あかり「恋の目覚めは白雪姫」(71)

ふと顔を上げると、いつのまにか一緒に宿題をしている途中、
ちなつちゃんは眠ってしまったみたいだった。

「……可愛い寝顔だなぁ」

思わずそう呟いてしまうほど、ちなつちゃんの寝顔は幼くあどけない。
なんだかいつものちなつちゃんと違うちなつちゃんを見ているみたいだった。
ギュッと閉ざされた目蓋も、柔らかく染まった頬も、薄く開いた唇も。
自分の唇をそっと人差し指でなぞった。
いつかちなつちゃんのそれが重なったときのことを思い出す。

あのときは無理矢理だったけど、気持ち悪いとは思わなかった。
今だってそう。
それより、その感触が恋しくてしかたない。

「ごめんね」

私はそう言い置いて。
ちなつちゃんの唇に、自分の唇を重ねた。
生温かなちなつちゃんの感触。

なにやってるんだろなぁ、あかり。

身体を離して、私はぽつりとそんなことを思った。


「嫌いじゃないよ」とちなつちゃんは言う。
嫌いじゃないなら、好きでもないっていうことなのかな。時々、そんなふうな考え方をするように
なってしまったのは、ちなつちゃんに対して他のお友達とは違う感情を抱くようになってからだ。

あかり「それであかりがね――」

ちなつ「……えっ、なに、あかりちゃん?」

あかり「むうー、また聞いてなかったでしょー」

ごめんごめん、とちなつちゃんは笑うけど、その目はきっと私を映してない。
まだどこかの世界へワープ中なのだろう。だって、少しだけ触れている指先にも
なんの反応も示してくれない。どちらにしても、あかりのことなんて意識外なのだろうけど。

期末テストが終わり、あともう少し学校に通ってしまえば待ちに待った冬休み。
そんな季節。

ちなつってどれだっけ?

それなのに最近ちなつちゃんは寝不足気味なのか、放課後、ごらく部の
部室で二人こもりっきりになってもちっとも話を聞いてくれない。
少し寂しいかなぁ、なんて思ったりもしちゃう。

せっかく一緒にいるのに。
もっと色々なことを知って色々なことを知ってほしい。

もちろん、そんなことは絶対口には出来ないけど。
変な子だって思われちゃうかもしれないもんね。

ちなつ「はーあ……結衣先輩に会いたいなあ」

二年生は修学旅行があったから、一年生三年生とは期末テストの期間が少し違う。
だから京子ちゃんたち二年生は、今がまさに期末テストの真っ最中。
京子ちゃんも結衣ちゃんもテスト期間まっすぐ家に帰ってしまうから部室には必然的に私たち二人だけになる。

あかり「あとちょっとしたら二年生もテスト終わるから会えるよぉ」

ちなつ「うー、結衣先輩分不足が深刻域に達したわ……」

本当に枯れたお花みたいにしおしおになったちなつちゃんが、テーブルにへたり込んだ。
ここ数日間、ちなつちゃんはあかりの前で結衣ちゃんの話しかしてくれない。
嫌なわけじゃないし、あかりだってちなつちゃんの話を聞くのは楽しいし結衣ちゃんのことだって
好きだから嬉しいけど。嬉しいはずなのに。

あかり「……ちなつちゃんは、あかりだけじゃ不満かな」

ちなつ「……え?」

つい口を突いて出た言葉に、ちなつちゃんが困惑したように顔を上げた。
あかりも自分自身に対して困惑してしまい、それ以外の言葉は喉の奥に張り付いて出てくれなかった。

ちなつ「……そういうつもりじゃ、ないけど」

あかり「う、うん。そうだよね……」

ちなつちゃんの顔も、あかりの顔もきっと同じくらいに困った顔のはずだ。
普段なら冗談で済ませられるかもしれないのに、ちなつちゃんだって大して今の言葉を気にしたりなんか
しなくて、それなのに今日は、ちなつちゃんもあかりも妙な沈黙に押しつぶされそうになる。

ちなつ「……」

あかり「……」

ちなつ「……」

居た堪れなくなった私はつい立ち上がると「ごめん、ちなつちゃん」と。
ちなつちゃんと一緒にいたいのに、一緒にいたくない。
「あかり用事思い出しちゃったから」
そう言って駆け足気味にちなつちゃんに背を向けた。

いいけど、黙って消えるのはやめてくれよ

――――― ――

家に帰って、お姉ちゃんのお喋りに付き合いながら携帯を手にちなつちゃんからのメールをわくわくしながら待つことが
私にとって最近の楽しみだった。
けれど今日は、携帯を机に放置したまま、お姉ちゃんのいない部屋で一人ベッドに沈んでいる。

その日の夜。
お姉ちゃんはお出かけ中で今日は家に帰ってこないと聞いて少し安心してしまったのは
今の私がお姉ちゃんに心配をかけてしまうほどひどい顔をしていることがわかっていたから。

あかり「……」

どうしてあかりは、ちなつちゃんを困らせるようなこと言っちゃったのかなぁ。
結衣ちゃんのことになると一生懸命なちなつちゃんを見ることが好きで、結衣ちゃんのことを嬉しそうに話すちなつちゃんの声が
好きで、結衣ちゃんのこと――大好きなちなつちゃんのことが好きで。

『……ちなつちゃんは、あかりだけじゃ不満かな』

あれが私の本心。
だとしたらあかり、ちなつちゃんの友達じゃいられなくなっちゃうよね――

ぐすっと、泣き虫な私が姿を現す。
声を上げて泣きたくなったのは久し振りだった。
けれど、必死に堪えてしまう。泣きたくなんてなかったから、必死に堪えてよけいに悲しくなって。

唇を噛締めた。
きつく噛締めすぎて滲んできた血の生暖かさが、ぼんやりちなつちゃんのことを思い起こさせた。

―――――
 ―――――

翌朝、ベッドからごそごそ起き出して鏡を覗くと、びっくりするくらい暗い顔をした自分と
目が合ってしまった。
こんな顔をして登校したら、きっとみんな心配しちゃう。

ごしごしと顔を洗って、にっこり笑顔を作る。
お団子は、乱れてないかな。大丈夫。
もう一度鏡の中に笑いかけ、気合を入れた。

あかりはいつでもあかるくいとかなくっちゃ。

朝ごはんを食べて家を出た。
この頃冷たくなってきた空気を吸い込むと、清清しい気分になる。別にちなつちゃんとケンカしたわけでもない。
いつも通りに振舞えば、ちなつちゃんだっていつも通りの笑顔を返してくれるはずで。

ちなあかかあかちなか

だからこそ、少しだけ、笑顔になることが辛かった。
昨日に限って、どうしてあんな雰囲気になったのかなんてわからないし、わからないからこそ不安。
その不安の理由もわからないままに、いつも通りに戻るのは、なんだか少し怖かった。
怖いというよりもきっと、嫌なのかもしれない。

なにが嫌なのか、あかり自身でも理解できないのに。

あかり「……」

あぁ、でもだめ。
またあかり、暗い顔しちゃいそうになってたよぉ。
ふう、と大きく息をついたとき。

「あかりー、おはよう!」
どんっと背後から誰かの身体が押し付けられてきた。

「また、あかちなかよ…」

そう思い私は支援をはじめる。

あかり「あっ、京子ちゃん……!」

びっくりしすぎて心臓がばくばくだ。
振り向くと、京子ちゃんが「へへっ、驚いたか」と笑っていた。

あかり「もうー、朝からびっくりさせるなんてひどいよぉ」

京子「いやあ、こうやってあかりをいじらないと頭がパンクしそうでさ」

そういえば、京子ちゃんたちはまだ期末テスト。
特に一夜漬けの京子ちゃんなんて、ふらふらになってしまうに決まっている。
お疲れさまぁと笑いながら、自分がちゃんと笑えていることにほっとする。

結衣「おーい、京子、なにやってんだよ」

京子ちゃんの背後から結衣ちゃんの声もして、少しだけドキッとした。
結衣ちゃん自身が嫌なわけじゃ無いし、結衣ちゃんのことだって大好きだ。
だからこそ、昨日少しの間抱いてしまった結衣ちゃんへの嫌な気持ちで申し訳なくなってしまう。

結衣「あかり、おはよう」

あかり「う、うん、おはよう!」

私達に追いついた結衣ちゃんが、いつも通りに声をかけてくるのを私はとてもいつも通りとは思えないふうに
返してしまった。
結衣ちゃんが首を傾げる横で、京子ちゃんが「ちなつちゃんまだ来ないからあかりに触ろう」と抱きついてくる。
京子ちゃんに抱きつかれるのは嬉しいけど、いつも抱きつかれてるちなつちゃんが「暑苦しい!」と怒っている気持ちも
わからなくはないかもしれない。

ちなつちゃん、早く来ないかなぁ。
そう思い掛けてけれど。

あかり「……」

うぅ、よくわからないよ。
来て欲しいけど来て欲しくないような。
こんなふうに思ってしまうのが初めてで、戸惑って仕方が無い。

いいよいいよー

京子「ああーちなつちゃーん」

結衣「おいこら……って、きたきた」

ぐりぐりと私に頬ずりしてくる京子ちゃんを窘めかけた結衣ちゃんが、
ぱっと気が付いたように声のトーンを上げた。
確かに、ちなつちゃんの足音だ。

京子「ちなつちゃんおはよー!私の胸に……」

ちなつ「……」

京子「ありゃ?」

遅くなってすみませーんと走ってきたちなつちゃんは一瞬ぽかんと立ち止まって。
私に抱きついたままちなつちゃんに手を伸ばした京子ちゃんが、首を傾げる。
けれど本当に一瞬で、「遠慮しときますっ」と京子ちゃんの手を掻い潜ってちなつちゃんは
「結衣せんぱーい」と抱きつきにいった。

結衣「お、おはようちなつちゃん……」

ちなつ「おはようございますうっ」

きゃーと嬉しそうに声を上げるちなつちゃんに、京子ちゃんの「ちぇっ」という軽い舌打ち。
結衣ちゃんの困ったような顔と、それからあかりは。
あかりは今、どんな顔してるんだろう。

ちなつ「あ……」

京子ちゃんに抱えられたままぼんやりしていると、ちなつちゃんがふとこちらに視線を
向けた。
目が合う。
目が合って、ちなつちゃんは「あかりちゃん、おはよう」

あかり「……お、おはよう、ちなつちゃん」

すぐに逸らされたけど。
確かに聞こえた小さな声。
気付かなかった京子ちゃんが「あかり、行くぞー」といつのまにか私から離れて手を引っ張ってきた。


ちなつ「……」

あかり「……」

昼休みの部室。
いつのまにか放課後じゃなくてもここに集まることが習慣になっていた私たちは、けれどまだ二人きりだということを
忘れていて。
別に絶対部室で過ごさなきゃいけないわけでもないのに、教室にも帰りづらくて結局二人。

昨日のことがあって、少し、というよりもかなり気まずい。
今さら本気で言ったわけじゃないんだよぉ、と笑えるわけもなくて。

あかり「ちなつちゃん、あの、お茶、淹れようか」

文庫本に目を落としていたちなつちゃんに声をかけると、ちなつちゃんは明らかに驚いたように
身体を震わせた。
その反応に少しだけ落ち込みそうになる。

ちなつ「あ、うん……って、私が淹れるよ!」

あかり「そ、そう……?」

ちなつ「あかりちゃんがお茶汲みってちょっと変な感じだし!」

ど、どういう意味だろう。
そうは思いつつ今日初めてきちんと話せたことにいささか安堵。
このまま違う話題を出して話をつなげてしまえばいつもみたいに――

ちなつ「あのね、あかりちゃん」

けれど。
ちなつちゃんはカチャカチャとお茶の用意をしてくれながら、いつもとは
少し違う声音でそう言った。

つい、私まで身体を固くしてしまう。

あかり「な、なにかな?」

ちなつ「……その、すっごく言いにくいんだけど」

あかり「う、うん……」

湯呑みに熱いお茶を注ぐちなつちゃん。
一杯、私のを淹れ終えると、ちなつちゃんはそれを私に差し出した。

あかり「ありがとう……」

受け取りながら、そっと受取る。
それから気付かれないようにちなつちゃんの表情を窺って。

――赤い。

あかり「ち、ちなつちゃん……?」

ちなつ「あかりちゃん、私のこと、どう思ってるのかなって」

ちなつちゃんの人差し指が、その口許に触れた。
いつか重ねたことのある、柔らかくて温かな唇。

ドキンッと胸が鳴った。

キマシ?

ふむ

あかり「……へ?」

数日前の放課後の光景が頭を過った。
眠るちなつちゃん。
外から差し込むやわらかな夕日のオレンジと、それから冷えたちなつちゃんの指先。
転がったシャーペンにどうしようもなく止まらない気持ちと。

二回目のキスの味。

あかり「あ、あかりは……」

かあっとすごい速さで頭に血が上っていくのがわかった。
恥ずかしさとか後悔とか、色んなものが交じり合って頭が正常に動いてくれない気がした。
ちなつちゃんが、私に目を向けないまま「……好き、なの?」

あかりは、ちなつちゃんのこと――

木間市の地価がまたあがるな

キマシタワー

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10. Dies irae
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あかり「……そんなわけ、あるわけないよぉ」

私はえへへと笑って、そう言った。
ずぶずぶと泥沼にはまっていくような感覚。けれど。

ちなつちゃんのことは大好き。
たぶん、誰よりも大好き。

けれど、ちなつちゃんは。
結衣ちゃんのことが大好きなんだもんね。
たぶん、誰よりも大好きなんだもんね。

だから、違うよ。
あかりがちなつちゃんのこと好きなわけなんてないんだよ。
そう思わなきゃ、どうにかなっちゃいそう。

こんなにも今の気持ちに当て嵌まる言葉が「好き」だなんて、そんなの。

ちなつ「……そ、そうだよね」

自分の湯飲みにお茶を注いでいたちなつちゃんは、こぼれそうになる間際ようやくはっとして
手を止め、私を見た。
どうしてか、そんなちなつちゃんの瞳は揺らいでるみたいに見えた。

あかり、泣いちゃってるのかなぁ。
やだなぁ、こんな顔しちゃったらちなつちゃんがまた。

ちなつ「ごめんね、へんなこと言っちゃって」

あかり「……ううん」

ちなつちゃんが照れたようにはにかんで、あかりから視線を逸らした。
私もうん、と俯いて。
大丈夫、涙はこぼれてこない。あかりは泣いてなんかいない。

ただ、噛締めた唇が痛かった。

―――――
 ―――――

結衣「ちょ、ちょっとちなつちゃん!?」

ちなつ「結衣先輩、もっと私の名前呼んでください!」

結衣「え、あの……」

それから数日後。
二年生の期末テストも終わっていつものごらく部。
京子ちゃんが畳の上に寝そべって、結衣ちゃんに抱きつくちなつちゃん――

京子「あれ、あかりどうかした?」

あかり「へっ!?」

つい結衣ちゃんたちから目を逸らしてしまう私に気付いた京子ちゃんが、
よいしょ、と起き上がって訊ねてきた。
なんでもないよと首を振る私に、結衣ちゃんが「そうかな……」と低い声で呟いた。
結衣ちゃんに抱きついたままのちなつちゃんは俯いたまま、密かに肩を震わせたのがわかってしまった。

あかりとちなつちゃん。
あれで気まずい雰囲気ではなくなったはずなのに、依然距離は開いたままだった。

うわぁああ

このままじゃ前みたいに話せなくなるとはわかっているのに、どうしてもちなつちゃんに話しかけられないし、
ちなつちゃんも私に話しかけてはくれない。

眠っているちなつちゃんにキスしたことを、本当はちなつちゃんは知っていたのかもしれない。
そう思うと、ちなつちゃんの態度も当たり前で、何も言えなくなってしまう。

それに、このままちなつちゃんと微妙な関係を保ったままのほうが
楽なんじゃないかなんて。
そんなことを思って。

これは切ねぇ

京子「ちなつちゃんはどう思うよ?」

ちなつ「な、なんで私なんですか!?」

京子「え、いや……」

結衣「あかりと今一番仲いいのあかりかなって」

京子ちゃんの言葉を引き継いで、結衣ちゃんが言う。
私が「ほんとになんでもないってば!」と言いかけたとき、ちなつちゃんの声。

ちなつ「なんでもないですっ」

結衣「そ、そうなの……?」

ちなつ「……なにも、なかったし、なんでもないんです」

ぷいっと顔を逸らしたちなつちゃんがそう言って。
京子ちゃんは「そっかー」と首を傾げながらもそれっきり何も言わなくなった。
きっとなにか察してくれたのだ、京子ちゃんは言いたくないことは無理に言わせたりなんてしないから。
結衣ちゃんも同じで、私はこんな幼馴染でよかったなぁって思う。

だからこそ、そんな二人にも心配はかけたくないとも思った。
こんなあかりなんて、あかりじゃないもんね。
ちなつちゃんと仲直りして、それからそれから――

ちゃんと、友達に戻らなきゃ。


帰り道、京子ちゃんたちと別れた昇降口。
私は思い切って「ちなつちゃん」と呼び止めた。
靴を履き替えて、上履きを下駄箱に仕舞いかけていたちなつちゃんが「えっ」と私を振り向いた。

ちなつ「あかりちゃん……」

あかり「あ、あのね、あかり……」

必死で声を絞り出す。
あまり話せていなかったせいで、ちなつちゃんとどんな会話をすればいいのか咄嗟には
思いつかない。

四円

ちなつ「……」

あかり「あかり……」

ちなつ「……ごめん、あかりちゃん」

えっ、と自然と漏れ出た声に、ちなつちゃんはもう一度「ごめんね」と言った。
その声に、どうしてかドキドキしてしまう。
隠していた気持ちが、ちなつちゃんが私に向けた声に引きずり出されてきたみたい。

あかり「どうして……?」

ちなつ「えっと、ここ最近無視してた感じだし、だから……」

ちなつちゃんも私と同じだった。
だんだんと迷ったように言葉が萎んでいく。
お互い、なにを話せばいいのかわからない。

あかり「それはあかりも、一緒だし……ちなつちゃんが悪いわけじゃなくって」

ちなつ「う、うん……」

すごくぎくしゃく。
ちなつちゃんのことを意識しすぎて、言わなきゃいけない言葉も思い付かない。

ごめんなさい?
それともありがとうかな?
それは絶対に違うよね――

それならえっと。

ちなつ「……気持ちに、整理がつかなくって」

ぼそりとしたちなつちゃんの声に、思考がぱたんと止まってしまった。
ふとちなつちゃんを見ると、いつかと同じように頬が上気していて。
きっと、寒さのせいだけじゃない。

あかり「……どういう、意味かな?」

訊ねると、ちなつちゃんは「うぅっ」と壁に突っ伏した。
やわらかな髪に、ちなつちゃんの表情が隠れてしまう。

ちなつ「……私、結衣先輩のこと好きなはずなのに」

――どうしてあかりちゃんのこと気になっちゃうのよ……。

だから、その言葉をちなつちゃんがどんな顔で言ったのかはわからない。
それでもそれが嘘じゃないとはっきりわかって、視界がぼんやりした。

ちなつちゃんのその声は、思考だけでなく理性すらも止めてしまったみたいだ。

唐突に湧き上がってくる気持ち。
ちなつちゃんの寝顔を見たときと同じような、激しい何か。

ちなあかは癒し

ちなあかは癒し

あかり「……ちなつちゃん、こっち向いて」

ちなつ「……あ、あかりちゃん?」

言葉通りこっちを向いたちなつちゃんは、どうしようもないくらいに可愛くて。
もっかいキスしたら、あかりのこと好きになってくれる?
そんな言葉が、躊躇いもせずにこぼれ出てきた。

ちなつ「……ちょ、ちょっとあかりちゃん」

連投になってしまった

どんなふうにするかは、一度目の練習のときでわかっている。
二度目は初めて自分からしたから、かちんこちんだったけれど。
三度目は――

ちなつ「……んっ」

やっぱり、触れるだけ。
だけどこれまでで一番、温かくて優しい、そんな気がした。

タワーを建てた

込み上げてくる

んでんで!

ちなつ「……あかりちゃん」

あかり「……えへへ」

照れ笑いを浮かべて、私はそれから。
ちなつちゃんを離してその場にへたりこんでしまった。今さら、真っ赤になって。

あかり「……あ、あの、えっと……」

ちなつ「……なんで今正気に戻っちゃうのよもう……」

ちなつちゃんも赤い顔のまま呆れたようにそう言って。
それから、笑った。
笑ってちなつちゃんが屈みこんできて、もう一度――

ちなつ「……好きになっちゃった責任、とってもらうからね」

ちなつちゃんの囁き声。
ぼんやりした頭の中、「あかりの台詞だよ」小さく反論してみた。



キスで目覚めたのは白雪姫だけじゃないっていう、そんなお話。

結衣「……」

京子「……」

結衣「……先帰ろっか、京子」

京子「私たちもやる?」

結衣「おいこら」

京子「照れ屋さんな結衣さんだ」

終わり

年越す前にあかちなが読めるなんて…

結京も気になるけど乙
年末に幸せをありがとう

乙。幸せな気持ちになった。

あかり「今年ももうすぐ終わっちゃうねぇ」

ちなつ「そうだねえ」

あかり「色々あったよねぇ」

ちなつ「まさか私たちがここまでになるとは思わなかったわ」

あかり「えへへ、そうだねぇ。はい、みかん」

ちなつ「ん」パクッ

ちなつ「あかりちゃんも、あーん」

あかり「あーん」モグモグ

ちなつ「でもさ、あかりちゃん」

あかり「うん?」

ちなつ「私たちの世界って、サザエさん空間だからいつ一に戻るかわかんないんだよ」

あかり「年を越してもまた戻っちゃうかもしれないんだよねぇ」

ちなつ「だとしたら私たちの関係もまた一からかも」

あかり「そうだねぇ」

ちなつ「それでもあかりちゃんは私のこと好きになってくれる?」

あかり「うん」

ちなつ「結衣先輩のこと諦め切れなかったり、京子先輩にふらふらしちゃっても?」

あかり「うん」

ちなつ「私が――あかりちゃんのこと嫌いになっちゃったりしたら?」

あかり「そんなわけないから大丈夫」

ちなつ「……へんな自信」

あかり「それに、もしそうだとしてもあかりが頑張って振り向かせちゃうよ!」

ちなつ「できるかなあ」

あかり「来年はあかりがガンガンリードするからね!」

ちなつ「はいはい。覚悟しとくね」

あかり「えへへっ」

ここまで付き合ってくださった方、そして全ての支援保守も本当にありがとうございました
今年はちなあかに出会えて本当に良かった、来年もいい年になりますように

それではまた
よいお年を!

乙!

ちなあかも素晴らしいが京あかもいいものですよ


結衣あかをお忘れかな?

>>63

来年もちなあまかをよろしく頼みます

おつりん!

>>1
来年もよろしく

おつ

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