妹「しっぽが生えてきた」 (56)

妹「ねえどうしよ」フリフリ

男「」

妹「朝起きたらこうなってたんだ
何でだろお医者さんいった方がいいかな」

男「え、あ、そう」

妹「どうしようおにい」

男「もしかしてそれで学校行ってきたのか?その・・・尻尾で」

それは正しく尻尾で
モコモコしてそうで大きい
妹が着ているTシャツから大きくはみ出ていた

男「うさんくさいなぁ」

妹「本物だって!ほら」フリフリ

男「あ、ホコリ舞うから止めて」ケホ

……………

男「・・・確かに本物みたいだ」

妹「でしょー?もうなにがなんだか」

男「とりあえず母さんが帰ってくるまで自宅待機!」

妹「うーん」モゾモゾ

男「どうした?」

妹「ん?・・・いや、なんか体がゾワゾワする」

男「ゾワゾワ?」

妹「全身鳥肌が立つ感じ」

男「おいおい、何かのウイルスとかだったら洒落になんないぞ」

それから事は大きくなった


テレビ「只今謎のウイルスが日本中に蔓延しています!
症状はまだ尻尾が生えてくることのみのようですが
出来るだけ外出は控えるようにお願いします!」

妹の身に起きている現象は実は日本中で発生し
夜には更に感染者が増えていた

グルルルルル


妹「ね、ねえ・・・おにい
外、変な声しない?」

男「獣?・・・犬か?外に居るみたいだな」

バウッグルルバウッバウバウ

妹「しかも結構いっぱい居るみたい・・・」

男「・・・窓、閉めとくか」

ー深夜


ガシャーン

男「・・・・?何だ・・・」

妹「にい!起きて!何かが家に入ってきた!」

男「っ!なんだって!?」

妹「どうしようどうしよう」ガクガク

男「・・・早くここから離れよう
外が安全とは限らないけどここよりは...」

ダッダッ

妹「来た!」

男「ベランダに出るぞ!」

妹「ベランダに出たけど・・・どうしよう!?」

辺りはもう真っ暗で獣の声しかきこえなかった
冷たい空気が顔をうつ

妹「ねえ!」

男「屋根だ」

妹「屋根?どうやって?」

男「ほら、あそこの手すりを足場にして登るんだ、行こう!」

妹「う、うん!」

屋根に登った後はあまり覚えていない
寒かったけどそれ以上に怖かった

親とも連絡は付かない
ただ、心細かった

その夜は妹の大きな尻尾のお陰で凍えず朝を迎えることが出来た

なんてことだ

朝、屋根の上で起きた俺は何気なく道路を見下ろした
すると大きな灰色の犬みたいなものが大量に徘徊していた
体長は1.5mはあるだろうか
いや、それ以上かもしれない

反射的に後ろを振り返った

大丈夫、妹はまだ尻尾だけだ

妹はすやすやと寝ていた
尻尾を体に巻き猫のように...
何だかいやな予感がする

何か今の状況が分かるものが欲しい
携帯は自分の部屋に置いてきてしまった
取りに行かなければ

男「・・・よし」

決心を無理やり声に出し
俺は自分の部屋に降りることにする

部屋はメチャクチャに散らかっていたが
幸い例の獣はいなかった

俺のベッドがボロボロになっている
人の臭いに反応したのだろうか

素早く携帯を回収し、一応ライターも持っていくことにしよう

屋根に登ると妹は起きていた

妹「ふあー」

彼女は何とも気の抜けた欠伸をした
少し緊張が解れた気がする

男「下、見たか?」

妹「・・・うん」

男「だよな・・・」

相変わらず携帯は親と繋がらなかった
意地を張らずスマートフォンにしておけば良かった

途方に暮れていると
隣家の方から唐突に大きな声が飛んできた

「男くん!」

見ると窓を開けて幼馴染みが体を乗り出していた
「無事だったか!」
良かった。家の中に籠っていた人は
比較的生き残っているのかも知れない

今は秋とはいえ、11月の下旬
パジャマでは寒さが身に染みる
俺たちは幼馴染みの部屋にいれてもらった

幼馴染みは妹の尻尾を見て、警戒しているようだった
無理もない

男「幼馴染み、親は?」

幼馴染み「だめ、全然
昨日は夫婦で映画見に行ってたんだけどね」

男「そうか・・・」

幼馴染み「・・・それでさ妹ちゃん」

妹「・・・なに」

幼馴染み「その・・・なんていうか
なんともない?」

妹「大丈夫!」

幼馴染み「そう・・・そうだよね」

幼馴染みの部屋にはノートパソコンがあった
色々今回のことについて調べたらしい
それは開きっぱなしでコンセントが刺さっていた

彼女によると
あの獣はウイルスによって人が変体したものらしい
個体差はあるが大体獣になるまで半日かかる

妹はもう既に1日ちょっと経っていた

その日は幼馴染みの家に泊まることになった
彼女は窓を締め切り、カーテンを締め
外からの侵入にかなり怯えているようだ

そのため一階は薄暗く
「あんまり居たくないの」
と疲れた笑みをこちらにみせた

次の朝、妹の症状は進行していない

幼馴染み「妹ちゃんには抗体があるのかもしれないわ」

妹「抗体?」

男「ああ、確かに・・・
妹は尻尾が生えてるもののそれ以外は進行の兆しもない」

幼馴染み「でしょ?だとしたらこのウイルスをやっつけるワクチンだって作れるわ!」

妹「おにい、抗体ってー?」

幸い、家の地域には大きな病院があった
しかもまだ無事に機能している
そこに妹を連れて行かなくては

でもどうやって?
辺りは獣・・・感染者の声が絶えず聞こえているし
それは深夜だって早朝だって絶えることなく衰えない

突っ切るしかない、この道路を
それ以外に道は無いだろう

出来るだけ視界に入らない家の間等を
通っていけば大丈夫かもしれない

幼馴染み「反対っ!危険よ!」

男「幼馴染み、3人もここにいたら
この家の食料もあっという間になくなっちまう
これ以上迷惑かけたくないんだ」

幼馴染み「迷惑だなんて・・・」

妹「にい・・・」

男「・・・大丈夫、妹は俺が守る」

妹「うん」

幼馴染み「・・・本当に行くの?」

俺たちは薄暗い玄関に立っていた

男「ああ、ここにこれ以上厄介になるわけにはいかない」

妹「ありがとう、おねえちゃん!」

幼馴染み「!・・・・っ」

幼馴染み「・・・私、臆病ね」

男「幼馴染み・・・」

幼馴染み「ゴメンね・・・」

すみません、寝ます

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