まどか「希望は残っているんだよ。どんな時にもね」 (1000)

・クロスではありません。スレタイは某ヱヴァからの単なる引用です
・公式設定を、使ったり、知らない振りをしたり、本当に知らなかったりします。
・キャラクターの過去等の設定をでっち上げています。
・終盤は、ご都合主義の嵐になるかと思います。
・書き溜めありです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1382699226

プロローグ:君なら彼女の結末を変えることができる

まどか「そんな…。こんなのって…」

ほむら「これでいいのよ。もう、思い残すことは無い。――さよなら、まどか」

荒廃した街にに響く銃声、ガラスが割れるような音。そして、倒れる一人の少女
もう一人の少女が、倒れた少女に駆け寄って、抱き抱える

QB「死んだね。」

まどか「こんなのないよ…。これじゃほむらちゃんが救われない…」

QB「仕方ないよ。これが彼女に残された唯一の逃れ道だったんだ

QB[生きてこの夜を乗り越えることはできないと、暁美ほむらは知っていたんだよ」

 生き残った少女は泣きじゃくる。

QB「しかし、知っての通り、君なら彼女の結末を変えることができる」

QB「『別の君』の言葉を清算できる。彼女を救うことができるんだ」

 ――これは罠。わかってる。乗っちゃったら、私は『また』ほむらちゃんとの約束を破ることになる
私は、やっとの思いで願いを叶えたほむらちゃんに、再び地獄のような日々を送らせることになる
それがどんなに罪深いことか知ってる。

……この時間軸の最後に何も、感謝の言葉さえ言えなかったことの清算、
別の時間軸で呪いにも似た言葉でほむらちゃんを縛った償いのために契約するなんておかしいんだ
ほむらちゃんに対する裏切りだ。
……だけど、それでも私は祈る。祈らずにはいられない。

今一度信じたい。『間違ったっていい』っていう、お母さんの言葉を

――ほむらちゃんは、絶対に幸せにならなくちゃいけないんだ――

まどか「キュゥべえ、お願い…。ほむらちゃんに奇跡を…もう一度だけ勇気を……!」

QB「それが君の願いだね。…しかし、」

インキュベーターが、彼女の顔を覗き込む

QB「二つの願いというのは――」



第1話:誰にでも秘密はあるものよ

ほむらside

???????

確かにまどかを救えたと思ったんだけど…。夢だったのか…。いい夢だったな…

夢にでもすがらないと、最早精神を維持できないらしい。惨めなものだ

22回目の目覚め。なぜこんなに繰り返してもまどかを救うことができないのか
夢のないSF映画のごとく、未来を変えることなどできない、とでも言うつもりなのだろうか
だとしたら、私は何のために祈ったのだろう…
大体この物語はファンタジーじゃないか

…少しダークな部類に入るとはいえ

ここで後ろ向きな世界観に浸っていても仕方がない
これからの行動について考えよう

…鹿目まどかと美樹さやかの契約を防ぐ
そのためにインキュベーターを襲撃する
佐倉杏子、それと可能ならば巴マミを仲間に引き入れる
これが理想的プランだ。

だが、このプランがうまくいった試しはない


――理想は所詮理想でしかない―――


失敗を繰り返すうちに私はそのような考え方に至り、まどかを救うことのみに固執し、それ以外を切り捨てていった

…本当はわかっている。それは最適解に見えて、解ですらない
まどかが周りを全て失った結末を見たらどうするか
…契約するに決まっている
そういう娘だからこそ、私が命を賭して救いたいと思ったんだ

理想を現実にすることでしか彼女を救うことはできない

だけど、たとえ誤った解でも、見せかけの救いでも、まどかが死ぬよりはマシだ
あのプランは実現が極めて困難なのだから

理想的プランを進めようとすると必ず美樹さやかが障害となる
彼女にいつも疑惑をもたれ、さらには敵対してしまう
特に最近は、盲目的なまでに私を敵視してくる。最初のほうは疑わしい、気に入らない程度だったのがどうして敵対するに至ったのか
…彼女が尊敬する巴マミと敵対するからだ

巴マミと敵対する理由は何か…。彼女が信頼するインキュベーターを襲うからだ
では襲うのをやめるか?
…しかし、まどかが奴と接触することで契約の可能性が初めて生じることを鑑みれば、彼女とインキュベーターの接触自体を防ぐのが最良だ
接触を防ぐことをできなくとも、遅らせることができれば、それだけ契約のリスクも減る

…とは言え、このままではジリ貧なのは確かだ
奴は神出鬼没で無限残機を誇る
時間停止と言えど当然グリーフシードの制限を受ける
引き延ばすにしても1週間が限度であり、今までこの接触の遅れが今まで功を奏したことはない

…ならば、妨害をあきらめてしまうことも一つの策か?
…少なくとも美樹さやかと巴マミへ与える第一印象は変わるはずだ
あくまで第一印象であり、すべての問題が解決するわけではないが、やってみる価値はあるかもしれない

………うん。今回はこれを基本方針にしよう
そして、妨害しないとすれば、私がまずとるべき一手は――

まどかside


――悪い夢を見た

ほむらちゃんから見れば、良い夢だったんだろうけど、私から見れば悪夢でしかなかった
…それにほむらちゃんから見ていい夢だと言えるのは、彼女が諦めているからでしかない
だから私は祈った。傲慢だとわかっていたけど、それでも祈らずにはいられなかった


――何を?誰のために?


鮮明だった記憶は、段々とおぼろげになっていって、後には何も残らなかった
いつものこと。特別なことじゃない
…なのに、どうして私は、夢の内容をこんなにも思い出したいと思っているんだろう
…わからない。思い出さないと何か大変なことが起こるような――

…あっ、もうこんな時間!さやかちゃんとの待ち合わせに遅刻しちゃう!

私はとりあえず夢のことはおいておいて、着替えを手早く済ませリビングへと向かい、お父さんとタツヤに朝の挨拶を済ませて――

待ち合わせ場所である公園の前で、うちの制服をきた女の子とぶつかってしまった

まどか「あわわ。ごめんなさいっ!」

ほむら「鹿目まどか」

まどか「…?」

え、知り合い?まずい。ぶつかった上に、名前も思い出せないなんて失礼すぎるよ…誰だ…誰だ…えーっと…

しかし、女の子は私のアタフタしている様を気にするでもなく、

ほむら「あなたに大切な人はいる?その人たちを守りたいと思う?」

まどか「……うん。お母さんに、お父さん、たっくん、さやかちゃんに仁美ちゃん、クラスのみんなに和子先生」

まどか「みんな大切な人だし、みんな守りたいと思っているよ」

ほむら「…ならば、自分を犠牲にして誰かを助けようなんてもって思わないことね

ほむら「…後先考えない独善は、逆に守りたいものまで失う結果をもたらす」

まどか「………うん。何となく言いたいことはわかるけど…。」

ほむら「だからこそ、自分を大切にしないといけない。今と違う自分になりたいなんて、考えないことね。」

そう言って、私が来た方向と逆に歩いていった。そして去り際に、

ほむら「うまい話にはくれぐれもご用心を。親友の美樹さやかにも伝えておきなさい」

と言った。何がなんだか分からない
すぐに追いかけて行きたかったけど、できなかった
さやかちゃんと待ち合わせをしていたし、遠のいていく背中が私を拒絶している気がして…

さやかside

 あたしが公園についたとき、まどかはすでにいた

さやか「ごめーん。待ったー?」

まどか「ううん。まだ三分前じゃん。」

まどかは、なにやら考え事をしているようだった

さやか「どうしたの?」

まどか「うーん、あのね。うちの制服を着た女の子がここにいてね」

さやか「ふんふん」

まどか「私は覚えていないんだけど、あっちは私を知ってる感じだったの」

さやか「へー」

まどか「それでね、あなたに大切な人はいるか、その大切な人を守りたいかって聞いてきたの」

さやか「…へー」

まどか「それで、いるし、守りたいよって言ったら、自分を犠牲にするな、自分を大切にしろって」

さやか「…」

まどか「あとね、今と違う自分になろうなんて考えるなって」

まどか「それとうまい話には気をつけてって。あ、後、この話をさやかちゃんにも伝えてって」

さやか「…あたしのことも知ってたの?」

まどか「うん。私とさやかちゃんの名前、フルネームで知ってたよ」

さやか「…なのに、まどかは覚えてない?」

まどか「うん…どこで知り合ったのか…まったく見当もつかなくて…」

……ありえない分けがわからない。でも、そいつの目的は何?

胡散臭いけど間違ったことは言ってない…………多分

あたしとまどかの名前を知ってる
まどかの顔を知ってる。うちの生徒…
よくわからない忠告…
特に『今と違う自分になるな』?それじゃ、まるでまどかの――

あたしは頭を掻き毟った
わかんないや

さやか「まどか、あんまり知らないやつを信用しちゃだめだよ?」

まどか「わかってるよ。あ、もう時間だね。行こう、さやかちゃん。」

さやか「…うん」

…多分本当の意味ではわかってくれてない
嘘をつかれても、きっとこの子には嘘をつかなければならない理由があったんだ、なんて考える娘なんだ
まどかのいいところではあるんだけど、何度それで歯がゆい思いをしてきたことか…

まどか「……あ」

さやか「な、何?」

まどか「思い出した…かも?」

さやか「そいつのこと?」

まどか「うーん……なんていうか…」

さやか「何?」

まどか「…笑わない?」

さやか「…?…うん」

まどか「あのね、夢の中で会った…ような…」

さやか「」

まどか「…」

さやか「…まどか…あたしはあんたがどんな電波ちゃんでも、あたしは絶対に見捨てたりしないからね…」

まどか「もう!馬鹿にしないって言ったのに!」

さやか「してない、してない」

もう一人の電波には会いたくないな
どうせろくなことにならないから

行きつけの店へと移動する道すがら、バス停の前で、まどかが突然立ち止まった。目を見開いている
まどかが見ている方向に目を向けると、何かが浮いていた
動物?猫?…いや、一見すると猫みたいに見えるけど、すぐに違うとわかる。猫は浮かない

そして、その『何か』が、私たちに語りかけてきた
口は開いていない。それでも、『何か』が『喋っている』ことはわかる
そしてその内容は、あたしたちをさらに混乱させた

QB「僕はキュゥべえ。」

まどか「きゅう…べえ……?」

QB「僕と契約して、魔法少女になってよ!」

ほむらside

例のごとく多少無理やりだったが、夜中に窓の外から語りかけるよりはましなはずだ
ああ言っておけば、まどかは契約を即決することはない。素直な子なのだ
美樹さやかも愚かだが馬鹿ではない
これで、現段階であの二人にすべきことは、エイミーなどの直近の契約の原因を取り除くだけだ

そして次に向かう先は、巴マミの家
インキュベーダーを襲わない以上敵対する理由がない
手順さえきちんと踏めば、ある程度の協力体制は築けるはずだ

ワルプルギスまで持続するような強固な体制である必要はない
当面の敵対さえ避けられれば、今はそれでいい

今回はここまでです。第1話が半分くらい終わったところです

いろいろとご指摘ありがとうございます

お父さんお母さんは恥ずかしいミスでした
キャラの口調はこれからも精査していきたいと思います。にわかと言われても否定できないかもですが
ぶつかったときの反応は、自分としては普通のつもりでしたが、まどかの性格を考えればアレだったかもしれません

マミside

掃除機をかけているときに、インターホンが鳴った
掃除機を止めて、モニターを見ると…中学生かな?出ても問題ないか

マミ「どなたかしら?」

ほむら「暁美ほむら。あなたと同じ魔法少女」

マミ「まあ」

ほむら「今日から滝見原で活動をすることになった」

ほむら「滝見原で唯一の魔法少女であるあなたに一言いれたほうがいいかと思って」

マミ「それはわざわざご苦労様」

マミ「…」

マミ「じゃあ、普段は単独で魔女を狩り、一方がすでに魔女と交戦しているのを見つけた際は、協力してもよし」

マミ「そのときは手に入れたグリーフシードは半分ずつ使って分ける、というのはどうかしら?」

ほむら「…こちらとしては断る理由はないわね。……今日のところは失礼するわ。また、どこかで」

そういって、彼女は去っていった

…対応でよかったのかな
不躾だった気がする。あれじゃあ、あなたのことは信用しない、と言っているようなものじゃない…
佐倉さんとの一件以来ずいぶん臆病になっちゃったなあ…

QB「僕は妥当な対応だったと思うよ」

振り返ると、家の中にキュゥべえがいた。もう帰っていたんだ

マミ「どこに行っていたの?」

QB「勧誘以外にあるのかい?」

そういえばそうだ。久しく彼が勧誘していなかったので、頭に無かった

マミ「誰か面白い人でもいたの?」

QB「まあね。即答はしてもらえなかっけど」

マミ「へえ」

QB「それはそうと、さっきの子だけどね」

QB「彼女は得体がしれない」

マミ「…どういうこと?」

QB「僕は、彼女と契約した覚えが無いんだ。」

マミ「……あなたという固体が?それとも、あなたたち全体として、という意味?」

QB「両方だね」

マミ「あなたと契約する以外に、魔法少女になることはできる?」

QB「見たことは無いし、聞いたことも無い。考えたことも無かった」

しかし、彼女は間違いなく魔法少女だった
心臓付近から魔力がにじみ出ていたから
多分、心臓に疾患か何かがあり、魔力で強化しているのだろう

QB「僕は警戒しておいたほうがいいと思う。備えあれば憂いなしだよ」

マミ「でも、誰にでも秘密はあるものよ」

QB「こんな重大なことでもかい?」

マミ「私はそんなに重大だとは思わないわ。あなたにとっては重大でしょうけど」

QB「僕のアイデンティティが侵されるからね」

マミ「それに、彼女にそれほど近づくことにはならないわ」

マミ「さっきの提案は、ほとんど、不干渉主義をとろうと言ったようなものよ」

QB「だから、彼女が秘密を抱えていても問題ないって言うのかい?

QB「たまたまかち合ったときは協力するんだろう?」

マミ「だって彼女、結構な魔力を心臓の強化に使っているのよ?戦闘中に使える魔力はおのずと限られてくるはず」

マミ「正直、彼女が一人で魔女と戦うなんて、とても心配よ。できることならお手伝いしたい

マミ「何でもっと積極的に協力しようって言えなかったのか、後悔しているくらい」

QB「そんなこと言ったって、魔女と戦っているときに不意打ちを食らったら、ひとたまりも無いよ?」

QB「彼女は敵じゃないと断言できるのかい?」

マミ「そう言われたら困るけど、私は誰かに恨まれる覚えは無い……いえ、佐倉さんからは恨まれているでしょうね」

マミ「でも、彼女は人を差し向けるようなことはしないわ。」

……キュゥべえが警戒している
まったく不安が無いといえば嘘になる

魔法少女の多くが縄張りを作る目的は、グリーフシードの確保だけじゃない
命がけの戦いをするにおいて、異物は排除したいと思うのは自然なこと

一理あることは確かだけど、頭ごなしに決め付けてかかるわけにはいかない
怪しいそぶりを見せたら、そのときに考えればいい

QB「それに、見滝原のグリーフシードを狙っている可能性もある」

QB「マミを倒せば見滝原が手に入ると考えているかもしれない」

マミ「敵対する意思がないと言葉や態度で示している娘に、そこまで警戒心を持つのもかわいそうだと思うのよ」

マミ「私ってその気がなくても結構態度に出ちゃうじゃない?」

キュゥべえはなおも考えるそぶりを見せていたが、最終的には、

QB「まあ、確かにこちらから敵対を煽るようなことは避けたほうがいいかもしれないね」

と、折れてくれた。

マミ「ありがとう。心配してくれて」

QB「見滝原から君が消えることは、大きな損失だからね」

QB「ふふ。おだてたって、何もでないわよ」

ほむらside

自宅にて今日の行動について振り返る。おおむね予定通りだ

巴マミが自分からああ言ってくれたのは助かった
いきなりワルプルギスの夜が来ると伝えようかと考えていたが、よそ者の私がそれについての共闘を呼び掛けるのも変な話で
一体どう転ぶかわからなかったから

想定していたよりもドライな関係に落ち着いた気もするが、うまくいった部類だろう
インキュベーターと敵対しなければ、それほど私に対して不信感を持たないはず

しかし、いずれはやつらと敵対する
それまでに、彼女との信頼関係を築きておければベストだが…まぁこれは必須ではない

佐倉杏子と接触するのはその後。今回は慎重にいきたい
巴マミに不信感をもたれかねない行動は、極力さけよう

後は転入前にするべきことを済ませておけば――

QBside

エネルギー回収ノルマを一気に満たせるレベルの逸材を見つけたることができた
イレギュラーの介入はできるだけ排除したい。巴マミをぶつければ牽制になると思ったのだが…

巴マミとイレギュラーの関係は彼女が言うように不干渉協定の延長に過ぎず、流動的だ
この状態で佐倉杏子を送り込んでも、素直に敵対してくれるとは限らない
しばらくは様子を見て、勧誘のみに徹するべきか

今回はこれで終わりです。これで第1話完です

アニメ本編は通してみてます。ただ、SSから入ったクチなのでどうしてもそっちの影響を受けてるかもしれません
誤字脱字は…今回は多分大丈夫。…多分


第2話:何その秘密主義?

さやかside

まどかと世にも不思議な体験をした後、流れで解散になってしまい、あたしは一人で家に帰った
今、その体験について考えてる

まどかと私に謎の忠告をした電波女
その直後に現れた、魔法少女になれば願い事が叶うと語るキュゥべえ…

まどかはずいぶん心を動かされたみたいだったけど、即決はしなかった
直近で叶えたい願い事なんてないし、何より電波女の忠告が気になったからだと思う
それは私も同じ

『自分を犠牲にするな』『今と違う自分になりたいと考えるな』『うまい話にご用心』
――この忠告が『契約』を念頭においていることは明らか
だとすれば、電波女はあたしたちに魔法少女になって欲しくないと考えていることになる

…いや、あたしたちに、だけとも限らない
勧誘を受けることになる人みんなにこの話をしているのかもしれない

じゃあ、なぜ契約してほしくないのか
電波女にとって、魔法少女が増えて困ることでもあるの?

そうではなく、私たちのために言っているとすれば、それほどまでに、魔女との戦いは過酷ってこと?
あるいは、『契約』に裏があるのか。キュゥべえは嘘はつかないと本人(?)言ってたけど…

…今はまだわからない。大体あたしたちのことを知ってるってのも怪しい
はっきり言って信用できない

だけど…見せかけかもしれないけど、『忠告』って形をとっているのは…気になる
魔法少女、なんて聞いた後だと、あたしたちのことを知ってる不可思議な事情もあるんじゃないかとも、思えなくもない…んだよね

…どっちにしろ、もし本気であたしたちの契約を止めたいと電波女が考えているなら、もう一度現れるはず
あの忠告だけで契約を防げるとは思っていない…よね…?
…その女が再び現れたときにもう一度考えよう


――その時は、意外とすぐにやってきた


もう一度考える、くらいで済む話ならどんなによかったか…

三日後の朝のホームルームで、暁美ほむらって名前の転校生が紹介された
先生の隣に立っている転校生は、まどかと見つめ合っている
転校生は何かを決意しているかの表情で、まどかは驚きの表情で
これは…

休み時間になると、彼女の席の周りにクラスメイトが大挙して、彼女を質問攻めにした
女子は興味深深だし、男子も女子が来たとなったら放ってはおかない
…容姿も並以上ではあるし
彼女の隣の席のまどかは、人に押されるようにあたしの席まで逃れてきた

さやか「まどか、あれが昨日言ってた娘?」

まどか「うん。まさか転校生なんてね。びっくりしちゃった」

…話すなら、早いほうがいいんだろうな

昼休み

さやか「ごめんね。転校生と話があるんだ」

そう言って、クラスメイトから転校生を無理やり引きはがして屋上まで連れて行った
後ろから聞こえるブーイングは気にしない
まどかは置いてきた

仁美side

さやかさんがいきなり暁美さんを連れ出したことで、教室は騒然としていた
確かに周りをあまり顧みないところはあるけれど…
思えば自己紹介の時からさやかさんは暁美さんを睨んでいたような…知り合いなのかな

仁美「さやかさん、暁美さんと何かあったのでしょうか?古くからの知り合い…とか?」

まどか「うーん」

…そうか。まどかさんも何か知っているのか
そして、多分それは私に言うべきことではないと

…あるいはいつもの悪い癖なのかもしれない
すぐに思い込んで突っ走ってしまう…

追おうにももう二人がどこに向かったか見当もつかない
何かしでかした時にフォローできる心の準備くらいかな。今できることは

さやかside

ほむら「もう少し後先を考えて行動しなさい、美樹さやか」

ほむら「あなたの愚かで軽率な行動で、どれだけ周りが迷惑することになるか、少しは想像しなさい」

屋上に着くとすぐ転校生は言った。今の時間は屋上に誰もいない

さやか「あんた、あたしたちのことどこまで知ってんの?」

ほむら「一般論を述べたまでよ。今日が初対面でしょう?」

さやか「何で三日前の時点で、あたしたちの名前を知ってたわけ?」

ほむら「今は、ネットで何でもわかる時代よ?」

…ネットって、そこまで万能なの?

さやか「あの忠告は、魔法少女になるなってことでいいんだよね?」

ほむら「そうよ。まさか、契約なんてして無いでしょうね?」

さやか「してないよ。どっちも。…みんなにああいう話してるの?」

ほむら「いいえ、あなたたちだけよ」

まあ、うちのクラスに来たってことは、そう考えるのが普通なのかな
…特定の中学校の特定のクラスに狙って転校なんてできるものかわからないけど

さやか「何であたしたちに契約してほしくないの?」

ほむら「あなたたちが不幸になるから」

さやか「何であたしたちが不幸になるなんてわかるの?」

ほむら「大抵の魔法少女は、不幸になっている」

さやか「あんたは魔法少女?」

ほむら「そうよ」

さやか「何を隠しているの?」

ほむら「質問の意味がわからないわ」

さやか「『今の自分を変えようと思うな』」

さやか「まるで、まどかの悩みを見透かしてるみたいだね?」

ほむら「一般論よ。鹿目まどかはそんな悩みを持っているの?友人のプライバシーを安易に他人に話すことは、やめておいたほうがいいわ」

さやか「…『自分を犠牲にするな』」

さやか「魔法少女になるってことは、犠牲って言うほど酷いことなの?願い事、何でも叶えてくれるんでしょ?」

ほむら「限界はある。それに、契約をした時点では大抵自分の本当の願い事、自分の心の奥底に気づいていないものなのよ

ほむら「それに気づいてしまったら、後に残るのは後悔と絶望だけ」

さやか「あたしたちにそれが当てはまるって、どうして言えるの?あたしたちの悩みも、願いも、あんたは知らないでしょ?

さやか「理解できるはずがない。――理解できる人には、一体どんな事情があるんだろうね?」

ほむら「…さあ?私が何人かの魔法少女を見てきた感想を話しただけよ。一般論でもある」

さやか「…『うまい話しにはご用心』――あの契約のどこに用心をしろって言いたいの?何か裏があるの?」

ほむら「一般論を述べただけよ」

さやか「……一般論!一般論!一般論!何も教える気は無いってわけ!?信用できるわけないじゃない!」

ほむら「それでも、あなたは私の言葉を切り捨てられない。熱くなっているのがその証拠」

ほむら「何かを知っているような女が意味深な忠告を施した後に、未確認生物に、なんでも願い事を叶えるなんて突拍子もない提案をされる」

ほむら「その女が自分のクラスに転向してきたと考えれば、私から何かを聞き出さない限り、親友を契約させるわけにはいかない」

さやか「…親友、ね……どこまでわかってるんだか………」

さやか「……確かにそう。あたし一人だったら、もしかしたら契約に傾いてたかもしれない」

さやか「でも、まどかを巻き込めない。『自分を変える』なんてことのために、危ない目にあってほしくない」

さやか「そりゃ、まどかにとっては深刻な悩みなのかもしれないけど、それでも、ね」

さやか「あたしが契約したら、まどかを説得できなくなる」

さやか「特に、裏がありそうだから、なおさら」

転校生はそれを聞いて、ほっとしたような表情を浮かべた

……こいつは、あたしたちに何も教えずに、あたしたちの契約を止めることができたわけだ
でも、あたしだって何か聞きだしたい

さやか「…でもさあ、あんた何サマなの?何でも知ってますって態度、ムカつくんだよね。何その秘密主義?」

あたしは、転校生の胸倉をつかんで、体を壁に押し付けた
ポケットに入れといたボールペンを、ちょこっとだけ芯をだして首筋に押し付ける
そして、ニヤニヤしながら声を低くして、人を傷つけるのが趣味ですという感じを精いっぱい演出する

さやか「なんでわざわざ屋上に連れて来たかわかる?この時間だれもいないんだ」

さやか「もってこいなんだよ。こういう強迫めいたことするのに」

転校生の目を見る。冷めた目、どうでもいいという感じ
全部お見通しなのかな

さやか「…悪かったよ。あたしたちのために言ってるんだよね?ホントに腹立つけどさ」

転校生を放して、あたしは言葉だけの謝罪をした

ほむら「なれないことはするものじゃないわ。脅迫めいたこと、なんて本当にやったことあるのかしらね?」

さやか「…まどかには、『うまい話は気をつけろ』の方向で念を押しておく。あたしもそう簡単には契約しない」

ほむら「…そう」

さやか「だけど、まどかが本当に契約したいって思ったら止められない。それはあたしも同じ」

さやか「…あんたが知ってること話してくれるまではね」

ほむら「………それで問題ないわ」

さやか「あんたが話すときが、早く来ることを祈るよ」

そう言って私が教室に戻ろうとしたとき

ほむら「一つ聞きたい。…鹿目まどかは、私にどういう印象を持っていた?」

――からかってやろうとも思ったんだけど

ほむら「…」

答えを待つ表情はあまりに切実で

さやか「あたしは電波だし気味が悪いと思ったけど、まどかはそうは思わなかった」

さやか「親切に忠告をくれた女の子としか考えてないんじゃないかな」

嘘はつけなかった

ほむら「そう」

転校生は微笑んだ。始めてみる顔だ。…今なら…

さやか「まどかと長く接してれば、わかりそうなもんだけどね」

さやか「そんなこと考えるなんて、失礼ってもんでしょ」

ほむら「それもそうね。あの子は優しすぎるから。まぁそれが困ったところでも…………!!!!!!」

転校生が怒りの形相で睨み付けてきた。蒸気までだしてる
さっき軽く脅したときには少しの怒りも見せなかったっていうのに。よっぽど悔しいらしい
こんなもんわかってたけどね。まどかのことを話す表情を見てればわかる
バレてないとでも思ってたのかな…

『あたしたち』じゃなく、『まどか』か…。やっぱりまどかと接点があった。それも結構深いみたい
でも、まどかは知らないと言っていた。うーん…。忘れた、なんて考えにくいし…

…そういえば、寝言としか思えないようなことを言ってたっけ

さやか「まどかはあんたに夢で会ったって言ってた。心当たりある?」

ほむら「………あるといえばある。同じ夢を見ていたのかもしれない」

さやか「と、言うと?」

ほむら「…」

さやか「…それも話せないってこと?」

ほむら「…こればかりは、私にもよくわからない」

さやか「…そっか」

あたしは背伸びをした

さやか「ま、今はそれで良いや」

まどか「どうだった?」

五時間目の前の休み時間の前にまどかが聞いてきた。あいつは、いまだ質問攻め
成績優秀、運動神経抜群、そして美人。天はあいつに三つも与えた。えこひいきだ…

さやか「あたしたちのことを守りたいって感じだった。何にも教えてくれなかったけどね。あと、魔法少女だった」

さやか「たださ、何も教えずにただ守りますって言われてもねえ」

まどか「そっか」

さやか「まあ、契約ってやつはもうちょっと考えてもよさそうだね。願い事と、魔女と戦うことは、釣り合わない気がしないでもない」

さやか「何でも叶えてあげるって言われたらね。話がうますぎる」

まどか「どういうこと?」

さやか「裏があるのかもしれない」

まどか「キュゥべえは、嘘はつかないって言ってたけど」

さやか「それが本当かなんて確かめようがないじゃん

さやか「それに、もし全部正真正銘本当だとしたら、どうしてあの転校生は私たちの契約に口を挟んでくるの?」

さやか「願い事、何でも叶えてくれるって言うんだよ?」

まどか「でも、魔女と戦わなきゃいけなくなるんでしょ?」

さやか「そうだとしても、願い事によっちゃ安いこともあるんじゃない?」

さやか「それで戦うのがいやになって後悔するなんて、自業自得としか思えない」

さやか「楽じゃないことはわかってたはずだよ」

さやか「いや、魔女がどんなのか知らないけどさ」

さやか「少なくとも、そんなことを言う、あるいは言う可能性がある赤の他人を助けようなんて、あたしは考えない」

さやか「何かあるんだよ。きっと。あたしたちが知らない何かが」

明らかにまどかと接点がありそうだ、多分助けたいのはまどかの方、なんて言う気はない。あいつはそんなこと望んでない

まどか「うーん。そう言われてみると、そんな気もするかも…」

さやか「転校生の言ってることも一理あるよ。『うまい話には裏がある』もんだって」

まどか「だよねえ。ママもよく言ってるし」

さやか「まあ、あいつは、あたしたちに親切にも忠告してくれたみたいだし、今はあいつの忠告をおとなしく聞いておこうよ」

まどか「…そうだね。惹かれる話ではあるんだけど、焦るのもね」



…あたしは、後ろに何かを隠したまま近づいてくる奴を信用できない
隠しているのはナイフか爆弾もしれない

だからといって、あのキュゥべえも信用できない
裏があるんじゃないかと意識すれば、確かにに胡散臭い感じがするんだよね
転校生は、まどかを守りたいと考えているだろうことだけはわかるんだけど、キュゥべえの方は、考えてみれば目的すらよくわからない

――どちらも信用できないのだから、あたしがするべきことは現状維持

仁美side

昼休みが終わる10分前にさやかさんと暁美さんが教室に帰ってきた
様子を見るに大きなトラブルはなかったようだ。私は胸を撫で下ろす

その後、この休み時間暁美さんはまた質問攻め
さやかさんとまどかさんは教室の隅でひそひそ話
どうやら誰にも話を聞かれたくないようで、私もその中に含まれてるみたい

…暁美さんと二人の間に何かがあることは確定かな。三人が周りに知らせる気がない以上、静観する他ない

まぁ、事が済むか、深刻になれば話してくれるかもしれない
それまで待つことなんて何でもない
私たち中学生の抱えるトラブルが致命的になるなんて普通はない、というより、ありえないのだから

QBside

危惧していた通り、イレギュラーはターゲット及び美樹さやかとすでに接触していた
しかも契約の阻止に動いている
これより、イレギュラ――暁美ほむらは敵であると認識する

美樹さやかは、向こうを完全に信用したわけではないようだが、こちらのほうもかなり警戒している
ターゲット――鹿目まどかは契約への対応に関して、基本的には美樹さやかに従うようだ

ただの交渉では契約を結ぶことは難しくなったと判断していいだろう
これ以上静観していても、状況が好転する見込みは薄い


ともすれば、行動に移すべきか――

今回はこれで終了です。これにて第2話完です
これから色々立て込むので、投下が遅れるがちになるかもしれません

支援ありがとうございます
それでは投下します



第3話:こんな奴の思い通りになってたまるか

級友A「暁美さん。帰りながら一緒に買い物に行こ。この街のこと案内するよ」

ほむら「ごめんなさい。越してきたばかりで、いろいろやることがあるのよ」

級友B「そっかー。残念。また今度ね!」


仁美「私、今日はお稽古がありますので、これで失礼しますわ」

まどか「わかった。じゃあ、行こっか。さやかちゃん」

さやか「うん。帰ろっか」

まどかside

私たちは、帰り道の途中にあるCDショップに二人で入った
さやかちゃんのボーイフレンド(本人だけは否定するけど)の上条君にあげるクラシックのCDを選ぶため
バイオリニストである上条君の影響で、さやかちゃんはかなりクラシックにうるさい

とはいえ、私は興味がないので、いつものように演歌のコーナーで時間を潰す
新人さんは、勢いがあるけど安定感がないがない。ベテランさんは安定感はあるけど勢いが足りない
どっちもどっちかな、二人でデュエットでも出せばいいのに、なんて考えながら試聴していると

「助けて…」

って声が頭に響いてきた

まどか「キュゥべえ!?」

QB「助けて…」

何度問いかけても、助けて、としか言わない。大急ぎでさやかちゃんを呼びに行く

まどか「さやかちゃん!」

さやか「何!まどか、あんたもう少し静かに――」

まどか「キュゥべえが呼んでる!助けてって!」

さやか「へ?」

私とさやかちゃんは大慌てでCDショップから出る
もちろん、助けたいって気持ちはあるけど

………私は、変わりたい。いつも願ってた
それをかなえてくれるっていう存在が、目の前に現れた
それを失うわけにはいかない。たとえ今契約するつもりがないにしても

さやかちゃんも思うところがあるらしく、キュゥべえの危機を伝えるとついてきてくれた

声の方向に行くと、そこは使われてるのか定かではない倉庫みたいな場所
キュゥべえは、そこに血まみれで倒れていた

まどか「キュゥべえ!大丈夫!?」

と、あたしは駆け寄った
そして私がキュゥべえを抱えた瞬間、悪寒が走るとともに辺りの風景が一変して――
――なぜかさやかちゃんは、キュゥべえを睨み付けていた

まどか「これ…何?」

あたり一面に前衛的な空間が広がる。なんて言えばいいんだろう、これは

さやか「…結界ってやつじゃないかな」

まどか「え!?じゃあ、近くに魔女がいるの!?」

さやか「…多分。こいつの話が正しければ…」

まどか「そんな!」

このままじゃ、みんな死んじゃう!

まどか「起きてキュゥべえ!お願い!今すぐ私とけいや――」

さやか「まどか!」

まどか「何!?」

さやか「今はだめ!」

まどか「何で!?このままじゃ――」

さやか「まだ使い魔ってやつすら出てない!お願いだからあたしの言うこと聞いて!一生のお願いだから!」

まどか「今その一生が終わりつつあるんだけど!?」

さやかside

――あたしはまどかの腕に抱えられたキュゥべえをにらみつける

転校生が現れた直後にこいつが出てくる――ギリギリありえる。どっちも怪しいけど
こいつに呼び出されたら結界に巻き込まれる――ありえない

――この状況はこいつのせいだ!

迂闊だった
まどかを何としても止めなきゃいけなかった
あたしはまどかよりこいつのこと疑ってたってのに…

…時間さえ稼げば助けが来るかもしれない
もし間に合わなければ――

この命を使ってでも、まどかを守る
あたしがやられた後に、まだ助けが来ないなら、そのときまどかが契約すればいい
何もできないまま、まどかを契約させる訳には行かない
あたしも契約してやらない
こんな奴の思い通りになってたまるか!

………転校生の顔が頭に浮かんだ
まどかは別にひいてないって私が伝えたときの、あの安堵した表情
あいつがまどかを、何かから守ろうとしているってことだけはわかる
このまま為す術なくまどかを契約させては、あいつに会わす顔がない――

まどかside

さやかちゃんと言い争っているうちに、髭を生やしたおぞましい何かが現れた
使い魔か魔女かはわからない
わかるのは、私たちの命がいよいよ危ないってことだけ

さやかちゃんはなぜか止めるけど、もう契約するしか助かる道はないと思う

――大丈夫だよ、さやかちゃん。契約するのは私だから
さやかちゃんは、契約には裏があるかもって気にしてたよね
大丈夫。奇跡の報いを受けるのは私だから
どんな不幸が舞い降りても、私は全部受け止めるから

本当にごめんね…

心の中でそうお詫びをして、私は口を開いた

まどか「――あ――――え―――!?」

………恐怖で声が出なかった。情けない…

髭を生やした何かはもうすぐそばまで来ている
気がついたら私はへたり込んでいた
…腰が抜けた。立つことすらできない。もうだめだ…

さやかちゃんは、私が立てないと見て取ると、私をかばうように髭の何かの前に立ちはだかった
戦う手段なんて持ってないはずなのに…

私は本当にだめだ。いつもさやかちゃんに守られてばかり…何のとりえもない…
そもそもこんなことになったのも、私のせいみたいなものじゃない…
このままじゃ、私のせいで…

そして、いよいよさやかちゃんがやられてしまうと思った瞬間、髭の何かの後ろに誰かが現れた気がした
その直後、いきなりさやかちゃんが、私を下にして覆いかぶさるように倒れこんだ

そして――銃の乱射音が聞こえた

気がつくと、あの得体の知れない何かはすでに消えていた
銃声がしたほうに目を向けると、銃を構えた、魔法少女風のコスプレをしているほむらちゃんが立っていた
凄まじい怒りの形相で

…そうか。さやかちゃんは、ほむらちゃんの銃から私を守ろうとしてくれたんだ
実際のところ、さやかちゃんがそのままでも当たらなかっただろうと、今は知ってるんだけど、あの時わかるはずもない

さやかちゃんが、青ざめた顔でニヤリと笑って言った

さやか「越してきたばかりだからすることって、魔法少女の仕事だったの?」

ほむら「そうよ。引越しすると、魔法少女って本当に忙しくなるの。」

ああ、そうだ。ほむらちゃんは魔法少女だった
魔法少女って本当に大変そうだ
引越しすると、こんなことが多くなるんだ…

QBside

美樹さやか、君は実に興味深い
これほどの状況下で契約を拒んだケースは、かなり珍しい
どうやら君のことも、鹿目まどかとの契約の障害の一つにカウントした方がよさそうだ
君もなかなかの素質があるのというのに、実にもったいない



第4話:私は今、さやかちゃんと一緒にいて、それを感じる。苛まれる

ほむらside

すこしたって、結界が消えた。魔女の居たほうから、巴マミが私たちのもとへと駆けて来る

マミ「一体どうしたの?」

さやか「…結界内に入ったら、すでにあなたは交戦中で、この子達が使い魔に襲われていた」

マミ「…それは助かったわ。私はとても手が回らなかったから。どうもありがとう」

ほむら「あなただって、私が戦ってる時に加勢してくれたこともあるじゃない?お互いさまよ」

マミ「そうね…ちょっとごめんなさい。貸してもらえるかしら?」

マミ「あ、はい。」

インキュベーターを受け取った巴マミは回復魔法を施した
本当に見事なものだ。こいつにはもったいない

マミ「…ねえ、キュゥべえ。何があったの?」

QB「怪我をしたから助けを求めたんだ」

QB「魔法少女用の回線でテレパシーを送ったんだけど、資質を持つ彼女――まどかにまで届いてしまった」

QB「彼女が慌てて来たところで、結界に巻き込まれてしまったんだ」

…迂闊だった。インキュベーダーを襲いさえしなければ、まどかたちがここの結界に巻き込まれることはないと思っていた
まさか、ここまで強引な手を使ってくるとは…
思い直して来てみて正解だった

………白々しいこいつの言い訳を看破してやりたい

何で怪我をしたのか
何で無限のストックがあるというのに、仕事中であろう魔法少女に助けを求めるなんてことをしたのか
余裕がなかったとして、回線から一般人をシャットアウトするくらいもできなかったのか
結界の反応は感知できていたはずだ。近づいてくる一般人に離れろくらいも言えなかったのか

だが、いくらこいつを追求しても、嘘とはいえないごまかしではぐらかして来るだけだ
そうして、巴マミと美樹さやかに不信感をもたれるだけで終わってしまう
いつもそうだ。今は何もいえない

巴マミからそれ以上の質問はなかった。彼女はインキュベーダーに疑念を持っていない。当然だ

観客A「スゴいブレイクダンスだったな!」

観客B「あれだけ派手な動きしてるのに何でパンツが見えないんだ!?」


風見野の街中でブレイクダンスを披露してたのはなんとモモタロスが追っている暁美ほむら本人であった。
ほむらは紫の瞳を輝かし、紫の染みがついた茶色のキャップを被り、
顔の左半分を覆う紫色のメッシュが入ったウェーブのかかった髪をしていた。

ほむら(?)「なんかここで踊るの飽きた…他へ行こ!」

ほむら(ちょっと待ちなさい!?私の身体を返して!私にはやらなきゃいけない事が…)

そう言い残し、ほむらはそのまま夜の街へと消えていった…

まどか「あの、あなたも、魔法少女なんですか?」

マミ「ええ、そうよ。自己紹介がまだだったわね」

マミ「私は巴マミ。あなたたちと同じ見滝原中の3年生よ」

まどか「ありがとうございます、マミさん、ほむらちゃん…あと、ごめんね、さやかちゃん。ありがとう」

さやか「え?いやそんな。まどかが悪いわけじゃないよ」

ほむら「ええ、助かったんだからいいじゃない。誰が悪いって話ではないわ」

そう、悪いのは、「誰」で指される「人」ではない

マミ「…キュゥべえこの娘が、前に話していた、『面白い子』ね?」

QB「そうだよ。かなりの資質なんだ」

マミ「そうなんだ。…キュゥべえに選ばれた以上、説明が必要ね。今から私の家に来れる?」

まどか「あ…そうですね。私は大丈夫です」

さやか「こっちも、取り立てて予定はないかな」

マミ「よかった」

マミ「あなたも来てくれるかしら?」

巴マミが私に問う
正直驚いたが、敵対していないとなれば共に説明するよう求めるのは道理か

…巴マミは慎重に考えろとは言うが、二人が契約することに関してはむしろ積極的だ
否定的な意見を交えられると言うのなら、断る理由はない

ほむら「むしろ、私の方からお願いするわ」

さやかside

マミさんの自宅へ向かう途中、マミさんとまどかとキュゥべえは、私と恭介の話で盛り上がっていた

年頃の女の子二人(と一匹)がガールズ(?)トークで盛り上がっては、いくら私が否定したところで、無視されるだけというもの

今やプロポーズはどんな言葉にするかだの
それなら契約で世界史史上最もかっこいいものを言わせられるだの
そんなの意味ないでしょというマミさんの真っ当な突っ込みだの
僕にはわからないという、やはり人外という返しだの

まったく…恭介と私が釣り合う訳ないじゃない
怪我さえ治れば高校入学前に世界デビューしたっておかしくない奴なんだ。成績だってかなり良い

住む世界が違う。仁美あたりの才色兼備のお嬢様がお似合いだよ――

ほむら「さっきのことなんだけど」

まどかとマミさんとキュゥべえのガールズ(?)トークを、なぜか後ろから切なそうな顔で聞いてた転校生が話しかけてきた
私もまどかたちの話に参加する気はさらさらなかったので、私は転校生の隣を歩いていた

ほむら「何であそこまでしたの?」

さやか「何が?」

ほむら「私が言える筋合いではないけれど、あの状況で契約もしないで使い魔の前に立ちはだかるなんて思いもしなかった」

ほむら「あなたにとってあいつと契約することは、死よりも恐ろしいことなの?何の情報も持っていないのに」

さやか「あたしが全部知ってたら、どうしてたかな?」

ほむら「…すべての情報を知っていたとしても、あの状況ならほとんどの人が契約するでしょうね」

ほむら「私だって、多分契約していたわ。」

さやか「…頭に血が上っちゃってさ。まともな判断ができなかったのかな」

さやか「あいつの思い通りになってたまるかってので、頭がいっぱいだったんだ」

ほむら「…まどかを守ってくれたことには礼を言うわ

ほむら「だけど、自分の命を粗末にすることはやめて欲しい。もっと後先を考えて行動しろとい言ったはずよ」

さやか「そうだね。転校生が助けに来なければ、あたしは死んでた」

さやか「まどかにもとんでもないものを見せるところだったね。本末転倒だよ」

さやか「………ありがと」

ほむら「……………」

さやか「ねえ?」

ほむら「…何?」

さやか「今度は自分の命を大切にするために、あんたが知っていることを全部教えて欲しいんだけど」

ほむら「ダメ」

さやか「ケチ」

今回はここで終了です。まだ第4話途中です

一応断っておきますと、このSSはエヴァの大月エグゼクティブディレクターの

エヴァとヱヴァでシンジはなんら変わっていない。変わったのは周りの人たちの対応と状況
中学生くらいだとそういう風に周りの影響で全く違っているかに見える、という趣旨の発言を参考にしています

即ち、さやかちゃんがスーパー気味になってるのは、本編でコスプレ通り魔から機転を利かせて逃げたり、変に鋭かったり
初戦で魔女を痛快に倒したりするわけですから、「状況が変わればこれくらいできたりしないかなぁ…」
という>>1の希望的観測に基づいています

だから、逆に、Qでハチャメチャすぎる状況がシンジを追い詰めて、ああ、やっぱり仕方ないけど変わってないと思わせたが如く――
になっていくかもしれません

ゆえに、>>1の都合で本編の時系列、イベントの順番が変わることもあります
イレギュラーとして流して頂ければ幸いです

長文失礼しました。特にエヴァを知らない人には申し訳なかったです。それでは投下します

マミさんの家で、お手製のお菓子と紅茶を食べながら、マミさんによる魔法少女講座が聞かれた
契約の概要はキュゥべえの言っていたのとそっくり同じものだった

何かを隠している様子はない。というか、そんな人に見えない
…となると、マミさんもキュゥべえから聞かされていないのか、転校生の思わせぶりな態度はすべてフェイクなのか…

…いや、転校生が何から何まで嘘をついているとは思えない
あいつは何か契約、あるいは魔法少女について重大な何かを知っている。多分、間違いない

…マミさんは、何回か転校生と一緒に魔女を倒したことがあるって言ってた
何でマミさんにも教えていないんだろう?
…同業者にも教えられない秘密って、一体…

じゃあ、キュゥべえが語るのの焼き直しで退屈かと言えばそんなことはない
未知の世界のことを実体験を伴って語られると、とても魅力的に移る
魔法少女の話を聞いてからあれやこれや想像してた光景が目の前に広がっているように感じられるってわけ

…想像せずにはいられない
腕が私の願いによって治った恭介が世界に羽ばたく
あいつはバイオリンで世界中の人々を癒し、励まし、勇気を与える
あたしは人知れず、魔女に狙われた人々を救う正義の味方になる、なんて甘美で素敵でありふれたストーリーを

いや、もちろん自分のために使わずに後悔しないか、とかも考えるけど、あくまで思い浮かべるのは理想だからね
やっぱり綺麗なビジョンを思い浮かべちゃう

もちろんキュゥべえは胡散臭く、あたしが見るところ極悪野郎なんだけど
マミさんも転校生も魔法少女としてやっていけてるじゃないかと都合のいい言い訳さえ思いつく

つまるところ転校生の、キュゥべえの話のリメイクであるマミさんの話の焼き直し(なんかデメリットを強調してた気がする)なんて頭に入ってこない
そういうわけで、マミさんが魔法少女体験ツアーをやらないかと提案してきたときの答えが

まどか「はい!」
さやか「喜んで!」

となるのも仕方ないことだと思うんだ

転校生は呆れをはらんだ目つきであたしを睨む
構うか。あんたが何も教えないのが悪い。てか、その眼をまどかにも向けろ

転校生としては許容できる話ではないらしく

ほむら「巴マミ、ちょっと来て」

とマミさんを伴って別室へと移動した。

ほむらside

ほむら「私は反対よ」

マミ「そこまで問題あることかしら?」

マミ「…仮に私が力を過信していたとしても、あなたがいれば万が一も起こらないと思うんだけど」

ほむら「…その体験ツアーは、魔法少女になることを念頭に置いているんでしょう?」

ほむら「魔法少女なんて、それしか他に方法がない人だけがなるべきものよ」

マミ「概ね同意するけど、あの二人が魔法少女になるべきかどうかは、あの二人が決めることよ?」

マミ「まぁあの二人にはよくよく考えるように言うつもりだし、あなたも思うところを言えばいいんじゃないかしら?」

ほむら「…それでも、あの二人を結界に連れ込むなんて、許せることではないわ」

マミ(…ああ、そっか。二人はこの娘とクラスメイトだっけ)

マミ(転校して初めてできた友達なんだ。…うん。その気持ちよくわかる)

マミ「…クラスメイトだったわね

マミ「…ごめんなさい。やっぱり心配よね。…もう一度あの二人と話してみましょうか」

………考えろ……ここで二人にやめると言って納得するか?
そうは思えないし、何より巴マミもあちら側だ
私一人強行に危険だといっても、私一人除外されるだけだ。いつもそう
ならば――

ほむら「…私たちのうち常に一人はあの二人について防御に専念

ほむら「もう一人は魔女に当たる。もしものときは、二人についた方が、もう一人を切り捨てて結界から出る…というのは?」

…妥協案を提示するしかない
…あの二人がツアーを機に魔法少女への憧れを強くするのも問題なのだが、その問題は先送りせざるを得ない
三人との関係が切れさえしなければ、解決できる可能性も残る

マミ「…ええ。それくらい徹底するべきね。それでいきましょう

マミ「これからよろしくね」

さやかside

まどかとマミさんの家を出る。明日から魔女退治見学ツアーが始まることになった
まあそれは心躍る話ではあるんだけど、それはともかく、マミさんの家に向かう途中から、違和感があった

さやか「まどか、なんか今日変だよ?今日って言うか、結界から出たときから」

さやか「空元気っていうか、無理してるっていうか…」

さやか「あんなに人の恋バナで盛り上がったりするとこ初めて見たよ」

まどか「…私ってホントだめだなって。私、自分を変えたい」

さやか「…知ってた?あたしはまどかが大好きなんだ。まどかに変わってほしくない」

まどか「…私にそんな価値ないよ」

さやか「…まあ、わかんないでもないよ。そういうの」

さやか「あたしも恭介と一緒にいると、そんな気持ちになることがある」

さやか「最近特に思うんだ。こいつと対等に話せる時間も、後ほんの少ししか残ってないんだって」

さやか「こいつとは住む世界が違う。もうすぐ、手の届かないところに行っちゃうんだって」

さやか「だけどさ、あいつみたいに選ばれた人間なんてそういないんだよ」

さやか「多分みんな思ってることなんだって。あたしたちまだ中学生なんだからさ、先のことなんて考えないでもっと――」

まどか「さやかちゃんの惚気話を聞きたいんじゃない」

まどか「そんなの、どうにでもなることじゃない。明日にでも告白すれば?」

さやか「…いや、まどかたちの中では、あたしたちはそういう風になってんのかもしれないけど」

さやか「あたしと恭介の間には、まどかが想像できないような高い壁が――」

まどか「言ったよね?今はそんな話がしたいんじゃない」

…まどか、ちょっと怖い
そういえば、まどかが本気で怒ってるとこ、見たことない
溜め込んでるのかな…。無神経だったかな…

さやか「…ごめん…あたし、まどかの気持ちぜんぜん考えてなかったね」

さやか「そりゃそうだよね。まどかとあたしがそっくり同じ悩みを抱えてる訳ないもんね」

さやか「自分と同じ悩みだって、勝手に決め付けてた。本当にごめん…」

まどか「…私もなんか意地になってた。ごめん。そういうんじゃなくて」

まどか「………えっと、なんていうか――さやかちゃんは、上条君といると、無力感を感じることがあるってことで、いいんだよね?」

さやか「…無力感?無力感…。無力感かあ。…ああ、そうか。これは無力感って言うのか…」

あたしがぶつぶつと呟いていたら、まどかは、深呼吸をして、言った


「私は 今 さやかちゃんと 一緒にいて それを 感じる 苛まれる」


さやか「…『無力感』を?」

まどか「うん」

今、あたしは、確実に『キョトン』としている
…さっきは、わからないのにわかった振りをして、まどかを怒らせてしまった
今は話を聞くべきなんだろう

まどか「私は、さやかちゃんがいないと、何もできない」

…もう限界かもしれない

まどか「さやかちゃんはいつも私を助けてくれるよね」

さやか「お互い様だよ」

まどか「私が、さやかちゃんを助けてあげたことなんてあったっけ?」

さやか「三日前にノート貸してくれたし、一昨日課題手伝ってくれたし、夏休みの宿題だって――」

まどか「そんなことしかないよね?」

さやか「…あたしは、まどかが大それたことあたしにしなくたって、友達だと思ってる」

さやか「いつも助けられてる」

まどか「…」

さやか「こっちだって、似たようなもんじゃん。あたしがまどかを『助けた』って、どんなこと?」

まどか「私もついさっきまでは、私がされていることは、私がしていることと似たようなものだと思ってた」

まどか「ううん、気づいていない振りをしてたんだ」

さやか「結界に入るまではってこと?」

まどか「うん…さやかちゃん、私のこと使い魔から守ってくれたよね?」

さやか「いや、それは転校生だよ」

まどか「でも、私が動けないのを見て、使い魔の前に立ちはだかってくれた」

まどか「ほむらちゃんが銃を撃つときも、私をかばってくれた」

さやか「あんなの何の役にも――」

まどか「そのとき気づいたんだ」

まどか「私が数学の宿題に頭を悩ませてるとき、さやかちゃん一緒に徹夜で一緒考えてくれたよね」

まどか「結局1ページも進まなかったけど」

まどか「私がいじめられたとき、クラスのみんなに喧嘩を売って、大騒ぎになって、先生に一緒に目をつけられたこともあったよね」

まどか「私が犬に追いかけられたとき犬と戦って、犬にボロボロにされたこともあった」

まどか「――さやかちゃん、私のため、ううん、私だけじゃなくて、みんなのために、できもしないことを、いつもしようとしてくれるよね」

さやか「…この流れで貶されるとは思わなかったよ」

まどか「違う」

まどかは決然とした表情をして言った

まどか「私はいつも躊躇ってばかりいる。何も決められない」

まどか「私は、さやかちゃんの勇敢さに憧れてた。いつも、さやかちゃんみたいになりたいって思ってた」

まどか「あの時気づいたんだ」

まどか「『自分を変えたい』って、さやかちゃんみたいになりたいってことだったんだって」

………まどかは真剣だ。あたしも真剣に答えなくちゃいけない

さやか「あたしは、今まどかが言ったようなことをしたとき、大体、後から後悔してる」

まどか「…え?」

さやか「あたしはいつもみんなに迷惑をかけてる。特にまどかに」

さやか「意地になって徹夜で宿題するのにつき合わせたとき、あたしたちは二人して授業ほとんど効かずに暴睡してた」

さやか「テスト前の大事な授業だったってのに」

さやか「まどかがクラスのみんなと微妙だった時期に、あたしが勝手に大暴れして、まどかまで先生に怒られた」

さやか「あげく仁美を巻き込んで長い間クラスで孤立した」

さやか「犬にやられた時だって、まどか、お見舞いに来てくれたけど、お父さんにひどいこといわれたんだよね」

さやか「後から聞いた。ごめんね。お父さん、あの時本当に疲れてたから」

さやか「狂犬病発症するかの瀬戸際だったらしくてさ」

さやか「今日だって、あたしが勝手起こして2人で死にかけた。転校生が来なかったら共倒れだったかもしれない」

さやか「転校生にも言われたよ。もっと考えて行動しろって」

まどか「違うよ!そんなんじゃない!」

さやか「違わないよ。あたしは後先考えないで行動して、いろんな人に迷惑をかけてきた」

さやか「まどかみたいに慎重に、仁美みたいに思慮深くなりたいって、いつも思ってた」

まどか「…私は臆病なだけだよ」

さやか「あたしは無鉄砲なだけ」

さやまど「…」

さやか「…まどか」

まどか「何?」

さやか「あたしたち、変なとこで似てて、へんなとこで正反対だね」

まどか「…うん」

さやか「足りないところを、3人で補っていけたらいいね。仁美も一緒にさ」

まどか「…できるかな?」

さやか「うーん。まどかがその気になってくれないとできないかな」

まどか「…」

まどか「そうだね……うん。私、頑張る」

まどか「あたしが頑張らないと、さやかちゃん、勝手に契約してボロボロになっちゃいそうだもんね!」

さやか「…おいこら。なんて縁起でもないことを」

ほむらside

翌日から魔女退治の見学がスタートした
門限がないとはいえそう遅くまで平日に連れ出すことはできないので、特に休日に集中的に戦闘を行った

…失敗だったかもしれない
戦闘を重ねる度に二人の魔法少女への憧れは深まっていった
巴マミの、優雅で圧倒的な戦闘はやはり刺激的過ぎた

役割分担では、必ず私が二人につき、彼女が魔女に当たるという方式で戦ってきた
合理的ではある。彼女は何年もの間、この魔境見滝原を一人で守ってきた、多分現役では最強の魔法少女なのだ
後方支援も期待できるとあっては、そう苦戦することもない

もちろん、それは想定内であり、誰でもこんな風にはできないのだと
私が無様に敗北するところでも見せ付けてやろうと、たびたび役割の交換を申し出たのだが
そのたび、先輩に譲って、の一点張りで聞いてくれなかった

余談だが、面倒くさいから私はそれなりのベテランということにしてある
すなわち、この先輩は学年的な先輩という意味だ
…魔法少女の戦闘において、1年先輩だから何だというんだ

…どうやら、私の心臓のことをとっくに見抜いていたらしい
心配で気が気でなかった、今回、こんな形ではあるが協力体制を取れてほっとしている、とまで言われた
大体、彼女が私を切り捨てて逃げるなんて役割につくはずがなかった
どうしてそのことに思い至らなかったのか…

それに、もし私が苦戦しているところを見せても、インキュベーターが

『君たちの素質は彼女をはるかに凌駕する』

『まどかは歴代でも最強の魔法少女になれるし、さやかだって努力を重ねればマミに肩を並べられるかもしれない』

なんていうに決まっている
事実なのだから反論のしようがない。巴マミだって肯定する

幾分私が傷つかないようにオブラートに包んでくれるだろうが、それはより一層惨めかもしれない

だが、今回の時間軸において、美樹さやかは明らかにインキュベーターに不信感を持っている
具体的な願いを持っていない、ただ魔法少女に憧れているだけのまどかが契約を交わすことを、現段階では止めるはずだ
まして、憧れる理由が、『何もできない自分を変えたい』ならなおさら
まどかも、友人の忠告を無視できるような子ではない

しかし、今はまだインキュベーターへの不信感が勝っているが、いつ逆転するかわかったものではない
巴マミが体験ツアーを提案した時は驚くほど目を輝かせていた
かなり危ういように思える

まどかは、私が見る限り精神的に安定しており、当面は契約しないように思える
やはり、問題は美樹さやか本人
上条恭介への医者からの宣告がターニングポイントとなるだろう
そろそろ、その宣告がきてもおかしくない

美樹さやかは、過去の時間軸では、ソウルジェムが魂そのものであるという事実にショックを受けていた
…知っていれば、契約しないのだろうか?
…わからない。今まで彼女と向き合ってこなかった

さすがに、魔女化の事実を知れば契約しないだろう
…しかし…魔女化を話したとして信じてくれるだろうか?
こればかりは証明のしようがない。インキュベーターを使うしかないが、あれははぐらかそうと決めたらとことんはぐらかす

それに、彼女の口から巴マミに伝わる可能性もある
巴マミの耳には、適切なタイミングで入れなくてはならない
というか、適切なタイミングがくるのか。できれば永遠に来てほしくない

――ならば、魂の話だけ、美樹さやかにする。それしかない
彼女の口から巴マミに伝わる可能性もあるが…それだけなら彼女も耐えられる…と思う

魂ならば濁り切ったらどうなるのか、となるかもしれないが、その時は魔法少女として死を迎える、とでも言えば大丈夫ではないだろうか
別段不自然な話ではない

…インキュベーターみたいな手だ、と思うと自己嫌悪したくなるが

QBside

鹿目まどかの悩みが解消されつつあるのは気がかりだが、それでも、二人の魔法少女への憧れが強くなっていることは実に好ましい
彼女たちとの交渉において、今、悩みがないということはたいした問題ではない

暁美ほむらにはわかっていない
資質を持つ者は、自分の人生を選ぶことはできないということを
逃れられないレールに拘束される対価として、才能を受け取っているのだから
それが、因果というものだ




第5話:契約すれば問題ないよね?


ほむら「――だから、ソウルジェムは私たちの魂そのものなの」

ほむら「これが壊れれば、私たちは死ぬというわけ」

ほむら「ソウルジェムがソフトウェア、抜け殻の体がハードウェアと言ったところかしら」

さやか「」

…いきなり朝の6時に校舎裏に呼びだされて、転校生が、いきなり今まで隠していたことをあっけらかんと打ち明けた
…何が起こってんだろ?頭が追いつかない…これは絶対眠気のせいじゃない

ほむら「ゾンビみたいでしょ」

さやか「いや、そんな…」

思っちゃってたよ…。あたし、最低だ…

ほむら「いいのよ。私にとっては、もはやどうでもいいことだから」

さやか「そんな…」

ほむら「今から試すわよ」

さやか「……は?」

ほむら「これが体から100m以上離れると、一時的に死ぬの」

ほむら「でも大丈夫、体にくっ付ければちゃんと再起動するから」

ほむら「これを魔力も使って遠くに投げるから、死んだことを確認してからとってきて」

さやか「いや、あたしが持って歩くとか、もっと安全な方法があるじゃない!何でそんな無茶するのよ!」

ほむら「あなた、言うこと聞く?」

…聞かないだろうなあ。死ぬとなっては

さやか「いや、あの………ちゃんと生き返る保障って、あるの?」

ほむら「そういえばよくわからないわ。インキュベーター!」

QB「呼んだかい?」

さやか「え、こいつ、いんきゅべーたーって言うの?」

ほむら(あれ…これ教えたらバレる可能性も…いや、美樹さやかだから一回くらいは大丈夫ね)

ほむら「忘れなさい。とにかく!聞いていたでしょう?100%生き返る保障はあるのかしら?」

QB「すぐに戻せば、理論上は大丈夫なはずだけど、実際に魔法少女とソウルジェムが100m離れたことはほとんどない。ちょっと自信がないな」

ほむら「使えないわね。まあいいわ。行くわよ!」

さやか「ちょっと待って…。今分かった」

さやか「あんた、あの体育の好成績、魔力を使っているな!?」

さやか「こんなちっこいの、あの運動神経なら、魔力を込めるまでもなく100m投げられるもん!」

ほむら「ええ。そうよ。なにか問題ある?」

さやか「大有りだよ!ずるじゃん!」

ほむら「心臓病で病み上がりの女の子に、健康な人と同じカリキュラムを課す腐った教育制度が悪いのよ!」

ほむら「体育の度に準備運動で貧血なんてやってられないわ!」

ほむら「そしてそんなことは今どうでもいい!とにかくやるわよ!」

さやか「いや、もうわかったから!いいよ、もう!キュゥべえだって認めてるし!」

ほむら「実際に見せておかないと、私の気がすまないの」

ほむら「あなたにショッキングな光景を見せて、契約への恐怖心を与えておかないと」

さやか「それをあたしに話したら、意味なくない!?絶対テンションおかしいよ!怖いんでしょ!?やめときなって――」

ほむら「うるさい!」

叫ぶと同時に、転校生が『魂』を投げた
一瞬間をおいて体が崩れ落ちる
急いで駆け寄って脈と呼吸を調べると…本当にない
しかも、みるみる体が冷たくなっていく

QB「これは死んでいるね。急いだほうがいいよ」

さやか「わかってる!」

あたしは大急ぎでソウルジェムをとってきて、転校生に駆け寄った
とりあえず胸においてみる。ピクリ、と動いたかと思うと、ガバッて起きた
ソウルジェムを胸に当ててブルブル震えてる。本当に怖かったんだ…

ほむら「…これでわかったでしょう。私たちはゾンビなの。ゾンビになりたくなかったら、契約なんてしないことね」

…何でこんなにゾンビを強調するんだろう…
ゾンビって転校生…が言うたびに、胸がズキズキする…

さやか「やめてよ…そんなこと言わないで…」

さやか「あたし、転校生のこと――ほむらのこと、そんな風に思いたくない…」

ほむら「言ったでしょう?私は本当に気にしていないの」

ほむら「まどかさえ守れれば、ゾンビになろうが死人になろうが、たいした問題じゃないわ」

…一体、まどかとほむらの間に、何があったって言うんだろう…」

さやか「この話、マミさんやまどかには…」

ほむら「していない。特に巴マミの耳には私の口からタイミングを選んで入れたい。どうか黙っていて」

さやか「…わかった。正直口は軽いほうだけどさ。これは流石に黙りとおして見せる」

さやか「任せるからね」

マミさん、知らないで契約したんだとしたら、相当ショック受けるだろうなぁ…
あたしにどうこうできる話じゃない。やはり魔法少女にお任せするしかないか

まどかじゃなくて、あたしにこの話をしたってことは、あたしのほうが契約する可能性があるって思ったのかな?
まどかは最近落ち着いてる感じだし

…あれ?…ソウルジェムが魂――命だって言うのなら
――濁りきったらたら魔法を使えなくなるってキュゥべえは言っていたけど
それだけじゃすまないんじゃ…

――いや、ほむらがここまで体を張ってくれたんだ
今は、これ以上の追及はよそう
それに、この事実だけでも契約を拒む理由には充分だ

恭介の力になれないのは残念だけど、時間がかかっても治りさえすれば、あいつはすぐにでも世界に行ける
本当の天才なんだ。契約の力になんか、頼らないほうがいいのかもしれない


―――と、思えたのは、本当にまだ何も知らなかったからでしかなく…

これにて投下終了です。まだ第5話途中です

投下します

その放課後、いつものように恭介のお見舞いに行ったんだけど…

恭介「もうほっといてくれないかな…。もうだめなんだ…」

さやか「どうしたのよー。そんな落ち込んじゃって!」

さやか「あー、いくらVIP待遇とは言え、病室で一人閉じこもってたらねー」

さやか「今度外出許可とろうよ!公園前にクレープ屋ができてさ、これがおいしいんだよね!なんと言ってもチョコクレープが――」

恭介「ほっといてくれないかな!!」

さやか「!……恭介…?」

恭介「指、もうだめなんだって…。先生が…」

さやか「そんな…。だって、まだリハビリ初めてちょっとじゃん!まだ諦めるには全然だよ!絶対ヤブだって!他の医者に――」

恭介「もう充分だよ!!!それで感覚ひとつ戻らない。とっくに気付いてたさ…。みんなだって気付いてた」

恭介「君ぐらいだよ。来る日も来る日も無意味な励ましばかり。弾けもしない曲を聞かされる身になってくれ」

恭介「君が来るたびに、もうバイオリンを弾けないんだろうっていう現実を直視させられる。…憂鬱になる!」

恭介「…ひょっとして、君は僕をいじめてるのかい?」

さやか「…!」

恭介「…何て無意味な時間を毎日毎日過ごしてきたんだろうねえ、君は」

恭介「みんなみたいに見放してくれればいいんだよ」

恭介「バイオリンを弾けない僕に何の価値もない。生きてたって仕方が無い。違うかい?」

恭介「だからみんな見舞いに来なくなったんだよ。そっちのほうが、僕だってよっぽど楽さ…」

恭介「君も、もう来ないでもらえるかな!?」

さやか「…」

恭介「…」

さやか「ごめん…」

恭介「…!…何で君が謝るんだ…」

さやか「あたしが追い詰めちゃったんだよね…?」

恭介「…え?」

さやか「あたし、ほんとに治るもんだと信じてたからさ。ごめんね、バカで」

さやか「医者でもなければ恭介でもないんだから、指のことなんて、わかるはず無かったのにね…」

恭介「…」

さやか「毎日毎日もバイオリンの話ばっかしてさ。恭介の気持ち全然考えてなかったよ」

さやか「恭介のことを追い詰めてるだなんて、考えもしなかった」

さやか「…小さいころからいつも一緒にいて、毎日お見舞いに来て、一緒に音楽を聞いて

さやか「…恭介のこと全部知ってる気になってた。何もわかって無かったのにね…。無神経にもほどがあるよね…」

恭介「…」

さやか「…これだけは言わせてもらえないかな?」

恭介「…何だい?」

さやか「バイオリンなんか弾けなくたって、恭介は恭介だよ」

恭介「…そんな気休め聞きたくない」

さやか「あたしが言ったって仕方ないよね。バイオリンのことばっかり言ってたのは、私だもん」

恭介「…」

さやか「ほかの人っていっても、恭介のお見舞いにどんな人が来てたか、なんて知らないしねぇ…」

さやか「…だけどさ、恭介のお父さんとお母さんは違うよ」

恭介「君に何がわかるっていうんだよ。とっくに見放されてる」

さやか「ありえない」

恭介「だから、君に何が…」

さやか「恭介が事故にあったって聞いて、病院にすっ飛んできた時さ、もうお父さんとお母さんいたんだよ」

さやか「気が気じゃないって感じだった。先生が出てきて、命に別状は無いって言われたとき、すごくホッとしてた」

恭介「…」

さやか「まあ、あれだよ、見放されたって感じたのは、たぶん、焦ってたんじゃないかな」

さやか「それを恭介に悟らせないように、そっけなくなっちゃったとか」

さやか「いや、実際のところはわからないけどね。それでも、恭介がバイオリンを弾けなくなったからって、見放すなんてありえない」

恭介「…」

さやか「…あたしが言ったって仕方ないよね。今度親子三人で話してみなよ。絶対大丈夫だから。」

恭介「…うん」

さやか「…もう帰るね」

恭介「――あ―」

何もわかっていなかった
私が恭介を追い詰めてた。私のせいだ

恭介の才能がここで終わるなんて、いやだ

契約…契約すれば
ほむらには悪いけど。本当に申し訳ないけど
体が抜け殻になるだけじゃすまない、とてもひどい代償があるのかもしれないけど
それでも…

あれ?
でもそれって
…恭介にバイオリンしかないって言ってることに?
そんなの嫌…


………わからない。どうすれば…

まどか「今日は早いね?」

さやか「……こんな日もあるよ」

まどか「ははーん。『二人の間には言葉は不要』ってやつだね!」

さやか「…それぐらい分かりあえていれば、良かったのにね」

まどか「…さやかちゃん?」

あたしはまどかの言葉を上の空で聞きながらぼんやりと視線を前に向けた。…え、あれって…

さやか「ねえ、まどか、あれ…」

QB「グリーフシードだね。しかも、孵化しかかっている状態だ」

まどか「キュゥべえ!」

さやか「何とかならない?」

QB「魔法少女じゃないと無理だね。僕と契約して――」

さやか「ケータイは?」

QB「マミは、仕事には持っていかない主義なんだ。ほむらの方は知らない」

さやか「まどか!呼んできて!」

まどか「さやかちゃんは!?」

さやか「私はほむらにかける。ケータイ持ってるかもしれない」

まどか「わかった!すぐ逃げてね」

そう言うと、まどかは走っていった

ほむらside

…美樹さやからの着信…――ッ!
 
ほむら「何!」

さやか「病院にグリーフシード。孵化しかかってるって、キュゥべえが」

やっぱり…統計より早いじゃない…

ほむら「すぐに行く!あなたは離れなさい!」

さやか「やだよ。恭介や病院の人はどうなるのさ?」

ほむら「私が間に合わせるわ!」

さやか「間に合うならいても問題ないね」

ほむら「…あなたに何ができると言うの!?向こう見ずになるなと何度言えば――」

さやか「契約すれば問題ないよね?」

ほむら「――!あなた、あれを知ってまだそんなことを…!?」

さやか「私だって、今、契約したくない。できれば急いでほしい。」

そう言って、電話が切られた。やはり魔女化まで伝えたほうが
――今はそんなこと考えている場合じゃない!

さやかside

さやか「あんたの仕業じゃないでしょうね?」

QB「何が原因かが、そんなに重要かい?」

さやか「…あんたへの信用が、ますます無くなるだけだね」

QB「たいした問題じゃないね。もともとそんなものがあったのかさえ疑問だ」

QB「それに、君が契約するのは、もはや時間の問題さ」

さやか「…見てたの?」

QB「僕はいつも資質ある少女のそばにいる」

QB「まどかに行かせたのは、きっかけがほしかったからだろう?」

QB「君がマミの方へ向かうことが最善だったはずだ。身体能力では明らかに君に分がある」

さやか「…そうかもしれないね」

さやか「だけど、今、契約したくないとも思ってる」

さやか「こんな、何も心の整理ついていない状態で契約するなんて、ほむらを裏切る行為だから」

QB「ずいぶん彼女に肩入れするんだね。彼女は何か隠しているよ?」

さやか「あんたも同じでしょ?」

QB「僕は有史より前から存在している。そのときから見聞きしてきたことを、全部話して欲しいのかい?」

さやか「……いいよ。もうあんたには何も聞かない」

QB「彼女も何も話さないと思うよ。肝心なことはね」

…確かにそうだ
そして、それを聞かないと、あたしは力になれない
…つまり、ほむらには、私の力なんて必要ないってこと
だからずっと秘密にしているんだ…

今回はこれにて終了です。まだ第5話途中です

ソウルジェムの強度なんて知らなかったし考えてなかった…
……や、柔らかい芝生にでも投げたってことで…
あの学校ならそれくらいありそうですし…

それでは投下します

ほむらside

病院に着いたときには、すでに結界が形成されていて、巴マミが入っていこうとしているところだった
まどかもそこにいた

ほむら「私も……連れて行って…」

二人は私を見て驚いたようだった。ずいぶんひどい様相をしているんだろう。

QB「よく間に合ったね。まだ少し余裕がある。さやかも無事だよ」

インキュベーダーがテレパシーで語りかけてきた

まどか「さやかちゃんもいるの!?」

さやか「ごめんねー。ほっとけないしさー」

美樹さやかがインキュベーダーを媒介としたテレパシーで語りかける。まったく…

マミ「まあ、間に合いそうだし結果オーライでいいじゃない。急ぎましょう」

そして、巴マミは、息絶え絶えの私に向かって問う

マミ「グリーフシードは無いの?」

ほむら「…全部……使い切った…」

マミ「これを使って」

巴マミがグリーフシードを私に差し出した

ほむら「いや…あなたが矢面に立つのだから…」

マミ「その状態じゃ、使い魔の相手もできないでしょう?私は魔力満タンだから。ストックもある」

と言って、ソウルジェムを見せた。確かにそうだった

「…ありがとう」

「お互い様よ」

そして、浄化を終えて、まどかに切り出した

ほむら「今回は急ぐ必要がある。あなたは連れて行けない」

まどかはかぶりを振って答える

まどか「連れて行って」

…そういえば、大抵この結界内にまどかもいたな…

ほむら「だめよ。あなたに何ができると言うの?」

まどか「力になれなくてもいい!さやかちゃんをほっとくなんてできない!」

ほむら「何を馬鹿なことを……!言ったはずよ!自分を大切にしろと!」

ほむら「あなたがいなくなることで傷つく人がどれだけいるか少しは――」

マミ「暁美さん。今は時間が惜しい。その問答こそ時間の浪費よ」

マミ「……いつもの見学の要領でいきましょう。今までそれで問題もなかったじゃない?」

ほむら「…そうね。仕方ないわ。…まどか、あなた変わったわね」

契約なんて必要なかった。喜ばしいことかもしれないけど…

……ここの使い魔が相手なら、まどかを連れて行っても何とかなるか…
問題はやはり魔女。過去の統計から言えば、私が相手をしたい
しかし、やはり譲ってはくれないだろう。無駄なことに時間をとられるわけにはいかない

それに、時間停止が不安定になっていることも気にかかる
ここに着く少し前から、予期せぬ停止の解除や、不発が起こっている
時間停止の過度な連続使用・連発の危険性はわかっていたので、これまではそれを避けるような戦術を組み立てていた
ゆえにここまで連続的に、長時間使ったのは初めてだった
統計上一番早い時間にグリーフシードが見つかったがために、いつ孵化するか分かったものではないと考えたからのことだが……

魔力が回復すれば元に戻るよう類のものではないらしい
この状態では魔女は相手にできない。やはり任せるしかない。

しかし、大体の時間軸においては、まどかの話では
どうやら巴マミが浮かれていたと言うか、高揚しすぎていたことが敗因になっていた
……らしい。何故か自分を責めていたまどかがあまりにも痛ましかったので、詳細は聞いていないが…

今の巴マミにそのような様子は無い
巴マミが、通常の状態でワルブルギルス以外の魔女に負けるというのも考えがたい
そこまで心配する必要は無いんだろうか?

……いや、魔女自体は倒したことはあるが、私が巴マミと今回の魔女との戦闘を、この目で見たことは無い
決め付けるわけにはいかない。いつでも助けに入れる準備はしておかないと

結界最深部までは苦も無くたどり着けた

さやか「ありがとう。間に合ってくれたね」

ほむら「契約していたら、どうしてくれようかと思っていたわ」

マミ「でも、間に合ったと言えるのかしら。これは。…いえ、間に合ったと言えるようにしないとね」

魔女の孵化と同時に、新たに出現した使い魔が襲い掛かってくる
確かに、二人を逃がす暇はなさそうだ。しかし、これは…

マミ「いくわよ!」

私は使い魔の相手をして、巴マミは魔女に向かっていく
あの魔女は過去の時間軸において、何回か巴マミに勝利した恐るべき魔女のはず――なのだが

巴マミが、マスカット銃を何丁も出し、連射する。全弾が当たり、魔女が吹っ飛んだ。
…何だ、これは。ここまで無抵抗な魔女は見たことが無い
仮に絶不調だったとしても、巴マミがこれに負けるものなのだろうか?

…そもそも、結界の構成こそ同じだが、私が見た魔女は、これよりかなり大きかった
形から何から何まで違う出現時間も統計と違う。別の魔女なんだろうか?
…そうとしか思えない。出現時間ならともかく、結界の構成が同じで魔女が違うなんて初めてだ

巴マミは、華麗に舞いながら、盛大に銃を乱射している
油断は見えない。どうやらいらぬ心配だったらしい

マミ「ティロ・フィナーレ!」

巴マミが魔女に止めを刺そうとしたき、私は使い魔の相手をしながら、美樹さやかに魔女化の事実を伝えるべきか否かについて考えていた

しかし…


――統計は、そこまで狂わない


ほむら「――ッ!」

魔女が倒されたかと思いきや、それが見覚えのある、大きい魔女に変化した
あいつだ…!巴マミの頭に噛み付いてくる…!

ほむら「間に合え…!」

私は時間停止をかけて駆け出す。うまく作動してくれた

こういうことか…!
経験は事象の予測に役立つが、同時に、突然現れたイレギュラーに対する思考停止、判断の遅れを引き起こす
現に彼女は全く動けないでいた

どうしてあの程度の大きいだけ魔女に、あの巴マミが何回も負けているのか疑問に思っていたが、こういうカラクリが…!

驚愕と恐怖に染まった表情の巴マミをどけると同時に時が動き出した
やはり調子がおかしい
私は完全に避けきれず、右手の手首が裂けた
鮮血が飛び散る。ぞっとするような噴出しようだった

われに帰った巴マミが止血をしてくれた。…何とか戦える。私は魔女へと歩を進める

マミ「だめよ!止血だけじゃ…どれだけ血が出たと…!」

ほむら「自分のソウルジェムを見てみなさい」

マミ「…!」

ほむら「死の恐怖が原因でしょう。その状態では浄化しても濁る。それでも、使い魔程度なら、問題ないわよね?」

マミ「でも…!」

ほむら「大丈夫。私にはあれを瞬殺する手段がある」

ほむら「あなたのおかげで魔力の残量も十分。この体調でも問題ない。二人をお願い」

マミ「グリーフシードはどのくらい――」

ほむら「今最悪なのは、あなたが戦闘不能になることよ」

マミ「――わかった…!」

巴マミが二人の方へ駆け出した
…そう、魔力の残量、体調ともに問題では無い。時間停止を使って爆弾を体内に送り込む。それさえ決めてやればいい
…問題は、やはり時間停止。発動しなかったら…途中で切れたら…

だが、巴マミなら、あの状態でも二人を逃がせるはずだ
この場において魔女を倒すことは必須ではない。時間稼ぎで十分だ

…そもそも、巴マミを切り捨てて退避するはずではなかったのか
取り決めでもそうだったし、私自身そのつもりだったはずだ

…3週目からずっと敵対していた彼女に少し受け入れてもらうとこれだ
…こんな体たらくで、まどか以外切り捨てるだなんて失笑だ
これじゃ、ただみんなから逃げていただけじゃないか…
 

…今は感傷に浸っているときではない。集中しよう。
魔女は、自分が自由であると主張するように、フラフラと飛んでいる
右に左に上に下に。今は、あちらから仕掛けてくることはなさそう

一歩一歩近づきながら魔女に発砲する
4発目までは気にも留めていなかったようだが、五発目が鼻と思しき部分に当たったとたん、こちらに口をあけて猛然と襲い掛かってきた
急所か何かだったのだろう。…落ち着け

まさに食われるという瞬間に、時間停止
…作動してくれた。後は爆弾起動、口に投げ込んで退避

…これだけだ――だったのだが、やはりうまくいかず――
――投げ込んで魔女の体内に送り込んで、三歩はなれないうちに、時間停止が勝手に解除され、爆発
私は吹っ飛び、結界内のなにかに頭をぶつけて――

さやかside

現在時刻は午前1時
マミさんがほむらに応急処置を施し後、まどかは病院に運びこもうと主張した
だけど、マミさんが自分でもリスクなく治療できる、彼女も大事にすることを避けたいはずだととりなして自宅に運び込んだ

そして今、マミさん宅で続きの治療を行っている
まどかも、立ち会っている
あたしはあまりに遅くなってしまったことの謝罪をお母さんに電話でしているところ

さや母「…門限を決めていなかったことは、さやかへの信頼からだったことはわかるわよね?」

さやか「わかってる。ごめんなさい。本当に悪いと思ってる。裏切ることになって、本当にごめんなさい」

さやか「…だけど、今は、何を言われ.たって帰れない。」

さや母「…理由もいえないの?」

さやか「…うん」

さや母「それは謝っているとは言わない。説明にもなっていない。」

さやか「…うん」

さや母「どう思われても、仕方ないということなのよ?」

さやか「…わかってる」

さや母「………お小遣い半年無し、ゲームと漫画は、全部捨てる」

さやか「あの、門限は…」

さや母「…今は変えない。今度同じことをしたら、本当に許さない」

さやか「…ありがと」

そう言ったら、電話を切られた
まどかの方は、大変な事情があると察してもらえたらしく、不問になったらしい
日頃の行いが違うからね…。

電話を切ると、別室からマミさんが出てきた。

マミ「もう終わったわ。大丈夫。まだ起きないけど。鹿目さんは、もう少し看ているそうよ」

…良かった

マミさんは、私の向かいに座った
意気消沈している感じ…何を言うべきかわからない。本当は黙っているべきなんだろう

…だけど、あたしはあいつのことを知りたい。あいつがその気なら、こっちから近づいてやる

さやか「あの…ほむらは、何をやったの?」

マミ「…時間を停めていたわ」

さやか「時間を停めた?」

マミ「自分と、自分に触れたものの時間を停められるみたい」

さやか「そんなこと、できるんだ……」

マミ「そういう魔法があること自体知らなかった。彼女も意図して習得したわけではないはずだけど……」

さやか「どういうこと?」

マミ「自分が最初に覚えた魔法以外の系統は中々覚えられないのよ」

マミ「まして、時間干渉みたいな強力なものとなるとね。元々使えたんでしょう」

さやか「その元々使える魔法って、最初に選ぶの?」

マミ「願いによって、最初から決まっているの。選択するものではないわ」

さやか「それって、つまり…」

マミ「暁美さんは。時間に関するお願いをしたってこと」

時間か、よくわからないな。それに関係する願い事って言っても……

マミ「……あの、質問してもいいかしら?」

さやか「?」

マミ「暁美さんのこと、やけに勘がいいな、とか思ったことない?」

さやか「…あの、どういう…?」

マミ「あなたたちが始めて結界に入ったとき、暁美さんが助けてくれたでしょう?」

さやか「?…うん」

マミ「私が、暁美さんのお手伝いをすることはたまにあるんだけど、暁美さんが私を手伝うために結界に入ったことは、あの一回しかないの」

さやか「――ということは…」

マミ「その一回で、たまたまあなたたちが救われた」

さやか「…」

マミ「それと、魔法少女見学の件。普段は私と暁美さんで適当に魔女が出やすそうなところを練り歩くだけなんだけど」

マミ「彼女、たまに確信をもって結界のところまで誘導するの」

マミ「まるで、絶対に倒しておかないといけない魔女をわかってる、って感じに」

…そういうこと……か

さやか「……転校前に、まどかがほむらに出会って、忠告をされたんだ

さやか「その少し後にキュゥべえが現れたんだけど…忠告の内容は、契約するな、ってことだった」

さやか「あたしたちがキュゥべえと会ったのはそれが初めてで、その前に魔法少女になるなって、いきなりまどかの前に現れて忠告」

さやか「タイミングができすぎてるから、忠告なんて言っておいてキュゥべえとグルなんじゃないかとも思ったこともあったけど」

さやか「キュゥべえが出るタイミングを知っていたのかもしれない」

さやか「後、会う前から、あたしとまどかのことを良く知っていたみたい。特に、まどかを守ろうとしてる」

マミ「それが、目的なんでしょうね」

マミ「…キュゥべえが、暁美さんとは契約した覚えがないとも言っていたわ」

…できれば、ほむらの口から聞きたかった
でも、まだ聞きたいことが五万とある

マミ「暁美さんは、明らかに未来を先読みしている」

マミ「あなたたちのことも、出会う前から知っていた」

マミ「そして、時間に関する願い」

マミ「キュゥべえが契約した覚えもない……つまりこれは――」

マミさんが、確信した表情で言う





「――タイムリープ」



QBside

成程、可能性のひとつとして考慮はしていたが、そんな願いをね
これで暁美ほむらの行動と目的の意味がすべてわかった

もはや君はイレギュラーなどではない
少し特殊な魔法を使えるだけの、ただの魔法少女だ
我々の障害にはなりえない

もう、この時間軸での脅威は去ったと見ていいだろう
いや、永遠に取り除かれたと言える

君はこの時間軸で失敗したら、また時を元に戻すつもりなんだろう?
そうすれば、また、目的が達成される可能性が生まれる、と、君は思っているんだろうから

しかしだ
鹿目まどかの過ぎた才能から生まれる、彼女の破滅の未来
それが君が彼女を何度も救おうとしたことによってもたらされたものだと知ったら
君は――君のソウルジェムは、どれだけ絶望に染まるんだろね?

これにて投下終了です。これにて第5話完です

なお、話数は示していますが、別に12話だの24話だの収まりのいい話数に収めようと考えているわけではありません
だからキリがよくない数字で終わることもあるかもしれません



ただ>>171
>マミ「自分と、自分に触れたものの時間を停められるみたい」
はおかしくね?

ほむらが言ったとは考えにくいしどうやって気付いたのかね?

って思ったらマミ助ける為に止めてる時に触ってるからか

>>182
はい。「自分と、自分に触れたもの以外の時間を停められる」です
完全なるミスです

>>183-184
さやかの下りから、時間停止後に触れたものが解除される仕様ではないですね…
失念していました
マミが自分をはじき飛ばした時のと、爆弾を投入する際の時間停止から見破ったということでお願いします

後、>>166の3週目を4周目と訂正させて頂きます

……以後本当にミスがないように気を付けます。それでは投下します

マミ「……完全に私のせいね」

さやか「何が?」

マミ「…見学のとき、必ず私が魔女に当たっていたでしょう?」

さやか「?…うん」

マミ「…何度か彼女は変わって欲しいって言ってきたんだけど、私はそのたび断っていたの」

マミ「心臓のことが心配だって言って」

さやか「ほむら、心臓が悪いの?…ってそういやそうだった」

さやか「そっか。魔力で強化してるんだね。そんな感じのこと言ってた」

マミ「心臓を強化すればそれだけ戦闘に使える魔力が減る。だから私が押し切っていつも魔女と戦っていた」

マミ「それで、今回も、阿吽の呼吸と言った感じで、私が魔女にかかっていったの」

さやか「そうなんだ」

マミ「未来がわかっていたと言うのなら…」

さやか「!」

マミ「あの時、本当は変わりたかったんでしょうね…。でも時間に余裕が無かった」

マミ「馬鹿な私が拒否することが、わかっていたんでしょうね…」

さやか「…」

マミ「私の思い上がりのせいで、暁美さんがあんな目に――」

さやか「違うよ」

マミ「違わないわ」

さやか「違うんだよ。…教えてくれなきゃ、わかるわけ無いじゃないじゃん」

マミ「それは…」

さやか「……何もわからなきゃ、力になんてなれるわけが無いんだよ」




第6話:あなたたちがいつ私の力になったことがあると言うの?


ほむらside

目を覚ますと、3人とも、私が寝ているベッドのそばにいた

……私、生きてたんだ

…よかった。いつ以来だろう、巴マミを助けることができたのは
まどかと美樹さやかも、1周目・2周目以来と思えるほどに友好的だ

もしかしたら……

ほむら「あなたたちが助けてくれたのね。迷惑かけたわ」

マミ「迷惑だなんて…あなたがいなかったら、どうなっていたか…」

マミ「本当に、ごめんなさい。…ありがとう」

ほむら「あら、お互い様って言ったのは、あなたじゃない?」

そして、なんともなしに窓を見た。…暗い

ほむら「今、何時?」

まどか「2時だよ」

ほむら「…ごめんなさい。私を待っててくれたのね。今すぐ帰りましょう。一緒に言い訳――」

さやか「ほむら」

ほむら「何?」

さやか「ほむらは、未来から来たんだよね?」

!!!

ほむら「……時間停止を時間跳躍に結びつけたっていうの?飛躍しすぎじゃないかしら」

マミ「キュゥべえ、飛躍してる?」

QB「していないね。あり得る範囲だよ」

ほむら「…」

さやか「もう、全部話して欲しい」

…だめだ。成り行きで話していいことではない
適切なタイミングで伝えなければ……また……
……そもそもいつが適切かさえ、私にはわからない……

ほむら「話せない」

美樹さやかは悲しげにため息をついて、言った

さやか「じゃあ、あたしは、あんたのことを、敵として見なきゃいけなくなる」

ほむら「……………え?」

…………嘘だ……

まどか「さやかちゃん!?」

……そんな……ここまできて……敵対?
………嫌!……もう嫌!嫌!……嫌…嫌……
いやだ…だけど…だけど…

マミ「暁美さん」

巴マミが伏目がちに言う

マミ「美樹さんだって、こんなこと言いたくないのよ?あなたは、私たちの命の恩人だもの」

マミ「あなたが悪い娘じゃないってことは、みんな知ってる」

マミ「いえ、消極的すぎる表現ね。あなたがいい娘だって信じたい。鹿目さんは確信しているわ」

マミ「…だけどね、わからないのよ。あなたがここまで秘密主義を取る理由が」

マミ「タイムリープのことを話せなかったことはわかるわ。言われたって、なかなか信じられる話じゃないもの」

マミ「だけど、それが知られて尚、何を、何故隠そうとしているのか、わからないの」

マミ「……だから、私は最低なことを考えてしまう」

マミ「暁美さんが守りたいのは鹿目さんだけで、あなたが望む未来に私と美樹さんはいないんじゃないか…って」

まどか「マミさん!いくらなんでもそれはないよ!」

ほむら「そんな…」

マミ「あなたは私の命を助けてくれた。こんなこと言っちゃいけないってわかってる」

マミ「だけどね……ふつう、隠し事って、後ろめたいからすることでしょう?」

ほむら「…」

マミ「だけど、みんなの命はあなたに救われた

マミ「だから、あなたが非道な目的を持っていないことを信じて聞く」

マミ「何も、教えてはくれないの?私たちが手伝えることは、本当に何もないの?」

気づいてしまった……
……もう、みんなと敵対するのは嫌だ
……あんな思いをしたくない

…だけど……だけど――

『あのさあ、キュゥべえがそんな嘘ついて、一体何の得があるってわけ?』


『私たちに妙なこと吹き込んで、仲間割れでもさせたいの?』


『どうしてかな。ただ何となくわかっちゃうんだよね。あんたが嘘つきだってこと』


『にわかに信じがたい話ね』


『ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない!』


『ほむらちゃん……どうしていつも冷たいの…?』


『ごめん、ほむらちゃん。私、契約する』




ほむら「………私は もう 誰にも 頼らない」


マミ「……どうして?」


ほむら「あなたたちが いつ 私の力に なったとことが あるというの?」


マミ「……確かに、私はあなたの足手まといでしかなかった」

マミ「だけど、知っていたら、力になれることがあるかもしれない。美樹さんや、鹿目さんだって――」


ほむら「あなたたちが いつ 私の 言うことを 信じてくれたと いうの?」


マミ「…え?」


ほむら「…誰も 何を言っても 信じてくれなかったじゃない!」


マミ「……そう、『私たち』のせいなのね…」

まどか「そんな…そんなのって…」

さやか「ほむら」

美樹さやかが両手で私の手を包んで、まっすぐ目を見て、言う

さやか「『違うあたし』が、あんたにどれだけ迷惑をかけてきたかなんて、知らない。知ったこっちゃない」

さやか「今、あんたの目の前にいるあたしは、あんたの力になりたいと思ってる」

さやか「どれだけ力になれるかなんてわからない」

さやか「『また』、迷惑かけちゃうかもしれない。それでも」

さやか「あたしは、あんたのことを知りたい。助けたい」



「――あたしは、あんたのことを信じたい」


………そうだ、この子は――さやかは――

転校してから、クラスで浮いていた私の心に土足で上がりこんで、傷つけて、へこませて、泣かせて、怒らせて――
――私のことを笑顔にしようとした。放っておいてくれなかった

…泣いたことのほうが多かったけど、それでも、いくらやめてといっても、私を見捨てなかった
体の弱い私のことを、いつも助けてくれた

魔法少女のまどかとの距離感に悩んでいたとき、事情を何も知らないくせに、相談しろと強要してきた

契約して、体を強くしたいといったら、自分が支えになるから、必要ないと言ってくれた


…だからこそ、私は、まどかのために願うことができた


何度も繰り返すうちに、彼女を切り捨てるために、1周目のことを忘れなくてはいけなかった



今にして思う


…どうして忘れることができたんだろう


……信じよう、さやかを
生まれて始めてけんかをした相手、確かに友達だった彼女を

私が契約してからは、正直迷惑だったけど、いつもまどかを守ろうとしてくれた
優しい、それゆえに、魔法少女に向いていない彼女を

さやかは、私が隠し事をしていると悟り、いつも警戒していた
そう、隠し事は後ろめたいからこそするものだから

仲間を疑わない巴さんや、誰も疑おうとしないまどかを守ろうとしてくれていたんだ

私が隠さなければ、きっと、受け入れてくれるはずだ

信じよう、巴さんを。素人同然の弟子を二人も三人も抱え込むことになっても、嫌な顔せずに受け入れてくれたお人よしを
みんなが私を拒絶する中で、自分も私の言うことを信じていなかったくせに、私自身を信じてを守ろうとした、正義の魔法少女を

あの時、巴さんは、みんなと私との間で疲弊していた
さやかが魔女になって、ポッキリ折れてしまった

……あの時は、何もかもタイミングが悪かったんだ
……まともな状態で、心中を図るような人じゃない
私は、知っているはずだ。わかっていたはずなのに…

彼女は、自分の運命を受け入れてくれるはずだ
彼女は、弱くなんて無い。何年もこの見滝原を守ってきた人なんだから…

信じよう、まどかを
どうしてまどかを信じず、まどかを救えるというのだろう
この子は、私の、一番の友達なんだ。私に、初めて希望を与えてくれた人なんだ

まどかはいつも私のことを信じてくれる……ただ、私がまどかのことを信じられなくなっただけだ


何度も繰り返して、みんなの嫌なところを見て、怖くなって
私は逃げていた。結局、私一人では何もできなかった

みんなが、私を見てくれた。私も、向き合おう


――もう、逃げない


「わかった」
深呼吸をして、もう一度言う
「全部話す」

これで投下終了です。これで第6話完です

解説(言い訳)させて頂きますと

さやか(できることなら追い出したいけど、それできるならほむら色々回りくどいことしてないんじゃないかな)

マミ(美樹さんちょっとキュゥべえのこと疑いすぎじゃないかしら)

まどか(二人してほむらちゃん追い詰めるなんて酷いよ!もっとやり方考えてよ!)

まどか(でもほむらちゃんのこと知りたいし……う~ん……)

ほむら:そもそも冷静ではない。仮に話すうちに我に返ったとして

(巴さんの信頼を得るために話すっていうのに、QBを傷つけて信用を無くすなんて本末転倒よ)

(傷つけずに追い出せるならいいけど、出てけって言ってでていくやつらではないわ)

(さらに言えば、この状態でQB出ていくまで話さないなんて言ったらもうどうなるか分かったものではない)

って考えてると思ってます

投下します




第7話:これを知らないと、私は前に進めない


私はすべてを話した

まどかと、巴さんに命を救われたこと
まどかが、私の一番の友達になったこと
舞台装置の魔女と戦って、二人が死んだこと
まどかとの出会いをやり直したい、まどかを守れる自分になりたいと願ったこと

まどかが魔女になったこと

インキュベーターに騙されているとみんなに話しても、誰も信じてくれなかったこと
さやかが、魔女になったこと
私が殺したこと
殺し合いになったこと
まどかに、契約する前の自分を救ってくれと頼まれたこと
まどかを殺したこと

もう、誰にも頼らないと決めたこと

まどかが、救済の魔女となって、世界を滅ぼしたこと

――すべてを

ほむら「――信じてもらえるかしら?」

さやか「信じるよ……やっと、話してくれたね、ほむら」

まどか「……私の………私のために?」

ほむら「そうよ」

まどか「……どうして?……今の私は、ほむらちゃんに何もしてない」

まどか「どうして、そんなに頑張れるの?」

ほむら「……勝手な自己満足よ。もう、こんなことでしか、『まどか』を守ることができない」

ほむら「どの、何の、いつの『まどか』を守ろうとしているのか、もうわからない……とっくに迷子になっていたの」

ほむら「こんなことで、あのまどかを、今のまどかを救えるわけなんてない。わかってる」

ほむら「だけど……それでも私は……」

まどか「……ごめん。ほむらちゃん。……そうじゃなくて……」

まどか「あの、私は、今の私は、ほむらちゃんに何もしてないけど、友達だって思ってる」

ほむら「……え?」

まどか「もし、ほむらちゃんが今の私を友達だって思えないなら、思えるようにする」

まどか「私は、友達を、ほむらちゃんを守りたい。ほむらちゃんが私を守ってくれるなら、とても嬉しい」

まどか「――それじゃ、だめかな?」

ほむら「…それ以上のことなんて、望めるはずがない。…ありがとう、まどか…。」

信じてもらえた……わかってもらえた……こんなこと、初めてだ…

後は――


マミ「……証明できる手段はないかしら?」

顔をしかめて、腕を組んでいた巴さんが口を開いた
……大丈夫。巴さんは信じようとしてくれている。絶対に認めたくない話を

ほむら「何を証明できればいいかしら?」

マミ「……魔女になるということ。」

ほむら「残念だけど、それは無理。」

マミ「……ソウルジェムが、魂だという話は?」

ほむら「ソウルジェムが体から100m以上離れると、一時的に死ぬ。これは証明になるかしら?」

マミ「……なるでしょうね……自分で、確かめたい」

ほむら「ええ。それが一番よ」

と言って、私がソウルジェムを差し出そうとすると

マミ「私が、確かめたいって言っているのよ」

と、自分のソウルジェムを、私たちに差し出した

ほむら「……インキュベーター曰く、理論上は大丈夫なはずだけど、必ず再起動するとは断言できないそうよ?」

マミ「……それでも、これを知らないと、私は前に進めない」

ほむら「……わかった」
 
と言って、私が受け取ろうとすると

マミ「できれば、美樹さんにお願いしたい」

マミ「……暁美さんなら、帰ってくるとき時間停止を使うでしょうから」

マミ「あなたに時間停止を使わせられない。不安定なんでしょう?」

ほむら「……よくわかるわね。」

マミ「あの時、あなたの魔力自体は余裕があった。それなのに二度も時間停止後に大怪我をしたとなると、ね」

さやか「……わかった。どこまで行けばいいかな?」

マミ「外に出て、右にしばらく進むと公民館がある。100mは超えているはずね。」

さやか「了解。超特急で帰ってくる」

と、言うとまどかが、行く手をふさぐようにさやかの前に立ち上がった」

さやか「まどか……マミさんは、ほむらの話を信じようとしてるんだよ」

さやか「これを知らないと進めないって言ってる。わかるでしょ?」

まどか「……わかんないよ」

マミ「ごめんなさい。こうでもしないと、私の気がすまないのよ」

さやかは、立ち尽くしているまどかを置いて出て行った

マミside

目が覚めると、暁美さん、美樹さん、鹿目さんの三人が私をのぞき込んでいた

寝て起きるという日常では経験しないような嫌悪感
……確かに、気絶・就寝とかより、死という言葉が合うかもしれない

マミ「どうだった?」

ほむら「死んでた」

二人も、沈黙で肯定した

マミ「そう…」

ソウルジェムが魂……命そのもの……
それが濁りきったら、死に類することが起こるだろうという推測は成り立つ
……魔女になると言うのも……ありえる範囲……ね……

マミ「信じるわ。聞き分けが悪くてごめんなさい。ほかの時間でも、苦労したんでしょうね」

ほむら「……いえ、ここまで聞き分けがいいのは、初めてだわ」

マミ「ひどいわねぇ」


QB「ここまで知っていたとはね」

いつの間にかいなくなっていたキュゥべえが戻っていた

マミ「……キュゥべえ……今の話、事実なのね?」

QB「事実だよ」

マミ「何で教えてくれなかったの?」

QB「訊かれなかったからね。大体、君は教えたところで契約していたんじゃないかな?」

マミ「それはそうだろうけど……後から教えてくれてもいいじゃない」

QB「教えたら、君は魔女になる前に死ぬだろう?」

マミ「それだと困るの?」

QB「僕たちは、魔法少女が絶望して魔女になるときに発生するエネルギーを使って、宇宙の寿命を延ばしてるんだ」

QB「思春期の少女の感情の起伏から生じるエネルギーは、実に莫大なんだよ」

マミ「宇宙ねえ。私は見滝原で精一杯よ」

マミ「それにしても、あなたがいなくならなかったら、あんな体験しないで済んだのに」

QB「君が証明を求めるだろうことは予測がついていたからね」

QB「どこかのタイミングでご破算になればと思っていたんだけど」

マミ「どこまで原黒なんだか」

QB「この話を知られると、大概怒られるんだけど、君はそれほどじゃないね?」

マミ「私の願いは、命をつなぎとめることだったから、ソウルジェムが濁りきったら死ぬんじゃないか、とは思っていた」

マミ「あなたの言うように、死が5秒程早まっただけよ」

マミ「鹿目さんや美樹さんが契約した後だったら、本気で怒っていたでしょうけど」

QB「君は、二人が契約しないと思っているんだね?」

マミ「だって、私みたいに命がかかった状況じゃあるまいし、この事実を知って尚、契約しようとなんてするわけないじゃない」

さやかside

ほむらとマミさんは話があるということで、あたしとまどかは、今、二人の送るという申し出を断ってタクシーで帰宅している
……収入を絶たれたあたしのお小遣いは早くも底をつきつつある

さやか「まどか、まだ契約する気がある?」

まどか「……ううん。もう絶対にできない」

さやか「だよね」

まどか「さやかちゃん…さやかちゃんも、契約なんてしないよね……?」

さやか「……うん。当たり前じゃん」

まどか「……」

ところでまどかはイベント事が大好きで、エイプリルフールにはいつもどでかい嘘を仕込んでくる
なのだが、いかんせんどんな仕込みをしても態度ですぐにバレてしまう
慣れないことはするもんじゃないよー、と、あたしが茶化すまでが恒例行事だ

嘘が嫌いだからこそ、嘘が苦手なんだろうと思っていた
そして、あたしたちは変なところで似ている

……それを今、強烈に実感している

ほむらside

ほむら「杏子を仲間に入れようと思う」

マミ「…確かに、この近辺の魔法少女では頭が一つ抜けているわね。でも、佐倉さんだけでいいの?」

ほむら「他は役に立つレベルではないわ」

ほむら「………いえ、彼女以外に心当たりがないわけじゃないけど、味方になってくれるかわかったものじゃない」

ほむら「不安要素が大きすぎる」

マミ「佐倉さんなら、確実に仲間になってくれるの?」

ほむら「ええ。相応の見返りを用意すれば問題ない」

マミ「どういう見返り?」

ほむら「私は、ワルプルギスを倒した後、つまり一月後には、見滝原を出るつもりでいるの」

ほむら「その後、私の居場所、というか立場に杏子が入ってくる、と言うのはどうかしら?」

ほむら「彼女も、見滝原で魔女を狩れることに魅力を感じるはず」

マミ「それは交換条件になるのかしら?」

マミ「彼女が今、見滝原で魔女を倒しても、私は咎める気はないのよ?度が過ぎたら話は別だけど」

ほむら「……向こうがどう思っているのかはわからない」

ほむら「現に、今の今まで彼女は風見野に移ってから、見滝原で魔女を狩ったことはないはずよ」

マミ「確かにそうね……」

ほむら「少なくとも、別の時間軸では、ここの縄張りを提供することで協力してくれた」

ほむら「…度が過ぎたら、の度を広くしてもらえれば受けてもらえると思う」

マミ「…あなたが言うならそうなんでしょうね……ええ、そうしましょう」

マミ「私も、できる限り彼女に歩み寄ってみる。時が心を溶かしてなんとやらに期待するわ。お互いにね」

ほむら「そういうわけで武器の調達と杏子との交渉に専念したい。どこにいるかよくわからないから」

ほむら「グリーフシードの調達、お願いできるかしら?」

マミ「ええ、蓄えもあるし、しばらくは大丈夫でしょう」

マミ「ただ、ワルプルギス戦の前にはできるだけ多くためておきたいし、あなたも早めに佐倉さんを見つけてね」

ほむら「わかったわ」

マミ「それと……ワルプルギスの夜を倒したら、本当に出て行っちゃうの?二人とも、寂しがるわ」

ほむら「……私の問題よ。誰になんと言われようと変わらない」

マミ「そう……」

その後、もうすっかり遅くなってしまったので、巴さんの家に泊まることになった
朝まで他愛のない話をして、そして、気づいてしまった


この人は、あの夜を越えたら……死ぬ気だ


正義を掲げて戦ってきた彼女だ。自分が、限界を迎えたとき、人を襲う魔女になる……耐えられるはずがない
その前に死ぬ、と言っても、実際にそれができるかなんてわからない。そんなに甘い世界じゃない
……あの時も、たぶんとっさにそう考えた

今は、打倒ワルプルギルスを最後の目標にしているんだろう。それを達成したら……。
だけど、理由は違えども、私も同じようなことを考えているんだ
……私に巴さんを止める資格なんて…あるんだろうか?

……今更の今更だけど、ワルプルギスを倒した後の巴さんの心配をするなんて、ね
リスク度外視にさやかの元へ駆けつけた時から、とっさに巴さんを助けた時から、すでに気づいていた

でも、信頼の代償に、ひどく弱くなった
……今の私に、まどかのための犠牲を許容できるんだろうか

……-できるできないじゃない
その時が来たら……もし来たら……
……切り捨てなきゃいけないんだ……

マミ「ねえ」

ほむら「何?」

マミ「私が限界になったとき、死ぬことをためらったりしたら、あなたにお願いしてもいいかしら?」

ほむら「……構わないわ」

マミ「ありがとう。あなたはどうする?」

ほむら「私は、絶対に魔女にはならない」

マミ「強いのね」

ほむら「……あなたほどじゃない」

これにて投下終了です。これで第7話完です

もともと叛逆公開前から書いていたものですので、叛逆で明らかになったことを反映させるつもりはありません
そう開き直るために前倒しして公開日前に投下を始めたわけですし
とはいえ、実際に矛盾点がでると凹みますね……

このssでは、ほむらがマミに打ち明けたのは初めてということでお願いします。それでは投下します




第8話:彼の隣に立ちたいだけなんじゃないの?


仁美「さやかさんは、上条君のことを、どう思っていますか?」

翌日の昼休み、仁美と二人でいるときに唐突に質問をされた

さやか「ただの幼馴染だよ。ちょっとー、まさか仁美まであんな――」

仁美「私は、上条君のことが好きです。」

さやか「!?」

あー、そっか、ほむらが言ってたアレ、仁美のことだったんだ……
全く気付かなかった。思いもしなかったよ……告白成功率100%だっけか、ハハ……

仁美「あなたは、私に、嘘をつくんですか?」

さやか「………ごめん。あたしも、恭介のこと、好き。」

仁美「まあ、クラスメイトはみんな知っていましたけどね。」

さやか「………でも、伝える気は無い。それはあたしの自由だよね?」

仁美「ええ、さやかさんの自由です。私が気持ちを伝えるのも、私の自由です。」

さやか「……そう……だね」

仁美「いつ伝えるかも、私の自由です」

さやか「…え?」

仁美「明日、お見舞いに行ったときに伝えます」

さやか「……優しいね。仁美は」

仁美「……やさしいとは思えませんわ」

仁美「友達から好きな人を取ろうとしているというのに、どんな結果になっても、友達であり続けたいと思っているだけなんですから」

さやか「…奪うってのはどうなんだろ。別に恭介はあたしのものじゃないし……」

仁美「あなたが一番上条君の事を見ていたじゃありませんか」

さやか「…ただ長かったってだけだよ。あたしは、恭介のこと何もわかってなかった」

仁美「ならば、私に一体何がわかっていると言うのでしょうね?」

さやか「…」

仁美「相手のことをすべて理解していないと、告白する資格すらないとおっしゃるんですか?」

さやか「…わからない」

仁美「とにかく、明日伝えます」

さやか「…そう」

仁美「いいですか?今日決心がつかなくとも――明日、学校を休んで伝えてもいいんですよ?」

仁美「学校なんかよりも、大切なものはたくさんありますから」

さやか「…仁美が言うか」



そう。学校よりも大事なことはある

あたしは、後の授業は全部サボった




「ほむら?今屋上。報告することがあるんだ。今から来てくれない?」


すいません。今日はここまでです。まだ第8話途中です

投下します

さやか「契約することにしたんだ」

ほむらが浮かべる表情は――失望と落胆……かな……胸が痛い

ほむら「理由を聞かせて」

さやか「恭介の腕を治したい」

ほむら「…」

さやか「……てか、これじゃ答えになってないよね」


さやか「……恭介はね、本当の天才なんだ。その恭介が、事故にあって、手が動かなくなった」

さやか「こんなのおかしいって、ずっと思ってた。何で事故にあうのがあたしじゃなかったんだろうって」

さやか「そして、もう治らない――ホントはだいぶ前から契約したかったんだけどさ」

さやか「恭介、追い詰められてた。バイオリンを弾けない自分は生きてても仕方ないって」

さやか「こんなんで契約したって、何の解決にもならない。同じようなことが起こったら、また恭介は絶望する」

さやか「先延ばしにしかならないんじゃないかって思ってた」

さやか」まあ、そんな風に追い詰めちゃったのはあたしなんだけどさ」
 
さやか「それにさ、なんか違うよ。それしかないからバイオリンやるしかないってのは」

さやか「あたしは、ただバイオリン楽しんで弾いてる恭介が好きなんだから」

ほむら「……じゃあ、なぜ……?」

さやか「今は仁美がいる」

ほむら「!?」

さやか「仁美は、恭介の才能じゃなくて、恭介そのものを見てる」

さやか「きっと支えになってくれる。どんなにいい子か知ってるし、任せられるって思ったんだ」

さやか「偉そうなこといえる身分じゃないけどね」

ほむら「あなたは――」

ほむら「あなたはどこまで愚かなの……」

さやか「……愚か……だよね……そりゃあ……」

ほむら「……上条恭介と付き合う気は本当にないの?」

さやか「……うん」

ほむら「理解できない。あなたが志筑仁美の立場に立とうとは思わないの?」

ほむら「あなただって彼の支えになれる。あなたが適任だと彼女も思った。彼女がどんな思いであなたに譲ったか…」

さやか「想像できないんだよ。私が腕治った恭介の隣にいるのが。住む世界が違う。距離があったんだよ。あたしの中ではさ」

ほむら「最近は距離が縮まったんじゃないの?」

さやか「治ったら、また開く」

ほむら「時間をかけて距離をつめていけば…」

さやか「仁美は、明日告白するんだよ?」

ほむら「付き合ってから心の距離を縮めていくという手も…」

さやか「こんなに長く一緒にいて、距離があるなんて、見込みがないと思うんだよ」

ほむら「……」

ほむら「あなた、さてはいつかみたいに上条恭介と気まずいことになったわね?」

ほむら「それで彼と向き合うことから逃げているだけなんじゃないの!?」


さやか「ねえ――ほむらとまどかはどうなの?」

ほむら「………え?」

さやか「性別がどうのとか言わないでよ?ほむらはまどかと友達にすらなる気がないよね?」

さやか「今も、ワルプルギルスの夜を倒した後も。そして、全部が済んだらまどかのそばから離れる気でいる」

ほむら「……どうしてわかるの?」

さやか「あれだけ打ち明けたってのに、あんたは未だにまどかとどこか距離をとってる」

さやか「気の遠くなるくらい繰り返してでも、救おうとしている相手だってのに。」

ほむら「…」

さやか「ほむらがいなくなったら、まどかは間違いなく悲しむよ?だけど、私はそれをどうこう言うつもりはない」

さやか「ほむらが自分で決めたことだからね。あんたの気持ちは尊重されるべきだと思う」

さやか「――だから、私の願いも認めてほしいんだ」

ほむら「……あなたは自分の選択が間違っていると気づいている」

ほむら「……だから、そんな脅迫まがいなことを言ってまで、私に認めさせようとしているのよ」

ほむら「……返答に窮したら持ち出してきたわね?……ええ。まさに脅迫よ」

さやか「…もう、決めたことだからさ」

ほむら「………私は、あなたに自分の持っている、あなたが知るべき全ての情報を提示した」

ほむら「それでも尚、契約するというのなら、もう知らない」

さやか「…」

ほむら「………契約前に、まどかと巴さんにも話しておきなさい」

さやか「…わかってる」

沈黙があたしたち二人の間に横たわる。ほむらは逡巡しているようだった
そして、ためらいがちに口を開いた

ほむら「私は何度もあなたを見限ってきた。…見殺しにしてきた」

さやか「言ったはずだよ。そんなの知ったことじゃないって。あたしだってこんな人の忠告を無視して勝手に自爆するようなやつ――」

ほむら「だけど」

ほむら「あなたの周りの人が、あなたを見限ったことはなかった」

さやか「!」

ほむら「よく覚えておきなさい。それと」

ほむらがあたしの胸倉をつかんだ

ほむら「勝手に死んだら許さない。私は、誰が死のうが切り捨てる覚悟はあった」

ほむら「……その気にさせたのは、あなたなのよ?責任取りなさい!」

それだけ言って、ほむらは出て行った

5分後にまどかが来た。私の話をほとんど反論せずに聞いてくれた
止めても無駄だってわかったみたい。長い付き合いだからね…

まどか「本気なんだね?」

さやか「うん」

まどか「…あのね、さやかちゃん。ひとつだけ、言いたい事があるの」

さやか「何?」

まどか「ほむらちゃんが、私を守るために今までがんばってきたって聞いたときね……嬉しいっていうより、悲しかった」

さやか「…」

まどか「苦しかった。罪悪感だって感じた」

さやか「……ほむらに言っちゃ駄目だよ?」

まどか「わかってるよ……でもね、さやかちゃん、これを上条君も背負っていくことになるんだよ?」

さやか「……墓まで持っていく。墓になんて入れるかわかんないけどさ」

まどか「さやかちゃん……」

まどかが私に抱きついてきた

まどか「お願い……お願いだから長生きして。そんなこと言わないで……」

さやか「……あたしだって、そう簡単に死ぬ気はないよ」

放課後、三人でマミさんの家を訪れた。マミさんは私の話を驚愕の表情で聞いていた

マミ「……正気?」

さやか「はい」

マミ「…暁美さん、鹿目さん。ミスドで新作が出たの。売り切れ必死だって言うから、今から買ってきてくれないかしら?」

まどか「え?」

ほむら「……わかったわ」

まどか「え、ほむらちゃん?」



ほむら『いやな役を任せてしまったわね…』

マミ『大丈夫。でも、結果は期待しないでね』

道中にて

まどか「ほむらちゃん。あれ、どういうこと?」

ほむら「私たちに聞かれたくない話をするということよ」

まどか「それって…」

ほむら「私は、さやかがどういう性格をしているかわかっているけど、巴さんはまだよく知らない」

ほむら「多少強引にでも止めようとするでしょうね」

まどか「……ほむらちゃんは、さやかちゃんを止められないって思ってるんだね?」

ほむら「まどかもでしょう?」

まどか「……うん」

ほむら「さやかの意志は固い。放っておいても勝手に一人前になるなら、構わないんだけど……」

まどか「……すぐに魔女になっちゃうんだよね?」

ほむら「ええ。魔法少女に向いてないのよ。致命的に」

ほむら「……すぐに、壁に当たることになるわ。時間さえあれば、乗り越えられるんでしょうけど、魔法少女にそんな時間は与えられない」

まどか「私、本当に情けない。さやかちゃんが、酷い目にあうってわかってるのに、止められない。友達なのに……」

ほむら「……まどかにしかできないことがある」

まどか「……え?」

ほむら「さやかの隣にいてあげて。あの子がどんなに拒んでも」

まどか「……『拒む』?」

ほむら「誰にだって一人になりたいときはある。だけど、一人ではどうにもならないこともある」

ほむら「さやかが一人で乗り越えられなかったら、取り返しのつかないことになるの」

まどか「…」

ほむら「さやかと一緒に悩んであげて。あなたにしかできないことよ」

二人が出て行った後で、マミさんが切り出した

マミ「……あなたたちに、魔法少女になることを勧めたことは間違いだった。自分の無知が恥ずかしい。愚かだったわ」

マミ「……でも、あなたも大概よ」

さやか「…ほむらにもいわれたよ」

マミ「あなた、ワルプルギルスの夜と戦うのにもついてくるつもりなの?」

さやか「うん」

マミ「迷惑ね。正直言って」

さやか「……え?」

マミ「私たちが誰にも頼らないで二人で動いている理由がわかる?足手まといを排除するためなの」

さやか「足手まとい……」

マミ「魔法少女になって一ヶ月未満で、役に立つはずがない。というより、暁美さんの話を聞いていたでしょう?

マミ「実際ほとんど何もせずに死んでいったそうじゃない?」

さやか「……戦わずして魔女になったのがほとんどだって言ってたね……」

マミ「よく覚えているわね。何で魔女になったかも聞いていたかしら?」

さやか「……魔女との戦闘よりは、精神的絶望が原因で、やけになってグリーフシードを使うことを拒絶したこともあるって……」

マミ「重症よね。どれだけ絶望したのかしら」

さやか「…」

マミ「…何で絶望したのかしら?」

さやか「…?」

マミ「上条君がバイオリンを弾けるようになればそれでいい」

マミ「彼が友達にとられても構わない」

マミ「自分は人間をやめてもいい」

マミ「魔女になる前に自分で死ぬ」

マミ「――そんな願いと覚悟を持つ人が、そうそう絶望なんてするものかしら?」

さやか「…」

マミ「……その願いが本当なら、ね」



『契約をした時点では、大抵自分の本当の願い事――自分心の奥底に気づいていないの』

『それに気づいてしまったら、後に残るのは後悔と絶望だけ』

マミ「あなたは上条君にかけた言葉を清算したいだけ――彼の隣に立ちたいだけなんじゃないの?」

さやか「……そうかもしれない」

マミ「なら、契約したって絶望するだけね。志筑さん、だっけ?彼女から告白した場合の成功率も100%だそうよ?まあ、わかってるわよね」

マミ「あなたが先に告白すれば、あるいはうまくいくかもしれないけど、成功したといい難い結果しか得られないでしょうね」

マミ「上条君と何か諍いがあるたびにあなたは思う。『あたしはこんなにあんたに尽くしたのに』って」

マミ「ええ。それを言えるだけの対価を払うことになるわ。言う資格はあるでしょう」

マミ「……言った後の結果はご想像通りだけど」

マミ「隠し通す?果たして隠し通せるものかしらね?」

マミ「少なくともあなたには無理よ。知り合ったばかりだけど断言できる」

マミ「まあ、付き合っている相手に心の奥底を隠し通せるような賢明な人は、こんな愚かな選択はしないでしょうから、前提がそもそもおかしいわね」

さやか「…」

マミ「契約した時点であなたが彼と付き合える未来は訪れない」

マミ「今まで通りの幼馴染としての付き合いさえ難しいでしょうね」

マミ「契約さえしなければ、志筑さんが許すだろうとあなたが考えるラインで接することができたのに。残念ね」

マミ「じゃあ、あなたが二人を遠くから見守って耐えられるかといえば、暁美さんが話した過去の時間軸の通りよ」

マミ「陰から指をかんで勝手に絶望して魔女になるわ」

さやか「…」

マミ「本気で、魔法少女になるなんて言っているの?」

さやか「確かに、私の願いには下心があるのかもしれない。……あるんだろうね。ほむらの話を聞く限りでは」

マミ「わかっているなら…」

さやか「だけどさ、恭介にバイオリンを弾いてもらいたいってのも、本当の気持ちなんだよ」

さやか「後になって後悔するのかもしれない。仁美が恭介の隣にいることに嫉妬するのかもしれない……多分する」

さやか「……それでも、今はこの気持ちを大事にしたいんだ」

マミ「…」

さやか「……それに、ほむらが言ってることは正しいと思うし、いかにもあたしがやりそうなことだと思うけど」

さやか「……ほむらにあんな思いさせて聞き出したのに、最低だと思うけど」

さやか「……それでも、あたしが知らないあたしに縛られるなんて、やっぱり嫌だよ」

マミ「……」

さやか「……足手まといになっても、盾にだって何でもなる」

マミ「……自分の言っていること、本当にわかっているの?人間やめるって言っているのよ?」

マミ「死ぬといっているのと同義なのよ?」

さやか「……わかってる」

マミ「…」

マミ「……」

マミ「…………まさかこんなことになるなんて……」

さやか「……ごめんなさい」

マミ「謝るくらいなら撤回してよ……」

さやか「…」

マミ「……いたずらにあなたの心をえぐるだけになってしまったわね。ごめんなさい。物分りが悪くて」

さやか「…そんなこと、ない」

マミ「……せめて、二人が帰ってきてからにして」

二人が帰ってきてから、あたしは契約した

まどかは泣いていて、マミさんも目を潤ませてた

ほむらは顔を伏せてた。表情はわからなかったけど、多分……

これにて投下終了です。これで第8話完です

投下します




第9話:そんなのさやかちゃんじゃないよ


ほむら「あなたは巴さんに指導してもらいながら魔女を狩りなさい。私は他にすることがあるから」

さやか「することって?」

ほむら「武器の調達と、戦ってくれる魔法少女との交渉」

さやか「あてがあるんだ?」

ほむら「ええ。風見野の実力者よ。まだ接触はできてないけど」

まどか「あの、私は……」

ほむら「……どうせ止めてもさやかに着いて行くんでしょう?」

マミ「まあ、魔法少女が二人いればそう危険はないはずよ」

ほむら「魔女の出現予測は渡してあったわよね?統計通りにならないこともよくあるからあまり当てにされると困るけれど」

マミ「ええ、とにかく数をこなしていかないとね。実践あるのみよ。ビシバシ行くからね。覚悟しなさい」

さやか「はい!」

マミ「ワルプルギスまでに間に合わなかったらソウルジェム取り上げてでもおいていくから」

さやか「……絶対間に合わせる」

それでもって魔女狩りに移行

マミ「暁美さんの情報では、この時期この辺りで広範囲型精神干渉系の魔女がよく出現するらしいわ」

マミ「それほど強いわけではないけど、場合によっては大規模な被害をもたらすそうだから、今日はこの辺りを中心に活動しましょう」

さやか「はい!」

まどか「……?……さやかちゃん、向こうから歩いてくる人――」

さやか「仁美?」

仁美「あら、ごきげんよう。さやかさん、まどかさん。……巴さん、でしたっけ?」

さやか「どうしたの、仁美?今日お稽古だって言ってたじゃん」

仁美「いいんですよ。そんなことは。これからすばらしい世界にいけるんです」

仁美「わずらわしいものをすべて捨てることができる。叶わぬ思いだって。……一緒に行きましょう?」

まどか「……仁美ちゃん?」

マミ「……『魔女のくち付け』ね」

まどか「そんな……!」

魔女のくち付け……人の悩みに付け込む魔女の手口…


――何の悩みがあるって言うの?……何よ……それ……


マミ「……大規模な被害が出るというなら、もっと大勢の人が吸い寄せられているはず。……この娘についていきましょう」

仁美「さやかさん。まどかさん。あの工場です。あれが、新しい世界の入り口です」

仁美「行きましょう。私はもう待ちきれません」

仁美は工場のほうへふらふらと歩いていった

マミ「……何人か集まってるみたいね。美樹さんと鹿目さんは工場の中に多分いるであろう人たちをお願い」

マミ「私は裏から直接魔女を叩くわ。中の人を何とかしてから合流して」

まどか「……中の人たちは何をしようとしてるんですか?」

マミ「集団自殺か殺し合い……いずれにせよ碌な事じゃないわ。とにかく止めて来て」

マミ「美樹さんは回復魔法を使えるから、多少手荒なことをしても問題ないと思う」

さやか「…」

マミ「美樹さん?」

さやか「……了解です」

マミ「……じゃあ、私は魔女のほうに行くわ。気をつけてね」

仁美が入っていった扉から中の様子を伺う
…十人。生身の人間相手なら、いくら初戦といっても問題ないはず
一気にいく?……いや、何をしているかわからないと止めようが……

奥で二人くらいが何かを運んでいる
バケツか……何が入ってるんだろ?魔力で嗅覚と視覚を強化してみる

……!…洗剤!混ぜると危険なやつ!

――――――

――あたし…なんて……こと……

……今は考えてる場合じゃない!あたしはバケツのほうに猛然と駆けていって――

まどかside

さやかちゃんは、突然走り出して一つのバケツを窓の外に放り投げた……混ぜると危険ってやつなのかな?

その直後、一斉に中にいた人たちがさやかちゃんに襲いかかっていった
さやかちゃんは次々と返り討ちにしていく
もともとさやかちゃんは女子にしては喧嘩が強い方だだし魔法少女になれば、なおさら。一般人に負けるはずがない。

だけど…なぜか私は、戦っているさやかちゃんを、とても危うく感じた
なんで、何のためらいもなく人に――仁美ちゃんにまで手を出せるんだろう……

いや、そりゃ緊急事態ってのはわかるし、躊躇っちゃいけないんだろうけど
……そういう風に割り切れないのがさやかちゃんでもあるっていうか……

みんなを気絶させた後、さやかちゃんは一人ひとりに回復魔法をかけていった。上の空って感じだった

さやか「これで終わりだね。マミさんのとこいかないと」




『さやかの隣にいてあげて。あの子がどんなに拒んでも』


まどか「待って」

さやか「何?」

まどか「行かないで」

さやか「……いや、マミさんのとこ行かないと」

まどか「マミさんなら大丈夫だよ。言ってたじゃん。たいした魔女じゃないって」

さやか「万が一ってことがあるでしょ?」

さやか「それに今から実践積んでいかないと間に合わないし、こんなとこでサボってるわけには…」

まどか「今のさやかちゃんが行くのが、かえって万が一だよ」

さやか「……え?」

まどか「今のさやかちゃん、ちょっと危なっかしいよ」

さやか「……なり立てだから――」

まどか「そんなんじゃない」

さやかちゃんはイライラしていた

さやか「わかった。マミさんのとこには行かない……少し一人にさせて」

まどか「嫌だ」

さやか「……なんで?」

まどか「さやかちゃんなら、こういうとき私を一人にしないと思うんだよね」

さやかちゃんは盛大にため息をついた

さやか「ウザい」

まどか「言うんだ?その言葉を」

さやか「言うよ?ホントにウザいもん。魔法少女じゃないまどかに何がわかるって言うの?」

まどか「ベタな逃げだね。さやかちゃんだってなってから1日も経ってないじゃない?」

まどか「まあ、1年経とうが何年経とうがわかるよ?友達だもん」

さやか「何それ……。だったら言ってみなよ」

まどか「私に嫌われてでも、今の気持ちを隠したいんだよね?嫌うわけなんてないけど」

さやか「…」

まどか「……『仁美ちゃん』」

さやか「――――――ッ!!」

まどか「明日、仁美ちゃん、告白するんだよね?」

さやか「…」

まどか「気づいてた?仁美ちゃんに魔女のくち付けがあるって知ったとき、さやかちゃん、すごい怒ってたよ?」

さやか「……やめて」

まどか「ずいぶん容赦なく殴ってたよね。あ、責める気なんてないよ?あれは仕方ない―――」

さやか「やめてっていってるでしょ!!!」

さやか「そーだよ!あたしサイテーなんだよ!」

さやか「仁美が魔女の口付けにやられたって知ったときさあ、すっごいムカついたんだよ」

さやか「明日から恭介と付き合えるってのに、いったい何の悩みがあるだろうって」

さやか「逆恨みだよね!仁美はあたしに譲ったつもりだったのに!」

さやか「仁美にとっちゃ、今にもあたしが告白してるのかも知んないのにさあ!」

まどか「…」

さやか「それで、中の人達が洗剤混ぜようとしてるの見て、あたし…あたし……あたし……」



「………『死んじゃえ』って!」



まどか「…」

さやか「……仁美が倒れていくのを見ながら……『このまま死ねばいいのに』って!」

まどか「…」

さやか「ほむらとマミさんが言ってたとおりだったんだよ……」

さやか「あたしみたいなのが魔法少女になっちゃいけなかったんだ……」

さやか「勝手に契約して、勝手に身を引いて、嫉妬なんかして、その挙句…仁美のことを殺そうとしたんだよ!」

まどか「…」

さやか「駄目だ…もうあたし駄目だ…馬鹿だ…最低だ…終わりだ」

さやか「……もう仁美に合わす顔ないよ……まどかもどっか行ってよ……あたしなんかほっといてよ………あ」

さやかちゃんが突然笑顔になった
目を背けたくなるような笑顔だった

……背けるわけにはいかないんだ……

さやか「遠くに行っちゃえばよかったんだ……」

まどか「……え?」

さやか「遠くに行けばいいんだよ!誰もいないところに!そしたらもう恭介にも会わなくてすむじゃん!」

さやか「仁美と恭介に会わなかったら、嫉妬なんてすることない!」

さやか「恭介に合わなくて済むなら、願いがばれるなんてありえないじゃん!なんで気づかなかったんだろう!」

まどか「…」

さやか「それに、それに――誰にもにこんなの見せたくない……こんなあたし……」

まどか「…」

さやか「お願いだからほっといてよ……もう二度と会わないから……あたしのことなんか忘れてよ……まどかにはわからないよ……」

まどか「わかるって言ってるじゃん!」

さやか「わからないって言ってるでしょ!」

まどか「……ワルプルギスの夜はどうするの?」

さやか「……ほむらは役に立たないって言ってた。なにもできないって」

さやか「マミさんもあたしは足手まといだって……」

まどか「役に立たないからって、足手まといだからって逃げるの?」

まどか「そんなのさやかちゃんじゃないよ」

さやか「あたしってどんなのなのよ……」

まどか「さやかちゃん……さやかちゃんは仁美ちゃんのこと助けたんだよ?」

さやか「でも、あたし、死んじゃえって……」

まどか「だけど、死ななかった」

まどか「……ねえ、私だって、さやかちゃんに嫌な感情持ったことあるんだよ?」

まどか「だめだってわかってても、思っちゃうことはある」

まどか「だけど、後で間違ってたって気づけたら、きっと、それでいいんだよ」

さやか「「違うよ……そうじゃない……私、魔法少女なんだよ?」

さやか「なったのは、恭介のためだったけど、それでも、正義の味方になりたかった……マミさんみたいな…」

さやか「なのに…あたし……あたし……仁美を……こんなの…正義の味方なんて……」

まどか「さやかちゃんにとっての正義の味方って、自分の心を押し殺して、ロボットみたいに人を救う人なの?」

まどか「マミさんやほむらちゃんが、そんな風に戦ってるって思ってるの?さやかちゃんには、二人がそんな風に見えたの?」

まどか「……ほむらちゃんは、私のためにそうしていたこともあったかもしれないけど、あったって言ってたけど」

まどか「少なくとも今は違う」

さやか「…」

まどか「私、さやかちゃんにそんな風になってほしくない」

さやか「だけど…」

まどか「さやかちゃんは、立派な正義の味方だよ」

まどか「上条君に告白されるってわかってても、仁美ちゃんを助けたんだよ」

まどか「迷いや誘惑、ちゃんと振り切れたんだよ。損得勘定抜きにして、友達を助けたんだよ」

まどか「それって、きっと、とてもすごいことなんだよ」

さやか「…」

まどか「私の自慢の友達なんだよ。だから……だから……」

……いつから私は泣いてたんだろう

まどか「いなくなるなんて言わないでよ……」

さやか「……まどかが泣いてどうすんのよ」

さやかちゃんが、ハンカチで涙を拭いてくれた

さやか「ごめん。どうかしてた。…初日からこんなんじゃ、先が思いやられるよね」

まどか「大丈夫だよ。だって――」

四人いて、一人、魔法少女じゃない
気がついたら、みんな、遠くに行っちゃうんじゃないか、いなくなっちゃうんじゃないかって思っちゃう
……怖い。後から後悔なんてしたくない


だから、私は、さやかちゃんみたいに、厚かましく、おせっかいに、傲慢に――


まどか「――私がみんなを守るから!」

それを聞いて、さやかちゃんは微笑んだ

さやか「言うようになったねえ」

さやかside

あたしが落ち着いた後、すぐにマミさんが帰ってきた。少し疲れているみたいだった

マミ「魔女は倒したわ。そっちも大丈夫そうね」

さやか「はい。あの、この人たちはどうすれば?」

マミ「匿名で警察を呼んでおけば多分大丈夫」

マミ「魔女がいなくなれば頭も冷えるはずだし、集団で幻覚でも見ていたことになるでしょうから」

これにて投下終了です。まだ第9話途中です

確かにさやかの性格を考えたら心情吐露が早すぎたかもしれません
まどかの見せ場を入れようと思って性急に過ぎたか…

まあ言い訳(後付)させて頂きますと、さやかからすれば、仁美の名前を出されたことでまどかに全て見透かされたと思ったと考えています
まどか自身は具体的には、さやかが仁美に怒ってる、までしかわからなかったと思いますが

それでは投下します

マミ「これからが本格的な特訓ね。まずは一人で魔女の相手をしてみて。」

さやか「いきなりですか!?」

マミ「危なくなったら援護はするわよ。まずは自分の魔法と武器をよく知ることが大切だから」

マミ「時間もないし、実戦あるのみよ」


さやか「どんなもんですかね」

マミ「回復魔法に頼りすぎよ。そんなんじゃすぐ魔力がなくなるわ」

さやか「はあ」

マミ「先に痛覚遮断なんて知っちゃったからよね……。今後はデフォルト以上の痛覚遮断禁止」

マミ「剣はどんな大きさのものでも、いくらでも出していいから、攻撃を受けないことを最優先にして……いや、今は数より剣の質が重要かな」

マミ「後、スピードが秀でているみたいだけど、生かしているとは言いがたいわね

マミ「少し押さえ目にして自分が制御できる速さを見つけて、だんだんに速くしていきましょう」

さやか「はい!」


1時半になるまでに魔女を7体倒せた。

マミ「今日はここまでね。帰って暁美さんと報告会をしましょうか」

マミさん宅に帰還後、ほむらに今日会ったことを報告
振り返ると恥ずかしいことこの上なく、出来れば何も知られたくなかったんだけど、まあ、あたしに隠し事なんてできないわけで
まどかから工場の件を報告してもらった

ほむら「初日から大荒れとは恐れ入るわ」

さやか「面目次第もございません……」

ほむら「これからも大いにまどかや巴さんに頼ることね。あなたって本っ当に危なっかしいんだから」

さやか「うう…」

ほむら「それと……」

さやか「?」

ほむら「……私も力になれなくもないかもしれない」

…うん。これから何かあったら、あたしを大切に思ってくれる人の顔を思い浮かべることにしよう

マミ「そっちはどうだった?」

ほむら「武器の調達はあらかた完了した。杏子とはまだ接触できていない」

マミ「これからは、佐倉さんとの交渉に力を入れることになるのかしら?」

ほむら「そうなるわね。……こんなところかしら」

さやか「解散?」

ほむら「私は、もう少し巴さんと話がある」

さやか「じゃああたしも――」

ほむら「あなたたちはもう帰りなさい。門限がないからといって、いつまでも外にいてもいいということにはならないわ」

ほむら「特にさやかは、この前も怒られたんでしょう?」

さやか「……うん。流石にこれ以上はまずいかも」

マミside

マミ「それで、話って何?」

ほむら「例の魔女を倒すのに、ずいぶん時間がかかっていたそうね」

マミ「…」

ほむら「嫌な思いしなかった?」

マミ「……タイムリーパーには適わないわね」

マミ「……私たちがしていることって、何なのかなって思って」

ほむら「どういうこと?」

マミ「人を殺して人を救うって、何なんだろうって……」

ほむら「…」

マミ「情けないわよね……。美樹さんは全部わかった上で受け入れたのに、一番長く魔法少女をやっている私が、受け入れられてないなんて」

ほむら「長くやっていたからこそ、でしょう?」

マミ「……かもしれない」

ほむら「月並みでありふれた例え話だけど」

マミ「何?」

ほむら「巴さんが魔女になってしまったとして、それを私が倒したら、私を恨むの?」

マミ「そんなわけないじゃない」

ほむら「ほかの魔法少女だって、きっと同じよ。人って、結構優しくできているの。魔法少女だったらなおさらよ」

マミ「……本当にそうかしら」

ほむら「私は、繰り返す中でたくさんの魔法少女を見てきた」

ほむら「敵対したり、殺しあったりしてきた。今でも許せない人だっている」

ほむら「だけど、自分が魔女になって人を殺すことをよしとする人なんていなかった」

ほむら(正直その、今でも許せない二人のことは未だによくわからないけど)

マミ「…」

ほむら「あなたはどうなの?」

マミ「……そんな人はいなかった、わね」

ほむら「これからだって、多分そんな人は出てこない」

ほむら「希望をかなえるために魔法少女になるんだもの。絶望を振りまき続けるなんてこと、望むはずがない」

マミ「……ずいぶんロマンチストなのね」

ほむら「あなたにだけは言われたくないわ」

私は、クスクスと笑った

マミ「ええ、そうね。……少し悲観的になっていたのかもしれない」

簡単に割り切れる話じゃない
彼女たちが望んでいるから、で済ますつもりもない

だけど、私の道は、もとよりこれしか残されていない
私は生きて、殺して、懺悔し続ける……ワルプルギルスの夜を倒すまでは


そして、その後は――

二日後
あたしとまどかは、一緒に仁美とほむらを待っていた
ほむらも一緒に学校に通うようになったんだ。ちなみに仁美の告白は幻覚騒動で昨日に延期されていた

ほむらの後に少し送れて仁美が来た。ほむらとまどかは昨日のドラマの話
ほむらはドラマを見てないいけど話はできるらしい。そりゃ何回も繰り返してたら飽きるよね
私は仁美にひそひそと話しかける

さやか「で、どうだったの?」

仁美「告白、ですわよね……?」

さやか「それ以外に何があるのよ?」

ぶっちゃけ聞きたくなかったし、もう学校で顔合わすのも避けたいとか、学校やめようかとか枕に顔を埋めて考えたりしたけど
最終的に処刑台で過ごす時間は短い方がいいという結論に至った

仁美「えっと、その……」

仁美「上条さんの手が治ったって聞きました?」

さやか「あー、うん。電話で聞いた。一昨日からお見舞い行けなくなってたんだ」

魔女退治が忙しいのもあるし、告白に来た仁美と鉢合わせるかもって言うのもあった
まあ、手が治れば退院も時間の問題らしいし、もう行かなくても大丈夫だよね

仁美「私も昨日告白しにお見舞いに行ったときに聞かされまして」

さやか「すごいテンション高かったよね。あんなにうれしそうな恭介、本当に久しぶりだったよ」

仁美「それで、その……」

さやか「?」

仁美「雰囲気が、その、告白できる感じではなかったと言うか……」

さやか「あー……あるある(経験ないけど)」

仁美「恥ずかしいです。あんな啖呵をきっておいて……」

さやか「そんなの気にすることないよ」

仁美「でも、退院したら、身の回りのお世話をすることを申しでることができましたわ」

さやか「おー!」

仁美「……今度告白するときは、予告なんてしませんよ?」

さやか「ふっふーん。そんな余裕ぶっちゃってていいのかなー?」

さやか「意気地なしのさやかちゃんだって、ある日突然理屈に合わないことをすることがあるんですよー?」

さやか「勝算のない告白とか!」

仁美「……計算に基づいた行動をしたこと、あるんですか?」

さやか「何おー!?」

こんな感じに、話を聞いた後はうれしさのあまりテンションが上がったり
ちょっと経つと、やっぱり処刑台での時間が長くなっただけじゃないかと思って絶蔵したり

人の感情はやっぱり複雑で難しい。そりゃ宇宙のために役立ちもしますわ
なんて考えた14歳の春なのでした。15歳の春も無事で迎えたいものです

一時間目が終わった後、ほむらに呼び出された

さやか「何?」

ほむら「志筑仁美が告白する前に告白しなさい」

さやか「……朝の、聞こえてた?」

ほむら「途中から丸聞こえよ」

まどかにも聞かれたかな……?

ほむら「いつ死ぬかもわからないのよ?本当に、自分の気持ちも伝えられないで死んでいいの?」

さやか「……今は恭介のことばっか考えてられないしさ。こんな状態で仁美の邪魔するのも悪いと思うんだよね」

さやか「それに、勝手ながら任せるって決めたわけだしね。仁美を見守ることにするよ」

ほむら「…」

さやか「ワルプルギルスの夜を倒せたらさ、気持ちを伝える。その前に仁美が告白したら、そのときはそのとき」

ほむら「…そう」

さやか「その前に死んじゃったら、ほむらから伝えてもらってもいいかな?」

ほむら「…」

さやか「……虫が良すぎる?」

ほむら「……そんなことになったら、洗いざらい全部上条恭介に話してしまうかもしれないわね」

さやか「……それは困る」

ほむら「なら、死なないことよ」

仁美side

病院のスタッフは口々に言っていた。これは奇跡だと

奇跡ならどんなによかっただろう
やはり才を与えた者に天は微笑む。ただそれだけの話

だけど、滅多に起きないからこその奇跡
……付随だった指だけがいきなり事故前の状態に回復するなどあるものか

だからこれは必然
そして、それを起こしたのは、神ではなく人間




――つまり、彼に微笑んだのは、彼女以外にありえない





……



何でこんなことに……


QBside

これは計算外だ。美樹さやかの成長速度が思いのほか速い
ワルプルギルス戦で彼女が犠牲になることを厭わず、盾に徹したら、場合によっては勝ててしまうかもしれない

暁美ほむらに対する切り札も、この時間軸で目標を達成されたら、ないし、達成できると確信されたら意味をなさない

確実に彼女たちの間で犠牲はでるだろうから、鹿目まどかに対する勧誘はやりやすくなるが……
やはり不確定だ。友人や家族が死んだ時の勧誘においても、断られたケースはかなり存在する
鹿目まどかが人一倍感受性が強い人間であるにしても、やはり不確定だ

まだそうは高くない可能性だが、彼女の目的が達成される芽が出てきたわけだ
鹿目まどかに対する勧誘に、失敗は許されない

そろそろ動くべきか――

杏子「グリーフシードの処理以外でこっちに来るとはね。どういう風の吹き回し?」

QB「君に情報を提供しに来たんだ」

杏子「……珍しいね。あんたからこっちに働きかけてくるなんて」

QB「近々マミが君に接触してくるよ」

杏子「……へえ?」

QB「いや、少し語弊があった。もうすでに風見野に一人出向いている。たまたま君に出会わなかっただけだ」

杏子「……はあ?」

QB「現在マミはチームで動いている。構成は、マミと、ベテラン一人と、ルーキーが一人。それに魔法少女候補生が一人」

QB「そのうちのベテランが、風見野に最近入り浸っている」

杏子「穏やかな話じゃないね。てか候補者がチームにいるってどういうことよ?」

QB「彼女は相当強い魔法少女になれる素質がある」

杏子「あんたもマミも、随分そいつのこと高くかってるんだねえ……」

杏子「それで、そいつらの目的は何さ?」

QB「彼女たちに聞けばいい」

杏子「……ふーん」

杏子「このまま風見野で好き勝手されても困るな……」

杏子「どういう理由にせよ、向こうさんに先手を打たせるのはバカだ」

杏子「て言っても、見滝原に出向いて下手打てば3対1、場合によっては4対1か。ままならないねえ」

QB「後ひとつ。ベテランの暁美ほむらは、イレギュラーだ」

杏子「…は?」

QB「彼女と契約した覚えがない。」

杏子「へえ…」




「いずれにせよ――――このまま風見野で出しゃばらせるわけにはいかないね……」


これにて投下終了です。第9話完です
なお、諸事情により、これから、特に水曜日の投下が難しくなるかもしれません

投下します




第10話:ソウルジェムの秘密を知りたくない?


さやかside

仁美の『告白』の顛末を聞いた次の日、私は一人で魔女退治をやっていた
まどかとマミさんはそれぞれ委員会の仕事で遅くなり、ほむらは例の風見野の魔法少女を探すいうことだった
まどかは心配したけど、マミさんは、ほむらの統計から判断して、今の実力でもそう苦戦することはないだろうと判断した
危なくなったらすぐ逃げるように念を押されたけど

今は、見滝原と風見野の町境の辺りで魔女を倒したところ
グリーフシードでソウルジェムを浄化したところで、風見野のほうから魔女の気配がするのに気づいた

……いや、この反応は使い魔か

杏子side

あたしは、見滝原と風見野の町境にある廃ビルに向かっている

結局使者とやらがこっちにくるまで待つなんざ性に合わない
だから、逆にルーキーから色々聞き出そうと考え、境に拠点を移すことにしたからだ
万が一戦いになった場合も想定してのこと

ベテランを巻きつつマミに気づかれずにルーキーにちょっかいかけるっていう微妙なさじ加減が必要だが、そういう小競り合いなら慣れてる
相当な候補者ってのも気になるが、やりあうとしてもなり立てのなり立てだ

問題ないだろ

廃ビルが視界に入ったところで、使い魔の反応に気づいた
別にここでなくてもいいか、と思い、引き返そうとしたところで

――青い何かが目の前を疾走していった

……魔法少女?使者か?……いや、使い間のほうに向かっていったとなると……

変身してあとをつけていってみると、やはり廃ビルに入っていった
青い魔法少女が使い魔に相対している

まったく……あたしは、使い魔をまさに倒そうとしていた魔法少女の足元に槍を投げて威嚇する
そいつは驚いて振り返った

杏子「あんた、どこの街から?」

さやか「……見滝原、だけど?」

杏子「やっぱそうなるよね。マミのところにいる『素人』?」

さやか「……素人といえるのはあたしだけだろうね」

杏子「質問にはストレートに答えな」

杏子「ここは……チッ……縄張り的には微妙なラインだな」

さやか「……あれは使い魔だし、そこら辺はどうでもいいんじゃない?」

杏子「駄目だね。あんたは何もわかってない。使い魔は人を襲うことで魔女になる。これは知ってるでしょ?」

さやか「?…うん」

杏子「じゃあ、何で倒すわけ?魔女になってから倒せば、グリーフシードが手に入るじゃない?」

さやか「!…………なるほど、ね。そっか……」

さやか「ソウルジェムが、濁りきった後のことを考えれば、そういう生き方もありなのかもしれないね」

?……何か引っかかる物言いだな
まあ、わかってもらえりゃ問題ない。意外と物分りがいいな
この分だと、労せずいろいろ聞き出せるかも――

さやか「だけどさ、それでもあたしはあんたを認められない」

杏子「…はあ?」

さやか「あんたがそういう生き方をしていく限り、人が死に続ける」

杏子「……そう……だけど?」

さやか「その中に、あたしの大切な人も入るかもしれない」

杏子「そういうこともあるだろうね。あたしは今は天涯孤独だから関係ないけど」

杏子「……ま、運命だと思って諦めなよ」

さやか「冗談じゃないね」

杏子「ずいぶん甘ちゃんだね。魔法ってのは自分に使うためのものなんだよ」

さやか「あんたが決めることじゃない」

杏子「……ひょっとして、あんた、他人のために願ったくち?」

さやか「あんたには関係ない」

杏子「……まあ、いいさ。…じゃあ、どうする?」

さやか「あんたを叩き潰す」

杏子「……実力差もわからないわけ?」

さやか「わかるよ。あたしじゃちょっと敵いそうにないね」

杏子「……巴マミは随分無能になったんだね」

杏子「敵わない相手からは逃げろってことも教わらなかったのかい?」

さやか「いーや。マミさんはきちんと教えてくれたよ」

さやか「死ぬと思ったら一目散に逃げろって。だけどあたし、馬鹿だからさ、教えられたことを素直に守ることもできない」

さやか「考えてみりゃ契約した時点で教えられたこと守れてないや」

そう言って、素人は剣を投げて使い魔を消滅させた

杏子「そうか、じゃあ、先輩として最初で最後の慰みでもかけてやるよ」

杏子「その、死ぬと思ったら逃げろってやつ、考えてみりゃあいつが一番守れてないからさ」

杏子「死んでも別にあの世で詫びる必要もないんだよ。よかったな。心残りが一つ減って」

杏子「お前が勝手に契約した件も含めて、他人に自分ができないこと要求してる時点で相殺ってやつさ」

さやか「……ちょっと意味が分からないな」

さやか「……ちょっと意味が分からないな」

頭ではわかってる
こいつの背後にはマミがいる
あいつが今すぐ私に危害を加えようって原じゃないとしても、こいつと戦えばそうもいかなくなる
あたしだってあいつとやりあいたいわけじゃない。ここは引くべきなんだ

……だけど、それでも、あたしはこいつの存在を認められない。

杏子「素人、名前は?」

さやか「美樹さやか」

杏子「……そうか、美樹さやか、わかりやすく教えてやる」

杏子「あたしはあんたを認められない。あんたもあたしを認められない」

杏子「どっちも引くつもりはない」

杏子「魔法少女同士がこうなったとき、どういう結果になるかわかる?」

さやか「どうなるの?」

そう言って、素人は剣を構え、前傾姿勢をとった……わかってるじゃないか。あたしも槍を構える


杏子「どちらかが死ぬ」


それが合図だった

これにて投下終了です。まだ第10話途中です

投下します

素人はあたしにめがけて一直線に飛び掛ってきた

スピードはなかなかだが、真正面からなら対応するには余裕だ
あたしは槍で剣をいなして思いっきり腹を蹴ったぐる

素人は吹っ飛び、体勢を立て直すや否やあたしに剣をに投げた

だがそれも予測済み。造作もなく避けられる

今度はあたしが素人に突っ込む。慌てた素人がでかい剣を出してあたしに振った
それを半円を書くようによけて素人の背中に回り込む

素人が反応するも、時すでに遅し
解放した多節槍でしなりを利用しての打撃。ガードは余裕で突き破れる
まずは先手、あるいは決まり手。全治3か月分だ。もう反撃はできないはず

―――だったのだが

まさに届こうという瞬間、槍はあらぬ方向に向かっていった

…それた?無理やり方向を変えられたような……

!!……いつの間にか、あたしと素人の間に魔法少女が立っていた
『ベテラン』……か?そいつが銃をあたしに突きつけていた。あたしは飛びのいて槍を構えなおす

……落ち着け。あの銃は奴が魔法で出したわけじゃない
ただの銃の威力なんて高が知れてる

ベテランは素人に語りかける

ほむら「これは一体どういうことかしら、さやか」

ほむら「あなた、この子が、私が接触しようとしている魔法少女だと思わなかったの?風見野にいる実力者だと教えていたはずよ?」

ほむら「気づいていたはずよね?その挙句、敵いもしない相手に戦闘を仕掛けるなんて、どういう了見をしているのかしら?」

さやか「………申し開きのしようもございません」

さやか「……いや、なんであたしが仕掛けたって決めつけるの?」

ほむら「喧嘩というものはどちらにも原因があって起こるものよ。特にあなたたち二人なら、なおさらね。どちらが先かなんて関係ないわ」

さやか「………まあ、あたしが退けば避けられたかな」

さやか「だけど、どうしても譲れなかったんだ。後で思いっきり叱ってよ」

ほむら「……叱ったところで意味があるのかしら」

ほむら「……いくら言えばわかってくれるの?もっと後先考えて行動してって。自分の命を大切にしてって」

さやか「……ホントにごめん」

『ベテラン』が、今度は私に問いかける

ほむら「あなたもよ、杏子。三滝原との境に現れた魔法少女を見て、巴さんとのつながりをまったく想像しなかったというの?」

杏子「……いや、キュゥべえに聞いてた。巴マミがベテランと素人と候補者の三人と組んで、あたしに近づいてるって」

ほむら「……だったら、なおさら理解できない。巴さんの仲間に手を出すことが何を意味するか、わかっているわよね?」

ああ。知っているとも
ベテランの魔法は……瞬間移動か何かか……わからないうちは敵わないだろうな
おまけに二対一だ。隙を作ってこの場は逃げるしかない

後は……逃げるか、戦うか……微妙な線だな。逃げるならやつらの目の届かない所まで逃げないと意味がない
そうなると、どこかの魔法少女と縄張り争いか

馬鹿なことをやっちまったもんだ……

ほむら「だけど、あなたは運がいい」

杏子「……は?」

ほむら「私たちは、あくまであなたに協力を頼みたいだけなのよ。この娘はよくわかっていなかったみたいだけど」

……助かった、のか?

杏子「……何を協力しろって?」

ほむら「一か月後に、見滝原にワルプルギルスの夜が来る。それを倒すのに協力してほしい」

杏子「……なんでそんなことがわかるわけ?」

ほむら「統計よ」

杏子「統計、ねえ……ま、いいや。三人魔法少女がいて、まだ戦力がほしいなんて、それ以外には思いつかないしね」

杏子「あんたには確証があるんだよね?」

ほむら「ええ。もちろん見返りもある」

杏子「見返り?」

ほむら「見滝原で魔女を好きに狩っていい。何なら今からでも」

杏子「……話にならないね」

ほむら「……え?」

ベテランが心底意外そうな顔をする。何だってんだ?

杏子「あたしは今はグリーフシードにまったく困っていない。何であんたたちと組んでまで、見滝原で魔女狩りしないといけないのさのさ?」

杏子「……もっとぶっ飛んだ見返りかと思ったんだけどね」

ほむら「……」

杏子「しっかし、巴マミにお前に、数には入るかしらないがそこの馬鹿に、相当な候補者一人だっけ?それに加えるためにあたしの勧誘、ね」

杏子「ずいぶん慎重なんだな。まあ、出直しなよ」

杏子「……って言っても、あんたみたいなのに風見野をうろうろされちゃ困るんだよねー……」

ほむら「…」

杏子「まだその気があるなら、交渉役には美樹さやかを使いな」

杏子「ベテラン、お前のほうを今度風見野で見つけたら、問答無用で攻撃する」

ほむら「……そんな条件飲めないわ」

杏子「甘いね、あんたも。なら。この話はここまでだね」

そう言って、あたしは扉の前まで一気に飛ぶ

とにかくこの場からすぐにでも離れなきゃいけない
仮に瞬間移動なら、一手二手でソウルジェムを破壊できる。こいつは危険だ
扉は開いたまま。一気に出られる

だが、まさにビルから出るため飛ぼうとしたとき

ほむら「ソウルジェムの秘密を知りたくない?」

と、やつが語りかけてきた。……なんだ?悪あがきか?

ほむら「ソウルジェムが濁りきった時、魔法が使えなくなるだけで済むって、本気で思ってる?」

ほむら「奇跡の対価は戦い。ならば、魔法の対価は何かしら?」

杏子「……」

ほむら「知りたかったら見滝原まで来て。詳しい話をしてあげる」

ほむら「……人生ひっくり返るわよ?『ぶっ飛んだ見返り』になるでしょうね」

杏子「……じゃあ、あんたは帰りな。美樹さやかから話を聞くからさ」

ほむら「……できない相談ね」

杏子「………あんたたちが交渉役として美樹さやかをこっちによこす。それだけだよ」

それだけ言って、あたしは出て行った

さやかside

佐倉杏子が去ってほむらからさんざお説教をくらった後に、どうしても聞きたかったことを聞いた

さやか「それにしてもさ、ほむら、あれはないんじゃないの?あんなのを見返りだなんて」

ほむら「……そうよね。ありえない提案をしてしまったわ」

ほむら「今まで断られたことがなかったから動転してしまったみたい」

さやか「……え“?」

ほむら「なにが原因だったのかしら…?」

さやか「……はい。あたしのせいです。どう考えても。自分のこと棚に上げて本当にごめんなさい……」

ほむら「え?……ああ、いえ、違うのよ。あなたと杏子が殺し合いをするなんて日常茶飯事だもの」

ほむら「それでもいつも協力してくれるの」

……いつも何をやってるんだ!?あたしは!

ほむら「……よくわからないわ。とりあえず巴さんとまどかのところに戻って相談しましょう」

さやか「もう二人とも、マミさんの家にいるはずだね」

マミさんにも、佐倉杏子と殺し合いをしたことを報告したら、めちゃくちゃ怒られた
ひっぱたこうとしたのを、まどか止めてくれた

……最近怒られてばっかな気がする

その後で、ほむらが交渉が失敗したことを伝えた

マミ「そんなに私と組みたくないのね、佐倉さん……」

ほむら「そうじゃないのよ。あなたと杏子が普通に組んでいた時間軸も会ったの」

マミ「あら、そうなの?……この時間軸で私とあなたがあった日から一ヶ月間を、繰り返しているんだったわよね?」

ほむら「ええ」

マミ「じゃあ、私と佐倉さんの関係も、変わらないはずね……」

ほむら「だから、わからないのよ……どうして今回断られたのか、どういう条件なら受け入れてくれるのか」

まどか「じゃあ、今までほむらちゃんが今まで会ってきた杏子ちゃんのこと、話してみてよ。何かわかるかもしれないよ?」

ほむら「……そうね。それが一番の近道かもしれないわ」

マミ『暁美さん』

ほむら『?』

マミ『彼女の過去のことまで話すつもり、ある?』

ほむら『……話す必要が出たときは時は』

マミ『仕方ない場合もあるでしょうね。でも、ああいった話は本人の知らないところでは、あまりするものではないわよ?』

マミ『彼女を仲間に引き入れようとしているのだから、なおさら、ね』

ほむら『……わかったわ』

これにて投下終了です。第10話完です




第11話:この時間軸でも、もしもの時は


投下します

ほむら「最初に杏子と出会ったのは、三番目の時間軸、二回目のやり直しのときだった」

まどか「ほむらちゃんが、魔女化について初めて知った上で臨んだ時間軸だったね」

ほむら「ええ。だけど、あなたたちが魔法少女になることを、止めることはできなかった」

ほむら「さやかが魔法少女になるのは、あの時間軸が最初だったし、まどかが契約する原因も、まだ全てはわかっていないころだったから」

さやか「あたしって、必ず魔法少女になるわけじゃないんだ」

ほむら「そうよ。繰り返したからといって、私以外のすべての人が同じ行動をとるわけじゃない」

ほむら「些細な違いがほとんどなんだけど、それの積み重ねが大きな変化をもたらすの。計算違いなんてしょっちゅうよ」

マミ「統計が確実じゃないっていうのは、そういうことね」

ほむら「ええ。それで、私とさやかとまどかの三人で、巴さんに、一緒にチームを組んでくれないかって頼んだの」

ほむら「巴さんは快く受け入れてくれて、さやかとまどかの指導も買ってくれた」

ほむら「私は、基本的なことは前の時間軸で教わっていたから、その時間を武器の製造と調達に当てていた」

さやか「そのころからもう強かったんだ?」

ほむら「いえ、まだ試行錯誤していたわ」

ほむら「知っていることを実践できるかって言うと話は別だし、初めは自作の爆弾しか用意できなかったしね」

ほむら「この時に、さやかと一緒に戦うと爆弾を使うのが難しかったから、銃を調達するようになったわね」

……そういえば、ほむらの武器って、どこで調達してんだろ?

ほむら「ただ、私が、みんなはインキュベーダーに騙されているってしつこく主張していたものだから、少しずつ関係がギクシャクしていった」

ほむら「何でそんなことを知っているんだって言われても、うまく説明できなかった」

さやか「……なんか私が原因なような気がするよ」

さやか「まどかとマミさんは、信じないにしても、そんなにひどいこと仲間に言うわけないし……」

ほむら「あなたは、お人好しの二人に変わって、私を警戒していただけよ。気にする事じゃないわ」

マミ「ちょっとー?」

まどか「ほむらちゃん?どういう意味かな?」

ほむら「そのままの意味よ。それで、そんなときに、杏子が私達の前に現れた」

ほむら「きっかけは、さやかが風見野の使い魔を倒したことで彼女と喧嘩になったことだったわ」

さやか「……あたしって、やっぱりいつもそんなことしてるの?」

ほむら「ええ」

さやか「……迷惑かけてばっかりだね」

ほむら「そこは本当に反省してほしいわ」

ほむら「その時、私は杏子の力を知って、是非戦力に欲しいと思った」

ほむら「だから、巴さんに杏子を仲間に入れようと提案したの。巴さんは、悩んだ末に、了承してくれた」

ほむら「一度に二人に指導することに限界が来ていたみたいだったから」

ほむら「さやかと巴さんはタイプも違かったということもあって、同じ近接タイプの杏子にさやかの指導してもらおうということになったの」

ほむら「さやかはかなり反対したけれど、巴さんに負担がかかっているって知ったら、渋々ながらわかってくれた」

マミ「佐倉さんの方は?」

ほむら「杏子には、さやかの指導をしてくれる代わりに、見滝原で好きに魔女を狩っていいって巴さんが提案した」

ほむら「それで、本当にあっさりOKしてくれたの」

さやか「ワルプルギスの夜のことは話さなかったの?」

ほむら「ええ。あの時間軸では本当に余裕がなかったから。そこまで話したとしても、信じてもらえなかったと思う」

ほむら「まあ、結局何もかもうまくいかなかったんだけど」

まどか「……あたしが魔女になっちゃったから…」

マミ「……私がみんなを殺そうとしたから…」

まどか「……私、ほむらちゃんにとんでもないお願いを…」

ほむら「……そこは気にしないで」

ほむら「うまくいかなかった原因は、私が一人だけ全部知っていたのに、それを生かせてこなかったことにある」

ほむら「それにね、まどか、私は、私自身の望みで繰り返しているの。あなたが気にすることではないのよ」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「……話を戻すわね」

ほむら「次の時間軸では、自分から風見野に出向いて、彼女にワルプルギスの夜のことを話した上で協力を要請した」

ほむら「あの時間軸ではチームを組んでいなかったから、そう頼むしかなかったの」

ほむら「だけど、彼女は快諾してくれた」

さやか「うーん、そこでもやっぱりOKしたのか……」

まどか「杏子ちゃんが断ったことって、今の時間軸以外ではないの?」

ほむら「あるにはあるわ」

マミ「そのときの状況について話してくれないかしら?」

ほむら「千歳ゆま、という少女がキーなの」

さやか「千歳ゆま?」

ほむら「そう。杏子が魔女を倒したときに助けた女の子なの」

ほむら「その子、一緒にいた両親をその魔女に殺されてしまって、杏子が引き取ったの」

さやか「あいつ、そんなとこあるんだ」

マミ「そうね……私が知っている彼女は、そういう娘だった。変わったわけじゃないのね……」

ほむら「それで、彼女と一緒に暮らしているときは断るの。『今はこいつのほうが大事だ』って」

ほむら「その子も魔法少女になっていたから、自分が参戦したらついてきてしまう、もしものことがあっては困るって言っていた」

さやか「へえ……」

ほむら「それで、その次の時間軸から、児童相談所に通報して、その子を親から引き離して杏子と出会う接点をなくしたの」

マミ「よっぽどなのね、その親。そんなにポンと児童相談所が動くなんて」

まどか「だけど、だったら、その子は今は、児童相談所、じゃなきゃどっかの施設、親戚……」

まどか「少なくとも杏子ちゃんのところにはいないってことだよね?」

ほむら「ええ。そうなるわね」

さやか「じゃあ、結局、今、なんで断られたのかは、わかんないんだ」

ほむら「そうね。私が知らないことが、杏子の周りで起こったのかしら?」

マミ「でも、それについては調べようがないわ。あなたが風見野に入ることを拒まれたのだから、私が入ってもまずいでしょうし……」

さやか「あたし、交渉のついでに調べてこようか?」

ほむら「だめよ。さっきみたいなことが起こったら、殺されてもおかしくないのよ?」

ほむら「まして、こそこそ嗅ぎ回るだなんて、ありえないわ」

まどか「私が行けば…」

ほむら「だめ。杏子はまどかのことも知っていた。しかも私たちのチームの一人として認識してる。やはり危険よ」

マミ「今は、過去の時間軸について検討するしかないわね」

まどか「……ねえ、ほむらちゃん。杏子ちゃんが協力してくれたとき、私たちはどういう反応をしてた?」

ほむら「そうね……さやかは、喧嘩したり……結構仲良くしてたこともあったわね。仲直りしたこともあった」

ほむら「まどかは……普通に、多少互いに違和感はあっても時間がたてば、仲がよくなったわね」

ほむら「まあ、まどかが仲良くできない人にお目にかかりたいものだけれど。きっと、人間的に何か欠陥がある人よ」

まどか「私のこと買いかぶりすぎだよ……」

さやか「まあまあ。ほむらがまどかびいきなのは仕方ないじゃん」

ほむら「……何かしらその言い方は?…それで、巴さんは………あれ?」

まどか「どうしたの?」

ほむら「ちょっと待って」

ほむらが腕を組んでぶつぶつ呟き始めた

ほむら「あの時は……巴さんがあの魔女にやられて……あの時は、あの魔女に杏子がやられて」

ほむら「……あの時は…杏子が……あの時は……魔女になって…あの時は………殺されて…」

……ほむらはたくさんの修羅場をくぐってきたんだ
この時間軸では、そんなことを経験してほしくない
この時間軸で終わらせてあげたいと、私は思った。たぶん、まどかとマミさんもそう

そして、ほむらが愕然とした表情をして、言った

ほむら「ワルプルギルスの夜のことを杏子に伝えたとき…巴さんはいつもいなかった……?」

マミ「…『いない』っていうのは、死んだとか、魔女になったっていうこと?」

ほむら「……ええ」

マミ「……じゃあ、やっぱり私のせいなんだわ。三番目の時間軸のときはたまたまで……」

ほむら「…違う。違うのよ…。巴さんと杏子が組んでいた時間軸はほかにもあった……」

ほむら「だけど、それがいったい何を……」

まどか「その、杏子ちゃんとマミさんが組んでいた時間軸って何?ワルプルギルスの夜のことは話さなかったんだよね?」

ほむら「それは、その……」

ほむらは言い淀んでいた。チラチラまどかを見ている
……席をはずしてもらう?……いや、蚊帳の外が一番よくない

さやか「ほむら、まどかは大丈夫だよ」

まどか「え?」

ほむら「………そうね」

ほむらは、深呼吸をして続けた

ほむら「魔法少女狩り、というのがあったの」

さやか「魔法少女狩り?」

まどか「何、それ?」

ほむら「………言葉の通りよ。魔法少女が連続して殺される事件が起こったの」

まどか「………何…それ……」

今回はここまでです
実を言うとこんなに触れておきながらおりこ☆マギカは読んでいないので、次回の投下は読んでからにしたいと思います
そんなに時間はかかりません。最速で今日の夜にはできるかと思います

まだ11話途中です

今度はちゃんと見直しました(三度目)
それでは投下します

ほむら「……それで、魔法少女狩りの調査のために二人が組んでいた」

ほむら「巴さんは純粋に事件の解決のために動いていたけど、杏子は、その犯人に思うところがあったって聞いた」

まどか「……なにが原因で、そんな事件が起こったの?」

ほむら「……未来予知ができる魔法少女が起こしたの」

マミ「未来予知……」

さやか「なんでもありなんだねえ」

まどか「何でその子は、そんなことをしたの?」

ほむら「…………間違った未来を見たの」

まどか「どんな?」

ほむら「…………………世界が滅ぶ未来」

………あー……全部つながったわけじゃないけど、なんとなく……
……マミさんも察したみたいだった

……うん。知るべきなんだよね、あたしたちも、まどかも
この時間軸でも、その事実、世界が滅ぶ危険を避けては通れないんだから

まどか「……どうして、世界が滅ぶの?それと、魔法少女を殺すのと、どういう関係があるの?」

ほむら「……世界が滅ぶ原因は、私がしくじること」

ほむら「魔法少女を殺すのは…………インキュベーターの関心をその事件にむけさせること」

まどか「何でそんなことを?」

ほむら「………」

ほむら「………まどかが最強の魔女になった話はしたわよね?」

まどか「……うん」

ほむら「……彼女は、それを阻止しようと動いていたの」

まどか「…………え?」

ほむら「……それで、彼女は最終的に魔法少女になる前のまどかを殺した」

さやか「最低だね」

マミ「許せないわ」

まどか「……私のせい?私のせいでそんな事件が……」

ほむら「あなたのせいじゃない」

ほむら「『間違った未来』を見たその女の独善と、その『間違った未来』で何もできなかった私の甘さが原因なの」

ほむら「それに、手は打ってある。この時間軸でそんな事件は起きない」

まどか「でも、その子、私が世界を滅ぼすのを見たん……だよね………?」

ほむら「……違う時間軸の、間違った未来なのよ」

まどか「だけど……!」

ほむら「聞いてまどか。…大丈夫なの。その点に関しては安心して」

ほむら「まどかが世界を滅ぼしかねない魔女になったことは、一度しかない」

ほむら「まどかが魔女にならないように……してきたから。」

まどか「…え?」

ほむら「………ワルプルギスとの戦いで、見かねたまどかが契約して参戦すると、なぜか倒した後でソウルジェムが限界を迎えてしまう」

ほむら「まどかが、魔女になること、世界が滅ぼすことを望まないって私は知ってたから……だから、私は……」

まどか「…?」

ほむら「……殺してきた。ワルプルギスが消えた後、魔女になる前に」

まどか「!」

……放っておいてもよかったはずなんだ。ほむらはそのときは繰り返すんだから
だけどほむらは、その時間軸のまどかのために、まどかを殺してきた

まどかのためにまどかを殺せるほむらのことを、心底すごいと思った
どれだけ辛かったんだろう…

ほむら「………世界が滅んだときは、そういう結果になるって知らなくて、私がためらったときだけなの」

まどか「ほむらちゃん………」

ほむら「この時間軸でも、もしものときは……」

ほむらは、後に言葉を紡げず泣き出した

ほむら「……ごめんなさい……ごめんなさい……まどか……ごめんなさい…私…私…」

まどかは、ほむらを抱きしめた

まどか「ありがとう、ほむらちゃん。今まで私を守ってきてくれたんだよね」

ほむら「まどかぁ……」

まどか「もう大丈夫だよ、ほむらちゃん。わたし、もう、絶対に契約しないから」

ほむら「約束よ……約束だからね……まどかぁ……」

30分後

ほむら「………見苦しいところを見せてしまったわね」

さやか「いやあ、むしろほほえましかったよ」

マミ「ええ、泣きたいときは思いっきり泣けばいいのよ」

ほむら「………あなたにそうしてもらえると、私としても安心できるんだけど?」

マミ「……善処するわ」

さやか「それでさ、結局佐倉杏子はどういうときに断って、どういうときに断らないのかな?」

マミ「……一回目は私たちを、特に美樹さんの指導を手伝うことに協力した」

マミ「ほかはワルプルギスを倒すため、あるいは、魔法少女狩りを止めるため。断るときは、千歳さんを守るため」

マミ「……今回は何なのかしら?」

ほむら「うーん……」

まどか「……あの」

さやか「どうしたの?まどか」

さやか「どうしたの?まどか」

まどか「杏子ちゃんがさやかちゃんの先生をしたときって、マミさん、大変だったんだよね?」

ほむら「……そう、だけど?」

マミ「……私のためだって言いたいの?」

まどか「そうです」

さやか「だけど、他のときはマミさんはいなかったんだよ?」

まどか「うん。マミさんはいなかった。この町をずっと守ってきた魔法少女が、いなかったんだよ」

ほむら「……え?」

まどか「マミさんの意思をついで、この町を守りたかったんじゃないかな?」

まどか「自分の気持ちを認めたくなかったから、『条件』なんてつけてきたんだよ。きっと」

さやか「……それはいい風に解釈しすぎじゃない?だったら、どうして今回は助けてくれないのよ?」

さやか「この町を滅ぼそうって魔女と戦おうとしてるんだよ、私たちは」

まどか「だけどさ、杏子ちゃん知らないでしょ?ワルプルギスの夜の強さなんて」

さやか「知らない?魔法少女の中では有名な話だって言ってなかったっけ?」

ほむら「……………まさか」

さやか「ほむら?」

ほむら「………最初の時間軸でね、まどか、楽観視……とまではいかないでしょうけど、甘く見積もっていたの。ワルプルギスの夜の力を」

ほむら「マミさんと一緒なら大丈夫だよ、って。巴さんは窘めてたけど」

さやか「……え?」

ほむら「あ!もちろん覚悟はしてて、勇敢に戦ったわよ?」

さやか(そこ、本筋と関係ない)

ほむら「二つ目の時間軸で、巴さんの力を目の当たりにして、一度目の時間軸の結果は何かの間違いだったんじゃないか」

ほむら「少なくとも今回、三人で挑めば負けるはずはないって思った。だけど、ワルプルギスは規格外だった」

さやか「……」

ほむら「現役の魔法少女で、ワルプルギスの力を知っている人は多分いない。杏子も知らないはず」

ほむら「そして、彼女は巴さんの力を知っている」

ほむら「……あのときのまどかと同じような考えを持っていても、おかしくは…ない…?」

さやか「つまり、あいつは、マミさんが困っているときに力を貸してくれて、マミさんがいないときにはマミさんのためにこの町を守ってくれる」

さやか「でも、マミさんが何とかできるときには力を貸してくれないってこと?」

まどか「うん」

ほむら「じゃあ、魔法少女狩りは?最強の魔女にも勝てるって思われてるマミさんが、どうしてそこらの魔法少女に負けるって思うの?」

まどか「ほむらちゃん言ってたじゃん。犯人に『思うところ』があったって」

ほむら「……そうね……恨みに近かったでしょうね」

さやか「……つまり、そのときは、マミさんのためじゃなくて、自分のため…だった7かもしれないと……」

マミ「結構筋は通ってるかもしれないわね」

ほむら「……杏子って、案外面倒くさい娘だったのね」

まどか「ほむらちゃん!」

マミ「だめよ、そんなこと言っちゃ」

ほむら「……ごめんなさい」

さやか「……じゃあ、あたし、明日にでもあいつのとこ行ってみるよ」

ほむら「……言ったでしょう?あなた、さっきあんなことがあったばかりじゃない?」

さやか「大丈夫。今度はこっちから仕掛けない。あいつが仕掛けてきたらすぐ逃げる。ソウルジェムさえ守れれば、すぐ死ぬことはないしさ」

さやか「それに、いきなり殺しにかかるやつじゃないんでしょ?今の話では」

ほむら「何より、ほむらが仲間にしようとしてるやつなんだし」

ほむら「確かに杏子が悪人だとは思っていなかったけど……」

マミ「彼女が悪い子じゃないとは思っているんだけど……」

さやか「……二人とも、何で私を見るんですかね?」

ほむら「自分の胸に手を当てて考えてみなさい」

マミ「回復魔法のせいなのかしら?どうしても無謀な戦いを挑みがちなのよねえ」

さやか「……うう」

ほむら「いっそのこと、三人で行く?この際多少強行的に行ってもいいんじゃないかしら」

マミ「彼女、私たち三人から振り切るくらいならできるわ。そしたら結局ご破算よ」

まどか「じゃあ、私がついていく」

ほむら「まどか!?」

まどか「さやかちゃんが無茶しそうになった時は、私が止める」

ほむら「……さやかでも危ないと言っているのよ?」

まどか「無力な一般人を殺すような子じゃないんでしょ?」

ほむら「………巻き込まれるってことがあるでしょう?」

マミ「暁美さんも私も、あなたが絶対安全だと断言できるわけじゃないのよ?」

マミ「特に私は彼女ともう長いこと会っていない……信じたいと思ってるけど」

マミ「それでも許容できる話ではないわ」

まどか「……わかってます。それでも、私はほむらちゃんを信じます」

ほむら「……まどか…」

……この三人がここまで深刻な顔をするのは、すべてあたしの無鉄砲さに原因があるわけで、本当に申し訳なくて情けない
だからと言って、私が冷静になるといっても、三人とも信じるわけがなくて……

現状を招いた後悔は後でいくらでもする
だけど、あいつは交渉役にあたしを指名した
だから、結局のところ、あたしが出向かないと始まらない
ストッパーは絶対に必要で、それはこの状況ではまどかしかありえない

だから、あたしがすべきことは、しなきゃいけないことは――

さやか『ほむら、何があってもまどかは必ず守る。神に誓う』

さやか『何度裏切ってきたか、あたしにはわからないけど……今の時間軸でも裏切っちゃったけど、今度ばかりは絶対に』

ほむら『…』

ほむら『……』

ほむら「わかった」

ほむら『………あなたが死んだら誰もまどかを守れなくなる。そこは忘れないで』

投下終了です。これにて第11話完です

手は打ってある、の手段に関しては、今回ほむらはマミ・さやかに不信感をできるだけもたれない、をテーマに動き始めていたので
非道な手段はとっていないと考えています。時間停止を駆使して隠滅しても、QBにバレる時はバレますから
具体的な手段に関してはご想像にお任せします

誤字の指摘ありがとうございます
あと、>>405の一行目のセリフと、>>406の「何より、ほむらが仲間にしようとしてるやつなんだし」 はさやかのセリフです
訂正させていただきます

…今度こそは

それでは投下します

翌日、風見野に行くと、佐倉杏子にはすぐ会えた。マミさんとほむらは町境に待機

杏子「そいつ、誰?」

さやか「鹿目まどか。魔法少女じゃない」

杏子「……例の候補者か。契約はまだしてないみたいだね…………何で連れてきたのさ?」

さやか「あたしがバカをやらないために」

杏子「……そういうこと」

杏子(新人が二人になってもこっちには問題ないか)

杏子「……まあいいや。場所移すよ」




第12話:さやかちゃんホントは頭いいんだから!


佐倉杏子の指定で、近くのレストランに入ることになった
魔法少女の話を一般人に聞かれても、頭がにぎやかな中学生の妄想としか取れないだろうということで

お代は私たち二人で持つことになった
あたしたちは慎ましくピラフの単品を、佐倉杏子はステーキ定食とハンバーグとチョコパフェとアップルパイとドリンクバーとを注文した
……好き勝手注文してくれるよ
……今あたしはお小遣いを止められているが、まどかだけに負担させるわけにはいくまい。後でお母さんに直談判しないと
〆て4100円を二人で割って2050円。この金額を手に入れるために、一体どんな代償を払うことになるか……

杏子「で?どういう条件を用意してきたのさ?」

まどか「この前と変わらないよ」

杏子「……なんだ。あんたら、あたしに奢るためにわざわざ風見野まで来てくれたのか」

杏子「案外良い奴なんだね」

ドリンクを飲みながら、佐倉杏子が満面の笑みで言う。
……皮肉?天然?

まどか「……この前ほむらちゃんが話したことを、補足しに来たんだよ」

杏子「まあ、あれだけのものを注文させてもらったわけだし、聞くだけ聞いてやるさ」

杏子「長くなるなら追加の注文もするけどね」

まどかの表情が青ざめる。へたすりゃ二人で皿洗い…で済むんだろうか?
……コンパクトにまとめないと

さやか「ワルプルギルスの夜だけどさ、あたしたち三人がかりでも勝てるか微妙なんだって。てか負ける公算のほうが高いみたい。」

佐倉杏子がドリンクから口を離した

杏子「……『統計』?」

さやか「うん」




「……あんたら、あのベテランに騙されてるよ?」


さやか「何言ってんのよ!?」

まどか「さやかちゃん!」

さやか「―――ッ!……理由、言ってみなよ」

さやか「………根拠無かったらただじゃおかないから」

杏子「親切心で忠告してやっったのにこれえ?」

杏子「てか、ただで済まさないからってあんたにできることって何かねえ?そいつに願わせる?」

まどか「さやかちゃん、大丈夫だから、ね?大丈夫だから……」

さやか「………いいから根拠を話せ」

杏子「じゃあ、あんたらにわかるように説明してやるよ」

杏子「あの後気になって調べたんだけどさ、ワルプルギスの夜って災害に例えられたりするんだけど」

杏子「ホントに大災害の後に、目撃証言からあれがワルプルギスだったんだろうって当たりを付けてるってだけなんだ」

杏子「そんなふざけた資料集めてどうやって統計出すんだよ?」

まどか「普通イメージする統計とは違うの。ほむらちゃんの体験を基にした『統計』なんだよ」

杏子「……ほむらってのは、あのベテラン?」

杏子「うん。暁美ほむらって名前なの」

杏子「……一番最近でワルプルギルスが出現したのは1978年だよ?そのときにまだ1歳だったとしても、計算が合わない」

杏子「まあ、例のふざけた資料によるものだけどさ。最近の何かの災害がそれだったって言ってるの?」

まどか「違う。ほむらちゃんが体験したのはあくまで一ヶ月先のワルプルギルスの夜だけ」

杏子「…はあ?」

まどか「未来から来たんだよ。ほむらちゃんは」

杏子「………」

さやか「……信じられない?」

杏子「……信じるも何も……そういうことができるだろうとは思うけど……あんたら何でそいつを信用したのさ?」

まどか「ほむらちゃんが話してくれたから」

杏子「」

さやか「……マミさんが気づいたんだよ。ほむらが未来を先読みしているとしか思えない行動をとっていたことと、ほむらの能力から」

さやか「具体的に聞きたい?」

杏子「……いや、めんどくさい。まあマミのやつが言うんなら………いや、あいつ甘いからなあ……」

杏子「……チッ」

佐倉杏子は唐突に席を立った

まどか「ど、どうしたの?」

杏子「見滝原に行く。やっぱり直接聞き出すよ」

道中

杏子「相当な候補者なんだっけ?あんたも契約するの?」

まどか「……私はしないの」

杏子「へえ、あんたをうまく言いくるめて手駒にするためにデタラメ言ってるわけじゃないのか」

さやか「……当たり前でしょ」

杏子「そうカッカするなよ。まあ、よかったじゃん。契約なんてろくなもんじゃないし」

……?

杏子side

見滝原の境でマミと暁美ほむらが待っていた。その後マミの家に場所を移して話をすることに

ほむら「で、何について聞きたいの?」

杏子「未来から来たってこと証明をしな」

ほむら「……」

杏子「どうしたのさ?これから起こるニュースとかでもいいんだよ?」

ほむら「……直近では無理なのよ」

さやか(ああ、統計の誤差ってやつか。まあ、それがいつもできるならそこまで苦労しなかったよね)

杏子「俄然うさんくせえ」

ほむら「……あなたの過去、でだめかしら?」

杏子「……あたしの過去?」

ほむら「魔法少女になった時の願いと、その顛末」

杏子「……マミ?」

マミ「私からは話してないわよ?」

杏子「他のやつに話したことは?」

マミ「絶対ない」

……ここで暁美ほむらがデタラメ言ってるなら、いくらなんでも不信感持つよな。そんな様子はない
マミからはないってことか

後ありそうな線は…

杏子「キュゥべえ、あたしの過去を話したことがあるか?」

QB「僕の口からはありえないね。彼女が言うほかの時間軸の僕、なら可能性はあるけど、そんなことをする理由が思いつかないな」

QB「まあ、そこら辺はこの問題ではどうでもいいだろう?」

……あたしはマミにしか話はしてない

杏子「わかった。それでいいよ」

ほむら「……ここで話していいの?」

杏子「隠すことでもないし」

万一組むことになるなら、まあ、なおさらだしな

暁美ほむらが話した内容は、寸分たがわずあたしが体験したのと同じ内容だった
……信じざるを得ないか

さやか「……ごめん。あんたのこと誤解してた」

杏子「別にいいんだよ。イメージ間違ってるわけでもないし」

杏子「それでさ、あたしは人のために魔法を使うのをやめたんだ。神様は希望と絶望は差し引きゼロになるようにしてるんだよ」

杏子「だったら他人のために祈ったり魔法使うなんて無駄さ。結局ゼロになる」

杏子「ゼロで済まないことだって……」

さやか「言いたいことはわかることはわかるけど、あんまり認めたくない話だね」

さやか「あたしは神様が間違ったことをしたのを、元に戻しただけだよ?それで恭介がまた不幸になるなんて納得いかない」

さやか「馬鹿なことしたあたしに天罰が下るっていうならわかるけど」

まどか「私は、さやかちゃんに天罰が下ったら神様を恨むよ。そんなのおかしいもん」

杏子「……あんた、恭介って奴に何したの?」

さやか「事故で動かなくなった指を治すように願ったの」

杏子「……そりゃマミも反対するわな。そんなこと願った時点で、もうそいつとうまくいきっこないよ?」

杏子「どんなに取り繕ったって、あたしがあそこまでしてあげたのに、ってなっちまう。どうせ、そいつに気があるんでしょ?」

さやか「心配してくれてありがとう。マミさんからも言われたよ」

さやか「だけどさ、そんなのわかってるんだよ。恭介、あたしの親友とくっつくことになるだろうから」

杏子「……それも統計?」

さやか「うん」

杏子「あんた、それわかってて契約したの?」

さやか「……うん」

杏子「……馬鹿だね…」

さやか「……最近よく言われる」

ほむら「『最近』……?」

さやか「ほむらぁ~!?」

まどか「やめてよ!さやかちゃんホントは頭いいんだから!」

まどか「えっと…えっと……えーっと…」

さやか「……ごめん…まどか…もういいよ……」

杏子「……ともかくだ、まあ、あたしは成りそこないのシスターだからさ、あんなこと言ってなんだが、神様の本意なんてわかんないや」

杏子「さっきのは、単なるあたしの考えってだけし。恭介って奴とお前がこの後どうなるかなんてあたしにはわからない」

杏子「ま、せいぜい気をつけて見守ることだね」

さやか「……ありがと。気をつけるよ」

杏子「言ってる意味わかるよな?そいつから離れるなって言ってるんだよ?統計なんて覆しちまえ」

さやか「……うん」

杏子「……それでだ」

一同「?」

杏子「条件」

一同「!?」

杏子「なにか上乗せして」

一同「……?」

ほむら『どういうこと?ここにきて条件なんて』

マミ『グリーフシードの現物かしら?』

ほむら『困ってないって言ってたわ……お金?』

マミ『……それをこちらから言い出すのは、かなり失礼じゃないかしら』

さやか『あの』

ほむマミ『?』

さやか『他人のために魔法を使わないってのを、守ろうとしてるんですよ、きっと』

さやか『私たちの考えでは、少なくともマミさんのために戦う意思はずっと持っていた』

さやか『この分だと気付いてないみたいですけど』

さやか『そして、少なくとも今この瞬間は認めたくない』

さやか『だから条件上乗せで、そのために組むってことにしたがってるんですよ』

ほむら『……本当に面倒くさい』

杏子「なにか失礼な話してない?」

マミ「…」

マミ「……」

マミ「じゃあ」

杏子「お、何くれるのさ?」

マミ「……い、一緒に住まない?」

杏子「………!」

マミ「衣食住は提供できる……………あなたが嫌じゃなければ」

杏子「……あんたはどうなんだよ?」

マミ「……嫌じゃないわ」

杏子「……」

杏子「………あたしだって…嫌なわけ…ないじゃん」

マミ「佐倉さん……」

マミが目頭を押さえた。

マミ「ありがとう。佐倉さん……本当にうれしい。私、あなたに嫌われているものとばっかり……」

杏子「……ホントにお人よしだよ。弟子が師匠にあんなこと言ったんだよ?普通そっちから勘当でしょ……」

杏子「………まあ、あれだ」

杏子「……」

杏子「あたしも嫌われてると思ってたからさ、うれしいよ。ホント」

言い終えて、二人で笑いあった。二人とも、少し涙声だったと思う
みんな、にこやかだった。まるで普通の中学生が、普通に友達同士で話しているような、和やかな雰囲気

あ、そう言えば、気にはなってたんだけど




「それでさ、『ぶっ飛んだ見返り』って何なの?『ソウルジェムの秘密』ってやつ。」




途端に、あたしを除く全員の笑顔が凍りついた

これにて投下終了です。第12話完です

小説版・漫画版は読んでいません

それでは投下します




第13話:もう戻れない


ほむら『どうしよう……?』

マミ『暁美さん、あなた、あんなことを見返りだなんて言ったの!?』

ほむら『ごめんなさい……』

マミ『……謝る相手が違うわ。わかってるわよね?』

ほむら『……ええ』

さやか『それでさ、教えないってわけにはいかないんじゃない?あたしたちだけ知ってるって「言うのも……』

マミ『……ええ。戦闘でも、やっぱり知っているのと知らないのでは違うわ……』


杏子「あんたたちさあ、魔法少女相手にテレパシーで密談なんてよくやるよね」

杏子「いや、何話してるかはわからないけどさ」

杏子「後、さやか、あんたのテレパシーは不充分だよ。少し聞こえる」

まどか「私、何話してるかわかんない……やっぱり、仲間はずれは良くないよ……」

ほむら「そうね……」

ほむらが私に向き直って頭を下げた

ほむら「はじめに謝らないといけないわ。ごめんなさい、杏子。あれは見返りなんてことに使える話じゃないの」

ほむら「あなたを引き止めるためにとっさについた嘘なの。本当にごめんなさい。」

杏子「けど、でまかせってわけじゃないんでしょ?『ソウルジェムの秘密』っていうのは」

ほむら「ええ。気を強く持って聞いて」

……相当いやな話らしいな……こんな気分になるなら聞くんじゃなかったかなあ……

杏子「わかった」

ほむら「……ソウルジェムって、魂なのよ」

……へ?

杏子「……いや、知ってるよ?魔法少女の魂だよ?濁りきったら魔法を使えなくなるんだから――」

ほむら「そうじゃない。そのままの意味の魂なの。これが砕けたら、私たちは死ぬの」

ほむら「この石ころが私たちの本体で、体は抜け殻に過ぎないの」

杏子「え゛?」

………おいおい聞いてないぞ……

……待て待て……もしそうだとして………


杏子「濁りきったらどうなるんだ……?魂が濁るって……」

つい口に出してしまった
あたしはこんらんしている。



「魔女になるの」



杏子「は?」

ほむら「ソウルジェムが濁りきったら、私たちは魔女になるの」

……………

その後話されたのは、キュゥべえことインキュベーターのエネルギー搾取計画
だけど今の状態でそんなもん頭に入るか微妙、というか平常でもすこぶる疑問で
宇宙人があたしたちをもてあそんでいるとしか取れなかった

…………この場にマミがいる……
マミは……うそは……吐かないし……付いてるときはわかる

……つまり、あいつは信じた……
……この話は……マミが絶対に認めたくない話だ…

…ってことは…あいつが信じたってことは……それなりの確証があるってことだ……

……あいつは頭もいい…でまかせってことはないだろう…つまり―――

杏子「――マジなのか……」

ほむら「ええ」

QB「本当だよ」

この場のインキュベーターの存在を今更ながら思い出し、瞬間、あたしは槍を召喚して奴に突き刺そうとする
反射といって差し支えない速さだった

だが、できなかった。マミが銃であたしの槍の矛先を変えたからだ
マミと別れてからあたしもそれなりに腕を磨いてきたつもりだったんだけど……

……だけど、この時頭を支配していたのはそんなことじゃなくて――

杏子「……何で………?」

マミ「あなたの気持ちはよくわかる。だけど待ってほしい」

杏子「……何で止めるんだ………?」

マミ「この子は、私の友達だから」

杏子「何で!よりによってあんたが!そんなことを言えるんだよ!?」

杏子「この話を聞いて一番ショックを受けたのはあんたのはずだ!」

杏子「あんたの生き方を全否定するような話じゃないか!!!???」

マミ「その前に死ぬつもりだから」

杏子「……!!!」

あたしは崩れ落ちるようにして椅子に座って、気を落ち着けるために紅茶をがぶ飲みした
そんなことで落ち着くわけは無いんだけどね

杏子「………あたしはこの際いい。好き勝手に生きてきたし、どうせろくな死に方しないと思ってた」

杏子「お似合いの最後だ。自業自得だよ」

杏子「……自殺なんてするか。ほかの魔法少女がなんとかすりゃいいんだ……」

杏子「けど、何であんたや……さやかみたいな奴まで……同じ結末にならなくちゃいけないんだよ……」

杏子「おかしいだろ……何でこんな……」

QB「このシステムはどの少女にも公平で平等だっていうだけだよ」

QB[生前の行いによって救済が左右されないというのも君の父上が所属していた宗派の教義どおりじゃ――」

杏子「出てけ!!!」

周りを見れば、ほむらは銃を、さやかは剣をあいつに向けていた
まどかも腕を捲り上げている。こいつがここまで怒るなんて意外だな。全く似合わない
マミさえも、武器こそ構えないものの、青筋を浮かべて震えていた

杏子「今度マミの手を噛むような真似をしてみろ……マミがなんと言おうと知るか……」

杏子「テメエらの仲間を根こそぎ地球上から殲滅してやる……!」

QB「そんなことを出来るものなら是非やってみて欲しいね。掛け値なしに史上最強の魔法少女といえる」

QB「魔女となったときに生まれるエネルギーも実に甚大だろう―――」

四人の一斉放射と、奴が消えたのはほぼ同時だった

マミ「……気持ちは多いにわかるし、友達とはいえ私も仕留められなくて少し悔しい気もするけど、ここが誰の家か考えて欲しかったわ」

結局、後には床が抉られた跡しか残らなかったというわけだ

杏子「悪ぃ……」

さやか「ごめんなさい……」

ほむら「弁償するわ……」

まどか「何もできない身でよかった……」

杏子「……つーかさ、あんたたちこれ知ってて契約したわけ?」

ほむら「私は、最初は知らなかったわ。まあ、知ってても契約したでしょうけどね」

さやか「あたしは最初から知ってたよ?」

杏子「……付き合えもしない片思いの相手の腕を治すために契約したんだっけ?」

さやか「うん」

杏子「……化け物になるって知ってたわけだ?」

さやか「……うん」

まどか「化け物じゃないよ」

杏子「……そう言ってもらえるのはありがたいよ、ホント。世の中あんたみたいなやつばかりじゃないからさ」

杏子「当然のことだし、文句言うこともできないけどね……」

杏子「この馬鹿を支えてやって」

まどか「うん!」

さやか「やっぱり馬鹿なのかなぁ……?」

杏子「馬鹿だ。真正の馬鹿だ。人生を棒に振るような馬鹿だ」

さやか「そこまで言われたのは初めてだよ……」

ほむら「あなたの周りの人に感謝することね。」

さやか「……ほむらぁ~?どういう意味なのかなぁ~?」

ほむら「そのままの意味よ。現に棒に振りかけてるじゃないの。しっかりしなさいよ?」

さやか「うう……」

杏子「……いいからじゃれてないで、ホームセンターにでも行って木材とか買って来い」

杏子「マミとあたしで家でできることはやっておくから。」

さやか「へえ、杏子そんなことできるんだ」

杏子「まあいっつも廃材でチョチョイってやってるからね

マミ「私はそういうのは得意じゃないわよ?」

杏子「手伝いが要るんだよ。家主にこんなことさせるのも悪いけどさ、マミの家なんだから。やり方は教えてやるから」

さやか「てかこういうのって管理人に報告するものなんじゃないの?」

杏子「ばれなきゃいいんだよ。終わったあとで魔法で修補すれば元通りさ。誰にも分からないって。」

これにて投下終了です。まだ第13話途中です

投下します

杏子「なあ。マミ」

やっぱりマミは慣れてない感じで四苦八苦って感じだった

マミ「何?」


杏子「あんた死ぬ気でしょ?」


マミが手を止めた

マミ「…ええ。言ったじゃない?魔女になる前に死ぬつもりだって」

杏子「『魔女になる前』が、相当前な気がするんだよ」

マミ「…」

杏子「ワルプルギスを倒した後すぐ、とかさ」

マミ「………よくわかるわね…」

杏子「不肖だけど弟子のつもりだからね」

このお人よしのおかげで、今日からまた胸を張ってそう名乗れる
うれしい限りだ

…こんな奴が損をするなんて、早死にするなんてあっちゃいけないと思う

マミ「……だめ、かな?」

杏子「だめでしょ、そりゃ」

マミ「……今まで、魔法少女として、できることを精一杯やってきた」

杏子「……うん。マミほど魔法少女を体現したやつはいなかっただろうさ」

マミ「最後くらい、わがままを許してほしい」

杏子「……最後のわがままが、死なせてくれ、って何だよ……そんな悲しい話があるかよ……」

マミ「……」

杏子「あたしだって恐いんだよ……さっきはああ言ったけどさ……やっぱり人を殺したくなんかないよ……」

杏子「散々好き勝手やって、あんなことまでしてきて何言ってんだとは思うけどさ……」

マミ「……あなたは自分で思ってるほど悪い人じゃない」

杏子「……どうかな」

杏子「…さやかだってさ、絶対後悔するよ。覚悟はしてるみたいたけど、そんなに都合よくできてないんだよ、人間は」

マミ「……」

杏子「マミが、魔女になった魔法少女のこととか、あたしが考えもしないようなことまで考えて苦しんでるんだろうってことはわかるよ」

杏子「マミが背負うものとあたしが背負うものの重さは違うんだろうさ」

杏子「多分、あたしにはマミの生き死ににとやかくいう権利なんてない」

杏子「……それでも、あたしはマミに生きてほしいんだ。一緒に戦ってほしいんだよ」

マミ「……」

杏子「……ほむらとまどかだって同じだよ」

杏子「逃げないでくれ」

杏子「……マミが死ぬととても寂しい、から」

マミ「………」

マミ「……自分のことしか考えてなかったかもしれないわね」

マミが、ため息をついて自嘲気味に笑みを浮かべて言った

マミ「今までずっと一人だった。あなたと別れてからもずっと一人」

マミ「……暁美さんが現れて、鹿目さんと美樹さんと出会って、友達になった。魔法少女の仲間ができた」

マミ「本当は美樹さんには加わってほしくなかったけど、それでも仲間が増えたのは純粋にうれしかった。喜びや苦しみを共有できた」

マミ「魔法少女じゃない友達もできた。とても新鮮で、私たちが守ってきたものの意味を感じることができた。あなたとも友達に戻れた」

マミ「だけど、私は友達に甘えてるだけで、みんなのことを考えてなかったみたい」

マミ「……」

マミ「一人だったら、自分のことだけ考えてればよかったんだけどな……」

杏子「戻りたい?」

マミは首を横にを振った

マミ「もう戻れない」

杏子「……だろうね」

マミ「……ねえ、佐倉さん」

杏子「何?」

マミ「私、あの話を聞いて以来、時々、衝動的にソウルジェムを割りそうになるの」

杏子「……」

マミ「正直ここまで自分が弱いと思わなかった」

マミ「暁美さんの話では、みんなと心中しようとしたこともあったんだって……」

杏子「だけど、今、マミは砕いてないし、心中だってしようともしてない」

杏子「これからだって、絶対にない」

マミ「……何でそんなこと言えるの?」

杏子「マミにみんなを見捨てることなんてできっこないからさ」

杏子「ワルプルギルスを倒すことを一区切りにするつもりだったんだろうけど」

杏子「それが逃げだって、みんなを見捨てることだって気づいたから」

マミ「……一人じゃないって、楽じゃないわ……」

杏子「あたしも不肖ながら支えてやるよ。何でも言ってみな」

杏子「できることなら何でもしてやるから」

杏子「できないことはしないけどさ」

マミ「……じゃあ、ちょっとお願いしてみようかな」

杏子「何?」

マミ「……」

マミ「ちょっと胸貸して」

…今まで誰にも相談できなかったんだろうな。弱みを見せられるタイプじゃないし、立場でもないか…

まあ、あたしも同じか。見せられる相手もいなかったし

杏子「奇遇だね。あたしも胸を貸してもらえる相手を探してたんだ……ずっと」

三人が帰ってくる前には二人とも泣き止んだが、赤くなった目はごまかしようがなかった

ほむらとまどかは深入りしようとしなかったけど
さやかはしつこく何があったのか聞こうとして


ほむらとあたしの鉄拳を食らった

これにて投下終了です。これで第13話完です

今度こそミスはしません
……毎度気をつけてはいるのですが…

それでは投下します




第14話:さやかさんのことを馬鹿にしすぎではありませんか?


杏子side

マミの家の修繕が終わってから今後の方針について話し合いが行われた
結果、あたしがにさやかを特訓して、ほむらとマミが魔女狩りをしてグリーフシードを集めるということを主軸とすることになった
無論さやかには実践が必要であり、その日出現が予測される魔女のレベルと相談してぶつけた方がいいときにはぶつける

まどかはさやかの特訓の付き添い
もちろん安全面を考慮してのことだが、あいつがいればあたしとさやかがヒートアップしてもほどほどで収まるという計算もあった

ちなみに、どうでもいいことだが、マミが衣食住を提供する際の条件として、使い魔も狩るというのが入っているので、そうしている
お人よしにもマミはそういう条件を出すのを忘れていたので、あたしが言い出したんだけど
しかしまあ、それを提案した時のさやかのにやついた顔と言ったら……

……いや、わかってる。もうかなり色々破綻してる
それでも、他人のために魔法を使わないというやり方はあたしの中で結構な部分を占めてるんだ
これを捨てたら、一人になってたから積み上げてきたものが全部吹っ飛んでしまいそうでとても怖いんだよ

……だけどもう逃げてもいられない
あいつらと一緒にいるなら、自分がしてきたことと向き合わないといけないから

ただ、本当に難儀なもので、今時分と向き合ったら多大なグリーフシードを消費しかねない。てか間違いないと思うんだ
それであいつらに迷惑をかけるわけにもいかないから、ワルプルギスを倒した後に、と後回しして自分を保ってる
 
大丈夫。今まで、あんなことがあっても耐えてきたんだ。後、数週間くらい保たせてみせる
……それで、そんなに引き延ばした後に、自分と向き合って、懺悔しても許されるか――それは後の別の問題だ
許す主体は何か、なんてことは知らないけど

そしてただいま河原であたしとさやかがその特訓中

さやか「うー…おかしい!不公平だ!」

杏子「なにが不公平だっての?あたしとさやかの素質は同程度、経験の差が実力差ってことだよ?公平じゃん?」

さやか「武器だよ、武器!槍は剣より強いって相場が決まってんの!」

杏子「へ?そうなの?」

まどか「……さやかちゃん、それ、ゲームの話じゃないの?」

マミ「まあゲームは置いておくにしても――――」

杏子「おー、マミ。もう交代か」

マミ「ええ。―――確かに普通なら、特に初撃に関していえば、リーチの差で槍は剣に強いと言えるかもしれないわね」

さやか「ほら見ろ!」

マミ「普通なら、ね」

さやか「はい?」

マミ「私たちは魔法少女なのよ?ちょっと貸してね」

マミはさやかの剣を一本借り、刃の部分を指で拭くように撫でた。そして、叫ぶ

「トランスフォーマジオーネ!」

瞬間、あたしの多節槍と同様に刃がいくつもの節を作り分断される。節と節をつなぐのは、やはりあたしのと同様に鎖だ
ひとしきり自在にその多節剣を操った後に元に戻し、切っ先を川に向けて再び叫ぶ

「トラジッカ・ボンバ・ディ・アモーレ!」

叫ぶと同時に刃が柄から発射されて、高速で直進したのち爆発した

さやか「ス、スゲー!」

杏子「……まだ技名叫ぶの卒業してなかったわけ?」

マミ「いいじゃない?まだ中学生なんだもの」

さやか「マ、マミさん!今のどうやるの!?」

マミ「柄の、このあたり、歪な魔力を感じる?ここから魔力を注入して、剣をどう変化させたいかイメージするの」

さやか「よーし。えいっ!………あれっ?」

杏子「さやかの場合は魔力の制御からだよ。あんなもん見ていきなりできてたまるか」

杏子「大体歪な魔力もそもそも感じ取れてないでしょ。つまり魔力探知もまだまだってこと」

さやか「先長いなぁ…。やっぱみんなこんなもんなの?」

杏子「大体そんなもんだ。一部例外はいるが」

さやか「どんな人?」

杏子『今痛い技名を連呼したやつとか』

さやか「マジ?やっぱすごい人なんだなぁ……」

杏子『……実際あたしたちのお師匠様はスゲーんだよ』

杏子『そもそもほかの魔法少女の出した武器を使おうなんて発想が無茶なんだ』

杏子『流す魔力の質そのものが違うんから、本来一振りでもしようものならすぐさま消え去るのが普通で』

杏子『あんな一瞬で流すべき魔力の量と質を見破って必要なだけ流すなんて、無茶にもほどがある話さ』

杏子『そんなわけでワルプルギスに負けたとかマジかって話だから』

杏子『……マミには言わないでよ?』

さやか「分かってるって!」

マミ「何の話してるの?」

さやか「それがですねー杏子がマミさんのこと――――」

杏子「コラー!」

それからしばらく経って

マミ「あら、もうお昼?あ、鹿目さんも委員会終わったんだ」

ほむら「ええ。休憩よ」

まどか「お弁当持ってきました!」

ほむら「……巴さん、やけにご機嫌ね」

ほむら「……そこの二人の『修行』も喧嘩に映るわ。特に杏子は冷静さを欠いてる。なにがあったの?」

マミ「ふふふ」

まどか「け、喧嘩はだめだよ!二人とも!」

それであたしたちが落ち着いた後にお昼になった
さやかはいつか殺す

杏子「このおにぎりうまいなー」

さやか「そうだね。まどかが作ったの?」

まどか「うん!」

ほむら「とてもおいしいわ」

まどか「えへへ。ありがとう。……あ」

さやか「ん?……あ…」

杏子「どうしたよ?」

ほむら「……あそこ、歩いている二人、上条恭介と志筑仁美よ」

杏子「……例の二人か…」

さやか「……ほんとだー。あの様子だとまだ告白はまだ見たいだねー。早くしちゃえばいいのに」

さやか「それはそうと、ほむらー、クラスメートをフルネームで呼ぶのやめなって」

ほむら「……あの二人に関しては絶対無理よ。そこまで私は出来てない」

さやか「まったくもー。仕方ないことでしょーが」

杏子「……」

さやか「しっかしもう退院か。早いなー。そういやこのくらいの時期に退院って言ってたっけ」

杏子「……本人に聞いたんだよな?」

さやか「ううん。前にほむらから聞いた」

杏子「……」

さやか「…どこ行こうとしてんの?」

杏子「用事思い出した」

さやか「どんな用事か言ってみなよ」

杏子「……毎日見舞いに来てた女に連絡一つ寄越さないで退院するバカに、どういう了見してるのか聞きに行くだけだよ」

さやか「恭介が忘れちゃうのは仕方ないんだって!バイオリン馬鹿だからさー」

さやか「バイオリン弾けるってなったらそれだけで頭いっぱいになっちゃったんだよ」

杏子「だから、ああして二人で歩いてて仕方ないって?」

さやか「そーそー。それにあたしだってまだ諦めてませんからねー?」

杏子「……諦めてるじゃないか。あたしの魔法なめるなよ?」

さやか「……え゛?……な、なに?魔法でそんなこともわかるわけ!?」

杏子「ばーか。さやかほどわかりやすいやつはいないよ」

まどか「……私もわかるよ」

ほむら「誘導尋問ね」

さやか「……あたしがネガティブだってだけだよ」

杏子「……本当か?」

さやか「うん」

ほむら「さやか、あなたはワルプルギスを倒したら上条恭介に気持ちを伝えるつもりだと言った。嘘じゃないわよね?」

さやか「うん」

杏子「どう?」

まどか「……嘘はついてない…と思う……」

マミ「……佐倉さん、いずれにせよこれは美樹さんたちの問題よ。気持ちはわかるけど、あなたや私が首を突っ込んだりしても悪化するだけ」

マミ「わかるでしょう?」

杏子「……チッ。」

ほむらside

巴さんと杏子が私とまどかに目を向ける
さやかと志筑仁美、その両方の親友であるまどかと、遡行により二人のことを少なからず知っている私にしか対処できないだろうということだ

しかし、さやかはワルプルギスを倒すまで上条恭介に告白するつもりはない
志筑仁美が先んじるリスクを考慮した上で、さやかが出した結論に文句を付けるというのも憚られる
それはまどかも同じなようで、結局さやかに現段階で告白を強制することなどできない

ともすれば、ワルプルギスを倒すまで志筑仁美が告白しないことを祈るばかりだが
彼女が今現在告白していないことはそもそも奇跡のような巡り合わせなのだ

さやかの話では、志筑仁美は病院で上条恭介のテンションに戸惑ったに過ぎず、いつまた告白してもおかしくなさそうなものなのだが
一旦覚悟を決めた後の肩すかしによほど堪えたのだろうか?

いずれにせよ、今の私たちにできることは、この奇跡のような現状を長引かせることだけ

最も「たち」と言っても、まどかはさやかと志筑仁美のどちらかを選ぶことはなかった
思えば当然のことで、まどかにとっては、さやかと志筑仁美、ともに優劣などない親友なのだ

まどかは悩みに悩んで、上条恭介と二人との関係を静観することに決めた
まどかがそう決断した理由は私にもよくわかる

志筑仁美の告白を裏で阻止することは、さやかへの侮辱に他ならない
さやかはすべてを知ったうえで決めた
だから私たち4人がすべきことは、本来さやかを信じ、支えることしかない



しかし、私はまどかの思いを無視して契約した――私があの後辿る運命を知っていれば絶対にまどかは止めただろうから――通りの即物的な人間であり

――――志筑仁美と二人で話し合うことにした



私に色恋沙汰などわからない。ノープランだ

仁美「―――つまり、告白を延期しろと仰っているのですね?」

ほむら「ええ」

仁美「……暁美さん、あなたがさやかさんのことを大切に思っていらっしゃることはよくわかります」

仁美「しかし、これは私たち三人の問題なのです。それがおわかりにならないあなたではないでしょう?」

ほむら「……本来、そうよね」

仁美「……本来、ですか。イレギュラーなケースだと?」

仁美「確かに奇跡が介在して腕が治ったところはイレギュラーとも言えましょうか」

仁美「それが本来の事柄から外れる要因となるのですか?」

ほむら「………ねぇ、あなたが告白することで、さやかが大変なことになるとしたら、どうする?」

仁美「……なにを言いたいんですか?」

仁美「……まさかとは思いますが、さやかさんが自殺するとでも仰りたいんですか?」

ほむら「あなたはどう思う?」

仁美「………随分昔からさやかさんが上条さんをお慕いしていることは知っています」

仁美「仮に私の告白が成功すればとても傷つくでしょう」

仁美「でも、さやかさんにはまどかさんがいる。あなたも、家族だっています」

仁美「ええ。私との関係が修復不可能になるかもしれないくらいです」

仁美「……よほどのことがない限り、とても致命的なことになるとは思えません」

仁美「それに、さやかさんは自分の気持ちに整理をつけているように見受けられました」

仁美「もっとも、その覚悟を自分の告白に回してほしいと思ったからこそ、初めに――――いえ、脱線ですわね」

仁美「とにかく、こう言ってはなんですが、さやかさんのことを馬鹿にしすぎではありませんか?」

仁美「わたくしが怒る筋合いのものではありませんが」

ほむら「自分でもさやかをバカにしてると思ってる」

ほむら「でも、これは、自殺とは少し違う、不可抗力みたいな話なの」

ほむら「あなたが告白すれば、さやかの意志や強さと、その、ほとんど関係なく、大変なことになってしまう……かもしれない」

ほむら「そうはならない、させないってまどかは考えてるけど、私は、万が一がとても怖い」

ほむら「だから、どうか延期してほしい」

仁美「……延期することでいったい何が好転すると仰るのですか?」

仁美「それに、どの程度延期しろと?私が身を引けということなら、いくらなんでもひどすぎる話だと思います」

ほむら「本当に、私が言った日まで延期してくれるだけでいい。それ以上のことを望めるはずがない」

ほむら「その期日まで待ってもらえたら、さやかは告白する」

ほむら「……どうしても解決しないといけない問題があるの。それを解決するまで、さやかは上条恭介のことを考えている余裕がない」

ほむら「さやかはそれで告白する資格がないと考えているけど、私にはそうは思えないの」

仁美「しかしですね、さやかさんがそうやって気持ちに向き合うことを後回しにしてきたからこそ、今の今まで告白がなされなかったんですよ?」

仁美「問題が解決され、気持ちに向き合っても、告白を後回しにするなら結局何も変わっていません」

仁美「待たされる側のことも考えてほしいものです」

ほむら「……そういう日常的な類の問題ではないのよ。万人が、それは後回しも仕方ないと思うような問題なの」

ほむら「……期日になったら、私がさやかの首根っこをつかんででも上条恭介に告白させる」

ほむら「……さやか自身はもう整理をつけてるから、私が出る幕もないかもしれない」

ほむら「いずれにせよ、その期日以降あなたを待たせることにはならないわ」

仁美「……ずいぶん抽象的で要領を得ない話ですわね。あなたらしくもない」

ほむら「……」

仁美「さやかさんが先に告白すれば、仮に失敗しても『不可抗力みたいな話』から逃れられる」

仁美「そして、さやかさんは期日までに、『日常的な類の問題ではない』なにかを解決するまで、告白するつもりはない、と仰りたいんですね?」

ほむら「正確に言えば、逃れられる可能性が上がる、ね。私は逃れられると信じてる」

ほむら「延期さえしてもらえれば、後は私たちでなんとかして見せる」

仁美「……」

仁美「……今の私たちの間にある黙示の取決めは、50-50でフェアーに、それだけです」

仁美「取り決めという言葉を使った通り、おそらくさやかさんも同じように考えているはずです」

仁美「そんな的を射ない話を考慮する余地などありません」

ほむら「……」

仁美「……しかし…いかにもさやかさんが考えそうなことですわね」

仁美「『日常的な類の問題ではない』何かをさやかさんが抱えているとしたら」

ほむら「!」

仁美「……私も、最初に告白するのはさやかさんであってほしいと思っています」

仁美「本当に、その問題は期日までに解決され、かつ、さやかさんが告白しない場合にはたきつけられるんですね?」

ほむら「ええ!必ずそれはかなえてみせるわ!」

仁美「……そう遠い話ではありませんし……私自身告白を今日明日にするつもりは元々ありませんでした」

仁美「本当にさやかさんのためになるというのなら、あなたが仰った期日までは待ちましょう」

仁美「それが最後の猶予です」

ほむら「それで…構わない」

ほむら「感謝するわ。本当に」

仁美「……お分かりでしょうが、このことがさやかさんに知られたら何の意味もありません」

仁美「何せ相手はさやかさんですから。私の告白が成功する以上に傷つくかもしれません」

仁美「こちらは大丈夫ですが、そちらはどうですか?」

ほむら「こちらも問題ないわ」

仁美side


もうこれは間違いない


問題は、日常的な類でない問題は何か、ということ。不可抗力みたいな話、即ち例のリスクとは別の問題らしい

もっと踏み込んで聞くべきだっただろうか……?
だけど、今の私にはもう認識できないじゃないか……
さやかさんが決断し、実行した以上、もはや私にできることなど何もない

リスクに関しては可能性はあったが、こうしてさやかさんとライバルとなった以上、彼女の性格からすれば私の励ましなんて……

もう致命的なことになってしまうかもしれない
どうして、暁美さんが転校してきて、さやかさんが不自然な行動を取ったあの時に気付けなかったのか……

あの時ならば、まだできることがあったはずなのに……
あの時に気付けなくても、時間はあったのに……

ほむらside

志筑仁美が言うように、確かに話の拡散は防ぐべきだが、こちらには報告すべき人がいる

杏子はあの調子なら志筑仁美と上条恭介に何かしかねない
事実を報告する必要がある

杏子が巴さんに隠し通せるとは思えないので、巴さんにも私の口から直接説明する

まどかは、さやかに隠し通せるとは思えないので、断腸の思いで伝えないことにした

これにて投下終了です。まだ第14話途中です
第14話の残りは、ほむらの報告です

投下します

杏子「それで、今までさやかには焚き付けるようなこ言ってきてなんだけどさ」

杏子「あいつが延期すれば本当にうまくいくもんなの?」

ほむら「さやから告白したことは今までない。もしかするともしかするかもしれないわ」

杏子「それ単にあのヤローが最初にコクった奴と付き合うサイテーヤローってことになるんじゃあ……」

杏子「そんな奴にさやかを――」

マミ「男の子ってそんなこと誰でもあるんじゃないかしら?美樹さんが告白するならそういう可能性込みでするってことじゃない?」

マミ「美樹さんがあれだけの覚悟で契約して告白するんだもの。私たちがとやかく言える話じゃないわ」

杏子「そりゃそうだろうけど…」

マミ「それに、二人は幼馴染なんでしょう?そういう相手を異性として見てなかった、なんてよく聞く話じゃない?」

マミ「それに期待しましょう?」

ほむら「なるほど。考えもしなかったわ。さすが巴さんね」

杏子「映画や小説で聞くって枕詞が入るんだろうなあ……」

マミ「何か言った?」

杏子「いや、何も」

マミ「…ふふ」

杏子「なんだよ?」

マミ「いえ、佐倉さんに友達ができてとってもうれしいなって」

杏子「はあ!?いやそんなんじゃ……」

杏子……それもあるのかな…。ただ、報われるべきやつは報われてほしいし、死ぬべきじゃないやつは死んでほしくないっていうか……」

杏子「なんでこんなこと考えてんだろ……」

杏子「……そのうち自分で気づけるのだから、私からは何も言わない方がいいんだろう」

マミ「ふふ」

杏子「だから何だよ!?」




第15話;みんなが考えていることがわからないよ


さやかside

最近あたしの戦闘は様になりつつある
魔女と一人で戦っても大概苦戦しないで倒せるようになった

時間停止を使わない自分は既に抜いていると、何故か遠い目をしたほむらから言われたくらい

……あのほむらがほめてくれるなんて大変珍しいことで、とてもうれしいんだけど…

ほむらの時間停止は、連続使用と長時間使用の制限に気をつければGSの消費量少なく隙をほとんど見せずに使える、ほぼノーリスクの技だ
それを使えない状況と言うのが思い浮かばないから、どうしてそういう言い方をしたのかがわからない

………うーん、いわゆるツンデレなのかな。それはそれで可愛げがあるけど

遠い目と言えば、最近仁美はよく考え事をして、たまに話しかけても無反応だったりする

告白しに恭介の病室に行ってから、かな。順調すぎる恋に逆に不安を覚える、みたいなのならいいんだけど

実際問題恭介絡みならあたしがしゃしゃり出るのもあれだからなあ…
まあ、ほむらの話聞く限り、悩みも程々にうまくいってるみたいだし大丈夫かな



……あんまり大丈夫だとこっちが大丈夫じゃなくなるんだけど……



……勝手にばかやったんだから、大丈夫にしないとね

そんな感じで大体順調に過ごしてきて、今は決戦3日前の平日の昼
ほむらは係の仕事で、私とまどか二人で昼食を屋上でとることになった

場所を提案したのは私
どうしてもまどかに言っておかないといけないことがあったから

今回はここまでです。まだ第15話途中です
ストックが尽きかけているので次の投下は遅れるかもしれません

次からの投下が遅れがちになるかもしれません、という方が適切でした

マミさん、大体仰っている通りなので自演はされなくてもよろしいかと思います
もちろん杏子の力も大きいですが

それでは投下します

さやか「ねぇ、まどか」

まどか「なに?」

さやか「3日後にさ、あたしたちが死んだら――――」

まどか「やめて」

さやか「やめられないんだな、これが。死ぬ可能性がとても高いんだから」

まどか「…」

さやか「あたしたちが死んでも、そのために契約はしないでほしいんだ」

まどか「……やだ」

さやか「ほむらと約束したでしょ?契約しないって」

まどか「ほむらちゃんとの約束は大事だけど、みんなの命だって大事だもん……」

さやか「ほむらが今までどんな思いで戦ってきたか考えなよ」

まどか「ずるいよ……。さやかちゃんだって……勝手に……契約したじゃない。……なんで私の勝手は許されないの?」

さやか「そうだよ。あたしが勝手に契約したの」

さやか「その勝手にまどかを巻き込んじゃったら、生き返っても、たぶん耐えられない」

さやか「ほむらも杏子も、自分で選んで魔法少女になったんだよ」

さやか「マミさんだって、心底かわいそうだって思うけど、それでも後悔してないって言ってた」

まどか「私だって、さやかちゃんが、みんなが死んだら耐えられないよ……」

さやか「耐えて」

まどか「……」

さやか「ちっぽけなプライドなんだよ」

さやか「いろんな雑念やら下心が混ざってたにしても、最後に残るのは、最初に湧き出た恭介への想いであってほしい」

さやか「恭介のために結末まで受け入れたんだっていう、さ」

さやか「それで、まどかの犠牲で結末変えられたら、あたしもうどうしていいかわからなくなる」

まどか「わからない……さやかちゃんが、みんなが考えていることがわからないよ……自分の命より大事なものなんてあるの?」

さやか「今まさに自分の魂捨てて他人を救おうと考えてる人が何言ってんのさ」

まどか「……あ」

さやか「まぁ、あいにくあたしたちは受け入れてるからさ、まどかの出る幕はないんだよ」

まどか「……」

まどか「約束……して。みんな、生きるために闘うって」

さやか「……努力はする」

まどか「じゃあ、私も、努力はする」

さやか「…じゃあ、さ、契約しようと思ったら、みんなの顔思い浮かべて」

さやか「特にほむらの顔。それで契約するなら、もう仕方ないかな」

まどか「……さやかちゃんも、約束して」

まどか「いよいよ死ぬかもしれないってなったら、みんなの顔、ママの顔を思い浮かべて」

まどか「自分の命をまず守って」

結局あたしたちは結果について互いに保障できず、過程のみを約束した

……あたしが、生きるために闘う、という過程さえも努力目標にしようとしたのは
つまり、死ぬために戦うことになるだろうという漠然とした予測があったからで

その予測は、決戦前日、ほむらが用意したいくつかの戦闘プランの共通性を見つけたとき、確信に変わることになった

投下終了です。第15話完です

投下します




第16話:何を勝手に盛り上がっているの?


対ワルプルギス殲滅作戦前日の夜、最終打ち合わせのために4人でほむらの家にお邪魔した
相も変わらず魔法仕掛けのほむホームは奇妙奇天烈に資料を浮かべている
美樹ハウスもこんな感じにできるんだろうか、とも思うけど、お母さんになんていわれるか

現在まどかが買い出し中

ほむら「以上が、私が立てた主な作戦パターンの全てよ。何か意見はある?」

さやか「ある」

ほむら「何かしら?」

さやか「なんで、このプラン、全部あんたがとどめを刺すことになってるの?」

ほむら「たまたまよ。まぁ、私は能力的に特殊だし…それに、やつとの因縁も頭に入ってるかもしれないわね」

さやか「嘘だね」

マミ「美樹さん、今は……」

さやか「どの道キュゥべえから告げられることだよ」

杏子「……そうだな。受け入れてもらわなきゃだな」

ほむら「あなたたち、いったい何の話をしてるの?」

さやか「ねえ、ほむら、あんたワルプルギスをまどかが倒した時は、必ず魔女化してたって言ってたよね?」

ほむら「……言った、かもしれないわね」

さやか「言ったんだよ。それって今まで何回あった?」

ほむら「……2回」

さやか「必ずっていうからには複数回必要だからね。最小数できたか」

ほむら「なにか問題あるかしら?」

さやか「それどっちとも、いわゆる最強の魔法少女?」

ほむら「そうなるわね。まともに勝てたのは、まどかが最高の素質を持っていたときだけだから」

さやか「確か、まどか素質は遡行の度に高くなっていったんだっけ?」

ほむら「……え?…」

QB「それは僕から説明しようかな」

ほむら「インキュベーター……」

……マズ…ほむら自身は気づいてなかった?

QB「まどかの素質は君の素行の回数と比例して強くなっていった――見たところ三人ともそう解釈していたようだよ?」

QB[君がわからなかったわけがない。気づかないようにしていただけだ」

ほむら「……何の話を?」

QB「単なる時間遡行では素質が比例して上昇することの説明はつかない。平行世界を移動しているとするのが妥当だろうね」

ほむら「……は?」

QB「まどかを中心点として君が平行世界移動を繰り返したことで、まどかに因果が集まり素質が上昇したといっているんだよ」

ほむら「……待って…平行世界って…まさか……」

QB「ご想像の通りだよ。今現在も、まどかが死んで君が捨ててきた世界は存続しているんだ」

ほむら「……そ……んな……」

マミ「暁美さん、気をしっかり持って!最初の時間軸で既に、元々鹿目さんは死んでたのよ?」

マミ「暁美さんが平行世界を移動していたとしても、それは、今まで鹿目さんの生死には何の影響もしていないの」

ほむら「……だけど……!」

杏子「……割り切れることじゃないよな。……今の時間軸のまどかのこと考えなよ」

杏子「ほむらが諦めたら、あのまどかは間違いなく死ぬんだよ?」

杏子「ごまかしてでも、無理してでも戦わないと、さ」

杏子「後悔することがあるなら、全部終わった後でしなよ。……ひょっとしたらあの世でだって、後悔ならできるかもしれない」

ほむら「杏子……」

さやか「それに、さ、案外うまくいったら、今までの時間軸とうまい具合に統合されてハッピーエンド、なんてあるかもじゃん」

QB「確かにないとは言い切れないね。やり直しを実現するのに平行世界を提供するというのは少々遠大だ」

QB「それ以上のことを残していてもおかしくはない」

QB「まあ、契約を交わした僕しか知りようのないことだけどね」

さやか「……ほむら、大丈夫だよね?」

ほむら「……」

ほむら「……情けないわね、まったく……この時間軸ではこんなことばかり」

ほむら「もう大丈夫よ。元々私はまどかを助けるために戦うだけなんだから」

さやか「そっか。それでさ。本題はそこじゃないんだよ」

ほむら「……みんな、さっきから何の話をしてるの?」

さやか「ほむらの話を聞いたうえでの推測を話していい?」

ほむら「……別に、話すだけなら構わないわ」

さやか「まどかの莫大な素質により、キュゥべえからまどかはよく勧誘される。それに私も含まれることもよくある」

ほむら「ええ」

さやか「それで、いくら契約原因を排除してもまどかの前にキュゥべえが表れても意味がないと業を煮やしたほむらは」

さやか「キュゥべえとの接点をなくせばいいと考えてキュゥべえ排除を第一の方針としてきた」

ほむら「それは話したことだったわね」

さやか「だけど、キュゥべえ排除に動くとあたしたちとの関係があまりにうまくいかない」

さやか「そして、キュゥべえとまどかの接点を長期間排除するのが難しい」

さやか「だから、今回はキュゥべえ妨害を諦めてまどかに真っ先に忠告だけすることにした」

ほむら「そうだけど?」

さやか「あたしがいうのもなんだけど、ほむら、頑固でちょっと容量悪いからさ、結構それ思いつくのに時間かかったと思うんだよね。5周とか」

杏子「ほんとにさやかが言うとアレだな」

ほむら「19周」

一同「…!」

ほむら「19周かかって思いついた。笑っちゃうでしょ?」

さやか「……笑わない。笑うわけがない。笑うやつがいたら許さない」

ほむら「……」

さやか「それでさ、まどかがワルプルギスを一撃で倒せる、世界を滅ぼせる魔女になってから何周した?」

ほむら「……」

ほむら「……2周」

QB「それはありえないね」

ほむら「―――ッ」

QB「僕が察するに、鹿目まどかという少女には元々図抜けた素質はなかった」

QB「さやかや杏子と大して変わらなかっただろうね」

QB「これはあくまでまどかの性格、環境、性質を分析した上で、今までの経験則と照らし合わせた推論に過ぎない」

QB「しかし、人類の歴史すべてを俯瞰して得た経験則から導き出したものでもある。そこまで誤差はないだろうね」

QB「そして、そのような素質の少女が平行世界移動によって史上最強の魔法少女、」

QB「僕たちのノルマを一度に達成できるレベルの素質に昇華するのにかかる遡行回数、すなわち世界跳躍の回数は――」


「――4・5回だろうね」


キュゥべえがこっちの味方に、ね。やっぱあたしたちから話された方がまどかも信じやすいか

だけど、あたしたちがいない時にキュゥべえから話されていい方向にいくとは思えない
やっぱりあたしたちから話すしかないよね
マミさんと杏子もそう考えてるんだろうし

さやか「そして、ほむらが多く繰り返した直接の原因が重要になるんだ」

さやか「話を聞く限りだと、ほむらはワルプルギスの力自体はそんなに問題視していないようにみえた」

さやか「いや、それより前に生じる問題が大きくて、後に回さざるを得ないって感じかな」

ほむら「……」

さやか「それは何か……っていうまでもなくまどかの死、契約だよね」

さやか「で、未契約の状態で死んじゃうのかって言えば、それはかなり少ないと思うんだよ」

さやか「ほむらとマミさん、それに杏子、あたし、周りに大体一人か二人は魔法少女がいる」

さやか「中々これでは死なないでしょ?敵対しようが離れようが、みんなまどかに手を出すようなことはしないもん」

さやか「例のイレギュラーだって次の時間軸から何とかしてきたって言ってたし」

さやか「……あ…っと。あたしはちょっと危なっかしいかな?」

さやか「まどかの近くで魔女化しちゃったりとか、まどかといるときに杏子やほむらに喧嘩うっちゃったり?」

さやか「……迷惑じゃすまないかもね、これは」

ほむら「……あなたが直接の原因となってまどかが死んだことはないわ」

さやか「……ありがとね」

さやか「それで、残る可能性はワルプルギスくらいかな?」

さやか「だけど、仮にそこまでまどかが未契約でたくさん来てるなら、あたしたちとの関係のためにキュゥべえを襲わない、なんて考えるかな?」

さやか「考えないし、考えてたらだめだよね。あと一歩じゃん」

ほむら「……」

さやか「てことはだよ?ほむらが繰り返してる大部分の原因っていうのはつまり」



「まどかが契約しちゃうから」


ほむら「……」

さやか「じゃあ、契約したまどかはどんな運命をたどるのかな?」

さやか「ほむらのループで大部分を占める世界最強のまどかについて考えようか」

さやか「さて、このまどかは魔女・魔法少女との戦闘で死ぬ、ないし魔女化するか?」

さやか「中々死にはしないと思うんだよね。何せ最強だもん。問題は魔女化かな」

ほむら「……攻撃するときにね、魔力を使いすぎちゃうのよ。だからすぐに魔女になっちゃうの」

さやか「どう?マミさん、キュゥべえ?」

マミ「どう、と言われても、きちんと指導すればいいんじゃないかしら?」

マミ「鹿目さん、話を聞く限りでは、魔法少女としてのセンスがないわけじゃないんでしょう?むしろいい線言ってるみたいじゃない?」

マミ「魔力量の調節くらいすぐにできるようになりそうだけど」

QB「そうだろうね。ぶっつけ本番でもない限りは大丈夫だし――いや、ぶっつけ本番でも普通はないね」

ほむら「……私って、薄情だから、まどかが契約した時点で何も指導せずにやり過ごして、魔女化の前に繰り返しちゃうの」

さやか「下手で辛い嘘はやめなよ」

ほむら「……」

さやか「じゃあ、精神面、絶望で魔女化するかどうか」

QB「そうそうないだろうね」

QB「三周目、目の前でさやかが魔女化し、マミが杏子を殺し、そのマミをまどかが殺した」

QB「この状況でも魔女化しなかったんだから、およそほかの周で、一か月の間に心が壊れるなんて想像しがたい」

QB「ありえなくはないが、かなりのレアケースだろうね」

マミ「……」

杏子「……

ほむら「……」

さやか「……てなわけで、まどかは大部分の周で魔法少女としてワルプルギスと相対するところまで行く」

さやか「そして、ワルプルギスを倒したまどかはなぜか魔女化する」



「なぜ?ここまでくればさやかちゃんでも解ける」






「ワルプルギスにとどめを刺した魔法少女は、魔女化するようにできてるからだよ」



今回はここまでです。まだ第16話途中です

なお、デスノートの「ここまで来れば馬鹿でもすべてが解ける」で>>1は解けませんでした
一重に>>1の読解力の問題です

みなさんがさやかちゃんみたいにわからなかった場合は
一重に>>1の文章力と構成力の問題です


PSPだと魔翌力切れってことになってたなぁ
ワルプルを瞬殺できる膨大な魔翌力放出に魔法少女に成りたてのまどかのSGは耐え切れんとか
ちなみに脚本だと2週目3週目は「撃退」で魔翌力切れだったか


ワルプル倒すと魔女化設定は縛りきついなーくらいにしか思わんけど
何度やってもあいつに勝てないって言ってたしあの装備揃える手間からして本編はまどか契約せずにやって結構負けてそう

後虚淵の発言あるから普通に平行世界への移動ってことでいいんだろうけど、遡行時までの因果を背負って全く同じ始点に戻る
そこから別の可能性を選択したのを平行世界と表現した的なのでQBの発言は単なる時間遡行でも説明つく気がしないでもない

SSだし面白いから何でもいいやで落ち着くんだけどさ


まあ、まどかもさやかも長くて1・2ヶ月くらいのなりたてだからな
でも魔法少女の大半が初戦で落ちるらしいからワルプルくる辺りならルーキーの看板降ろしてもいいのかな

それはそうと、叛逆でも思ったがさやかが頭よさそうに話してるとなんか笑えてくる不思議
勘自体はかなりいいって分かってるのにどうしてこうなった



>>558
おまおれ
さやかちゃんが頭良さそうにしてるとなんとなく落ち着かんw

まず、遅れましたが、>>512の、杏子「……そのうち自分で気づけるのだから、私からは何も言わない方がいいんだろう」
をほむらsideとしての地の文だと訂正させていただきます

>>556
まどポはやっていません
説明されましたか…そりゃされますよね……

>>557
例によって解説、後付、言い訳させていただきますと
まどかワルプルギス前のいつかに契約→ほむらがまどかを説き伏せてまどか待機→劣勢ないし敗色濃厚→まどか参戦→……、といった具合です
ほむらにとって契約の時点で失敗確定ですので、リスタート後、まずは、というか大体いつも頭にあるのがまどか契約阻止である、といった感じです
……苦しいかもしれません。素直に忘れていたと言った方がいいかも……

>>558>>561
あの語りはマミがする方が適切ではないか、と自分としても悩んだりしましたが
さやかが、屋上で、さやか自身わかりきっていたことしか聞き出せず、ということもありましたので
今回はさやかでと決めました


長文失礼しました。それでは投下します

追記
>>557
時間遡行か平行世界移動かに関しては、このSSではQBがそう考えたとしか言いようがないです
……ひいては>>1の理解不足です

QB「魔女とは絶望を振りまく存在であり、普段君たちが魔女を倒したときその影響を受けている」

QB「君たちがそれを意識しないのは、もともと魔女を倒す際に魔力を使っているからなんだ」

QB「ワルプルギス級ともなれば受ける絶望も殊更で、それこそ倒す際の魔力消費と合わせれば即魔女化してもおかしくないね」

QB「魔力を使わなければ、といったレベルでもないだろう」

ほむら「その通りよ。まどかは必ずワルプルギスと戦うと魔女化してきた。たぶん誰が倒してもそう」

ほむら「だから私がとどめを刺す。それでいいじゃない」

マミ「納得すると思う?」

ほむら「……私、ね、元々あの夜を越えても詰んでしまうの」

一同「……え?」

ほむら「私の時間停止、遡行は、あの夜を越えたら使えなくなる」

一同「……!」

ほむら「魔女一体もろくに倒せなくなるでしょうね。そもそも武器だって時間停止で盗んできたものだから」

QB「なるほどね。君の素質で時間停止と遡行は大それていると思っていたんだ」

QB「いくら専用武器に攻撃性がないにしても、ね」

QB「使用可能期間が定められているというのなら納得できるよ」

さやか「それでもあたしたちと協力して魔女を倒したりグリーフシードを融通しあえば―――!」

ほむら「新人魔法少女がベテランと組むのとはわけが違う。私には改善できる見込みが全くない」

ほむら「他の魔法少女が出した武器を使う?100年かかるんじゃないかしら」

ほむら「私と協力してグリーフシードを融通しあうなんて、寿命を削る行為よ」

ほむら「融通しあうといえば聞こえはいいけど、私が一方的に貰うだけになる」

ほむら「そんなの絶対にできない」

杏子「……確かに、ワルプルギスを倒した後でほむらと組むことは、あたしたちの命を確実に縮めるね」

杏子「そこの二人はそれでもいいっていうだろうけど、あたしは絶対に反対する」

杏子「あたしとほむら、どっちかを選べって話だ。ましてほむらにその気がないんだからさ」

マミ「佐倉さん……」

さやか「杏子……!」

ほむらは微笑んだ

ほむら「やっぱりあなたならわかってくれるわね。信じてた。ありがとう、杏子」

杏子「だけどさ」

杏子「例えほむらがワルプルギスを越えて、すぐに死ぬ運命にあるとしても」

杏子「それでも、明日死んでいいってことにはならないんだよ」

ほむら「……」

杏子「親父が言ってた。どんな奴にも命は平等だって」

ほむら「……訂正する。やっぱりあなたって面倒くさいわ。こうして深く接するまで気づかなかった」

ほむら「あなたたちもよ。みんなおかしいわ!」

ほむら「言ったでしょう?私はみんなを切り捨ててきた。そのことに何の後悔もない」

ほむら「そして、これからも。この時間軸で失敗したら、あなたたちを平気で切り捨てる」

ほむら「そんな人間が明日死ぬっていうだけじゃない?」

ほむら「何の問題があるっていうの?」

マミ「そうよね……あなたは今回、私たちに情を持ちすぎた。それを切り捨てるって難しいと思う」

マミ「そして、うまい具合にことが運んでしまった。戦力までそろった」

マミ「今後もこういうやり方でやらざるを得ない」

マミ「この状況で切り捨てて繰り返すっていうのは、みんなと敵対するよりも、ある意味きついかもしれない」

マミ「……だけどね、それでもあなたなら耐えられると思う」

マミ「勝手な言い分かもしれないけど、今まで一人で血反吐を吐くほど頑張ってきたあなただから」

マミ「もちろん、今後もこう、うまくいくって保証はないんだけど」

ほむら「……かみ合わないわね。何の話をしているの?ああ、あなたコミュ障だから――」

マミ「暁美さん、簡単に、平気で人を切り捨てられる人間はね」


「そんな風に、人を思って泣かないのよ」


ほむら「―――ッ!」

慌ててグシグシとほむらは涙をぬぐった
結構前から、みんな、自分が黙って死ぬのを止めてるって、ほむらが気づいたあたりから泣いてたんだけどね
気づいてなかったのか

まったく……今さら悪ぶっても遅いんだっての

さやか「ほむら、もうあたしたち知っちゃったし、決めちゃったからさ」

さやか「止めを刺す人は決めないで行こう?いろんなバリエーションのパターン作ってさ」

さやか「そっちのほうが勝てる確率も上がるでしょ?」

ほむら「……」

ほむら「……」

ほむら「……ワルプルギスを倒した後に、魔女ともう一戦やる力なんて残らない」

ほむら「……誰が倒すかわからないけど、私はそいつのソウルジェムを打ち抜くわ」

杏子「あたしもそのつもりだよ」

さやか「仕方ないもんね」

マミ「……できれば砕かれる側でありたいものね。逃げなんでしょうけど」

ほむら「……もう知らない。勝手になさい」

さやか「まー、なんだかんだで新人魔法少女のさやかちゃんが、ベテラン陣みんな出し抜いて止め刺しちゃうんですよねー」

さやか「痛快でしょ?」

杏子「よちよち歩き卒業したばかりのひよっこが何言ってんだか。あたしがやるのが相場ってもんさ」

ほむら「……」

ほむら「私の能力の右にでる者はいないわ」

マミ「あらみんな、だれが一番強いか忘れちゃったの?」

……うん。ほむらも何とか保ってる
あとはあたし一人死んでハッピーエンド。ま、最強の魔女相手なら上出来でしょ
みんなそう考えていることには目をつむろう。あとは運次第

そして今は――



「みんな、何を勝手に盛り上がっているの?」


今まで見たことがないほど怒髪天の我らがお姫様をなだめないと



「盗み聞きとは人が悪いなー。いつから聞いてたの?」



「ワルプルギスを倒した魔法少女が魔女化するってあたりから」


投下終了です。第16話完です

このSSでは遡行を使えなくなるということでお願いします

収納を極めても戦闘に使えないとほむらは考えています
元々ワル後を生きるつもりは、ワル撃破=魔女化を知った後はなかったので
ほとんど考えたことがないという方が適切でしょうか

あのQBを襲った魔力弾では魔女との戦いを生き抜けないと考えているということでお願いします
実際QB一匹仕留められていませんし
これもやはりその後、を考えていない以上ほむらはほとんど考慮していませんが


それでは投下します




第17話:私たちは、魔法少女だから


さやか「そっか、全部知られちゃったか」

まどか「……どうして自分の命を諦めちゃうの?」

さやか「だって他に方法がないし」

まどか「あるよ!」

さやか「言ってみなよ」

まどか「私が契約してワルプルギスを倒す。そして死ぬ。誰かが死ぬなら、それは私」

まどか「もう誰にも文句は言わせない。絶対に!」

さやか「まどか、あたしたちが倒した後でしくじっても、あたしたちが魔女に殺されるってだけなんだよ」

さやか「何人かが巻き添えになるかもしれなけど、一匹の魔女ができることなんてたかが知れてるし」

さやか「だけど、あんたが契約して戦って、みんながしくじったらさ、それこそ世界が終っちゃうんだよ?」

まどか「……私はしくじらない!」

言い終えると同時に杏子がまどかの胸倉を掴んで槍をまどかの首筋に突き付けた

さやか「杏子!?」

杏子「ひよっこ未満が調子に乗るな…!ソウルジェムが濁りきる寸前でうまく動けるわけないだろろうが!」

まどか「……」

杏子「あたしらに頼るか?あたしらだってあんたを殺す自信ないんだよ!」

杏子「相手のために相手を殺す、なんてことには途方もない覚悟がいるんだ。例え世界がかかってるとしてもさ」

杏子「経験なんて、あたしは、ないけどね」

杏子「マミ?例の三周目でさえ躊躇ってるよ?そうじゃなきゃ、このほむらはここにいない」

マミ「……」

杏子「確実にできるとしたら――今あたしのソウルジェムに銃で狙いをつけていて、あと1mmでも槍を首に近づけたら迷わず撃つ気でいる奴くらいだよ」

まどか「……!」

杏子「ほむらは何回もあんたを介錯してきた。その意味わかるか?」

杏子「まどか、あんた、またほむらの十字架を増やす気なの?」

まどか「……」

杏子「わかったみたいだね」

言い終えて杏子はまどかを離して槍を下した。ほむらも銃を下す

過激すぎるよ……せめてテレパスで打ち合わせとかさあ……

まあ、ほむらも信じてたから時間停止を使わなかったんだろうけど
マミさんも無反応だったし
はいはい。杏子が何考えてるか全然わからなかったさやかちゃんが悪いんですよーだ……

まどか「……」

まどか「ねえ、みんな」

まどか「逃げよう?」

まどか「ワルプルギスって言っても、大きな台風くらいなんでしょ?県外まで逃げれば大丈夫だよ!逃げようよ!」

ほむら「まどか、あなたはとても優しい。だから目の前にいる私たちに固執してしまう」

ほむら「考えて。ワルプルギスは確かに攻撃範囲は台風程度。見滝原全域くらい」

ほむら「だけど、威力は果てしない。見滝原は廃墟になってしまう」

ほむら「人もよ。本当に大勢死ぬわ。あなたの家族も、友達も、先生も」

まどか「……!」

ほむら「私たちが今から逃がそうにも、限度がある。それに、助かった人の親しい人も死ぬことになる」

ほむら「あなたは故郷を、この街を失って、本当に耐えられるの?」

ほむら「大切な人がたくさん死んで、生き残った人も廃墟と死体の群れの中で嘆き悲しむ光景に、あなたは本当に耐えれれるの?」

まどか「……」

さやか「ま、あたしたちもそれが嫌で戦うわけだしね」

杏子「あんたらがそれでいいってんなら、あたしとしては一緒に逃げてもいいかなって思ってるんだけどね」

さやか「……ごめんね。巻き込んじゃって」

杏子「……そういうのは無しだよ。あたしが自分で選んだんだから。あんたたちはこの街は命をかけるに値するって思ってるんだろ?」

さやか「うん」

杏子「それにあたしが勝手に付き合うってだけさ」

まどか「……」

マミ「ごめんなさい。鹿目さん。明日、この中の一人は確実に死んでしまう。もしかするともっと、下手したら全員」

マミ「辛いでしょうね……。ごめんなさい。残していくことになって」

マミ「だけど、私たちだって、みんな辛いのよ」

マミ「特に、私なんか、最初から死ぬつもりで、つい最近生きる決意をしたから、なおさらね」

マミ「でも仕方ないのよ」



「だって――」





「―――私たちは、魔法少女だから」


結局そのあと、まどかを隅において私たちの作戦会議――
――あたしたち全員それぞれがとどめを刺すパターンを作る作業が始まったんだけど

まどかが、あたしたちそれぞれが、とどめを刺して死ぬために話し合っている光景に耐えられるはずもなく



2分もしないで泣きながら出ていった


まどかside

みんなに何と言ってほむらちゃんの家を出て行ったか覚えていない
どうやってうちに帰ったか覚えていない
帰った後にどんな挨拶をしたか覚えていない
ママ、パパ、タツヤとなにを話したか覚えていない
なにを食べたか覚えていない
何のテレビを見たか覚えていない
いつ部屋に入ったか覚えていない

なにもかも覚えていなくて

私はベッドで震えていて、窓にはキュゥべえがいた

QB「ねえ、まどか」

まどか「帰って」

QB「酷いじゃないか。起死回生のアイディアを持ってきたっていうのに」

まどか「……」

この時私は、ぼんやりと、溺れる者は藁をもつかむってほんとだなと思った

QB「ワルプルギスを消すって願えばいいんだよ!そしたら万事解決さ」

QB「みんなは君の契約にショックを受けるだろうけど、決戦のために用意したグリーフシードと、時間がすべてを解決してくれる」

まどか「…」

まどか「……」

まどか「………」

まどか「ねえ、キュゥべえ、あなたはかつて別の時間軸で私にこう言った」

QB「僕は覚えてないけどね」



「どんな希望も、それが条理にそぐわないものである限り、必ず何らかの歪みを生み出すことになる」



まどか「この街を焦土にしてしまう、最強の魔女を消すことで生まれる歪みって、どのくらい?」

QB「…」

まどか「答えられないんだね…!?あなた、わかってるんだね…?」

まどか「その歪みで、とんでもない結果になるってわかってるんだね…!?」

QB「……」

まどか「私の大切な人が」

まどか「もしかしたら、今まさに願いで助けようとしてる、ほむらちゃんたちまで大変なことになるってわかってるんだね…!?」

QB「……」

まどか「……答えてよ!!インキュベーター!」

QB「……君が、あの4人のため、宇宙のために死ぬ気になったらまた来るよ」

まどか「……二度と来ないで!!」

そのあと私は、泣き腫らして、寝て、泣き腫らして、また寝てを繰り返して

気づいた時には避難所だった
避難勧告が出ていたことにも気づかなかった

これにて投下終了です。これで第17話完です

希望と歪みの下りは、ほむらはアニメでは明確に聞いていませんが、別の時間軸でまどかと聞いたということでお願いします



>>杏子「まどか、あんた、またほむらの十字架を増やす気なの?」
杏子「まどか、あんた、またほむらの十字架を増やす気なのか?」の方が杏子っぽい語尾かなと。
「なの?」で結ぶと、杏子と言うよりもさやかっぽいイメージ。杏子は「か」か「かい」で結ぶイメージがするかも。

確かに杏子のセリフとしては不自然でした
まだまだ勉強不足でした

今度はたぶん大丈夫……

それでは投下します




第18話:決戦、未来都市見滝原


ほむらside

決戦の地に魔法少女が4人
感慨深くはあるけど、やはりさやかは加わってほしくなかった
さらに言えば、ワルプルギスを倒した後のことまで知られては、もう私一人で戦いたいとさえ思う

だけど、私一人で戦って勝てる見込みなんかない
だから、私はこの4人を巻き込むしかない
利用するしかないんだ……

なんでみんなこんな私のことを――

さやか「――なーんて考えてるんじゃないでしょうね?」

ほむら「……!?」

さやか「……え!?図星!?ちょっとちょっと!今からそんなネガティブじゃ勝てるもんも勝てないでしょうが!」

さやか「あたしら好きでやってるんだからね?この街がなくなっちゃ、まどかやほむらが死んじゃ困るからさ」

ほむら「……うるさいわね。見透かしたようなこと言わないでくれるかしら?」

ほむら「……あなたなんかにとどめは刺させないわ!いい気になるんじゃないわよ!美樹さやか!」

さやか「そーそー。ほむらはそうでなくちゃ!」

ほむら「……フン」

やっぱり、この娘には、加わってほしくなかったな……

マミ「ねえ、美樹さん、あの後鹿目さんどうだった?」

さやか「電話してみたんだけど、繋がらなくて……」

さやか「多分、充電するのも忘れてるね……」

杏子「今から何か言ってきてもいいんだよ?何ならそのあと帰ってこなくてもいいんだ」

さやか「いいよ」

杏子「これで最後になるかもしれないんだぞ?」

さやか「まー、なんてか、どういう最後だったかってより、どういう風に生きたかってのが大事だと思うんだよね」

さやか「……いや、まどかがどう思うかの方が大事か…」

さやか「……わかんないや」

ほむら「……あなたらしい見解ね」

さやか「と、言うと?」

ほむら「あなたっていつも、周りに当たり散らして無様な最期迎えるんだもの」

さやか「こりゃ手厳しい……」

ほむら「だけど、当たられた周りはあなたを放っておかないし、いなくなったら嘆き悲しむ」

ほむら「どういう風に生きたか、を周りの人がちゃんと見てきたからでしょうね」

さやか「……」

杏子「さやかって、褒められると無口になるのな」

さやか「……うっさい」

マミ「……もう話してる時間もなさそうね」

杏子「おいでなすったな。大丈夫なんだな?」

さやか「……うん」



ワル「アハハハハハハハハハハハハハ!」



さやか「こりゃすっごい……」



杏子「あれの力がわかるってんなら、とりあえず上出来だね」



マミ「……勝てない相手じゃないわね」



ほむら「…………いくわよ」

まどかside

私の命はみんなの命より軽い

そんなこと言ったらみんな烈火のごとく怒るだろうけど
今まさに死地に赴いているみんなを想像したら、そう考えずにいられない
みんなの命は遥かに重いんだ

……だけど、ほむらちゃんとの約束も重い
昨日は本当に破るつもりだったけど
それでも、あれは、絶対に破っちゃいけない約束だった

だけど、みんなのうち一人は今日確実に死ぬ
私が何かしないと確実に
だけど、私にできることなんて……もう

……

結局私には、何も――

―――――……え?

そんな、あれは

でも、まさか

いや、確かに――



「――仁美ちゃん?」


……仁美ちゃんは違うところに避難してる、ってほむらちゃんは言ってた
住んでるところからしてそうなる……はずなのに


「まどかさん、少しお話ししませんか?」


「……いいけど……?」

私たちは、避難所出口前の階段の上に移動した
私としてはここまで来ることもないと思ってたんだけど、仁美ちゃんが誰にも聞かれたくないって言うから

仁美「ねえ、まどかさん」

まどか「何?」



「これって――本当にただの台風なんですか?」



「――!?」


「さやかさんが暁美さんを転校初日に連れ出したのはなぜですか」

「そのころから、私との付き合いが悪くなったのはなぜですか?」

「そのころから3年の巴先輩と一緒にいることが増えましたよね?」

「私がかかった『集団催眠』、その本当の原因は何ですか?」

「上条君の、現代医学では治らないとされていた怪我が突然治ったのはなぜですか」

「なぜそのころから、あなたと暁美さんは悲しげな顔をするようになったんですか?」

「なぜそのころから、さやかさんは諦観したような顔をするようになったんですか?」

「なぜ暁美さんは、私の告白がさやかさんの死と結びつくと考えているんですか?」

まどか「仁美ちゃん!?いったい何を――!?」

仁美「どうしてあなたは、今、そんなにも絶望しているんですか?」

まどか「!?」

仁美「突然のスーパーセルの出現にかかわらず避難勧告は適切、かつ迅速に出されました」

仁美「このスーパーセルでおそらく死者は出ませんよ?出たとしても」


「片手で足りる数でしょう」


仁美「本当にスーパーセルだと言うのなら」




「違う……!」




そう、あの4人の命は片手で足りる



「命は数えていいものじゃない!」


仁美「ええ。そうです。あなたはそういう考え方をするでしょうね」

仁美「例え死者数が1人に収まったとしてもひどく心を痛めるでしょう。意地悪言ってごめんなさい」

まどか「だから一人でも――!」

仁美「でも、あなたの顔は、確実に死者が出る、それも、自分の知っている人――友人が死ぬと言っています」

まどか「……」

仁美「いくらまどかさんでも、いえまどかさんだからこそ、私に怒るならば友人が死ぬ以外にありえないでしょう」

まどか「……」

仁美「……」

仁美「ごめんなさい。溜まってたぶんが一気にはき出たみたいです」

まどか「ううん。私も、ここ最近仁美ちゃんをおざなりにしてきたかなって」

まどか「ごめんね」

仁美「いえ。あなたとさやかさんはできる限りで私に話しかけてくださいました」

仁美「私はそれが嬉しかった」

仁美「さやかさんは立場上、限度がかなり厳しかったですけどね」

まどか「……」

仁美「あの個別の質問すべてにこたえていただいても時間を無駄にするだけですわね」

仁美「次の質問にだけ答えていただけますか?」

まどか「うん。私も仁美ちゃんに聞きたいことがあるの」

仁美「では――」

まどか「じゃあ――」





「さやかさんは、どこまでわかった上で契約なさったんですか」




「仁美ちゃんはどこまで知っているの?」



これにて投下終了です。第18話完です

以降ワルプルギス戦終了までタイトルはエヴァ・ヱヴァの引用・パロディーで行きたいと思います

追記:タイトルの地名は語感がいい感じのものを適当につけました

エヴァのタイトル引用は、展開を見て、単にこれからの話のいくつかが、エヴァのタイトル使えるなと思ったのと
決戦前のタイトルはやはり決戦、~でいきたいな、と思ったからです

エヴァみたいな展開になるという意味ではありません
ではどういう展開になるか、逆にエヴァみたいにはならないかと言われればノーコメントです

それでは投下します



第19話



仁美、心の向こうに



Love is destructive.



ほむらside

65%はうまくいっているといえるだろうか。しかし、すこぶる微妙だ

恐らくはここが勝敗分岐ライン。あいつに何度も敗北して得た経験がそう告げている
ここで大胆な手を打たないとジリ貧となってやがて詰む

しかし――現状は芳しくない

やつの攻撃は激しさを極めており、私たちは、私とさやか、巴さんと杏子の二つに分断されている
倒壊した建物を盾に攻撃を行うのがやっとという情勢だ

セッティングした近代兵器の類はもうあらかた消費した
この状況で打てる大胆な手を、私は持ち合わせていない

巴さん側とテレパシーで打ち合わせて作戦を立て直せばあるいはといった状況
だが今はテレパシーを使うことができない
やつの妨害電波的な魔法で著しくテレパスが阻害されているからだ

この状況では、さやかと組むしかない
しかし、現在時間停止は例の制限に引っかかっている状況で、すぐには使えない

さやかと私の二人で今打てる気なんて―――

だけど、何か手を打たないと、このままじゃ、また……また……――

この時私は気づくべきだったんだ

私の隣にいるさやかという少女は、思い込みが激しくて、優しくて、勘がいい

今まで、思い込みの激しさに随分手を焼かされてきた
今周、勘の良さと優しさに何度も助けられてきた

しかし、それは、今後も助けられるということを、必ずしも意味しないということに、気づくべきだった

……いや、私は確かに今回も助けられた

だけど、こんな助けなんて、望んでなかった……



「ごめん、ほむら」



「え?」





「犠牲は二人になる」





言うや否やさやかはワルプルギスの夜に向かって駆け出して行った。一直線に



「さやか……?」






「さやかああああああああああああああああああああああああ!!!!!!??????」



仁美side

ずいぶん昔の話になる
さやかさん、まどかさんと出会った直後の話だ

私には、友達がいなくて、それを名家志筑家の娘ということで生まれる畏怖と習い事に時間を取られるせいにしていた

クラス替えがあって、さやかさんは例によって一人でいる私を放っておくはずがなく
それには当然まどかさんも伴われた

初めて、それも二人もできたと友達が思った
それで、うれしさのあまり、私はうちに二人をお招きした

ところが、さやかさんが、私が席をはずしている間に何かをしでかしたみたいで

戻るとさやかさんは、あの歳で土下座で父に謝罪していて
まどかさんも巻き込まれて土下座していた

私は怖くて何が起こったか聞けず、また、だれも私に説明しなかった

(当時は、さやかさんが主犯、まどかさんは止めたとわからなかったが、今はわかる)

(別に聞いたわけではないがその後の付き合いから明らかだ)

二人が帰った後、父に、友達は選べと通告されて
また一人ぼっちだと落ち込んだ、そんな昔の話

もう何もかも投げ出してやろうと思った、そんな時

QB「悩み事を抱えているようだね」

仁美「……何?」

QB「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ!」

仁美「魔法少女?」

QB「僕と契約することで、魔法少女になれば、願い事を一つなんでも叶えてあげられるんだ」

仁美「契約……」

QB「その代わり、魔女と戦う運命を背負うことになる」

仁美「……」

QB「君がまさに今すべてを投げ出そうとしていたよね?悪い話じゃないと思うんだ」

仁美「……契約は、すべての条項を理解したうえで結ぶようにと父に厳命されてますの」

QB「……いいお父さんだね」

仁美「魔女とは、いったい何なんですの?」

QB「絶望をまき散らす化け物だよ」

仁美「抽象的ですわね」

QB「でも、言葉でこれ以上の説明は難しいんだ」

仁美「実物を見せていただけますか?」

QB「それはあまりに危険すぎるよ」

仁美「構いません。魔女とは何かを知るまで、とても契約など無理です」

QB「……命の保証はないからね?危機に瀕したら契約するしかないよ?」

仁美「なら、お断りします」

QB「………なんだって?」

仁美「話はこれで終わりだといってるんです」

QB「……仕方ない。君の頭にイメージ映像を流し込もう」

仁美「それができるなら、初めからそう仰ってくださいな」

QB「……」

仁美「それで、魔女というのには種類があるんですか?」

QB「あるよ。それこそ無数に」

仁美「500パターン」

QB「!?」

仁美「500パターンの、魔女対魔法少女を見せてください」

QB「……わかったよ」

仁美「半分は魔法少女が敗北した映像でお願いします」

QB「……」

仁美「敗北というのは、死、ということですよ?」

QB「」

鑑賞後

仁美「すごい過酷な戦いなんですね」

QB「……奇跡の対価だからね」

QB(魔女化の映像はカットしてきたが……。大丈夫。魔女のおぞましい姿・過酷な戦いを見ても願望が消えることなどない!)

仁美「ねえ、キュゥべえさん」

QB「何かな?」

仁美「死ぬ映像のいくつか、3分の1、でしょうか?致命傷となる攻撃を受けた時、宝石みたいなものが砕けていたと思うんです」

QB「……そういうこともあるだろうね」

仁美「残りの3分の2は意図的に隠される形になっていました。あれは何なんですか?」

QB「……ソウルジェム。魔法少女の力の源さ」

仁美「まさか、文字通りの魂ではありませんよね?」

QB「うん、魔法少女としての魂さ。これが濁り切ったり、砕けると魔法を行使できなくなる」

QB(濁り切った場合は、魔法の前に。自由に、って枕詞がつくけどね)

仁美「濁る原因は?」

QB「魔力の消費と絶望だよ。ちなみに回復する方法は――」

仁美「そんなことよるも、です。砕けたら命が終わる、死ぬという意味でも、魂でしょう?」

仁美「あの意図的な編集はそうだとしか思えません」

QB(なんだこの子)

QB「……そうだね。その通りだよ。魂なんだ」

QB「でもこれには利点もあって、いや利点しかない。というのは――」

仁美「大方予想はつきますわ」

仁美「要はソウルジェムを本体とすることで体を代替可能にする、いくら体が傷ついても問題なし、ということですわね?」

QB「……その通りだよ!君みたいな合理主義なリアリストにはぴったりな話じゃないかな?」

仁美「ところで、なぜあなたは、あの化け物を魔女と呼称するんですか?」

QB「……魔法少女が魔女を倒す。自然な話だと思うよ?」

仁美「私はそうは思いません」

仁美「単に魔法少女の相手なら、魔なるものとして、単に魔物、悪魔、魔獣と呼べばいいんじゃないかと思うんです」

QB「……君はなかなかユニークな発想をしているね」

仁美「私の方が一般的な感覚をしていると思います」

仁美「あなたは人間について学ぶべきです」

仁美「私の考えを言いましょうか」

仁美「魔法少女という存在があって、対比してとある化け物を魔女と呼ぶ場合、魔法少女と魔女は対になる存在ではないかと考えます」

仁美「少女は成長して女になるわけですからね」

QB「しかし考えても見てほしい、あれはなんか女っぽいような感じがしなかったかい?」

仁美「そうですわね。ああ、あれは魔女だ、と思うに足りる容姿ではありませんでしたが」

仁美「ところでそのソウルジェム、砕けたら死ぬのは明らかですが、濁りきっても魔法が使えなくなるということでしたわね」

QB「うん。そうなんだ。魔法が使えなくなる」

仁美「自由に使えなくなるという意味で解釈してよろしいですか?」

QB「……それは君次第かな」

仁美「ほぼ肯定ですわね」

仁美「自由に使えなくなるとは、すなわち自由意志がなくなるということではないですか?」

QB「……僕にはわからない」

仁美「不毛ですわ。もう単刀直入に聞きましょう」

仁美魔法少女のなれの果てが魔女である。違いますか?」

QB「……君みたいな娘はなかなか見ないね」

仁美「肯定ですか……明らかに度が過ぎた対価だと思います。契約は、今はお断りしますわ」

QB「……言っておくけど、素質はいつか消滅するものだ。特に君の素質の消滅は早い」

QB「一か月もすればなくなるだろう。気が変わったらいつでも――――」

仁美「一か月ですか。それはいいですね」

QB「……は?」

仁美「一か月は何かしでかしても保険があるということです」

仁美「なんだか視界が開けた気分ですわ」

そして私は父に

「志筑の娘としてふさわしくなるべくいかなる研鑽も積みます」

「もう一切泣き言は吐きません」

「けれど、私の友人関係に口は出させません」

と通告した

私が父に逆らったのは初めてで、父は怒りと喜びが入り混じった表情をしたが、最終的に飲んでくれた

そういうわけで、私はあの時から習い事を倍に増やされて

二人との関係は友達から親友になって今も続いている

まあ、父は寡黙で、さやかさんとの関係をどういう理由で切れと言ったかはいまだに話してくれないが
理解できなくもないと、今は思う

さやかさんの無鉄砲さにはいつも手を焼かされた
よく、周りの大人からも「忠告」されたものだ

でも、そんなことは本当に私にとってはどうでもよかったんだから仕方ない

なんで無鉄砲な彼女に振り回されても構わず一緒にいるか?
楽しかったからに決まってるじゃない!

さやかさんが突っ走り、まどかさんが止めて、私が考える
中々いいトリオだったんじゃないかと思う

ところで父の厳命は、先に言った通り一理はあると思っていたのでそのままフレーズは頭に残っていて
さやかさんが大暴れして限度を踏み越えて、まどかさんとともに孤立したときに引用させてもらった

「ねえ、志筑さん、なんであの二人と付き合ってるわけ?このままじゃ志筑さんもあの中に入っちゃうよ?」

「アハハ」

「ごめんあそばせ。友人は選ぶようにと、父から固く厳命されてますの」

「……どういう意味かな?」

「そのままの意味ですわ」

さやかさんがただ暴れて孤立したのなら、頭を冷やさせるために放っておいたかもしれない
まどかさんのためだったってわかっていたから――

もちろん対象に私も入ったことは言うまでもないが、さして気に留めるようなことではなかった
さやかさん、まどかさんと一緒だったから

永遠にあの状態も続くはずもなかったから
友情は永遠のものだと思っていたから





――――私の中にあった、上条君に対する思いを自覚するまでは



これにて投下終了です。まだ第19話途中です。仁美の独白もまだ続きます

というわけで、>>501

>だけど、今の私にはもう認識できないじゃないか……

は、今の私には(QBと魔女を)もう認識できないじゃないか…、でした



>>686
放映中によくそんなこと言ってたのいたけど嘘はつかないなんて設定はないはずだが
今回の魔女化した後の自我だって、
「ちゃんと観測してないから実際のとこどうだかは分からない。恐らくはなくなってるだろうけどね」
と言われたら、そこから抜き出して分からないとだけ言われても決して嘘ではないし

いや下手すると映画とかおりこマギカとかからすると本当は自我残ってる可能性すらあるし

「本物の魂じゃないよな?」と聞かれたときの回答に「うん」とつけない
「わからないよ」じゃなく「君はどう思うんだい」で逃げる

そこだけ気になる
この手の破滅の契約ってのは「嘘はついていない」「契約通り」ってかなり大事

一番大切な友達さえ傷つけて、に関しては
あの状況でまどかと仁美を併記できるほど、さやかちゃんは人間できてなかったのだ、と考えています

仁美は鋭すぎますが、もう仁美は頭がいいの一点突破です。>>1にはそれしか思いつきませんでした
映像を見て、ソウルジェムは砕けると死ぬと判断→QB、濁りきることと砕けることと並べて魔法を使えなくなる事象と説明
→濁り切ることも死ぬレベルで重大なこと?→魔法少女と魔女……少女は女になる……魔法少女は魔女になる?
とあたりをつけ、そうだという前提でそれを聞き出すためにあれこれ問答した、という感じです

また、魔女に自由意志があるかは>>687さんのおっしゃる通りで、QBはしらないし、どうでもいいと考えていました

文字通りの魂じゃないよね、にうん、は文法的にちょっとおかしかったかもしれません
君次第かな、に関しては、魔法少女が呪いを生み始めるとどうなるのか、に、それは彼女に聞けばいいと返しているので
それくらいはQBのはぐらかしの許容範囲かと考えていました
契約前ということを考えれば微妙だったかもです
(>>689さんのご指摘が>>1にはよくわからなかったので、これで答えられてるか不安です)

仁美の、お断りします、は、情報を聞き出すための駆け引きです
QBもそれはわかっていたので、脈ありと判断して妥協案を示しました
まどかたちに対しマミが死んだあと引いたのは、ここで押しても話は聞かれずいいことなし、統計的にここは引くべき、とでも考えたと解釈しています

長文失礼しました。それでは投下します

上条君に告白して、もし成功したらどうなるか

さやかさんとの関係を維持できるか

わからない

思い切り憎むのも、涙をのんで、流して祝福するのもさやかさんだと思う

わからないんだから、維持できる、なんて虫のいいことを考えるべきではない

まどかさんはどうか

さやかさんと上条君の仲は言わば公然の秘密だった

私がまどかさんの立場ならどうだろう
今の関係を破壊してまで、そんなクラスメイト公認だったさやかさんを押しのけて告白することに怒りを覚えるんじゃないだろうか
まどかさんはさやかさんと上条君がうまくいけばいいと考えていたから

でも、まどかさんは私じゃない

まどかさんなら、私とさやかさんの間でただ悩み続けるんじゃないか
そして、私はそんな彼女を見たくはない
さやかさんの方に行ってひたすら慰めてほしい
その方がお互いのためだ



告白したら、成功したら二人ともう友達でいられないかもしれない
不安を感じ始めれば、もう、そうだとしか思えなくなる

だから告白はやめた

……はずだった



恋心は私のなかで膨れ上がり続け
宣戦布告という形で爆発した

最大限の義理を通した
だけど、それは、上条君とさやさんを引き裂こうというのに、二人との関係を維持したいという卑怯で偽善な考え方が発露したものだった

そして告白しに行って
上条君の指がさやかさんの祈りで治ったことに気づいて



激しく後悔した


結局そのあと告白なんてできるはずもなかった

だって、さやかさんが絶望したら、魔女になってしまうから

暁美さんには意地悪を言ってしまった
理屈では分かっていても、さやかさんのために告白を我慢しろ、と言われたら、ね

さやかさんには素晴らしい友人がまたできて
それが暁美さんで
私はさやかさんから離れることになると思っていたから

私が招いたことなのに、嫉妬してしまったんだ……

そして、今日、スーパーセルを出現の一報を聞き、、『日常的な類の問題ではない』なにか、とはこれだと確信して
超強力な魔女なんだと予想し

暁美さんとさやかさんがしている指輪に契約の証だろうと当たりをつけて
まどかさんはしていないから未契約なんだろうと考え

避難所に来るはずだと思って、ここに来た

もし、まどかさんが戦いに参じないなら、それはみんなとの約束からだろう
だから、私は口を出すべきではない
ただ気になって、いてもたってもいられなくて、来ただけだった

だけど、私は、絶望に打ちひしがれている彼女をみて、一つの決意をした



――最低な決意を





第20話



命の選択を



Quickening


ほむらside

結果として、さやかは予想以上に善戦し、現状は打破できた
奴も、もう余裕がない。後5・6押しといったところ

だけど…

マミ「もう駄目ね、これは……」

杏子「……ソウルジェムの限界ってやつだな」

杏子「初めて見るけど……もう浄化とか治療って問題じゃ……」

私たちは、巴さんの爆撃で隙を作り、さやかを引きずって陰に退避して治療を施した
……これと同じ状況を、私は見たことがある。ソウルジェムにひび割れが目立ち、もう浄化では濁りが取れない
当然に意識はない


……魔女になるのも時間の問題だろう


そして、今魔女が新たに現れたら、さやかの奮闘が無駄になってしまう
……さやかがそんなことを望むはずがない

だから、引き金を引く。それだけなのに

……涙で視界は悪く、引き金にかけた指は鉄のように固くて――

頭の中には、走馬灯のように、さやかの、よりにもよって1周、2周目、今周の映像ばかり流れて――

私はこの周回、みんなと接して弱くなった
今、さやかを殺すことができない

怖いんだ。さやかが死んでこの時間軸で固定してしまうことが
もう、まどかのために犠牲を許容できなくなっていた

だけど、これではまどかを救えない

できるできないじゃない。やらなきゃいけない
だから、何としても撃ち抜かなきゃいけない
そのことで頭が一杯だった

多分あと10秒あれば撃てたと思う
だけどそれは、あまりに致命的な隙だった

戦闘面においてもその弱さは今、いかんなく発揮されようとしていたから

以前の私なら、杏子と巴さんが目配せして何かを決意したことに気付けたはずだ




その時の私にとっては唐突に、リボンと槍が二人から放たれた



「――え!?」



そのまま私はなすすべもなく拘束されて――


これにて投下終了です。まだ第20話途中です


やはり仁美はアレをやるつもりか?
ガチでさやかとほむらに喧嘩売る行為でもあるが
ほむらを止めた理由は2つくらい思いつくけど……どっちなんだろう
この期に及んでヘタれたとは思いたくないけど

投下します

まどか「そう、だったんだ」

仁美「さやかさんは、すべてを知っていたんですね……」


仁美「私が……私が、あなたたちが何か隠していると思ったときに、もっと踏み込むべきだったんですね……」

仁美「……自分が選ばれた素質を持った特別な人間なんだ、なんてくだらない選民思想に取り付かれていたばっかりに……」

まどか「ううん。私たちも同じだよ。クラスメイトに相談できる人がいる、なんて思いもしなかったんだから」

まどか「素質はいつか消えるもの……か。考えてみればあり得る話なのに」

仁美「ねえ、まどかさん。これから酷く無責任なことを言いますね?」

まどか「?」

仁美「……あなたは、この事態において、自分にできることが何もないと考えていますね?」

まどか「……うん」

仁美「それは、さやかさんと契約しないと約束したから」

まどか「……うん(ほむらちゃんとの約束だけど、さやかちゃんとも約束してるようなもんだね)」

仁美「あなたは今とても絶望しています。このままでは、大切な人が死ぬと思ってるんですね?」

まどか「……」

仁美「そのことに責任を感じている」

まどか「……そう、だね」

仁美「素質自体は、あなたにもあるということですね?だから、本当は何かできなきゃおかしいのに、と思っていると」

まどか「……うん」

仁美「……あなたはさやかさんみたいになりたいと思っていた」

まどか「……分かってたんだ」

仁美「さやかさんなら、こんな時どうするでしょうね?」

……!

仁美「私にこの事態においてできることなどありません」

仁美「まどかさんにしても、いつもならそうです」

仁美「私とまどかさんにできない以上、さやかさんがどうにかするしかない」

仁美「でも、今はさやかさんは奮戦なさっていて、まどかさんは、それでもだめだと思っています」

仁美「だから」

……そうだ…
さやかちゃんんなら――――

まどか「―――こんなところで迷ってなんかない……!」

まどか「約束なんか守るわけがない……!!」

まどか「なにもできないからって、立ち止まってるわけがない……!!」

行けば私は死ぬかもしれない
……だから何だというんだ!
このままだと、だれか死ぬんだ!

まどか「仁美ちゃん、ありがとう!」

さやかちゃんみたいに、厚かましく、おせっかいに、傲慢に――
なにができるかわからないけど
みんなを守って見せる

確かにあの時そう決意した

あまりに絶望的な状況に、過去も未来も見えなくなっていた
だけど、だからこそ
かつての時間軸のママの言葉


「本当に他にどうしようもないほどどん詰まりになったら、いっそ、思い切って間違えちゃうのも手なんだよ」


ほむらちゃんからの伝達が頭に響く

あの時はうまく働かなかったアドバイスだけど
今は本当にどん詰まりだから
今こそ聞くべき言葉なんだ……!

まどか「ママとパパに、お願い!」

仁美「……必ず帰ってくるなら、どういう言い訳でも通して見せます」

まどか「約束する!」

私が行って何ができるか――――
走りながら考えろ!
たとえ思いつかなくても
その場に行けば閃くかもしれない

まどか「キュゥべえ!案内して!」

QB「お安い御用さ」

走りながら湧き上がってきた高揚は
単なる胸の高鳴りではなく――――

明らかに未知の、だけど私は、私だからこそ、よく知っている――――

仁美side

無責任な約束だったな

本当にさやかさんみたい

だけどそれは私も同じ
この時私は、酷く無責任な考え方をして、彼女を送り出した

さやかさんが死にかけていて、まどかさんが助けられるなら、助ければいいじゃないかと
契約しないと約束したんだろうけど、さやかさんは同じ立場なら約束なんて無視するだろう
なら、あなたが無視してもしょうがないじゃないかと
絶望している彼女の背中を押したつもりだった

約束なんて忘れてしまえ、命のほうが大事だ
本当にさやかさんのために魂を捧げるつもりがあるのなら、捧げてしまえ
彼女の気持ちは助けた後で考えろ、と

私はこの時、まどかさんの莫大な素質を知らず、まどかさんが現段階でも契約するつもりがないことを知らなかった
彼女はただ、さやかさんは、すべてを知っていた、と回答したに過ぎなかった



だから、私は、彼女と暁美さんとの約束の重さを知らなかった


結局彼女は間違ったっていいという言葉を、違う形で聞きたかったに過ぎなかったのかもしれない
それを伝える人は、誰でも、何も知らない人でも良かったんだろう

私も私で、ただ、彼女が契約しても、今度は私も支える立場に立とう、という、漠然とした思いだけをもって
彼女を送り出した



全てを知っていたら、私はなんと彼女に言っていたか

考えても仕方ないことだと思う
結局、その時に知っている情報から判断するしかないのだから

これにて投下終了です。まだ第20話途中です

>>712さんのアレ、が何か>>1にはわかりません
その他の方の期待に添えるかもわかりませんが、精いっぱいやっていきたいと思います

投下します

杏子side

ほむら「―――――!!!!!!??????」

ほむら「―――――私はまだ戦えるわ!!」

杏子「わかってるよ。あんたは自分で思ってるより強い」

杏子「さやかを殺すことだってできるし、そのあと戦うことだってできるさ」

ほむら「じゃあ、なぜ!?」

マミ「ねえ、暁美さん、あれ、あとどれくらいで倒せると思う?」

ほむら「……5・6押し」

杏子「……ほむらが弱いとしたら、そこだ。さやかの奮闘を過大評価してる」

ほむら「……」

マミ「気持ちはわかるわ。美樹さんはよくやった。だけど、まだ足りないのよ」

ほむら「……それが、私を縛り上げてることにどう結び付くの?」

杏子「二人」

ほむら「!」

杏子「あと二人犠牲が出る」

杏子「マミの自爆で大ダメージ、そして、あたしのとどめの一撃で終わり。それも自爆で済ますべきだろうな」

マミ「困ったことに蓄積ダメージが増すと力が増す仕様だから、ここまで削った以上短期決戦で挑まないといけない」

マミ「これ以上長引けば、避難所もどうなるかわからないってこともある」

杏子「それに、後のこと考えればさやかの体もこれ以上傷つかずに残ったほうがいいに決まってるしさ」

ほむら「……やめて」

ほむら「―――卑怯よ!」

ほむら「打ち合わせでは、流れを見て誰がとどめをさしてもいいってことになった!」

ほむら「出し抜くことをみんな目指してたけど、こんな形で拘束するなんてアンフェアだわ!」

ほむら「私にやらせてよ!」

杏子「なんてかさ、死ぬべきじゃない人間は死ぬべきじゃないと思うんだよ」

ほむら「あなたたちは死んでいいっていうの!?そんなわけないじゃない!!」

杏子「いやさ、あんたには家族がいるだろ?」

ほむら「……!?」

杏子「それ言い出すと、マミは死んでいいってことになっちゃうからさ、言い出せなかったんだよ」

マミ「同じく、ね」

杏子「たださ、こうして、さやかが限界になって、あと二人死ななきゃいけないってなったらさ、もう四の五の言ってられないから」

杏子「犠牲はあたし一人でって欲張ったのがいけないな。さやかには申し訳立たないや……」

マミ「データをみて、こうなるんじゃないか、とは漠然と予想してたんだけどね」

マミ「この状況に陥るまで受け入れられなかった。本当に失態よ」

ほむら「家族がいないからって死んでいいってことにならないわ……」

マミ「それはそうだけど、やっぱりね、私たちからしたら、あなたは死ぬべきじゃないわ」

杏子「それにさ、あれ倒したら終わりってわけでもないんだよ?」

ほむら「……?」

杏子「まどかだよ。あいつに契約されたら全部おじゃんじゃないか。」

ほむら「……!?」

マミ「さすがに美樹さんを含めて3人の犠牲なんて、鹿目さんも覚悟してるか微妙だと思うのよ」

杏子「それで、まどかが契約に走るとしたら、止められるのはほむらしかいないよ」

杏子「自分の胸に問いかけてみな。あたしらのうちどっちかに任せて死ねるか?」

ほむら「……だけど―――!」

杏子「時間もそろそろあれだし、まあ、納得してくれなくてもいいよ」

マミ「浄化はしておくわ。どうか耐えて。暁美さんが魔女になったらそれこそ全部終わりだから」

ほむら「――――ッ」




「私はもう行くわ。美樹さんは―――」



「あたしが殺る。ただ、やっぱり、それなりに時間かかりそうだからさ、マミは始めててくれ」



「わかった」


これにて投下終了です。第20話途中です

/人? ?? ?人\ < 呼んだかい?

>>754
あなたの見せ場はもうちょっと先ですね

投下します 話は進みません




―――これは一体どういうことだろうな


自分に気があるわけでもない片思いの相手に命を捧げた馬鹿がいる

時間遡行者に自分の運命を教えてもらったってのに
その運命から逃げもせず、逆に向かっていった

その姿、あり方は、あたしがかつて目指した正義の魔法少女そのものだった

そいつは自分の力をよく理解していて
戦況打破、ただそれだけのために命を捨てて見せた

事故で自分一人が、願いで生き残ったことに罪悪感なんか覚えやがった馬鹿がいる

その償いのために今まで一人で街を守るために戦い続け
教えを乞うやつには自分が持つすべてのスキルを伝授し(高度過ぎるのは当然こっちが覚えられないが)
恩知らずの不肖の弟子にも許しを与えた

そいつは孤独の戦いの果てに仲間を見つけ―――
間もなく死ぬことになった


最後まで街を守りながら

たった一人の友達のために、すべてを捨てた馬鹿がいる

一人永遠の迷路であがき続けたそいつは
自分は最後に死ぬしかないと決めつけていた

出口をようやく見つけたと思ったら、外は天国ではなく地獄だった

あたしらに持ってた情を思い出してしまったがために、よけい深く傷ついて

生き残ってその友達を慰めたあと、長く保たずに死んでいく

その友達は、ただただ優しい、優しすぎる馬鹿だった

自分のことを軽く見すぎて、よくみんなに怒られていた

そいつはあたしたちに化け物じゃないと言い切った
その言葉はあたしの心にものすごく響いた
ああ、これは確かに人生を、命を賭けるに値するなと思えるほどに

そして、その優しさのために
さやかはおろか、出会って数週間のあたしの死にさえ心を痛めつけられる

結局あたしにはあいつの嘆きをどうにもできない
ほむらとあいつの親と友達に期待するばかりだ




なぜあいつらは救われない
自分で選んだ道じゃないかとでも言うつもりか



―――神様


あいつらのレールをずらしてやるのがあんたの仕事じゃないのか?

創造主は創った後のことは興味がないから知らないとでも言うのか?

度々介入しては人はただの操り人形だろうと?
加減も限度もわからないのか

あいつらよりも哀れなやつを救うので忙しいのか?
そうそういないだろうよ

世界に人があふれてあいつを見つけてやれない?
一か月もあって見つけられないのか?
マミに至っては何年も戦ってきたんだぞ?

あいつらがあんたのとこの教義を守ってないからか?
―――くたばれ



まさか

―――あんた、「いない」んじゃないだろうな?



だったら、親父は何のために――――!


―――なんてこと考えてられる時間もそう残されてない

マミは今、最大出力の攻撃を繰り出してる
まさに後先考えない怒涛の攻撃

あれでもくたばらないなんてゲンナリする

こんな時でも技名叫ぶんだなと苦笑しつつ、あたしも覚悟を決める
そろそろ加わる準備をしないと

さやかもいい加減楽にしてやらないとな
まあ、よくやったよ

どういう風に生きたがが、大事なんだっけ?
―――よく生きたよ



―――すぐ行くから





あたしは槍を思いっきり振りかぶったのちさやかのソウルジェムに狙いをつけて―――


これにて投下終了です。第20話完です

パソコンは何か調子悪いくて振動するしストックは尽きるしで次の投下は遅くなるかもしれません
とりあえず予告だけ

次回

第21話

人の起こしし奇跡(仮)

She said, "I don't want to make my friend suffer for my selfishness."(仮)

投下します




第21話



人の起こしし奇跡



She said, "I don't want to make my friend suffer for my selfishness."


???side

そうなんだよね
どういうシステムなのか知らないけど、結局のところ神様は何もしてくれない

だからこそ人の手で奇跡を起こさないといけないんだよね
―――この手で

杏子side

―――ガキィン!

「……は?」

光で弾かれた?
さやかのソウルジェムが光を放っていて、いつの間にやらジェムの傷も元に戻っていた
 

何だこれは


マミside

いよいよ私の命が尽きると思った瞬間

『マミさん、待って!』

頭の中に声が響く。いよいよ自爆するはずだったソウルジェムの状態ももとに戻った




――――鹿………目……さん…?


ほむらside

気が付けばさやかのそばに一人の少女が立っていた

まどか……?――――じゃない!

そうだけどそうじゃない!


あれは―――!

まどかside

走りながら頭に響く声に問いかける

「あなたは誰?」

『誰でもいいんじゃないかな?』

『大体わかってるんじゃないかな、とも思うんだけど』

「そうだね。助けてくれるんだよね?」

『うん』

『やっと助けられる』

「やっと?」

『うん――――』

暁美ほむらが夢だと思った時間軸にて

QB「二つの願いと言うのは困る。叶えられない。どちらか一方じゃないとね」

まどか「……そうなんだ」

まどか「じゃあ」

まどか「全時間軸のほむらちゃんを救いたい」

QB「それには多大なる問題が潜んでいるね」

まどか「……問題?」

QB「まず君はこの時間軸を切り捨てる気になっていない」

QB「この世界には、君の家族や友達も残っているからね」

QB「ワルプルギスの被害は最小限に留まっている」

QB「この時間軸を切り捨てることは、ほむらと杏子の奮戦を否定する、裏切り行為と捉えているようだ」

QB「だからこの時間軸に留まったままで干渉することになるわけだが、君の素質をもってしても、そのような平行世界干渉は難しいんだ」

QB「各時間軸に1回くらいしか干渉できないだろう」

QB「それで本当に救えると思っているのかい?」

まどか「……おかしいよ、キュゥべえ」

QB「何がだい?」

まどか「なんでそんなに丁寧に説明してくれるの?」

QB「君たちが求めてきたことじゃないか?」

まどか「言うこと聞く気なんかなかったくせに……!」

QB「……」

まどか「最初の願いだって適当に解釈すれば叶えられたはずだよ?

まどか「答えて」

まどか「あなたは何で今になって、ようやく私が契約しようというときに、腰を折ろうとしているの?」

QB「……結果がどうなるかわからないからさ」

まどか「どう、って?」

QB「暁美ほむらが本願を叶えた結果が予想できないんだ」

まどか「どういうこと?」

QB「暁美ほむらが本願を叶えた結果、果たして平行世界がその時間軸を中心に統合されるのか、各個独立して存続できるかわからないんだ」

まどか「……平行世界……なんだねやっぱり」

QB「話を聞いただけの君でも理解できるのに、彼女が理解できないなんて滑稽だよね。まあ、気づかないふりなんだろうけど」

まどか「……あなたにも、世界がどうなるかわからないの?」

QB「契約した時間軸の僕はわかっていたはずだ」

QB「そして、彼女の話からすれば、その時間軸の僕は止めなかった」

QB「理由としては二つ考えられる」

QB「一つは、各個独立して存続するから気にする必要がなかった」

QB「二つ目は、成功した場合統合される。ただしその僕は、彼女が本懐を遂げることはないだろうと判断した」

まどか「……辛辣だね」

QB「事実に近い推察だとも思うよ」

QB@彼女は何度も失敗し、ようやく叶えられたと思いきや、死後、君は契約しようとしているんだから」

まどか「……」

QB「世界が統合されているかしないか、されようとしているかは僕にもわからない……かもしれない」

QB「なにせ経験がないからね」

QB「ゆえに君が、暁美ほむらの手助けをしようとするならば、できれば阻止したいんだ」

QB「それをきっかけに世界が統合されれば契約した意味がなくなるからね」

QB「君がこの、目の前のほむらを生き返らせると言えばもろ手を挙げて賛成するんだけど」

まどか「私が押し通したら、どうなる?」

QB「僕は、君たちにとっては単なるシステムに過ぎない。ゆえに助言はできても強制はできないよ」

QB「じゃあ、私は契約する。全時間軸のほむらちゃんを助けるために」

QB「仮に君がうまくやって彼女を助けられたとして、彼女に顔向けできるのかい?」

まどか「できるよ。胸を張って会える」




「―――――ほむらちゃんは間違ってる!」


まどか「私のためにすべてを捨てるなんて絶対に間違ってる!」

まどか「私はほむらちゃんを助ける。だけど何もあきらめない!」

まどか「ほむらちゃんが守ったこの街を、パパを、ママを、たっくんを、仁美ちゃんを、友達を、先生を」

まどか「みんな守る!」

まどか「この世界を、魔法少女の運命を背負って生き抜いて見せる!」

まどか「すべての世界のほむらちゃん、さやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん、ついでに私を守って見せる!」

まどか「何もかもあきらめない!何もかも守って見せる!全部掴み取って見せる

QB「……脳内麻薬の出しすぎじゃないかな。そんなことできっこないよ」

QB「君もわかっているんだよ。君のテンションがその証拠だ。強がりだよ」

まどか「……」

QB「とは言え、君の決意はもう動かせないようだ。仕方ない。僕はあくまでシステムだからね」



QB「さあ、受け取るといい。それが君の運命だ」


その後、ほむらちゃんの遺体は消失した

私はこの時間軸を諦めてない。だから、この時間軸のほむらちゃんが救われるにはほかの時間軸に委ねるしかなかった

まどかside

『――――というのが前の時間軸のほむらちゃん』

『ほむらちゃんはあなたを救うために繰り返してる。この一か月間は、世界の起点、キーはあなた』

『あなたが行動したとき、はじめて私はこの世界に力を流して干渉できる』

『それが私の能力』

「やっとっていうのは、この時間軸の終盤になってって意味?」

『違うんだよ。この時間軸に今まで私の力はいらなかったでしょ?』

「そうだね。今まではいらなかったはずだね」

「じゃあ―――」

「そう、私はほむらちゃんが辿ってきた、この時間軸以外の時間軸、すべてで失敗してきた」

「……どうして?」

『結局私は、直接的には力しか流せないから』

『精神には副次的・間接的にしか影響を与えられないの』

『そして、干渉できるタイミングも限られてる』

『あなたが行動したとき、ただそれだけの条件だけど、そうは多く残されてないの』

『なにせ私だから』

『ほむらちゃんの話を振り返ってみて』

『あなたが行動したときに、力が流れて、その瞬間だけうまくいって、その時間軸がうまく運んでハッピーエンド、ってありそう?』

「なさそう……」

『そして、今、ようやく』

『力でどうにかできそうなタイミングがやってきた』

『仁美ちゃんには大感謝だよ』

『あなたの絶望は本当に酷かったから』

『今生き残ってもそのうち死にたくなるんじゃないか』

『今希望を与えられれ場、結果的に死ぬことになってもむしろ本望なんじゃないかって、仁美ちゃんが考えたほどに』

『仁美ちゃんがそこまで論理を差し置いて動くなんてそうないから』

「そうだね。後でお礼改めて言わないと」

「―――言えるよね?」

「?」

「よく考えたら、私にこの後何かあったら仁美ちゃんそれこそ死ぬほど後悔すると思うんだ」

「仁美ちゃんを苦しめたくない」

『大丈夫。みんなを信じて』

ほむら・マミ・杏子side

別まど「というわけで、この時間軸の私を起点にしてここに、今実体化してるの。ワルプルギスを倒し終わるまでの期限で」

別まど「みんながここまで頑張ってきたから、やっと助けられる」

別まど「ちなみに時間軸は存続するんだ。キュゥべえの取り越し苦労だったね」

杏子「なんっつーか、あんたってやっぱり優しさがぶっ飛んでるよな……」

マミ「とんでもないわねえ……」

ほむら「夢じゃなかったのね……」

ほむら「……まどか、あなたは本当に胸を張って私に会えるの?」

別まど「会えるよ。ほむらちゃんが最初の私に胸を張って会えるように」

ほむら「……幸せなの?」

別まど「あのワルプルギスの被害は、ほむらちゃんと杏子ちゃんのおかげで本当に最小限に留められた」

別まど「家族も、友達も、先生も、みんな無事」

別まど「これで不幸せなんて罰が当たるよ」

別まど「あの後の道のりも平坦じゃなかったし、よくくじけそうになったし」

別まど「たまに私の魔女化の果ての世界の行く末にどうしようもなく不安になるけど」

別まど「それでもみんながいるから生きていける」

別まど「隣町とかの魔法少女の友達もできたんだ」

別まど「苦しみを分かち合えるから、みんながいるから生きていける」

別まど「ほかの時間軸にしてもそう」

別まど「干渉はできなくなっても鑑賞はできるんだ。ダジャレじゃないよ?」

別まど「残された人はみんな精一杯、泣きながら笑いながら生きている」

別まど「ほむらちゃんがちゃんと私を止めてくれたおかげでね」

ほむら「……」

別まど「それにさ、一つ、私が世界を滅ぼした時間軸だって」

別まど「生き残りはいるんだよ」

ほむら「……え?」

別まど「キュゥべえはもうその時間軸でエネルギーを完了したし、どの道すぐにいなくなると思ったみたいだけど」

別まど「それでも精一杯生きてる人たちがいる」

別まど「もうその人たちはキュゥべえには頼れない」

別まど「そして、キュゥべえは、もし自分が来なかったら人は洞穴暮らしだったって説くけど、それはキュゥべえが建てた仮説でしかない」

別まど「私は、あの人たちはうまくやれるとにらんでるんだ」

別まど「だからさ、何が言いたいかって言うと――――」





「希望は残っているんだよ。どんな時にもね」



ほむら「……魔女化、するようなときにはどうするつもり?」

別まど「私の友達の魔法少女は、みんな止める覚悟は持ってる。甘えちゃうことになるけど」

まどか「私も何とか頑張るつもり」

ほむら「……私、ね、あなががうそをついてるかはわかるつもりなの」

ほむら「もう一度言って。自分は幸せだって」

別まど「私は、幸せだよ」

ほむら「……そう」

ほむら「あなたが自分で選んだ道なら、仕方ないわね」

ほむら「私は、あの時間軸でできることを精いっぱいやった」

ほむら「犠牲を出してしまった自分の無力さを呪うけど」

ほむら「それでもあなたが自分で道を選び、今、幸せだと言うのなら、送る言葉はこれしかないわね」




「頑張って」



「ほむらちゃんもね」


別まど「それで今まさに猛威を振るってるあれなんだけど」

別まど「この結界もそろそろ持たないんだ」

別まど「今までの周回でもいろいろやってきたし、もう無茶はきかないの」

杏子「どうすればいいんだ?てかさやか大丈夫なの?」

別まど「それはね――あ、来た来た」

まどか「お待たせ!」

QB「まどか!?これは一体……!?」

別まど「あなたに説明する義務も義理もないですよーだ!」

別まど「ほむらちゃん、盾かして」

ほむら「ええ?」

杏子「まずさやかのこと聞きたいんだけど。ここまできてダメなんていくらなんでもないよね……!?」

杏子「まだ目を覚まさないけど」

別まど「たぶん大丈夫」

杏子「多分って……」

さやかside

さやか「それでここはどこなのさ?」

別まど「想像ついてるんじゃない?」

さやか「大体ねえ。当たって欲しくなかったんだけど」

さやか「私の魔女結界の中?」

別まど「そうだよ。精神世界的なアレ。オクタヴィアを倒せば復活です!」

別まど「ありきたりだねえ……て言っても、やっぱりきついや。自分の負の感情を全部見せつけられてる感じでさ」

さやか「……ねえ、あれ倒したら魔女化克服なんてことは――」

別まど「ない。今回限り。さやかちゃんはいつか魔女になるかソウルジェムを砕いて死ぬ」

さやか「……モチベーション上がんないなあ」

別まど「そんなこと言ってるとみんな死んじゃうよ?さやかちゃんが加勢してギリギリ勝てるかどうかなんだから」

さやか「わかってるって。冗談冗談。早いとこ何とかして加勢しないとね」

別まど「それでこそさやかちゃんだよ」

別まど「あとさ、もうこれから先時間ないだろうし今しか言えないかもだからいうんだけど」

別まど「さやかちゃんと話せて、嬉しかった」

別まど「……やっぱりまどかだね。そんなこと照れもせずに言えるんだから」

>>804の最後の別まどのセリフは当然にさやかでした…

これにて投下終了です。第21話完です

次回、第22話

死に至る病、そして

英語サブタイトル未定

仁美の例の映像に関しては本当に頭にありませんでした……
何年も前の映像だから印象があまり残ってなかったとしか言いようがありません……

まどかに関しては、失敗したことに絶望を覚えたり、苦しむことはあるけど
同時にその時間軸に残された人々の生きる姿に希望を抱いているといった感じです

今度はミスしないようにします

それでは投下します




第22話



死に至る病、そして



You can advance and cannot redo.


私の盾はこの世に一つしか存在せず、新たに生み出すことはできない

そして、私の盾をほかの魔法少女に貸したことはない
ゆえに、他の魔法少女の代替可能な武器と同様、使い方を誤れば消えるものか、私にはわからない

消えてしまえば、もう二度と私の能力は戻らない

だが、他ならぬまどかが何かしら考えがあって頼んでいる以上、私に迷う理由など全くない

ほむら「はい、どうぞ」

別まど「ありがとう。……えいっ!」

まどかが叫んだ瞬間、盾の形状が変化した。というか変形した

ほむら「これは……弓?」

盾の構成要素がそのまま弓に変わった感じ。システマティックな印象を受けた

別まど「うん。ほむらちゃん、そろそろ武器のストックなくなってきたみたいだから、もうこっちの方がいいかなって」

ほむら「そうね……ありがとう、まどか」

別まど「気づいてる?ほむらちゃん?」

ほむら「?」

別まど「これで、ワルプルギスを越えた後も、ほむらちゃん、戦えるんだよ?」

ほむら「!」

杏子「おー!」

マミ「そうね!これで大丈夫じゃない!」

ほむら「……だけど、私、素質が……」

マミ「そんなのいくらでも、どうとでもなるわよ」

杏子「まー、もう一回マミに弟子入りでもするこった」

杏子「いくら時間かかってもいいんだからさ。なんせ3人もの魔法少女が支えるんだから」

ほむら「でも、あなた、私とワルプルギスを倒した後組むの反対だって……」

杏子「へ?……いや、それはほむらが全く改善できないっていうから。みんなで共倒れするしかないってのは絶対嫌だと思ってさ」

杏子「あれでも結構きつかったんだよ?」

マミ「大丈夫。暁美さん以外はちゃんとわかってたから。みんなのことを考えたからこそ、よね」

ほむら「……え?」

マミ「……暁美さんはあの時、それどころじゃなかったわよね」

ほむら「でも、それじゃ杏子との約束が……」

杏子「約束?」

ほむら「私がいなくなった分の見滝原のグリーフシードを杏子が貰うっていう……」

杏子「……」

マミ「……(あれ、提案してたんだ……)」

杏子『なあ、マミ。あたし、ほむらと友達だと思ってたんだけど、そうでもなかったのかな?』

マミ『途方もなく要領が悪いのよ。友達との約束を破るなんて考えられない子なの。察してあげて』

杏子「……どうでもいいんだよ、そんなのは!あたしがいいって言ってんだから!」

ほむら「……じゃあ」

マミ「これからもよろしくね、ってことよ」

……どうしよう

うれしい……!

別まど「ゴホン」

別まど「それで作戦なんだけど、私はすることがあるからこれ以上みんなを助けられないの」

ほむら「することって?」

別まど「さやかちゃんが戻ってくるまで、さやかちゃんとこの子を守る小さ目な結界を保たせることと、この子の素質を魔力に転用すること」

マミ「……え?」

別まど「つまり、私のこの弓を、この子が撃てるようにするの。私は力を流すだけで、直接倒すことはできないから」

マミ「……どのくらいの威力なのかしら?」

別まど「今のワルプルギスなら一撃で倒せるくらい」

一同「!」

別まど「ただ、問題があって、今は一発しか撃てないの」

別まど「だから、撃てるようになるまでの15分で、みんなにワルプルギスの動きを止めてほしい」

杏子「……それ、倒すよりある意味きつくないか」

別まど「だけど、みんなのうちの誰かが倒したら魔女化しちゃうでしょ?」

まどか「そっか」

マミ「確かにそれしか選択肢はなさそうね……」

別まど「さやかちゃんもすぐ参戦するから、なんとか保たせて」

杏子「わーったよ。ここまで来たらやるっきゃないね」

マミ「暁美さん、弓の要領掴むまで、後方支援お願い。だけど、長くは私たちも保たない。できるだけ早く、ね」

マミ「弓の魔力の消費は、まだわかってないでしょうし、時間停止は控えたほうがいいわ」

ほむら「……わかった!」

さやかside

あー、もう!
攻撃受けたりしたりするたびにソウルジェム濁るんですけど!
私には身に覚えがないんだけど、いかにもあたしがやりそうなことしでかしてる場面が頭に入ってくる感じ!
過去の時間軸ってやつかな?

ていうか、ここで魔女化したらどうなんのよ!?

『さやかちゃん言い忘れてた。ここで魔女化したらもう取り返しつかないから』

「はああああああ!!!!!?????」

『グリーフシードは存在しないけど、絶望に堕ちない限りは大丈夫だから』

『頑張って』

「先に言ええええええ!!!」

QBside

成程ね。別の時間軸の僕も困ったことをしてくれたものだ
しかし――――

暁美ほむら、君は別の時間軸のまどかの言う通りに動いているけど、本当にそれでいいのかい?

彼女の、自分を軽く見る性質は変わっていない
改善はされているが、あくまで程度の問題だ

そして、その「自分」には――――





――――この時間軸のまどかも含まれているようだよ?



さやかside

「あんたの気持ちはよくわかる」

「あたしとあんたの違いは、運とかタイミングの差でしかない」

「突き詰めれば、ほむらが私に目を向けてくれたか、キュゥべえを襲うことをやめたか」

「多分その最初のきっかけだけなんだよね」

「だけどさ、だからこそ」

「ここであんたに負けるわけにはいかないんだ」

「ほむらのご期待に応えられないことの連続だったし、最後くらいはさ、びしっと決めないと」

「いつかあたしもあんたのとこに行くからさ」

「それまで待っててよ」

そう言って剣を振り下ろした瞬間、あいつが大人しくなった気がした
あるいはあたしがそう思いたいだけか

……長い付き合いになりそうだね

そして世界が反転して現実世界に

別まど「お帰り」

さやか「ただいま。やっぱりあんま良いもんじゃないや」

さやか「それで今何やってんの?ワルプルギスを倒すってことでいいの?」

別まど「そうだけど、さやかちゃんたちはあくまで足止め。みんなと協力して動きを止めて」

さやか「おっけー」

さやか「みんなーただいまー!」

杏子「おせーぞバカ!危うく全滅だ!」

さやか「うう……ごめんなさい」

マミ「フフ。あれ、ただの照れ隠しよ」

マミ「本当はうれしくて仕方ないの、誰よりもあなたのことを心配してたから」

杏子「うるせえ!せめて後にしろ!」

さやか「えへへ……それで、何やればいいの?」

杏子「あのでかいビルにワルプルギスを磔にする」

杏子「マミが爆撃で誘導して、あたしとさやかで串刺しにして動きを止める。ほむらは使い魔の殲滅」

さやか「了解!」

マミさんが爆撃で誘導して―――

マミ「ボンバルダメント・リミタート・アナラメント!」

さやか「いつにもましてすごいなあ……ねえ、あたしたちもああいう風にやらない?」

杏子「冗談じゃない。あたしの何かが崩壊する」

さやか「えー」

杏子「時間ねえし浮かれてもられないんだよ!こういう時に気を抜くと碌なことにならないんだ!」

さやか「はーい」

あたしと杏子がやつに接近する際に出された使い魔にほむらが応戦

そしてあたしたちが巨大な槍と剣を召喚し

ワルプルギスの腹と四肢のあたり(足どこにあるかよくわからないけど)に打ち込む

磔完了!

ほむらside

ほむら「即席の作戦にしてはよくできたわね」

マミ「時間にはなんとか間に合ったわ」

杏子「……おいさやか、何やってんだよ?」

さやか「え?何って戦闘態勢だけど?止め刺すのは早い者勝ちでしょ?」

杏子「いや、それ終わったんだよ」

さやか「へ?」

マミ「あの、魔法少女の鹿目さんが、この時間軸の鹿目さんの素質を魔力に転用したの」

マミ「鹿目さんも未契約で済むから、誰も魔女化せずに済むということよ」

さやか「……」

さやか「……あたしその話今聞いたし、的外れなこと言うかもだけど」

さやか「それ、やばくない?」

杏子「何がだよ?」

さやか「魔法少女が一発で魔女化するような絶望だよ?まどかが受けて本当に大丈夫なの?」

……!?

杏子「いや……大丈夫だろ、あいつの不思議パワーか何かで……」

ワルプルギスのテレパシー妨害魔法が消えてる……!

マミ「今呼びかけるから……!」

マミ『鹿目さん!ワルプルギスを倒した際の絶望に対処できるの!?』

……

杏子「どうなんだ!?」

マミ「……返って来ない!」

まどかのあの表情……覚悟してる!

なんであの子はいつもいつもいつも……!

この場所じゃ手を出せない!
いや……止めてもワルプルギスがいつか動き出すだけ……

どうすれば……!?

マミ「みんな、暁美さんにリボンをつなぐから、それにつかまって!」

さやか「マミさん!?」

マミ「時間停止とみんなの攻撃で、今のワルプルギスなら多分倒せるわ!まだ時間停止使えるわよね!?」

ほむら「……ええ。あれを倒し終わってからしばらく経つまでは使えるはず」

杏子「あのバカ共が攻撃する前に止めを刺せばいいんだな!?」

ほむら「……ごめんなさい、みんな……私だけじゃ、絶対無理だから……」

さやか「今更言いっこなしだよ!」

そうだ。今は迷ってる場合じゃない……

!?





……あれ?



マミ「……どうしたの?」

ほむら「……これ、時間停止するには、どうやるのかしら?」

杏子「……わかんないのか?」

ほむら「形状変わっちゃってるから……

ほむら「……どうしよう!?」

マミ「貸して!」

そうだ、巴さんなら……!

マミ「……!?これ――――」





「――――時間停止機能が無くなってる……!」





!?!?!?!?!?


まさか―――


―――このために……!?

そして、まどかが弓を放った

私たちはなす術もなかった

ワルプルギスが消失し
別の時間軸のまどかが消えて
絶望を受けたまどかと、それを見た私の絶叫が木霊した



私たちはあの夜を、地獄の一か月を越えた


しかし、越えた先が地獄でないとは限らない

QBside

約束の時だ

いよいよ、今日をもって、我々の最大の使命、宇宙の永遠の存続が達せられる

魔法少女諸君、お別れだ

これで投下終了です。これで22話完です

次回

世界の中心でアイを叫んだけもの(仮)

Take care of yourself. (仮)

いずれもTV版エヴァ最終回のものですが、最終回というわけではありません

あと、冒頭で言い忘れましたが、シムアースはやったことがありません

最初の投下以前にあったストックは、マミと杏子が抱き合って泣くところまでです
そのストックもいじくりながら投下しました
だから叛逆を見た後に加筆しているとも言えますが、自分としてはあまりその要素を入れてるつもりはありません

それでは投下します




第22話



優しさの輪郭



Take care of yourself.


まどかはひとしきり叫び声をあげた後で意識を失った
ひどい悪夢を見ているようだった
あるいは見ているのだろう

その後、まどかをとあるビルの空き室に運んだ
ここにいられるのは避難勧告が解除されるまでの間のみ
長居はできない

巴さんとさやかが治療している間、私は泣いてばかりで使い物にならず
杏子にひたすら慰められていた

杏子「大丈夫だよ」

杏子「まどかは確かに自己犠牲精神の権化みたいなやつだけど」

杏子「少なくとも今のまどかは、自分がいなくなったらどうなるかわかってる」

杏子「何の相談もなしに二度と目が覚めないようなことするはずないんだ」

杏子「なにか手があるはずさ」

ほむら「……そう…よね……そうに………決まってる」

ほむら「そうじゃなかったら……」

ほむら「……許さない……いくら…まどかでも……」

杏子「……」

そうこう話しているうちに巴さんとさやかが治療をやめた

マミ「体には何の異常もない。私と美樹さんではどうしようもないわ」

ほむら「……なにが問題なの?」

さやか「心だろうね。絶望を受けたんだから、当然っちゃ当然だけど」

杏子「……体に異常がないなら、そのうち元に戻るんじゃないか?」

さやか「……かも…しれない」

マミ「だけど……私にはそうは思えない」

マミ「鹿目さんって、決して弱くはないけど、こんな規格外な絶望を受けて自力で復活できるとほどとは……」

杏子「……あのさ、ありきたりだけど、あたしたちでずっと声かけ続けるとか」

マミ「もちろんそれはするべきでしょうね」

マミ「けど、それとは別に打てる手を打たないと」

杏子「打てる手?」

マミ「精神系の魔法」

一同「!」

マミ「もちろんやってみないとわからないけど、グンと起きる確率が増すと思う」

ほむら「巴さんは……」

マミ「ちょっと見よう見まねでやってみたんだけど、まるで手ごたえがないわね」

マミ「やっぱり専門家じゃないと無理よ」

さやか「専門家……」

杏子「わりぃ……あたしがまともに使えてれば……」

ほむら「あなたは何も悪くないわ……」

さやか「マミさん、心当たりない?」

マミ「あるにはあるけど……かなり不安ね」

さやか「と、言うと?」

マミ「頭の中をいじくってもらうわけでしょう?相当信頼できる人じゃないと」

さやか「そっか」

ほむら「……困ってる人を放っておけない善人か、見返り次第で何でもするビジネスライクな人間……でしょうね」

マミ「……やっぱりそういう精神系使いは思い浮かばない。探さないと」

杏子「……あたしも…何とか取り戻す」

マミ「……無理はしないでね。かえって遅れることにもなるから」

……固有魔法を封じられる、とうのは魔法少女にとって致命的にもなり得ることだ
杏子は幻影魔法抜きで生き抜ける力を習得したが、それでも命の危機に瀕したことはいくらでもあったはず

ずっとトラウマを放っておいたはずがない
克服しようとしてきたはずだ。それでもできなかった

……やはり、できたとしても長い時間がかかるだろう
それでも、巴さんが言う通り、急かすことはできない

マミ「やっぱり早急には無理ね」

杏子「……家に帰すか?」

ほむら「……それしかないわ」

さやか「何をどう説明すれば……」

マミ「……」

一同途方に暮れていた時に

マミ「ねえ、キュゥべえ。何をやっているの」

気が付けばまどかのそばにインキュベーターがいた
……なんだろう、この違和感は。雰囲気?

QB「僕にもなにかできないかと思ってね」

そうか、インキュベーターもまどかがこのままじゃ困るか

マミ「何をやっているの?」

QB「僕が直接脳に語りかけることができるのは知っているだろう?それで呼びかけているんだよ」

そう言えばそうだ

……情報を隠しながらも、あくまで自由意志を尊重するこいつは、先のビジネスライクに当てはまるかもしれない
……任せてもいいかもしれない。
いや、任せるべき?

だけど何だろう、この違和感が形になっていく感覚は

マミ「具体的に、どう呼びかけているの?」

いま、違和感の正体がわかった。巴さんだ
でも……なんで

QB「……」

巴さんがインキュベーターに、かつて私に向けていた視線を向けているの?

QB「契約してくれと呼びかけている」

……

……!?

杏子「はあ!?どういうことだオイ!?」

QB「言ったとおりだよ」

QB「彼女の意識――夢というべきかな?――に契約してくれと呼びかけている。」

QB「それで同意したら契約成立だ」

杏子「何言ってんだテメエ!?そんなこと今までしたことねえだろうが!?」

そうだ……

そんなことできるなら……するなら……
―――なぜ今までやらなかった!?

マミ「進行状況はどう?」

QB「……あのまどかはこの状況を見越していたようだ」

QB「杏子以外をはねつける障壁を彼女の心に残していた」

QB「だが、突破できないものでもない」

QB「時間の問題だね」

マミ「鹿目さんの心に接触できたとして、鹿目さんは断れるかしら?」

QB「まず無理だね。人が寝ているときには理性が働かない、ないし極端に弱い」

QB「彼女の、君たちを助けたいという真心が前面に押しでる」

QB「二秒もかからず即決するだろう」

そんな……

さやか「なんで今になってそんなこと突然やりだすのさ!?」

QB「少女の希望と絶望の相転移によって僕たちはエネルギーを得ている。これは知っているよね?」

QB「そして、理性なき判断による契約では、生まれる希望が弱いんだよ」

QB「魔女と戦う運命を背負ってまで願いをかなえるべきか」

QB「この葛藤を乗り越えてこそ、強い、絶望との落差を生む大きな希望が生まれるんだ」

QB「願いにふさわしい対価を払った、という達成感がキーだね」

QB「もちろん死にかけていうるなどそれどころじゃない場合はそんな葛藤などないが、葛藤できるタイミングまで待てないのだからしょうがない」

QB「通常の状態の少女には、そのような葛藤を求めている」

QB「だからこそ、僕たちは理性が働く状態での、自由意志を尊重しているんだ」

ほむら「だから、なぜ今は尊重しないのかと―――!」

QB「必要がないからだよ。いや、必要がないと分かったから、だね」

ほむら「!?」

QB「鹿目まどかの素質を、目先の契約欲しさにつぶしてはならないと、当初は考えていた。しかし―――」

QB「―――ついさっき、彼女の素質の片鱗を、魔力変換という形で見た」

QB「あれでも、まだ片鱗なんだ。未だ莫大な素質が眠っている」

QB「一部だけしか見れなかったが、あのすさまじい魔力を目の当たりにして――――」

QB「―――鹿目まどかの理性、葛藤なくしても、僕たちのノルマ、宿願をかなえられると、母性の統率は判断した」

QB「あのまどかには感謝しないといけないね」

私は銃を構えた

マミ「魔法少女になったら、鹿目さんは目覚めるかしら」




QB「目覚めるよ」



!?


……さやかと杏子が恐る恐る私を見る
これが落としどころじゃないか?と目が言っていた

……かつての時間軸とのまどかとの約束
―――契約阻止
それは私のすべてだった

だけど、このやり直しができない状況では……

まどかが意識不明でも、契約していないと開き直れる神経など持ち合わせていないのも事実
そんなのなんの意味もない

……ワルプルギスのグリーフシードはまだまだ大量に使える状態
訳も分からず魔法少女になったまどかが落ち着くのを待てるほどに余裕はある

そして、まどかがいつ目を覚ますか、皆目見当もつかない

……私も、その落としどころに傾きつつあった

そんな中

マミ「魔法少女になったとして、彼女はどれくらい保つかしら」

インキュベーターの「友達」である、巴さんだけが、あいつを疑っていた

QB「保つか、と言われてもね」

QB「……そういう意味でないら、数舜も保たない」

ほむら「……なんですって?」

QB「彼女の絶望が一気にソウルジェムに流れ込むんだよ?すぐ魔女になるにきまってるじゃないか」

QB「まさに、一瞬だよ。君たちは何の手も打てないだろうね」

QB「彼女が、自分の絶望を取り除くようにと願ったそうはならないけど」

QB「彼女は間違いなく君たちのために祈る、と僕は確信しているんだ」

QB「……そういう意味でなら、まったく保たない」

ほむら「……なんですって?」

QB「彼女の絶望が一気にソウルジェムに流れ込むんだよ?すぐ魔女になるに決まってるじゃないか」

QB「まさに、一瞬だよ。君たちは何の手も打てないだろうね」

QB「彼女が、自分の絶望を取り除くようにと願ったそうはならないけど」

QB「彼女は間違いなく君たちのために祈る、と僕は確信しているんだ」

その瞬間

さやかと杏子は怒りに震え動けず
私は引き金にかけていた指を引こうとした

だが、この時間軸で身についた「習性」
―――まどかとさやかに勧誘するインキュベーターを衝動的に撃たないようにと自分を押さえつけて身についた「習性」が―――それを邪魔した

そして一つの考えが、今思えばひどく失礼で最低な考えが頭をよぎった

「はたして巴さんは許してくれるのか」

それは間違いなくこの時間軸での私の弱さだった

だけど、まどかの前でそんなことはやはり些事であり

まどかのためなら再び迷路に迷いこんでも構わない覚悟で引こうとした

引き金を引こうとしてから、1秒も経たなかったと思う




だがその1秒の躊躇いで

巴さんに「友達」を殺させてしまった



私の銃から弾が放たれる前に、別の銃から弾が放たれ、インキュベーターが肉塊と化したのだ







「あなたの好きにはさせないわ――――





 ―――――インキュベーター」








後にさやかから聞いた話だが、彼女は打つ瞬間、「さよなら」と言うように、口を動かしたらしい




……その眼は潤んでいたらしい



今回の投下はここまでです。第22話完です

今回の日本語タイトルは漫画版から引用しました

すいません。まだ22話終わってませんでした。途中です

それでは投下します

QB「やれやれ、まさか君に撃たれるとはね。僕たちは友達じゃなかったのかい?」

新しいインキュベーターの個体がやってきた。今までよく見てきた光景だ

マミ「友達だからと言って何をしても許されるわけじゃない」

マミ「それに、あなたは絶縁状をたたきつけられても文句を言えないようなことをしたのよ?」

QB「別に文句を言う気はないけどね」

「まあ、それ一体を破壊されても無駄というものさ」

―――!?

気が付くと無数のインキュベーターが部屋の中にいた
……30?……50?……100?

QB「これをやると候補者に引かれちゃうから普通はやらないんだけどね」

QB「もはやそんなことは関係ない」

……どうする!?
インキュベーターの排除……?
―――1匹相手でもそれをしきれなかったというのに……!?

「「「「「「チェックメイトだ。暁美ほむら」」」」」」

……

………

…………

これはもう……

完全に打つ手が……

マミ「みんな,、しっかしりて」

マミ「暁美さん、美樹さん、インキュベーターから鹿目さんを守って」

さやか「……もう終わりだよ」

さやか「今なんとかできても、もうあいつはまどかの素質の片鱗に触れちゃった……」

さやか「寝てる時にでも呼びかけられたら、防ぎようがないよ……」

マミ「……それはこれからの問題よ。今はただ鹿目さんを目覚めさせることだけ考えて」

マミ「彼女の絶望を取り除けずに契約されてしまったら、もうどうしようもない」

マミ「世界が終ってしまうのよ」

さやか「……!」

ほむら「だけど、巴さん……!」

ほむら「私はインキュベーターの排除に成功したことがない……!」

ほむら「ましてこの数で、時間停止も使えないのに……!」

マミ「泣き言なら後で言いなさい」

マミ「それに、何も永遠に排除しろなんて言ってないわ」

ほむら「……?」

マミ「30分だけでいい」

ほむら「……え?」

マミ「その間に、佐倉さんの幻覚魔法と取り戻す」

杏子「……は?」

杏子side

杏子「それで言われるままに河原まで来たわけだけどさ、30分でなんて絶対無理だよ?」

杏子「そりゃあ、それが出来るならなんだってするけどさ」

マミ「本当ね?」

杏子「ああ」

マミ「……佐倉さん、私もね、魔法を使えなくなったことがあるの」

杏子「……!?」

マミ「魔法少女になって一か月のことだったかな」

マミ「なんで自分だけ助かったんだろう、私も一緒に死ねればよかったのに、なんて考えたことがあるの」

マミ「それで、ね、リボンも回復魔法も使えなくなった」

……願いの否定、か

命をつなぐリボン、命を救う回復魔法
……確かに使えなくなるだろうな、そんなこと考えたら

あたしと一緒か

だけど、マミはあたしと出会った時にはそんなそぶりもなかった
……どうやって克服したんだ?

マミ「だけど、魔女は私の都合なんて聞いてくれない」

杏子「……そりゃそうだな――――って、うん?」

杏子「……あのさ、それ、その状態で魔女と戦ったっていうわけ?」

マミ「うん」

銃もリボンから精製してるものだ。つまり―――

杏子「―――武器も回復魔法も使えないのに魔女に挑んだっての……?」

マミ「うん」

杏子「あんた、それでよく死ぬと思ったら逃げろとか人に言えるなあ!?」

マミ「それで案の定死にかけたのよ」

杏子「そりゃそうなるだろうよ……」

マミ「それで、いよいよこれは死ぬなって瞬間、目の前が真っ暗になったの」

マミ「そして、気付いたら私は傷が回復してて、魔女がいなくなって、グリーフシードが落ちてた」

マミ「その後、何の問題もなく魔法を元のように使えるようになったのよ」

杏子「……?」

マミ「つまりね、トラウマやら願いの否定を、それを上回る恐怖で塗り変えてしまうの」

マミ「それで生存本能に訴えて魔法を引きづり出せばいいってわけ」

今まであたしにも教えなかったわけだ
生きるために魔法を取り戻す、そのために死にかけるなんて本末転倒だからな

マミ「もちろん、たまたま私がそうだったってだけで、あなたもそうなるとは限らない」

マミ「むしろ、当てはまる人のほうが少ないでしょうね」

マミ「あなただって、今までだって死にかけたことはあるでしょうし、それでもあなたの魔法は戻らなかった」

マミ「あなたには合わない『治療法』である可能性の方が高いと思う」

マミ「だけど、今すぐに幻覚魔法を取り戻す方法が、私には他に浮かばない」

杏子「……あたしとしても案がない。時間もないし乗らせてもらうよ」

杏子「だけどさ、その日の魔女にマミが、その日のマミにあたしがなるわけだろ?」

杏子「あんたが私を殺しにかかるってわけだけど、本気でそんなことできるの?」

杏子「あの時だってできなかったじゃないか」

マミ「……自信を持てなかったの」

杏子「自信?」

マミ「私は、あなたにとやかく言えるほど正しいのか、って」

杏子「……マミは絶対に正しかったよ」

マミ「だけど、あなただって間違ってるとは言い難かった」

マミ「固有魔法が使えない以上、使い魔も狩るやり方をすればすぐに限界は来る」

マミ「あの時は、あなたが魔法を取り戻すまで私が支えるつもりだったけど」

マミ「あなたが一生取り戻せなかったらお互いの命を縮めるだけ」

マミ「客観的に見れば、確かにあなたのやり方のほうが長生きする」

マミ「そして、トータルで私が救った人の数を上回るかもしれない」

マミ「それと、あなたとの数々の思い出」

マミ「……あなたを断罪なんてできなかった」

自分は正しいからぶっ飛ばすでいいだろ、そんなの

杏子「それで、今は違うってわけ?」

マミ「……」

杏子「―――ッ!?」

今、あたしはさっきキュゥべえをマミが撃つ前時に感じた悪寒を覚えた
ほむらが妙にビクついてたのはこれか

マミ「……鹿目さんがあいつに出し抜かれて契約したら、もう何のために魔法少女をやってきたかわからない」

マミ「守るべき友達も救えずして、誰かを救ったからなんなのかって」

そしてあの殺気は――――

マミ「……私ね、鹿目さんを助けるために、あなたが間違って死んでしまっても仕方ないかなって思ってる」

マミ「もちろん死んだら元も子もないのも事実なんだけど」

マミ「魔法少女なんて人のために死んで上等じゃない?」

間違いなくあたしに向けられていた

マミ「……死ぬのがあなただから、ってこともあるわ」

杏子「……そうだな。あの腐れまどかが出現するまでは、あたしとマミが死ぬって話だった」

杏子「最初からそれを選べなかったことをかなり後悔もした」

杏子「もう後悔なんてしたくないし、まどかをに救うために命を賭けるしかないってんなら、喜んで差し出すさ」

杏子「だけどさ、あんた気づいてる?」

杏子「生存本能に問いかけるってわけだけどさ、その生存本能は、殺そうと襲い掛かってきたやつを――――」

杏子「――――殺すように働くと思うんだけど」

杏子「自制なんてできないだろうし、できちゃ逆にいけないだろうけど」

杏子「殺される覚悟はあるわけ?」

マミ「馬鹿にしないでくれるかしら」

杏子「ハッ。さすがに愚問だったね」

杏子「てかさ、こんな風に話してる時間、そもそもないんじゃないの?」

マミ「何もあなたが知らないままに、私の攻撃が通って死んじゃうなんてあっちゃいけないし」

マミ「……これから死んでいく友達に、理由くらい話してあげたいと思ってね」

マミ「……10分もかからずに決まるから、時間的にも余裕がある」

杏子「……そっちが勝つ気なのかよ」

マミ「99%私が勝ってあなたが死ぬわ。あなたには1%をつかみ取ってもらう」

杏子「なめられたもんだねぇ……」

杏子「まあ、いい機会だ。いつか白黒つけようかと思ってたんだよね」

杏子「本気のあんたとやれるってのも悪くない」

杏子「小器用さなんざ殺し合いに役に立たないってことを教えてやるよ」

マミ「……そろそろ始めましょうか」





「――――さよなら、佐倉さん」




「――――じゃあな、師匠」






……あたしとマミじゃ最後に行き着く場所も違う



本当にお別れだな……


これにて投下終了です。第22話を終えるかはまだ考え中です

投下します。まだ第22話途中です
ワルプルギスの後処理を終えるまで第22話で行くことにしました

ほむらside

QB「やれやれ。理解に苦しむよ。君たちはもう詰んでいるというのに」

ほむら「黙れ……!」

そうだ……元々簡単な道じゃなかった
何度諦めかけたかわからない

ようやく未来が見えるところまで来たんだ……
あとは、掴み取るだけ!

たとえ前に茨が生い茂っていようが、火の海が燃え盛っていようが―――
―――1%でも可能性があるなら、諦めるなんてできない……!

……投了するまでは詰むことなんてない!
王を獲られるその瞬間まで戦い続ける!
巴さんを信じる!

今はただ、インキュベーターを薙ぎ払うことだけを……!

QB「マミが遺した言葉を信じてるんだね?杏子の幻覚魔法を30分で取り戻すという戯言を」

さやか「戯言かどうか――――」

さやかが剣を振りかぶる

さやか「――――あんたに決められてたまるかよ!」

剣を振ると同時に数多広範囲のインキュベーターが吹っ飛んだ

もうすでに私を超えた

これがあのさやかか…
巴さんと杏子に一か月教えこまれたさやかか…
ワルプルギスを越えたさやかか…

数多の時間軸で切り捨ててきた可能性か……

QB「君たちにとって巴マミは魔法少女として格上の存在でもある」

QB「この状況において、もはやその彼女の言葉にすがる他ないか」

QB「君たちには権威を説得力とする習慣があるよね」

QB「時には今の君たちのように、言葉そのものより重視する」

QB「おかしな生物だよ」

さやか「少しはその口を閉じたら!?」

 反論しつつも手は緩めない

QB「僕は口を開いているわけではないけどね」

さやか「権威ではないわ。信頼よ」

QB「君たちもわかっているはずだよ。30分で確実に取り戻せる方法があるならすぐに提案していたはずだと」

さやか「……マミさんが抜けたんじゃないの!?」

QB「そう思いたければそう思っているといい」

QB「それより耳よりな情報だ。今、マミと杏子が殺し合いをしているよ?」

さやほむ「なっ!?」

QB「客観的に考えれば、取るべき方針で揉めたととるのが妥当だろうね」

QB「二人で、が無理でも、せめて君たちのうちどちらか一人が止めてきたほうがいいんじゃないかな?」

QB「今二人が方針で争っているならば、30分で終わらせる、なんて完全に夢物語だよ?」

さやか「……よく言うよ!」

さやか「あんたなら闘ってる原因を知ってるはずだ!」

さやか「あたしたちが止めに行くような理由で闘ってるなら、客観的に、とか、ならば、とか」

さやか「そんな奥歯に物が挟まったような言い方をするはずがない!」

さやか「もっと直接的に伝えるはずだ!」

QB「……確かに理由は知っている。しかし、さやか、君は自分の言っていることを理解しているのかい?」

さやか「何が言いたいのさ!?」

QB「君たちが止めに行かないような理由なら、きちんと行く前に説明するはずだろう?」

さやか「……!」

QB「『マミさんが何とかしてくれる』というあやふやで抽象的な根拠よりも」

QB「納得できて具体的な根拠の方がはるかに闘う上での原動力になるからね」

QB「本当に、マミが抜けていた、で済ませるつもりなのかい?」

さやほむ「……」

QB「――――彼女たちはまどかのために互いを殺そうとしているんだよ?」

QB「殺し合いという言葉は嘘じゃない」

さやほむ「!?」

QB「君たちは、まどかのためにあの二人が死んでいいと思ってるのかい?」

さやか「……そんなわけない!そんなわけないけど……!」

ほむら「さやか、いずれにせよ、二人でさえ手一杯なのに、一人が抜けたらもう防ぎようがないわ」

ほむら「そして、インキュベーターが障壁を破りまどかの意識に接触したらすべてが終わり」

ほむら「……私たちはもう、あの二人に託すしかないのよ」

ほむら「二人が命を懸けてるのなら、なおさら……ね」

さやか「……ままならないね、なかなか」

QB「やれやれ、君たちは本当に理解に苦しむ」

QB「もう終焉は避けられない。最後の時を祈りにでも捧げて穏やかに過ごしたらどうなんだい?」

ほむら「おあいにく様!あきらめの悪さだけには自信があるわ!」

さやか「ついさっき諦めてたじゃん!?」

ほむら「あなたに言われたくないわ!!!」

ほむら「そりゃあ、ようやく地獄の一か月が終わったと思ったら」

ほむら「まどかに出し抜かれてまどかが倒れて」

ほむら「目を覚まさせる方法もわからなくて」

ほむら「挙句こんな状況になったら弱音の一つくらい吐きたくなるわよ!」

さやか「そりゃそうだ!それでも立ち上がったあんたはすごい!尊敬する!」

さやか「あと、この時間軸、私を見限らないでくれてありがとう!」

ほむら「急にどうしたの!?」

さやか「最後かもしれないからさ!」

ほむら「縁起でもないこと言わないで!」

ほむら「…」

ほむら「……」

ほむら「………こちらこそ、よ」

さやか「え?何?」

ほむら「……何でもない!手を休めないで!」

これにて投下終了です

すいません。今夜の投下無理です
しばらく無理かもです

投下します

杏子side

今回はリボンに捕まったら即アウト
拘束→ソウルジェム破壊のコンボは魔法少女にとって致命的だ
ゆえにリボンは裂けつつ丁寧に丁寧に破壊しなければならないわけだが

回復魔法をろくに使えないあたしにとってはあいつの銃を体に食らうのだってかなりまずい
弾次第では、一発で腕が吹っ飛びかねない

そういうわけで銃・リボンそれぞれ単体でも相当やばい
あたしは防戦一方になることを迫られている

あの銃で超速度連射しつつリボン飛ばしてくるとかもう人間業じゃねえよ……
しかもご丁寧に先にリボンでトラップを仕掛けていて、そこに誘導するように攻撃してくるし……
槍一本でどうにかできる範疇を超えてるだろうが……




―――とはいえあたしも槍を複数出せるわけなんだけどね


銃とリボンをあそこまで同時に操れるやつはいない
だがそんなマミでさえ、移動しながらは若干厳しいようだ
普段よりもすさまじい処理だが、機動性を犠牲にしてるんだろう

突くならそこ。あいつの足元から槍を直接生やして串刺しにしてやる
5・6本生やせば完璧に戦闘不能ってもん――

――ああ!?



……槍を生やすと同時に銃を乱射しつつリボンで行く手を遮りながら突っ込んできやがった


左腕がいかれた……




「普段この速さで処理をしないのは、奇襲や新手を警戒してるからであって」



「手を知り尽くした相手と一対一でやる時には、そんな警戒いらないのよね」


動かなかったのはフェイクかよ!?クソが……
挙句手を読まれてたとか最悪だな……

……とは言え実際あの処理はきついはずなんだ

……処理の速さのために警戒を犠牲にしているならば、マミの言う通り奇襲や新手を使えば崩せるはずだ
この状況では奇襲などできるわけもなく、使える新手は―――

この時あたしは、急激に頭が冷え、ひどく冷静に次の一手を導き出し実行した
あたしの生存本能は、マミのと違って記憶を奪うタイプではなかったようだ

ゆえにあたしはすべてを覚えている
まるで幽体離脱でもしたような気分だった

ほむらside

階段から足音が聞こえてきた。やっと――――!

ほむら「杏子!―――」

ほむら「―――……!?」

杏子は大量の血を浴びていた
……杏子自身はそこまでひどい怪我を負っているわけではない

ならば―――!

さやか「マミさんは!?」

杏子「浄化……だけしてきた……」

杏子はこんな返り血を浴びるような大怪我を治す術を持っていない……!
あたしにも治せない!
できるとしたら―――!

杏子「……砕いて……やるべきだった……!」

……声を押し殺して泣いていた

さやか「杏子!マミさんはどこ!?」

杏子「……あたしは幻覚魔法にぜんっぜん慣れてない!!」

さやか「急になに!?」

杏子「やってる途中にこいつらに邪魔されたらどうなるかわからないって言ってんだ!!」

さやか「……!」

ほむら「……私がインキュベーターにあたる」

杏子「……ほむらができるなら、マミは回復役にさやかを呼んでたはずだ」

ほむら「できるかできないかなんて問題視していない」

ほむら「やると言っているのよ」

杏子「できなきゃ同じことだろうが!」

ほむら「私だけの問題ではないわ」

杏子「ああ!?」

ほむら「あなたが手早く済ませればいい」

ほむら「さっき、一度は使ったんでしょう?できないとは言わせないわ」

杏子「この…!」

ほむら「さやか、行って」

さやか「任せたからね!」

杏子「おい!待て!」




「……場所も聞かずにどこ行く気だ!?例の河原だ、バカ!」



「りょーかい」


杏子side

杏子「馬鹿だよ…あんたは……ここまで来て切り捨てられないのかよ……!?」

ほむら「ここまで来たからこそ、よ」

ほむら「いや、もっと前から、そうだったわね」

ほむら「……とっくに気づいていたでしょうに」

ほむら「……あなたと巴さんのことを私は心底すごいと思う。だけど、もう私にはできない」

ほむら「ごめんなさい」

杏子「……謝って済む問題じゃないよ……自分の言葉には責任もってよね……!?」

杏子「……行くよ」

素面で使ってみてわかったことだけど
固有魔法の基本的な使い方は自転車の乗り方と同じで、長い間使ってなかったとしても忘れるものではなかった

それに加え、あたしだけが侵入できる障壁というのは、あたしの侵入をサポートする機能もあったらしく、随分楽にやれた

それで、今まどかの意識の中

別まど「……」

杏子「これはどういうあれなの?」

別窓「私の魔力に残った意識の残滓かな」

杏子「へえ」

別まど「……怒ってる……よね?」

杏子「当然でしょ」

杏子「あんたは、ほむらの信頼を、一番許されないやり方で裏切ったんだ」

別まど「……」

杏子「……あんたとしてはやることやっただけってのもわかってるけどさ」

別まど「……」

杏子「ま、あんたが残りかすっていうのなら、ここでぶつけても無駄だね」

杏子「共犯の、このまどかが起きてからにするよ」

別まど「……ほどほどにね?」

杏子「さあてね。それで、あたしは何をすればいいの?」

別まど「……この障壁は、杏子ちゃんが来たら、絶望を取り込んで消失するようにできてるの」

杏子「なんだ、じゃあ、もうあたしいらないじゃん?」

別窓「ううん。インキュベーターが私の素質に触れちゃったから、障壁は必要なの」

杏子「あー……」

別まど「今から魔法の術式を杏子ちゃんの頭に流し込むから、それを魔法でマミさんの頭にそのまま映して」

杏子「マミ……」

別まど「大丈夫。今のさやかちゃんなら間に合わせられるから」

杏子「……」

別まど「後は、それを再び私の頭にかけてもらえれば」

杏子「あいつ、破るのは時間の問題だって言ってたけど?」

別まど「うん。だからイタチごっこ」

別まど「魔法を改良して、私の素質がなくなるまで逃げ続けてほしい」

杏子「あいつと知恵比べ?」

杏子「まあ、魔法改良はマミがするんだろうけどさあ、さすがに勝てる気がしないっていうか……」

別まど「それでもマミさんならやれると思う。魔力の使い方はマミさんの方が私よりはるかに上なの」

別まど「あいつは、私の単なる力押しで作った障壁でも破るのに苦労してたから」

別まど「マミさんが改良したらあいつにとっては相当固い障壁になるはず」

別まど「それに、インキュベーターは基本的に契約成立と魔法少女を長持ちさせるために、少女の精神についてよく知っているけど」

別まど「魔法自体の詳しい発動方法、解除方法にそこまで詳しいってわけでもないの」

別まど「今からそれに興味を持つにしても、たぶんタッチの差で振り切れる」

杏子「どれくらい続ければいいのさ?」

別まど「それは正直よくわからないの」

別まど「小学校低学年で素質がなくなった人もいれば、成人の直前まで残った人もいるから」

杏子「あやふやだねえ。マミをそこまで保たせないといけない、か」

別まど「……マミさんが死ぬのはいやだけど、ほかのみんなも障壁をかけられるほうがいい」

別まど「マミさんなら噛み砕いてみんなに説明できると思う」

杏子「そうか」

杏子「ま、マミと要相談だけど、あんたの言った通りにするしかなさそうだね」

別まど「……もうお別れだね」

杏子「……ま、さっきはああ言ったけど、やっぱ全員こうして無事に残りそうってことはうれしくもあるんだよね

杏子「そこはお礼言っとくよ」

杏子「いつまで続くかわかんないけどさ」

別まど「……さっきの障壁だけど、かけられる人はたくさん残った方が有利だから、そこは忘れないで」

別まど「重ね掛けとかもできるし、それとは別に誰か一人は常に生き残らないといけない」

杏子「……わかった」

QBside

やれやれ。ノルマ達成と思いきや、か
彼女の出現から掌でもてあそばれてばかりだった
数多の時間軸の失敗からえた経験値、なのかな

これから心理障壁魔法の調査、か
彼女たちとはそこそこ長い付き合いになりそうだ

投下終了です。これにて第22話完です
次の投下日は未定です

誤爆でも読んでいただいてるってことだからとっても嬉しいなって



一矢報いたという表現が適切かなと思います
やはり完全勝利はまどか☆マギカの世界観上難しいので


後日談投下します。先がぼんやりしてるんでタイトルはつけません




エピローグ


ほむらside

さやか「ねえ、これ一体どういう状況?」

ほむら「……私に聞かれても」

杏子「……」

まどか「……」

マミ「……」

ほむら「……そのまま見れば、あなたが巴さんを回復し終えてここに帰って来たら、まどかと杏子が巴さんに土下座をした、ね」

ほむら「まどかはみんなに謝ってるみたいだけど」

さやか「……ねえ、二人とも?マミさんもあたしたちも困ってるから」

さやか「まず謝ってる理由から説明するべきじゃないかなあと思うんだけど」

杏子「……本当にどんでもないことをしたと思ってる」

杏子「申し訳ないです……」

杏子「もう他になんて言っていいか……」

マミ「……そう言われても、いまいち何のことかわからないのよ」

マミ「お互い様としか言いようがないんじゃないかな?」

確かに謝ってる理由は想像がつかないでもない

けど、例の「殺し合い」は幻覚魔法を取り戻すためのプロセスだった
だから杏子があそこまで深刻に謝っている理由が、私にもわからない
いくら面倒くさい子とはいえ、この場面ではむしろさらっと流す性格だと思うんだけど…

杏子「お互い様、で済ませられないことをしちまったと思ってる……」

マミ「―――ああ……そのこと」

巴さんは、ニコリとほほ笑んで言った

マミ「……久しぶりに会えてうれしかった。美樹さんがくるまでソウルジェムが保ったも、そのおかげかもね」

杏子「―――!」

そういうこと、か……

巴さんは幻覚魔法を使わざるを得ない状況に杏子を追い込んだ
だから当然それを使われることを予期していた
その相手に対し攻撃を通せる隙を作るほどの幻覚を、生存本能は選び取ったというわけだ

杏子「お人よしが過ぎるよ、あんた……」

マミ「だから、それもお互い様よ」

これで杏子が謝っていた理由は分かった
あとは……

さやか「で?まどかはなんで謝ってるの?」

まどか「……みんなに迷惑かけて」

まどか「杏子ちゃんとマミさんに大変な、ひどい目に合わせて……」

まどか「本当にごめんなさい」

杏子「あのさ、迷惑とかひどい目、とかに怒ってるやつはこの中にはいないんだけど」

マミ「ええ。むしろ望んでやったことよ」

さやか「ねえ、まどか、あたしたちがまどかに怒ってる理由はそこじゃないんだよ?わかるでしょ?」

まどか「そのことだったら―――」

まどかは顔を上げずに答えた

まどか「―――たとえみんなに絶交されても」

まどか「絶対に謝らない」

さやか「……暁美さん、どうしますか?反省の色なしですよ?」

ほむら「……絶交されるようなことをしたって認識してるのがたち悪いわね」

まどか「……」

マミ「まあ、今後は大丈夫じゃないかしら?契約なしでリスクさえ犯せばなにかできるって状況はもう来ないでしょうし」

杏子「それは……まあ、そうだな」

さやか「……」

さやか「ねえ、まどか、あんたがあたしたちが戦ってるとこに向かったのって、あのまどかが出現してからのことなの?」

まどか「……ううん」

杏子「……はあ?」

杏子「じゃあ、何?契約する気だったっての……!?」

まどか「契約する気はなかったんだ」

杏子「だったらなんで来たってのさ?」

まどか「みんなが死ぬってわかってたから、じっとしてらいれなかった」

まどか「なにもできないってわかってたけど、行かずにいられなかった」

杏子「……おい、どうすんだ、コイツ。またやらかすぞ?」

さやか「うーん。ここまで頑固なまどかは見たことないからなあ……」

ほむら「……さやかの場合、こうなるとほんと骨が折れるのよね」

杏子「こいつらホント似てるからなあ……」

マミ「……私たちも折れるつもりはないし、適当なところで妥協しましょうか」

さやか「適当なところ?」

マミ「私たちは、鹿目さんに心配かけないくらい強くなる」

マミ「自分の命を大切にする」

マミ「だから、鹿目さんも、私たちが危なくなっても危険なことをしない」

杏子「まず、マミが危険なことをしないと誓え」

マミ「……」

杏子「やっぱりできないのかよ……」

ほむら「まあ、ここで落とすしかないわ」

ほむら「ワルプルギスほどの絶望的状況も今後はそうないでしょうし」

さやか「そうだね」

さやか「まどか、あたしたちこれから頑張るからさ」

さやか「まどかもちょっとやそっとあたしたちが危ないってときは、信じてくれないかな?」

まどか「……うん。ちょっとやそっと危ないってときは信じる」

杏子「困ったやつだなあ……」

ほむら「……今はこれで仕方ないわね」

投下終了です。後日談その1終了です

次回投下日未定です

ちょっとですが投下します

杏子side

ワルプルギスを倒してその後の処理がすんだあと、まどかは母親にこっぴどく叱られることになった
あの「台風」の中娘が黙って外に飛び出したんだから当然だよな

まどかとしてはあたしたちのことは伏せておきたかったんだけど、まあ、あたしたちにも責任の一端はあるわけで
(無論、あたしたちはまどかに来るなといったわけで、それを破ったまどかが悪いってのは譲るわけにはいかないが)
まどか一人に背負わせるわけにはいかない

そういうわけで、まず、まどかの独断専行を許したらしい志筑仁美とまどかが怒られてて
それにあたしたち4人が加わった

そして、誰一人として理由を語れないために
6人に分散すると思われた怒りは逆に6倍以上に膨れ上がった

そして、大体最近帰り遅いし何か隠してるだろうという至極ごもっともな指摘にもまどかは黙秘し
とうとうその怒りはみんなの両親にまで波及した

離れて暮らしてるほむらの両親はまだしも
超がつくほどの名門らしい志筑家当主や徹底した不干渉主義のマミの叔母まで招集したのだから凄まじい

マミが叔母を呼ばれた時なんか、人間あそこまで肌が青くなるもんなのかと驚いた

それで、志筑仁美は舌先三寸でうまい具合に自分に全責任があるかのように信じ込ませかけていたのだが
あたしたちはそれぞれの理由で、あの女に責任をかぶせる理由はさらさらなかった

そういうわけで後ろから銃を撃たれた志筑仁美も陥落して
まどかの母親以外は、これ終わらないんじゃないかな、何て午前三時辺りに考え出した

長々と説教聞きながら、なんでこんな鬼みたいなのからまどかが育つのかと最初は思ったわけだけど

あの人は家族も保護者も身元保証人もいない施設にも入っていない中学生という
およそ日本にあたし以外に実在するか怪しい存在をあっさり受け入れて

怒り以外のいろんな感情をあたしに向けてきた

あたしとしては同情向けられるのなんて大嫌いなんだけど
それを察してか、あの人は自分の同情心を隠そうとしていた

そのお人よし振りをみて、ああ、やっぱりまどかの母親なんだなと思った

それで翌日はマミ宅で打ち上げが行われた

まあ、最初思ってた通り、万事ハッピーエンドとはならなかったけど
ワルプルギス後もみんなが生きてて、こうして怒られたり笑ったりできるなんて想像もしなかったから

相当嬉しい

これにて投下終了です。後日談その2でした

次回投下日は未定です、内容は多分打ち上げの模様です

あまり明るい感じにはならないかも

さやかside

さやか「昨日は大変だったねー」

マミ「昨日、ていうか今日なのかしら?もう一生怒られ続けるのかと思ったわ……」

まどか「……本当にごめんなさい」

ほむら「まどかのせいじゃないわ」

ほむら「それより、昨日の今日で私たちといて大丈夫なの?怒られたりしない?」

まどか「大丈夫。みんなとお泊り会って言っても、楽しんで来いって言われただけだから」

まどか「さやかちゃんだって来てるじゃない?」

さやか「そういうのごまかすのは慣れたもんなんだよ」

ほむら「……ごまかすのは慣れてるでしょうけど、腕は上達しているとは限らないわ」

さやか「……やっぱバレてるかな?」

ほむら「気づかない振りをしているだけでしょうね。感謝しておきなさい」

さやか「果たして返せるものでしょうか……」

ほむら「長生きすればいいのよ」

さやか「……やっぱそうなりますかー」

さやか「……ま、昨日生き残ったことで、まず第一関門クリアかな」

さやか「しっかしまー、こうしてまた五人で集まれるとはねー」

マミ「……夢みたいだわ」

まどか「ほんとによかった……」

ほむら「感無量よ」

ほむら「……あのまどかのことは心残りだけど」

マミ「大丈夫だと思うわよ?あの鹿目さん図太そうだったから」

まどか「……色々あったんだろうね」

さやか「図太さって言ったらまどかもそうなってきた気がするね」

まどか「何それー?」

さやか「てかさ、杏子どうしたの?なんか元気ない感じだけど」

杏子「ん?……ああ、悪いね。何でもないよ」

さやか「……なんかあるよね?今更隠し事なんてなしだよ?」

杏子「……今後のことについて、ちょっとさ」

まどか「今後のことって?」

杏子「魔法少女のこととか、生活のこととか」

さやか「魔法少女のことはともかく、生活のことって?マミさんと一緒に暮らしてくんじゃないの?」

杏子「そういうわけにいかなくなるんだよ」

マミ「……私としては全く構わないのよ?むしろ―――」

杏子「そうじゃないんだよ。魔法少女四人でやってくわけだから、グリーフシードがそこそこいるじゃん?」

杏子「特にワルプルギスが来た後少しの間は、その地域で出現する魔女が極端に少なくなるらしいんだよ。聞いた話だと」

杏子「今日探ってみた感じそんな風だったから、ガセじゃないっぽい」

杏子「そういうわけで風見野での魔女狩りがしばらく重要になるんだ」

さやか「なにか問題あるの?」

杏子「風見野が他の魔法少女に奪われないように目を光らせとかなきゃいけない」

杏子「魔法少女ってのは隙あらば他人の縄張りを荒らす生き物だからさ」

マミ「ああ……」

ほむら「そういうこと……」

杏子「それで、風見野で目を光らせる役割って言ったら、やっぱあたしでしょ?」

さやか「……そうだね」

杏子「最近開け気味だったし、早く手を打たなきゃいけないんだよ」

杏子「それで差しあたっては、まず拠点を風見野に移すことになるんだけど」

杏子「……どうしたもんかなって」

ほむら「先立つものはまとまったお金で、色々な手続きもやっぱり中学生だと色々面倒でしょうね……」

杏子「手続きは魔法でちょこまかやればいいと思うんだけどさ……」

だけど、お金の部分に関しては誤魔化さない
……杏子はもうあの暮らしに戻るつもりはないから

やむを得ない時にはやりかねないところは未だにあるけど
杏子はそれをやったらあたしたちの側からいなくなる
そんな気がする

だから、あたしたちは絶対にそんなことさせない
させないんだけど……

マミ「……叔母からどうにか引き出す」

杏子「昨日の今日じゃないか。無理だよ」

マミ「何とかなるわ」

杏子「何とかなるようには見えなかった」

マミ「……お金を引き出す口実なんて、いくらでもあるわ」

杏子「厳しく追及されるよ。あたしのせいだけどさ、最近の生活費だってかなりもらってたわけじゃないか」

同じような理由で多分ほむらも厳しい

この一か月ワルプルギスのために結構無理なやりくりをしてたらしいし
マミさんと同じく親が非常招集かけられた後だから

時間さえかければみんなそれぞれやりようがあるんだけど―――

さやか「それってやっぱり急がなきゃダメなの?」

杏子「周りに危ないのがうじゃうじゃいるんだよ。できれば明日からでも風見野に移らないと」

さやか「そっか……」

ほむら「杏子には何か考えがあるの?」

杏子「まー見切り発車的に始めて最初は今まで通り野宿とかでも何とかなるんじゃないかなー、って」

杏子「土地勘はあるし、魔法少女と違う危ない輩が来てもぶっ飛ばせるし」

さやか「女の子がやることじゃないよ……」

杏子「んなこと言ったってさー」

ほむら「今までと違って魔力での色々な誤魔化しがきかなくなるのよ?」

ほむら「……使い魔を放置しない限りは」

杏子「あー……」

杏子「考えてなかった……」

まどか「……そういうことなら」

杏子「?」

まどか「ママがね、杏子ちゃんのこと気にかけてて、いつでも頼っていいって言ってたの」

杏子「……あのさ、まどか、そういうのはさ、社交辞令ってやつであって」

杏子「せいぜい気が向いたときにご飯をべに来ていいですよって程度の―――」

翌日早朝、まどか宅にて

詢子「―――別にかまわないよ」

杏子「」


杏子「あの……どういう……」

詢子「まどかの友達がお金がどうしても必要だから借りようってんでしょ?」

詢子「断る理由はないよ。事情があるみたいだし」

これにて投下終了です。後日談その3終わりです

どうも自分が思っていた打ち上げと違う……

次回はまどか宅で>>991の会話から続きます

とてもこのスレで終わりそうもなくなくなったので、一応次スレです
次スレの前にこのスレが残っていたらこのスレから投下します

まどか「希望は残っているんだよ。どんな時にもね」ほむら「2」
まどか「希望は残っているんだよ。どんな時にもね」ほむら「2」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1386438959/)

ここまで来たのだからこのスレで終わるべきだったんでしょうが、いかんせん計画性がなく……


訂正
>>990
ご飯をべに→ご飯を食べに

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年12月11日 (水) 03:29:15   ID: 9_XsB9Rz

すみません。ちょっとだけ時間を貸してくれませんか
今、課題のためアンケートしたいをしていますので皆様に手伝っていただきたいです。
ぼかす言い方 的について聞きたいです
以下のURLでちょっとだけおねがいします!
悪いモンじゃないです!!1分くらいで全部できますのでよろしくお願いします。

https://questant.jp/q/8IKH6Y2P

2 :  SS好きの774さん   2015年01月19日 (月) 22:58:02   ID: PAcr-vCq

凄い

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