勇者「聖剣を引き抜いた戦士が女になった」(15)

【伝説の丘】

ガイド「ここアル! ここが悲劇的伝説のある丘ヨ!」

勇者「へー……」

盗賊「ちょっと、胡散臭くない? 本当かどうかわからないし帰りましょうよ」

戦士「いーじゃん、嘘っぱちでもさ。オレ、こういうの好きだぜ? なんだかワクワクしてくるしさ!」

ガイド「嘘じゃないヨ! 悲劇的伝説聖剣はちゃんとここに実在しているネ!」

魔法使い「どこだ?」

ガイド「あれヨ」

「悲劇的伝説を持つ聖剣!」「誰も抜いたことがない!」「伝説になるのは君だ!」ででーん

勇者「…………」

戦士「……なんだこの立て札?」

盗賊「胡散臭いったりゃありゃしないわね」

ガイド「あ、それ私が立てたヨ!」

戦士「なんで!?」

ガイド「いやー、せっかくの聖剣なのに周りに何もないんじゃ少し寂しいと思てナ。しかしなぜか引き抜きに来る人減ったヨ」

魔法使い「……こりゃあ減るだろ」

戦士「なんかテンション一気に下がった……」

勇者「え、えーとところでこの聖剣にはどんな伝説があるんですか?」

ガイド「おっ、お客さん知りたいカ?」

勇者「い、いちおう……」

盗賊「こんなのほっといてもう帰らない?」

勇者「まーまーまー…」

ガイド「それは昔々のお話ネ……、あるところにいくつもの戦場を駆け抜けた戦乙女が居たそうね」

魔法使い「名前とかは残ってないのか?」

ガイド「残ってないネ」

盗賊「ますます胡散臭い……」

ガイド「な、なにぶん昔々のお話だから名前が残ってないのも仕方ないヨ! ……そして戦乙女はある日突然恋に落ちてしまう!衝撃的!」

魔法使い「なんとなく落ちが読めたな」

ガイド「王子様だとか貴族だったとか説はいろいろあるけども恋する人のために、戦乙女はその人のために魔物か敵国の軍かはわからないけど、とにかく懸命に戦ったアル!」

戦士「ちょー適当だなー」

ガイド「そして戦乙女は幾度の戦場を乗り越えて敵に打ち勝つがやはり身分違いの恋……。結ばれることはなかったそうネ」

勇者「…………」

ガイド「と、そんな悲劇的伝説を持つ戦乙女が悲しみと共にその恋を捨てるために突き立てたのがあの聖剣ヨ!」

戦士「……なんだかなー」

盗賊「……ようするに失恋の剣ってことじゃない!」

魔法使い「確かにな。しかもその話から察するに呪われていてもおかしくないんじゃないか?」

ガイド「そ、そんなことないアルネ!」

戦士「どっちだよ……。なあ勇者、もうこんなの放っておいて帰らな……」

勇者「うっ……ふぐっ……、そ、そんな悲しい伝説があったなんてぇ……ずずっ」

戦士「何泣いてんのお前!? 話の出来は悪かったしどう考えても嘘っぱちだろあんなもん!」

勇者「う、嘘なんですか……?」

ガイド「本当の話ヨ!」

勇者「だって……」

戦士「だって……、じゃねえよ! お前人の話を簡単に信じすぎだろ! つうか泣き所どこにあったよ!?」

盗賊「男の癖にいつまでも泣いてんじゃないわよ、みっともない!」

勇者「……ごめん」

ガイド「私はずっと待ってたネ……、聖剣を引き抜く者の訪れを……。さあ、勇者! 聖剣を見事引き抜いてみせるよろし!」

勇者「はい!」

ガシッ、グイッ!

勇者「……あれ?」

グイッ、グイッ、グイッ

勇者「ぬ、抜けない……」

ガイド「な、なんとぉ!? ゆ、勇者なら引き抜くこと出来ると思てたのに……」

勇者「すみません……」

盗賊「別にあんたが謝ることじゃないでしょ。さ、帰りましょ」

ガイド「ま、待ってアル! 私勇者のお供であるあなた達なら引き抜けると思うヨ!」

戦士「えー……」

勇者「試すだけでいいから、ダメかな?」

戦士「勇者が完全にガイドのおっさんの味方だな」

盗賊「どうする?」

魔法使い「ま、試すだけなら構わんだろう。勇者を選ばなかった聖剣が私達を選ぶとは思えないが」

盗賊「それもそうね。それじゃあ早く終わらせちゃいましょうか」スッ

バチバチッ!

盗賊「いつっ!?」

魔法使い「大丈夫か!?」

ガイド「フッフッフッ、その聖剣は引き抜くことはおろか、触れることも選ばれた者しか出来ないネ」

戦士「そういうことは早く言えや!」スパーン!

ガイド「オウチッ!」

盗賊「ちょっと痺れただけだから大丈夫」

魔法使い「そうか……。しかし、選ばれた者……?」スッ

バチバチッ!

魔法使い「っ! ……私もダメか」

戦士「胡散臭いと思ってたけどなんか本格的だな! よーし、んじゃオレも」スッ

ガシッ

戦士「に、握れた!?」

ガイド「フッ、あなた選ばれた者だったネ。聖剣を握る資格あるおめでとう」

魔法使い「しかしこれはどういった基準で選んでいるんだ……?」

ガイド「私知ってるアルヨ」

魔法使い「そうなのか。なら、どういった基準で選んでいるのか知りたいのだが」

ガイド「聖剣は清らかなる身の者にしか触れないアルヨ」

勇者「清らかなるもの……?」

盗賊「それじゃあ私達は汚れてるって言いたいわけ……?」

ガイド「お、怒らないでヨ! 言い方が悪かったアル、もっと噛み砕いて言うと」

魔法使い「言うと?」

ガイド「童貞と処女しか触れないネ」

魔法使い「なっ……」

盗賊「はあっ!?」

ガイド「つまりお二人はしっぽりした経験があるということネ。お二人付き合ってるカ?」

盗賊「そ、そんなこと……」

魔法使い「付き合っている」

戦士「!?」

盗賊「ちょ、ちょっと!」

魔法使い「いずれバレるだろう。早いうちに告げておくべきだ」

盗賊「そ、そうかもしれないけど……」

ガイド「なんと、お二方本当に付き合っていたとは衝撃的!」

勇者「二人が付き合ってたなんて知らなかったよ。もっと早く教えてくれればよかったのに」

魔法使い「すまない、なかなか踏ん切りがつかなくてな」

勇者「別に隠さなくたってよかったのに。ねえ?」

戦士「あ、あぁ……」

ガイド「元気出すネ! 自分が童貞ということがバレた挙げ句仲間が実はデキてたという事実に落ち込むのはわかるけども……」

戦士「う、うるっせぇよ!」

魔法使い「そ、その、なんというかすまない」

盗賊「私が言うのもなんだけど落ち込まないで、ね…?」

戦士「慰めるなよ! 余計に惨めになるからさあっ!」

勇者「???」

ガイド「戦士さん……」

戦士「なんだよ……?」

ガイド「私、これでも妻子持ちネ」

戦士「なんでこのタイミングで言うんだよぉぉ!?」グイッ

シャキーン!

勇者「聖剣が引き抜かれた!?」

盗賊「このタイミングで!?」

ガイド「お、おぉっ! 私が生きているうちに聖剣が引き抜かれることになろうとは……!」

ピカッ!

戦士「せ、聖剣が輝き始めて……!?」

魔法使い「ぐっ、まぶしっ!」

勇者「戦士ィ!」

戦士「うわぁぁぁぁ!」

ガイド「な、何が起こてるアル!?」

……ィィィン

盗賊「輝きが止まった……」

勇者「戦士、大丈夫か!?」

戦士「お、おう。とりあえず大丈夫だ…」

盗賊「え……」

魔法使い「なんと……」

戦士「ど、どうしたんだよ。オレを見て固まって……」

勇者「君、誰?」

戦士「お、おいおい! 冗談きつ……ん?」

ガイド「やっぱり呪われてたカー! なんたる悲劇!」

戦士「あれ、なんか体がおかしい?」

むにゅ、さわさわさわ……

戦士「……はぁ!?」

盗賊「まさか女になるなんてねー……」

魔法使い(自分が非童貞で本当によかった……!)

戦士「こ、こんなの……嘘だぁぁぁぁっ!」

勇者「えっと?」

ガイド「勇者様、あの女の人が戦士さんということアル」

勇者「……な、なるほど?」

戦士「冷静に説明してんじゃねぇ!」

TSしたところで一区切り。ノシ

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