ゆみ「ともだち」 (54)

咲-Saki-の、かじゅ久?久かじゅ?まあそんなんです。


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久「一夫一婦制なんて言うと聞こえはいいけどね、あんなの、ただ男が女を所有するためのこじつけだったんじゃないかと思うの」

久「所有して、逆らわないし隠しごともない、自分の付属品にしてしまいたいのね」

久「知っているでしょう?昔の『市民』に女は含まれていなかった」

久「市民である男たちにできるだけ平等に女が行き渡るように、そしてその女を男がしっかり管理するために、ひとりずつということに決める社会が現れたの」

久「最近では性別に関係なく色々あるかもしれないけどね」

久「…えらそうなこと言っちゃったけど、ただ私は自由でありたいし、自由であってほしいの」

久「好きだからこそ、物じゃなくて、対等の人間として一緒にいたいのよ」

ゆみ「……」

久「……」

ゆみ「それで、結局何が言いたいんだ?」

久「うん、だから、ゆみのことが好きです」

ゆみ「は、」

久「私、他に彼女が五人と彼氏が一人いるけど、それでも良かったら、付き合ってください」ペコッ

ゆみ「」

ゆみ(じ、冗談…か…?久ならやりかねないが、顔は真剣だな…。いやしかし、あまりに突拍子もなさすぎる)

ゆみ「ドッキリか何か…」

久「本気よ」

ゆみ(どうしよう)

久「…やっぱり、ダメかしら」

ゆみ「あ、いや、その」

久「ごめんね、変なこと言って」

ゆみ「い、いや、気持ちは嬉しい…よ(何を言っているんだ私は)」

ゆみ「何というかさっきの、その…彼女が五人?とかは」

久「本当よ。全員に了承を取った上で、現在進行形で付き合ってるわ」

ゆみ「そ、そうか…全員納得しているのか…」

久「……」

ゆみ(?)

久「許してもらってはいるけど、納得してるかは、それぞれね…」

ゆみ「…黙っていたほうが角が立たないんじゃないのか?」

久「そんなことしたら浮気になっちゃうじゃない」

ゆみ「そ、そうなのか」

久「ええ。私は全員と誠実に付き合ってるつもりだもの」

ゆみ(複雑だな)

久「...気持ち悪い?」

ゆみ「え?」

久「ゆみも、私を軽蔑する...?」ジワッ

ゆみ「え、おい(私『も』?)」

ガタッ

久「ごめんなさい、もう会わないから、忘れて」

ゆみ「は?会わないって、」

久「できれば、他の人には言わないでおいてもら」 ゆみ「ま、待て!」

久「...」

ゆみ「...」

ゆみ(反射的に呼び止めてしまった...)

ゆみ「とりあえず、座ってくれ」

久「…うん」ガタッ

ゆみ「…その、大丈夫だ。気持ちが悪いとは、思わない。驚いたが、久が真剣なのもわかった」

久「...うん」

ゆみ(空気が重い…)

ゆみ「でもすまない、正直ちょっと思考が追いついていないんだ…。少し待ってはもらえないか?」

久「保留、ってこと?」

ゆみ「あ、ああ」

久「そう、わかったわ」

ゆみ「すまない」

久「ううん。でも、無理はしなくていいのよ?異端だって自覚はあるんだから」

ゆみ「異端」

久「だってそうでしょー?悪女とか、色魔とか、ビッチとか。私みたいなのをそう言うのよ」アハハ

ゆみ「...」

久「聞いてくれてありがとう。返事がどうでも恨んだりしないから、また機会があったら対局しましょうね」

ゆみ「...なんだ、その言い方は」


久「え?」

ゆみ「......」

ゆみ「私は、久と友達になれて嬉しかった」

ゆみ「親しい友人と言えば蒲原ぐらいだったが、そんなことではなくて、お前のことを、魅力的だと思ったんだ」

久「ゆ、ゆみ?//」

ゆみ「快活で、賢くて、一所懸命で。悪戯好きなところも、かわいいと思った」

久「...っ//」

ゆみ「話している内にまとまってきたが、私も多分、久のことは好きなんだ。さっきの申し出を、受けてもいいくらいに」

久「えっ」

ゆみ「だが、踏み切れない理由もある」

久「あ...」

久「ひょっとしなくても、モモちゃんのこと?」

ゆみ「…ああ。今は付き合っているわけではなくて、先輩と後輩という関係ではあるが、モモはそれ以上を望んでいる、と思う」

ゆみ「そして、私もそれに応えたい」

久「大事なのね」

ゆみ「ああ」

久「私は別に、ゆみがモモちゃんとも付き合っていたっていいのだけれど…でも、モモちゃんは」

ゆみ「多分、理解に苦しむだろうな」

久「そうよね…」

ゆみ「すまない...」

久「…仕方ないわ。モモちゃんと、仲良くしてね」

ゆみ「だが、お前を手放したくもないんだ」


久「へ?」

スクッ、スタスタ、ストン

久「え、なに、わざわざ回りこんでき...てっ!?」

ギュッ

久「ゆ、ゆみ!?ちょ、ここファミレスよ!?//」ヒソヒソ

ゆみ「お前は、もし私が告白を断ったら、もうろくに会いもしないつもりなんだろう?」

久「だ、だってっ」

ゆみ「お前がいなくなるなんて、考えたくもない...」

久「わ、わかったから、放してっ。誰かに見られたら...」

スッ

久「あ…」

ゆみ「なんだ、放せと言うから放したのに、物欲しそうな顔だな」クス

久「??//」

久「なによ、私を振るんじゃなかったの!?」

ゆみ「振ってほしいのか?」

久「そんなわけないじゃない…。でも私、後ろ暗いのは嫌なのよ。今さら何だって思うかもしれないけど、こんな奴だからこそ、これ以上汚れたくないの」

ゆみ「汚れてなんかいないさ。モモのことは、きっと説得してみせる」

久「難しいって言ったばかりよ?」

ゆみ「ああ。時間はかかると思うが、粘り強く話していくよ。だから、待ってもらえないだろうか」

久「いいけど…」

久「でも、じゃあその間、私たちって何なのかしら」

ゆみ「え」

久「ずっと宙ぶらりんでいろって言うの?」

ゆみ「いや…」

久「ねえ、ゆみは私をどうしたいの?」

ゆみ「どうって」

久「ヘタレ」

ゆみ「あ、あのな…」

久「だってヘタレじゃない。モモちゃんとだって、いまだに先輩後輩?あんなにアプローチされといて、笑っちゃうわ」

久「その状況で私のことは口説いてくるし、本当に悪い人ね」

ゆみ「口説い…たわけでは」

久「違うつもりなら余計悪いわよ」

ゆみ「そ、そうか…?」

久「まあでも、お互い様よね」




スッ


ゆみ(…?久の奴、目を閉じてどうしたんだ?)

ゆみ(こうして見るとけっこうかわいい顔をしているな…。睫毛も長くて)


パチッ


ゆみ「(目を開けた?)…?」

久「わからないの?キスしてってことよ」

ゆみ「え、あ、いや、しかし」

久「ゆみがモモちゃんに話して、少なくとも認めてもらえるまで、私たちは恋人じゃない」

久「だけど、友達でもキスくらいするわよ」

ゆみ「いや、それはおかしい」

久「そうかしら?」

ゆみ「外国人でも唇にはしないぞ…」

久「唇にしろとは言ってないけど」

ゆみ「……」

ゆみ「…久、お前やっぱり悪女だろう」

久「かもね。じゃあ悪者同士、仲良くしましょうか」

ゆみ「久?」

久「私たちの関係に、名前は要らない」





久「ーー訊かれたら、ともだちだって言えばいいわ」

ここまでが序章です。長くなるやも。




~翌日 鶴賀学園~



ゆみ「はあ…」

蒲原「なんだー?朝から疲れてるなーゆみちん」ワハハ

ゆみ「まあな…」

桃子「寝不足っすか?」

ゆみ「!」


蒲原「ワハハ、モモいたのかー」

桃子「いま来たっす!おはようございます!」ニコッ

ゆみ「…おはよう」

蒲原「朝練もないのに部室に来るとは感心だなー」

桃子「月曜日だから先輩方が勉強してるかと思って、来てみたっす」

蒲原「月曜二限はいつも小テストだからな!」

ゆみ「わかってるならもっと前から勉強しろ」

蒲原「ワ、ワハハー」

桃子「邪魔しないようにおとなしく漫画でも読んでるっす」

スゥー

ゆみ・蒲原(あ、消えた…)







*******


ゆみ「じゃあここで」

蒲原「ちゃんと授業受けるんだぞー」

ゆみ「お前が言うなよ」

桃子「お疲れさまっす。加治木先輩、無理はしないでくださいね」

ゆみ「…ああ、ありがとう」

桃子「じゃあ失礼するっす!」

タタタ…




蒲原「寸暇を惜しんで会いにきてくれるなんて、ゆみちんは幸せ者だなー」

ゆみ「…そうだな」

蒲原「ワハハ、本当にお疲れみたいだなー。何かあったのか?」

ゆみ「……ちょっと、人から相談をされていてな。つい考えこんでしまって」

蒲原「そうなのかー。責任感が強いのはゆみちんの良いところだけど、気にしすぎても仕方ないぞ?」

ゆみ「ああ、ありがとう」

蒲原「モモも心配してたしなー」

ゆみ(モモ…)




~前日~

ゆみ「他の…その、久の恋人たちには、私のことは言うのか?」

久「…ええ。悪いけど、それは言わなきゃいけないわ」

久「告白しようと思ってる人がいるって話はもうしてあるけど」

ゆみ「そうか…」

久「……」

ゆみ「その中に、私が知っている人はいるのか?」

久「うん。一と美穂子」

ゆみ「そ、そうか」

久「一は私以外にも好きな人がいるから、私のしてることも応援してくれてるんだけど。美穂子とはそろそろ限界かもしれないわ」

久「まだ3ヶ月くらいなんだけどね…」

ゆみ「限界?」

久「口癖みたいに言うのよ。『いつか一番に選んでもらえるように頑張るわね』って」

久「あの子はそういう考え方しかできないみたい。それなら一緒にいても、お互いのためにならないわ」

久「あの子が疑いもなく守っているものを、私は壊したくて仕方がないんだから…」

ゆみ「久…」

久「あなたにも関係のあることなのよ?ゆみ」

久「一途でかわいいモモちゃんには、私は猛毒かもしれない」



久「だから、ごめんなさい」

久「好きになってごめんね、ゆみ…」





~~~~~


蒲原「どしたゆみちん。ボーッとして」

ゆみ「あ、ああ、すまない」

蒲原「謝ることじゃないけどなー。今日の授業は、ゆみちんも聞けそうにないなー」ワハハ

ゆみ「…そんなことはないさ」



ゆみ(モモに話をしなければ…。でもどうやって…)

ゆみ(というかまず告白しないといけないのか?)

ゆみ(いやしかし、それだと上げて落とすことにもなりかねない…)

ゆみ(やっぱり久に助言を求めるか…。慎重にいかなければならないようだしな)



蒲原「そういえばゆみちん、昨日はヒッサに会いに行ってたんだったかー?」

ゆみ「(ギクッ)あ、ああ」

蒲原「じゃあ相談してきたのってヒッサなのか…って、すまん、詮索することじゃないなー」

ゆみ「構わないが…まあ、そうだ」

蒲原「ワハハ、ゆみちんは頼りになるからなー」

ゆみ「だといいんだがな」



ゆみ(とりあえず今夜、ネットを使って久と話すことになっている)

ゆみ(昨日の今日で少し気まずいかもしれないが、間を置いたら余計悪くなりそうだからな)

ゆみ(しかし久の奴も昨日の様子ではかなり思い詰めていたようだし、負担になってしまうだろうか)

ゆみ(今日は少しでも、いつもの久の調子が戻っているといいのだが…)



~その夜~



ゆみ「まだ来てないか?…お、繋がった」

ゆみ「…もしもし」



久『やっほー!!』

ゆみ「」ガクッ

久『あら?聞こえてない?もしもーし』

ゆみ「聞こえている。テンションの振れ幅が大きすぎて驚いただけだ」

久『そうかしら?いやー、今日はなんだか調子良くってね、部活で大勝しちゃったのよー』

久『オーラスで三倍満!カッコいいでしょー。ノーレートだったのが残念だわ』

ゆみ「賭けたら犯罪だからな?」

久『ふふ、わかってるわよ』






久『で、浮かない声だけどどうしたの?』

ゆみ「……」

久『わかった、モモちゃんに言えなかったんでしょう』

ゆみ「…ああ」

久『まあ仕方ないわよね。モモちゃんにしてみれば、降ってわいた話になるわけだし』

ゆみ「…どうするのが良いと思う?」

久『んー。もう先に押し倒しちゃうとか』

ゆみ「切るぞ」

久『冗談よ』


久『そうね、最初は、誰か他人の問題として話してみるのが無難かも』

久『こういう人がいたらどう思うか~みたいにね』

久『そうすると今回の場合は全否定されるか、「当人たちがいいならいいんじゃないっすか」みたいに流されるか、どっちかになる可能性が高いと思うわ』

久『でも、この二つは大して違わない』


ゆみ「そうか?」

久『ええ。どちらも、自分には関係の無いこととして問題を突き放しているの』

ゆみ(……)

久『だから、その後で「当人」がゆみの身近にいることを匂わせる』

ゆみ「しかし、そもそもそんな話に自然に持っていけるとは思えないんだが」

久『不自然でいいのよ。「なんで先輩はこんなこと言い出したんだろう」って、後から思ってもらえるように』

ゆみ「その場で思われるんじゃ…」

久『そこはゆみの雰囲気作りにかかってるわ』

久『モモちゃんが一人になってから、ふと疑問に思うのが理想ね』

ゆみ「そんなに上手く行くといいのだが」

久『行かないと思うわ』

ゆみ「」ガクッ

久『私はアイデアを提供してるだけよ。決めるのはゆみ』

久『モモちゃんのことは、私よりあなたのほうが知ってるでしょう?』

ゆみ「…そうだな。すまない」

久『なに謝ってるのよ』クスッ

ゆみ「迷惑をかけているな」

久『あら、それは私の台詞だわ。大変な思いさせてごめんなさいね』




久『でも、なんだか新鮮ね』

ゆみ「ん?」

久『ゆみと話す内容って、部のことと麻雀のことが殆どだったから』

久『それにこんなに真剣になってくれて、不謹慎かもしれないけどすごく嬉しいの』

久『ゆみのことを好きになってよかったわ』

ゆみ「……」

久『でもね、本当に無理はしないで。私は大丈夫だから』

ゆみ「無理はしていない」

久『ならいいけど』

ゆみ「好きだ」

久『え』

ゆみ「私も好きだよ…久」

久『……………』



久『…ばか』


プツッ…


ゆみ「…切られた」

スマホからなのでIDがコロコロ変わります。すみません…


*******




「嫌いなわけないじゃない」



「ううん、あなたは悪くないわ」



「私が正しいのかどうかもわからない…いつも迷ってばっかりなの」



「ねえ、私たち、友達に戻れないかしら」



「…そうね、無理なのかもね。ごめんなさい」



「ごめんね…」






「さよなら」






*******



~数日後~



ゆみ(あれから部室に行く機会はないまま、今日も放課後…)

ゆみ(情けないが、少し安堵している自分がいる)

ゆみ(だが、いつまでもこうしているわけには…)




桃子「加治木先輩!」

ゆみ「」ビクッ


ユラリ


ゆみ「…モモ」

桃子「…すみませんっす。待ち伏せしてました」

桃子「元部長に今日偶然会ったんすけど、加治木先輩がここのところずっと元気ないというか、上の空だって言ってたっす」

桃子「だから、気になって…。」

ゆみ「……」




桃子「何があったか、聞いちゃだめっすか?」

ゆみ「……友人から相談を受けていて」

桃子「そんなに難しい話なんすか?」

ゆみ「…まあな」

桃子「でもそれはお友達の悩みであって、先輩の悩みじゃないんすよね」

桃子「それで何も手につかないなんて…おかしいっす」

ゆみ「…いや、私にも関係のあることなんだ」

桃子「え…?」

ゆみ「……」



ゆみ「その友人に、告白された」

桃子「!?」


桃子「こ、告白って…じゃあ先輩はその返事を悩んで…?」

ゆみ「それもある」

ゆみ「ただ…どう話したらいいのか。その友人は、既に恋人がいるんだ」

桃子「先輩を浮気相手にするってことっすか!?」

ゆみ「いや、違う…らしい。現在の恋人というのも複数人いて、全員の了承を得た上で隠さずに付き合っているそうだ」

桃子「な、なんすかそれ…」


桃子「おかしいっすよ、本当に好きなら1人に絞れるはずっす!そんなの、ただいい加減なだけっす!」

ゆみ「…そうだろうか」

桃子「!?」

ゆみ「異性が好きな人がいれば同性の相手を好きになる人もいるように、彼女は複数の相手が好きになるというだけなのかもしれない」


桃子「…せ、先輩は優しいからそう思うのかもしれないっすけど、端から見たらただの節操なしっす。そんなのに巻き込まれてやる必要ないっすよ!」

桃子「どんな人かは知らないっすけど、先輩の都合も考えるべきっす!」

ゆみ「…泣いていたんだ」

桃子「え」

ゆみ「好きになってごめん、と。何度も言っていた」

桃子「…先輩は、その人のことが好きなんすか?」

ゆみ「…ああ」

桃子「……!!」




桃子「なん、で」ヨロリ

ゆみ「モモ、私は」

桃子「……」クルッ フラフラ

ゆみ「聞いてくれ、モモ!」

桃子「…いやっす!」ダッ


タタタ……



ゆみ「お、おい待て!モモ!!」






*******



「ねえ、友情と恋愛ってそんなに違うかしら」

「急になんじゃ」

「友達以上恋人未満、とか言うんだし、地続きでもおかしくないと思うんだけどなあ。ねえ、咲はどう思う?

「ええっ?!よ、よくわかりませんけど…やっぱり、けっこう違うんじゃないでしょうか」

「そう?優希だって前に『のどちゃんは私の嫁だからな』とか言ってたわよね」

「な、なんでそれを引き合いに出すんですか!あれは言葉の綾というか…ジョークですよっ」

「のどちゃんなら本当に来てもいいじぇ~?」ケラケラ

「ゆ、ゆーきっ!」

(和とキャッキャウフフしたいなあ…)




*******



~数日後 ゆみの自室~



ゆみ(モモは部室に来なくなってしまった)

ゆみ(教室にも行ってはみたが、見つけることはできず)

ゆみ(県予選前のあの時のように乱入して声を張り上げることも、今の私にはできない)



ゆみ「モモ…」



ゆみ(そもそも私は、モモに何を期待していたのだろうか)

ゆみ(恋人同士になり、久とのことも認めてもらう?)

ゆみ(久が許してくれるからといって、調子に乗っていたのではないか)

ゆみ(久はきっと長い間悩んで、今のあり方を選んだ。だが私は?)

ゆみ(2人と恋愛をするということの意味を、本当にわかっていたのか?)


ゆみ(『モモの期待に応えたい』『久を悲しませたくない』)


ゆみ(人に責任を押し付けてばかりではないか…!)





チカッ



ゆみ「ん…パソコンか…」

ゆみ「新着…」


カタカタ




ゆみ「…久からだ」






カチッ



ゆみ「……」


ゆみ「もしもし」



シーン…



ゆみ「もしもし?」


ゆみ「…?(間違いか?)』



 『ん…』

ゆみ「!」


久『あ…ごめん、寝てた…ゆみ…?』

ゆみ「…気づくのが遅れてすまない。今は家か?」

久『ううん…部室よ』

ゆみ「清澄は今日は休みではないのか?」

久『学生議会の仕事で来てたの。もうすぐ引継ぎだけどね』

ゆみ「そうか。しかし、なぜわざわざ部室から?」

久『今までも部室だったわよ。私の家、パソコン無いから』

ゆみ「…言ってくれればよかったのに」

久『別に平気よ。大体、家じゃ狭くて落ち着いて話せないもの』

ゆみ「そうか…」



ゆみ「それで、どうしたんだ?」

久『え?』

ゆみ「何か用事があるんじゃないのか?」

久『あら、用事がないと話はできないのかしら』

ゆみ「いや、そういうことではないが」

久『……』

ゆみ「……」







ゆみ(このままではいけない)

ゆみ(自分の気持ちをはっきりさせなければ)


ゆみ「久」

久『…何かしら』

ゆみ「連絡していなくて、悪かった」



ゆみ「明日、会えないか?」




?翌日?



ゆみ「モモのことは、上手くいかなかった」

久「…そっか」





久「ごめんなさい。私が間に入ったから」

ゆみ「違う」

久「違わないわ。私がいなければ、ゆみも、モモちゃんも幸せだったはずなのに」

ゆみ「そんな言い方はしないでくれ」

久「でも」

ゆみ「私の考えが甘かったんだ。そのせいでお前にも、モモにもつらい思いをさせた」

ゆみ「謝るのは私のほうだ。…本当に、すまない」

久「……」




久「…もう。やめてよ、ゆみってば堅物なんだから」 クスッ

久「私は自分のしたいようにしただけ。…そんなことより、いいの?」

ゆみ「何がだ?」


久「モモちゃんに悪いと思うなら、こんなところで油売ってちゃだめでしょう?」

ゆみ「……」

久「放っておいたら一生後悔するわよ?」

久「あの子がそう簡単にゆみを嫌いになるはずない。今からでもやり直せるわ」

ゆみ「久」

久「私は平気よ。慰めてくれる人なら、他に何人もいるもの」

久「ゆみをけしかけたのだって、ゆみが私と同類になってくれれば都合がいいかなーと思っただけ」

久「それがこんなことになっちゃって、悪かったと思ってるわ。だから、行っていいわよ」

久「かわいいモモちゃんのところにね」




ゆみ「久」

久「なーに?」



ゆみ「大丈夫だ。私はお前を軽蔑したりしない」

久「…ふふ、知ってたけど、真面目なのね。でも私はゆみがいなくたって生きていけるわ」

ゆみ「…ああ。私も、久がいなくても死にはしない」





ゆみ「それでも、お前といたいんだ」

久「……」

ゆみ「好きだ」

久「……」





久「……後悔するわよ」

ゆみ「しない」

久「するわ」

ゆみ「お前は、するのか?」

久「………」





久「…ばか」


文字化けしている…。

>>37
「~翌日~」です



~~~~~~



久「……あと、鹿児島に住んでる滝見春。インハイで対戦した永水女子の子なんだけどね。今の恋人はこれで全員よ」

ゆみ「…さっきも思ったが、お前は全国に何をしに行ったんだ?」

久「あ、あははー」

ゆみ「まったく…」



ゆみ「しかし以外だな。聞いた感じでは、最近付き合い出した相手が多いんじゃないか?」

久「ええ。…中学の頃に色々あってね。高校に入ってからは自粛してたの」

久「二年の時に今の彼氏に告白されて、マジョリティの仲間入りするつもりで付き合い始めたんだけど。それで現状がこうだから、アイツには申し訳ないわ」

ゆみ「……」



久「ここ、静かでいい道ね。地元じゃないのに、よくこんなところ知ってたわね」

ゆみ「まあ、散歩は好きだからな」

久「ゆみってけっこう好きなことが多いのね」

ゆみ「そうかな」

久「そう思うけど。でも、もっと知りたいわ。ゆみのこと」ニコ

ゆみ「…」ドキッ


ゆみ「…もう大体知ってると思うぞ」フイッ

久「あら、そんなことないわよ」

ゆみ「久も今まで、それほど自分のことは話さなかっただろう」

久「そう?まあ、そうかもね」

ゆみ「だったらお互い様じゃないか」

久「うーん」






久(なんか、ゆみに合わせてたら普通に散歩して終わりそうねぇ)

久(それでも悪くはないんだけど、ちょっとくらい…)



ギュッ



ゆみ「!?」

ゆみ「お、おい、ここは公道だぞ!?」

久「さっきから誰も通らないじゃない。ファミレスよりはましよ」

ゆみ「それとこれとは別だ!ここはまずいだろう」

久「じゃあ、そこの物陰にでも移動する?」

ゆみ「そういう問題じゃ…」

久「嫌…?」パッ

ゆみ「え(急に離れた…)」

久「…私じゃ、嫌かしら?」ウツムキ







ゆみ「………」


久「なーんちゃって、じょうだ…って、え?」



グイッ



ゆみ「…」

久「ゆ、ゆみー?あの、今のは…んむっ」

ゆみ「ん…」

久「ん、んぅ…ぷはっ」



久「はぁっ、ゆみ…」

ゆみ「……」

久「か、からかって悪かったわよ、だから…」

ゆみ「久」グイ

久「へ?(手首を掴まれた?)…って、痛い、引っ張らな…」




ゆみ「……」スタスタ

久(も、物陰に来ちゃった…!まさか、)

久「ゆみ、ちょっと待っ…んっ」

ゆみ「ん……ちゅ…」ペロ

久「!? (く、唇舐められ…って、あっ、舌が)」

ゆみ「ちゅる…」

久(正直、上手いというよりは闇雲って感じのキスだけど、ヤバい…気が遠くなりそう)

久「ん…ぁ、」フラッ

ゆみ「っ」

久(あ、口が離れた…よかっ)



ゆみ「…久」ペロ

久「あっ!」

ゆみ「かわいいな」クスッ

久「?っ//」



ゆみ「もう一度…」

久「え、や、もうやめて、耳は…ひゃんっ!」





久「あ、あっ、やぁ…」






久「あ…はぅ…」クタッ


ゆみ「! 、っと」ガシッ




久「」ハァハァ




ゆみ(……)

ゆみ(や、やりすぎた)



ゆみ「…その、大丈夫か?」

久「だめ…」

ゆみ「すまない、えっと…どうすれば」

久「……」




久「ぎゅってして…?//」

ゆみ「あ、ああ//(かわいい)」ギュッ





久「ん…」ギュー

ゆみ(落ち着いてきたか?背中でもさすったほうがいいのだろうか)ソー

ゆみ「……」

スッ

久「ひあぁっ!?」ビビクン

ゆみ「えっ」



久「やっ…なに…」

ゆみ「わ、悪い、そんなつもりは…ただ背中を、ほら」サスッ

久「あんっ!」

ゆみ(えっ、背中って感じるのか?)



ゆみ「……」



スーッ



久「ああぁっ!!」ビクッ!

ゆみ「!?」

久「あ、あ…」グッタリ



ゆみ「ひ、久?」

久「……」






久「う…」



久「うぅ…」





久「もうやだぁ…」グスン

ゆみ「ご、ごめん」

久「こんな、とこで…」

ゆみ「…それは久が」

久「キスくらいで終わると思ったのに…。ひっく」

久「うえぇぇん…」

ゆみ「お、おい」




ゆみ(ど、どうしよう…)

ゆみ(久の声がけっこう響いていたから、移動したいのだが…)





久「うえぇぇ…」

ゆみ「た、頼む、泣き止んでくれ…私が悪かったから」

久「私、こんな外で、ぐすっ」

ゆみ「だからそれは私のせいだ。な?」

久「ぐすっ、ひっく」






ゆみ「…おさまったか?」

久「うん…ごめん」

ゆみ「いや、私こそすまなかった」

久「すごくびっくりしたわ…」

ゆみ「ははは…しかし正直、久はもっと慣れているのかと」

久「…悪い?」

ゆみ「いや。ただ、悪女には程遠いんじゃないか?」

久「…ゆみよりは経験あるわよ」ムッ

ゆみ「だろうな」


久「……」ムー

久「……」



クルッ



ゆみ「?どこへ行くんだ?」

久「市街地に戻るわ」

ゆみ「構わないが、なぜ急に?」

久「ホテル行くから」

ゆみ「ホテルって…」

久「あら、わからないの?」

ゆみ「…それくらいわかるさ」

久「じゃあ、行きましょう」

ゆみ「…今から?」

久「決まってるじゃない。このまま帰るなんて私のプライドが許さないわ」

ゆみ「はぁ…」



久「あんな一方的なので勝ったと思わないでよね」

ゆみ「勝ち負けの問題なのか?というか、お前さっきまでヘロヘロになってただろう」


久「な、ないない!そんなの!」

ゆみ「…」ジトー

久「うぅ…。と、とにかく仕切り直しよ!初心者はおとなしく言うこと聞いてなさい!」


久「ほら、行くわよ!」



先に言っておくと、ホテルでのシーンは大幅なキンクリをしてお届けします。

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