男「好きな人ができた」友「ふーん」 (72)

男「文芸部の文学少女だ。
清楚と言う言葉はきっと彼女のためにあるものだ。」

友「話したことあるの?その文学少女と。」

男「ない。」

友「話したこと無いのに好きになっちゃったんだ…」

男「一目惚れだ。
人を好きになるのに理由などいらない。」

男「そこで友、おまえあの人の彼氏又は好きな人の有無を聞いてこい。」

友「自分で聞きなよ…」

男「おまえ、唯一の友達であるこの俺の頼みが聞けないのか!?友達だろう!?親友だろう!?」

友「おまえも俺以外に友達いないじゃん…」

男「いいから、頼む!お願いだ!聞いてきてくれ!」

友「えー…」

男「俺はあの人に彼氏がいるのだと思うとモヤモヤして夜もねむれないのだ!」

友「んー…」

男「昼飯!昼飯をおごってやろうさあどうだ!聞いてきてくれよ!頼む!」

友「んー……わかったよ……しょうがないな……」

男「さすが我がただ一人の友達だ!」

友「やっぱりいないんじゃん……」

友「それで、お前が好きな文学少女さんは何年何組?」

男「知らん。」

友「……名前は?」

男「知らん。」

友「……なんで知らないの…」

男「文芸部室で一人ひっそりと本を読む彼女は素敵だった…」

男「と言うかついでに名前とクラスも聞いてきてくれ。」

友「……文芸部室はどこにあるの…」

放課後 文芸部室

友(いた、ホントに一人だ)

文学少女「……」

友(……あいつが一目惚れしちゃうのも分かる気がするな…)

文芸部「……」

友(あんな可愛かったら彼氏の一人や二人、絶対いるだろ…)

友(どうしてあいつは、あんなに高望みするのかな…)

友「……」

文学少女「……」

友(……部室、入りますか…)

友「……こんにちはー…」

文学少女「!?…
……こんにちは…」

友「あのー、俺友って言います、文芸部ってここでいいんですか?」

文芸部「え?あ、はい…
……えーっと私は女て言います。」

友(名前、女さん…)

友(制服のリボン、赤……タメだ)

文学少女(以後女)「あの、何か用ですか?…」

友「……えーっと、体験入部的な…
しばらく、仮入部してみたいなあ……って」

女「え?……あー……そう言うのは、えっと……先生に聞いた方が、いいと、思います。」

友「え、ほんと?……先生って顧問の先生?」

女「あ、はい。」

友「顧問の先生って誰先生?」

女「現国の先生です。」

友「そっか、わかったじゃあ、現国の先生に聞いてみるよ、ありがとう。じゃあ。」

女「あ、はい」

女「……」

翌日

友「文学少女さんの名前は女さんで俺らとタメ。」

男「で?」

友「……いや、初対面でいきなり『彼氏いるの?好きな人は?』とか聞けないでしょ…」

男「っはー……使えねー。」

友「……」イラッ

男「まあいいけど、絶対聞いてこいよ、彼氏。」

友「ハイハイ……」

放課後 文芸部室

友「先生に言ってきたよ、好きなだけ、仮入部していいって。」

女「ほんとに?」

友「好きなだけ仮入部してもいって、あの先生、けっこう適当なんだね…」

女「確かに、そうかもw」

友(あ、かわいい……って惚れちゃ駄目だからな、俺)

友「……」

友「あの、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」

女「なに?」

友「あのさ、君のことが好きだって言ってる奴がいてね、そいつが君に彼氏がいるのか気になって夜も眠れないらしいんだ……」

女「え?」

友「そいつは俺のたった一人の友達だからさ、そいつの悩みを解消してやりたくて……その、聞いてもいいかな?」

女「私に彼氏がいるかって事を?
いないよ、彼氏なんて。」

友「好きな人は?」

女「いないいない。」

友「そっか、ありがとう。」

友(よかったじゃん、男)

翌日

友「彼氏も好きな人もいなってさ。」

男「よくやった、友よ。」

男「そっかあー!よかったー!いないかあー!」

友「それで昼飯だけど、購買のチキンカツサンドとあんパン、牛乳で…」

男「それじゃあ次のミッションだ!」

男「メールアドレスを、聞いてきてくれ」

友「おい」

男「電話番号はメールで仲良くなった際自分で聞く!その辺りは心配するな!友よ!」

友「チキンカツサンド
  あんパン
  牛乳」

男「それとできれば、デートのセッティングをしてくれ!」

友「いいから早く買ってこいよ。」

男「報酬はあれだ!焼肉!焼肉をおごってやろう!」

友「……まずはメールアドレスだけでいいの?」

男「デートのセッティングをっ」

友「それだけは自分でやれ」

男「ぐぬぬ……しかたあるまい、だが確実に!聞いてこい友よ!」

友「アイアイ」

放課後 文芸部室

友「こんにちはー、また来ちゃいました。」

女「こんにちは、本入部は焦らずゆっくり考えて決めていいよ。」

友「そうするよ。」
(多分本入部はしないだろうけど。)

女「……あの、友君、も……本読んでるけど、いつもどんな本読むの?」

友「え?」
(表紙だけカバーで隠して実はラノベしか読んでないなんて言えない……言いづらい…)

友(でも仮入部とは言えなにもしないわけにもいかなかったし、純文学なんて読まないし……)

友「俺は……その……あれ、あのー芥川……」

女「芥川龍之介?」

友「うー、ん……んー、そ、それよりさ!女さんはどんな本読むの!?」

女「え?」
(あれ……?なんか逸らされた?)

友帰宅

友(いやー、本の話題にはついていけないし何より気まずかったわ…)

友(まー、なんとかアドレスは聞けたし、これで男に焼肉おごってもらって仮入部も終えて女さんともおさらばかな……)

友(……)

友「……」ケータイトリダシ

友「……」メルメル

友「……」

友「……」ソウシン

友「……」ソワソワ

友「……」ソワソワ

友「……」

友「……」

友「……」

ケータイ「メールヲジュシンシマシタ」

友「!」メールカクニン


from 女さん

題 ありがとう

私も友君と話せて楽しかったよ!

またね!
おやすみなさい。


友「……」ドキドキ

翌日

男「でかしたぞ!男!」

友「お、おう。」

男「くぅー!これで俺も女さんとメル友だー!」

男「一応、俺の事は話してるんだろな!?いきなりメールしても大丈夫だよな!?」

友「大丈夫大丈夫
ついでにデートの約束でもしとけ。」

男「ふふふ、これをきっかけに女さんと仲良くなり!女さんと付き合って!俺のリア充ライフが始まるのだ!」

友「……」

男「?……友?」

友「……」

男「友?……おーい、友?……
おい!」

友「お、おおおう!……なんだよ、驚かすなよ……」

男「お前今……女さんの事、考えてなかったか?」

友「!?」

男「そう言えばお前も女さんのメールアドレス知ってんだよな?
まさか、お前、女さんとメールでやり取りとか、してないよな?
まさか、友達が好きな人とメールなんてして、仲良くなんて、なってないよな?
まさか、友達が好きな人を狙ってなんて、してないよな?」

友「……してないよ。」

男「まあ、女さんは可愛いから惚れちまうのは仕方ない、そこは許す。だけどそこまでだぞ?惚れるだけだぞ?わかってるよな?」

友「わかってるよ。」

友宅

友(はあー…)

友(大丈夫だ、友達の好きな人を狙ったりなんてしない、俺はそんなクズじゃない。)

友(そもそも惚れてなんて、ない)

友(大丈夫だ、大丈夫…)

ケータイ「メールヲジュシンシマシタ」

友「!?」


from 女さん

題 文芸部

今日部室来なかったね

どうしたの?

友「……」

友「……」メルメル

友「……」ソウシン

友(寝よ…)
……



ケータイ「メールヲジュシンシマシタ」

from 女さん

題 無題

そっか

じゃあしょうがないね

友君が仮入部してくれただけでも楽しかったよ!

ありがとう。

数日後

男「聞け!友よ!」

友「……ん…」

男「俺は女さんとデートする約束をしたぞ!」

友「んー、よかったじゃん。」

男「しかし女さんは中学の頃の友達を連れてくるから、男さんも誰か連れてきて欲しいそうだ!」

男「二人きりだと恥ずかしいんだろうなー!まったくシャイだなー!女さんは!かわいいなー!」

友「んー…」

男「しかし!誰か連れてきて欲しいと言われても、あいにく俺には友達なんて呼べるものは一人しかいない!そこでだ!友よ!お前を俺達のデートにつれていってやろうではないか!
なに!礼などいらん!これも俺と女さんを引き合わせてくれた友のお陰なのだからな!感謝しているぞ!」

友「んー…
……ん?え?…」

男「デートは今週の日曜日だ!備えておけよ!友!」

友(今週の……日曜……女さんと……)

男「俺は女さんと!お前は女さんの友達と!完璧だ!Wカップルの成立だ!」

友(会えるのか……女さんと。
でもなんか……気まずいな……)

Wデート当日

女友「こんにちはー、女と中学から友達やってる女友でーす。今日はよろしくー。」

友(この人が女さんの友達かあ、なんか全然女さんとキャラ違うなあ…)

男「それじゃあ!いきますか!」

女「……」

友(あ、女さん……)

女友「……君が友君?」

友「え?あ、はい」

女友「……ふーん…」

友「……」
(……なんだ?)

女友「おーい、女ー」

女「?なに?」

友「!?」

女「あ、友君……」

友「ひ、久しぶり…」

女「うん、久しぶり…」

女友「おい女…」ゴニョゴニョ

女「?……え!?いや……それは……その…」

女友「また『まだよくわかんない』?まったくいつまでもハッキリしない子だねー。」

女「……ぅぅ」

友「……?」
(なんだ?…)

女友「あーゴメンゴメンこっちの話…
じゃあ今日はよろしく、友君。」

友「……よろしく。」

電車の中

友 女友   離れて   男 女


友「……なんでわざわざ離れたの?」

女友「ちょーっとね……
で?今日行くの所は遊園地だっけ?」

友「男が言うにはベターに選んだそうで…」

女友「ふーん…」

女友「あのさ……あんた、ぶっちゃけ女の事どう思ってんの?」

友「え!?」

女友「やっぱり可愛いなーとか思ってる?」

友「いや……それはー…」

女友「え?まじ!?可愛いって思ってないの!?女を!?

ちょっと女ー!こいつ!」

友「うわ!まじでそう言うのは勘弁して!」

女友「で?」

友「……可愛いなーとか……思って、ます。」

女友「ふーん。」ニヤニヤ

友(なんなんだよこの人……)

女友「まあ、普通はそう思うよねー、普通は。」

友「……まあ…」

女友「ふーん、そうかそうか。」

友「……」

女友「あの子さあ、あんな可愛いけど今まで彼氏とかできたことないんだよねー、つまり処女。」

友「」ガタッ

女友「反応しすぎwwwキモいわwww」

友「……」グヌヌ

女友「だってさほら?趣味が読書とか?暗いじゃん?」

友「……」ッム

女友「あれ?ちょっと怒った?いやいや変な意味じゃなくてね、あの子さなんかそう言う性格なのか、自分から友達とか作ろうとしたりしないんだよねー」

友「……」

女友「どうせ先に話しかけたの君からでしょ?」

友「……ん」

女友「最初の内めっちゃキョドってたでしょ?www慣れれば普通に話すし、けっこー明るい子なんだけどね、どーしても一番最初がねー。」

友「……」

女友「逆にそこをついて強引に迫ってくる男もいたんだよね……けど君は違うみたいだね。」

友「……」

女友「君はきっと優しい奴だ……多分。」

友「あんまり良い言われかたをされた気がしない…」

女友「そうかじゃあチキンだな、チキンだから『友達が好きな人を好きになってはいけない』とか言い訳して逃げたんだ。」

友「……」

女友「いい?友達の好きな人を好きになっちゃいけないなんてことはないよ、狙っちゃいけないなんてこともない。」

友「それは、男に悪い気が…」

女友「いいんだよ、悪くない、恋は奪い合うものだ!なんかの小説でも言ってただろ!たしか。」

友「……」

女友「早い者勝ちだ!それに、一番悪いのは相手をその気にさせといてほったらかす奴だ。ほったかされたやつは可愛そうだろ?」

友「……」

女友「奪っちまえ!
そんで付き合ってもいない女とられたぐれーでぐちぐち言う奴なんざこっちから縁きっちまえ!」

友「それはちょっと……」

女友「なんでだよ?他の奴とつるめばばいいだろ?……ってあ…」

友「……え?なに?なんで気まずそうにするの?」

女友「いやあ……ちょっと……ごめんよ…」

友「……え?まさか…
ねえ、ちょっと、なんで知ってるの?俺の交友関係?」

女友「まーそれはおいといて…」

友(逸らされた…)

女友「聞くけどさ、君は女の事、どう想ってる訳?」

友「……」
(ごめんよ……男…)

友「好きだって想ってる。」

女友「その言葉が聞きたかった。」

女友「電車降りたら、女とふたりっきりにさせてあげる。そこで伝えてきな。」

友「え!?今日!?無理無理無理!?」

女友「うるせえよ、さっさと奪ってこい。」

女友「ほら、駅着くよ。」

降車


男「さあ、つきました!駅!こっから歩いてすgぶふぉう!!!」

女友「あっれー男くーん?どうしたのぉー?気分悪いのぉー?じゃあ早退だねぇー?早く帰らなきゃだねぇー?」

友(今殴ったよね?強烈なボディブロー浴びせたよね?)


女友「じゃーあー私男くん連れて帰るねぇー?またねぇー女ちゃん友君!」

女「え?女友ちゃん!?」

友「……」

女「あ……」

友「……」

友「……どうする?……かえr…」

ケータイ「メールヲジュシンシマシタ」

友「?」


from xxx

題 女友だよ☆

帰ったらぶっ殺しちゃうぞ☆ミ


友「」

女「あの……友君……
久しぶりに……友君とお話したいな…」

友「え?……あ、あぁ……うん」

………
……

喫茶店

友「……」

女「……」

友「あ、あのさ……急に仮入部止めて、ごめん」

女「い、いや!友君は謝る必要ないよ!大丈夫だから!」

友「て言うかそもそも、仮入部したのも男を女さんとくっ付ける為だったし……」

女「……やっぱり、そうだったんだ……」

友「気づいてたの?」

女「女友ちゃんがそんなこと言ってた。」

友「ああ……」

女「前もメールしたけど、友君が仮入部してくれて、お話できて楽しかったよ。」

友「……うん。
俺も楽しかった……女さんと、話せて。」

女「…うん。」

友「……」

女「……」

友「あのさ、女さん……また文芸部に行っても、いいかな?」

女「!…いいよ!友君!」

友「うん、ありがとう。」

友(あれからちょくちょく文芸部に行き来することになり、先生に『毎日来るならもう入部しろよ』とのことで、文芸部員になった。

それと俺は女さんに告白なんて事はしなかった……やっぱりなんか、後ろめたいから。
それでも放課後に通う文芸部はとても楽しい。色々あったけど女さんと会えて良かったと思う。
今日も文芸部に参加するつもりだ。)


おわり

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