響「古いアルバム」 (117)

~事務所~

がちゃ

美希「みんな、おはよーなのー。あふぅ。……って、あれ?」

亜美「あ→、遅いよミキミキ! あくびなんかしてる場合じゃないよ!」

真美「そうだよそうだよ! みんなもうメッチャ待ってるんだよ→?」

美希「ミキ、結構頑張って早く来たつもりだったのに…… 遅れちゃった?」

あずさ「ううん、美希ちゃんが遅いんじゃなくて、みんなが早かったのよ」

真「そりゃあ、社長直々に『明日は重大発表があるから、みんないつもより早く集合してくれたまえ』なんて言われたら、ねえ」

雪歩「ちょ、ちょっと緊張しちゃうよね……。悪いお知らせだったらどうしよう……」

春香「うーん、悪いことだったら前もってそう言うんじゃないのかなあ?」

貴音「わたくしもそう思います。あの方は、いたずらに不安を煽るようなことはしないでしょう」

響「だよね! きっといい知らせに違いないし、自分もうわくわくして待ちきれないぞ!」

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がちゃ

社長「おお、みんなおはよう。ちゃんと集まってくれているようだね」

やよい「あ、社長! おはようございまーっす!」ガルーン

貴音「おはようございます」

律子「あら、美希までちゃんと来てるとは驚きね」

美希「む。ミキだって、本当に大事なときくらい分かってるの」

千早「それで、律子。重大発表って何なのかしら」

伊織「そうよ! この伊織ちゃんたちをこんな早朝から引っ張り出したからには、それなりの理由があるんでしょうね?」

律子「ええ、それについては期待してくれて大丈夫よ」

小鳥「ふふ。でも、もしかしたら一番喜ぶのは響ちゃんかもしれないわね」

響「え、自分か!? 一体何なんだろう、ちょっとどきどきしてきたぞ……」

社長「それでは、早速だが……。君の方から発表してもらおうかね」

ぽん

P「え、俺ですか!?」

社長「今更何を言うのかね。君の頑張りあっての、この成果じゃあないか」ぽんぽん

小鳥「そうですよプロデューサーさん。さあさあ、ばばんと発表しちゃいましょう!」

アイドル一同「」じっ

P「ご、ごほん。それじゃあ、俺から発表させてもらうな。実は……」

アイドル一同「」ごくり

P「この夏。765プロオールスター、全国縦断ツアーが決定した!!」

あずさ「全国……」

雪歩「ツアー……?」

アイドル一同「ええええええぇぇぇええぇ!?」

真「す、すごいすごい! それって、たっくさんの人にボクたちのステージを見てもらえるってことですよね!?」

千早「全国を回って、私たちの歌を……」

貴音「わたくしたちも、成長した……。そんな気が、いたしますね」

やよい「わ、私、がんばりますっ!」

律子「ふふ。全国ツアーとなると、スケジュールも過酷になるわよー?」

P「日程としては今のところ、8月いっぱいを中心としての全国7箇所を予定しているな」

亜美「は、8月いっぱい!? ってことは……」

真美「うあうあ~! 真美たちの夏休みはどうなっちゃうのさ→!」

律子「どうなっちゃうも何も、最初からそのつもりで組んだのよ。移動日も含めると、一ヶ月近くも授業休ませるわけにはいかないからね」

小鳥「765プロは学業もおろそかにしない事務所、ということだから……。亜美ちゃん真美ちゃん、我慢してね」

亜美「そんなぁ……」

P「まあ、悪いことばかりじゃないさ。多分みんな、一ヶ所目の会場を聞いたら驚くぞ?」

響「驚くって、一体どこなんだ?」

春香「もしかして、ドームなんて……って、さすがに無理ですよね」

伊織「ちょっと。もったいぶってないで、早く教えなさいよ!」

P「はは、悪い悪い。ツアーのスタート地点は……なんと」


P「沖縄だ!」


響「!」

真「沖縄、っていうと」

雪歩「響ちゃんの地元だね!」

響「……」

P「ああそうだ。沖縄から始まってだんだん北上し、北海道まで行く予定になっている」

あずさ「南は沖縄、北は北海道まで……。とっても素敵な旅になりそうですね」

律子「りょ、旅行じゃないんですよ、あずささん」

貴音「響のふるさとですか……。これは、楽しみが増えましたね」

美希「それじゃあ、響にたくさん楽しいところを案内してもらわないとね!」

響「う、うん……」

亜美「沖縄と言えば!」

真美「青い海、白い雲!」

やよい「ふ、船に乗ったりするのかな?」

雪歩「ひ、日焼け止めとか、準備しなくっちゃ」

響「……」

P「響の凱旋ライブ、と銘打って最高のスタートにしようと思うんだが。……っと、響、どうかしたか?」

響「……あのさ」

響「それって、やっぱり自分も行かなきゃダメかな……?」

一同「!?」

P「な、何言ってるんだ響!? 響メインくらいのつもりで、盛大に盛り上げようと思ってたのに」

春香「そうだよ、せっかく地元に戻ってライブできるんだよ?」

響「うん、それはそうなんだけど……」

貴音「…………」

響「……あ、ほ、ほら。自分、いぬ美たちを残して1人でどこか行くわけにはいかないし。1ヶ月ともなると、流石に預かってくれる人もいないだろうからさ」

社長「その点については心配ないよ。私のつてで、信頼できる人たちを探しておいた。勿論、好きなときに会いに行ってもいいそうだ」

響「あ、そうなんだ……。……ありがとう、社長」

響「でも、自分……」

律子「響……?」

P「……どうしても嫌だっていうなら、俺に止めることはできないけど。でも」

小鳥「響ちゃんが参加しないとなると、残念に思っちゃう人も、きっとたくさんいると思うわ」

P「……まぁ、まだ時間はあるから。ちょっと考えてから返事をしてみてくれないか?」

響「……うん。わかったぞ」

~後日・テレビ局~

春香「プロデューサーさん、遅くなってすみません!」どたばた

P「いやいや、こちらこそこんな遅い時間まで収録入れてしまってごめんな。 労働基準法ギリギリだ」

春香「いいんですよ! これくらい忙しい方が、頑張ってる! って気がします」

P「そうか? でも家も遠いんだから、無理はしないでくれよな」

春香「はい、もちろんです。それに、今日は響ちゃんが泊めてくれることになってますから!」

P「そうなのか?」

春香「明日はお休みですから、貴音さんと一緒にお買い物でも行こうってことになってるんです」

P「ふうん……。なあ春香、ちょっと頼みがあるんだけど、いいか」

春香「何ですか?」

P「この間の全国ツアー発表のとき、響の様子が少しおかしかっただろ?」

春香「え? ……はい。せっかく地元の沖縄でのライブが決まったのに、あんまり嬉しくなさそうでしたもんね」

P「ああ。もしかして何か響に悩みがあったりしないか、それとなく気にしてあげてほしいんだ」

春香「……そうですね。元気がないと、いつもの響ちゃんらしくないですもんね」

P「悪い。頼めるか?」

春香「勿論です! 天海春香、承りました!」びしっ

P「ありがとう、春香」

春香「このくらい、お安い御用です!」

~響の家~

春香「ごめんね、響ちゃん。泊めてもらうことになっちゃって」

響「このくらい、なんくるないさー! 今日は遅くなっちゃったし、春香、家が遠くて大変だもんな」

春香「そうなんだよねー。あーあ、私も早く千早ちゃんや響ちゃんみたいに一人暮らししたいなぁ」

響「そういや、春香って千早のうちにも泊まったことあるんでしょ?」

春香「うん、たまーに泊めてもらうんだ。この間は一緒にお料理したりもしたんだよ!」

響「へへ。そういう話も聞いてたから、春香には一度うちにも泊まりに来てほしいと思ってたんだ」

春香「そっかぁ。それじゃ、今日は遠慮なくお世話になっちゃうね!」

響「うん! 自分の家だと思ってくつろいでいいからね!」

春香(こうしてると、いつもの響ちゃんみたいだけどなぁ……)

いぬ美「」じーっ

春香「あ、いぬ美ちゃんだ。久しぶりだね」

いぬ美「」ぺこ

春香「えへへ、かーわいっ」

響「いぬ美、今日は春香が泊まりに来たからな。あんまり迷惑かけちゃだめだぞ」

\わん/

春香「お邪魔しまーす」ぺこ

\くぅん/

響「それじゃ、自分お風呂沸かして来るぞ。 適当に座ってくつろいでてくれよなー」

春香「あ、うん。ありがとう響ちゃん!」

春香「ふう。響ちゃんが泊めてくれるって言ってくれて、助かっちゃった。思ったより遅くなっちゃったし」

春香「……」

春香「……」きょろきょろ

春香「広いお部屋だなぁ。……あ、そっか。いぬ美ちゃんたちがいるんだもんね」

春香「すっごく片付いてるや。響ちゃんって、けっこう綺麗好きなんだね」

春香「……」

春香「……」きょろきょろ

いぬ美「わん、わん」くいくい

春香「へ? どうしたの、いぬ美ちゃん?」

いぬ美「わん」

春香「……あ」

春香「あるばむ、はっけん」

春香「友達の家、って言ったらやっぱりアルバムだよね?」

春香「……勝手に見ちゃって、怒られないかな?」きょろ

いぬ美「わんわん」

春香「……うん、いぬ美ちゃんもいいって言ってるし、いいよね? えへへっ」

ぺら

春香「わぁ……。中学校の頃の響ちゃんだ!」

春香「ふふ、あんまり変わってないや。……あ、卓球部だったんだっけ」

春香「あ、友達に頭ぐりぐりされてる。かーわいっ」

春香「……私も今度やってみよっかな? 怒っちゃうかな? ふふっ」

ぺら

春香「今度は小学校の頃の響ちゃんだ。こっちはお母さんかな?」

春香「響ちゃんとは、あんまり似てないかな? でも、綺麗な人……」

ぺら

春香「あ、こっちは響ちゃんのお兄さん? 喧嘩しちゃってるみたいだけど、仲悪かったのかな?」

春香「……こっちでは泣かされちゃってる。でも、喧嘩するほど仲がいいとも言うもんね」

ぱりっ

春香「あれ、このページ……。くっついちゃってるや」

春香「ん、しょっと……」

ぺりぺり、ばりっ

春香「……ん、きれいにとれたっ」

いぬ美「……」

春香「あれ、この写真……?」


響「春香ー、お風呂の準備できたから、沸いたらすぐに……」

春香「あ」

響「って、あーーーーーー!!! 何勝手に見てるんだ!!?」

春香「え、えへへ、ごめんごめん。あ、ほら、いぬ美ちゃんが見ていいよって言うから……」わたわた

響「えー!? それ、本当なのか、いぬ美?」

いぬ美「」ぷいっ

響「こら、いぬ美ー! ちゃんと返事しろー!」

春香「まあまあいいじゃない、小さいころの響ちゃん、とっても可愛かったよ?」ぽんぽん

響「うがー、子どもみたいに頭を叩くなっ! もう、びっくりするから勝手に見るのはやめてよね……」

春香「ごめんってばー。お詫びに明日は春香さんが美味しいデザートを作ってあげるから、ね?」

響「……もう、春香は調子いいんだから」ぷん


春香(小さなころの、響ちゃんの写真。あれって、もしかしたら……)

~ショッピングモール~

春香「あ、見てみて響ちゃん! あの帽子、可愛くない?」

響「春香、まだ買うのかー? もう2時間もうろうろしてるし、自分そろそろ疲れちゃったぞ……」

春香「そ、そう? じゃあ、あそこのカフェで休憩にしよっか!」

貴音「ふふ。今日の春香は、なんだかいきいきとしていますね」

春香「ご、ごめんなさい貴音さん。付き合わせるような感じになってしまって」

貴音「いえ、構いませんよ。わたくしも春香と久しぶりに休日を過ごすことができて、嬉しく思います」

~喫茶店~

響「それにしても春香、たくさん買ったなぁ……。いっつもこんなに買い物するのか?」

春香「ううん、そんなことないよ! ただ、全国ライブだ! って思うと、なんだかたくさん必要なものがある気がしちゃって、ね?」

響「全国、ライブ……」

貴音「……」

春香「……ねぇ、響ちゃん。もしかして、何か悩み事があったりするのかな。私で良かったら、話くらいは聞けるよ?」

響「……」

春香「あ、ごめん! 話したくなかったら話さなくてもいいんだけど……」

貴音「みな、響の様子が普段と違うことには気付いております。無理に話す必要はありませんが、わたくしたちはいつでも力になる準備はできていますから」

春香「せっかくの機会だから、響ちゃんも楽しい気持ちで行けたらいいな、って思うんだ」

響「楽しい、気持ちで……」

春香「うんっ」

響「……うん、そうだな。じゃあ、ちょっとだけ、聞いてくれるか? あんまり面白い話じゃないと思うけど」

春香「もっちろん! ね、貴音さん?」

貴音「ええ。聞かせてください、響」

響「知ってるかもしれないけどさ。自分、沖縄ではアクターズスクールに通ってたんだ」

響「自分の住んでた島はすごく小さかったから、頑張って通って、そして、父親の代わりに稼げたらいいなって思ってたんだよね」

春香「父親の代わりに、って……」

貴音「では、響のお父様は、今は」

響「うん、死んじゃった。と言っても、自分がすっごく小さなときだったから、あんまり記憶はないんだけどね。声ももう覚えてないくらい」

春香「……」

貴音「……そう、ですか」

響「自分で言うのもなんだけど、その頃はすっごく順調だったんだ。ほら、自分ダンスは好きだし、歌うのも嫌いじゃなかったし」

響「自分がどんどん伸びてくのが分かって、めちゃくちゃ楽しくって」

響「でも、ある日……兄貴と喧嘩しちゃったんだよね」

貴音「お兄様と?」

響「うん。……お前にアイドルなんて絶対無理だ、って言われちゃってさ」

春香「……」

響「でも、ほら。そのときの自分は絶好調だったから。地元の小さなダンスコンテストで賞をもらったりもしてて、乗りに乗ってたのもあって」

響「そんなことあるもんか! ってもう、取っ組み合いの大喧嘩しちゃって」

響「それで自分、”もうトップアイドルになるまでは帰らないからな!!”って言って、中学卒業と同時に島を飛び出して来ちゃったんだ」

春香「トップ、アイドル……」

貴音「……ということは、それ以来響は、お兄様とは」

響「うん、会ってないし、話してもない。あんまー……母親とは、今でも普通に話すんだけどね。でも、母親とも直接会ったりはしてないさー」

響「だからなんというか、正直地元って帰りづらくって」

響「確かに自分たち、ここ一年ですごく有名になったけど、トップなんてまだまだ先の話でしょ?」

春香「う、うん……」

響「生っすかのときみたいに、バラエティのワンコーナーっていうんならともかく、凱旋ライブっていうとな」

響「……兄貴に、どの面さげて帰ってきたんだー、って、思われるんじゃないか、ってさ」

春香「響ちゃん……」

響「……」

響「……ありがとな、春香」

春香「ふぇっ?」

響「春香、多分プロデューサーか律子に言われて、自分のこと心配してくれたんだろ?」

春香「な、なんで分かっ、あ、じゃなくて、ううん!」

響「もう心配いらないさー。明日にでも、ワガママ言ってごめんなさいって言いに行くよ」

貴音「……よろしいのですか?」

響「うん。だって、自分1人の都合で、765プロのみんなに迷惑をかけるわけにはいかないからな! 自分もう、プロなんだから!」

春香「そっか。……ねえ、響ちゃん」

響「? 何だ?」

春香「絶対、なろうね。トップアイドル」

響「……もっちろんさー!」

~・~

社長「……そうか。本当にいいんだね?」

響「もちろん! なんたって自分の故郷でのライブだからな! 自分が居ないと始まらないぞ!」

社長「では、我那覇君。君の家族については、以前話した私の知り合いに……」

響「うん! あ、でも連絡先はあらかじめ教えてもらっていいかな? ご飯の好き嫌いとか、いろいろ伝えておかなきゃいけないからさー」

社長「勿論だとも。あ、それと聞いたかい? 彼が、今回のラストは我那覇君の好きな曲を二曲ほど歌っても良いと言っていたよ」

響「え、社長、それ本当か!?」

社長「うむ。のちのち本人の口からも聞くと思うが、何か考えておくといい」

響「それは楽しみだなー! 自分、歌いたい曲も踊りたい曲も、いっっぱいあるんだ!」

社長「それはいいことだ。私もその日まで、楽しみにさせてもらうことにしよう」

響「うん! 任せてよ!」

社長「おっといけない、話が逸れてしまった。それでは、例の連絡先だが……」

響「じゃあ、自分は……」



こそっ

春香「……」

春香「響ちゃん、ほんとにいいのかなぁ。まだ、納得いってないみたいだけど」

春香「でも、私ができることなんて……」

こそっ

千早「我那覇さん自身の問題だもの。我那覇さんがそう決めたのなら、私たちに言えることは何もないと思うわ」

春香「わっ! びっくりさせないでよ、千早ちゃん」

千早「ごめんなさい。春香が深刻な顔をしていたものだから、つい」

春香「……って、えっ!? 千早ちゃん、響ちゃんの事情、知ってるの?」

千早「なんとなく、だけれど。こればかりは、自分で乗り越えるしかないと思うの」

春香「あ、そっか。千早ちゃんも……」

千早「……」

春香「そっか。そうだよね」

千早「……誰かが背中を押すくらいのことは、してあげてもいいのかもしれないけれど」

こそっ

美希「んー。でも、せっかくの全国ツアーなんだから、スタートからテンション下げちゃうのはどうかと思うなー」

春香「わ、美希まで! ……え、どういうこと?」

美希「だって、一ヶ月もかかる全国ツアーだよ? ミキだったら、楽しくなかったら途中で投げ出したくなっちゃうの」

真「だよね。一発目からそんなんじゃ、きっと身が持たないよ」

雪歩「ただでさえ、過密なスケジュールみたいだから……。響ちゃん、し、心配だよね」

貴音「確かに。病は気から、とも申します」

あずさ「何か私たちで、響ちゃんに元気を出してもらえるようなことができればいいんだけれど……」


春香「み、みんな、聞いてたの!?」

真美「元気が出ること……。むむむ」

亜美「あー!」ぴこーん

伊織「こ、こら亜美、声が大きい! あっちの2人に気付かれちゃうでしょうが!」

やよい「これだけたくさん集まっちゃったら、気付かれるも何もないような気がするけど……」

あずさ「亜美ちゃん、何か思いついたのかしら?」

亜美「うん! あのねあのね、こういうのはどうかな?」

ひそひそ

一同「……!」

亜美「ね、ひびきんにサプライズを仕掛けるってわけ。ど→かな?」

真「面白い! それ、すっごく面白いよ、亜美!」

雪歩「で、でも、私たちにできるかなぁ……」

千早「それに、裏方さんやプロデューサーたちにかかる負担のこともあるわ。万が一、私たちの選択が我那覇さんの思惑と違ってしまったら……」

伊織「そうねぇ。絶対そうなるっていう保証もないし」

貴音「いえ。……保証なら、あります」

一同「!?」

春香「貴音、さん?」

美希「ほしょーって?」

貴音「具体的に何かがあるわけではありませんが。わたくしには、響なら必ずそうするという確信があります。ですから、その点については心配ありません」

伊織「……ふぅん。貴音がそこまで言うってことは、よっぽど自信があるのかしら?」

やよい「貴音さんは、響さんと一番の仲良しさんですもんね!」

あずさ「……それなら、後は律子さんとプロデューサーさんね」

貴音「ええ。もしあのお二方が許可をくだされば」

P「いいと思うぞ。な、律子」

律子「集まってこそこそしてるから何かと思えば……。ま、亜美にしてはいい提案ね」

美希「ハニー!」

真美「りっちゃん! 聞いてたの!?」

律子「しっかり聞かせてもらったわよ。まあ、向こうの2人には聞こえていないみたいだから、安心しなさい?」

千早「プロデューサー。……いいんですか?」

P「ああ、俺も響については気にしていたところだし、それに……」

やよい「それに?」

P「信じていいんだろ、貴音?」にっ

貴音「……!」

貴音「ええ、もちろんです」にこっ

P「じゃあ、その段取りについては俺たちに任せてくれ」

律子「当然、その分レッスンの量は増えることになるけど……。大丈夫なのかしら?」

一同「はいっ!」

~機内~

『皆様、おはようございます。本日は○○航空をご利用くださいまして誠にありがとうございます。この便は沖縄行きでございます……』


やよい「わー、見てみて伊織ちゃん! 海が見えてきたよ! ねえねえ、そろそろ沖縄も見えてくるのかなぁ?」

伊織「まだ見えるわけないでしょ、出発してちょっとしか経ってないんだから」

やよい「あ、そっかぁ……。それじゃ、今どの辺なのかな? うー、わたし飛行機って初めてだから、なんだかわくわくするね!」

伊織「もう、やよい。そのくらいで子供みたいにはしゃがないの、みっともない」

やよい「あ、ごめんなさい……」

やよい「…………」しゅん

伊織「あ……」

伊織「ま、まあ東京発の沖縄行きだし、もう少ししたら富士山くらいは見えるんじゃないかしら?」

やよい「ほ、ほんとっ?」

伊織「ええ。ほら、窓側の席代わってあげるから」

やよい「わぁ、伊織ちゃんありがとー!」ぺかー

伊織「やよい、高いところ苦手なんでしょ? あんまり下見すぎないようにね」

やよい「うん!」

千早「ふふっ」

春香「どうしたの、千早ちゃん?」

千早「春香。……水瀬さんも、高槻さんの前では形無しだなぁと思って」

春香「ふふっ。そうだねー、やよいの力ってすごいよね」

千早「ええ。ところで春香は何を読んでるの?」

春香「これ? じゃじゃーん、沖縄グルメガイドー!」

真「え、グルメガイド? 春香買ったんだ?」ひょこっ

春香「うん! せっかくだから、おいしい沖縄料理なんかも食べられたらいいかな、って!」

千早「ゴーヤチャンプルー、サーターアンダギー、タコライス、ソーキそば……あ、ステーキハウスもたくさんあるのね」

雪歩「ステーキハウスかぁ……。うぅ、なんだか私、お腹すいてきちゃった」

真「ボクも。くー! 楽しみだなぁ、みんなでの沖縄!」

雪歩「去年みんなで海に来たときのことを思い出しちゃうなぁ」

春香「私も! ねえねえ、あのときの私たちに、『みんなで全国ライブ!』なんて言ったら、びっくりしちゃうかな?」

真「あはは、ボク、絶対信じないと思う」

雪歩「わ、私も……」

千早「私も、信じないと思うわ。……こんなに素敵な仲間たちと、こんなに素敵なライブに向かっているなんて」

雪歩「千早ちゃん……」

千早「……だからこそ、今は我那覇さんが気になるの」


響「」すぅすぅ


真「うん。響、レッスンなんかはいつも通り受けてるみたいだけど、まだ本調子じゃなさそうだし……」

雪歩「私たちで元気づけてあげないと、だね」

千早「ええ。……絶対成功させましょう、みんな」

はるゆきまこ「……うん!」

今日はここまでにします。今全体の3分の1くらいでしょうか

こんな雰囲気でまったり進んでいきますので、合いそうだという方がいればお付き合いくだされば幸いです
明日もう少し早い時間に来るつもりなので、明日中には終わると思われます

それではおやすみなさい

こんばんは
昨夜乙くださった方はありがとうございました。再開します

~・~

亜美「海です!」ひょこっ

真美「波です!」ひょこっ

亜美真美「そして……」

ひょここっ

亜美真美「天海です! プロデューサーさんっ、沖縄ですよ、沖縄!」

春香「もう! 2人とも、それ恥ずかしいからやめてってばー!」

P「はは、懐かしいなあれ……」

あずさ「まぁ、2人ともやっぱりよく似てるわね~」

響「……ふぁ」

真美「おやおや→、ひびきんはまだおねむですかな→」

亜美「真美たちの渾身のネタをスルーなんて、ひどいよひびきんっ!」

響「う……。ごめん、自分ちょっとまだ眠くて……」

亜美「あ……」

真美「う、ううん、いいよ! 次は見逃したら嫌だかんね!」

響「うん、ごめんだぞ……」

>>47ミスです、こっちで

響「……ふぁ」

真美「おやおや→、ひびきんはまだおねむですかな→」

亜美「真美たちの渾身のネタをスルーなんて、ひどいよひびきんっ!」

響「う……。ごめん、自分ちょっとまだ眠くて……」

亜美「あ……」

真美「う、ううん、いいよ! 次は見逃したら嫌だかんね!」

響「うん、ごめんだぞ……」


やよい「響さん、まだ少し元気がないみたいですね……」ひそひそ

貴音「そのようですね。本番に影響が無ければいいのですが……」ひそひそ

美希「じゃあ、決行でいいの?」ひそひそ

伊織「ええ、いいんじゃないかしら?」ひそひそ

律子「はいはい、騒いでないで、まずはホテルに荷物を移動! すぐ隣のスタジオを抑えてあるから、レッスンの支度して集合ね。あ、竜宮はまずは別メニューだから」

亜美「え→、もうレッスンなの→?」

真美「せっかく沖縄まで来たんだから、ちょっとくらいあそぼ→よ、りっちゃ→ん」

律子「こら! 遊びに来たんじゃないだから、さっさと支度しなさい!」

亜美「ちぇ→。りっちゃんのおにぐんそ→」

律子「なんですってぇ……?」ごごご

亜美「じゃ、じゃあ亜美は、準備してきま→っす!」びゅーん

律子「……全く」

~レッスンスタジオ~

伊織「ぜぇ、ぜぇ……」

あずさ「はぁ、はぁ……うぅ」

亜美「り、りっちゃんの、おにぐんそー……」ふらっ

律子「なんとでも言いなさい。この全国ツアーは竜宮小町をもう一段上のステージに上げるための、最高のステップなんだから」

亜美「そ、それにしたってやりすぎだよ→」

伊織「うだうだ文句言わないの、亜美。今日はこれで終わりなんでしょ?」

律子「ええ。後は体をしっかり休めてちょうだい」

春香「ふぅっ。やっと休憩だね」

雪歩「みんな、流石に気合入ってるね……。あ、響ちゃん! はい、ドリンク」

響「え? ああ、ありがと雪歩」

春香「調子はどう? 響ちゃん」

響「調子? うーん……。ふつう、かなぁ。まぁ、自分にできることをしっかりやるだけさー」

春香「そっかぁ……」

ぴろりろりろ ぴろりろりろ

春香「あれ? 携帯鳴ってる?」

雪歩「この音って……。響ちゃん?」

響「あ、自分だ。マナーモードにし忘れてたんだな。えーっと」ぽち

響「…………あ」

響「」ぽちぽちぽち

春香「?」

響「ううん、なんでもないさー。それより、そろそろ続きやろうよ」

P「よーし。じゃあ、今日はこの辺にしておこうか。この調子で本番までレッスンが続くから、気を抜かないように」

P「晩ご飯までは自由行動にするけど、各自怪我やトラブルには充分注意すること。いいな?」

一同「はーい!」

P「じゃあ、今日は一旦解散! 晩ご飯のときに、また集合してくれ」

春香「ねえねえ千早ちゃん、お買い物いこうよ、お買い物っ!」

千早「え? 何か買いたいものがあるの?」

春香「特にあるわけじゃないけど、千早ちゃんと出かけたいなぁって。……ダメ、かな」

千早「……ダメじゃないわ。一緒に行きましょう」

春香「やった! じゃあ、後でね。あ、響ちゃん! 響ちゃんも一緒に……」

響「あ……ゴメン春香。ちょっと自分、今日はやりたいことがあるんだ」

春香「そうなんだ……残念。じゃあ、また今度ね!」

響「うん、ほんとにゴメンな。またね」

P「いいのか? 一緒に行かなくて」

響「あ、プロデューサー。すっごく行きたかったんだけど、さっきこっちの友達からメールが来てて、会う約束しちゃってたんだぞ……」

P「そうなのか。それじゃあ仕方ないな」

響「それより、ひとつ確認したいことがあるんだけどいい?」

P「何だ?」

響「ライブの優待券とかって、まだ余ってる? その友達にあげたいんだ」

P「ああ、あるぞ。響のぶんはもともと少し多めに取っておいたから、ちょうど余らせてたんだ。はい」ぽん

響「ありがとー。じゃあ、自分もちょっと出てくるな!」

P「おう。いってらっしゃい」

律子「……あ、いたいた! プロデューサー」

P「律子。どうかしたのか?」

律子「実は、プロデューサーにお客さんが来ているんですが……」

P「お客さん? 俺に?」

律子「ええ。何でも、響の……」ごにょごにょ

P「え? ……分かった、すぐ行く」

律子「お願いします」


はるちは「…………?」

~~

響「お、見ーっけ。おーい!」

??「あ、響! 久しぶりー!」

響「ほんと、久しぶりだぞー! メールありがとな! 元気にしてた?」

??「もちろん! 響こそ、体調崩したりしてない?」

響「大丈夫さー! だって自分、ライブするために来たんだから」

??「あはは、それもそうだね」

響「しっかし変わんないなー。元気そうでよかったよ、アリサ!」

アリサ「響もね!」

アリサ「それにしても、響と会うのいつぶりかなー。もしかして、中学卒業して以来?」

響「もうそんなになるのか! 月日が経つのって早いなー」

アリサ「そうだねー。同じスクールに通ってた響が、今やトップアイドルだし」

響「な、何言うんだよ! 自分、まだまだトップなんかじゃないさー!」

アリサ「でも、この辺ではすごい人気だよ? やっぱり地元出身アイドルとしてさ」

響「そ、そうなの?」

アリサ「そうなのって……。知らないの?」

響「」こくん

アリサ「またまたー! おうちに帰ったときにお母さんに言われたりするでしょ?」

響「あー……。でも自分、帰ってないから……」

アリサ「え? もしかして……一度も?」

響「うん。765プロって事務所に申し込んだら通っちゃって……そのままずっと、向こうにいたんだ」

アリサ「え、じゃあ今回こっちに来てからも、家には」

響「うん、帰ってないさー」

アリサ「……!」

わしゃわしゃわしゃっ

響「う、うわぁ! アリサ、何するさぁっ!」

アリサ「駄目だよ響! そんなんじゃ駄目だよ!」

響「い、いや、なんというか……。帰り辛かったからさ」

アリサ「そんなんじゃお母さんもお兄さんも心配するよ! ちょっとは顔くらい見せないと!」

響「いや、母親はともかく兄貴は……。心配なんてするはずないさー」

アリサ「そんなわけないっ!」

響「え?」

アリサ「何にも知らないでしょ、響? お兄さん、すごく心配してたんだから」

響「ま、まさかぁ」

アリサ「嘘じゃないよ! お兄さん、たまに私と会うと、必ず聞いてきてたんだよ? 『最近、響と喋った?』って。『元気そうか?』って」

響「ほ、本当に……?」

アリサ「本当だよ! ……今回のライブだって見に行こうかどうかずっと迷ってたんだから! ……迷ってる間にチケット、完売しちゃったらしいけど」

響「!!」

アリサ「……あ。これ、言わないでって頼まれてたんだった……」

アリサ「と、とにかく! せっかく帰って来てるんだから、一度くらい帰って顔見せてあげなよ!」

響「……」

響「……ううん、自分、帰らない」

アリサ「なんで!?」

響「だって、まだ自分、中途半端だから。今帰っちゃったら、このまま中途半端で終わっちゃいそうな気がするんだ」

響「もっともっと、頑張って、頑張って、頑張って。日本中どこに居ても自分の姿が見えるくらいまで駆け上がって」

響「胸を張って帰れるようになってから、帰ろうと思ってるんだ」

アリサ「……そっか。響は、強いんだね」

響「そんなことないさー。でも、今は765プロのみんなが居るから、大丈夫」

アリサ「うん。それは私も感じてたよ。765プロの人と居るときの響、表情が活き活きしてるもん」

響「え? そ、そうか?」

アリサ「うん。私がそう感じてるくらいだから、きっと、お兄さんたちもそうだよ。……だから」

響「だから?」

アリサ「お兄さんたちのためにも、最高のライブを見せてよね!」

響「……!」

響「当たり前だぞ!」にっ

~喫茶店~

P「……あ」

??「こんにちは。突然お呼び立てして、本当に申し訳ありません」

P「いえ。あ、私が響のプロデューサーです。それで、あなたが……」

??「はい、我那覇響の兄です」

響兄「響がいつも、お世話になっています」ぺこ

P「いえ、こちらこそ」ぺこり

響兄「本当は、こちらから出向くべきだったのでしょうが……」

P「いえ。こちらこそ、しばらくお待たせてしまったみたいで」

響兄「レッスンの間は人手が足りなくて抜けられないと聞きました。お気になさらないでください」

P「はは、すみません……。それで、今日はどうされたんですか?」

響兄「……母に聞きましたら、765プロさんにはまだ一度も直接は挨拶に伺っていないとのことでしたので」

響兄「家を空けるわけにはいかないので、仕方がないのですが……。ともあれ響が本当にいつも、お世話になっています」

P「なんだ、そんなことでしたか。こちらこそ、響にはいろんな所で頑張ってもらっています。こちらがお礼を言いたいくらいですよ」

響兄「そう……ですか?」

P「?」

響兄「いえ。こうして沖縄ライブなんてものを開催できる時点で、すごく頑張っているのは分かるんですが」

響兄「あの響が、本当に……。って思ってしまうんです」

P「……お兄さんは、今まで響のライブには?」

響兄「いえ、一度も。テレビで見たことくらいはありますが」

P「では、今回が初めてということですね」

響兄「……ええ」

P「だったら大丈夫です。それを見てもらえればきっと」

??「あーーーーっ!!!」

P「!?」

春香「プロデューサーさんじゃないですか!」

P「春香に、千早? どうしてここに?」

千早「春香と買い物に来たので、少し休憩を。プロデューサーこそ、どうして?」

P「ああ、ちょっと人と会う予定があってな」

響兄「」ぺこ

春香「あ、すみません! お邪魔しちゃいました」ぺこり

千早「お客さんでしたか。すみません、騒がしくしてしまって。……春香、行きましょう?」

春香「うんっ。でもこのお客さん、どこかで見たことがあるような……?」

千早「そう言われてみれば、確かに……」

はるちは(というか)

はるちは(プロデューサー(さん)に、似てる……?)

響兄「天海春香さんに、如月千早さんですよね。いつも響がお世話になっています」

千早「え? ということは……」

響兄「はい。響の兄です」

はるちは「えええええええっ!!?」

千早「そ、そう言われてみれば少し雰囲気が……」

春香「わわわっ、初めましてっ! 私、天海春香ですっ!」

P「こらこら春香、それはもう知ってるって」

春香「あ、そ、そうでしたっ! ところで、どうして響ちゃんのお兄さんが?」

千早「今度のライブのことじゃないのかしら。見に来られるんですよね?」

響兄「あ、いえ。私はライブは、見に行きません」

P「……え!?」

春香「ど、どうしてですかっ!?」

千早「まさか、チケットが行っていないとか」

響兄「いえ。私なんかが見に来ても、きっと響が嫌がるだけでしょうから、ね」

P「そ、そんな」

千早「我那覇さんは、そんなことを思ったりはしないと思いますけれど……」

春香「そ、そうですよ! ほらプロデューサーさん、関係者席のチケット、あるんですよね? あれをお兄さんに」

響兄「いえ、いいんです。喧嘩別れしてからずっと会っていないんです。喜ぶわけがありませんよ」


響『うん。会ってないし、話してもない』


春香「あ……」

響兄「……代わりと言ってはなんですが。プロデューサーさんに一つお願いがあるんです」

P「お、お願い? 俺にですか?」

響兄「ええ。これを、響に渡して欲しいんです。自分からだとは、言わずに」

ぺらっ

P「これを響に、ですか? しかし、言わずにというのは……」

春香「……!」

響兄「言うと、きっと受け取りませんからね。でも家族全員で写っているものは、それしかないものですから」

春香(こ、これって……!)

響兄「私の用はそれだけです。あまりお時間を使わせてしまってもいけませんし、そろそろお暇しますね」

がたっ

千早「……あ」

P「え、あ、ちょっと!」

響兄「響が本当に1人でやっていけているのかどうか、心配だったんですが。いい人たちに囲まれているみたいで、安心しました」

響兄「あとはそれがあれば、響は大丈夫だと思います」

響兄「皆さん。……どうか響を、これからもよろしくお願いしますね」

春香「……だ、駄目ですっ!」

千早「!」

P「春香?」

響兄「天海……さん?」

春香「やっぱりお兄さんは、ライブを見に来ないと駄目です!」

P「春香。何を言って……」

春香「今の響ちゃんには、『それ』よりも、もっと必要なことが、ありますからっ!」

響兄「……え」

春香「私たちがきっと、それを証明してみせます! だから絶対響ちゃんのライブ、見に来てあげてください。私たちも待ってますから!」

響兄「いや、でも」

春香「ね、千早ちゃん!」

千早「……最高のライブになることを、お約束します。私に言えるのは、これだけですが」

響兄「如月さんまで……」

春香「ですよね、プロデューサーさん?」

P「2人とも……。うん、そうだな」

P「お兄さん。響の頑張り、是非見ていってあげてください」

P「お願いします!」ばっ

はるちは「お願いします!」ぺこ


春香(だって)

春香(だって響ちゃんのお兄さんがプロデューサーさんに預けようとしていた『それ』は)

春香(涙でよれよれになっていた、あのアルバムの中の家族写真と、同じものだったんですから)

~ライブ前日・レッスンルーム~

~~♪

響「~~~、っと」ぴた

響「プロデューサー! もー一回! もー一回今のところよろしくー!」

P「はいよー!」

~~♪

響「~~~♪」たん、くるっ


真「響、大分調子戻ったみたいだね」

美希「昨日、何かあったのかな? ダンスのキレが全然違うの」

真美「ん→、これなら真美たちのサクセン、必要なかったかな→?」

真「元気になったんなら、それならそれで、いいとは思うけどね」

春香「ううん、そんなことない」

美希「えっ?」

真美「はるるん?」

春香「予定通り、しっかりやろうよ。それがきっと、響ちゃんだけじゃなくて、みんなのためにもなると思うんだ」

千早「私も春香と同じ気持ちよ。ずっと準備してきたのだし、我那覇さんのためだもの」

真「ん、そうだね。勿体ないもんね」

美希「響の驚く顔も、やっぱり早く見たいの!」

真美「んじゃ、決行ってことで! あとはタイミングだけど……」


響「~~~♪ っぷぅ」

響「なあ、プロデューサー。ちょっといいか?」

P「ん、何だ?」

響「ライブの最後の曲のことで、ちょっとお願いがあるんだけどさ……」

P「あ、悪い。他の段取りすぐ終わらせるから、少し待っててくれるか?」

響「わかったぞ」


春香「……」ちらっ

真「」ぱちっ

みきまみ「」くいっ

P「」こくん

~ライブ当日~

春香「見て見てみんな! 満員だよ、満員!」

伊織「2時間前からほぼ満員だったものね。まあ、このくらいこの伊織ちゃんたちにかかれば当たり前だけど♪」

やよい「すっごい熱気ですね……」

雪歩「ほ、ほんとだね……。うぅ、この緊張は何回やっても慣れないよ……」

真美「とか言って→。本番ではびしっと決めちゃうところが、ゆきぴょんのすごいところだよね→」

真「ほんとほんと。そのチカラ、春香にも分けてあげてほしいよ」

雪歩「え、えぇっ!?」

春香「まーこーとー?」

真「へへっ、冗談冗談♪ それにしても、やっぱり響のグッズ持ってる人が多いね」

亜美「なんたって、凱旋帰国だもんね!」

あずさ「帰国って、沖縄も日本よ、亜美ちゃん?」

律子「あずささんがそれを言いますか……」

響「……」

貴音「どうかしましたか、響?」

響「……いや。自分って、本当に多くのファンに支えられてるんだなぁって」

美希「いまさら何言ってるの、響。でないと、沖縄なんかに来られるわけないの!」

響「……だよな。今日は、ファンのみんなに喜んでもらえるようなライブにしないとなっ!」

貴音「ええ。その意気ですよ」

美希「だね。じゃあ春香、そろそろいつものお願いするの!」

春香「え、えぇっ!? いきなり何?」

美希「だって、ほら。春香のあれがないと、始まった気がしないの」

あずさ「ふふ、確かに」

真「いつの間にかライブ前のお決まりになっちゃったもんね」

春香「そ、そんなぁ……。あ、じゃあさ! 今日は響ちゃんにやってもらおうよ!」

響「え、じ、自分か!?」

春香「うん! だって今日は、響ちゃんがこの765プロの主役だもん!」

美希「あ! 春香、それすっごくいい考えだと思うな!」

響「……自分が」

響(自分が、この765プロの……。主役)

美希「ね、いいでしょ? 響?」


響「じゃ、じゃあ……。でも自分、失敗したらごめんな……?」

貴音「大丈夫ですよ、響」

真「失敗したって、誰も気にしやしないよ!」

真美「さあさあ、ぱーっとやっちゃいなYO!」

雪歩「えへへっ、たまにはこういうのもいいね」

千早「さぁ……。我那覇さん、行きましょう」

やよい「響さんっ!」

響「うん。そ、それじゃあみんな、行くぞ?」

響「765プロ、ファイトー!」

一同「おーっ!!!!!!」

~♪SMOKY THRILL♪

~♪Little Match Girl♪

~♪オーバーマスター♪

ワアアアアアァァッ!!!


響(自分を、応援してくれている人)

響(その人たちに、喜んでもらえるような……)


『お兄さん、すごく心配してたんだから』

『最高のライブを見せてよね!』


響「……っ」

~ライブ終盤~

響「みんなー! 今日はライブ、来てくれてありがとーっ!」

ワアアアアアァァッ!!!

響「しっかり盛り上がってくれてるかーっ!?」

オオオオオオオオッ!!!

響「へへっ、大丈夫みたいだな! それじゃあここからは、自分の曲が続くぞ!」

\ひびきー!!!/

響「へへ、ありがとう! ……実は今回、自分、歌いたい曲を二つだけ選ばせてもらったんだ!」

響「これから歌うのが、その2つっ!」

響「でもその前に、ちょっとだけ喋っても、いいかな?」


響「……みんなも知ってると思うけど、自分はここ、沖縄で育ったんだ」

響「父親が居て、母親が居て、そして兄貴が居て。この沖縄の地は、自分にとって特別な土地なんだ」


響兄「……」


響「だから自分、ずっと沖縄の歌を歌いたかったんだ。だから今日は、自分らしくないかもしれないけど、一曲だけ歌わせてもらおうと思う」

響「それが、自分が選んだ一つ目の曲!」

響「自分を育ててくれた沖縄のみんな。そして。……自分を陰ながら見守ってくれている人たちに感謝を込めて」


響兄「……っ」


響「ほんとの歌詞の意味とは違っちゃうかもしれないけど、今の自分の気持ちを一番表してくれている歌詞だと思うから、さ」

響「心を込めて歌います。だから、聴いてください!」

すぅっ

――――――古いアルバムめくり ありがとうって呟いた...♪

――――――いつもいつも胸の中 励ましてくれる人よ...♪


♪♪...涙そうそう...♪♪


P「……」

貴音「……響」

アリサ「響……。うん」

響兄「……!」

春香(響、ちゃん……)

――――――晴れ渡る日も雨の日も 浮かぶあの笑顔...♪

――――――想い出遠く あせても...♪

――――――おもかげ探して よみがえる日は 涙そうそう...♪



響(……バカ兄貴。来てるのかどうかは知んないけど)

響(これが自分の、正直な気持ちだからね)

 
 
あなたの場所から私が


見えたら きっといつか

会えると信じ生きてゆく……♪

 

~~

パチパチパチパチ……

響「……ふぅっ!」

響「あはは、しんみりしちゃってごめんなー! でも自分、この曲には特別な想いがあるからさ」

響「……それが、少しでも届いてくれてれば嬉しいな」

響「さあ! それで、残念だけど次が自分の最後の曲なんだ!」

エエエエエエエエ!!?

響「だけど最後は、自分らしい明るい曲を選んだぞ! 自分のいっちばん大好きな曲さー!」

響「それで自分、今回は少しだけ、スタッフさんやみんなにワガママ言っちゃったんだ。だから今日は、いつもと違うスペシャルバージョン!」

ウオオオオオオオオオ!

響「だからみんな、思いっきり盛り上がってくれよなっ!!」

響「今日のライブが終わっても」

響「みんなの明日が、沖縄のぴっかぴかのお日様みたいにいいものになりますように!」

響「いっくぞー!!!」


P(いよいよか。急遽構成を差し替えた、ラストの曲)

~ライブ前日・レッスンルーム~

P『で、お願いって何なんだ、響?』

響『ライブのトリの曲なんだけどさ。……みんなで歌うように、できないかな、って』

P『みんなで? 響の曲をか?』

響『うん。勿論踊ったりなんてしなくていいし、歌うだけでいいんだ』

響『……いや。何なら歌詞カードを持ったままでもいい』

P『……』

響『ただ、みんなと一緒に自分の曲を歌いたいんだ』

P『みんなと、一緒に……。か』

響『う。やっぱりこんなワガママ……。だめ、かな?』

P『いいぞ』

響『……え? そ、そんなあっさり……?』

P『お前たちのワガママを叶えるのが、俺の仕事だろ』

響「……!』

P『待ってろ、みんなに聞いてくるから』

響『……うん!』


P(おととい、響があの話を切り出してきたときには、ひどく驚かされたもんだ)

P(……だって)

はるちは「」ざっ

ゆきまこ「」ざっ

一同「」ざっ

響(へへ、みんなとこの曲が歌えるなんて、夢みたいだ)

響(あの日、アリサの話を聞いて。どうしてもこの曲を、みんなで歌いたくなっちゃった)すぅ

響(765プロのみんなは。自分にとって、大切な家族だか、ら……!?)

――――――いつだって 微笑んで...♪

――――――歩き出せる 仲間となら...♪

響「っ!!!!!??」

響(お、おかしいぞ!!)


一同「」にやっ

響(な、何で!? どうして!?)

――――――輝いて 見つめて...♪

響(練習だって全然してないはずなのに、どうして!)

――――――今始まる It's a ...♪

♪♪...Brand New Day!...♪♪

響(どうしてみんな、『ダンスまで』完璧に踊れるんだーっ!!?)


P(だって、完全にあいつらの予想通りだったんだから、な)

真(へへっ! 驚いてる驚いてる)

真美(隠れて練習してた甲斐があるってもんだね→!)

千早(少しは役に立てた、ということかしら)

伊織(ま、この伊織ちゃんの貴重な時間を使ってあげたんだもの。思いっきりびっくりしてもらわないとね♪)

やよい(やりましたっ! あ、えーと、ひだり、みーぎ、次にくるくるー)

あずさ(大成功、ねっ!)

貴音(見ていますか、響? 私たちなりの、あなたの故郷への錦、です)

~数ヶ月前・765プロ事務所~

あずさ『亜美ちゃん、何か思いついたのかしら?』

亜美『うん! あのねあのね、こういうのはどうかな?』

雪歩『何か考えがあるの、亜美ちゃん?』

亜美『んっふっふ~、亜美の秘策、そのいち! それは!』

やよい『それは……?』

亜美『ひびきんの曲をみんなで練習するんだよ!』

一同『……?』

雪歩『みんなで、練習?』

真『どういうこと、亜美?』

真美『真美は分かったよ亜美! ひびきんの曲を、みんなでナイショで練習して』

亜美『そうそう! そんで本番でいきなり、ひびきんの後ろからみんなで登場したらさ!』

亜美真美『ひびきん、ぜ~ったい驚くと思うんだよね!』

亜美『曲は「Brand New Day!」がいいんじゃないかな? ひびきんあの曲大好きだし!』

貴音『……』

真美『お、いいね→! ナイショで練習しとくなら、ひびきんが絶対踊る歌じゃないとね!』

亜美『ね、ひびきんにサプライズを仕掛けるってわけ。ど→かな?』

真『面白い! それ、すっごく面白いよ、亜美!』

雪歩『で、でも、私たちにできるかなぁ……』

千早『それに、裏方さんやプロデューサーたちにかかる負担のこともあるわ。万が一、私たちの選択が我那覇さんの思惑と違ってしまったら……』

伊織『そうねぇ。絶対そうなるっていう保証もないし』

貴音『いえ。……保証なら、あります』

~~

P(あのときの貴音の言葉は)

律子(正しかった、ってワケね)

響(む、む、むー!)

響(まさかみんな、自分に隠れて練習してたのか!?)

響(で、でも、いつ……? 自分がこの曲をみんなで歌いたい、って言ったのは昨日の夜なのに!)

響(くっそー、すっかりしてやられたぞ!)

響(……)

響(うがー、こうなったら自分も負けてられないっ!)

響(自分も思いっきり踊ってやる! 生半可な練習じゃ着いて来られないぞ?)

響(着いて来られないようだったら、置いていっちゃうからなっ!!!)にっ


――――――進め 負けない ここから始まる...♪

――――――手と手を繋いで走り出す...♪

美希(あははっ。響、気合が入ってるのが後ろから見てるだけで分かるの)

亜美(最後の曲だもんね。思いっきり飛ばしていってクレタマエっ!)

雪歩(喜んでくれたのはいいけど、と、飛ばしすぎないでね、響ちゃん……)おろおろ


春香(見てますか? お兄さん。これが、響ちゃんの仲間で、これが765プロの響ちゃんです)

春香(私たちは、ちゃんと響ちゃんの背中を押してあげられたかな。そうだと、いいな)

春香(そして、できるならお兄さんも……)


――――――自分達の未来は 負けたり 凹んだりしない...♪

――――――世界が呼んでいるんだから 飛び込んじゃえば 多分All Right!...♪


響兄「……負けたよ、響。本当に、いい人たちに囲まれたんだな」

 
 
――――――みんなが呼んでいるんだから 飛び込んじゃえば 多分All Right!...♪



ワァァァァァァァ......

 
 

~空港~

真「はー、もう沖縄ともお別れかー! 楽しかったなー!」

亜美「う→、結局全然遊んでないよ→!」

真美「まあ、サプライズの練習もしなきゃいけなかったし、ちかたないね」

響「そうだぞ! 全く、自分に黙ってあんなことするなんて! 教えておいてくれればよかったのにー!」

伊織「何言ってるのよ。それじゃサプライズになんないでしょうが」

響「それはそうだけどー! もー!」

真「あはは、まあ何にせよ」

美希「響が元通りになってよかったの」

P「なあ、響。本当にいいのか? ご家族と会わなくて。なんなら今からでも……」

響「プロデューサー? ……ううん、いいんだ」

P「でも、お前」

響「いーの。自分はまだまだ、頑張らなくちゃいけないことがたくさんあるもん」

響「いつか自分が本当のトップアイドルになったときに、胸を張って会いに行くさー!」

P「……そっか」

響「そうそう。だから自分をどーしても家族と会わせたいんなら、プロデューサーがもっと頑張って仕事を持ってきてよね!」

P「……ははっ、言ってくれるな」

響「えへへー」

響「さあ、帰ろうよ! 全国ツアーはまだ、始まったばかりさー!」

P「ああ、そっか。そうだな、まだ、始まったばかりだもんな」

響「へっへー。そうだよ、そんなことも忘れてるなんて、プロデューサーも自分なんかの心配してる場合じゃないぞ?」

響「まだまだ先は長いんだから。自分に心配なんて必要ないから、その分みんなの心配をしてあげるんだなっ!」

P「へえ。なんだ、響は随分と自信あるみたいだな」

響「あったり前だぞ!」

響「なんたって、自分――――――」

響「    、    !」にかっ

 

 

 

~~

「やっと着いた……。もう。東京がこんなに人の多いところだとは思わなかったわ。あんた良くこんなところで暮らしてるわねぇ」

「だから俺は言っただろ、お袋。タクシー拾おうって」

「嫌よ、タクシーなんて勿体無い」

「自分稼いでるから、そのくらい大丈夫なのに……」

「あんたのお金を使うのなら尚更駄目だってば。それより、結構広いところに住んでるのねぇ」

「うん。家族がいっぱい居るからな」

「家族? ……あら、ワンちゃんにネコちゃんに、あらあらあら」

「ちょっと待っててね。ゆっくりできるように、すぐお風呂沸かしてくるから」

「とはいえ、ちょっと散らかってるわねぇ。……あら、これは」

「アルバム? 随分古いな」

「ちょっと見ちゃおうかしら。あ、この写真……」

「……そっか。天海さんが言ってたのは、そういう」

「へ?」

「ううん、何でも」

「……ふふ。それにしても、懐かしいわねぇ」

「2人とも、ご飯は何が……、って、あーーーーーーー!!!」

「あら」

「何勝手に見てるんだよっ!!」

「その辺に置いておく方が悪いんでしょ。……それに、いいじゃない。どれも笑顔の、素敵な写真だし」

「だな。3枚とも、いい写真だ」

「当然だよ! だって、それはどれも自分の」


「大切な、家族だからなっ!」



おわり

沖縄弁は最初からある程度放棄しています、お許しを
ぬーぬーの涙そうそういいよね

遅刻ってレベルじゃありませんが、アニマス再放送記念&響誕生日記念に
ほんの少しでもお付き合いくださった方はありがとうございました
html依頼出してきます

読み返してたらいくつか修正前のが載ってしまっていたので、一応修正

>>58
×響「うん。765プロって事務所に申し込んだら通っちゃって……そのままずっと、向こうにいたんだ」
○響「うん。実は自分、765プロの社長に拾ってもらって……そのままずっと、向こうにいたんだ」

>>70
×響兄「響が本当に1人でやっていけているのかどうか、心配だったんですが。~
○響兄「寂しがり屋の響が本当に1人でやっていけているのかどうか、心配だったんですが。~

>>98


――――――みんなが呼んでいるんだから 飛び込んじゃえば 多分All Right!...♪


ワァァァァァァァ......!



真面目な話は久しぶりに書くので、推敲が足りませんでした
繰り返しになりますが、呼んでいただいた方、レス下さった方は本当にありがとうございました。おやすみなさい

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