ほむら「巴マミと共同戦線を張る」(166)

マミ「自分より強い相手は邪魔者ってわけ? いじめられっ子の発想ね」

ほむら「……巴マミ。あなたに提案がある」

マミ「聞きたくもないのだけど、一応聞いてあげる。何?」

ほむら「一緒に戦うことは出来ないかしら」

マミ「……何を企んでいるの?」

ほむら「一ヶ月後に、この街にワルプルギスの夜が来る」

マミ「ワルプルギスの夜……!? 根拠は?」

ほむら「統計よ」

マミ「信用すると思って?」

ほむら「……お願い。頼れるのはあなたたちしかいないの」

マミ「『たち』?」

ほむら「……」

マミ「他にもあてがあるの? わたしの知っている人かしら?」

ほむら「……佐倉杏子よ」

マミ「……! 佐倉さんとあなた知り合いなの?」

ほむら「直接の面識はないわ。でも、冷静で優秀な魔法少女だと聞いている」

マミ「間違ってはいないわ」

ほむら「あなたも佐倉杏子も、魔法少女としての実力は確かなはず。そのあなたたちに頼んでいるの。わたしがあなたの思うような目的で動いていない証明とは受け取ってもらえないかしら」

マミ「……なら、佐倉さんも連れてきて。三人で戦うことになるなら、わたしとあなたが話すだけでは不十分よ」

ほむら「連れてきたら、一緒に戦ってくれるのね」

マミ「その時に考えるわ」

~~

杏子「てめえ……何者だ? なぜあたしの名前を知っている?」

ほむら「あなたほどの実力者ともなれば有名よ。佐倉杏子、わたしは争いに来たんじゃない」

杏子「……アンタも無駄な戦いはしないタイプかい? ならちったぁ信用できそうだ。で、用って何だよ」

ほむら「あなたに会ってもらいたい人がいるのよ」

杏子「誰だ?」

ほむら「巴マミ」

杏子「っ!!」

ほむら「一緒に来てもらえないかしら」

杏子「……断る」

ほむら「どうしてっ!?」

杏子「その名前は、聞きたくないんだ」

ほむら「あなた、巴マミと何かあったの?」

杏子「アンタが知ったところでどうにかなることじゃない」

ほむら「お願い。あなたと巴マミじゃないと、成し遂げられないことなの」

杏子「あたしとマミじゃないと? 随分厄介な敵の臭いがするね」

ほむら「……よく分かったわね」

杏子「そりゃな。自分で言うのもなんだが、あたしの魔法少女としての強さはそれなりのもんだ。マミに至っては言うまでもない……。その二人に頼まなきゃならないことつったら、だいたい想像はつく」

ほむら「ワルプルギスの夜」

杏子「そんなことだろうと思った。出来ればそうであってほしくなかったけどな」

ほむら「三人でなら……三人でなら倒せるわ」

杏子「本当にそう思うのかい?」

ほむら「いえ……勝つのよ」

杏子「ふん。そこまで言われたらしょうがない。会ってやるよ。かつてのお師匠さんにな」

ほむら「師匠……?」

杏子「あたしとマミの話だ。何でもないよ」

~~

~ほむホーム~

マミ「ここが暁美さんの家?」

杏子「何だここ……結界に入ったのかと思ったよ」

ほむら「そこにあるのはだいたいホログラムよ。椅子に掛けてもらえる?」

杏子「よっと」

マミ「失礼します」

ほむら「まず、これを見てもらえるかしら」

マミ「地図?」

ほむら「ワルプルギスの夜は一ヶ月後、見滝原市のこの範囲に現れる」

マミ「暁美さん。さっきも言ったけど、その情報の根拠が統計って、いまいち信用できないの」

杏子「そうだな。アンタが勝手に妄想を話していたとしても分からない」

ほむら「じゃあ、これを見てもらえるかしら」ドサッ

杏子「うっ!? 何だよこの膨大な資料は」

ほむら「それで終わりじゃないわ」ドサッ

マミ「ワルプルギスの夜に関する資料かしら」

ほむら「そんなところね」ドサッ

杏子「……」

ほむら「さあ、納得のいくまで読んでちょうだい。きっと信じてもらえると思うわ」ドサッ

杏子「あーめんどくせー。マミあたしの代わりに読んでよ」

マミ「はいはい」

~~

マミ「……確かに信じざるを得ないわね」

杏子「マミが言うならそうなんだろ」

ほむら「わたしはワルプルギスの夜を倒すために準備を重ねてきた……。そこに何の策謀もないことを信じてほしい」

マミ「さすがに、もうあれこれ言う気はないわ」

杏子「ああ」

ほむら「三人なら絶対に勝てるわ。そして、巴マミ。あなたには改めてお願いがある」

マミ「鹿目さんのこと?」

ほむら「ええ。佐倉杏子も見てちょうだい。……これはわたしのクラスの集合写真よ。……この子が鹿目まどか」

杏子「可愛いじゃん」

ほむら「こっちが美樹さやか」

杏子「なんだか弱っちそうな奴だな」

ほむら「この二人が契約しそうになったら、止めてほしい。先輩であるあなたの言うことなら、きっと聞くはずだから」

マミ「……」

ほむら「自分より強い相手が生まれてほしくないなんていう理由で動いているのではないと、分かってもらえたはずよ」

マミ「そうね……」

ほむら「それに、仲間が欲しいのなら、わたしが仲間になる」

マミ「……本当?」

ほむら「ええ。わたしは決してあなたを裏切ったりはしない。約束する」

マミ「……分かったわ」

杏子「へっ、あたしは友情ごっこなんてごめんだね」

マミ「佐倉さん……」

杏子「んだよ、協力しないとは言ってないだろ」

ほむら「……ありがとう」

~~

杏子「アンタの話はそれだけか?」

ほむら「今日のところは」

杏子「そうかい。……マミ」

マミ「佐倉さん、最近どうなの?」

杏子「何って絶好調さ。あたしはもう無駄な使い魔狩りなんてしない。グリーフシードも有り余ってるからねぇ。もう何の不自由もない」

マミ「そう。あなたのやり方にとやかく言うつもりはないわ」

杏子「そいつは助かる」

マミ「佐倉さん……」

杏子「何だよ」

マミ「会いに来てくれたの、嬉しかったわ」

杏子「別に……コイツに連れてこられただけさ」

マミ「でも、あなたはもうわたしの前に姿を現さないと思っていたわ。たとえ暁美さんに頼まれても」

杏子「……アンタだって、こんな不肖の弟子とはもう会いたくないんじゃねーのかよ」

マミ「ずっと待ってたのよ?」

杏子「えっ?」

マミ「あの日から、わたしの気持ちは変わってないわ。あなたが帰ってきてくれるなら、いつでも帰ってきてほしかった。一人ぼっちは寂しいもの」

杏子「……んだよ。あたしは、あんたとはやっていけない。言っただろ? あたしはもうこの力を自分の為にしか使わないんだ。アンタと一緒にいていい人間じゃない」

マミ「人の為に祈って魔法少女になったあなただもの。魔法を自分の為に使ったって、誰も文句は言わないわ」

杏子「……マミさん」

マミ「おかえりなさい、佐倉さん」

杏子「ったく。こうなるとあんなに深刻な顔して別れたのが馬鹿らしくなってくるな」

マミ「決闘までしてね」クスクス

ほむら「(……『マミさん』……)」

~~

杏子「じゃ、今日のところは帰らせてもらうよ」

マミ「お邪魔したわね、暁美さん」

ほむら「協力、本当に感謝するわ。これからも普段は今までの生活を続けてもらって構わない。何かあれば、わたしがあなたたちを呼びにいく」

杏子「ああ。じゃあな」

マミ「またね」

~~

杏子「で、別れたと思ったら後をつけて、何のつもりだい?」

ほむら「……気付いていたなら早く言ってほしかったわ」

杏子「ふん。何か用?」

ほむら「あなたに、話がある」

杏子「マミには言えない話かい?」

ほむら「言えなくはない。言えたら言いたい。でも、やっぱり言えない話よ」

杏子「何だそれ。まぁ一応聞いてやろうじゃん」

ほむら「その前に、個人的な話なのだけど……あなたと巴マミは師弟関係だったのね。初めて知ったわ」

杏子「まぁ、……な。あたしに魔法少女としての戦い方を教えてくれたのはマミだったよ」

ほむら「それが何故?」

杏子「ちょっとあたしに不幸があってね……、まあグレちまった。言った通りあたしはグリーフシードの為にしか魔女を狩らないってスタンスだ。
   正義の味方やってるマミの傍にいるわけにはいかないだろ?」

ほむら「巴マミは気にしていないようだったけど」

杏子「みたいだな。あれでも大事な師匠であることに変わりはなかったよ」

ほむら「もう『マミさん』とは呼ばないのね」

杏子「う……止めてくれよ。さっきのは弾みで言っちまったんだ」

ほむら「そう? いいと思うけど」

杏子「勘弁してくれ。今更マミさんなんて痒くって言えたもんじゃない」

ほむら「そうね。……で、本題なのだけど」

杏子「おう」

ほむら「聞いているのでしょう? インキュベーター」

杏子「何言ってんだ?」

ほむら「……」

QB「やれやれ」

杏子「お、QBじゃねえか」

ほむら「わたしはお前の性格をよく知っている」

QB「僕は君についてほとんど知らないけどね。暁美ほむら。君が何者なのか、実に興味深い」

ほむら「お前は確かにわたしたちを惑わし、利用する。……でも嘘だけはつかないわ」

QB「……」

ほむら「わたしが本当のことを言えば、あなたは否定できない。佐倉杏子。わたしがこれから言うことは全部本当。それは、そこにいるQBが保証するわ」

QB「全く、君も陰険なことを思いつくね。しかし、君が有益な情報だけを僕から引き出そうとしているとすれば、それは無駄だよ。僕は君が杏子に知られたくないことまで喋るかもしれない」

ほむら「それはそれで構わないわ」

QB「そうかい」

ほむら「まず、あなたの魂はもうあなたの身体に宿ってはいない」

杏子「あん? どういう意味だよ」

ほむら「あなたの魂はQBとの契約時にそのソウルジェムに移されたのよ。だから今のわたしたちは身体をいくら傷つけられても死ぬことはない。
    逆に、ソウルジェムを砕かれたら死んでしまう」

杏子「……!? ……ふっざけんな……それじゃあたしたち、ゾンビにされたようなもんじゃねーか!」

ほむら「そして、ソウルジェムが濁り切ったらどうなるか、あなた知ってる?」

杏子「考えたこともねーな。あたしはいつもソウルジェムを最良の状態にしているから」

ほむら「ソウルジェムが黒く濁り切った時、それはグリーフシードに変わる」

杏子「……さすがに嘘だろ?」

ほむら「QBが何も言わないのが何よりの証拠よ」

杏子「そうなのかQB!?」

QB「否定するほど間違ってはいないね」

杏子「てめえ……」

ほむら「なぜQBがそのようなことをするのか。奴らの目的は、ソウルジェムがグリーフシードに変わるときに生まれるエネルギーよ」

杏子「何だよ……じゃあ、あたしたち家畜ってことかよ!」

ほむら「奴らにとってはそうなのでしょう。そうよね、インキュベーター」

QB「君の言っていることを偽りだとすることは出来ないね」

杏子「……それを、何であたしにだけ」

ほむら「あなたなら、この現実に耐え得ると思ったからよ」

杏子「マミは耐えられないと?」

ほむら「ええ。彼女は魔法少女に正義の使者としての理想を求めているわ。それはあなたも分かるでしょう?
    自分が殺してきた魔女が実はもともと魔法少女で、自分もいずれ魔女になる運命だとしたら……自殺も考えかねない」

杏子「……確かにな。でも、あたしだって平気な訳じゃ……」

ほむら「事実から目をそむけたところで何も変わらないわ。それに、わたしが信じてもらいたいのはこれだけじゃない」

杏子「まだ何かあるのかよ」

ほむら「……後日話すわ」

杏子「そうかよ。……今日は一人にさせてくれ。色々考えたくなった」

ほむら「好きにして」

杏子「じゃあな」

QB「僕はもうここにいなくていいのかい?」

ほむら「用は済んだわ。消えなさい」

QB「しかし君がそこまで知っているとはね。暁美ほむら、君は一体何者なんだい?」

ほむら「そんなことを言って、ある程度見当はついているはずよ」

QB「確かに、君が僕の目的を知っている理由として考えられるパターンは少ない。だがまだ確証はないからね」

ほむら「何にせよ、あなたに教えることはないわ」

QB「嫌われたものだ」

ほむら「当然でしょう」

~~

見滝原中学校

まどか「さやかちゃん、帰ろ~」

さやか「ああ、ゴメン。今日はちょっと……」

まどか「上条君?」

さやか「あはは、やっぱ分かっちゃいますか」

まどか「うん……」

さやか「ところで、マミさん最近見ないね。魔法少女体験コースもやってくれなくなったし……」

まどか「そうだね。何でだろ……あっ、あれマミさんじゃない?」

さやか「マミさーん」

マミ「……あら、鹿目さん、美樹さん」

さやか「最近あまり会わないじゃないですかー」

マミ「まぁ、二年生と三年生ではフロアーが違うものね」

まどか「魔女退治にも誘ってくれないし……」

マミ「あれはあれで危険なことよ。そう何度も行くものじゃないわ」

さやか「……マミさん、あたしたちのこと嫌いになっちゃったんですか?」

マミ「えっ!? ち、違うわよ?」

さやか「じゃあ何で……」

マミ「……あれからよく考えたの。魔女との戦いはとっても危険で、命を落とすこともあるわ。
   そんな世界にあなたたちを引きこむのは、やっぱりいけないことだと思って」

さやか「マミさん……。でも、叶えたい願い事があれば……、そのときあたしは……」

マミ「……。あ、時間だわ。ごめんなさい、今日は用事があるの。またね」

まどか「マミさん、何だかわたしたちを避けてるような……」

さやか「……」

~~

マミ「何か用かしら? 暁美さん」

ほむら「今日、集まってほしい」

マミ「オーケイ。せっかくだから、一緒に帰りましょうか」

ほむら「……お邪魔するわ」

マミ「ねえ、暁美さん。あの子たちのことなんだけど……」

ほむら「わたしも今訊こうと思っていたところよ。どうなの?」

マミ「鹿目さんは、わたしが離れれば魔法少女への興味を失うと思う。でも美樹さんは……」

ほむら「……」

マミ「叶えたい願いがあって魔法少女になろうとする子を、止めることは出来ないわ」

ほむら「……正直、ワルプルギスの夜を前にして新米魔法少女が現れるのは迷惑なの。何とかして止めたいわ……」

マミ「ごめんなさい、わたしにはどうすることもできないわ」

ほむら「なら、わたしが何とかする」

マミ「手荒なことは駄目よ?」

ほむら「分かっているわ」

マミ「ところで、今日集まるならわたしの家にしない? 毎回暁美さんの家にお邪魔するのも悪いし」

ほむら「……いいの?」

マミ「ええ、歓迎するわ」

ほむら「じゃあ、少し待ってて。佐倉杏子も呼んでくる」

マミ「あ……。行っちゃった」

マミ宅

マミ「さ、召し上がれ」

杏子「うおー。すっげえケーキ!」

ほむら「ただの会議なのにはりきりすぎよ」

マミ「ふふ、ごめんなさい。わたし、人を家に呼ぶと舞い上がっちゃうのよね」

ほむら「……でも美味しそうね。わざわざありがとう」

マミ「どういたしまして」

ほむら「……」

杏子「おおっ、こいつはうめー!」

ほむら「さて、そろそろ始めましょうか。これは見滝原市の地図なのだけど、今日はそれぞれの動きについて説明するわ。
    この丸で示されているのがワルプルギスの夜の出現範囲。で、この点がわたしたちの初期位置よ。わたしがここ、佐倉杏子がここ、巴マミがここね。
    まずわたしがワルプルギスの夜に砲撃を仕掛けると、ワルプルギスの夜は北北西に700mほど移動すると考えられる。そこを巴マミが……」

ほむら「~~」

ほむら「~~」

ほむら「~~……だいたいの作戦はこんな感じよ」

マミ「なるほどね」

杏子「いまいちイメージがわかないな。地図で説明されてもさ」

ほむら「もちろん、実際の場所に行って練習もするわ。今日の帰りにでも下見に行きましょう」

杏子「そうしてくれ」

ほむら「そうだ、あなたたち携帯電話は持っているかしら?」

マミ「わたしは持っているわ」

杏子「あたしはねー。そもそも契約できねーしな」

ほむら「佐倉杏子にはそんなことだろうと思って、わたしが用意したわ」

杏子「おおっ! くれるのか!?」

ほむら「通話とメール以外の機能は使えなくしてあるわ。料金は定額制だから気にしないで」

杏子「いやー悪いね」

ほむら「これからはこれで連絡を取り合うことになる。巴マミ、メールアドレスを」

マミ「あ、はいはい」

ほむら「(といっても、あなたのアドレスは……)」

マミ「送ったわ」

ほむら「どうも」

マミ「ふふっ」

ほむら「どうしたのよ」

マミ「いえ、こうやってメールアドレスを交換することなんてあまりなかったから。ごめんなさいね、甘いことを言って」

ほむら「いいえ……わたしも、仲間がいて心強い」

杏子「ふーん、これが携帯か~」

ほむら「じゃあ、作戦の確認も終わったことだし、下見に行きましょうか」

~~

マミ「ここでわたしだけ右に曲がるのね」

ほむら「ええ。着いたら電話してちょうだい。実際の戦いではテレパシーで連絡を取ることになるとは思うけど」

マミ「じゃあ、また」

杏子「またなー」

ほむら「で、どうなの?」

杏子「何だよ、どうって」

ほむら「ソウルジェムのことについては」

杏子「ああ、それね……。あたしはさ、別にいいかなって思ってるんだ。何だかんだでこの力を手に入れたおかげで好き勝手出来てるわけだしさ。
   魔女になる運命だとしても、魔女狩ってグリーフシード確保し続けりゃ問題ないわけだし、それでも濁りを止められなくなったら潔く死ぬよ。そんなに悲観することもないかなって」

ほむら「……あなたならそう言ってくれると思っていた」

杏子「おいおい、あたしをどんな風に見てんだよ」

ほむら「あなたはとても冷静で、合理的に物事を考えられるわ。魔法少女にはあなたのような人が相応しい」

杏子「そいつあどーも。……マミは違うとでも?」

ほむら「確かに戦闘力をとってみれば、わたしもあなたも巴マミには敵わないでしょう。でも彼女にはどこか甘いところがあるし、
    少し精神的に弱いところもある。負の感情でもグリーフシードは濁るもの」

杏子「でもこうやって真実を隠し続けるのもどーなんだよ」

ほむら「そうね。わたしだって、出来れば現実を受け容れた上で彼女に生きてほしい」

杏子「意外だな、あんたがそんなことを言うの」

ほむら「……わたしは」

杏子「?」

ほむら「……出来ることなら、彼女も救いたい」

杏子「……あんた、マミと何かあったのか?」

ほむら「あなたは冷静な人よね」

杏子「あんたはそう思うんだろう?」

ほむら「あなたを信じて、話してもいいかしら。わたしの願い、わたしの目的を」

杏子「……それを聞いたら、あたしはあんたを信用しなくなるかもしれねーぞ?」

ほむら「承知の上よ。だから、あなたを信じると言っているの」

杏子「……好きにしなよ」

ほむら「以前写真を見てもらったと思うけど、鹿目まどかという子」

杏子「ああ、あの魔法少女候補か」

ほむら「……彼女が、わたしの願いよ」

杏子「ほう、そりゃまた何で」

ほむら「わたしが、……未来から来たと言って、信じる?」

杏子「信じねーよ」

ほむら「でしょうね。でも、本当なの。ここではない別の世界で、まどかは魔法少女としてワルプルギスの夜に挑んで死んでしまった。
    わたしは、彼女を守れなかった自分が不甲斐なくて、彼女に生きてほしくて、魔法少女として契約をした。まどかとの出会いをやり直したいと、
    まどかと共にワルプルギスの夜を乗り越えたいと。次の瞬間、わたしは一ヶ月ほど前の世界にいた。でも、それでもまどかを救うことは出来ずに、また時間を遡った。
    そうして……数えるのを諦めるほど同じ時間を繰り返して……今もそのままよ」

杏子「じゃああんたは、これから何が起こるかも、知っているわけだ」

ほむら「……ええ」

杏子「ははっ。確かにそんなことを言ったらあたしはあんたを信用しなくなるよな」

ほむら「……」

杏子「けど、不思議と不信感はないよ。あんた、多分そのまどかって子を救いたいだけだ。何の悪だくみもしていない」

ほむら「……ありがとう」

杏子「じゃあ、前の世界であたしやマミに会ったりしてるのか?」

ほむら「あなたとは、他の時間でも共に戦ったことはあったわ。……結局は全て失敗に終わったけど。巴マミは……マミさんは……わたしの、魔法少女としての師匠、先輩よ……」

杏子「……あんたも」

ほむら「魔法少女としては弱かったわたしに戦い方を教えてくれたのも、守ってくれたのも、皆巴マミ。
    わたしは……わたしは、最初は、皆救いたかった。まどかも、マミさんも、美樹さやかも、あなたも……」

杏子「……」

ほむら「でも失敗を繰り返しているうちに、諦めるようになった。申し訳ないけど、巴マミや美樹さやかを。
    いつしかまどかのことだけを優先して……。でも、今回、あなたたちを救いたいという気持ちを思い出した。だって、今までで一番いいの。
    このままいけば、ワルプルギスの夜を三人で倒せるの。だから……」

杏子「あんたはすげえよ。まどかって子のためにそこまで……。まあいいんじゃん? 魔法なんてものは自分の為に使うもんだ。
   そのおまけで他人も救えりゃ、人によっちゃラッキーって話で」

ほむら「杏子」

杏子「ただ、マミに関しては、あたしもあんたと同意見だ。かつての先輩、救いたくないわけ……ねえよ」

ほむら「……ここからあなたは右、わたしは左よ。着いたら電話して」

杏子「お、もうそんなに歩いたか」

ほむら「じゃあ」

杏子「おう」

ほむら「また」

~~

ほむら「いける……いけるわ……今回なら。今度こそ、全員で、夜を越えるのよ……」

~~

数日後 病院

恭介「聴きたくないんだよ、自分で弾けもしない曲なんて!」ガシャン

さやか「恭介っ!?」

恭介「僕の手はもう二度と動かない……奇跡か、魔法でもない限り治らない!!」

さやか「……あるよ」

恭介「……?」

さやか「奇跡も、魔法も、あるんだよ」

~~

さやか「(決めた。マミさんが何と言っても、わたしには叶えたい願いがあるんだ!)」

杏子『あんたかい、噂のひよっ子は』

さやか「……!? 誰!?」

杏子「よっ」

さやか「……」

杏子「あたしは佐倉杏子。魔法少女だ」

さやか「!!」

杏子「単刀直入に言うと、あんたが魔法少女にならないよう説得しに来たのさ」

さやか「……何、転校生の差し金?」

杏子「ははっ、鋭いな。まぁ座れよ」

さやか「いい」

杏子「そうかい。ならあたしは勝手に座るぜ。ほい、リンゴ。食うかい?」ポンッ

さやか「……いい」

杏子「随分警戒されてるねぇ。まぁ当然か。あんたさ、巴マミに教わらなかったの?」

さやか「何を」

杏子「魔法ってのは、自分の為だけに使うもんだって」

さやか「……! それが何よ」

杏子「あんた、人の為に魔法少女になろうとしてるんだろ?」

さやか「確かに言われたわ。あたしがあいつを救いたいのか、あいつを救った恩人だと思われたいのか、そこのところをきちんとしないといけないって。
    でも、あたしはあいつを救いたい。この気持ちは確かだから」

杏子「やれやれ、どんなに惚れてる男だか知らねーけどさ」

さやか「余計なお世話よ!」

杏子「やめときな。予言してやるよ。その契約は、あんたも、その坊やも駄目にする」

さやか「何で分かるのよっ……!」

杏子「これは、……知り合いの魔法少女の話だ。あんたに良く似た、純粋で向こう見ずな子だったよ」

さやか「……」

杏子「その少女の家は教会だった。少女の父親は神父で、新聞を読んでは、何で世の中が良くならないのか真剣に悩んでいるような人だった。
   世界を良くしたい、その一心で、父親はやがて教義にないことまで説教し始めた。当然信者は遠のき、本部からは破門。父親もすっかり荒れちまって、
   一家そろって貧乏。食うもんにもことかく有様だった。だから少女は願ったんだ。皆が、父親の話をちゃんと聞いてくれますようにって。それから少女は晴れて魔法少女。
   魔女を退治するのも父親が望む良い世界の為だと思えばはりきったさ。でも、ある日からくりがばれた。父親は少女を魔女だと罵り、少女一人を遺して一家無理心中。
   その少女の、小さな願いが、家族を駄目にしちまったんだ」

さやか「……その子は今どうしているの?」

杏子「すっかりぐれて、魔法少女の仲間とも決別して、……のたれ死んじまったよ」

さやか「そう……」

杏子「そういう例を知っているから、あんたには同じ間違いを繰り返してほしくないんだ」

さやか「恭介は、ヴァイオリンの天才と言われていたんだ。でも、事故で……。あたしは、もう一度あいつのヴァイオリンを聴きたい。それが間違いだなんて……」

杏子「魔法で現実を捻じ曲げたって、それと同じ分の絶望が撒き散らされるだけだ。そしてそのしわ寄せは、きっとあんたら自身に来るぜ?」

さやか「だからって、恭介に別の生き方なんて……」

杏子「おいおい、あんたらまだ中学生だろ?」

さやか「あんたもでしょ」

杏子「生き方なんて今からいくらでも変えられるって! ……あんたらはまだ、人間なんだからさ。その坊やが弱っているなら、あんたが支えてやりゃいい」

さやか「……」

杏子「ま、あたしが言ってやれることはそんだけだ。強要する気もない。あとはあんたが決めてくれ」

さやか「待って! ……杏子」

杏子「あん?」

さやか「あたしは、美樹さやか」

杏子「知ってるよ。暁美ほむらから聞いたからな」

さやか「あのさ、さっき話してた魔法少女って、ひょっとして……」

杏子「は? 何を言いたいのかよく分かんねーけど、腹減ってんだ。帰らせてもらうよ」

さやか「佐倉……杏子……」

~~

翌日 病院

さやか「恭介ー」

恭介「……さやかか」

ナース「よっと」

恭介「それは……テレビ?」

ナース「美樹さんからのリクエストでね、上条君の部屋にテレビを置いてほしいって」

恭介「何でまた……」

さやか「迷惑だったかな?」

恭介「いや……むしろありがたい。最近やることもなくて退屈だったから」

さやか「で、これが今週の週間少年シャフト!」

恭介「え、悪いよさやか。確かにこれは僕が前に購読してた雑誌だけど……」

さやか「これから、毎週買ってくる。それで、あたしは学校であったことを恭介に伝える。恭介がいつでも戻ってこれるように」

恭介「さやか……」

ナース「じゃ、失礼しますね」ガチャ

さやか「なんて……おせっかいかな」

恭介「ううん。ありがとう、さやか。……この前はごめん。怒鳴ったりして」

さやか「ああー? あれ? 全っ然気にしてないよ!」

恭介「ごめん……」

さやか「だからさ、こうやって少しずつ、もとの恭介に戻ればいいよ」

恭介「そう……だね。さやか、僕、頑張ろうと思う」

さやか「よっしゃ!」

~~

ほむら「で、美樹さやかの説得は上手くいったのかしら」

杏子「わかんね」

ほむら「……」

杏子「分かんねーよ。あたしがあんなこと言えるのも、結果を知っているからだし、あたしだってあんな忠告されて契約するのをやめたかっていえば、怪しいさ」

ほむら「そうね。結局、経験しないと分からないものよね」

杏子「だけど、これから数日の間にあいつが契約しないなら、少しずつでも前に進んでるんじゃねーの?」

ほむら「ええ。現実は、奇跡のように劇的に改善される訳じゃない。少しずつ、地道に、目標に向かって進んでいくもの」

杏子「恭介ってやつも立ち直れるといいな」

マミ「暁美さん、佐倉さん」

杏子「マミ」

ほむら「巴マミ、どうしたの?」

マミ「魔女の結界を見つけたのだけど、ちょっと一人じゃ面倒な量なの。手伝ってくれないかしら?」

ほむら「構わないけど」

杏子「あたしはパス」

ほむら「杏子?」

杏子「マミともう一人いて倒せねー魔女なんてそうそういねーって」

マミ「全く、あの子ったら」

ほむら「でも彼女の言う通りね。早く行きましょう」

~~

マミ「ティロ・フィナーレ!」ドンッ

シャルロッテ「……」ニュルン

マミ「!?」

ほむら「マミさん!」

シャルロッテ「!?」ボムッ

ほむら「手榴弾で……」

シャルロッテ「アアアアアア」ボンボンボン

マミ「消えた……。危なかったわ。ありがとう、暁美さん」

ほむら「一人で行かなくて良かったわね」

マミ「ええ。それにしても、わたしと暁美さん、戦い方の相性ばっちりね!」

ほむら「そうかしら」

マミ「そうよ。まるでずっと前から一緒に戦ってたみたい」

ほむら「……本当にそうだと言ったら、どうする?」

マミ「え?」

ほむら「わたしの願いの内容は、時間遡行よ。遠い、別の時間で、あなたと共に戦っていたわ」

マミ「そう……なの?」

ほむら「信じてくれなくても構わない。昔は、あなたと、まどかと、わたしとでよく一緒に……」

マミ「暁美さん、もしかしてあなたの願いは……」

まどか「マミさん!!」

マミ「鹿目さん!?」

ほむら「!?」

まどか「良かったぁ。やっと見つけた……」ゼーゼー

マミ「そんな息切れして、どうしたの?」

まどか「わっ、わっ……」

マミ「?」

まどか「ワルプルギスの夜……」

マミ「!」

ほむら「……鹿目まどか、その名をどこで聞いたの?」

まどか「QBが……」

ほむら「あいつ……!」

まどか「もうすぐ、この街にすごい魔女が来るって……誰も止まられないくらい強い魔女が……。皆を救うには、わたしが魔法少女になるしかないって」

ほむら「まどか、そんなことはないわ」

マミ「そうよ、鹿目さん。QBはわたしたちの力を過小評価しているのね。わたしと暁美さん、そしてここには居ないけど佐倉さん、三人もの魔法少女が揃って、負けるはずないわ」

まどか「あれ、マミさん……。ほむらちゃんと仲良くなったんですか?」

ほむら「そうよ。だから心配しないで。わたしたち三人で倒せない魔女なんていない」

まどか「そっか……。良かった」

マミ「鹿目さんは何も気にしないで、普通に生活していればいいのよ」

まどか「そうですね……。わたしが魔法少女になるなんて言ったら、また皆に迷惑がかかるし」

ほむら「あなたは、鹿目まどかのままでいればいい」

~~

ほむら「杏子、美樹さやかの様子はどう?」

杏子「あぁ、あれからちょっと会いに行ったんだよ。どんなもんかなって」

ほむら「それで?」

杏子「あの坊や、何とかふっきれたみたいだぜ。ヴァイオリンだけが人生じゃないって」

ほむら「それはよかった……」

杏子「さやかの方も結構ご機嫌でさ、あの分じゃ心配はいらないよ」

ほむら「随分慣れ慣れしく美樹さやかのことを呼ぶのね」

杏子「あぁ、それ以来ちょっとばかし絡むようになってさ。バカだけどいい奴だよ」

ほむら「……そう」

~~

ほむら「杏子、その動きはもう一段階後よ」

杏子「わりいわりい」

ほむら「全く……」

杏子「でも練習疲れた~」

マミ「あら、そう? 今日の練習頑張ったらわたしの家でお茶にしようと思ったんだけど」

杏子「……しゃーねーな」

ほむら「単純ね」

~~

さやか「あんたはいいわよね~。学校行かなくていいんだからさ~」

杏子「ほーう? じゃあお前、自分でその日の飯とか寝床調達できんのかよ」

さやか「そいつはごめんだわ……」

杏子「あんたの生活なんて恵まれてるっての」

さやか「う~ん……」

~~

ほむら「巴マミ、いつも片付けをお願いして悪いわ。たまには手伝いましょう」

マミ「いいのいいの」

ほむら「わたしも暇なのよ」

マミ「じゃ、このお皿拭いてくれる?」

ほむら「お安いご用よ」

マミ「ふふっ」

~~

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「何、まどか」

まどか「大丈夫、なんだよね。絶対勝つんだよね?」

ほむら「ええ。絶対に勝つわ。そして……」

まどか「?」

ほむら「絶対にあなた……たちを守ってみせる」

~~

数週間が経ち……

ほむら「わたしの計算では、明後日にワルプルギスの夜が来るわ」

マミ「いよいよね……」

ほむら「巴マミ、この前の話なのだけど」

マミ「何?」

ほむら「わたしの願い……それは、まどかを守ること」

マミ「おおかたそんな気はしていたわ」

ほむら「今、謝らせてちょうだい」

マミ「え、何を?」

ほむら「わたしは同じ時間を繰り返すうちに、まどか以外の目的が見えなくなっていった。そうしてあなたたちを諦めるように……ごめんなさい」

マミ「ふふっ。そんなこと言われても分からないわ。その世界のことなんて、憶えていないもの」

ほむら「マミさんは……わたしの最初の先輩でした……」

マミ「! ……」

ほむら「出来れば、また、先輩と呼びたかったです……。わたしに何もかも教えてくれて、守ってもらったことも何度もあった。今のわたしがいるのは……」

マミ「なら、喜ばないとね」

ほむら「え?」

マミ「今、またこうして協力しあえるんだから。あいにくわたしに記憶はないけれど、暁美さんはわたしの大事な仲間よ」

ほむら「マミさん……」

マミ「明後日は、勝つわよ」

ほむら「(ああ、ここまで来たら言ってしまいたい。分かってる。そんなこと言わない方がいいのは。でも、もうハッピーエンドは見えている。その先も、偽り続けていくのは……わたしは……)」

マミ「暁美さん?」

ほむら「マミさん、ソウルジェムのことについて、お話しすることがあります」

~~

二日後

ほむら「……来るっ!!」

ほむら『二人とも、準備はいい?』

杏子『ばっちりだぜ』

マミ『万端よ』

ほむら「決着をつけてやる!」

ワルプルギス「アハハハハハハハハハッ!!!!」

ほむら「(まずはわたしの砲撃!)」ドンッ

ワルプルギス「アハハハハハハハ」ドドド

ほむら『杏子のところに行ったわ! 計画通りに』

杏子『分かってるさ!』

ワルプルギス「アハハハハハハハハハ」

杏子「くらいな!」ブンッ

ワルプルギス「アハハハハハハハハハハ」

ほむら「(ここで爆薬が起動する)」

ワルプルギス「アハハハ……アハハハハハハ」ドンッ

杏子「あいつの言った通りだ……。すげえな。もう一発!!」ザシュッ

ワルプルギス「アハハハハハハハハ」ドドドドド

ほむら『マミさん! 今度はそっちに行きます!』

マミ『……』

ほむら『マミさん?』

マミ『……ごめんなさい』

ほむら『マミさんっ!?』

マミ『もう……無理なの』

ほむら『マミさん! 言ったじゃないですか! 魔法少女の現実は辛いけど、ワルプルギスの夜を倒すまでは耐えてみせるって!!』

マミ『あの時は大丈夫だと思ってた……。だけど、いざ魔女を眼の前にすると、身体が……。震えが止まらないのよ。
   だって、あの魔女は、もともとわたしたちと同じ、魔法少女なんだもの! ……わたしにもう魔女は殺せない』

ほむら『マミさん! マミさん!!』

マミ『暁美さん、ごめんなさい……。せっかくお友達になれたのに』

ほむら『マミさん!? 聞こえますか!? マミさん!!』

ほむら「……そんな……!!」

ワルプルギス「アハハハハハ!!!!」

ほむら「くっ……こっちに……」

さやか「くらええええええ!!!!」

ほむら「っ!?」

ワルプルギス「アハハハハハハハハハ」

ほむら「美樹さやかっ! あなた、その姿は……!」

さやか「転校生、ごめん。でも、恭介のいる病院や、あたしたちの住んでいる街が、このままだったら壊されちゃう。それを黙って見ていることなんて出来ない!!」

ほむら「……なんてことを……」

ワルプルギス「アハハハハハハハハ!!!!!」ドゴォ

さやか「ううっ!?」

ほむら「さやかっ!!!!」

さやか「ぐはあっ!!」ズサッ

ワルプルギス「アハハハハハハハハ!!!!!!」

ほむら「まずいっ……このままじゃっ……!」

杏子「見てらんねーっつーの」ガッ

ほむら「杏子っ!? あなた、作戦ではあっちに……」

さやか「佐倉……杏子……」

杏子「すまねーな、ほむら。でも、魔法少女になったばっかのボンクラ、死なせたくはねーんだよ」グググッ

ほむら「杏子……」

杏子「なんだかあたしに似て、世話の焼けるっ……うおっ!?」

ほむら「杏子!!」

ワルプルギス「アハハハハハハハハ!!!!」

杏子「うぐっ!!」

さやか「うわあああああっ!!!!!」

ほむら「杏子……さやか……」ガクガク

ワルプルギス「アハハハハハハハハハ!!!!!!」

杏子「」パリンッ

さやか「」パリンッ

ほむら「どうして……どうしてなの……」ガクガク

QB「見てごらん、まどか」

ほむら「QBっ!?」

QB「やはり彼女たちが束になっても、ワルプルギスの夜を倒すことは出来なかった。マミも、杏子も、さやかも、もう死んでしまった」

まどか「……」

ほむら「まどか! そいつの言葉に耳を貸しちゃダメ!!!」

ワルプルギス「アハハハハハハ!!!!!」ドゴォ

ほむら「うぐっ……!!」

QB「でも、この状況を打開出来る方法がひとつだけある。鹿目まどか、君には、世界を変える力が、その手にある」

まどか「……本当だね」

QB「君ならばこんな終末も、全て覆すほどの魔法少女になるだろう」

まどか「……」

QB「だから僕と契約して、魔法少女になってよ」

ほむら「ダメええええええええええええええええええええっ!!!!!!」

まどか「ほむらちゃん……ごめん」

パアアアアア

ほむら「(どうして……?)」

ほむら「(何もかも上手くいっていたはずだった! 何がいけなかったの?)」

ほむら「(杏子と美樹さやかを知り合わせたこと? 巴マミにソウルジェムの秘密を打ち明けたこと?)」

ほむら「(いや……多分……)」

ほむら「(もともと叶いもしない夢を、見てしまったことだろう)」

ほむら「(……)」

カシャ

~~~
~~

マミ「自分より強い相手は邪魔者ってわけ? いじめられっ子の発想ね」

ほむら「……あなたとは戦いたくないのだけど」

マミ「なら、二度と会うことのないよう努力して。話し合いで事が済むのは、きっと今夜が最後だから」

ほむら「……」

ほむら「もう、誰にも頼らない」

本編に続く…… (おわり)

鬱エンドでごめんなさい。でも続く本編がトゥルーエンドだから許してけろ

ありがとうございました。

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