京子「ずっと…友だちでいよ…?」(269)

注意事項

・百合
・結京
・純愛()
・受け攻めってなにそれ


以上。グダグダでも許して


きょうこ「っく……ひくっ……」グスッ

ゆい「きょうこ……」

きょうこ「ぁ……ゆぃぃ……」ジワァ…

ゆい「……なかないで。ほら、イイコイイコ」ナデナデ

きょうこ「ん……でもぉ……」ヒック…

ゆい「わたしがついてるから。もう、だいじょうぶだから……」ギュッ…





ゆい「……きょうこは、わたしがまもるから」


TV < アリスッ! パリーン!

結衣「おい、京子?」

京子「……」コク…コク…

結衣「……寝たのか? ったく、寝るなら布団で寝ろよ」

京子「……」スースー


結衣「……はぁ」

結衣「しょうがないな、京子は」ギュ

結衣「よ、っと」ヒョイ


結衣「……無防備に寝やがって」オヒメサマダッコ

京子「……」ウガー


結衣「っと……」ソローッ

京子「んん……」ギュウウウ

結衣「こら、離せって。寝かせられないだろ?」

京子「……」ギュー

結衣「……ホントに京子は、しょうがないな」

京子「……」スースー

結衣「(寝顔は、昔のまま変わんないのにな)」

結衣「……もう、私に守られなくても大丈夫なくせに」

京子「……」


結衣「あー……でもこれじゃ、ゲームの続きできないな……」

京子「……」

結衣「今日中にクリアするって言ったの、京子だろうに」

京子「……ん」スースー


結衣「……まぁ、いいか」ゴロ

結衣「おまえが離さなかったんだからな。朝起きて、文句言うなよ?」

京子「……」

結衣「……ほんと、無防備に寝やがって」ズキ


チュンチュン

京子「…んむー……」ムク

結衣「……」スースー


京子「……おはよ、結衣」

結衣「……」スヤスヤ

京子「あはは、結衣可愛いなぁ」プニプニ

結衣「ん……」ゴロ

京子「んーっしゃ! んじゃ、たまには私が朝食作るかぁ」ヨッショ

結衣「……」スースー


京子「あら、ゲームも電気も点けっ放しじゃん」

京子「……いや。私が手、離さなかったせいか」


結衣『……もう、私に守られなくても大丈夫なくせに』


京子「……」

京子「……私、結衣に甘えすぎかな」

京子「もう、昔とは違うのにね」

結衣「……」

京子「(それでも、私だって……)」


結衣「……」スースー

京子「…んじゃ、パンでも焼こっかね」


結衣「……ん」ピクッ

結衣「…あれ……京子?」ムク

京子「おー、早かったね」

京子「テレビも電気も点けっぱなしだったよ? ダメじゃん、無駄遣い」

結衣「あー……そいやそうだったな……」ゴシゴシ

結衣「というか、あれはおまえが……」

京子「ほい、トーストとハムエッグ」

結衣「……京子が作ったのか?」

京子「京子ちゃんが作った絶品ハムエッグだぜぃ」

結衣「誰が作っても大して変わらんだろ」

京子「その台詞、食べてから言ってもらおうか」ドヤァ

結衣「はいはい」


結衣「初めてじゃないか? 京子がここで朝食作ったの」モグモグ

京子「そこは『凄くおいしいよ』って感謝するとこでしょ」

結衣「言うほど旨くはないが」

京子「うわひどっ!」

結衣「……まぁ、悪くもないが」

京子「それフォローになってないっしょ」

結衣「…まぁ……ありがとな」

京子「おう、任しとけ!」エッヘン!

結衣「で、そこの割れてる皿についてだが……」

京子「……」

京子「誠に遺憾であると……」

結衣「おい」


京子「作ったのと皿割ったのでイーブンじゃんかぁ」カチャカチャ

結衣「だから私も手伝ってるだろ、皿洗い」ザー

京子「後片付けのない料理なんて、終わりのない遠足のようなものだ」ドヤ

結衣「別に上手くねーよ」フキフキ


京子「よっし完了! んじゃ昨日のやつクリアしようぜ!」

結衣「それはいいが、昼はどうするんだ? 外出るか?」

京子「ん~、そうね。休日に引き籠ってるのもアレだし」

結衣「そか。んじゃ午前中にクリアすっか」

京子「おう!」


京子「んんー。日向ぼっこには寒い季節になりましたな」

結衣「まぁ晴れてるだけマシだろ」

京子「そかもね」

ザワザワ ガヤガヤ

結衣「人多いな」

京子「休みだしねー。手でも繋ぐ?」

結衣「いまさらはぐれるか? この街で」

京子「昔は繋いでたじゃん」

結衣「いつの話だ……」

京子「そんな昔じゃないって。4,5年前?」


結衣「……そいや、そんなもんだったか」

京子「そうそう」


京子「ほらいいじゃん。手繋ぐくらい」ギュ

結衣「っておい、勝手に……」

京子「だってほら、温かいし」エヘヘ


結衣「……」

結衣「……まぁ、たまにはいいか」ギュ

京子「そうそう」ニシシ



結衣「それじゃ、取り敢えず昼にするか」

京子「ワック?」

結衣「いや、どこでもいいけどな」

京子「じゃあ私、行きたいとこある!」


イラッシャイマセー!

京子「ここ来てみたかったのだよ」

結衣「へぇ、私も初めてだな。イタリアンか」

京子「行ってもファミレスくらいだしねぇ、普段は」

結衣「なんで来たかったんだ? 値段は……まぁ妥当な金額だけど」

結衣「こういう店、京子と来るのは珍しいよな」

京子「え」


京子「…あ、いや。まぁ、なんつーか……」

京子「新作同人のネタ出し?」

結衣「疑問形の意味がわからんが」

京子「ネタが出るかは運次第」

結衣「適当すぎだろ……」


京子「いやそこはほら、ここって外目にも雰囲気よさ気だし!」

京子「なんとなく入ってみたかったんだよ、なんとなく」

結衣「あ……」


結衣「……まぁ確かに、一人で入るには気後れするかもな。この店」

京子「そうそう。……だからまぁ、結衣と来ようかなって」

結衣「そう、か」

京子「そそ。ともかく、注文取ろうぜ!」

結衣「ああ。……そっちは決まったか?」

京子「結衣は何にすんの?」

結衣「んー。無難にパスタで。ペペロンチーノ」

京子「そいじゃ、私はナポリタンで!」


ゴチュウモン、オモチシマシター! ゴユックリドウゾー

結衣「ん。京子の方は魚介も入ってるんだな」

京子「そそ。エビうめぇ」モグモグ

結衣「値段の割に豪華だな」

京子「結衣のも少し頂戴。というかくれ!」

結衣「別にいいけど、少し辛いぞ? これ」

京子「大丈夫っしょ。ほれ、結衣にも一口。あーん」


結衣「……恥ずかしいんだが」

京子「恥ずかしいと思うから恥ずかしいんだよ」

結衣「当たり前だろ」


京子「で、どうよ?」

結衣「うん。魚介がいい味出してるな」フキフキ

京子「私のあーんは」

結衣「そこかよ」

京子「なにげ間接キスだし」

結衣「……」


結衣「私にどうしろと」

京子「いやほら、嬉しかったとかドキドキしたとか」

結衣「恥ずかしかったが。後、口周りにケチャップ付いた」

京子「ぐむ……。手強い」

結衣「なにと戦ってんだ」


京子「そんじゃ次。結衣からしてよ」

結衣「あーんを?」

京子「そそ、あーんを」

結衣「……」

京子「……」ソワソワ

結衣「……あ」

結衣「あーん……」カァァ


京子「……あ、」ドキドキ

結衣「……っ//」ドキドキ

京子「(結衣、かわいい……///)」カアァァ




結衣「さっさと食えってのっ!」グイ

京子「ぐむっ!?」ムギュ


結衣「はぁ……っ」ドキドキ

京子「っ……」モグモグ

京子「…うぅ。からい……」ジワ

結衣「そ、そんな泣くほどか……?」

京子「結衣が無理矢理入れるから、」

京子「喉の奥にトウガラシが……」

結衣「あ、あぁそうか。ほら、水」

京子「ん……」ゴクゴク

京子「ふぅ……なんか喉スースーする……」

結衣「……自業自得だ」プイ


アリガトウゴザイマシター

京子「結衣はこれから行きたいとこある?」

結衣「特に思いつかないが……」

京子「んじゃその辺ぶらぶらしよっか」

結衣「あぁ、そうするか」



京子「お、新刊出てる」

結衣「……」パラパラ

京子「結衣もなんか買う?」

結衣「いや、私は別にない」

京子「そか。じゃ、レジ行ってくる!」シュタ!

結衣「おう」

結衣「……」


『友だちと恋人の境目は? 友情と愛情の違いは? 実例を基に徹底検証―――』

結衣「……この雑誌も、当てにならないよな」

結衣「(そもそも、私と京子は……)」


京子「お待たせー!」

結衣「んじゃ、出るか」

京子「結衣はいいの? その本」

結衣「ああ、暇つぶしだったし」トサッ

京子「ふーん?」チラ

結衣「置いてくぞ?」スタスタ

京子「…あ。結衣、待ってってばー!」タッタッタッ


結衣「もうこんな時間か」

京子「今日は長いこと外出てたよね」

結衣「珍しくな」

京子「最近は引き籠ってたしねぇ」

結衣「実際、外で遊ぶお金もないしな」

京子「まねー」

結衣「……」


京子「今のは相槌の『まぁね』と『マネー』をかけた高度な……」

結衣「聞いてねーよ」


結衣「で、おまえは帰らないのか?」

京子「あー……うん。まぁその、」

京子「……忘れ物があった気がする」

結衣「そうだったか?」

京子「きっとたぶん、おそらく」

結衣「……」


結衣「……まぁいいけど」

結衣「あんま遅くなるなよ?」

京子「うぃ」


京子「ただいまー!」

結衣「……夕飯食べてくつもりなら、電話入れとけよ」

京子「献立は何さ」

結衣「昼が洋食だったし、和食かな。味噌汁とか……」

京子「とか?」キラキラ



結衣「……」

結衣「……和風ハンバーグ」

京子「電話してくる!」シュタッ!


結衣「……」トントントン

京子「えー。いーじゃん、すぐ帰るから!」

結衣「……」ザー

京子「うん。結衣もいいって言ってるし」

結衣「……」コネコネ

京子「え、嫁? 何言ってんのさ。結衣が嫁だよ、私の」

結衣「……っ!?」ボトッ

京子「あーそうそう。うんわかってるって、8時には帰る」

京子「うん。じゃねー」プツ


京子「おっけーだってさ!」

結衣「…すぐできるから、待ってろ」カチャカチャ

京子「おー!」


結衣「こっちの皿運んでくれ」コト

京子「りょうかーい!」トテテ


京子「んじゃ、いただきまーす」

結衣「大根おろしいいか?」

京子「うん、だいじょぶ」モグモグ

京子「うめぇ!」

結衣「そうか」ホッ

京子「結衣ん家で食べるご飯って、いっつも豪華な気がする」モグモグ


結衣「……気のせいだろ」モグモグ

京子「むふふ」ニヤニヤ

結衣「…なんだその笑みは」


結衣「……」キュキュ ジャー

京子「こっちのやつ片づけていい?」カチャカチャ

結衣「ああ。そこの棚な」

京子「わかってますとも」テキパキ

結衣「……」


結衣「……片づけくらい私がやっとくぞ?」

京子「ま、たまにはいいじゃん」

結衣「でもおまえ、時間が」

京子「まだ8時前だし」

結衣「……8時までに帰るんじゃなかったのか?」

京子「むぅ。いーじゃん、ちょっとくらい」

結衣「怒られても知らんからな……」


京子「……」

結衣「おい、京子。もう8時……」


京子「……帰る前にさ、一つだけ聞いていい?」

結衣「なんだ突然」

京子「その、なんというか……」



京子「結衣は、親友と恋人の境目って、どこだと思う?」

結衣「っ!?」ガタッ


結衣「な、なんの話だ」

京子「い、いやほらっ! 結衣が本屋で見てた……」

結衣「あ、」


結衣「…あぁ。あの本の話か」

京子「ほ、ほら。私、結衣が先行っちゃったから読めなかったし」

京子「だからまぁ、なんとなく引っかかってて……」

結衣「いや、私も流し読みだったし……」

京子「そ、そっか」

結衣「あぁ」

京子「……」

結衣「……」


京子「…そ、それじゃ―――」

結衣「あの本では確か、」

京子「え」


結衣「……キスが、嫌かどうか、だったと思う」

京子「っ……」

結衣「……」



京子「…あ、あぁーね! そ、そっかっ……」ズキ

結衣「あ、あぁ。あの本には、そう書いてた」

結衣「…ま、まぁ、無難な答えだよな」

京子「そ、そだね。なんか、ありきたりというか……」


京子「……で、でも。それじゃあ、さ」

結衣「ん?」

京子「今日の私たちは、」

京子「こ、恋人っ、みたいに――――」



結衣「っ……」バッ

京子「あっ……」ビクッ

結衣「…京子。私たちは……」





結衣「……友達、だろ?」

京子「っ……」ズキッ


京子「……一つだけ、聞かせて…?」

結衣「……」

京子「…結衣は、今日のデート。楽しかった……?」

結衣「っ……」








結衣「…あぁ」

結衣「……楽しかった、よ」


京子「そっか……」

結衣「……」



結衣「……ほら、京子」

結衣「もう、帰らないと」

京子「……ん」


京子「それじゃ、また明日ね……?」ガチャ…

結衣「あぁ。帰り、気をつけろよ?」

京子「うん……」


京子「…私も、デート。楽しかった――――」バタン



結衣「……」

結衣「…ばか」


バタン

京子「……」


結衣『……キスが、嫌かどうか、だったと思う』




京子「……結衣の、ばか」

京子「あんなの、不意打ちだよ……」





京子「……キス、くらい」

京子「結衣となら、嫌なわけないじゃん……」ジワ…

京子「っ……」ゴシゴシ


翌日

京子「うぅー……」ズズー

綾乃「と、歳納京子? 大丈夫なの……?」

結衣「風邪気味なんだって。熱はないらしいけど……」

京子「……鼻止まんない」グター

結衣「辛かったら保健室行くか?」

綾乃「そ、そうね。弱ってる時に無理しない方がいいわ」

京子「ん。……今はいいや。どうせ授業中寝てるし……」

結衣「こら」ペシ

京子「あぅっ」


結衣「どうせなら保健室で寝てろっての。ほら、連れてってやるから」グイ

京子「うー……」グデー

綾乃「先生には私が報告しておくから……」

結衣「うん。綾乃、お願い」


結衣「…それじゃ、行くぞ?」ギュ

京子「え、っと。そ、そんな支えなくても……」

結衣「いいから。病人は大人しく従っとけ」

京子「……う、ん」


結衣「……おまえ、本当に熱ないのか?」

京子「ほんとだって。朝ちゃんと測ったし」

結衣「何度だった?」

京子「んー……」


京子「……忘れた」

結衣「……じゃあ測り直しとけ。身体熱いぞ?」

京子「7度くらいだったけどなぁ……」



結衣「……昨日は大丈夫だったのか?」

京子「ん、昨日は何ともなかったよ。ただ帰ってから長湯しちゃったから」

結衣「……そうか」


ガラッ
結衣「失礼します。……誰もいないのか」

京子「私は大丈夫だから。結衣は戻ってて?」

結衣「あぁ。先生来たら熱計ってもらえよ?」

京子「うん……ありがと、結衣」

京子「んじゃ、私寝てるから……」ボフッ

結衣「……」

結衣「…ちゃんと計れよ?」

京子「んー」ヒラヒラー


結衣「…休み時間に、また来るからな」

京子「はーい」


京子「……」

京子「本当は眠りたくないんだけどなぁ……」

京子「(今寝たら、結衣が出てくる夢、見ちゃいそうだし……)」


京子「……っ」ズズー

京子「あー……そいや、頭も痛いかも……」ズキッ


京子「(…ダメだ……やっぱ眠い……)」ファァ

京子「……ん」



京子「……」スースー

キーンコーンカーンコーン


結衣「……失礼します」ガラ

京子「……んぁ」ゴロ

結衣「つっても、京子しかいないか……」

結衣「(担当の先生、午前中は来れないって言ってたし……)」



京子「……」スースー

結衣「なんだ、ちゃんと寝てたか」

結衣「熱は……やっぱ少し熱いな。起きたら計らないと……」

京子「……んん」モゾ

結衣「汗も掻いてるし……熱上がってるよな、たぶん……」


京子「……っ」スースー

結衣「っ!」


結衣「お、おい。京……」

京子「っ……」ポロポロ


結衣「……っ」

結衣「……なんで、泣いてんだよ」

京子「ん……っ!」ギュッ

結衣「シーツ、皺になるぞ……?」ナデナデ

京子「……っ」ピクッ

京子「ん……」モゾモゾ



結衣「……変な気遣いやがって」ナデナデ

京子「……」スースー


京子「ふ……あぁ……」

京子「あー……寝た。頭痛い……」ズキズキ

京子「(結衣が、夢に出てきた気がする……)」


京子「……昨日のこと、まだ引きずってんのかな」

京子「(もう、割り切ってたつもりだったのにな……)」

京子「(それなのに、昨日はあんなこと聞いちゃったし……)」ズキッ



京子「……」

京子「……やっぱ、授業受けてた方が良かったかな」

京子「一人になると余計な事考えちゃうし……っ」ズズッー


京子「(……そういや、先生いないな)」

京子「(いないならそれでもいいけど……)」

京子「(汗掻いちゃったし……。熱も、計らないと……)」グデー


ガラ…
結衣「…京子、起きてるか?」

京子「んー……結衣……?」モゾ



結衣「起きてたか。調子どうだ?」

京子「……頭痛い、かも」

結衣「…熱計って、高かったら早退しとけ」

京子「うん……たいおんけー……」グダー

結衣「はいはい。私が持ってくから、おまえは寝てろ」

京子「おねがーい……」ヒラヒラ


京子「冷たっ」ブルッ

結衣「あー。確かに冷たいよな、体温計」

結衣「体温のが高いせいだろうけど」

京子「そんな考察はいらーん……」ピピッ

京子「……9度ちょい」


結衣「……担任に話してくる。京子の家、おばさんいるよな?」

京子「あー……今はいないかも。ここで寝てればいいっしょ……」

結衣「バカ。この熱なら病院行って診てもらわないと……」

京子「どーせ動けないしさぁ……」グダー


結衣「駄目だってのっ。ともかく、私は事情話して鞄とか用意してくるから」


結衣「……だからまぁ、その」

京子「?」

結衣「……服、前留めとけよ? 色々とその、」


結衣「……見えてるから」

京子「っ!?」



京子「む、むっつりスケベ……」カアァァ

結衣「なっ、なんでだよっ!?」ドキッ

京子「びょ、病人の素肌を舐めまわすように……///」

結衣「見てねーよバカっ!」カアァァ


京子「あぅ……」ズキズキ

結衣「っわ、悪い……声大きすぎたな……」

京子「うぅ……お嫁にいけない……」

結衣「何度も見られてるだろ、私には……」

京子「だ、だってこんな……」



二人きりの保健室+汗ばんだ素肌+荒い吐息




京子「なんか状況がエロいし……」

結衣「知るかっ! つーか自分でエロイとか言うな」カアァ


結衣「京子っ?」ガラッ

京子「んー……?」グダー

結衣「担任に話して来たけど。京子の家、電話繋がらないらしい……」

京子「あー、朝から出掛けてたからなぁ……」グデー

京子「聞いてないけど、遠出してるのかも……」


結衣「……そいや今日、温泉行くとか言ってた。うちの親……」

京子「あー……たぶん、それ一緒かも。あの二人仲良いし……」

結衣「日帰りの温泉旅行だとして、帰りは夕方以降か……おばさん携帯は?」

京子「持ってるけど、番号覚えてない……」

京子「私の携帯、今日は家に置いてるし……」

結衣「家の鍵はあるのか?」

京子「それは、あるけど」

結衣「……」


綾乃「あ、船見さん!」

綾乃「そ、その! と、歳納京子は……」

結衣「綾乃、京子の帰り支度済んでる?」

綾乃「え、えぇ……言われた通り鞄と、後は配布されたプリント類と……」

結衣「あぁ、ありがと! やっぱり、綾乃に任せてよかった……」


結衣「京子は家の人と連絡付かないから、私が病院連れてくことになって」

綾乃「え!? ふ、船見さんも早退するの……?」

結衣「あ、うん。担任にも許可貰ったから」

綾乃「そ、そんな簡単にいくことなのっ?」

結衣「あー……色々言われたけど。まぁ緊急事態ってことで」

綾乃「(そ、そういうものかしら……)」アレ…?


結衣「でも、万一インフルとかだったら危ないわけだし」

結衣「その辺も考慮してくれたんじゃないかな。案外融通利くのかもね」

結衣「(……病院送ったら戻ってこいとも言われたけど)」

綾乃「…そ、そうよね……最悪、命に関わることだし……」

結衣「時期的にも可能性は高いしね……」


綾乃「…船見さん。歳納京子のこと、お願いね……?」

結衣「うん、綾乃もありがと。病院出たらまた連絡する」

綾乃「えぇ……」


結衣「ほら、じゃあ行くぞ?」

京子「え? な、なんで結衣まで……?」

結衣「許可貰ってきた。取り敢えず、京子の家で保険証と携帯を……」

京子「そ、そんな簡単に貰えんのっ?」ゴホゴホッ


京子「……ぅ」グッタリ

結衣「おぶるか?」

京子「む……」



京子「…いたしかたない……」グヌヌ

結衣「病人が強がんなっての」ヨッショ

京子「……でも、ホントよく許可貰えたね」

結衣「ああ。京子の両親の代わりに、うちの父が迎えに来ますって話して」

結衣「家族ぐるみで付き合いもあるし、ってことで」


京子「……それ、結衣が付き添う意味なくない?」

結衣「でもこれ出任せだからな。あの人、今は仕事中だし」

京子「じゃあどうやって納得させたんだよ……」

結衣「だからまぁ、そこで手間取って」


結衣「仕方ないから、うちの父親に女子中学生を預けることの危険性を……」

京子「……」




結衣「冗談だ」

京子「おじさん、可哀想に……」


京子「……私、重くない?」オンブチュウ

結衣「ん、まぁ大丈夫。この先にタクシー呼んでるから」

結衣「それ乗ったらまずは京子の家な。で、京子の携帯と保険証を捜して……」


結衣「…あ、保険証とかは、できれば京子に取ってきて貰いたいんだけど」

京子「私もどこあるかよく覚えてない……」

結衣「それじゃ、まずはおばさんに連絡取ってから……」

京子「……」




京子「……結衣って、たまにこういうことさらっとやっちゃうよね」

結衣「? なんだそれ」

京子「んにゃ。結衣は頼りになるなぁって」

結衣「……なんだそれは」

京子「結衣はカッコいいなぁって」ナデナデ

結衣「な、なんだその手は……」カアァ


結衣「はい、そうです。今から病院に……」

京子「あっ、保険証あった……」ウトウト

結衣「あ、今みつかりました。はい、」

結衣「……はい、お願いします」ガチャ


結衣「二人とも、帰りは夕方前になるって」

京子「ん……」

京子「あー、眠たいかも……」グデー

結衣「ほら、背負ってやるから」ヒョイ

京子「……ん」ギュゥゥ



結衣「…ほんと、身体熱いな……」ギュッ

京子「(結衣の匂い……)」ドキドキ


ブロロロロロロ…

京子「タクシーとか久しぶりに乗った……」

結衣「もうちょっとだから、我慢しろよ?」

京子「はーい……」グダー



看護師「では、お連れの方はここでお待ち下さい」

結衣「あ、はい」

京子「ぅ……」チラ



結衣「……行ってこい」パ

京子「……」ムー

京子「ん……」フラー


結衣「……」


結衣「……」チラ

結衣「(遅いな……)」


結衣「……」

結衣「……」チラ

結衣「(もし、万一のことがあったら……)」


結衣「……っ」ブンブン

結衣「(…悪い方に考えたって、仕方ないし……)」チラ

結衣「……」

結衣「……」チラ




看護師「歳納京子さんのお連れの方~」

結衣「っ!」ガタッ


京子「点滴やだぁー……」ウルウル

結衣「……」ジトォォォォ

医師「インフルエンザではないのですが、熱もかなり上がってますし……」

医師「無理に点滴する必要もありませんが、割と楽になるので……」


結衣「……いいから、してもらっとけ」

京子「でもぉ……」グス

結衣「どうせ大して動けないんだから、点滴して寝てても同じだろ……」

京子「うぅー……」


結衣「……しょうがないな、京子は」ハァ…

結衣「ほら、私もいてやるから」ギュ

京子「……ほんとに?」ムー

結衣「あぁ……手、握ってるから」

京子「……絶対、離さない…?」

結衣「離さないよ。だから安心して寝てろ」ナデナデ

京子「……ん」ギュ


京子「……」スースー

結衣「(昔もこういうことあったな……)」ギュ



結衣「……あの頃から、間違ってたのかもな」

京子「ん……」ギュー


結衣「ほら、家着いたぞ」

京子「んー……」ヘトー

結衣「服は……寝巻のがいいよな。どこある?」

京子「部屋……私の……」グター

結衣「それじゃ、取り敢えず布団まで運ぶか……」ヨッショ


結衣「よし、じゃあ着替えは……」

京子「んー」バンザーイ


結衣「……なにしてんだ」

京子「脱がしてぇー……」ダラーン

京子「あー……ついでに身体も拭いて……?」ウワメヅカイ


結衣「……」ハァ

結衣「……タオル取ってくる」


結衣「……」フキフキ

京子「……」ウトウト

結衣「……寝るなら服着てからにしろよ?」フキフキ

京子「ん……」


京子「……」ウトウト

京子「……」カクンッ

結衣「っおいこら!」ダキッ

京子「!?」バッ


京子「な、なんか今のえっちかった……」カアァァ

結衣「おまえが倒れてきたんだろ……」

京子「ゆ、結衣に柔肌を触られた……」ドキドキ

結衣「い、如何わしい表現をするなっ」

京子「…そういえば私、服着てない……」

結衣「どんだけ寝惚けてんだ……」



京子「ゆ、結衣が脱がしたの……?///」

結衣「お、おまえが身体拭けって言うから……」カアァ

京子「……っ///」カアァァ



京子「……えっち///」プイ

結衣「こ、こいつ……っ」ピキピキ


結衣「ほら、体温計。もっかい測っとけ」

京子「んー……」ピピ


結衣「……少し下がってるな」

結衣「調子はどうだ? なにか食べれるか?」

京子「……今は、いい」

結衣「そうか? でも薬は飲まないといけな……」ガシ


京子「……」ギュ!

結衣「……」

京子「一人は、やだ……」ウワメヅカイ

結衣「(…だいぶ弱ってるな……)」


結衣「……お粥、パパっと作ってくるから。それまで我慢しろ」ナデナデ

京子「うぅー……」ジィィィィ

結衣「薬は飲まないといけないだろ……?」

結衣「…その後は、ずっといてやるから……」

京子「むぅ……」シブシブ


結衣「……すぐ戻るから」ナデナデ

京子「ん……」


京子「……」スースー ギュー


結衣「…はい、今は隣で寝てます」

結衣「えぇ、お昼食べて、薬飲まして。熱も少しは落ち着いたみたいです」

結衣「あと食材は言われた通り、適当に使っちゃいましたけど……」


結衣「あー。……いえ、今は私が離れられないので」

結衣「あの時みたいにまた、袖を掴まれちゃってって……」

京子「……んぅ」ギュー

結衣「…あぁはい、大丈夫です。もう今更ですし……」

結衣「はい、起きたら伝えときます……じゃあ、また何かあったら……」

結衣「はいお願いします……」プツ

京子「……」スヤスヤ


結衣「……返事はしなくていいけど」

京子「……」スースー

結衣「おばさん、あと二時間くらいかかるって」

京子「……」

結衣「まぁそれまではいてやるから。安心して寝てろ」



京子「……気付いてたんだ」

結衣「寝息が整いすぎだ。あと手、ずっと握りすぎ」

京子「……」

結衣「いいから、大人しく寝てろ。返事もしなくていいって言ったろ」

京子「……」ギュウ


京子「なんで、結衣は……」

結衣「……」

京子「…友だちって、普通、ここまでやる……?」

結衣「……っ」



結衣「…友だちなら、デートもやんないだろ」

京子「するよ……友だちなら、女同士でも、デートくらい……」

結衣「それは冗談の範疇だろ」

京子「わ、私だって、冗談のつもりで……」

結衣「……」

京子「っ……」


結衣「私は、変わってないつもりだけど」

京子「……なにがさ」

結衣「京子を守るって。もう、守られるほど弱くないかもしれないけど」

京子「……」

結衣「でも、もしかすると最初から間違ってたのかもな……」

結衣「……友だちだから、とか。あの頃はそんなこと、考えてもなかったし」


京子「……好きとか嫌いとか、意識してなかったってこと?」

結衣「そうだよ。なんで京子のこと気にしてるのかなんて、考えたこともなかった」

京子「……っ」

結衣「だから私にとって、京子は京子だよ。好きとか嫌いとか、そういうの抜きにしても」

結衣「こうやって傍で見張ってないと、落ち着かないんだよ」

京子「……」ギュ…


京子「……ねぇ、結衣」

結衣「…話しすぎたな。いいから、おまえは寝て」

京子「私が好きって言ったら、どうするの……?」

結衣「っ……」ビクッ



京子「……知ってたくせに。結衣のばか」

結衣「……そんなの」


結衣「どうしようも、ないだろ……」

京子「私、結衣が思ってるほど、強くなんてないよ……」

結衣「……」

京子「ずっと、結衣に甘えたままじゃ、結衣を困らせちゃうかなって……」

京子「そう思って、だから強くなろうって……っ」ジワ


結衣「……気にしすぎだ、ばか」

京子「だ、だって……っ」

結衣「いいから。今は、風邪で弱ってるんだよ」

京子「っ……」

結衣「だから少し、人恋しくなってるだけだ」



京子「…そうやって、なかったことにするの……?」

結衣「これ以上は、どうしようもないだろ。私たちは、同性で……」

京子「なら突き放してよっ! なんで優しくするのさ……っ」

結衣「……っ」


結衣「……ごめん、な」

京子「あ、謝んないでよぉ……ばかぁ……」グス

結衣「私のせい、だよな……私が、余計なことしちゃったから」

結衣「京子を守る、とか……あんなこと……」

京子「そ、それは違うじゃんっ! 結衣と出合わなかったら、私はっ……」

結衣「私が、男だったら良かったのに……っ」

京子「っや、やだよっ! 私、結衣が女の子でも、結衣のことっ―――」

ガコッ


結衣「っ……!?」バッ

京子「え……」


結衣「……っ」

京子「……だ、大丈夫だよ。たぶん、郵便届いただけ……」

結衣「……」


結衣「……京子は、いいのか?」

京子「え……」

結衣「言えるのか……? おばさんや、おじさんに」

結衣「……私のこと、好きだって」

京子「そ、それは」

結衣「私たちじゃ、子供も産めないのに……」

京子「っ……」


京子「……結衣は、」

京子「結衣のお父さんは、絶対、許してくれないよね……」

結衣「…あの人のことはいいよ。それに、京子の方だって」

京子「わ、私の方はたぶん、大丈夫だよ……」


京子「……相手が結衣なら、ダメとは言わないと思う」

結衣「本当にそう思うか……?」

京子「……」


結衣「……私は、止められると思う」

結衣「というか、それが普通だろ……」

京子「っ……」


京子「……も、もし両親に反対されても、私はっ」

結衣「私は、わかんないよ」

京子「ゆ、結衣…?」

結衣「京子のことは、大切だけど」


結衣「でも、両親に反対されて、反発して、人目も避けて、」

結衣「それでもまだ京子のこと、大好きって……」


京子「ゆい……」ギュ…

結衣「……」



結衣「……私は、自信ないよ」ギュ

京子「っ……」ジワ…


結衣「でも、だからって離れてったりはしないから」ナデナデ

結衣「だから、おまえは安心して寝てろ」

京子「わ、私は、結衣と……っ」グス

結衣「京子の方から離れていかない限り、私は京子の傍にいるから」

京子「っ……ゆ、結衣はっ、ずっと一緒にいてくれるの……?」

結衣「ああ。京子のこと、大切だから」


京子「……私が、結衣のこと好きって言っても…?」

結衣「っ……」ズキッ



結衣「それ、は……その……」

結衣「……少し困る、けど」

京子「っ……!」ビクッ


京子「わ、わたしっ、我儘言わないから……っ!」バッ

結衣「お、おい京子っ」ット!?


京子「だ、だから私と、一緒にいて……」

京子「お願い……結衣がいなきゃ、私……っ」ジワッ…



結衣「……ばか。そんなの、当たり前だろ」ギュウ

京子「ぁ……」


結衣「……でもいつか、私の代わりになる人を、ちゃんと見つけるんだぞ?」ナデナデ

京子「ぅ……う、ん……」ズキッ


京子「……」スースー

結衣「(……寝付いたかな)」ホ…



結衣「……ほんと、私はどうしたいんだろうな」

結衣「あんなこと、言っといて……」

結衣「(本当に京子が、私の代わりを見つけたら……)」ズキッ


結衣「……嫉妬するんだろうな、私は」

結衣「馬鹿みたいに、怒鳴りつけたりするかもな」アハハ…

京子「……ん」スースー

結衣「京子……」ナデナデ




結衣「……私も、大好きだよ。バカ」ズキッ…

京子「……」スースー


ガシャ タダイマー!

ガチャ
京母「あら、お休み中?」

結衣「はい……今は大人しく寝てます」

京母「ふふ、大人しくなるまでは大変だったか」アハハ

結衣「え。えぇと……?」アレ?

京母「あはは。うぅん、なんでもないから。今日はごめんねぇ、結衣ちゃん」

結衣「あ、いえ……こちらこそ、勝手に台所弄っちゃって……」


結衣「……冷蔵庫裏のお金も、借りちゃって大丈夫だったんですか…?」

京母「あぁうん、返さなくていいから。旦那のへそくりだし」


結衣「……」ソレハイイノカ…?

京母「たまにはこうやって削っとかないと。余計なことに使っちゃうでしょ? お金」

結衣「あ、あはは……」


京母「でもまぁ……」チラ

京子「……」スースー

京母「我が子ながら、気の抜けた寝顔ねぇ」プニプニ

結衣「……」ピク

京母「ん、してみたい? ほっぺプニプニ」ツンツン

結衣「え。い、いや別に……」チョットシテミタイ…

京母「あはは。ほら、触ってみなさいよ。若いからやっぱ弾力が違うわよ?」プニプニ

結衣「……」

結衣「……」ソローッ


結衣「……」…プニプニ

京母「ね、可愛いでしょ?」

結衣「……そうですね」ツン、ツン

京母「私の子だしねぇ」ウフフ

結衣「あはは……」プニプニ


京母「あー。でもほんと、結衣ちゃんがお嫁に貰ってくれると助かるんだけどなぁ」アハハ

結衣「え……」ドキッ

京母「あ、ごめんね。結衣ちゃんもお嫁にいきたいよねぇ、やっぱり」

結衣「や、その。それは、別に……」

京母「あぁ、まだわかんないか。先のことだしね」

結衣「……そう、ですね」


結衣「…というか、」

京母「ん? なに?」

結衣「私が、京子をお嫁にくださいって頼んだら、くれるんですか?」

京母「おぉう。なに、もしかして脈アリ?」ニヤニヤ

結衣「い、いやっ。そういうつもりじゃっ……」ビクッ


京母「あは、まぁ冗談だけどね」

結衣「ぁ。で、ですよね」アハハ…

京母「でもまぁ、京子がどうしてもっていうなら、仕方ないかなぁ」

結衣「え……」ドキッ



京母「なーんて。まぁ、その時にならなきゃわかんないよ、そういうことはさ」

結衣「……そういうものですか」

京母「そーそ。子どもが思ってるほど、大人も考えちゃいないからさ」

京母「なにが正しいかなんて、結局は当人たちにしかわかんないんだし」

結衣「……」


結衣「そんなもんですか……」

京母「うん、そんなもんよ。だって、私もまだ若いし」

結衣「あ、あはは……」


京母「おっと、もうこんな時間か」チラ

京母「結衣ちゃん、夕ご飯食べてく? さっき食べ物買ってきたし」

結衣「あ、いえ。私はそろそろお邪魔しま……」

京母「子どもが遠慮しないの。今日は京子がいないから、奮発して高いお肉買ってきたし」

結衣「…な、なんかそれ違わないですか」

結衣「というか、私がそれ食べると後で文句言われそうなんですけど……」

京母「いやほら、弱ってるときこそ力つきそうなもの食べさせとこうかなって」

結衣「なら尚更、京子に食べさせてください……」


京子「ぅ……」ピク


京母「もう結衣ちゃんお堅いんだから。冗談だってば、そういうとこお父さんに似ちゃったのかなぁ」

結衣「それはあんまり言われたくないんですけど……」

京母「あら。いいお父さんじゃない、結衣ちゃん家のは」

結衣「……ちょっとツッコミが追い付かないですね」

京母「まぁ結衣ちゃんも思春期だし、難しい年頃よねぇ」

京母「でも大丈夫よ。父親と反りが合わないのは、年頃の女の子にはよくある……」


京子「ぅ……う、うるさいってばー……!」グシグシ

京母「よし結衣ちゃん。一緒にお夕飯作りましょう。そこでゆっくりお話の続きをry」

結衣「え、あ、あのっ。あ、アレ?」ズルズル…


京母「あー、そうそう」カチャカチャ

結衣「?」

京母「たまには帰ってきなさいって、お母さんから伝言」ザー

結衣「あぁ……はい」コトッ

京母「まぁ親としても寂しいのよ。こんなに早くから、子どもに自立されちゃうとさ」

結衣「……」

京母「だからまぁ、少しは向こうの顔も立ててあげなさいね?」

結衣「……はい」


京母「でも流石、一人暮らししてると違うわねぇ。京子なんか、ろくに片づけもしないけど」

結衣「いえ、私もそんな……」

京母「そんだけできてりゃ十分よ。今すぐお嫁にいっても困らないって」

京母「あぁいや、お父さんが許してくれないか」アハハ

結衣「……」



京母「ふふ。まぁ、若い子をからかうのはこのくらいにしときましょう」フフフ

結衣「……京子のお母さんも、十分若いですよ?」

京母「あら。前は私のことオバさんって呼んでなかった?」

結衣「い、いえ。……気のせいです」

京母「あははは」


京子「……」ジィィィィ

京母「あら。匂いにつられて起きてきた」

京子「……良いお肉の匂いがする」フラフラー

結衣「ほんとに匂いで起きたのかよ」


京母「あんたのぶんの雑炊も、もうできるから。待ってなさい」コトコト

京子「私のお肉は……?」

京母「雑炊に入ってるわよ。鶏だけど」

結衣「どんだけ肉食いたいんだよ……」

京母「ほんと、誰に似たのかしらねぇ」

京子「お母さんだよ……」


結衣「それじゃあお邪魔しました」

京母「えー。もうちょっとゆっくりしてけばいいのに」

結衣「いえ……明日も学校ありますし」

京母「あぁ、そりゃそうよね。なら仕方ないかぁ」



京子「……」グイ

結衣「……なんだ、その手は」

京母「ふふふ。なんかそうやってると小さい頃みたいね」アハハ

結衣「いやあの、笑ってないでなんとか……」

京子「……」ギュ


結衣「……これじゃ帰れないだろ…?」

京子「……む」ジィィィィ

結衣「……」


京母「こらこら。あんまり結衣ちゃん困らせちゃダメよ?」

結衣「多少ならいいんですか……」

京母「だって、全く頼られないのも寂しくない?」

結衣「ま、まぁ……」

京子「むぅ……」ジトォォォ

京母「ん?」


京母「…あらやだ。この子ったら、母親に焼き餅妬いてる」アハハ

結衣「え?」

京子「なっ!? やっ、妬いてないよっ!」カァァァ

京母「別に取りゃしないから安心しなさい」ポンポン

京子「だっ…! だからっ、妬いてないってばーっ!///」ポカポカ

結衣「え……え…?」アレ?


京母「おっと。それじゃ、明日は様子見て登校させるから。結衣ちゃんも帰り道、気をつけてね?」

結衣「あ、あぁ。はい、大丈夫です」ガチャ

京子「ぅ……」ビクッ


京子「……」ジー

結衣「……明日休んでても、放課後にはまた来るから」


京子「…ほんとに……?」ジィィ

結衣「ほんとだよ。だから京子も、今日はゆっくり休め」

京子「……」…コク

京母「あんまり甘やかしちゃダメよ? 弱ってるときに甘やかすと、際限なく甘えてくるから。それ」

京子「それって……。自分の娘だよ、それ……」

結衣「あはは……」


バタン

京子「……」グシグシ

京母「猫か、あんたは」

京子「……寝てる」

京母「あぁうん、それはいいけどさ」

京子「?」


京母「……あんまり、結衣ちゃん困らせちゃダメよ?」

京子「……」ピク


京子「…お母さんには関係ないじゃん」

京母「あるわよ。母さんだし」

京子「……」

京母「結衣ちゃんも、あんたと同じ中学生なんだから」


京子「……だから、なにさ」プイ

京母「できることとできないことがあるって話。いつまでも、あんたの王子様じゃいられないのよ、あの子も」

京子「そっ、そんなの、わかって……っ」

京母「まぁ、風邪で弱ってるときぐらい、甘えたくもなるだろうけどさ」

京母「今日のことは、留守にしてた私にも責任あるしね」

京子「……っ」


京子「……意味、わかんないし」

京母「ふふ。ま、結衣ちゃんがいてくれて良かったわね、って話よ」

京母「学校休んでまで看病してくれる友達なんて、中々いないわよ?」

京子「……」

京母「ふむ……」



京子「……寝る」プイ

京母「おう、寝ろ寝ろ。おやすみー」ヒラヒラー

京子「おやすみ……」フラフラー


京母「……えぇーと」キョロキョロ

京母「……」ピピ

京母「……あ、もしもし? うん、私だけど」

京母「そうそう、ちょっと前に結衣ちゃん帰したから。私が引き止めちゃってさ」

京母「んでね、さっきの話だけど……」



京母「…カマかけてみたけどさ。あれはダメかもしれんね」

京母「あぁ……う~ん、難しいところだけど……」

京母「ちょっと私らには、青すぎて立ち入れないかなぁ」アハハ


結衣「……」ボー

綾乃「あ、船見さんっ。あ、あのっ……」

結衣「…あ、綾乃。おはよ」

綾乃「う、うん。おはよう……そ、それで、歳納京子は……」

結衣「京子は今日は休むって。大事を取ってってことで」

綾乃「そ、そう……」シュン

結衣「治りかけは危ないっていうしね。でも、悪くなってるわけじゃないから」

綾乃「そう、ね……。それなら良かったわ……」ホ…


結衣「……」ボー


結衣「……」パタッ

千歳「…あ。船見さん、これ落ちたで?」ヒョイ

結衣「あ。……ごめん、ありがと」

千歳「? うぅん、ええよこんくらい」

結衣「……」


京子『お願い……結衣がいなきゃ、私……っ』

京母『でもまぁ、京子がどうしてもっていうなら、仕方ないかなぁ』


結衣「(……なに考えてんだろ、私)」


結衣「……」ハァ

結衣「(なんとなく部室来ちゃったけど……)」

結衣「(まだお昼だから、あかりたちも来ないよな……)」

結衣「……」



京子『私が好きって言ったら、どうするの……?』

京子『なら突き放してよっ! なんで優しくするのさ……っ』



結衣「京子から離れない限り、ずっと傍にいるよ、だっけ」

結衣「それって結局、生殺しだよな」アハハ…





結衣「……なにがしたいんだよ。私は」ギリッ


京子「……」ハァ

京子「(熱は下がったけど……)」


京子『……私が、結衣のこと好きって言っても…?』

京子『お願い……結衣がいなきゃ、私……っ』


京子「……私の、バカ」

京子「(……結衣は傍にいてくれるって、言ってくれたのに。あんな我儘言って……)」

京子「(……帰り際も、なんか駄々こねてたし。よく覚えてないけど)」



京子「……結衣だってあんな面倒な子、嫌だよね」ギュッ…

京子「(やっと、結衣と並んで歩けるくらい、成長したって思ってたのに……)」


京母「おーい、京子ー?」ガチャ

京子「……ノックくらいしてよ」

京母「急ぎなのよ。結衣ちゃんから電話きててね」

京子「え。な、なに?」

京母「お友だち連れて来てもいいかって。大人数だから、遠慮して電話くれたみたい」

京母「つっても、もう体調は落ち着いてるし、いいよね? 別に」

京子「あ……い、いやその……っ」ゴホッ


京子「……さっきから咳が出始めちゃって」

京母「あら。それじゃ、遠慮してもらった方がいいかしら。治りかけのを移してもアレだし」

京子「うん……お願い」ゴホッゴホッ

京母「はいはい、りょーかい」バタンッ

京子「……」


京子「……」ハァ

京子「(みんなには、悪いことしちゃったな……)」


京子「一回目の咳は、ホントだったけど」

京子「(…咄嗟に出ちゃった嘘だし、お母さんには気付かれたかな……)」


京子「これで結衣まで来なかったら、自業自得だよね……」

京子「……」

京子「(でも結衣は、たぶん……)」




京子「……なに期待してんだろ」ポフッ

京子「(私のばか……。結局、結衣に甘えたいんじゃん……)」ズキ


トントン

京子「……ん」ピク

ガチャ…


結衣「……京子?」

京子「あ……」ビクッ


結衣「……一応、約束だったから。来たけど」

京子「っあ、あの。結衣っ?」

結衣「え。あ、あぁ……私だけど」

京子「き、昨日は……ごめん……」

結衣「え……?」



京子「わ、私、結衣に一杯甘えて……」

京子「我儘も、たくさん……」

結衣「……」


京子「だから、その。ちょっとやりすぎたというか……」

結衣「……病気だったんだし、仕方ないだろ」

結衣「弱ってる時くらい、頼ってくれても……」

京子「あ、あのっ……」



京子「き、昨日のことは、気にしないで」

結衣「……京子?」

京子「で、できれば……いつも通り、接して欲しいというか……」

結衣「……」



結衣「…京子は、それでいいのか……?」

京子「っ…!?」ビクッ


京子「わ、私は……っ」

結衣「……」


京子「…結衣と、一緒なら。私は、我慢できるから……」

結衣「っ……」


京子「で、でも、私のこと面倒になったら言ってね……?」

京子「私、結衣に迷惑は……」

結衣「ばか」ポン


結衣「…迷惑なわけ、ないだろ」ナデナデ

京子「ぁ……」

結衣「京子がそれでいいなら。私もいい」

京子「ん……」


京子「……ありがと」ギュ…




 ―――数日後 12/25



結衣「よっと……」フゥ…

京子「片付け、お疲れさん」

結衣「みんなもある程度掃除してくれてたから、ほとんど仕事なかったけどな」



京子「……久しぶりに賑やかだったよね。ここ」

結衣「あぁ。娯楽部と生徒会、両方が集まってたしな」

京子「大成功っしょ。クリスマスお泊り会」

結衣「流石に、あの人数で布団敷くのは無理あったけどな……」

京子「そこはほら、寝るつもりなかったし」

結衣「結局みんな寝てただろ。おまえ含め」

京子「それはほら、サンタさんへの配慮だよ。……本当に来るとは思わなかったけど」


結衣「私のとこは去年から来てないけどな、サンタ」

京子「私はプレゼントより現金を所望したら来なくなった」

結衣「ぶっちゃけすぎだろ……」

京子「ま、おうちによってサンタさんも配慮してくれるっしょ。今年くらい」

結衣「イブに泊まって、日付またいじゃったからな。サンタさんも困ったろうな」クス


結衣「……一人出張してきたサンタさんもいたけど」トオイメ

京子「うん……あかねさんパネェっす……」トオイメ



京子「…でも、楽しかったよね。クリスマス会」

結衣「そうだな……あれだけ人が集まると、な」

京子「ひまっちゃんのケーキ、おいしかったよね」

結衣「手作りとは思えない出来だったよな」

京子「うむ。あれは認めざるをえない」

結衣「おまえは何様だ」


京子「結衣の料理も中々だったぞよ」フフン

結衣「なんで得意気なんだよ」

京子「そいや結衣、ひまっちゃんと料理の話してたじゃん?」

京子「どうせなら今度教えてもらいなよ、ケーキ作り」

結衣「……まぁ、そういう話もしたけど」

結衣「おまえの場合、自分が食べたいだけだろ」

京子「味見は任せろ」フンス

結衣「調子に乗んな」ペシ



京子「……っと。もうこんな時間」

結衣「……」


京子「それじゃ、私もそろそろ帰ろっかな」

結衣「……っ」ギュ


京子「ねぇ結衣。私の荷物……」

結衣「なぁ京子」

京子「ん?」



結衣「……最近、泊まってなかったよな。うちに」

京子「え……っ」ビクッ

結衣「昨日は、みんなと一緒だったけど」

結衣「それ以外は、全然……」

京子「……」


結衣「風邪の時のこと、気にしてるんなら……」

京子「ゆ、結衣は……」



京子「結衣は、迷惑じゃない……?」

結衣「…ばか。いつも通りだって言ったのは、京子だろ」

結衣「私相手に、変な気遣うなっての」ポンポン

京子「……うん」ホッ…


京子「…それじゃ、久しぶりに泊まってもい?」

結衣「あぁ。京子がいいなら」

京子「ん。……やっぱ、結衣って優しいよね」ボソ


結衣「…ん? あ、泊まるんなら家に連絡入れとけよ?」

京子「はーい!」トテテ


結衣「……」

結衣「(結局、私のが我慢できてないし……)」

結衣「……バカか、私は」ハァ…




京子「結衣ー、お夕飯どうするのー?」

結衣「…あー。取り敢えず、食材の余りで作るよ。適当に」

京子「チキンまだ余ってたっけ?」

結衣「えっと……手羽が余ってたな、確か」

京子「……」ジュルリ

結衣「……」


結衣「……作ってるから、風呂掃除してこい」

京子「りょかいっ」ピュー!


京子「うんうん。やっぱ、結衣の料理はおいしい」モグモグ

結衣「……褒めても鶏はやらんぞ?」

京子「何故バレたし」

結衣「視線が露骨だっての」


京子「……」ジィィィィ

結衣「……」

京子「……」ジィィィィ

結衣「……」


結衣「……もう一本、焼いてくる」ハァ…

京子「結衣さまっ!」ヒシッ!


京子「結衣、ドライヤーどこー?」キョロキョロ

結衣「いつものとこなかったか?」

京子「うん。昨日はみんなが使ってたからねぇ」

結衣「あー、確か……」ゴソゴソ


結衣「髪、乾かし合ってたよな。あの時だな」ホレ

京子「おー。名探偵ユイ」パチパチ

結衣「……最後に使ったの、おまえだからな」

京子「あれ、そだっけ?」

結衣「綾乃の髪、乾かしてたろ。確かティッシュを用意した覚えがある……」

京子「あーあー。あの時かぁ……」チラ


京子「……ん!」グイ

結衣「?」

京子「髪! 乾かして!」エヘヘ

結衣「……はいはい」


ブォォォォォ…
結衣「……」ナデナデ

京子「んー……」ポケー

結衣「気持ちいいか?」

京子「ん。…なんかちょっと、くすぐったい」エヘヘ

結衣「……加減がわかんないんだよ。下手に触ると、傷つけそうだし」

結衣「京子、髪綺麗だから」


京子「…そ、そう?」カァァ

結衣「ああ。……髪だけは、お嬢様みたいだもんな」

京子「な、なにをぅー!?」ジタバタッ


結衣「じゃあ電気消すぞ?」

京子「えー。もう寝るの?」

結衣「昨日も遅くまで起きてただろ……」

京子「でも、せっかくの休みだしさぁ。どうせ明日も予定ないし……」

結衣「……」



結衣「……明日、どこか出掛けるか」

京子「え。ホントっ?」バッ

結衣「私も予定ないし。大掃除くらいは、しときたいけど」

京子「そんじゃ、午前中は掃除して、午後から外出で!」

結衣「……午前中だけで大掃除が終わるか…?」

京子「大丈夫大丈夫。二人でやればパパっと済んじゃうって!」フンスッ

結衣「まぁ……京子がいいなら、いいけど」


京子「そんじゃ、今日は寝よっか。起床は6時な!」

結衣「……せめて7時くらいにしとけ」

京子「んじゃ7時で。オヤスミー!」ガバッ


結衣「……」

結衣「」パチ


結衣「寒くないか?」

京子「ん。だいじょぶ」

結衣「そか」



結衣「……おやすみ、京子」

京子「……んー」ヒラヒラー


京子「ほい、燃えるごみ」ヒョイ

結衣「……冬の宿題だろ、それ」

京子「冗談冗談」


京子「ふぃー。案外掃除するとこあんのね」ヒトヤスミ

結衣「一人だと適当に済ませてたけどな、多分」

京子「京子ちゃんに感謝なさい」フンス

結衣「おまえそれ気に入ってんのか?」フンス…

京子「でもま、一人だと中々やんないよねー。ほら、長期休暇の最後に溜っちゃったり……」

結衣「宿題なら、半分は終わらせたけど。私は」



京子「……結衣さまー!」ズザー!

結衣「はえぇよ。時間あるんだから自分でやれ」ペシ


結衣「あ……」カタッ

京子「? なんかあったー?」フキフキ

結衣「いや、なんでもない。そっちは終わりそうか?」

京子「うん、窓ふきはおっけー。そっちは大丈夫?」

結衣「掃除機かけたら終わり。戸棚の中は、こんくらいでいいだろ」

京子「おぅし。んじゃ、次は洗面所見てくるっ」トテテテ

結衣「あぁ、私もすぐ行く」

京子「はいはーい」



結衣「……アルバム、まだ他にもあったんだな」チラ

結衣「でも、このアルバムって……?」ペラ…



結衣「……掃除するか」パタン


京子「あー、冷たい空気が心地よい……」ホゥ…

結衣「……ホントよく終わったな。午前中で」

京子「ご褒美に宿題を……」

結衣「今から宿題するか?」

京子「勘弁くだせぇ……」グデー


ザワザワ ガヤガヤ

結衣「……今更だけど。年末だと、どこも人多いな」

京子「まぁいーじゃん。またお昼、外食する?」

結衣「せっかく外出たんだしな。またどっか入るか」

京子「んじゃ、前のとこまた行ってみる?」

結衣「そうだな……他にアテもないし」


イラッシャイマセー!

京子「お、クリスマス仕様になってる」キョロキョロ

結衣「昨日の今日だからな、クリスマス」

京子「クリスマスケーキか……」フム…

結衣「また食べんのか?」

京子「うぅむ……」チラ



京子「…この、カップルセットってどう思う?」

結衣「……それがどうした」

京子「お飲み物が付いてお安くなってるそうですが」

結衣「いや、頼めないだろ。私たちじゃ、流石に……」


店員「ご注文を繰り返します」

店員「醤油風味の海鮮和風パスタが一点、チキンドリアが一点、」

店員「デザートにクリスマスケーキのカップルセットが一点。以上で宜しいですか?」

ザワザワ…

結衣「……」ダラダラ

京子「大丈夫でーす」ヒラヒラー

店員「畏まりました、しばらくお待ちください」テテテテ



結衣「……あの対応は普通か…?」オイ…

京子「向こうも気付いて言ってるっしょ。ほら、安くなるんならセットにしとけ、みたいな」

結衣「ファーストフードならそういう対応もあるが……」

京子「ま、言ったもん勝ちだって。結衣も食べたいっしょ? ケーキ」ニシシ

結衣「代わりに変な汗掻いたけどな……」


ゴチュウモン オモチシマシター!

京子「結衣のシーフード、一口ちょうだい?」モグモグ

結衣「いいけど。……おまえはまた鶏か」

京子「鶏って飽きなくね? 美味しいし」

結衣「まぁ、手頃ではあるよな。タンパク源として」

京子「なんかプロっぽいな。コメントが」

結衣「なんのプロだよ」



店員「それではデザートの方、お持ちしてもよろしいですか?」

結衣「あ、はい。お願いします」

店員「少々お待ち下さいー」トテテテ


京子「……そういえばさ」

結衣「ん?」


京子「周り、カップル多いよね…?」ヒソヒソ

結衣「……今更か」

京子「い、いや。なんとなくわかってたけどさ……」チラ…

結衣「? なんだ、どうかし――――」



京子「……あのカップルジュース、どう思う?」

結衣「……」


結衣「嫌な予感しかしないんだが……」

京子「あのストロー、二人用のだよ……」

結衣「実物は始めてみた……。…い、いや。まさかな?」ゴク…

京子「だ、だよね。カップルセットって、写真では普通に……」アハハ…



店員「お待たせしましたー!」

結京「……」アチャー…


結衣「……で、どうするんだ? このジュース……」

京子「……」

ヒソヒソ ザワザワ…


京子「え、えと。ゆ、結衣は、嫌なら飲まなくても……」

結衣「……二人で飲まないと飲めないんじゃなかったか? このストロー……」

京子「い、いや。無理に飲むことないんじゃない? 元々、セットで付いてきただけだし……」

結衣「わ、私は別に、嫌では、ないけど……」カァァ

京子「わっ、私も別に、嫌なわけないけどっ」ドキドキ

結衣「……」

京子「……」



結衣「……食べるか。取り敢えず」

京子「う、うん……」カァァ


京子「……」ドキドキ

結衣「……っ」カァァ


チュー……


ア、ミテー! アノコタチカワイー!


結衣「ぶはっ」ゴフッ…

京子「ま、まだ半分も減ってない……」ゼイ…

結衣「というか、周りの視線が恥ずかしすぎる……」

京子「これ、こういう罠なんじゃない…? カップルかどうかは問題じゃなくて」

京子「セット頼んだら、カップルに見えますっていう……」

結衣「あぁ……ありそうだな、それ……」


アリガトウゴザイマシター!

京子「強敵だった……」グッタリ

結衣「結局、飲みきれなかったけど……」

京子「や、やっぱりアレは……ねぇ?」

結衣「まぁ、流石に恥ずかしかったよな……アレは」




京子「さて。んじゃ、次どこ行く?」

結衣「またその辺ブラブラするか?」

京子「んー。どうせやることないしねぇ……」フム…

結衣「じゃ、適当に見て回るか」


京子「あ、このパンダ結衣っぽい」ヒョイ

結衣「なんだそれ。というか、なんでパンダ……」

京子「いいじゃん、可愛いし」ニシシ

結衣「悪くはないが……」

京子「お、このパンダ時計付いてる」

結衣「なんかそれ違うだろ」

京子「んー。犬と猫と、あとトマトはないのか」キョロキョロ

結衣「トマト……」


京子「お、キーホルダーはあった」ヒョイ

結衣「あー、動物シリーズと野菜シリーズがあるのな」

京子「野菜に需要はあるのか……」

結衣「おまえトマトだろ」

京子「うむ。でも可愛いな、このトマト」プラーン

結衣「…可愛い……か?」アレ…?


京子「あれ。結衣、このゲーム買ってたっけ?」フト

結衣「ん?」ピタッ


結衣「あぁ、それなら買ったよ。まだクリアしてないけど」

京子「このシリーズ、前にやったよね? カメラで霊倒して、廃村から脱出するやつ」

結衣「そいや、京子とやったっけ」

京子「そうそう。触れたら即死でずっと追いかけてくる女の子とか」

結衣「ラスボスがイベントで出てくるやつな。あれは焦った」

結衣「……倒そうとして無駄に頑張ってたよな、京子は」ナツカシイ…


京子「帰ったら新作もやろっか。まだクリアしてないんだよね?」

結衣「そうだな。……どうせなら攻略本も捜してみるか」フム…

京子「それは邪道!」


京子「よっと」ヒョイ

結衣「相変わらず上手いな。UFOキャッチャー」

京子「鉄則は、取れるやつを取る。取れないやつは取れない」フフン!

結衣「カッコいいこと言ってるようで、別にカッコよくはないぞ」

京子「でもこれ、取れんやつはどうやっても取れんからね。仕方ないさ、だって商売だもの」

結衣「生々しいことを言うな」

京子「結衣はなんか取って欲しいのあるー? 今なら何でも取ってあげるよ!」

結衣「言ってることが前と矛盾してるぞ」


結衣「……でも、取れるならアレ」ピ



京子「…パンダクッション?」

結衣「……」コク

京子「なんだ。結衣も気に入ってんじゃん、パンダ」ニヤ

結衣「……悪かったな」プイ


京子「ふむ。でもアレは難しそうだね」ジー

結衣「まぁ、無理に取らんでもいいが」

京子「んにゃ。あそこのは難しそうだけど、そっちに埋まってる同じのなら」チャリン

結衣「いけるか?」

京子「上のやつどければ、多分いける」ウィィ…


京子「ほい、本命ゲット!」ドヤ

結衣「どけるついでに色違いも取れちゃったな」アカパンダ…?

京子「んじゃそれ、私専用で!」


ガガガガガガ ババーン!

京子「結衣とやると簡単でつまんなーい」パンパン

結衣「私だってそんな上手くねーよ」ババババ

京子「ほら、もう次の面」

結衣「まだ序盤だっての。あ、リロードしとけよ?」カシャッ


ゴゴゴゴゴ……

京子「ふぃー。やっとクリア……」ホッ…

結衣「これ、最後までいくとけっこう時間潰れるからな」フゥ…

京子「というか、エンディングまでいったの初めてだよ、私」

結衣「……毎回、途中でやられてたからな」

京子「そーそ。結衣だけいっつもクリアしてたじゃん、これ」

結衣「でも、今回は最後まで守れたろ?」

京子「……」



京子「……結衣がこのゲームやってたのって、そういうこと?」

結衣「負けっ放しは悔しいだろ。普段はシューティング、あんまやらないんだけどな」

京子「……」ギュ…


結衣「それじゃ、そろそろ夕飯買って帰るか」

京子「……あれ。もうこんな時間?」

結衣「あぁ、今日はゆっくり見て回ってたしな」

結衣「で、夕飯はリクエストあるか? 鶏肉が続いてたけど、他にも何か……」



京子「…えと。私、今日はもう帰るね……?」

結衣「っ……」ビクッ

京子「今日も遅くなると、流石に怒られそうだしさ」

京子「ほら私、一昨日から帰ってないわけだし……」



結衣「……そっか。それなら仕方ないな」

京子「うん、たまには帰っとかないとね。入り浸っちゃうと、また……」

結衣「……」


結衣「京子は」

京子「?」

結衣「……今日のこと、デートだったと思うか?」

京子「え……っ?」ビクッ



結衣「別に、手を繋いだりはしなかったし」

結衣「……お昼食べさせ合ったりも、しなかったし」

京子「あ、あの……結衣……?」

結衣「…京子が、なんとなく避けてるのは、わかってたけど」

京子「っ!?」ビクッ

結衣「……カップルセットも。開き直れば冗談にしか見えないもんな」

京子「……っ」


結衣「……私は、デートでもいいかなって、思ってたんだけど」

京子「ゆ、結衣…?」

結衣「京子は、どこからがデートだと思う?」

京子「そ、それって……っ」

結衣「……」



京子「っゆ、結衣はっ……」

結衣「……」

京子「私と、デートしてくれるの……?」



結衣「……京子となら、嫌じゃない」

京子「な、なんでさ……私のこと、好きにはなれないって……」

結衣「好きだよ……私だって、京子のことが……」ギュ…


京子「じゃ、じゃあっ、なんで……っ」

結衣「……私は、怖いんだと思う」

結衣「京子と付き合って、普通の関係じゃ、なくなって……」

結衣「……京子のこと、守れなくなるのが」


京子「わっ、私は……結衣と一緒なら、それでも……」

結衣「……両親にバレれば、転校させられるかもしれない」

京子「ぁ……っ」ビクッ

結衣「周りに敬遠されて……誰も味方してくれないかもしれない」


結衣「……そうなったら、逆らえないだろ……。私たちだけじゃ、どうにもならない……」



結衣「……京子を守るって。私、自信ないよ……」

京子「っ……」ジワ…


京子「……私たち、一緒にいない方が、いいのかな」

結衣「っ……」ズキッ…

京子「でも……私、結衣のこと、好きだよ……」

京子「誰になんて言われても、結衣のこと……―――――」



結衣「……ごめん」ギュ…

京子「……うぅん。私、嬉しいよ…? 結衣と、両想いになれたんだもん」

結衣「ばか……っ」ジワ…

京子「ずっと、友だちでいよ…? お互い、他に好きな人、捜そ?」ギュ…

結衣「っ……」グッ…





結衣「……失恋、しちゃったな」

京子「ん……お互い、フラれちゃったね……」ギュ…


バタンッ!

結衣「……」ガタッ

結衣「(何だよ……結局、私が……)」

結衣「…私が、京子を泣かせてどうすんだよ……っ」ギリッ…


結衣「(守ってやるとか……バカか、私は……)」

結衣「(でも、どうしようもないだろ……私たちじゃ、結局……)」


結衣『京子は』

結衣『……今日のこと、デートだったと思うか?』



結衣「っ……私は、何がしたかったんだよ……」

結衣「言わなきゃいいのに……なんで、あんなこと……」


結衣「(私は……京子と、どうなりたいんだよ……)」


バタン


京子「……」

京子「(……このまま、友だちのままで、二人とも大人になって)」

京子「(その時までずっと、結衣が私のこと、好きでいてくれたら……)」


京子「…結衣は、私に……キスしてくれるかな……」


京子「(それまで、ずっと友だちで我慢すれば……)」

京子「(二人だけでも生きていけるって、証明できれば、きっと……)」ポテ…


京子「あ……パンダ……」ヒョイ

京子「(結衣に渡すの、忘れてたな……)」

京子「……っ」ギュウ…


京子『ずっと、友だちでいよ…? お互い、他に好きな人、捜そ?』


京子「もう、私……結衣のことしか、考えらんないよ……」


京子「(結衣は、いつまで一緒にいてくれるかな……)」

京子「(ずっと友だちのままでも、私のこと、好きでいてくれるかな……)」ヒクッ…



京子「結衣……私、やっぱりダメだよ……」ジワ…

京子「私一人じゃ、頑張れないよ……っ」ギュ…ッ

京子「結衣と一緒じゃなきゃ、こんなに弱い子なんだよ……」グスッ…


京子「(結衣……っ)」ギュ…


結衣「……」ペラ…

このアルバムは、6歳になった結衣ちゃんの成長を綴るものです。
絵日記みたいに、毎日書けたらいいなと思います。


結衣「このアルバム、やっぱり見たことないな……」

結衣「(……出だしで大体、想像はつくけど)」


○月○日 みんなでお昼寝。風邪引いちゃうよ?

結衣「このコメントは……やっぱお母さんかな……」ハァ…

結衣「(でも、なんでこっちに……? 持ってくるときに混ざってたか……)」パラパラ…


○月○日 京子ちゃんがお熱。結衣ちゃんも寂しそう……

結衣「あぁ……この時か」

結衣「(確か、寝てる京子に服掴まれて……)」ペラ…


○月○日 結衣ちゃん、ご乱心。パパに叱られてむっつり

結衣「……」


結衣「……なんで読んでるんだろ、私。なんとなく、目について……」

結衣「(……寂しいのか、私は。京子と会えてないから…?)」


結衣「……今日が30日だから、あれからもう四日か」ハァ…

結衣「……」ペラ…


○月○日 みんなと一緒にピクニック。今度は海に行きたいね

結衣「……というか、お母さん。ホントに毎日書いてる……」オイオイ…


○月○日 あかりちゃんのお誕生日。ケーキおいしかったね

結衣「すごい凝ってるな、ケーキ。あかりに似せてあるのか……」

結衣「……もしかして、あかねさん作? いや、まさか……」


○月○日 みんなでプール。冷たくて気持ちいいね
○月○日 今日はお遊戯会。フリフリお洋服で結衣ちゃん可愛い!
○月○日 運動会はかけっこ一番! 結衣ちゃん頑張ったね!

結衣「お母さん……」トオイメ…

結衣「(……でも写真、京子と一緒なのがやけに多いな)」


結衣「まぁ、あかりは学年が違ったからな……」パラパラ…


○月○日 今日は楽しいクリスマス。サンタさんはまだかなぁ?
○月○日 京子ちゃんとおままごと。結衣ちゃん、パパの真似上手だね

結衣「……」パラパラ…


○月○日 今日はお外で雪遊び。疲れて炬燵でお休み中

結衣「確か、転んだ京子をおぶって帰ったんだっけ」

結衣「……この頃からもう、京子には過保護だったよな。私……」


○月○日 今日は二人の卒園式。あかりちゃんは、また来年だね

結衣「……あれ? 確か、これって……」パラパラ…


○月○日 京子ちゃんのお誕生日。

結衣「っ……!」ピタッ


○月○日 京子ちゃんのお誕生日。おしゃまな京子ちゃんに結衣ちゃんタジタジ。可愛い!

結衣「(……誕生日プレゼントを聞いたら、結婚して、とか言われたんだっけ)」

結衣「……この後、だったよな」パラ…


○月○日 小学校の入学式。京子ちゃんとは別クラス、残念……

結衣「……京子、この頃は人見知りだったから。いっつも一人で泣いてて……」


○月○日 結衣ちゃんのお誕生日。結婚のお返事は、二人の秘密なんだって


結衣「……そう、だったっけ」

結衣「(京子の誕生日、結婚の約束をせがまれて……)」

結衣「(その時は恥ずかしかったから、返事は保留してて……)」

結衣「その後の、私の誕生日の時。私が……」


ゆい「……きょうこは、わたしがまもるから」



ゆい「けっこんのやくそくは、まだできないけど……」

ゆい「でも、きょうこのこと、わたしだいすきだから」

きょうこ「……ほんとに?」ヒクッ…

ゆい「うん。わたしたちが、もっとおっきくなって」

ゆい「そのとききょうこが、まだわたしのこと、すきだったら」



ゆい「そのときは、けっこんしよ?」

きょうこ「……う、うんっ」パァァ


結衣「……」

結衣「(京子は、クラスで孤立しちゃって。私はそれに気付いてたけど、何もできなくて……)」

結衣「だからあの時、泣いてる京子を見て、どうしても助けてやりたくて……」

結衣「(……それでも恥ずかしかったから、ちょっとだけはぐらかして答えたっけ)」


結衣「……京子は、この時のこと憶えて…?」


京子『……好きとか嫌いとか、意識してなかったってこと?』


結衣「あれは、そういう……?」

結衣「…でも、それじゃ昨日のは……」


京子『ずっと、友だちでいよ…? お互い、他に好きな人、捜そ?』



結衣「……もう、諦めたってことか…? 結婚はできないけど、ずっと友だちで……」


結衣「……違う、だろ」

結衣「(……諦めがついたなら、友だちとして遊びに来てただろ)」

結衣「四日も音沙汰なしで、私に気を使ってるわけでもないよな……」

結衣「(いつもの京子なら、きっと心配して電話くらいくれる。私の、自惚れかもしれないけど)」



結衣「……そっか」

結衣「私は……約束したんだもんな」


結衣「(……何を悩んでたんだろ。守りたいとか、好きになれないとか……)」


結衣「京子を守りたいから、好きになれないんじゃなくて……」

結衣「京子が好きだから、守りたいんじゃないのか……?」


結衣「(……京子が好きだったから、孤立した京子を守りたくて)」

結衣「(その前からだって。京子のこと、ずっと気にしてたじゃないか、私は……)」


京子『……うぅん。私、嬉しいよ…? 結衣と、両想いになれたんだもん』


結衣「そうだよ……両想いなんだから、仕方ないだろ……っ」パタンッ


結衣「(京子を二回も泣かせといて……守りたいからとか、バカか私は……っ)」ギュ…!




結衣「まだ、間に合うかな……」

結衣「間に合わなかったら……今度は、立場逆転だな」ピ…


京母「おーい、生きてるかー?」

京子「……」

ガチャ
京母「コラ、返事くらいしなさいよ」

京子「んー……?」ムク…

京母「なにを引き籠ってんのか知んないけど、ちょっとは動きなさい。去年のこの時期はもっとバタバタしてたじゃない」

京子「今年のコムケは、他所に委託してもらったのー……」ゴロゴロ

京母「……よくわかんないけど。だから四日も布団に引き籠ってるわけ?」

京子「だって……やることないし」ムスー…

京母「結衣ちゃん家にでも行きなさいよ。つーか最近は暇したら行ってたくせに」

京子「……」ポフッ



京母「……愛想尽かされたか?」ニヤニヤ

京子「……うっさい。バーカ」ギュ…


ヴーン ヴーン

京母「携帯、鳴ってるわよ?」

京子「……」

京母「あ、結衣ちゃんからだ。なになに……」

京子「かっ、勝手に見ないでよっ!」バッ!



京子「え……」

京母「ん、どした? てか、あんたそいや夕飯も食べてないでしょ。お父さんも心配して……」

京子「……今日って、何日だっけ」

京母「え、30日だけど。そいやあんた、年越しにお泊り会とか予定してる?」

京子「っ……」



京子「……明日は、帰ってこないかも」




time:11/12/30 19:42
from:結衣
件名:もう一度

年が明ける前に、京子に会いたい
京子が許してくれるなら、お昼に駅前で待ってます


告白の返事を、やり直させて欲しい





チュンチュン ピンポーン


結衣「え……」

京子「っ……」ドキドキ



結衣「…え、えっと……。お昼に駅前でって、メールで……」

京子「っそ、そのお昼って何時頃なのか具体的にわかんなくてっ……」

京子「だ、だから朝から結衣ん家行けばいいじゃん、ってその、あの……っ」カァァァ



結衣「……」

京子「っ……///」ドキドキ



結衣「……なんか、気が抜けた」プ

京子「ぅ……ご、ごめんなさい……」カァァ


ガチャン

結衣「……でも、どうする?」

京子「え……な、なにが…?」

結衣「朝食は……食べてきたよな…? だとしたら、お昼まですることが……」


京子「ゆ、結衣は、したいこと、ないの……?」

結衣「い、いや……朝できることって、考えてなくて……」

京子「……」

結衣「……」



結衣「……ゲーム、やるか? 前に話してたやつ……」

京子「う、うん……」ドキドキ


京子「うぁっ!?」ビクッ

結衣「っ……!?」ビクッ


結衣「…今のはヒヤっとしたな……」

京子「う、うん……いきなり、手が伸びてきて……」

結衣「……朝からホラーゲームするのも、なんか変な感じだが」

京子「だから、カーテン閉めて部屋暗くしたんじゃん。……まぁ変な感じだけど」

結衣「なんかゲームというか、ホラー映画みたいな?」

京子「…確かにそんな感じかも。これ一人プレイだし」

結衣「じゃあ、次のとこ行ったら交代な」

京子「はいはーい」


京子「あれ、ここどこだっけ…?」

結衣「いやいや、逆だろ。そこは戻ってエレベーターのとこを……」


京子「うわっ、また復活したっ」

結衣「……ピアノが成功するまで復活するのかもな、これ」

京子「なっ、これピアノ超むずいよ!?」

結衣「ラスボスはピアノか……」…アレ?


結衣「……今何時だっけ」

京子「あ……っ」バッ



14:32



結衣「……」アチャー…

京子「……」アレレ…?


ガチャン!

結衣「……外寒いな」

京子「もう年越しちゃうしねぇ」


結衣「……ホントは、デートのやり直しするつもりだったんだけどな」

京子「え……」

結衣「前は、中途半端で終わっちゃったから」


結衣「……だからもう一回、二人でお店見て回って、やり直したいなって」

京子「あ……そ、そうだったんだ……」



結衣「…でもまぁ、今から行っても、時間がな……」

京子「そだね……」


京子「で、でも、私は嬉しいよ…? 結衣と、こうやって一緒にいられるだけで……」

結衣「……」ギュ…


結衣「……京子」ス

京子「え……?」キョトン

結衣「そ、その……手、繋がないか…?」

京子「っっ!?」カァァァ



京子「ぅ、うん……」ドキドキ

結衣「っ……」ギュウ…



京子「……ね、ねぇ結衣…?」

結衣「な、なんだ?」

京子「で、でも、繋いでるとこ、見られたら……」


結衣「……」ギュ…


結衣「…手くらい、友だちでも繋ぐだろ…?」

京子「っ…そ、そうだよねっ……」ドキドキ

結衣「それに、」



結衣「……デートのリベンジ、しないといけないからな」

京子「っう、うん……っ」ギュ…


結衣「そ、それで京子は、お昼のリクエストあるか? 遠出はできないけど……」

京子「え、えと……」ンー…


京子「……久しぶりに、結衣のカレー食べたい」

結衣「カレーって、ウィンナー入れたやつか?」

京子「うん、それ。それと、私も料理、手伝いたい」

結衣「ん? まぁいいけど、珍しいな」

京子「うん。……結衣と一緒に、色んなことやってみたいなって」

結衣「?」

京子「え、えと。その方が、なんていうか……」



京子「……恋人っぽい、気がするから」カァァ

結衣「っあ、あぁ。そ、そうだな……」ドキドキ


結衣「あ……」

京子「ん、なにさ?」

結衣「い、いや。材料はこれで大丈夫だろ」

京子「そう? カレーってこんなもんだっけ」

結衣「あぁ、後は家に、材料少し残ってるから……」



結衣「……ラムレーズンも取ってあるから。買わなくていいぞ」

京子「え、ほんとっ?」

結衣「あぁ……最近、京子来なかったから。まだ残ってる」

京子「そ、そか……。でもじゃ、デザートには困んないね」

結衣「前のジュースは時は大変だったけどな」クス

京子「あ、あれは絶対、店側の陰謀だってっ」


結衣「……よし。それじゃ、包丁任せていいか?」

京子「おっけ。あんま上手くはないけど……」トン、トン、

結衣「指、切るなよ? 切り口は荒くても、煮込んじゃえばわかんないし」

京子「んー」トン、トン、トン


京子「……でもさ」フト

結衣「ん?」

京子「ここで指切って、結衣が慌てて治療してくれたり……」

結衣「……」ジト…

京子「い、いやほら。傷口を舐めて塞いだりするの、ちょっと恋人っぽくないかなーって……」

結衣「……」



結衣「……私は、京子の指に傷ができる方が嫌だよ」

京子「ぅ……ごめん……」シュン


京子「ふぅ……これで完成?」

結衣「ああ。後ちょっと煮込んで、ご飯が炊ければ完成だな」

京子「ご飯もあとちょっとで炊けるっぽい」

結衣「じゃあ食器の準備しとくか」


京子「じゃ、いただきまーす」

結衣「いただきます」

京子「…ん。やっぱり、結衣の料理はおいしい」モグモグ

結衣「今日は京子も一緒に作っただろ」

京子「それでもやっぱ結衣の味だもん、このカレー」

京子「なんとなく結衣っぽいっていうか、優しい味」ニシシ


結衣「……食べ慣れてるだけだろ」…フイ

京子「えへへ。そうかもね」ハムっ


結衣「……」

京子「うまうま」モグモグ

結衣「……っき、京子っ?」

京子「うぐっ…?」モグッ…!?



京子「っふぅ……な、なにさ?」キョトン

結衣「い、いや。だから、その……」

京子「?」

結衣「っ……」





結衣「……あ、あーんっ」カァァ

京子「っ……!?///」ドキドキ


京子「あ、あーん……//」カァァァ

結衣「……っ//」ソローッ


京子「……///」パク

結衣「……//」プシュー…




京子「…お、おいしいです……」ドキドキ

結衣「そ、そうか……」ドキドキ

京子「じゃ、じゃあ、私も……」

結衣「あ、あぁ……っ」


京子「あ、あーん……」ソロー…

結衣「っ……あ、あーん……」ドキドキ


結衣「……」ザー

京子「鍋はこのままでいいの?」

結衣「あぁ、そこに置いとけばいいよ。後はもう、年明けにやっちゃうから」

京子「そ、そか」

結衣「うん、前に大掃除は終わらせちゃったしな。そんな慌てなくていいし」

京子「……」ギュ…



京子「あ、あの。ゆ、結衣…?」

結衣「えっ、あ……な、なんだ…?」

京子「えと……っ」



京子「……手、繋いだで……食べさせ合いっこも、して」

京子「だ、だから……もう、終わりなのかなって。デートの、リベンジは……」

結衣「……」


結衣「…京子」カタッ

京子「あ、あのね……っ?」


京子「私、結衣に言われて……それで、初めて気付いたんだ」

京子「……離れ離れになったり、みんなに、嫌われたり」

京子「私たちが付き合うなら……そういうことも、考えなきゃいけないんだなって……」


結衣「っあ、あぁ……」

京子「で、でもね?」




京子「私は、それでも……。結衣と一緒なら、大丈夫だって……」

結衣「っ……」ギュ…!


結衣「……私、な」

結衣「思ったんだ。私が、京子を守りたかったのは。京子のこと、好きだったからだって」

京子「え……?」



結衣「京子と出会えなかった私は、」

結衣「……きっと今、こんな風に笑えてなかったって。そう、思ったから」

京子「そ、そんなの、私だってっ――――」

結衣「私は、京子と一緒にいたい」



結衣「……私が、一番幸せなのは、京子と一緒にいる時だから」…ギュ

京子「ぁ……」ポフッ…


京子「ゆ、結衣っ……!? あ、あの……っ///」ドキドキ

結衣「私も、京子と離れ離れになるのは、怖いけど」

結衣「先のことは、全然わかんないけど……」

結衣「でも私は、きっとこれからも。京子のこと大好きで、愛しくて、」



結衣「……ずっと愛してるって。そう、思えたから」




京子「結衣……っ」ギュウ…!

結衣「ずっと。京子のこと、守ってたい」

結衣「私に、これから先もずっと。京子のこと、守らせて欲しい」


京子「…ずっと、一緒にいてくれるの……?」

結衣「あぁ。京子が離れてくまで、一生」

京子「私、絶対離さないからっ! だ、だからっ……結衣も、離さないで……っ!?」ガバッ


京子「んっ……!?」チュー!

結衣「ん……」ギューッ



京子「…っ……」


京子「ぁ……ゆ、結衣……?//」カァァァァ

結衣「……下手とか、言うなよ?」

京子「い、言わないよ……私だって、初めてだもん……///」ドキドキドキ





結衣「…私と、付き合ってくれるか……?」

京子「う、うんっ……!」


おまけ


京母「あ、そっか。今日って31日だっけ」

結母「そうなのよ……それなのに結衣ったら、まだ帰ってこなくて……」

京母「そんなもん、親が面倒で家出たんだから、ギリギリまで帰ってくるわけないっしょ」

結母「うぅー……だってぇ……」シュン…

京母「いい年して『だってぇー』とかやめなさいっての。そんなだから結衣ちゃんにも呆れられちゃったんでしょ」

結母「そんなことないわよ……結衣いい子だし……」

京母「なら心配してないでドンと構えてなさい。そのうち帰ってくるわよ、結衣ちゃんだって中学生なんだし」

結母「でもあの子、うちの旦那には変に尖ってるとこあるから……」

京母「そりゃ、年頃の女の子ならそういうこともあるでしょうよ。私の時のこと、覚えてるでしょ?」

結母「それはもう。家に帰らず学校に通い続けたのよね、一か月も……」

京母「そうそう。親にほっとかれても何となく生きてるもんよ、子どもなんて。後、一か月は捏造しすぎ」

結母「あららら、二か月だったかしら……」

京母「二週間だよ。私をなんだと思ってんだ」


結母「でもどうしましょうか……このまま帰ってこなかったら、流石にあの人も……」

京母「まぁ今年はクリスマス会なんてのもやってたし。年越しカウントダウンくらい許してやりなさい」

結母「……するの? 年越しお泊り会……」

京母「京子からは聞いてないけど。まぁ、するならそろそろ連絡入れるでしょ」


京母「……あー、でも。昨日、帰ってこないかもとか言ってたな。そういえば」

結母「う……あの人、怒らないかなぁ……怒りそうだなぁ……」ドンヨリ…

京母「まだ決まった話じゃないっての。でも、今年は何かとお泊り多いしねぇ」

京母「ま、一人暮らし始めればそうもなるか」


結母「……そうね。京子ちゃんには、私も感謝してます」

京母「おう、菓子折り持ってこい」

結母「あの子、少し勢いで出ていった部分があったから……」


京母「へぇ……。それは初耳」

結母「だから私も気にしてるんです。別に、過保護から心配してるわけじゃないんですよ?」

京母「いやそれはない」




京母「……でも、それじゃ京子も、甘えてるだけってわけじゃなかったのか」

結母「えぇ。ふふ、昔は結衣ちゃんの後ろに隠れてばっかりだったけどね」

結母「結衣ちゃんの写真撮ると、ほとんど一緒に映ってたもの。京子ちゃん」

京母「ほんとほんと。あのお姫様も、ちょっとは逞しくなってたのか」シミジミ

結母「王子様とお姫様っていうのも、微笑ましかったですけどねぇ」ウフフ


京子「……」クション!

結衣「ん……寒いか…?」

京子「んーん……お母さんが噂してる気がする……」

結衣「人までわかんのかよ」

京子「なんとなく……」


京子「ゆ、結衣……?」

結衣「ん。どうした?」

京子「あ、あのねっ。わ、私……」



京子「……今日は帰らないって、言ってきたから」

結衣「っ……そ、そっか……///」カァァ


ゴーン、ゴーン、ゴーン

京子「あ、あの。結衣…?」ギュ…

結衣「えっ、あ、あぁ……な、なんだ…?」ドキッ


京子「え、えと……苦しい」

結衣「っあ、ご、ごめんっ!」バッ

京子「……」カァァ

結衣「……」カァァ


京子「で、でも、その」

結衣「……?」

京子「……もうちょっとだけ、くっついてたいな」

結衣「っ、あ、うん……。わ、私も……」カァァ


ゴーン、ゴーン、ゴーン

京子「……結衣は」

結衣「ん?」

京子「……これから、どうするの…?」

結衣「……」


結衣「……両親には、内緒にしようと思う」

京子「…っそ、そうだよね……」

結衣「今話しても、許してもらえないだろうしな……」



結衣「でも、いつか話そう? 二人が、自立できるようになったら」

結衣「……あの人にも、文句は言わせないから」

京子「うん……」ギュ…!


京子「……来年も、ずっと一緒にいてね…?」

結衣「7歳の、誕生日の約束」





京子「ぁ……っ。ゆ、結衣、憶えて……」

結衣「……あの約束。まだ有効だから」

京子「え、えと……そ、それって……」





結衣「……だから。来年以降も、な…?」

京子「っ……う、うんっ!」




おわる

こんな時期に長々と申し訳なかったです
もうちょい早く投下できとけばよかったんだけども
保守くれた人ありがとです。後、親サイドは完全に捏造してしまったごめんなさい

それでは、あけましておめでとさんです。こんな時間まで乙でした

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