニコ

側近「・・・・・ッ!!」

勇者「現代魔王があの方じゃなかったら、僕はこの選択をしなかったかも
  しれません。・・・・でも魔王様なら、正しい事をしてくれると僕は
  信じてる」

側近「・・・貴方自身がやればいいじゃない」

勇者は困ったように笑う。

勇者「・・・僕じゃ駄目ですよ、・・・色々な物を知りすぎてしまった」

勇者「魔王様は僕なんかよりよっぽど純粋で、心が綺麗だ。でも
  それゆえに脆い」

勇者「人は強い、恐らく窮地に追い込まれたとしてもまた力をつけて
  魔族の脅威となって立ちふさがるでしょう。・・・僕はこの連鎖を
  止めたいだけなんですよ」

勇者は穏やかな笑みを浮かべる。

勇者「これから魔王様には色々な困難が降りかかると思います。その時に
   は必ず傍に心から支えられる方がいなければいけない。・・・側近さん、
   これからもずっと魔王様の傍で守っていただけると約束してもら
   えませんか?」

側近「・・・・貴方なんかに言われなくてもわかってるわよ」

勇者「・・・良かった」ニコ

側近「・・・話がこれで終わりなら戻るわ」

勇者「・・・今の話は魔王様にはまだ耐えられないかもしれません。でも
  それを話すかどうかは側近さんにお任せしますね」

側近「・・・・・」

側近は無言で歩き出す。

勇者「あっ、あと一つ!」

側近「・・・・何よ」

勇者「側近さんの素の口調って、そんな感じなんですね」ニコ

側近「・・・・・・・ッ!!!」カァァァ

ドガッ ゴスッ バキッ

勇者「ご、ごふっ・・・・・僕まだ怪我人なのに・・・」

側近「ふん・・・」

勇者「うぐぐ・・・僕の話はこれで終わりです。じゃあ魔王様の下に戻りましょうか」

側近「・・・待って、勇者・・・・、貴方はもしかしたら」

勇者「はい?」

側近「・・・いえ、後に王国でまた会いましょう」スタスタ

勇者「・・・・ありがとう」

申し訳ありません、ここまでで限界です;

明日まで保守する

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

>>256
いやっ、でも親仕事行くの結構遅いんです。朝の10時とかで
もし明日親が仕事じゃなかったら申し訳が立ちません;

>>261
うるさい
勝手にやるだけだから書けそうだったら勝手に書け

自分のミスでこんな事になってしまってすいません;
できる限り明日、また投下させていただきます。

皆さんおはようございます。
皆さんのお陰で完結できるかもしれません
スレ残り200ぐらいですがぎりぎり全部投下できるかもです
これから投下させていただきます

ーーーーーーーー11時間後

王「・・・さて、お前はどこまで人間の事を知っている?」

勇者「・・・・今の人々に自由はない」

王「・・・・そこまで知っていたとはな。流石は《王国の英雄》といった
  ところか」

流暢に言葉を続ける。

王「・・・当然だろう?下僕が力を得れば、その分反乱を起こす危険性は
 増す。それを抑える手段が無ければこの国は成り立たない」

勇者「刃向かう者は皆殺しか」

王「・・・王に対してその口の聞き方、気に食わんなぁ」ドガッ

勇者「ぐっ・・・・そんな事を護衛の前で話していいのか」

王「かまわんよ。なぜならこいつ等もお前同様に全てを知っている。
  ・・・この期に及んで他人の心配とは呆れた奴だ」ガスッ

戦士長「・・・・」

護衛達「「・・・・」」

王「くはは、こいつ等は私に逆らう事はできない。何故かはもう
  わかるな?」

勇者「・・・・人質」

王「そうだ。私はこの王国周辺に存在する全てのオーブを操る事ができる。
 それはそのオーブを宿す者の命を掌握している事と同義なのだよ」

王「この私に刃を向ける程の猛者だ。良い働きをしてくれる」

勇者「・・・なぜそんな事が」

王は嘲笑めいた笑みを勇者に向けた。

王「おや?流石の勇者殿もこの私の秘密についてはわからなかったか」

王「お前は生まれながらの化け物だが、私もまた化け物となったのだ。
 ・・・・何百もの《魂のオーブ》を体内に取り入れる事でな。私には
 神から与えられた適正があった。だからこそ私は王国周辺全ての
 オーブを従えることができる」

勇者は静かに王を見据える。

勇者「・・・・・なぜ貴方はそこまでして力を望む」

ぎしり、と王の表情が歪む。

王「・・・・貴様がそれを言うか。お前にはわかるまい、生まれながらに力を
 持たぬ者の思いなどな」

王「お前ら《神の子》の伝承を初めて知った時、私は何を想ったと思う?
  この世界の真実を我ら人間は何も知らずに生きてきたのだ!!!」ガンッ

王「力のある者だけが世界の運命を決めるというのか!?我らのような矮小
 な存在では自分の運命を決める権利さえないと!?・・・・そうではない!我らこそが至高の存在よ」

王はまるでこの世の全てを憎んでいるかのように吼える。

王「その時私は誓ったのだ!!!魔王が!勇者がこの世界を変えるというのなら
 我らがそれを創れば良いとな!!我らは《勇者》を創った!!!《魔法》を
 魔族から奪った!!この世界を変えるのは我ら人間こそふさわしい!!」

その表情は狂喜に変わる。

王「・・・そして我らは力を得た。魔族などというゴミ虫共よりもな」

勇者「・・・でもそれで民が苦しめば意味なんかない」

王「くははッ!!王の為に身を捧げられず何が民!?誰が力をくれてやったと
 思っている!?無能な下僕共をここまで昇華させてやってのはこの私だぞ!!!」

王は我を謳う。

王「私こそが・・・・・神なのだ」

王「全てを手に入れた私にとってただ一つ懸念が存在した」

勇者「・・・それが僕か」

王「・・・これまでの歴史でも世界が変わる直前に《神の子》は誕生した。
 それが私の最大の障害だった」

王「村からお前の事を聞いた時には全身が震えたよ。ああ、ついにこの時が
 来た、となぁ。・・・まさか《王国の英雄》が育てていたとは思わなかったがな」

王「あいつは厄介な奴だったよ。下手に殺せばお前は心の枷を失い暴走
 する危険性があったからな。生かしておくべきではなかった」

勇者「・・・でも貴方は父を殺した」

王「くはは、まさかお前の方からのこのこと王国に来てくれるとは思って
  いなかったぞ?できる事ならお前にオーブを埋め込んで手駒にしたか
  ったのだがな、欲をかきすぎたせいか貴重な配下達を失ってしまった」

王「お前さえこっちに来てしまえば《王国の英雄》の死など幾らでも
  ごまかせる。あとはお前に父の死を乗り越えるだけの勇者の意義
  を与えてやればいいだけだ」

勇者は力なく笑う。

勇者「あはは、・・・僕は最初から貴方の掌で踊っていただけだったんだな」

王「今更気づいても遅い、そしてそれら全ては今報われる。20年前に
 お前に打ち込んだ楔はここまで大きく、貴様を蝕んだ!!!・・・・本当は
 この部屋には数々の仕掛けが施されていたのだがな、使う必要性はないようだ」

お見せできなくて本当に残念だよ、と狂ったように王は笑い続ける。

王「安心しろ、私は寛大だ。・・・・もうこれ以上苦しませずに逝かせてやる」

勇者は静かに口を開けた。

勇者「・・・・貴方は嘘をついている。僕が貴方にとって最大の障害なら、
  殺すという手段よりもっと危険の少ない手段で僕を遠ざければ良か
  った。違うか?」

勇者「・・・・貴方は僕の力が欲しいんだろ?《神の子》の力を貴方は求めて
  いる。オーブを僕に埋め込もうとしたのも手駒にする為じゃない、
  ・・・従順な研究材料にする為だ」

王「・・・・よくそこまで気づいたものだ」

笑みを絶やさずに王は言葉を続ける。

王「そうだ、当たり前だろう?使いようによっては世界を思い通りに
  改変できる程の力だ。・・・欲しない方がおかしかろう」

王「・・・お前の血肉は人間と変わらん。となればお前の力の根源は」

勇者「《魂》の力か」

王「くはは!正解だよ!私はお前を殺し、その神から授けられた《魂》
 を我が物にする!!私にこそその神たる力は相応しい!!!」

勇者「・・・その強欲が世界を滅ぼすのがわからないのか」

王「お前の意見など聞いていない!これからは私が《神の子》となり、
  世界を導くのだからなぁ!!お前はもはや世界に不要な存在となるのだ!!!」

>>792
文章力は書いていく度ついていく。
さっきからお前の上から目線が気に入らない

>>798 コピペだから落ち着いて・・・

勇者「寛大な王様なら、これから僕がいう事も許してくれるだろう?」

王「・・・・お前は何が言いたい?」

勇者「僕は何も、ただ20年かけて魔王城に向かったわけじゃない。
  僕は貴方が知らない魔法をいくつか使える。・・・分身魔法はその一つだ」

王「・・・・馬鹿、な。分身魔法だと!?」

勇者「できればこの魔法は使いたくなかった・・・、魔脈の事は知ってい
  るな?・・・・魔力は世界を巡っている、その溜り場の事を」

王「・・・・まさ、か」

王の顔が苦渋に満ちる。

勇者「20年かけて僕は何百もの分身を魔脈に配置したんだ。・・・確かに
  《神の子》としての魔力が半減以下にまで弱体化した僕では
  世界を改変する事はできないかもしれない」

勇者「でも世界の巡る魔力を借りれば話は別だ」

王「貴、様・・・・ッ!!」

勇者「王はなぜこの地に居城を構えたのか、それは簡単な事だ」

勇者「・・・・ここには莫大な魔脈が眠っているからだ。この地の力を借りる
  事無しには僕の目的は達成できない。・・・・どうして僕が
  分身ではなくわざわざ本体でここまで来たと思う?」

勇者はにこりと笑う。

勇者「僕の分身が既に王国の中央で魔法陣を構築している。・・・それを
  邪魔させない為だよ」

王に先ほどの狂喜と余裕はもはや存在しない。

勇者「貴方が僕をここでおびき寄せたんじゃない、僕が貴方をここに
  閉じ込めたんだ」

勇者「僕は最後まで待ち続けた。王、貴方が民を思う言葉を発するまでね。
  これは貴方が選択した事だよ。僕も今から自分のする事が良い未来を描く事を願う」

王「ゆ、勇者ぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

王の絶叫に勇者は穏やかな笑顔で応える。

勇者「もう遅い」

世界を改変する魔法が発動した。

ーーーーーーーーー魔界・上空

魔王「むむむ、まだ着かないのか?」

その顔には焦りの色が見えている。

側近「・・・そんな事を言っては飛竜さんに失礼ですよ」

飛竜「きゅるる・・・」バサッバサッ

魔王「あ・・・、う、すまない」

側近「しょうがないでしょう?人間と協定を結ぶなんてそんな
  軽々しく決まるものじゃないんですから。きっと魔王城は
  今も混乱の嵐ですよ?」

魔王「無理やり決めたようなものだからなぁ・・・・、兵士達は賛成
  してくれだが・・・・・・これはッ!?」

魔王の目が上空に固定される。

側近「なんなの・・・・これ」

赤い空が数え切れない程の魔法陣で埋め尽くされている。その一つ一つ
からとても自分では理解できないほどの構成の緻密さが読み取れ、歯車のように蠢いている。
空に描かれるこの壮大な魔法陣は一体どこまで続いているのか。

側近「・・・・勇者」ボソッ

だがそれだけでは終わらなかった。

魔王「・・・・・嘘だろう?空、が・・・・」

空の焼けるような紅は、美しく澄んだ青に変わっていた。

魔王「・・・魔力が減少していないだと・・・・!?」

人間界の空の下では力の強い魔物は充分な力を発揮できない筈だ。
・・・・何が起こっている?

魔王「・・・・急ぐぞ」

側近「・・・はい」

飛竜「きゅるるるるぅ!!」バサッ

ーーーーーーーーーー10日後 王国・下町

魔王「・・・ここが人間の居城か、広いな」

魔王の声は暗く、沈んでいる。

側近「・・・・人間は私達にも劣らぬ魔力を有している、と勇者は言っていましたね」

勇者は自分自身のやるべき事を成したのだ。

魔王「・・・なぜ人間からごく微量の魔力しか感じ取れない。・・・本当にこれを勇者
  がやったと言うのか」

人々の表情は暗い。

側近「・・・会えばわかります」

魔王「・・・そう、だな」

魔王の声は少し震えていた。
決して考えてはいけない事が脳裏から離れない。

ーーーーーーーーーーー王国・城

王「・・・来ると、思っていた」

その顔はやつれ、その眼は淀んでいる。
人間の王の様はこんなものなのか、と魔王は内心で落胆する。

魔王「・・・全てを知っているようだな」

王は皮肉げに笑い、はき捨てる。

王「ああ、そうだな。少なくとも貴様らよりはな」

魔王「・・・では早速、私達魔族と協定をむすんでもらえるか」

王「くはは、断る道理などなかろう。今の私達人間では貴様には勝てん」

魔王「・・・人の王よ、一つ聞いても良いか」

王「・・・いいだろう」

魔王「・・・勇者は今どこにいる?」

・・・勇者のあの膨大な魔力が王国で感じられない。
王は狂喜を孕んだ笑みを浮かべた。

王「くはは、そんなに知りたいか」

王「・・・勇者は死んだよ、無様になぁ。くは、くははははははははははは」

馬鹿な。
馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な。
勇者、お前が死んだだと?
・・・・そんな事があり得るわけないではないか。

体が重い、目の前が暗い、息が苦しい。
・・・・体の震えが止まらない。

魔王「・・・・嘘、だな」

王「・・・くはは、何故そう思う?」

魔王「我が城を勇者が出る前まで勇者は私など比較にもならんぐらいの
  膨大な魔力を有していた。・・・お前に殺されるなど有り得ない」

王「だが勇者が私の前にやってきた時は搾りかす程の魔力しか残って
  いなかったぞ?」

側近は王を睨む。

側近「・・・そうならないから勇者の魔力は膨大だと言ったのです」

王「く、くはは、くははははははははは!随分と信頼されていたようだな。
  いいだろう、・・・絶望を貴様らに与えてやる」

王は懐から翡翠色の水晶を取り出した。

王「この魔具が何かは貴様らも知っているだろう?」

側近「・・・《記憶の水晶》」

王「そうだ。私の記憶の一部を貴様らに見せてやる」

水晶に内蔵された魔法が発動する。魔法陣が部屋の壁に投影され、
やがて映像を映し出す。

映し出されたのは狂気。
何千もの人々が一人の人間を囲み、罵声、呪い、憎しみを浴びせている。
・・・その中央に位置する人間を魔王は知っている。

魔王「・・・・勇、者」

ーーーーーーーー10日前

王「ぐっがっ・・・・あがぁっ」

力が消える。私がこれまで二千年もの間ずっと蓄えてきた力が。

戦士長「ぐっはぁ・・・うぐ」

護衛達「「ち、力が・・・」」

おのれ、おのれ、おのれ・・・・!!

王「貴、様ァ・・・・私に何をした?」ギロッ

勇者「・・・勇者はもう生まれない。・・・・その意味はわかるな?貴方の
  計画の全ては潰えたんだ、これからは貴方達一人ひとりが
  自分で運命を切り開いていく」

王「綺麗事をッ・・・・抜かすなぁッ!!!!!」ドガッ

王「貴様は!!自分が何をしたかわかっているのか!?われら人間を窮地に
  追い詰めたのだ!!勇者の本分を忘れたか!!!」ドガッドスッバキッガスッ

勇者の血に濡れた唇が動く。

勇者「勇、者が人間を助けるって・・・・一体誰が・・・決めた」

王「・・・・ッ!!・・・・貴様はただでは殺さん!!貴様の慕う下僕共の前で!!!
 全ての憎しみを身に受けながら死ぬがいい。・・・・連れて行け!!」

戦士長「・・・はっ、立て」

戦士長、護衛と勇者が部屋を出て行く。

王「・・・・もう全て、全て終わりだ。おそらく魔王共がこちらにやってくる・・・!!
 協定を申しだされれば断ることはできん」

王は歪んだ笑みを浮かべている。

王「・・・だがただで終わるつもりはないぞ?・・・・勇者よ。貴様の努力の
 全てを帳消しにしてくれるわ」

勇者「あはは・・・申し訳ないです、負ぶってもらっちゃって」

戦士長「このぐらいの事は何でもありません」スタスタ

暫しの沈黙が流れる。

戦士長「・・・・勇者様、折り入って申し上げたい事があるのです」

勇者「・・・僕は勇者なんかじゃありませんよ、人々を窮地に追い込んだ化
  け物なんですから」

戦士長「貴方を助けたい。貴方様は私の、いえ、私達兵士の恩人なのです」スタスタ

勇者「・・・」

戦士長「この城の兵士のほとんどは子供や妻などの人質をとられていました。
   ・・・・貴方はそれを救ってくれた。あの邪悪な力があるかぎり私達
   に未来はなかった・・・・」スタスタ

戦士長「だからこそ大恩ある貴方様を私達の命にかえてもお返しに救って
   差し上げたいのです」スタスタ

勇者「・・・駄目ですよ。貴方達が死んだら、家族はどうするんですか」

戦士長の足が止まる。

戦士長「・・・・きっとわかってもらえます」

勇者「・・・それでも駄目なんですよ」

戦士長「・・・それはどういう意味でしょうか」スタスタ

勇者「僕は世界に存在するオーブを消しました。詳しく言えば一つの
  肉体に魂は一つ、という定義を定めたんですけど。それは
  世界全体の人間の弱体化を示唆します、当然人々は混乱に陥るでし
  ょう。何せ自分の魔力がある日突然ほとんどなくなってしまうの
  ですから。寿命も元の人間の平均に戻る」

戦士長「・・・・」スタスタ

勇者「当然人々は何故そうなったのか、誰がこんな事をしたのか、と
  憎しみ、恨みを持ちます。それが誰かわからなければ人間は
  前に進めない、乗り越える事ができない」

戦士長「まさか・・・・貴方様はそこまで」スタスタ

勇者「僕には勇者として化け物としてその役目を受ける義務がある。
  僕がやった、という事実は変わりませんから。・・・こんな悲しい真実を
  人々が知る必要なんてないんですよ」

戦士長「・・・その為に死ぬおつもりなのですか」スタスタ

勇者はあはは、と笑う。

勇者「そんなわけないじゃないですか。死んだふりでもして誤魔化したら、
  さっさと逃げますよ。・・・化け物ですから殺されたって死にません」

戦士長「いえ、貴方様は世界を救う勇者様なのだと私達は思っております。
  必ず死なないというお言葉・・・・信じますぞ」スタスタ

勇者「まかせてください」ニコ

ーーーーーーーーー3日後

勇者「この前はあんな事言っちゃったけど・・・・もう逃げるだけの魔力、
  残ってないんだよなぁ」

勇者「・・・・僕が死んだら悲しむ人とか魔族っているのかな」

脳裏に浮かぶのは父の笑顔、魔王の笑顔、側近の笑顔、近境の村のみんな
の笑顔、これまで出会ってきた魔族、人々の笑顔。

勇者「・・・・申し訳ないなぁ」

勇者「まあ人は僕の事を憎むに決まっているけどね」

あはは、と笑う声が空しく響く。

勇者「・・・・あれ?」

自分の手を見ると微かに震えている事に気づく。

勇者「そっかぁ・・・・やっぱり死ぬのは怖いなぁ。昔はあんなに死にたがっ
  てたのになぁ・・・・でも今は死にたくないや」

僕ってわがままなのかなぁ、とぼやきながら窓のない天井を見つめる。

勇者「・・・・でも僕は勇者だから・・・化け物だから」

ガチャリ、と扉の開く音がした。

戦士長「・・・・時間です、勇者様」

勇者「・・・今行きます」

見渡す限り人で埋め尽くされている。

「「そんな・・・・勇者様が私達を騙してたなんて」」

「「畜生。よくも俺達に呪いを・・・・!!」」

「「魔力を返せーーーーーーー!!!!」」

「「なんて悪魔なの・・・」」

「「早く死んでしまえーーーーーー!!!」」

幾千もの憎悪の塊が勇者に突き刺さる。
・・・僕はこんなにも多く、いやもっと多くの人をここまで苦しめたのか。
ジクリ、と心が焼ける。

王「静まれいっ!!!」

「「「・・・・・・・・」」」

王「・・・既に知っている者もいるだろう!!!」

増音の効果を持つ魔具を使って王は民に言葉を投げかける。

王「今から三日前、我らに卑劣なる呪いをかけた者がいた!!!そのせいで
 我らの寿命は三分の一の減り、魔力をほぼ失った!!!」

王「だが我らは屈しはしない!!!その元凶たる者と捕らえる事に成功した
 !!!それがこの男、勇者だったのだ!!!この化け物は我らにとって魔族
  などよりも遥かに危険な存在だ!!!」

王「この場にてこの化け物を討ち、前に進もうではないか!!!」

「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」」

地鳴りのように人々の咆哮が響き渡った。

魔具を外し、王は勇者に語りかける。

王「・・・どうだ勇者よ、貴様が自由にした者達に憎まれ、蔑まれる気分は・・・・!」

謝りたい。

勇者「・・・・嫌だ」

王「・・・どうした?死ぬのが怖くなったか」

王の顔が笑顔で歪む。

でも駄目だ。僕は最後まで人々に危害を加える化け物でなければならない。

勇者「死ぬのは嫌だ!!死ぬならお前らが死ねばいい!!離せえええええ!!!」

勇者は喚きながら、拘束から逃れようとする。

王は狂喜に歪んだ表情で吼える。

王「見るがいい!!!これがこの勇者の本性なのだ!!!民の事など何も考えて
  はいない!!!取り押さえろ!!!」

護衛「「・・・・っは」」

護衛と戦士長の裏切られたような顔を見るだけで心が張り裂けそうに
なるよ。でもこうしなきゃ憎しみは受けきれない。

勇者「何をするんだ!!離せ!!離せよっ!!!」

「「この期に及んで命乞い?ふざけないでよ!!」」

「「こんな奴に期待してたのか私達は!!!」」

王「くははっはははっははははっはは!最後に貴様の本性が見れて嬉しいよ!
 ・・・・だがさようならだ」

勇者「やめろっ!!撃つなぁあああああああああああああああああ!!!」

これでいい。これでいいんだ。
王は叫ぶ。

王「撃てぇええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

泣くのは死んでからでいい、・・・だから今を精一杯生きるんだ。

勇者「・・・命ある限り、生きる事を諦めてはいけない」ニコ

そうだよね、皆。

王国に十数発もの銃声が鳴り響く。
それと共に民の歓声が轟き、黒い首輪は勇者の血で濡れた。

ーーーーーーーーー7日後

やめてくれ、と何度も願った。でも、銃撃は止まなかった。
勇者は・・・死んでしまったのだ。

王「くははははは!どうだ・・・・?何とも不様な最後だろう?」

魔王「不様などではない・・・・ッ!あいつは・・・・勇者は最後に笑っていた!
  全てを背負って笑って死んでいったのだ!!」

王「全て、だと?・・・貴様にその全てがわかるとでも?」

魔王「・・・・何だとッ!」ギロッ

王「わからんよ!貴様は勇者を知っているだけで何も理解などしていない
  !!なんなら教えてやろうか!?」

側近「やめなさいッ!!」

いけない。今の状態で全てを知ってしまったら魔王様は・・・・!!

王「ほう・・・、お前は何か勇者について知っているようだな」

側近「・・・・ッ!!」

魔王「そう、なのか・・・・?側近」

側近「それは・・・」

魔王の顔が悲痛に歪む。

魔王「ふふ・・・・なんだ、何も知らなかったのは私だけか」

魔王「・・・人の王よ、勇者について知っている事を話してほしい。・・・全て」

王は笑みを崩さずに口を開いた。

王「・・・いいだろう」

王「・・・これで勇者に関する話は終わりだ。どうだ?壮絶な生涯だろう?」

魔王「・・・・お前のせいで勇者は死んだのだな、この首輪も・・・」

王「ああ、あの呪いの首輪がなければ勇者をこの手で殺す事は叶わなかった
  だろうな、それはそれ程に強力な魔具なのだ。込められた魔法を壊す事など
  勇者にすらできはしなかっただろうよ、まさに最凶の魔具と言える」

王はにたり、と口を歪める。

王「・・・・だがそれを選択したのは勇者自身だ」

側近「・・・・何をいっているのですか」

王「・・・《元始の魔王》の魔具は何も使用者から代償だけを奪い取るもの
 ではない。非常に強力な力を与えてくれるのだよ」

王「この首輪の代償は生命力の全てだ、人間には使えん。勇者は強大な魔力で代用したがな、
  ・・・・・まるで《神の子》の為に創られたかのような魔具だろう?」

魔王「・・・代わりにどんな力を得たのだ?」

王「自分が触れた者から命を奪う・・・・いわばライフドレインだよ。
 これで勇者は正真正銘の化け物となったわけだ」

側近「・・・・まさか」

王「くはは、貴様らの思っている通りだ、勇者は自身の魔力が半分に低下した
  だけで回復する事はできる。奴はその恐ろしい力を封じるために魔力の
  回復力分を常に消費し続けていたのだよ!!死ぬまでずっとなぁ!!!」

王「なんという愚かな奴よ!首輪の力さえ使えば死ぬ事は無かったという
  のに!!・・・・だからこそ首輪を奴に着けたのだがなぁ!!」

側近「・・・・これが人間なのですね」

側近は右手に魔力を集め、魔法陣を展開する。
だがその魔法が発動する事は無かった。・・・・魔王によって魔法陣が砕かれたのだ。

魔王「・・・うむ、勇者の見様見真似だがうまくいったな」

側近「・・・魔王、様?」

魔王「お前は私を守るのだろう?ちゃんと自分を保て」

静かな声が側近の耳に届く。

側近「・・・申し訳ありません」

魔王「・・・悪いがそのような安い挑発に乗る程、私は愚かではない」

王「・・・・ッく!!」

魔王は顔を憎憎しげに歪める王を静かに見据えた。

魔王「・・・・人の王よ、お前は私達魔族の協定の申し出をお前の一存で断る
  ことはできない、そうだろう?」

魔王「・・・だからお前は考えたのだ、私にこの王国を落とさせれば良いと。
  そうなれば人間との協定など結ぶ事はできなくなる。・・・なぜそこ
  まで我らを憎む?どうして共に生きる事を拒むのだ」

王「だ・・・・まれ、黙れ黙れ黙れぇええええ!!!このゴミ虫共がぁ!!!貴様ら
  がこの世界に存在している事自体が異端なのだッ!!!貴様らが
  消えなければこの世界に平和は訪れない!!」

魔王「・・・そうか、だが私はこの国を落とすつもりはない。勇者のした
  選択が正しかったと証明する義務が私にはある」

王はまだ狂気を失わない。

王「くはは、・・・・・それはできん。貴様は必ず人を憎み、殺す」

側近「・・・・魔王様、いきましょう。次の王国へ」

王「・・・魔族の王たる者として城を空けるというのはどうなのだ?」

魔王「・・・・何が言いたい」

王「・・・7日前から我が王国の兵士団が貴様の城に向かっている。本当に
 思ったか?魔力が使えなくなった程度で本当に我が兵士の牙が抜ける
 とでも?・・・・魔法が使えなくとも魔具がある。まさか我ら人間が
 魔法の研究だけど続けてきたと思っているわけではあるまいな?」

側近「・・・・ッ!!」

魔王「・・・・・行くぞ」

ーーーーーーー王国・下町

魔王と側近は最初にここを通った時に目に付いた一軒の家の前にいた。
家とは言っても焼け落ち、おそらく町人達が投げ込んだであろう土や石で
その原型はほとんどとどめていない。

魔王「・・・・ふふ、勇者め、こんな所に私達を招待しようとしていたのか。
  失礼な奴だ」

魔王が浮かべるのは勇者がいつも浮かべていた、あの笑み。

側近「・・・・貴方は強く・・・なられました」

魔王「さて、・・・・こんな場所で時間を割いているわけにはいかん。急ぐぞ」

側近「・・・はい」

魔王は静かな笑みを浮かべて呟く。

魔王「・・・泣くのは死んでからでいい。勇者・・・・そうだろう?」

ーーーーーー8日後 魔界・上空

魔王「・・・・あれは」

数百人単位の王国の兵団の軍勢が、魔王城とは反対の向きに
引き返しているのが見える。

側近「・・・・・人間ッ!」

側近の殺気が急激に膨れ上がる。

魔王「よせ、それよりもするべき事がある筈だ」

魔王「・・・私達の民の命が奪われたから殺すのか?それでは
  何も解決しない、・・・何も変わらない。勇者はそんな事を望んではいない」

側近「・・・貴方様は勇者のように振舞おうとしてらっしゃるのですね」

魔王「・・・楽ではないがな。それよりもどうやら私達がいなくとも
  城は守られたようではないか、急ぐぞ」

側近は飛竜の手綱を握る魔王の手が血で滲んでいるのを見て、

側近「・・・はい」

そう答えることしかできなかった。

ーーーーーーーー2日後 魔界・辺境の村

側近「・・・・」

魔王「・・・こうなるのはわかっていた事だ、行くぞ」

村だったその場所には木材と瓦礫だけが散らばっていた。
民の姿は見えない、いや見えなくて良かったというべきか。
土に紛れる程に八つ裂きにされたのか、それとも魔具で
灰にされたのか、それを考える意味はもはや存在しない。
ただわかるのは、人間による暴虐の嵐によって民の命が
全て奪われた、という事だけである。

魔王「・・・・駄目だ」

魔王の脳裏に村の民達の優しい笑顔が浮かぶ。

魔王「泣いては駄目だ。・・・私は勇者の意志を継ぐのだから」

側近「・・・魔王様」

魔王は逃げるように飛竜の元へ向かおうとする。

魔王「・・・む」

足が何かを踏んだ。どうやら石でも木材でもないらしい。

側近「・・・・それは」

側近の目が見開かれる。

『えっと、私達みんなを助けてくれて、ありがとうございました!』

魔王「・・・違う」

『やっぱりお母さんの言った通りだった!魔王様
  は私達魔物の事をいつも考えてくれていて、いつも
  助けてくれる凄い御方だって言ってたもん!』

魔王「違うんだ」

魔王の声は震えている。

『魔王様はこれからも私達が危ない時は助けてくれるんだよね!』

『ああ、そうだな』

魔王「・・・・私は大嘘つきだ」

涙を頬を伝う。

『その首飾りにかけて誓おう。私は必ず皆を守ると』

魔王「・・・・私は約束を破って、しまった」

魔王は青い空を見上げ、呟く。

魔王「・・・・やはり私はお前のようにはなれないよ、勇者」

魔王の眼からあふれ出す滴は、絶えず土で汚れた首飾りに落ち続けた。

勇者、お前が死んだとあの人間の口から聞いた時、
私は何を思ったと思う?
憎い、殺してやりたいと思ったんだ。
あの人間のにやついた顔を潰してやりたい、
お前を死に追いやった人間共を皆殺しにしてやりたいと思った。
私を笑ってくれ、勇者。
私はあの人間と何も変わらない、自分の感情に振り回される大馬鹿者だ。
・・・・だが私には勇者、お前のした事が間違っていただなんて
何よりも耐えられなかったんだ。

魔王「・・・・だが勇者、私はそれさえも・・・・できやしない」

・・・お前の意志を継ぐ事さえも

魔王「・・・私を許してくれ」

側近の震える声が耳に届く。

側近「・・・・魔王、様」

魔王「・・・馬鹿な」

魔王の眼はある一人の人間を捉えていた。
・・・この膨大な魔力に何故気づけなかったのだろうか。
その人間はあの懐かしい笑みを浮かべている。

勇者?「・・・お久しぶりですね、魔王様、側近さん」ニコ

かろうじて自我を保ちながら魔王はその人間に問いかける。

魔王「・・・・お前は勇者だか勇者ではないな。何者だ」

勇者のように見える男は満足そうな笑みを見せる。

勇者?「流石魔王様ですね」

魔王「・・・その顔で笑うんじゃない」

勇者としか思えないその笑顔が、その言葉が魔王の心を深く抉る。

勇者?「・・・魔王様の言っている事は正しいです。僕は
  勇者の分身ですから」

側近「分身魔法・・・ッ!?」

魔王「・・・では」

魔王は震える声でぽつり、と呟く。

魔王「では勇者は生きているのか・・・・?」

魔王自身、自分がどんな顔をしているのかはわからない。
だが代わりに勇者の分身の顔が苦渋に歪むのがわかった。

勇分「・・・・いえ、僕の本体、勇者はおそらく王国で死にました」

勇者分身→勇分 でお願いします

魔王「・・・お前は確かにここにいるではないか」

魔王は震える手で勇者分身の服を掴む。

魔王「なのにお前は既に死んでいるというのか・・・ッ!」

勇分「・・・はい」

側近の顔は悲痛に染まっている。

側近「・・・・本当に死んでしまったのですね」

勇分「それでも貴方達は前に進まなければいけません。
  僕に出来る事は、もう全てやりましたから」

村に魔王の拳が勇分をとらえる音が響く。

魔王「お前は何を言っている・・・?」

魔王は自分の溢れる感情を吐き出す。

魔王「どうやって前に進めというのだ!?私は大勢の民を
  失ってしまった!!お前も死んでしまったのだぞ!?」

勇分は静かに口を開く。

勇分「・・・・前になら、進めますよ」

勇分「ここの辺境の村の方々は誰も死んでなんかいません。
  王国の兵士の人々には一つも命を奪わせてなんかないですから」

側近「では民達はどこに・・・?」

勇分「申し訳ありませんが魔王城にまで来てもらいました。
  その方が守りやすかったので」

魔王「・・・まさかお前は」

勇分「・・・そうです。僕の魔法としての役目は『自身の魔力が
  尽きるまで魔族を守ること』なんですよ」

勇分「・・・王が魔王様のいない隙に、兵を魔王城に攻めさせる
  だろうという事ぐらいは容易に想像できましたからね」

側近「・・・だから勇者は貴方にそれほどの魔力を託したのですね」

勇分「ええ、僕の本体は役目を確実に果たさせる為に自身の魔力
  のほとんどを僕に与えました」

魔王「・・・城を守りきった割りには随分と魔力が余っているようだな」

勇分は困ったように笑みを浮かべる。

勇分「あはは、でも守れたんで良かったですよ」

魔王が激情に顔を歪ませる。

魔王「そうではない!!その余った魔力が少しでもあれば!!・・・勇者の
  命は助かったのではないのか・・・・・・ッ!」

勇分は穏やかに答える。

勇分「・・・・でもそうしたら守りきれないかもしれなかった。違いますか?」

魔&側「・・・・・・ッ!!」

勇分「ほんの少しでも危険性が存在している限り、それを見逃すわけに
  はいかないんですよ」ニコ

魔王「・・・・お前はッ、どう、して・・・・そこまで」ポロポロ

勇分「・・・僕を信じてくれたからですよ。信じてくれる事、それは僕に
  とって何よりも大切な物だから」

魔王は勇分を抱きしめる。

魔王「お前は・・ひっく・・やはり馬鹿だッ!!」ギュッ

側近「・・・今回は見逃してあげます」

まぁ本人だったらぶっ飛ばしますけど、これはノーカンですよね、
と側近はぶつぶつ呟いていた。

ーーーーーーーーーーー王国・城

おのれ、おのれ、おのれ
私の全てを台無しにした、憎き勇者め。
魔王城から逃げ帰る兵士団から連絡を受けた王は拳を台座に
打ちつけ、叫ぶ。

王「死して尚、この私の邪魔をするか勇者ぁあああああああああああああ!!!!!!」ガンッ

もはや人ならざる表情を浮かべ、呻く。そしてよろよろと
歩き出す。一体どこに向かっているのかは誰にもわからない。

王「ゴミ虫以下の腰抜け共め・・・!!くは、くはははははっははは
  は戻ってきたら全員縛り首にしてくれる!!くはははは」

王「くはは、私がこの眼で魔族共の滅亡を見なければ意味などないのだ
 ・・・・・ッ!!どいつもこいつも使えぬ!!!」

口が裂けるかのような笑みを顔にはりつけながら王は一人歩き続ける。

王「くはは、そうだ。使えぬ下僕共などに価値などないではないか、
 くはは、ははははは。私だけが至高の存在であれば良いのだ。
 私こそが神に選ばれた存在なのだ」

王はやがて漆黒の扉の前にたどり着いた。そしてその扉を開ける。
ぞわり、と闇があふれ出す。

王「くは、くははははは、貴様らが無能だから高貴なる私が前に出て
 やるのだ。貴様らが無能だから無能だから無能無能くはははははは。
 誰が愚図共に勇者などまかせるか」

王の目前にあるのは漆黒の武具。正気であれば決して触れなかったで
あろう手をそれに触れる。
闇が、呪いが、苦痛が、悲しみが、憎悪が、憤怒が、力が王の体を包んだ。

王「くがッ!?がぎゃぁがっがぁああああああ!?く、くぎゃ、はははははは
 ハハハはははハはあはははははは!!!!!!!」

求めるはゴミ共の血のみ。

王「・・・・我こそが至高の存在なのだ」

一人の人間の狂気の末に一匹の化け物が誕生した。

ーーーーーーーーー魔界・辺境の村

勇分「・・・魔王様と側近さんは先に城へ向かっててくれますか?
  まだやるべき事ができたみたいなんです」

魔王「・・・なら私も行くぞ」

側近「魔王様が行くのなら私もご一緒します」

勇分「あはは、本当に大した事じゃないので一人で大丈夫
  ですよ」ニコ

魔王「嘘だな」

勇分「・・・・嘘なんかじゃないですよ」

魔王「・・・お前はいつもそうだ。全てを自分で抱えて全てを
  自分で解決しようとする」

魔王「その嘘が私達魔族を傷つけているのがわからないのか。
  お前がもし前もって話してくれていたら何かが変わった
  かもしれんなかった。・・・お前は死ななかったかもしれなかったんだぞ」

勇分は困ったように笑う。

勇分「・・・本来なら全て僕が終わらせるつもりだったんですよ?
  魔族さん達を巻き込んでいるというだけで謝っても謝り
  きれないぐらいなんですから」

側近「そうです。貴方は私達魔族に多大な迷惑をかけました」

魔王「・・・・側近?」

側近「だから全てが終わってから、思う存分謝ってください」ニコ

勇分「・・・あはは、厳しいのか優しいのかわかりませんね」

勇分は眼を閉じ、暫しの間の後口を開いた。

勇分「・・・王国の方角に強大な魔力が感じとれました、恐らく
  王が何かしたんでしょう。それも異常な事を」

魔王「・・・奴めまだ何かするつもりなのかッ!?」

勇分「だから僕はそれを止めに行ってきます」

魔力がほとんど余ってて良かったです、と勇分は笑う。

魔王「・・・止めてもお前は行くのだろう?」

勇分「・・・はい」

勇分「民の方々にはもうお別れはいってあるので、
   鳥族1さんからはなんと剣を一本もらっちゃいましたよ」ニコ

勇分が魔法を発動させる。

魔王「・・・お前にはまだ言ってやりたい事が山ほどあるんだ。・・・必ず戻って来い」

勇分はあの笑みを浮かべて答えた。

勇分「もちろんですよ」

大気を震わす衝撃とともに勇分の姿は消えた。その軌道を見上げながら魔王は呟く。

魔王「・・・・嘘つきめ」

力が満ちる。
何でもできそうだ。
体が軽い、最高の気分だ。
力を持つ者の気持ちが今ならわかる。
我が下僕と呼んでいた物はもはや蟻ほどの存在感も感じない、
どうでもいい。
そんな事よりもはやくこの力を振るおう。
ゴミ虫共を皆殺しにしてやろう。
我ならできる。

・・・・その為には我が国からでなければ。

王「・・・くはは」

自らの足に軽く力を込める。
ゴッ!!!! 轟音と共に地面が爆ぜる。
その跳躍を眼で追える者は、いない。

王「・・・良い眺めだ」

闇夜に月が輝いている。
我の上に存在する者はいない。
我は全てを見下ろしているのだ。
漆黒の鎧から鮮血が滴り落ちる、そんな事はどうでもいい。
・・・我は満たされている。

「そうはさせない」

何だ、コレは。我が国から飛んできた。
我と同じ高さに位置している。
邪魔だ、邪魔だ。頂点に君臨するのは我のみでいい。
消せ、消せ。

勇分2「さて、時間稼ぎをさせてもらうよ」

化け物は一人、呟く。

王「ああ、コレは・・・・邪魔だな」

王国の夜に閃光が迸った。

ーーーーーーーーーーー7時間後

何だ、コレは。
消しても消しても沸いてくる。
ゴミ虫程の力しか感じない筈。しぶとい、邪魔だ。

腕を振るう。
ゴミ虫の首がひしゃげ、消える。

またゴミ虫がやってくる。我が剣を横に払う。
ゴミ虫の胴体が二つに分かれ、消える。

「・・・なんとか間に合いましたね、他の分身はほとんど消され
てしまったようですが」

なんだ、またゴミ虫か。

王「・・・コレで、最後、か」

勇分は静かに王を見据える。

勇分「・・・そうだ。・・・僕の事は忘れられてるみたいだな、
  それとももう見えないのか」

いや、違う。
コレはゴミ虫などではない。
危険だ、危険だ。
こいつの力量は我に届く。
何だ、こいつは、消せ、消せ。

勇分は気負いなく刃を抜き放ち、刃に無数の魔法陣が展開される。

勇分「・・・王、貴方は人として未来を生きるべきだった」

刃を我に向けるだと、無礼な。
黒が鎧の全てを塗りつぶす。全てを消す。・・・・そうかお前は。

王「・・・勇、者ッ!!!」

勇分「これが《勇者》としての最後の戦いだ」

王「我こそがッ!!勇者なのだッ!!!!!!」

光と闇がぶつかった。
その衝撃は人知を超える。
雲は掻き消え、空は割れる。その轟音は全ての生物に畏怖を与えた。
地上の全ての生物には、それが世界の終焉に見えた。

《補足》 なぜ多くの分身が王の足止めをしたのか、という事について

当然、勇者が王の兵士から辺境の村のみを守ったわけではありません。
辺境の村は魔王城への通り道に位置している為に他の村のように気配を
消すだけでは対応できなかったという事です。
要するに勇者は魔王城の通り道周辺全ての村に分身を置いて気配を消していた
というわけですね。
あとは魔脈の使用が終了した分身が王に向かえば筋は通っているかな?
と思います。


ーーーーーーーーーーーーーー魔界・魔王城

魔王「遂に始まったのだな」

大気は震え続けている。

側近「・・・では行きましょうか」

魔王「そ、側近?」

側近「もしかしたらもう勇者とは会えなくなってしまう
  かもしれないのでしょう?行かなくても良いのですか?」

側近は穏やかな笑みを浮かべている。

魔王「ふふっ、そうか・・・・側近も変わったのだな。勇者に会って」

側近「ええ、本当の本当に不本意ですがね。認める他ないでしょう」

民幼女「あ、あのっ」

魔王「どうした?」

民幼女「勇者様は戻ってきてくれるんですよねっ?」

魔王「・・・・きっと私が連れ戻してこよう」ニコ

エルフ少女「私からもお願いします!!・・・まだ何もお礼してないのに
  もう会えないなんて嫌だよぉ」ポロポロ

厨房室の魔物1「そ、そうだ!!雑用がいねぇと毒味できなくてよ!!」

鳥族1「・・・・俺達が行っても足手まといになっちまうからな」

「「「「そうだ!勇者はいい奴なんだ、あいつを連れ戻せるのは魔王様しか
  いない!!あいつはこの城に必要なんだ!!」」」」

「「「「お願いします!!魔王様!!」」」」

魔王「ふふ、・・・とんだ他力本願もあったものだな」

側近「それでいいのでは?貴方様は今間違いなく人間との協定を超えて
  城の者全員から慕われてる、それが貴方の目指す《魔王》だったのだから」ニコ

魔王「・・・そうだな」

・・・これもお前のお陰なのかな。

魔王「勇者、わかるか?お前はこんなにも多く、いやそれ以上の者達に慕われている。
  ・・・・化け物としてではなく」

魔王「お前は一人じゃないんだ、勇者」

ーーーーーーーーーー王国・下町

「・・・なんだアレは」

「も、もう世界は終わりだ・・・」

「魔力もほとんど失って・・・、寿命も半分以上も失って・・・俺達はもうどうすればいいんだ」

戦士長「ふざけるんじゃないッ!!!何故命がある事を喜ばない!!前に進もうとしないんだ!!!」

私は知っています。勇者様、貴方がわざとあのように振舞われた事を。
貴方は私に何を託したのでしょうか。

「何言ってんだ!!今の状態で魔物共に攻められたらもうお仕舞いだぞ!!」

「魔物なんかに殺されるなんて嫌!!」

民の命でしょうか、王国の未来でしょうか。

戦士長「生きる為ならどんな手段でも使えば良いだろう!!魔族と協定を
   結ぶ事だって!!!私達は先人の為に生きている限り生きる希望を捨ててはいけないのだ!!!」

私は貴方様のようにはなれないかもしれない。
でも、それでも私は私なりのやり方で生きる希望を育てていきたい。

戦士長「私達が生きている限り!!希望は潰えない!!私達こそが希望なのだ!!」

貴方様の意志を、私は守り続けると誓います。

ーーーーーーーーーー上空

強い、本当に強い。
本来なら一個体を対象に振るってはいけない僕の力が押されている。
王がどれだけの犠牲を払ってこんな力を得たのか想像もできない。
命だけでなく魂までも捧げたのか。
いや、それだけでは代償として足りない。
まだ人の体の中に入っていない全てのオーブの中に入っている
何万もの魂を代償として捧げたのかもしれない。
ただわかるのは王が自分だけを代償にしただけでこの力を得た
わけではないという事か。

勇分「・・・それを見逃すわけにはいかないな」

莫大な魔力を刃に込め、同時に飛行魔法の加速を最大に挙げる。
それに対し王は大気を蹴り、勇者に勝る速度で向かってきた。
王が剣を振るう度に、勇分が剣を振るう度に大気が割れる音が
何度も響き渡る。

王「くはッ!くははははッ!楽しい!楽しいぞ勇者ぁあああ!!!」

王が手を、足を動かす度に鎧から血が噴出す。

勇分「僕が消されるのが先か、王が自滅するのが先かってとこか・・・」

勇分は自分の魔力が王と剣を交える毎に減っているのを感じ取る。
減るというよりは消えるという表現の方が正しいだろうか。

勇分「あはは、・・・・その剣は怖いなぁ」

王と勇者を何百もの魔法陣が一瞬で構築される。

勇分「僕は生身じゃないんでね」

雷、風、炎、水、その全てが世界をほろぼす災害となって王と勇者にのみ襲い掛かる。
王は狂った笑みを浮かべ叫んだ。

王「そんな物がッ!!!我に効くとでも思ったかぁあああああああああ!!!!!」

ゾンッ!!!!  全てを断ち切る一撃が勇者の右肩を襲った。
勇分は咄嗟に剣を左手に持ち変える。
右腕が綺麗な弧円を描いて飛び、勇分は困ったような笑みを浮かべた。

勇分「・・・このままじゃ勝てそうにないよ、まいったなぁ」

やっぱり魔王の所へ戻ろうとする事自体が軽率だったのか。
・・・僕は約束を破ってばかりだな。

勇分「貴方は僕が今まで出会ってきた中で最も強い」

勇分「・・・だから僕の全てを賭けて貴方を倒す」

勇分の全ての魔力を賭けた魔法が発動した。

何だアレは。
勇者め。あんな魔法を我は知らない。次元が違いすぎる。
また我の邪魔をするのか、我の全てを壊すというのか。

ごぽっ、と血と共に王は掠れた声を絞り出す。

王「我も、真の力をもつよ・・・うになり、わかった」

力を持つ者はその力を行使したい、思う存分振るいたいという
衝動に支配される。我も例外ではない。

王「だがお前は・・・・・それほどの力を持ちながらなぜ力に支配されない・・・・ッ!!!」

認めたくない、目の前の存在を。
有り得てはいけない存在なのだ、この男は。同じ力を持ってしても
同じ高さに登れぬ程の絶対的な差。
奴こそが真の化け物。奴の絶対的な理性こそが化け物たる所以なのだ。

勇分は涼しい顔で笑って答える。

勇分「・・・・ほら、僕って怖がりだからさ」

全ての魔力が込められ、神神しく輝く刀身を我に向ける。

勇分「もう終わりにしよう、これからは人も魔族も、皆前を向いて
  生きていけるんだ」

王「ふ、ざけるなぁあああああああああああああああ!!!!!!」

王は咆哮と共に大気を蹴った。轟音と共に王の姿は消え、勇分に
迫る。そして王は渾身の力を込めて勇分の心臓を穿った。

王「くは、くはははははははは!!!!どうだ!!」

王の剣で心臓を貫かれた勇分は笑みを失わない。

勇分「・・・生身だったら即死だったよ」

自分の残り少ない魔力が急激に減少するのを感じながらも勇分は笑う。
勇分の剣は静かに王の心臓を貫いていた。

勇分と王は共に重力に従って落ち始める。

王「く・・・・か」

ずるり、と王の黒剣が勇分から抜ける。

勇分「・・・恐らく貴方は自分の肉体と魂だけでなく色々な物を犠牲に
  してその力を得た筈だ。それらを全て解放するにはこの手段しかなかった」

王「く、はは、私の魂にかかる、《元始の魔王》の魔法を強制的
  に・・・解いたのか。もはや契約自体を無かった事にされる・・・とはな」

勇分「あはは、・・・貴方の鎧を貫くのは容易ではありませんでしたけどね。
  その鎧があの首輪程の魔法で守られていたら、とても壊せませんでした」

勇分は剣を王から抜き、に鎧に手を当てる。

王「・・・おい、何を・・・している、まさ、か」

勇分「貴方は生きなければいけません。貴方が僕に昔言った事を覚えていますか?
  ・・・・貴方が死んだからって苦しめた民への罪を償った事にはならない」

回復魔法が展開された。勇分は穏やかな笑みで言葉を続ける。

勇分「なら貴方も他の方法で償い方を探してください、僕に言ったように」

王「そん、な事ができるとでも・・・・・ッ」

勇分「・・・・貴方は正気に戻ったのでしょう?」

王「・・・・・・ッ」

勇分「なら貴方を慕う人々に何をしてきたのか、理解できる筈です。・・・
  どう償えば良いかも。・・・・地上が近づいてきましたね」

勇分は王に飛行魔法をさらに発動させる。王の体の自由がきかなくなる。

王「・・・・勇者はどうするのだ」

勇分「ほら、僕は生身じゃありませんから。・・・ここでお別れです」ニコ

大気を振るわせる音と共に王の姿は消えた。

王「・・・・勇者よ、何故私を憎まない。お前を殺し、父を殺し、全てを奪ったのは
 この他ならぬ私だというのに。私を殺す事など世界改変の時にできた筈」

私もかつては人間全体の事を何よりも考えていた筈だ。

王「・・・・どこで間違えてしまったのだろうなぁ」

王「・・・・負けた。化け物としても・・・・・人としても私は勇者、お前には歯さえ
 立たなかった」

・・・・終わった、これで全部終わったんだ。
僕の分身としての、勇者のとしての役目は全て・・・。
きっと魔王は人間と未来を創っていける。
もう僕には信じる事しかできないけれど・・・・。

勇分「・・・・もう眠っても良いんだよね」

もはや体はぴくりとも動かす事はできない。
かろうじて喋る事ができるくらいだろうか・・・・。

勇分「あとは・・・・自然に魔力が流れて僕の存在が消えるのを待つだけか」

勇分「怖いなぁ・・・・怖いよ。やっぱり消えるのは。僕の本体も怖かった
  んだろうなぁ・・・・生身だもんなぁ」

かろうじて勇分は笑みを作る。

勇分「・・・・おやすみ、みんな」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー15日後

「-------------」

・・・あれ、僕まだ消えてなかったんだなぁ。
さっきから何か音がする・・・・・誰だろう?

「------------!!!」

・・・・よく聴こえないよ。眼を開けてみようかな。頑張れ、僕!!

眼を開くとそこには僕が知っている顔が映っていた。

勇分「・・・・ああ、久しぶりです、ね」

魔王「・・・随分とやられた様だな」

あ、側近さんもいる。どうして悲しそうな顔をしてるのかな?

側近「・・・ようやく目覚めてその一言ですか、まったく」

勇分「あ、れ・・・・?僕膝枕してもらっちゃって、るよ。
  側近さんに怒られちゃうなぁ・・・・あは、は」

側近「・・・・今日の所は見逃して上げますよ」

勇分「・・・・今まで本当にご迷惑をおかけ、しました。感謝
  しても、しきれ・・・ません。そしてこれからもきっと
  僕のした事で、迷惑・・・かけてしまうかもしれないですけど」

勇分は力を振り絞って笑おうとするが半笑いのような状態で
止まってしまう。

勇分「・・・・全て、全てうまくいきました。誰も死なないで・・・・
  誰も酷い怪我を負わないで・・・・皆、前に進める」

魔王「・・・・お前は死んでしまった」

魔王の顔から滴が勇分の顔に落ちる。

勇分「そんな・・・泣か、ないでくださ、いよ・・・・。どうして、
  泣くんですか?・・・・笑ってくださいよ」

魔王「・・・・笑えるわけがないではないか、私はまた約束を破ってしまう」

勇分「・・約、束?」

魔王「お前を必ず城へ連れて帰ると・・・ッ!皆に約束したのにッ!」ポロポロ

勇分「・・・それは悪い事を・・・・してしまいました、ね」

魔王「なぁ、勇者。・・・・お前は未来を私に託したんじゃない、押し付けたんだよ」

勇分「・・・・それは、わかってますよ」

魔王「・・・それ相応の報いがあっても良いのではないか?」

勇分「ええ・・・、僕に、できる事なら・・・。とは言っても、もう今の僕に
  できる事なんか、ほとんど・・・ありませんけど」

魔王「私はな・・・・勇者」

魔王は穏やかな笑みを浮かべていた。その両目は赤く腫れている。

魔王「お前の泣き顔が見てみたい」

勇分「あは、は・・・・・残念ながら、この体は・・・泣けないんですよ」

魔王「・・・なら怒ってみろ、叫んでみろ」

勇分「・・・・・ッ!!」

僕には魔王の言っている事がわかる。

魔王「私がこの世界をお前が正しいと思う世界へ導くと誓う。
  お前の意志は私が受け継いでいく、私の命ある限り」

魔王「・・・もう良いのではないか?お前は人と魔族の為に精一杯頑張った。
  ・・・・もうお前が《勇者》であり続ける必要はないんだ」

まるで母親が我が子に聞かせるように言葉を続ける。

魔王「私など想像もできぬ程にお前はこれまで苦しかった筈だ、
  悲しかった筈だ、怒りたかった筈だ、・・・・泣きたかった筈だ」

魔王「・・・これで最後なんだ、またお前は死んでしまう。もう二度と
  私の前にお前が現れる事はないだろうな」

魔王「・・・私は最後にお前の全てが知りたい、お願いだ、・・・頼む」

勇分「・・・・本当に、魔王には敵・・・わない、よ」

いつもだったら僕は笑っていたのかな。
話してもいいかな、本当の僕。
いや、本当の僕の為にも話さなきゃ駄目なんだ。
魔王の為にも。

自分自身のごくわずかな魔力を対価に魔法を発動する。

魔王「・・・何をしている!?」

勇分「話せるようにならないといけないからね、・・・・どうせ消えるのが
  少し早くなるだけだよ」

魔王「話してくれるのだな・・・・」

勇分「うん、・・・・僕が10歳の頃に勇者になったという事は知ってるかな」

魔王「・・・・ああ、人の王から聞いたよ」

勇分「どうして僕が勇者になったと思う?」

魔王「・・・人と魔族が共存できる世界にする為だろう?」

勇分は困ったように笑う。

勇分「本心では違うんだ」

魔王「・・・何?」

勇分「・・・怖かっただけなんだ」

勇分「僕が勇者になったあの日、僕は両手では数え切れない程の人の命
  をこの手で奪った。それから僕は全てが恐ろしくなってしまってね。
  ああ、小さい頃からずっと力を押さえ込んできた筈なのに僕は
  存在するだけで命を奪ってしまうんだってね。・・・勇者になったのは
  その責任から少しでも逃げたかったからなんだ」

魔王「・・・」

勇分「僕はずっと逃げてきたんだ。命が怖かった、奪ってしまうのか怖かった。
  魔族さん達からどんなに攻撃されても、僕は絶対に命を奪いたくなかった」

勇分「もう分かるよね、僕は勇気なんかない、優しくなんかない。ただの
  最低の臆病者なんだって」

今僕がどんな表情で言葉を続けているのかはわからない。

勇分「そんな僕は勇者になってすぐに父から魔界と人間の真実の全てを知らさ
  れてしまった。僕は思ったんだ、たとえそれが正しくても、悪くても
  絶対に最も命が失われにくい世界にしようって」

魔王「それが魔族と人間との共存、か」

勇分「・・・・そうだよ。僕を軽蔑してくれてもいい」

勇分「僕は世界の為、だなんて少しも考えてなんかいなかったよ。
  ただの僕の独り善がりでみんなを巻き込んだ。」

勇分「でもそんな僕に王国の人々は笑いかけてくれた、僕を一切疑っていないんだ。
  それだけじゃない、魔族さん達だってそうだ」

勇分の声が震える。

勇分「最初は辛かったけど本当はとても優しい方々なんだ。魔族を何度も苦しめて
  きた《勇者》の僕に・・・・それでも笑いかけてくれたッ!」

僕の顔が歪むのを感じる。

勇分「僕はその笑顔が嬉しかった・・・!でも同時に恐ろしくなったんだ」

勇分「僕に笑顔を向けてくれる皆は僕が知っている真実を知らないんだ、って!!!
  僕の眼にはその眩しい笑顔がとても儚く、脆い物に見えた・・・・ッ!だって
  ほんの少しでもあの恐ろしい真実に触れただけで壊れてしまうんだから!!!」

勇分「人々が本当は実験台にされているって知ったらどうなってしまうのかな!?
  魔族さん達がこれまでの苦しみが人間同士のただの内輪もめだって知ったら
  どうなってしまうのかな!?」

勇分「僕にはもうわからなくなってしまったんだ。魔王を殺せば、人間を殺せば
  皆は救われるのかな・・・・?だから僕はその選択が与えられる時を待つ事に
  したんだ、その時の為に全てを備える事にしたんだ」

勇分「・・・・僕に選択を与えてくれたのは君なんだよ、魔王」

勇分「魔王を最初に見た時は驚いたよ、人とそっくりだったからね」

勇分「でも・・・魔王は僕なんかとは全然真逆だったよ。何もかもからも
   逃げないで真正面から立ち向かうんだ、僕は心を救われた」

勇分「それが僕には光にみえた、魔王なら正しい選択をしてくれる
  かもしてない・・・・そう思ったんだ」

暫しの沈黙が訪れる。

魔王「・・・私はお前を光なのだと思い、お前は私を光だと思っていたのだな」

魔王「・・・・お前は臆病者なのだろう?死ぬのが怖くはないのか」

勇分は静かに口を開ける。

勇分「・・・・もちろん怖いに決まってるよ、でもそんな事よりも
  魔族の皆が死んでしまう方が・・・・・・よっぱど、怖かった」

魔王「やはりお前は勇者だよ、臆病者などではない」

勇分「そういってもらえるなら・・・・嬉しいよ」

勇分の体が透け始める、魔力が尽きかけているのだろうか。

魔王「・・・・なぁ勇者、一つか二つ最後に言っておきたい事があるんだ」

勇分「うん」

魔王「まず一つ目だが、お前は勘違いしているよ」

勇分「・・・・勘違い?」

魔王「ああ」

魔王「・・・お前は魔族が優しい、お前が勇者でも笑いかけてくれた。
  そう言ったな?」

勇分「そうだね」

魔王「魔族が《勇者》に気を許すと、本当にそう思うのか?」

魔王「お前は気づいているのではないか?私達魔族は《勇者》にでは
  なくお前に気を許したのだと」

勇分「・・・・」

魔王「私も城の者も、お前が来るまでは人などに心など許していなかった。
  お前がいつも浮かべていた笑みは本当の笑みではない、とお前は
  言っていたな。・・・・だが私達はお前の笑顔に救われたのだ」

魔王「お前が城に入り込んできてからは、予想もできない事ばかりが
  起こったなぁ、楽しかったなぁ・・・・あれほど笑う事はもう二度
  とこないのだろうな。ふふ、お前の所為で私の城はとんだ腑抜け
  の集まりになってしまったよ。皆常に笑っているのでは示しが
  つかないだろう?」

魔王「お前のいた一年半は・・・・これからも永遠に続くかのように心地よかった」

魔王「・・・・全部、お前のお陰だ」

勇分「・・・・・あは、は、もし僕が泣ける体だったら泣いてましたね」

魔王「次で最後だ」

魔王は勇分の体を抱きしめる。

魔王「・・・お前に会えて良かった、今まで助けてくれて、笑ってくれて
  ・・・傍にいてくれて、ありがとう」ギュ

魔王「・・・お前の事が好きだ、勇者」

魔王「む、・・・返事はどうした」

勇分「・・・僕が返事をしても、君は僕の事を忘れると約束してほしいんだ」

魔王「・・・何を言っている」

魔王は腕に力を込める。

勇分「・・・《勇者》はもう生まれない、未来に《勇者》はいらない、
  僕は忘れ去られるべきなんだ。・・・・皆には笑ってて欲しいんだよ、僕の最後の願いだ」

魔王「・・・わかった」

勇分「こんな事は本当の僕だって死ぬまで言わない筈だった
  んだけどなぁ・・・」

勇分「君と一緒に城で過ごした時間は楽しかったよ、初めて
  太陽の下に生きているようだったよ。・・・・そしてできるなら
  ずっと・・・そのまま皆で暮らしていたかった」

勇分の体が淡い光に包まれる。

魔王「・・・どうしてお前だけが死ななければならないのだろうな」

勇分「そんな顔をしないでほしいな、僕は君の笑顔を見て消えていきたい」

魔王「ああ、・・・・そうだな」ニコ

勇分「何も僕だけがこういう運命をたどっているわけじゃないよ。僕なんかより
  もっと苦しい運命を背負っている人や魔族だっているんだ」

勇分「なのに僕はなんて幸せなんだ・・・色んな出会いが会って、仲良くなって
  、未来を創れて・・・・最後には君が笑っててくれる、僕の本体も
  そう思っていた筈だよ」

勇分は魔王が今まで見たこともない程、ぎこちない笑顔を浮かべた。

勇分「大好きだよ、魔王」

魔王は勇分が確かにいた空間を、ゆっくりともう一度抱きしめる。

魔王「・・・知っているか、勇者」

魔王「私は・・・嘘つきなんだ」

側近「・・・・魔王様」

魔王「・・・」

側近「今は城の方も貴方がいなくて忙しい筈です、辺境の村の復興だって
  まだ手がついていないのですよ?そろそろ向かッ」

側近「・・・・魔王様?」

魔王「・・・・・・察しろ」ギュ

側近「もう、勇者が目を覚ます前にあんなに泣いていたのにまだ泣き足りない
  んですか?」

側近は優しく魔王の頭を撫でた。

側近「もう少し・・・だけですよ?」

魔王「・・・・ぅ・・・ひっく・・・う、うあああああああああああああ!!」

側近「・・・・今は悲しくても、苦しくても、少しずつ乗り越えてい
  けばいいんです。・・・どんなに時間がかかっても」

----―----―----3年後 辺境の村

エルフ少年「ちょ、ちょっと待ったぁっ」

少年はもはや半べそ状態だ。

エルフ少女「もうっ、情っけないわね!もっとちゃんとしないと
    相手にならないじゃない!」

エルフ少年「だ、だってお前もう魔王城の兵士より強いじゃないか!
   俺には荷が重いって!!」

エルフ少女「ほら立って!今日は大事な日なんだから、もう一回よ。
   私の成長ぶりを見てもらわなくちゃ!」

エルフ少年「何だよ・・・もう3年も経っているのに」ボソッ

エルフ少女「・・・何か言った?」ギロッ

少年は空気が間違いなく冷たくなったのを感じた。

エルフ少年「な、何でもねぇよ畜生ぉおおおおお!!!!」ダッ

エルフ少女「・・・そんな事、私にだってわかってるわよ」

ーーーーーーーーーーーーーー魔王城

「魔王様、お伝えしたい事が」

魔王「何だ、今日城の者達は皆休暇をとっている筈だが」

「・・・それか今年は人間の中に我らと一緒に祈りを捧げたいとい
者がおりまして」

魔王「・・・良い、許す」

「承知いたしました」

その者は一礼をして去って行った。

魔王「そうか・・・、真実を知った人間もいるのだな」

側近「魔王様、・・・そろそろお時間です」

魔王「ああ、行こうか」

魔王は穏やかな微笑を浮かべた。

後何割なの

――――――――辺境の村・墓

魔王は村にある他となにも変わらない一つの墓の前に立っていた。
村は数え切れない程の魔族で埋め尽くされていて、中には
人もまぎれている。
・・・あらゆる種族の壁がこの場ではなくなっていた。

魔王の凛とした声が村を通る。

魔王「今日この場に足を運んでもらい、勇者の友として感謝する」

魔王「皆・・・祈りを」

お前は皆に忘れろと言ったな。
・・・勇者、見えるか。
これがお前にはどう見える?
私には光に見える、きっと未来を照らしてくれると確信できる光だ。
だから私達はお前の事を決して忘れない。
あと今年はすごかったんだ。なんと数は少ないが、人が
辺境の村へ移住してきた、すごいだろう?
この一年もまたお前の願う未来に少しだが近づけたのか?
・・・私は私なりのやり方で来年も頑張ってみるよ。
だから次の年にもう一度お前に会いにくる事だけは許して欲しい。

>>889 あと1割ちょっとでしょうか・・・・

側近「・・・」

かつて《勇者》と呼ばれた化け物。

村長「・・・」

その化け物は魔族に災厄をもたらす筈だった。

エルフ少女「・・・」

だが魔族は誰も命を落とすことはなく、

鳥族1「・・・」

今を生きている。

戦士「・・・」

ならばその化け物は人を滅ぼしたのか。

僧侶「「・・・」」

だが人は生きている。

王国の女「・・・」

両者の大切な命を一つずつ失う事で、私達は今を、未来を生きている。

王国のはずれの村人「・・・」

その尊い犠牲の為は私達は祈り続ける。

魔王「・・・」

勇者の為に私達は祈り続ける。

------------3日後  辺境の村・墓

民幼女「ねぇねぇ!何してるの?」

「・・・ん?お墓参りかなぁ・・・」

民幼女「わっ、わっ、人間なのにお兄さんすごくかっこいいねぇ!」

「あ、あはは・・・、お礼とか言った方がいいのかな・・・?」

民幼女「ってあれ!?どうしたの?・・・どっか痛いの?」

「どうして?」

民幼女「だって・・・お兄さん泣いてるよ?」

「えっ、・・・・・あは、は・・・本当だね」

民幼女「すっごい泣いてる!すっごい涙出てるよ!?すごく痛いの?」

民幼女その男の頭を頑張って撫でようとする。

「・・・・あ、はっ・・・・いや・・・っ、これは・・・そういう涙じゃ、ないんだ」

民幼女「・・・じゃあ痛くないのに泣いてるの?・・・ふふっ、おかしいねっ」

「あはっ、は・・・・僕もこういう涙は生まれて初めてだよ」

民幼女「あれ?どっか行くの?」

「うん、・・・ある魔族さんに会いに行くんだ」


----ーーーーーーーーーーーーーーーーー魔王城

側近「・・・魔王様、貴方様に会いたいという人間がいるのですが」

魔王は忙しなく筆を動かしている。

魔王「・・・む、悪いが今は忙しい、今日の所は帰るように伝えてくれ」

側近「・・・忙しくても会う価値はあるかと」

魔王「・・・・何かあったのか?」

側近「そうですね・・・・、今までで最大の危機かもしれません」

魔王「何だと!?」

魔王が慌てて椅子から立ち上がる。

側近「今回の機会を逃せば魔王様は間違いなく大切な物を失うでしょう」

魔王「・・・・そいつは何者なんだ」

側近「さぁ、私では正体がわかりませんでした。ただ、貴方様にとって
  重要な意味を持っている事は確かです」

側近「その人間はこの城の庭園にいます。いますぐお会いに行かれた方がよろしいかと」

魔王「・・・わかった!」ダッ

側近「・・・まだ気づかないなんて、世話が焼けるんだから」ニコ

そんな事があってたまるか。
私が、私達がどれだけの犠牲を払ってここまで来たと思っている。
私が止めてみせる、邪魔などさせん。

魔王は毛皮のフードを被った人間を見つける。
・・・・あいつか。

魔王「お前が側近のいっていた人間かッ!!!」ギロッ

勇者「はっ、はいっ!?」ビクッ

えっ、えええええええええええええええ!?
なんか魔王すっごい怒ってるよ!?あれ?なんか想像してた再会と違う!!
というか魔王の魔力凄い!殺気凄い!今の僕だと一瞬で消し炭だよ!?
側近さん一体何言っちゃったのかなっ!?

魔王「・・・お前はようやく手に入れた平穏を壊したいらしいな」

勇者「えっ・・・、いやぁ・・・・そんな事するつも」

魔王「はっきりと話さないか!!!」

勇者「はいっ!すみませんっ!」ビシッ

どうしよう、すごく怖い。
きっと殴られたら当たった部分どっか飛んで行っちゃうよ。

魔王「・・・ん?なんかこの小物みたいな感じ・・・どこかで見たか?」

もうせっかく会ったのに心がズタズタだよっ!?なんて言った瞬間、
僕は粉々になっちゃうんだろうなぁ。

勇者「・・・・はい、まぁ一応は」

魔王「・・・・・んん!?その声・・・・、おい、ちょっと顔見せろ」

魔王は勇者が被っていたフードを上げた。

勇者「あは、は・・・・どうも、久しぶりだね魔王・・・」

魔王「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


魔王「・・・悪ふざけにしては度がすぎるのではないか?」

勇者「・・・・・え?」

魔王「・・・勇者はもう死んだ、この世にはもういない。
  お前は何だ、変化の魔法でも使っているのか」

魔王の声は震えている。

勇者「・・・この首輪を見れば僕だってわかるかな」

魔王「それは・・・・ッ!」

勇者は魔王を抱きしめる。

勇者「僕はちゃんと戻ってきたよ」

もう本編もおしまいですが補足用の書き溜めがほんの少しだけあるので
本編が終わっても少しの間静かにしてもらえると助かります。

魔王「・・・本当に・・・お前なのか・・・・ッ!」

一粒の滴が魔王の眼から落ちる。

勇者「うん」

魔王「ひっく・・・分身では、ないんだよな・・・・ッ?」ギュ

ぽろぽろと涙が落ち続ける。

勇者「そうだよ」

魔王「・・・・信じるぞ?いいのか?」

勇者「うん。だからさ、せっかく久しぶりに会えたんだから笑ってよ。
  君の笑顔が見たい」

魔王「ふふ、なんだ・・・・お前だって泣いているじゃないか」

勇者「・・・・うん」

魔王「まったく・・・せっかくお前の泣き顔が見れると思ったのに、
  ・・・お前は泣く時も笑っているのか?」

勇者「・・・たぶん嬉し涙じゃないかな」

魔王「ふふっ、それにしてはぎこちない笑い方だな」

勇者「・・・これからはきっと自然な笑い方になるよ」

勇者「ねぇ、魔王・・・・、僕さ・・・君に伝えたい事があるんだ」

魔王「・・・ああ」

勇者「君の事が好きだ」

魔王「なんだ・・・・そんな事はとうの昔に知っている」

勇者「ばれてたのかぁ・・・・、じゃあ返事はッ・・・・・・・」

二人の時間が止まる。

魔王「・・・・・・・・・・・・・・これで返事にはならないか?」

勇者「・・・・・・本当に、君には敵わないよ」

魔王「・・・いや、やはり言葉にしておこう」

勇者「どうして?」

魔王「察しろ・・・言いたい気分なんだよ」

その笑顔は僕が今まで見た中で最も輝いていた。

魔王「私はお前の事が大好きだっ!勇者っ!」

                        fin

おい、結局《元始の魔王》って何、魔具とか初代勇者とかよくわからん
事多すぎだろks、と仰られる方がいるだろうと思い、一応書いておきました。
ここに出てくる人物についてですが、名前が同じでも本編と異なるので
注意、王とか。王国も本編とは違います。ややこしくてすみません;

----―--------約4千年前 王国


唐突に銃声が鳴り響いた。

男「・・・・」

男がうつ伏せに倒れている。
どうやらこの男が撃たれたようだ、その頭から血がじわりと流れ出る。

男「・・・・・またか」

重く冷たい声がその男の口から漏れ出た。

「・・・・くそっ!化け物め・・・・!!」

男「・・・邪魔をするな」

男はのそりと立ち上がり、また歩き出す。

王「またお前か・・・・ッ!!」

王は憎憎しげに呻く。

王「お前が何度ここに来ようとも何も変わりはしない!さっさと消えろ!」

男「・・・・お前達人間がこのまま木々を殺し続ければこの星は滅ぶ」

王「星?・・・星とは何だ」

男「人間にとって星とは世界だ」

王「世界を滅ぼす程の力を持った我ら人間ならば恐れる事など何もない!
  私は間違ってるとでも言うつもりか?」

男「・・・間違っては、いないな」

勇者が生きてた理由が知りたい

----―----―----王国のはずれの荒野

男「・・・ここも昔は木々が生い茂っていた筈だ」

男「このままいけば恐らくこの星の命は絶たれるだろう」

王国での会話が脳裏に浮かぶ。

男「・・・王の言い分は確かに正しい、力を持つ者だけがこの世を思い通りにできる」

男「人間全体にその概念が植えつけられている限り、人間にとってそれ
  が正論、正義となる。またそうである限り星は蝕まれ続けるのだ」

>>910 既に書き溜めがありますので安心してください。

『この化け物はどうして死なないんだ!』

『・・・なんておぞましい存在なの!?』

『そんな化け物は谷へ突き落としてしまえ!危険だ!』

男「人間は・・・・・危険だ」

男「このままにはしておけない」

ならば使え、お前の力を、全てを思い通りにできる力を。
使い方はわかるだろう?

男「ああ」

やっとその燻っていた力を思う存分に振るえるぞ、喜べ、喜べ。

男「星を守ろう」

そして男は《元始の魔王》となった。

----―----―----約千年後 魔界・魔王城

魔王「・・・来たか」

勇者「お前を倒し、世界に平和を取り戻させてもらうぞ」

勇者は無数の魔法が込められた剣を鞘から抜いた。

魔王「・・・やはり人間に力を与えたのはお前か、物に魔法を込めると
  はな・・・・・どうりで我が同胞が人間に殺されるわけだ」

勇者「そうだ・・・・!もう人間は魔族などに屈しはしない!私の魔具が皆に力を与える」

魔王「・・・お前も気づいている筈だ、我とお前は同じ力を有していると」

勇者「・・・・ッ!!」

魔王「ならばわかるな?共に消え去る以外にこの戦いの終結はない」

魔王「どうせ消え去るのなら尋ねておきたい事がある」

勇者「・・・・・」

魔王「何故お前は魔族を殺す?」

勇者「・・・・魔族がいれば人間は滅亡してしまう、お前達の存在は異端だ。
  世界に破壊をもたらす」

魔王「・・・そう人間に教えられて生きてきたのか?」

勇者「・・・お前達は平和を乱す、魔族が人間を襲っているのは事実だ」

魔王「逆に問おう、魔族は人間に危害を多少だが加えているかもしれん。
  だが強力な魔族が攻め込んで来た事はあったか?」

魔王「何故数少ない魔族の侵攻を槍玉にあげる、その程度の事に比べれば
  人間同士の争いの方が遥かに卑劣なのではないか?」

勇者「・・・黙れ」

その声はかすかに震えている。

魔王「なぜ魔界が世界の半分で収まっているのか考えた事はないのか?
  全ては一つの答えを出している」

勇者「・・・そんな、の理解できないな」

魔王「人間は危険だ、我らは人間の破壊に対する抑止力なのだよ」

魔王「勇者、お前の言う平和とは人間にとっての平和なのだ。
  ・・・・決してこの世界の平和を指すわけではない」

変なところでの改行が読みづらくてちょっと残念

勇者「黙れッ!お前の言葉などッ!私には届かない!」

魔王「本当は既にそんな事はわかっていたのだろう?」

勇者「黙れぇえええええええええええええ!!!!!」

一瞬の内に魔王の周囲に無数の魔法陣が構築され、魔法が発動する。
魔王城の大半が消えた。

魔王「その化け物たる力を振るいたかったからだ!お前は平和など何も
  考えてはいない!その力を行使する理由が欲しかっただけだ!」

勇者「うあああああああああああああ!!!!」

勇者が作り出す無数の魔法の全てに魔王は同じ魔法で応じる。
紅い空が閃光に包まれた。

>>917 それは本当に申し訳ない;

魔王「ならば質問を変えてやろうか!何故お前は地に向かって魔法を行使しない!?」

勇者「・・・・やめろ」

魔王「それはこの星を守る事が我らの宿命だからだ!お前は宿命に背いている!
   力をただ振るえば世界は狂う!」

魔王「ならば何故《神》は我らに心を与えた!?何故我だけでなくお前を創りだしたのだ・・・!
   心があるからこそ我らは狂う、内なる力に侵される!
  だが我らは宿命に従わなければならない!」

勇者「・・・・私は宿命など信じない、自分で運命を切り開いてやる・・・!
   魔王、お前は殺す!世界に平和をもたらしてみせる」

魔王「人間に埋め込まれた概念こそがお前を蝕んでいるのがわからないのか」

勇者「私はッ!!《勇者》だッ!!」

魔王「・・・残念だ」

勇者「ぐっ・・・・かはっ・・・」

魔王「我とお前との戦いにおいて肉体的損傷は意味をもたない」

勇者「・・・その・・・武具は・・・ッ!?」

魔王「お前にできる事が我にできぬとでも?」

勇者「・・・・・ッ!」

魔王の鎧が、剣が、無数の禍々しい魔法に蠢いている。

魔王「我が黒剣に込めた魔法は身をもってわかる筈だ」

勇者「消滅魔法か」

魔王「そうだ、我が剣ならお前を殺せる。この魔法は我が千年かけて創りだした、
  お前では扱えぬ」

魔王「・・・・この魔法でお前の力ごと消し去ってくれる」

魔界の紅い空には一人の漆黒の騎士のみが存在している。

魔王「・・・・やはりこうなったか」

自分の体が徐々に消えてゆく。

魔王「・・・勇者、わかるか?最後に我を消し去る事象改変を起こした時」

魔王「・・・お前は笑っていたよ」

誰に言うわけでもなく言葉を続ける。

魔王「・・・・この過剰な力がお前を狂わしたのか、我と同様に」

魔王「千年前の我にもう少しばかりの理性が残っていれば、・・・・世界は
  明るく変わっていたのだろうか、千年前の我の選択は・・・・」

魔王は眼を静かに閉じた。

魔王「・・・・《神》よ、未来にまた我らと同様の存在が生まれて
  しまうのだろうか、その度に我らのような選択を迫られるのだろうか」

首輪に手を触れる。

魔王「ならば我はその者に新たな選択肢を与えたい」

魔王の残る全ての魔力を使い、魔法を首輪に込める。

魔王「命を奪いつづけ世界を破壊するも良し、抑えられた力で
  《理性ある選択》をするのも良し」

魔王「《理性ある選択》は我らとは異なる未来を見せてくれるのか、
   ・・・・・本当の平和を見せてくれるのか」

魔王「お前に全てを託そう」


その千年後に王によってその運命の首輪は発見される。
《理性ある選択》は魔王の望む未来を見せる事はできたのだろうか。

わかる事はただ一つ。
その未来では全ての生物が前を向いて生きている、という事だけだ。
                         
                           fin

ちょ、なんで勇者生き返ってんだwと仰られる方がいるだろうと
思い、一応書いておきました。ここでの登場人物は本編と一致
してます。


体が重い、熱い、息ができない。
そう感じる事ができるという事は、まだ生きているという事は
僕が最低限の防御に成功したという事か。

王「くはは・・・・、まるでぼろ雑巾のようだな。おい」

戦士長「・・・・っは」

王「このゴミは死体置き場にもっていけ、・・・決して首輪を外すなよ。
 完全に腐って粉々になるまで首輪は回収しなくていい」

戦士長「承知しました」

戦士長は僕を背負い死体置き場に向かう。
すすり泣く音が聞こえる。

僕は生きている、そう伝えなくては。
僕に触れてはいけない。
そうしなければ僕はこの人の命を奪ってしまうかもしれない。
絶対に意識を失ってはいけない、抑えている首輪の力が発動してしまう。
僕が生きようとしたせいで殺したくはない。
渾身の力を絞れ。

勇者「・・・・・ぁ・・・・」

戦士長「・・・・・勇者殿?まさかまだ生きておられるのですか!?」

ああ、気づいてくれた。ありがとう。

勇者「ぁ・・・・・・・・ぅ」

戦士長「・・・ッ!!こうしてはおられん!」ダッ

・・・・ぁあ、駄目だ。意識を保たなければ。

戦士長「早く!!回復用の魔具をありったけ持って来るんだ!!」

僧侶達「は、はい!」ダッ

どうして僕から離れてくれないんだ。

戦士長「くそっ・・・・!!我らの恩人を死なせてなるものか!!」

人々は魔具に込められた回復魔法を展開させる。

僧侶1「・・・なんて傷の深さなの・・・・!!お願いだから耐えてッ!!」

僕の首輪の事ぐらい知っている筈なのに。

僧侶2「ここを止血します!」

銃弾の摘出が開始される。

・・・・こんな僕の為にこんなに多くの人が頑張っているのか。
僕は人々から寿命と魔力を奪ったというのに。

泣くのは死んでからって決めた筈なんだけどなぁ。

------------約一週間後

勇者「・・・・・」

戦士長「御体の具合は?」

お陰で僕は生きているよ。

勇者「ぉ・・・ぃ・・・・・」ニコ

戦士長「・・・・本当に良かった」

戦士長「・・・勇者様には申し訳ありませんが、人目に触れなれない為
   このような粗末な病室になってしまいました」

戦士長「安心してください、今度は私達が貴方様を必ず守ります」

勇者「・・・・」ニコ

・・・ありがとう。

ーーーーーーーーーーー約二週間後

戦士長「・・・貴方様に面会したい方がいらっしゃいます、よろしいでしょうか。
   危険はないと思われます」

勇者「は、い」

病室の扉が開かれる。
そこに現れたのは、二週間前に僕を殺そうとした人間だった。
だがその顔にもはや狂気はなく、重い罪を背負っている囚人のように見えた。

王「・・・こんな私などの言葉では意味などないかもしれない、だが言わせてほしい」

王「申し訳ない・・・・ッ!!」

顔を見ればわかる、どんなに後悔して、どんなに苦しんでいるかって事ぐらいは。

勇者「顔、を・・・・上げ、てくださ、い。一国の、王なん、ですから」

勇者「今の、貴方なら、魔族とも・・・・未来、を築いて、いける」ニコ

王「・・・・貴方の分身にも同じことを言われました」

王「貴方さえ良ければ・・・人の眼のつかないもっと環境の良い病室に移りませんか?」

勇者「いえ、ここで、充分です、よ」

勇者「また、体が自由、に動く、ようにな、ったら、ここを出て、行きますから」

王「・・・貴方の居場所はここではないのですね」

勇者はそれに笑顔で答えた。

ーーーーーーーーーーーーーーー約1年後

戦士長「失礼します」

勇者「ああ、どうも。いつも尋ねてきてくれてありがとうございます」

戦士長「・・・・勇者様、一つ聞いてもよろしいでしょうか」

勇者「ええ、いいですよ?」

戦士長「貴方様は・・・・魔族の皆さんに会わなくても宜しいのですか?
  必ず悲しい思いをしている筈です」

勇者「・・・・だってまだ僕ロクに歩けませんしね、どうせ会うなら
  元気な状態で会いたいじゃないですか」

勇者は穏やかな笑みを浮かべる。

戦士長「・・・・貴方というお方は」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー約2年後

王「流石は勇者様か、本来なら普通に歩けるようにはならない
  筈の物をたった3年でここまで回復させるとは」

勇者「あはは、3年も長い間お世話になりました」

戦士長「・・・本当に魔王城までご同行する者がいなくても宜しいのですか?」

勇者「ええ、これでも勇者だったんですからね、確かに僕の使える魔力は
  もうごくわずかですが・・・・体技とかでは負けないですから」

戦士長「いえ、貴方様は今でも私達にとって勇者様なのです。
   この御恩は・・・・・一生忘れませんぞ」

僧侶1「本当に元気になって良かったです・・・!」

王「・・・・勇者様」

勇者「何ですか?」

王「・・・本当に王国の者達、そしてその他の人々に真実を伝えなくて
  宜しいのですか?私はいつでも罰を受ける覚悟はできています」

勇者「あはは、そんな事しなくていいって言ってるじゃないですか。
  知らないほうが幸せですよ」

王「・・・私は人間は決して貴方様が勇者として世界を救ったという事を
  忘れません。かならず王家に語り継いでいきましょう」

勇者「・・・それは光栄ですね、それでは皆さん」

勇者「またお会いできたら」ニコ

元気になるまで3年もかかっちゃったなぁ。
魔王や側近さんや村の方々・・・・皆元気かなぁ。
早く皆に会いたいなぁ・・・・。

僕が生きてるって知ったら魔王はどんな顔するんだろう?
できたら笑ってほしいな。

側近さんは相変わらず厳しそうだなぁ。

村のエルフの女の子とかはどうなってるのかな?
村長さんも元気かな。
会いたい人がたくさんいるよ。

勇者「まぁ、自分で見に行けばいいよね」

その笑顔はぎこちない。
上を見上げると空は青く、透き通っている。

勇者「今、会いに行くよ」


                            本当に終了

皆さんのご協力がなかったらとても完結する事はできませんでした。
本当にありがとうございました;

自分もまさかここまで支持してもらえるとは思ってなかったです・・・
罵倒の嵐がくると思ってました

皆が優しすぎて泣いた

>>1000なら>>1先生の二作目公開!!

>>991 えっ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年11月18日 (金) 17:39:20   ID: 83iJ6WOn

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