あかり「ずっとずっと一緒にいられたらいいよね」(258)

あかり「それじゃあちなつちゃん、あかり行って来るね!」

一日の始まり。
ばたばたと忙しそうに家中を駆け回る足音を聞きながら目覚めた私は、
眠い目をこすりながら「いってらっしゃーい」と今まさに出て行こうとした
あかりちゃんに声をかけた。

あかり「あ……えへへ、行ってきます!」

私の声に気付いたあかりちゃんは、嬉しそうに笑ったあともう一度そう言って
駆け出していった。

支援

終わるな


あまりにも突然だが、現在私、吉川ちなつと\アッカリーン/こと赤座あかりちゃんは同棲中である。
同棲中――なんていったらおかしな誤解を招きそうな気もするけれど。

中学生のときに出会ってそのまま、一緒の高校に進み、大学生になったと同時に
私たちは一緒に暮らし始めた。

他に好きな人がいたこともある。
けれど今は、あかりちゃんのことが誰よりも大切だ。
こんなこと言ったらあかりちゃんはどんな顔をするだろうか。はっきりと気持ちを
伝えないままここまできてしまったから、なにをいまさら、そんなふうに笑うだろうか。

支援する

ちなつ視点とは珍しい

いいじゃない

私は顔を洗って服を着替えると、大きな欠伸を一つ。

一緒に暮らし始めた理由の一つに、別々の大学に進学したことがある。
六年間、ずっと傍にいて、離れられるはずなんてなく、どちらの大学の距離からも
できるだけ近いこの部屋を選んだ。よくある学生寮みたいなものではないから、
それなりに充実している。

『ちなつちゃんへ
 今日はあんまり時間がなかったから、目玉焼きとパンで食べといてね』

テーブルの上に、目玉焼きの乗ったお皿とともに置いてあった走り書き。
私は「はーい」と誰もいないのに小さく返事をすると、まだ眠い目を瞬かせながら
コーヒーを淹れに台所に立った。

浩之ちゃん!

しえんぬ

>>7
一人称の地の文の作品たとわりとあるぞ

私は今、デザインを学べる大学に通っている。
そこが今日からしばらく長期休暇に入ったので、しばらくはのんびりと過ごせそうだ。
あかりちゃんのところはまだだから、あかりちゃんをいじっての暇潰しはできないけれど。

ちなつ「はーあ……」

溜息、を吐いても仕方ないのはわかっているが、どうしても吐きたくなってしまうのが
乙女の心情というものだ。
とりあえずあかりちゃんの用意してくれた朝食を食べて、目を覚ますことにする。

食べ終わったらなにをしようか。
そんなことを考えながらテーブルに散らかった葉書きなんかに適当に目を通していると、
ふと目に留まったものがあった。

ごくん、と口の中のパンを飲み干すと、マジマジとその手紙を見詰めてしまった。
あまりにも懐かしい名前が、差出人のところにあったから。
宛て先のところには私とあかりちゃん、二人分の名前があるから向こうはきちんと
私たちのことを知っていたのだろう。

ちなつ「……」

封は既に切ってあった。
どうしてあかりちゃん、手紙が来てたこと知らせてくれなかったんだろう。
ぼんやりそう思いながらも、確かに昔相手の好きだった人からの手紙なんてあんまり
見せたくないよね、とも納得して。

ちなつ「……やめとこ」

私は中身を見ずに、それをそっともとあった場所に戻しておいた。

>>12
SSの話だぞ?

支援

>>15
ちなつ視点のSSは地の文の作品たとわりとあるぞって言いたかったんだろ

―――――
 ―――――

食器洗いも済ませてしまい、いよいよやることのなくなってしまった私は
(家事なんかもあかりちゃんがほとんどやってくれるのだ)外に出てみることにした。
そろそろ年末で、どこを見たってみんな忙しそうに歩いている。

ちなつ「……さむっ」

クリスマスにあかりちゃんからもらったマフラーをしっかり巻いて出たはずなのに、
震えそうなほど寒かった。
行く宛てもないままに、私は歩き出す。

早くあかりちゃん、帰って来ないかな。
まだ昼にもなっていないのにそんなことを考え始めた私につい苦笑を漏らして。

支援

この約半年間で、私は相当あかりちゃんといる生活に馴れてしまったようだった。
誰かと一緒にいるときは平気なのに、こうして一人になってみるとどうしても
あかりちゃんのことを思ってしまう。

重症かな、これは。
こうなってしまったのも、あかりちゃんがいつでも優しいからだ。

私もあかりちゃんになにかしてあげたいと思ってはいるものの、常に先を越されてしまう。
たまにエスパーかなにかなんじゃないかと疑ってしまうときがあるくらい。
それも一緒にいる時間が長くなったからこそなのかな、とも思ってみたりするけれど。

私ってきっと、とことん幸せなのだ。

ちなつ「……」

それでも。
たまに街で見かける、男女のカップルからいまだに目を逸らさずにはいられないけど。

ああ、暗くなっちゃだめよチーナ!
べつに同性がなによ!同棲が許されるんだから同性でよかったじゃない!

はっきりと、親にも友達だって言えるんだから――

ちなつ「……寒い」

寒さが時々、こんなふうに私の思考にいたずらする。
温かくなってしまえばきっと問題ない。
私は一旦頭の中を空っぽにすると、あかりちゃん行き着けの本屋さんに飛び込んだ。

支援支援

むっとするほどの暖房が効いた店内で、ほっと一息吐いた私はすぐに「あっ」と
心臓が止まりそうになってしまった。
思わず本棚に隠れてしまったのは、今朝見た手紙の件があるからだ。

ちなつ「……先輩たち」

かつての私の好きだった人。と、その幼馴染であっという間に結衣先輩を掻っ攫っていった
泥棒猫――なんて、言ったら聞こえが悪いし今はまったくといっていいほど恨んでもいないし
妬んでもいない、京子先輩。

むしろ今では京子先輩が結衣先輩と一緒にいてくれることに感謝すらしている。
それで私はあかりちゃんと一緒にいられるのだから。
少しの強がりも入っていないかと言われれば嘘にはなるけど。

支援

結衣先輩たちの大学もお休みなのか、それとも今の時間帯講義がないだけなのかは
わからないけれど、二人とも仲よさげになにかの雑誌をめくっていた。
遠目からでも、なんの雑誌なのかは見えた表紙でわかってしまった。

ちなつ「えっ……」

ウエディングドレス。
京子先輩が嬉しそうになにかを言って、結衣先輩が苦笑しつつも答えている。
それもとてつもなく楽しそうに。

結婚!?
とうとう結婚しちゃうんですか先輩方!

思わず飛び出してしまった私は、飛び出してから激しく後悔。
思い切り結衣先輩たちと目が合ってしまった。

京子「あれ……」

結衣「ちなつちゃん……?」

ちなつ「え、えーっと……」

驚いたように固まる二人に、私は乾いた笑いを漏らした。
一体、他にどんな反応をすればいいというのだろう。

支援

はい

支援

支援だよぉ

結衣先輩は持っていた雑誌をぱっと後ろに隠して、「久し振り……」と困ったように
声をかけてきた。
私は少しだけほっとして、「はあ」と頷く。

京子「こんなとこで会うなんて珍しいね!」

京子先輩はといえば、最初のショックは忘れたのか嬉しそうに私に駆け寄ってきて
抱きつこうとしてきた。
「ちょっと、こんなとこでやめてくださいよ!」と逃げることすら懐かしく感じてしまう。

結衣先輩たちとは、同じ「ごらく部」という珍しい部活で活動(というよりほぼ遊び)
していた。
高校も同じところに上がったけれど、さすがの京子先輩でも「ごらく部」は作れなかったらしく
部活がばらばらで、学年が一緒だった私とあかりちゃんはともかく、学年が違う結衣先輩たちとは
ほとんど接点がなくなってしまったのだった。

その頃にはもう、結衣先輩への恋心も割り切っていたから、よけいに話すことはなくなって
今では二人の幼馴染のあかりちゃん伝いに近況を知る程度の関係。

京子「ちなつちゃん、今日は大学ないの?」

ちなつ「あ、うちの学校、今日から長期休暇で」

結衣「そっか、私たちのとこも昨日から」

支援

手紙のことはなにも言ってこないということは、あれはそんなにたいした内容では
なかったのかもしれない。
ただ、結衣先輩と話していると何も悪いことはしていないのに少しだけ、罪悪感。

ちなつ「そうですか……」

京子「にしても、いきなりそこの本棚からちなつちゃんがすごい形相で飛び出してくるから
   すっごいびっくりしたよ。私を驚かせるなんてちなつちゃんも中々……」

うっ。
そんなつもりはなかったんですけど。

ちなつ「先輩たちがウエディング雑誌見てたからつい……」

今度は結衣先輩がげっという顔をした。
京子先輩が「あらー、見られてたかー」とどうでもよさそうに言って。

結衣「京子が見たいっていうからさ」

京子「結衣だって結構乗り気だったじゃん!」

結衣「で、でもどうせできないだろ」

照れ隠しなのか、結衣先輩が慌てたように言った言葉が私たちの空気を少しだけ
凍らせてしまった。
結衣先輩が後悔したように何か言おうとしたとき、けれど。

京子「私はしたい!結衣と結婚したい!」

結衣「は、はあ!?」

いいね

いきなりこんなところでなに言い出すんですか京子先輩は!
聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらいの真直ぐな言葉に、言われてる結衣先輩が
真っ赤にならないはずがない。

結衣「ちょ、お前……」

京子「結衣だってそうでしょ?」

結衣「……それはまあ、そうだけど」

京子「ちなつちゃんは?」

突然話を振られて、私は「はい?」と訊ね返してしまった。
京子先輩はにやっと笑って「あかり」と一言。

ちなつ「はいっ!?」

京子「ちなつちゃんもあかりと結婚したいって思わない?」

久し振りに会って何を言い出すんだこの人は。
あかりちゃんと結婚とか、そんな――
酸欠の金魚よろしく口をぱくぱくさせながら、それでも私はこくんと頷いた。

うぅ。

京子「ね?」

ちなつ「……はい」

京子「きっとあかりもそう思ってるし、結衣だってそう思ってるし、ならそれでいいじゃん」

支援

京子先輩が嬉しそうに笑って、言う。
今は同じ気持ちでいられるんだから。

結衣「……そうだな」

それでいっか。
結衣先輩も笑い返すと、隠していた雑誌を元あった場所に戻した。

京子先輩はいいな。そんなふうに考えられて。

私はそんなことを思って、こくりともう一度、大きく頷いた。
暗くなったって、しかたないのだ。
初めて結衣先輩と付き合う京子先輩ではなく、京子先輩みたいな人が恋人の結衣先輩が
羨ましくなった。

大作になりそうな予感


結衣「それじゃ、またね」

京子「あかりと仲良くしろよー」

本屋の前で先輩たちと別れ、私は寒い街をまた一人行き始めた。
ふと空を見上げる。
曇り空から、雪のような雨粒がちらほらと降ってきていた。

ちなつ「あちゃー、傘もってきてないや……」

鞄を探っても、もちろん折り畳み傘なんて入っているはずもない。
私はしかたなく近くのスーパーに走り寄った。
とにかく雨宿りだ。

こういうとき、あかりちゃんがいればな。
またぼんやり浮かんでくるのはあかりちゃんのことで。

結衣先輩たちのラブラブっぷりを見せ付けられたせいか、あかりちゃんに会いたくて
仕方がなくなっていた。

ちなつ「……そうだ、電話」

今日は何時に終わるか聞いていないけど、この時間ならなにも講義はないはずだ。
そう思って、ポケットから携帯を取り出したちょうどその時、着信。
てのひらの中で震える携帯のディスプレイに映し出された名前は、やっぱりエスパーあかりちゃんだった。

ちなつ「はい、もしもし!」

つい声が弾んでしまう。
雨は少しきつくなってきたけれど、この分じゃ通り雨かなにかだろう。

あかり『あ、ちなつちゃん?良かったぁ、出てくれた』

ちなつ「あかりちゃんからの電話だもん、出るに決まってるよ」

あかり『そ、そう……?』

あっ、しまった。
いつもならこんなこと言わないはずの私なのに、つい本音がぽろりと出てしまった。
少し恥ずかしくなってしまったが、けれどあかりちゃんが『そっかぁ』と嬉しそうに
笑っているからまあいっか、なんて。

あ、これは才能ないゴミ書き手だは

支援

しえん

支援だよぉ

ちょうど私も電話しようとしてたし、なんてことはさすがに言わないでおくけど。
あかりちゃんはひとしきり笑った後、唐突に『ごめんね』と言ってきた。

ちなつ「へ?」

あまりにも唐突すぎて、私はきょとんとそう返した。
あかりちゃんが言い難そうに『えっと……』と言葉を濁す。

あかり『……今日、帰るの遅くなっちゃうかも』

私がどうして、と訊ねる前に『大学のお友達にどうしてもって誘われちゃって、
少しだけ付き合わないといけなくて……』と言い訳するように言う。
私は「そっか……」と一言だけ。

あかり『ば、晩ごはんまでには帰るから!』

だから、待っててくれるかな。
不安そうな、あかりちゃんの声。

支援

つまんねーから見てる奴も「支援」しか書きこんでなくてワロンヌ

しえ

ちなつ「うん、待ってる」

だから私は頷いた。
あかりちゃんを不安にさせてどうするのよチーナ!

ちなつ「待ってるから、早く帰ってきてね」

あかり『……ちなつちゃん』

うん、もちろんだよ、とあかりちゃんが笑った。
『そろそろまた講義始まっちゃうから』とすぐにあかりちゃんの声が聞こえなくなったけど、
私の中にだって不安がないわけでもないけれど。

あかりちゃんがちゃんと頷いてくれたんだから大丈夫。
自分にそう言い聞かせ、私はぱっと背後を向いた。

何時からつまらないと思ってた?

つまらなかったらスレ閉じるわ
支援

期待しているからこそ黙って支援する
それがなぜ分からないのか・・・

ちなつって報われない役回りばっかだからな
頑張ってほしい

支援だよぉ

ちなつ「……よし!」

あかりちゃんの帰りが遅いなら、それすらチャンスに生かせばいい。
どうせなら、なにか作って待っていようか。
きっとあかりちゃんも喜んでくれるはずだ。

雨はまだ止まないけど、買物している間には止んでくれるはずだ。
私はそう意気込んで、普段はあかりちゃんに任せっきりのスーパーへと足を
踏み入れた。

いいねえ

―――――
 ―――――

ちなつ「……」

少し、買いすぎてしまったかもしれない。
数十分後。店をまわって色々買い集めた食材だけど、なにを作るかも決めていないのに
色々放り込んでしまったせいですごい荷物になってしまっていた。

ま、まあ足りなくなるよりはマシよ!
あぁけどあかりちゃんに叱られそうかも。
いやいや、でもそんなことでへこたれるんじゃないわチーナ!

家に帰り着いた私はとりあえずカップ麺での昼ごはんを済ませ、テーブルにどかんと
置いてある大量の食材と睨めっこ。

頑張れチーナ

ちなつ「……こんなことならちょっとくらいあかりちゃんに教えてもらっとくんだった」

料理ができないわけじゃ、決してないけど。
私が作れるものといえば卵焼きとかお味噌汁とかそんなものぐらいで。
あかりちゃんに随分と甘えてたんだなと今さらになって痛感する。

ちなつ「こ、こうなったら……!」

携帯を取り出し通話ボタンを押そうとして、慌てて自分を止めた。
あかりちゃんに作るはずがあかりちゃんに電話しようとしてどうすんのよ!
料理本なんかあかりちゃんが持ってるわけないし、私も持ってないし、あかりちゃん以外で
頼れるのは他に――

そう、Googleです

アドレス帳を遡りながら、必死になって頼りになりそうな名前を探す。
結衣先輩には申し訳なくて言えるわけもないし京子先輩も私と同じタイプだろうから
却下で……。

ちなつ「あっ……」

ハ行に辿り着いたときだった。
古谷向日葵という名前を発見する。

ちなつ「そうだ、向日葵ちゃんっ」

向日葵ちゃんきた

向日葵ちゃんなら、昔マフラーの編み方も丁寧に教えてくれたし今だってそれなりに
交流があるから教えてくれるはずだ。
というかそう思いたい。

向日葵ちゃんの携帯に電話をかけると、思いのほかすぐに繋がった。

向日葵『はい、もしもし』

ちなつ「向日葵ちゃん、久し振り!」

向日葵『あぁ、吉川さん?』

ちなつ「わたしわたし!」

ちゃんと繋がってくれたことに安堵しつつ、私は見えないことも知りつつ大仰に
頷いた。

向日葵『お久し振りですわね、どうかされたんですの?』

「うん!」と私は大袈裟に頷いたものの。
こういうとき、なんと言えばいいのだろう。いきなり晩ごはん作るの手伝って、なんて
いくら長い付き合いの向日葵ちゃんでも引くんじゃなかろうか。

ちなつ「えーっとね、向日葵ちゃん……」

向日葵『あっ、でもちょうど良かった』

ちなつ「え?」

向日葵『実は、ちょっと櫻子に持っていく分のおかずが余っちゃいまして……よければ
    吉川さん、もらってくださいません?』

支援

――――― ――

思いもよらない流れだったものの、向日葵ちゃんが家に来てくれることになり
ほっとした。
私がさっき教えた住所を辿ってきたというわりには、向日葵ちゃんの到着は
早かった。

鳴り響いたチャイムにドアを開けながら「早いね」と首を傾げると、向日葵ちゃんは
「櫻子のとこにこれ、届けてましたから……」と約束の「おかず」を渡してくれる。

ちなつ「あ、ありがとー。ていうか櫻子ちゃんの家、この近くだったんだ?」

向日葵「えぇ、私もさっき吉川さんに聞いたときびっくりしましたわ」

ちなつ「にしてもごめんね」

向日葵ちゃんが玄関口に立ったまま、きょとんと首を傾げた。
私はだって、と続ける。

ちなつ「二人の邪魔しちゃったかなって……」

中学生の頃からの友達である古谷向日葵ちゃんと、それからもう一人、大室櫻子ちゃんは
幼馴染の腐れ縁らしく、今も二人仲良く同じ大学に通っている。
ものの、中々進展がない二人でもある。

向日葵「なななななに言ってますの!?」

ちなつ「なにって、だから……」

向日葵「べつに、櫻子とはそんなんじゃ……!」

この歳になっても真っ赤になって反論する向日葵ちゃんを見て、思わず苦笑してしまう。
本当にいつまで経っても素直になれないらしい。
わざわざ一人暮らしをする(ことだけは高校生のとき人づてに聞いていた)櫻子ちゃんのところに
作ったおかずを持っていったりしているくせに。

しえーん

大学生のゆるゆりとは珍しい

ちなつ「そうなの?」

向日葵「そ、そうですわ……!」

勢い込んで頷く向日葵ちゃんに、櫻子ちゃんも大変だなあ、なんて思いながら
(でも大変なのは向日葵ちゃんも一緒か)「とりあえず、上がって」と向日葵ちゃんを
促した。

向日葵「え、いいんですの?」

ちなつ「あかりちゃんはまだ帰ってないし」

向日葵「そういえば赤座さんと一緒に暮らしてたんでしたっけ……」

頭が破裂しそう、少し離席します
日が暮れる頃には戻るごめん

保守
俺もちなあかの良SSを見ると心が破裂しそうです

支援

あかりちゃんNTRとか勘弁してくれよ?

最近地の文SS多いな
昨日のは完結してたの?

京結のやつなら落ちたぞ水曜にまた立てるとかいって

結衣「そんなに泣くなって…」京子「だって…だって!」
結衣「そんなに泣くなって…」京子「だって…だって!」 - SSまとめ速報
(http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1323783546/657)
657 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/16(金) 08:56:33.01 ID:UpJQqdfR0
私の身勝手さゆえに再びこのような形で打ち切るようになってすみません

来週水曜に書き溜めができ次第スレ立てします

保守

地の文のちなあかSSは良作も結構あるよな
ちなあか好きでよかったよかった

ちなあかは良いものだ……
支援

保守

もう暮れたんじゃない?

ほしゅ

根室の日没は15:43
http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/2011/hdni01114.html
那覇の日没は17:40
http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/2011/hdni48114.html

保守

>>88
これはもうSS速報に行かせるべき
何度落としてんだよ

あと5分か

いや、>>1が与那国島に住んでる可能性も・・・ゴクリ

いつから>>1が日本にいると錯覚していた?

保守ありがとう
>>78から続ける

きたか……!

向日葵ちゃんが靴を丁寧に脱ぎ揃えながら思い出したように言った。
私は「うん、そうなの」が出来るだけ自慢げに聞こえないよう注意しながら
頷く。

なぜか中学の友達にこのことを話すとき、つい鼻が高くなってしまうのだ。

突き当たりのドアを開けて、向日葵ちゃんをリビングに招く。
向日葵ちゃんは「いい部屋ですわね……」と意外そうに辺りを見回した。
「うん、まあね」と頷きお茶でも淹れようと思って、けれど私は固まってしまった。

ちなつ「あ……」

しまった、さっき買物にいったもの全部置きっ放し……!

>>106
>しまった、さっき買物にいったもの全部置きっ放し……!

しまった、さっき買物にいったときのもの全部置きっ放し……!

向日葵ちゃんが来ると知って大慌てで玄関や部屋を整理してたのはいいけど、
こっちのことはいつもあかりちゃんが綺麗にしてくれてるからいいやとなにも
手を加えていなかったのだった。

向日葵「……すごい食材ですわね」

向日葵ちゃんも気付いてしまったのか、驚いたのと呆れたのを足して二で割ったような
顔をして言った。

ちなつ「うっ……今日あかりちゃんが帰ってくるの遅くて、晩ごはん作って待ってようと
    思ったんだけどなに作ればいいのかもわかんなくて……」

支援

始まってたか
支援

そういえば、私が向日葵ちゃんに電話をしたのはこうして来てもらうためではなくて
教えてもらうためなのだった。
向日葵ちゃんが来てくれると言ってくれたから、すっかり忘れてしまっていた。

ああ、とりあえず向日葵ちゃんにお願いして――

向日葵「もしかして、吉川さん、私に料理のこと聞きたくて……?」

けれど、さすが察しのいい向日葵ちゃんだ。
こんな子が私の友達でよかった。

ちなつ「そう!そうそう、そうなの!」

飛びつかんばかりの勢いで頷くと、向日葵ちゃんはそんな私にたじろぎながらも
「しかたないですわね」と頼もしい顔で言ってくれた。

向日葵「とりあえず、まずはなにを作るのか決めなきゃいけませんわね」

ちなつ「あ、そっか」

向日葵「せっかくだから赤座さんの好きなものを作ってみたら?」

ちなつ「それいいかも!」

向日葵「それじゃあ早速……」

ちなつ「向日葵ちゃんも櫻子ちゃんに好きなもの作ってあげればいいのに」

向日葵「始めますわよ!」

ちなつ「はーい」

―――――
 ―――――

ちなつ「……よし」

向日葵「……とりあえず、できましたわね」

きっかり数時間後。
いつのまにかもう、外は暗くなりかけてきた。向日葵ちゃんがほっとしたように息を吐いて
私を見た。私も「うん!」と大きく頷いた。

ほとんど向日葵ちゃんに手伝ってもらったようなものだけど、あとなぜかあかりちゃんが
綺麗に整えていた台所はすごくぐしゃぐしゃになってるけど、とりあえず、
ほぼ私の手作りだ。

向日葵「……死ぬかと思いましたわ」

ちなつ「なにか言った?」

向日葵「な、なんでもないですわ!」

>>114
>いつのまにかもう、外は暗くなりかけてきた。

いつのまにかもう、外は暗くなりかけてきていた。

ミス連発申し訳ないです

支援



向日葵はやっぱかわいいな~

なんだ
ヒカ碁スレじゃないのか

慌てる向日葵ちゃんを他所に、私は嬉しくてつい向日葵ちゃんにぎゅっと
抱きついてしまった。

向日葵「よ、吉川さん?」

ちなつ「向日葵ちゃん、ありがと!」

向日葵「え、えぇ……」

私一人じゃ到底あかりちゃんが帰ってくるまでには間に合わなかったし、
そもそもなにも作れてさえいなかった気がする。
ただ、こちらもまた作りすぎてしまったから向日葵ちゃんのくれたおかずをどう処理するかが
問題なわけで……。

向日葵「吉川さん、苦しい……」

ちなつ「へ?あっ、ごめんごめん!」

このくらいのミスはスルーしていいんじゃね?

>>1自身が気になっちゃうならしゃあないけど

苦しそうな向日葵ちゃんの声に慌てて身体を離すと、向日葵ちゃんはけれど
「吉川さんが喜んでくれてよかったですわ」と笑ってくれた。

ちなつ「えへへ、ほんとにありがとねっ」

まあ私が喜ぶんじゃなくって、あかりちゃんを喜ばせたいのが目的だったわけ
だけど。
きっとあかりちゃんも喜んでくれるはずだ。

向日葵「……」

ちなつ「向日葵ちゃん?」

向日葵「あ、いえ……吉川さん、随分と雰囲気が変わったなって」

>>122
途中レスすまん
言葉の取り方とかが変わっちゃうかもと思うと気になるんだ
たぶんまた、たまに訂正はいるかもだけど許して欲しい

「そう?」と首を傾げると、向日葵ちゃんは「えぇ、すごく」とはっきり頷いた。
確かに、あかりちゃんと一緒に暮らし始めて変わったねとはよく言われるように
なったけれど、正直自分ではよくわからない。

ちなつ「どんなふうに変わったのかなあ」

向日葵「なんでしょうね……丸くなったっていうか」

ちなつ「えっ、それって前の私がきつかったってことなんじゃ!」

向日葵「そ、そういうわけじゃなくって!」

――赤座さん。
向日葵ちゃんは突然、ぽんっと手を叩いて言った。

ちなつ「え?」

向日葵「すごく、赤座さんに似てるというか、赤座さんみたいなやわらかい雰囲気になったなって!」

支援

支援

やっと上手い言葉が見付かったというように向日葵ちゃんは嬉しそうにそう言って。
私があかりちゃんに似てる……。
一緒に過ごしてるうちに、似たもの同士になってくるという話はよく聞いたことが
あるけれど。

ちなつ「そう、なのかな……」

向日葵「えぇ、すごく!」

ちなつ「……そっか」

だとしたら、私とあかりちゃんは、すごく近くなったってことなのだろうか。
もしそうなのだとしたら、私はとても。

ちなつ「……向日葵ちゃん!」

向日葵「ちょ、ちょっと吉川さん?」

ちなつ「私、嬉しくて泣いちゃうかも……」

なんだ秒速だと思ったら違うのか

誰かに触れていたくてちょうど手近にあった向日葵ちゃんをまたぎゅっとして、
私は言った。
ああ、私ってほんとに、すごく幸せなのかも……。

向日葵「……少し、赤座さんと吉川さんが羨ましいですわ」

向日葵ちゃんは、私の頭を撫でてくれながらぽつりとそう言った。
顔を上げて、「なんで?」と訊ねる。

向日葵「だって、二人とも、本当に仲がいいから」

だから少し。
向日葵ちゃんは小さく苦笑して。
私はもう、と溜息を吐くと、向日葵ちゃんを離して「大丈夫だよ!」と。

仲がいいのは向日葵ちゃんたちも一緒なんだから。
むしろ、きっと二人の方が一緒にいる時間も長いのだ。私たちを羨ましがられちゃ
困ってしまう。

ちなちゅ可愛い

かわゆ

そろそろ保守感覚が短くなるお時間

ちなつ「向日葵ちゃんと櫻子ちゃん、すっごい似てるよ!」

向日葵「は、はい!?」

ちなつ「そうやっていつまで経っても素直じゃないところとか!」

かああっと向日葵ちゃんの顔が見事なまでに真っ赤に染まる。
この顔、櫻子ちゃんにも見せてあげたい。
でもきっと、櫻子ちゃんはもっと向日葵ちゃんの色々な顔を知っていて。

ちなつ「だから、大丈夫!」

向日葵「吉川さん……」

ちなつ「一歩くらい進んだって二人はなんにも変わらないだろうし」

頑張れ。
私が言うのもなんだけどね。

支援

向日葵ちゃんは真っ赤な顔のままきょとんとして。
それからふいに、「えぇ」と笑った。
諦めたようにも、逆になにかを決心したようにも見えた。

向日葵「……ありがとう、吉川さん」

ちなつ「お互い様だよ」

それに、本当のことを言えば私はなにもお礼を言われるようなことはしていない。
少しでも、向日葵ちゃんの背中を押せたのなら嬉しいけれど。

向日葵「……頑張ってみますわ」

ちなつ「うん!それでまた四人で遊ぼうね!」

向日葵「えぇ!」

間違ってたらスマソ
この>>1ってあかり「君と好きな人が百年続きますように」の>>1か?



特定廚ですまんこ

支援

特定厨は話が完結してから質問しろ

追いついた

◆←これでわかる

――――― ――

それじゃあそろそろ帰りますわ、と向日葵ちゃんが腰を上げたのはもうすぐで
六時を回る頃だった。
外はすっかり暗い。もしよかったらあかりちゃんが帰ってくるまでいたら、と
言っていたものの向日葵ちゃんはきっと気を遣ってくれたのだろう。

向日葵「久し振りに吉川さんと会えて楽しかったですわ」

ちなつ「うん、私も!手伝ってくれてほんっとうにありがとね!」

向日葵「どういたしまして」

ちなつ「マフラーのときも思ってたけど、向日葵ちゃん教えるの上手だからきっと
    いい先生になれるよ!」

イイコダナー

向日葵ちゃんは今、教育学部で小学校の先生を目指して勉強中らしい。
さっき話をするまで知らなかったけど、向日葵ちゃんならきっと大丈夫だ。
櫻子ちゃんも同じく目指しているらしいけど、櫻子ちゃんはどちらかといえば
保育士さんのほうが向いてるかなと内心で思っていたことは秘密だ。

向日葵「吉川さんにそう言ってもらえると頼もしいですわ」

ちなつ「私は口だけだけどね」

向日葵ちゃんは笑うと、ぺこっと頭を下げて私に背を向けた。
その背中を見ながら私はほかほかとした気分でドアを閉める。
ふと見えた空は、驚くくらいに黒かった。

すぐ戻るが飯ってきます

支援

保守

捕手のために書いてるんだぞ>>154 >>156早すぎだよ


ちなつ「……」

リビングに戻った私は、ごろんとソファーに倒れこんだ。
普段やりなれないことをするとどうしても疲れてしまうものらしい。
汚れた台所は向日葵ちゃんにも手伝ってもらってなんとか綺麗になったけど、
そろそろお腹も減ってきた。

あかりちゃん、まだかな。

帰ってくる気配は、中々ない。
早く帰ってきてほしいのに。忙しいのかもしれないけど、晩ごはんまでには
帰ると言ってくれていたのに。

支援

>>157
臭え黙ってろ


新参は関係ないスレでも谷出したがって目障りだわ

>>158
>早く帰ってきてほしいのに。

早く帰ってきてほしい。

ちなつ「……電話は」

ポケットの携帯を探る。
開けてみても、なんの連絡も入っていなかった。
メールも、着信も、なにもない。

ちなつ「うー……」

暗いと、自然と不安になってくるのはどうしてなのだろう。
さっきまでのほかほかな気分が、嘘みたいに萎んでいってしまう。
あかりちゃんはいつも私より早く帰ってくることが多かったから、よけいにだ。

私はぽふっとソファーに顔を伏せた。






――『せめてちなつとあかりちゃんが幸せになりますように』
                       



支援

あかりはデート中

ふいに、この部屋の元の主だった人のことを思い出す。
私のお姉ちゃんである、吉川ともこ。
お姉ちゃんは大学を卒業してからしばらくは、この部屋に住んでいたのだ。
私たちがこんないい条件の部屋を簡単に借りることができたのもお姉ちゃんの伝が
あったから。

お姉ちゃんの集めていた家具も、少しだけだけど置いていってくれた。
今、お姉ちゃんは別の人の家で暮らしているから。

お嫁になんていきたくないわ。

お姉ちゃんは結婚前、よくそんなふうに私に漏らしていた。
お姉ちゃんには他に好きな人がいることを知っていた私は、「うん」と、そう言って
頷いてあげることしかできなかった。

ともこさんは異性と結婚してしまったのか

えー

今でもきっと、お姉ちゃんはその人のことが好きで。
その人もきっと、お姉ちゃんのことを想い続けている。

あかりちゃんが時々、「お姉ちゃん、早く結婚しろってお母さんがうるさいんだってまたメールしてきて」
と笑っているから。

ちなつ「……」

私たちは、どうなんだろう。
今朝見た、異性同士のカップル。私たち同性は、結婚できない。
それはきっと、私たちと同じ立場である結衣先輩や京子先輩だってわかっていることで。

今は、同じ気持ちでいられるんだから。

京子先輩の、魔法の言葉を心の中で反芻してみるけれど。
今の私には効果なんてあるはずなかった。

支援

保守

大学には、男の人だってたくさんいる。
あかりちゃんは可愛いし、もしかしたら狙われちゃったりしているのかもしれない。

そう思うと、いても立ってもいられなくなるけれど。
すぐにでもあかりちゃんを探しに行きたいけれど。
今は幸せでも、未来はわからない。

結局お姉ちゃんたちのように、離れ離れになってしまうかもしれない。
ならなくたって、笑えなくなってしまうかもしれない。

――それならもういっそ。

たまっていた不安が、突然あふれ出したみたいだった。
あかりちゃんが帰ってこないことも含めて、辛くて仕方が無い。

ちなつ「……」

やだな、私。
こんなに暗くなるはずなんて、なかったのに。
きっと寒いからだ、電気もストーブもつけないで、考え込むから。
早く、電気とストーブつけないと――

けれど、疲れてしまった身体は、重い。
それ以上の思考を避けるみたいに、次第に頭まで暗くなっていった。

支援支援

あかりちゃんはやく

鬱はやめてくれ・・・

チーナのためにも早く帰ってきてあげてー

―――――
 ―――――

ガチャガチャ、と鍵のかかったドアを開けようとする音で私は暗闇の中、目を
開けた。
ずっとうとうととして、いつのまにか眠ってしまっていたのだ。

暗い部屋に馴れた目が、壁に掛かった時計を映し出す。
もうすぐで11時をまわるところだった。

ちなつ「……あかりちゃん?」

私は寝惚けた声のまま、呟いて立ち上がった。
玄関の鍵をカチャリと開けると、勢い良くドアが開いて。

その勢いのまま、あかりちゃんが倒れこんできた。

ちなつ「ちょ、ちょっと!?」

慌てて受け止める。
「ちなつちゃん……」私の名前を呼ぶあかりちゃんの声は、濡れていた。

あかり「ごめんね、遅くなっちゃって……」

ちなつ「あかりちゃん、それより……」

どうして泣いてるのか、わからなかった。
泣きたかったのは私のほうなのに、すっかり拍子抜けだ。
それになんだか、お酒の匂いがした。

ちなつ「……お酒、飲んだの?」

食われた展開はやめろ…

とりあえず最後まで見よう

やーだーあー

こくんとあかりちゃんは頷いて。
そのまま、眠ってしまったみたいに全体重を私に預けてきた。
そのせいで私はバランスを失って、あかりちゃんを抱えたまま玄関に尻餅を
ついてしまった。

ちなつ「いたた……」

あかり「ごめんね……」

ちなつ「え?」

眠ったのかと思っていたあかりちゃんは、小さな声でそう言った。
なにが「ごめんね」なのかわからずに、私はただ、あかりちゃんの次の言葉を
待つことしかできなくて。





「……あかりなんかで、ごめんね」



どういう意味?と訊ねることが精一杯だった。
あかりちゃんはごめんね、そう言ったきり、ただぎゅっと、なにかを待つように
私に抱きついてきたままだけど。

ちなつ「……あかりちゃん」

力をなくしてだらんとしたあかりちゃんの手から、なにかが落ちた。
レシートだ。
暗闇の中、なんの文字も見えなかったけど。きっと大学のサークルかなにかで
飲み会でもあったのかもしれない。それにあかりちゃんも誘われて――

ちなつ「ね、ねえ!あかりちゃん、どういう意味なの!?」

嫌な想像が頭を駆け巡った。
ぐったりしたようなあかりちゃんを見て、よけいに私の心が乱される。

支援

あかり「……頭痛い」

けれどあかりちゃんが言ったのはその一言だった。
きっと、あかりちゃんは相当お酒に弱いのだろう。
ぐずぐずと鼻をすすりながら、小さく呻く。

私は慌ててあかりちゃんの身体を揺らすのをやめると、「水、飲む?」と
立ち上がろうとした。

あかり「……いらない」

けれどあかりちゃんは、そう言って私の身体を離さないというようにぎゅっと
腕をまわしてきた。

ちなつ「あかりちゃん……?」

つい、困惑してしまう。
こんなあかりちゃんは始めてだった。

お酒パワーというやつだろうか。

とりあえず、身動きがとれなくなった私はただ、あかりちゃんの頭に手を置いて
安心させるように撫でてあげることしかできない。

あかり「……あかり」

ちなつ「え?」

あかり「あかり、やっぱりちなつちゃんじゃなきゃだめみたい」

支援

突然の言葉に、私の心臓はどきんとはねた。
今さら緊張するなんてバカみたいだけど、つい肩に力が入ってしまう。

玄関に座り込んだ私にしがみついたまま、あかりちゃんは私を見上げてきた。

ちなつ「あかりちゃん……」

あかり「……今日、男の人もたくさんいたけど」

触られたり、変なことされて。
だんだん小さくなる声だけど、私の耳にははっきりと聞こえてしまった。
今度は嫌な感じに心臓が萎む。思わず歯軋りすらしたくなる話だ。

ちなつ「それで、あかりちゃんは」

あかり「……全然、嬉しくなかったしなにも感じなかったよ」

やめろ…

じっと、私を見詰めたままあかりちゃんが言う。
だからきっと、その言葉に嘘なんてないのだろう。

あかり「……それでね」

ふと、目を逸らされた。
あかりちゃんの目からまた、じわっと涙が溢れ出て私の胸元を濡らす。

あかり「……それで、一人の人に、これからホテルに行かないかって誘われた」

ちなつ「……う、うん」

つい、身体を強張らせてしまう。
あかりちゃんのことを、信じていないわけじゃないのに。

あかん

おい男よ、屋上へ行こうぜ
久しぶりにうんたらかんたら

心臓が苦しいんだが…

いくらあかりちゃんだって、この歳になれば「ホテルに行かないか」がなにを
意味するのか、知らないはずは無い。

あかり「……あかり、ちなつちゃんが待ってるから行けないって、断ったの」

ちなつ「うん……」

ゆっくり、あかりちゃんの腕の力が強くなっていく。
なにかをこらえるみたいに。

あかり「そしたら、女の子同士でやっちゃうのかって、笑われて」

ちなつ「……あかりちゃん」

オイコラ

あかり「……本当に、みんな笑うの。でも、きっとあかりが本気で頷いちゃったら、
    みんな気持ち悪いって顔しちゃうんだよね……」

私の大学でも、きっとあかりちゃんの大学でも私たちのことはルームシェアをしている
友達同士と、そんなふうにとられている。
きっとあかりちゃんを誘った男の人は振られた照れ隠しとか、そんなつもりで
そんなことを言って笑ったのかも知れないけど。

私たちにとっては、ひどく傷付いてしまうこと。

ちなつ「あかりちゃん、私……」

あかり「それでも、あかり……あかりね、やっぱりちなつちゃんじゃなきゃだめなの

こんなに心が苦しくなったのは久しぶりだ

逸らした顔を、小さな子供のようにぐっと私の胸に押し付けて、いやいやするように
首を振ってあかりちゃんは言った。

あかり「あかり、ちなつちゃんのことしか見えないよ」

ちなつちゃんじゃなきゃいや。
ちなつちゃんしかいないの。

お酒のせいか、だんだん回らなくなってきたような舌で、それでもあかりちゃんは
言葉を続ける。

あかり「ちなつちゃんが好きなの……」

読んでないけど男出るのかよ

ゆるゆりの世界に男がでるだけで違和感

ゆるゆりに男は不要
しかし、あかりと男だけが登場したSSがあってだな

心が痛い・・・

と、とりあえず最悪の事態は免れたか
胃がいてぇ

ぼけっと続きを待っていたが
保守保守

はっきりと、あかりちゃんの気持ちを言葉で聞いたのは初めてだった。
しかも、何度も何度も、あかりちゃんは好きだと繰り返す。

ちなつ「……」

今は、同じ気持ちでいられるんだから。
さっきと同じようにもう一度、心の中で魔法の言葉を反芻する。
不思議と、今までと違って心の中に染み渡っていくみたいだった。

あかりちゃんの好きを聞きながら、私もやっぱり、あかりちゃんじゃなきゃ
だめなのだと思った。

いくら私たちが同性で、認められるような関係じゃなかったのだとしても。
私たちは今、こうして一緒にいて、お互いのことを想い合っていて、幸せだと
いうのなら。

ちなつ「……あかりちゃん、私もあかりちゃんのこと、好きだよ」

あかりちゃんが、驚いたように顔を上げた。
私はそっと、笑いかける。

同じ気持ちなのなら、一緒にいられるこの時間を、泣いて過ごしたくなんかない。
せっかく二人で同じ時間にいられるのだから。
あかりちゃんの温もりが、冷えた身体も心も温めていく。

時間がないわけじゃない。
だから悲しい結末なんて、私はまだ、見たくない。

――こんな私たちの不安なんて、涙と一緒に、飛んでいってしまえ。

いいぞいいぞ

支援

男はいらないものだと分かりました

支援


笑って。

そんな声が聞こえたような気がして、私は目を覚ました。
いつのまにか辺りは薄っすら明るくなっていて。
慌てて身体を起こそうとして、力が入らないことに気付いた。あかりちゃんが私の上に
乗っかったまま眠っている。

ちなつ「……はあ」

とりあえず、安堵の溜息。
あかりちゃんはすっかり落ち着いたみたいにすやすや寝息をたてていたから。
夢の中の「笑って」という声は、私からあかりちゃんに向けての言葉だったのだろうか。

これはこれまでの中で一番キツイわ・・・・・・・・
あかり・・・・・・・

きたきた
よかった

このままずっと、こうしていた気分だったけど。
さすがに私たちのどちらも風邪を引いてしまう。
なんとかあかりちゃんを起こさないように、身体をずらして抜け出す。

ようやく自由になった身体で、今度はあかりちゃんを布団まで運ぼうとして無理だと
いうことに気付く。
さすがに寝起きで、今まであかりちゃんの体重を預かっていた身としてはとてもじゃないが
力が出ない。

ちなつ「……あかりちゃん、起きて」

せっかく起こさないようにと頑張ったものの、私はしかたなくあかりちゃんの
身体をゆさゆさと揺すった。

あかり「……うん」

小さな声がして、あかりちゃんが寝返りを打とうとして。
そこが冷たい廊下だと気付いたのだろう、身体をびくっと震わせてはっとしたように
目覚めた。

あかり「……あれ?」

きょとんとしたあかりちゃんの表情が暗闇の中でよく映える。
それから私を見つけると、「ちなつちゃん……」と小さく言って身体を起こした。

あかり「うっ、頭が……」

ちなつ「いったいどのくらい飲んだのよ」

あかり「えっと……」

あかりちゃんは答えようとして、なにか違うことを思い出したのだろう。
突然顔を真っ赤にして気まずそうに目を伏せた。

ちなつ「あかりちゃん?」

あかり「え、えっと……あかり、さっき気が動転してて、それで」

言い訳するように、ぼそぼそとあかりちゃんが言って。
私は小さく笑うと、あかりちゃんの手を引いて立ち上がらせた。

ちなつ「ここ寒いし、とりあえず部屋戻ろう」

あかり「……うん」

―――――
 ―――――

あかり「……えへへ、ちょっと落ち着いた」

もう、深夜三時をまわっていた。
あと少しで四時近い。
それでもへんに眠ってしまったせいか、私の頭は随分と冴えてしまっていた。

ちなつ「こんな時間に食べちゃって、太っちゃうかもね」

あかり「ほんとだねぇ」

すっかり冷めてしまった晩ごはん。
けれど、あかりちゃんは全部「おいしいよ」と言って食べてくれた。
あかりちゃんが嬉しそうに笑うから、ほっとした。

まだ少し、さっきの泣き顔が頭から離れてはくれないから。

――だけど。

ちなつ「あかりちゃん、こっち来て」

あかり「うん?」

眠そうに目許をこすっていたあかりちゃんが、私の言葉にきょとんとしながらも
近くまでやってきた。
そんなあかりちゃんを、私は思い切って抱き寄せた。

あかり「ち、ちなつちゃん……!?」

だけど、あかりちゃんは確かにここにいて、私はあかりちゃんが好きで、
あかりちゃんも私のことを好きでいてくれる。
それでいい。

あかり「……どうしたの?」

ちなつ「あかりちゃんが好きだから」

あかり「……えへへ」

あかりちゃんは照れたように笑うけど。
お酒の勢いがなくなったあかりちゃんは、「あかりも好きだよ」とは
答えてくれないらしい。

私のほうがお酒に酔ったみたいだ。

ちなつ「さっきね、あかりちゃんが好きっていっぱい言ってくれたときさ」

あかり「う、うぅ……!思い出すと恥ずかしいよぉ……」

ちなつ「……でも、すごく嬉しかったよ」

支援

私怨

紫炎

今まで、お互いなんとなくでしか伝えてこなかった気持ちを。
あかりちゃんは、はっきりと言葉にしてくれた。

私もあかりちゃんも、好きだと言葉にできなかったのはきっと、伝えてしまったら
もう後戻りができないことを知っていたからだ。
知らない間の逃げ道。
いつでも、友達に戻れるように。

けれど好きだとはっきり言葉にしてしまったから。
私たちはもう、後戻りなんてできないししたくない。

きっと溶け出した不安が、私を酔わせているのだ。

あかり「……そっか」

ちなつ「……私、離したくないよ」

あかりちゃんを、離したくない。
あかりちゃんと、離れたくない。

正気に戻ったあかりちゃんを抱き締めながら、私は思う。
あかりちゃんとなら、何があったって、一緒にいられる。
一緒にいたいと、本当にそう思う。

今は、同じ気持ちでいられるんだから。

あかり「……ずっとずっと、一緒にいられたらいいよね」

あかりちゃんが、ぽつりと言った。
私は「いられるよ」
そう答えて。

あかり「ほんとに?」

ちなつ「ほんとに」

それでもまだ、不安そうな顔をするあかりちゃんに。
私は目を閉じると、そっと、唇を重ねた。
触れるだけのキス。

あかりちゃんはかあっと顔を赤くして、「……久し振りだね」
そう言って笑った。

きっと、私たちが本当の意味で恋人になった瞬間。
もう後戻りはできない。
けれど、あかりちゃんとなら。ずっとずっと一緒にいられる。

今はそう、信じていたかった。

・・・・・・・・・・

ちなあか支援


あまりにも突然だが、現在私、吉川ちなつと\アッカリーン/こと赤座あかりちゃんは同棲中である。

中学生のときに出会ってそのまま、一緒の高校に進み、大学生になったと同時に
私たちは一緒に暮らし始めた。

他に好きな人がいたこともある。
けれど今は、あかりちゃんのことが誰よりも大切だ。
きっとそれが周囲の人に嫌な気分を与えることになったとしても、私の気持ちは
変わらないし変えるつもりもない。あかりちゃんも、きっと同じだと笑ってくれるだろう。

―――――
 ―――――
あかり「それじゃあちなつちゃん、あかり行って来るね!」

一日の始まり。
ばたばたと忙しそうに家中を駆け回る足音を聞きながら目覚めた私は、
眠い目をこすりながら「いってらっしゃーい」と今まさに出て行こうとした
あかりちゃんに声をかけた。

あかり「あ……えへへ」

私の声に気付いたあかりちゃんは、振り向くとそっと目を閉じた。
いってらっしゃいの短いキス。

あかり「行ってきます!」

あかりちゃんは、嬉しそうに笑ったあともう一度そう言って駆け出していった。

終わり

乙!

乙! よかった!

ここ最近ずっと暗い話を書いていたので明るいのを書こうとした、つもりだった
最後まで見てくださった方ありがとうございました
それから少し宣伝というか、これの続きのような同棲設定のものをSS速報で
書くかもしれない(未定)

それではまた

王道だな
乙乙

乙!

途中、すげえツライ気持ちになったが
晴れ晴れとした気分で読み終えた

かなり好きな一作だわ

>>246
書き始めたら教えて

あかちな・結衣京子・ひまさく

こうなれば皆幸せ

>>249
あとはあやとせか

乙!

>>1さんの書くちなあか好きだよ
また書いてくれるということなので期待してるよ

素晴らしいちなあかに乙でした

お疲れ様
地の文読みやすかった

ありがとう!

面白かった!乙

おつ!

すばらしいな乙!

乙かれー

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