男「叙述トリックバトル……?」(10)

?「アナタはいつ生まれた?」

男「いきなりなんだよ?」

?「アナタ、つまり『男』という人物は『いつ』生まれた?」

男「そりゃ、誕生日って意味か?」
男「だったら、7月4日だ」

?「それは本当?」

男「……何が言いたいんだ?」

?「アナタが生まれたのはついさっき」

男「は?」

?「『このスレが立った瞬間』アナタは生まれた」

男「なに言ってんだ……?」

?「アナタは自分が何者か、知っている?」

男「はぁ?決まってんだろ」
男「自分のことは自分がよく知ってる」

?「じゃあ、アナタは何者か教えて?」

男「教えるもなにも……」
男「オレはどこにでもいる普通の大学生だよ」

?「いつから?」

男「去年の入学式からだよ」

?「アナタはいま『普通の大学生』になった」

男「ワケが分からん……」

男「じゃあ……なんだ?」
男「オレはついさっき生まれて」
男「たった今、大学生になったってのか?」

?「その通り」

男「話が見えてこねえな……」

?「単刀直入に言う」
?「アナタと私は『架空上のキャラクター』」
?「『物語の登場人物』にすぎないの」

男「だったらオレはおとぎ話の勇者か?」
男「バカバカしい……」

?「証拠を見せてあげる」

男「証拠?」

?「よく見ていて」スルッ

男「……おい!」

?「私が何者か、教えてあげる」パサッ

男「!!」
男「ばっ…!何やってんだ!服を着ろ!」

?「何もやってないけど」

男「……はぁ?」

?「私はただ、擬音を発しただけ」スルッ
?「するとアナタは連想ゲームを開始した」パサッ
?「脳内辞典を開き、擬音に該当する風景を想像した」

男「なっ」

?「しかもアナタが『服を着ろ』なんて言うもんだから」
?「『私が服が脱いだこと』になった」

?「『服を着ろ』という言葉が私の『服を脱がした』」

男「結果としえ脱いでなかったとしても……」
男「女の子が目の前で脱ごうとしたら止めるだろうが」

?「目の前?」
?「私達、いま電話越しなんだけど」

男「はぁ!?」

?「対話してるなんて一度も言っていない」

男「そう、だが……」

?「不思議じゃない?」

男「な、なにがだ!?」

?「想像の中の私たちは、さっきまで対話したいたのに」

?「いつの間にか、アナタは電話機を手に持っているし」
?「いつの間にか、私は受話器の向こう側に移動したわね」

男「確かに……」

?「『アナタはさっき生まれた』って意味、分かってきた?」

男「……あ、ああ」

?「描写することによって、はじめて存在が確定する」
?「この物語という世界の中ではね」

男「認識するまで存在しない……ってことか」

?「つまり、それは」
?「描写を操る=世界を操る、ということに他ならない」

男「世界を操る……」

?「しかも、『認識』や『描写』の多くは」
?「物語の登場人物に委ねられている」

男「オレたちに……?」

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