のび太と『生命の森の戦士たち』 (424)

ミーンミンミンミン…

ジャイアン「うおお!すげぇじゃねえかスネ夫!」

しずか「良いなあ。私も乗ってみたい」

スネ夫「ふふん。そうでしょ?良いだろ?」

のび太「おーい!」タタッ


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【空き地】

のび太「みんなで集まって、どうしたの?」

ジャイアン「スネ夫の奴、この間サファリパークに行ったんだってさ!」

のび太「サファリパーク?」

スネ夫「そう。夏休みはいつも海外に行くんだけど、今年はちょっと趣向を変えてね」

のび太「ふーん…」

スネ夫「どうせのび太はどこにも連れて行って貰えないんだろ?」

スネ夫「この写真を見て、サファリパークに行った気分を味わっても良いぞ?」

ジャイアン「そうだぜ。この写真を見ろよ!凄いぜ!」

ジャイアン「スネ夫がこんな近くでライオンに手渡しで餌付けしてるんだぜ!」

スネ夫「ふふん」

のび太「…スネ夫が車の窓の隙間から、ライオンに餌を投げてるだけだね」

スネ夫「…」

しずか「スネ夫さん、こんなに大きな象に乗ったのよ。羨ましいわよね」

スネ夫「まあね?」

のび太「…象に乗るなんて、別に珍しくないじゃない」

スネ夫「…」

スネ夫「何だよ!折角、のび太にも特別に写真を見せてやったのに!その言い草は!」

のび太「だーって…」

のび太「サファリパークなんて『ただの作り物』じゃないか」

スネ夫「!」

ジャイアン「まあ、確かに」

スネ夫「ジャイアン!」

スネ夫「そこまで言うなら、此処よりもっと凄いサファリパークに行った事でもあるのかよ!」

のび太「ああ、僕が行ったのはもっと『本物』みたいな所だったよ」

スネ夫「ほ、本物みたい?」

のび太「しかも、僕が作った」

しずか「のび太さんが?」

ジャイアン「やるじゃねえか!」

スネ夫「!」

のび太「えーっと『アフリカ園』…『のび太アフリカ園』って言ってね」

スネ夫「…今、考えたみたいだったけど?」

のび太「え?き、気の性じゃないかな?」

スネ夫「本当に作ったのか?どんな動物がいるんだよ?」

のび太「え?色々…」

スネ夫「ライオンは?象は?ゴリラは?」

のび太「いるってば!」

ジャイアン「そんなに凄い所なら、俺達も連れてけよ」

のび太「え?!」

しずか「そうね。のび太さんがそこまで言う場所なんですもの。きっととっても面白い場所なんでしょうね」

のび太「あ…うん。まあ…」

ジャイアン「じゃあ、早速これから…」

のび太「ちょっと待って!」

ジャイアン「何だよ?」

スネ夫「何か不都合な事でもあるのかよ?」

のび太「そういう訳じゃないけど…」

のび太「あ、そう…準備!みんなを持て成せるように、準備をしなくっちゃいけないから」

スネ夫「ふうん…」

しずか「そうなの?」

ジャイアン「じゃあ、いつだよ?」

のび太「はは、いつになるかなあ?」

ジャイアン「…のーびー太ー」ゴゴゴ…

ジャイアン「俺様を待たせようとは、いい度胸だなぁ」ゴゴゴ…

のび太「あ、明日です!」

のび太「明日、みんなを招待するよ!」

しずか「本当?!」

スネ夫「約束だぞ?」

のび太「は…はは…じゃあ、早速家に帰って準備をしてくるから!」タタッ

スネ夫「絶対だぞー!」

【のび太の部屋】

ガラッ

ドラえもん「あ、お帰り、のび太君」

のび太「…」

ドラえもん「随分、早かったじゃないか?」

のび太「…」

ドラえもん「……のび太君?」









のび太「…うぅ……ドラえもーん!!」


ドラえもん のび太と

『生命(いのち)の森の戦士たち』







ドラえもん「なるほど」

ドラえもん「スネ夫がサファリパークに行ったのをみんなの前で自慢していて、しずかちゃんも羨ましがるから、つい見栄を張って嘘をついた、と」

のび太「だってぇ」

ドラえもん「だってじゃないよ」

のび太「アフリカ園を作れる道具、出してよ!」

ドラえもん「そう簡単に言われてもね」

ドラえもん「ライオンや象やゴリラを沢山飼う土地はどうするの?」

ドラえもん「その動物達の餌代は?」

のび太「……」

ドラえもん「第一、君。夏休みの宿題だって一つも終わってないのに、そんな夢みたいな事言ってさ」

のび太「失敬な!一つは終わってるよ!」

ドラえもん「へえ?珍しい」

ドラえもん「ちなみに何の宿題?」

のび太「作文だよ。『将来の夢』について」

ドラえもん「どれどれ、見せてごらん」

のび太「はい」バサッ

ドラえもん「…これは」

ドラえもん「…『僕の将来の夢は、枕研究家です』」

ドラえもん「『色んな枕を寝比べて、ずっと寝て過ごしたいです』…て、そんな職業ある訳ないだろ!」

のび太「やっぱり?」

ドラえもん「これは夏休みの宿題だぞ!もっと真面目に考えろ!」

のび太「じゃあ、他に寝るだけの仕事はないの?」

ドラえもん「ある訳ないだろ。もう…」

のび太「じゃあ、僕は将来何になればいいのさ?」

ドラえもん「いつもそうやって僕に頼らずに、たまには自分で考えろよ!」

のび太「考えるって言っても…」

ドラえもん「全く」

のび太「あ!閃いたぞ!」

のび太「僕は、『アフリカ園』の園長になる!これなら一石二鳥じゃない?」

ドラえもん「でもその肝心の『アフリカ園』はどうするのさ?」

のび太「それも思い付いたよ!『アフリカ園』はアフリカに作れば良いよ!」

のび太「そうしたら、動物はいっぱいいるし、土地も餌も困らないもの」

ドラえもん「!」

のび太「どこでもドアでアフリカに繋げて、きび団子で沢山動物を手懐けたら、『のび太アフリカ園』の完成だ!」

のび太「これなら、文句ないだろ?」

ドラえもん「…ない」

ドラえもん「どうしてそういった悪知恵を他の事に使えないのかな…」ボソッ

のび太「なあに?」

ドラえもん「いや、何でもない」

のび太「じゃあ、早速」

ドラえもん「分かったよ」ゴソゴソ

ドラえもん「『どこでもドア』」

続きは明日にします。

元ネタはドラえもんの話にある『ターザンパンツ』です。

オリジナル大長編みたいな感じ?

>>26

そんな感じ。

でもパロディ含んでるし、オリジナルでもないです。

【アフリカ・広原】

のび太「うわあ…」

ドラえもん「わあ…」

ドラえもん「あそこで象達が水浴びしてる」

のび太「向こうにはライオンもいるよ」

ドラえもん「やっぱり本物は違うな」

のび太「だろ?」

のび太「じゃあ、早速…ここに『のび太アフリカ園』の看板を設置しよう」

ドラえもん「…板に書いて持って来たのか。相変わらず、汚い字」

のび太「ほっとけ!」

のび太「よし、この木に取り付けよう…」

ピピーッ!!

のび太・ドラえもん「?!」

ブウウウン…ガチャッ

監視員「×□!▽×□▽◎×□○!」ピピーッ

のび太「はわわ、決して怪しい者では…ドラえもん!『翻訳こんにゃく』」

ドラえもん「ちょっと待って!えっと…やった!直ぐに見つかった!」

監視員「もしかして日本人?」

のび太「え?」

ドラえもん「日本語?」

監視員「学校で習ったから、少しなら話せるよ。こんな所で何してたの?」

のび太「その、僕ら『アフリカ園』を作ろうと思って」

ドラえもん「そ、そうなんです!」

監視員「アフリカ園?」

監視員「残念。此処には『アフリカ園』は作れない」

のび太「ええ?!どうして!」

監視員「此処は『国立公園』として、保護されている場所なんだ」

のび太「でも何処にも柵なんか…」

監視員「あるよ。ずーっと向こうに。この公園はとても広いんだ」

ドラえもん「えっと、あなたは公園の係の人なんですか?」

監視員「この国立公園をボランティアで見回っている『監視員』だよ」

のび太「公園をどうして見回らなくちゃいけないの?」

監視員「それはね…」

監視員「悪い人達がこの公園に忍び込んで、此処の動物に酷い事をするからさ」

のび太「酷い事って?」

監視員「…牙や毛皮が欲しくて襲ったり、珍しいペットとして売る為に誘拐したり、ね」

のび太「そんな!可哀想だよ!」

ドラえもん「許せないな!」

監視員「だろ?」

監視員「だから、こうやって見回って悪い人や…」

監視員「勝手に『アフリカ園』を作る子供がいないか、目を光らせてるのさ」

のび太「う…知らなかったんです。国立公園なんて」

ドラえもん「誰かの持ち物なんて、思ってもみなかったから」

監視員「そんな所だろうとは思ったけどね」

のび太「どこかに誰の物でもない土地はないですか?」

監視員「今時、ここいらはみんな『誰か』の土地だよ」

のび太「そんな」

ドラえもん「仕方ない。のび太君、諦めよう?」

のび太「でも…みんなと約束しちゃったし」

監視員「…」

監視員「…まあ、100年前なら別だろうけど」

のび太「100年前?」

監視員「今はこの辺りは草原で、森は向こうにしかないだろ?」

監視員「でも100年前には『生命(いのち)の森』と呼ばれたジャングルが此処まで広がっていたんだ」

ドラえもん「どうして今はないんですか?」

監視員「人間が伐採したり…火災もあったみたいでね」

監視員「<<『生命の森』は誰の物でもなかった。人間も動物も、分け隔てなく『生命の森』から恩恵を受けて、共に平和に暮らしていた>>なんて、聞いた事があってね」

監視員「いつか元の『生命の森』に戻す為に、私達はみんなで森の回復を手助けしているんだ」

ドラえもん「そうなんですか。早く元の森に戻せると良いですね」

のび太「…100年前か」

【のび太の部屋】

ドラえもん「という訳だし、今回は諦めよう。スネ夫達には僕も一緒に謝るから」

のび太「100年前だよ!」

ドラえもん「!」

のび太「さっき、100年前は誰の物でもなかったって言ってたよ!」

のび太「『生命の森』の一部をちょこっと借りれば良いじゃないか」

ドラえもん「でも…なるほど、タイムマシンか!」

のび太「ああ、タイムマシンさ!」

のび太「100年前に『のび太アフリカ園』を作ろう!」

ドラえもん「名案だね!しかも100年前ならもっと動物がいるかもしれないよ!」

のび太「うん!スネ夫達を驚かせるような、凄い『アフリカ園』を作ろう!」







【アフリカ・広原】

-100年前-

のび太「よっと…何だか今とそんなに変わらないようだけど…」

ドラえもん「本当だ…いや、あれを見ろ!」

のび太「あ!」

のび太「大きな森!」

ドラえもん「これが、あの監視員さんが言ってた『生命の森』なんだね」

のび太「…凄いね」

ドラえもん「じゃあ、早速…『タケコプター』と『もも太郎印のきび団子』!」

のび太「一袋だけ?もう少しあった方が良いんじゃない?」

ドラえもん「それしかないよ」

のび太「ちぇっ、景気悪いな」

ドラえもん「それに今ポケットの調子も悪いから、念の為、道具も余りいれてないんだよ」

のび太「そうなの?通りでさっきは直ぐに道具を見付けた訳だよ」

のび太「じゃあ、タケコプターをつけて…よしっ」

のび太「色んな動物が集まるように、ジャングル中に撒くぞー!」

ドラえもん「おー!」

ビューンッ!










ゴロゴロ…

-翌日-

ピンポーン

ジャイアン「のーびー太ーくーん!」

……ドンッ

ドタドタドタドタ…バタンッ

のび太「は、早かったね…」

しずか「ごめんなさい。つい、楽しみにしてたから…」

のび太「あ、いや良いんだけど…」

ジャイアン「準備は出来たんだよな?」

スネ夫「ちゃんと作ってあるんだよな?」

のび太「もう!大丈夫だよ!」

【野比家】

ジャイアン「おっじゃまっしまーす」

ガラッ

たま子「あら、皆さん。お揃いで…」

しずか「お邪魔します」

スネ夫「朝から大勢で押し掛けてしまってすみません。今日はみんなで宿題をする事にしてたんです」

たま子「まあ!」

のび太「そういう訳だから、部屋には来ないでね」

たま子「はいはい、大変でしょうけど頑張ってね?」ニコニコ

のび太「絶対、部屋には来ないでね!」タタタッ

【のび太の部屋】

ドラえもん「みんな、いらっしゃい」

ジャイアン「で?『アフリカ園』はどこにあるんだよ?」

のび太「慌てないでくれよ。今からみんなで移動するんだから」

ドラえもん「そうそう。これでね」

スネ夫「タイムマシン?」

ドラえもん「では、皆さま方。タイムマシンにお乗り下さいませ」

のび太「お乗りの際は足元にご注意ください」

ジャイアン「うわっ、何だよ。気持ち悪ぃな」

スネ夫「急に畏まったりなんかして…」

しずか「あ、そう言えば持て成してくれるって言ってたものね」

ドラえもん「ふふふ、そうそう」

のび太「そう言う事」

ジャイアン「そう言う事かよ…よっと」ピョン…ドシンッ

スネ夫「よっ」ピョン…ストッ

しずか「よいしょ…」ストッ

のび太「じゃあ、僕も…よっこいせ」ストッ

【タイムホール】

しずか「ねえ、行き先は?」

ドラえもん「行き先は、100年前のアフリカだよ」

ドラえもん「さあ、出発だ!」







しずか「きゃあ!」

ガタッ

スネ夫「うわ!」

ジャイアン「あっぶねえな!ドラえもん!」

ガタガタ…

スネ夫「何が、持て成すだよ!」

ジャイアン「もっと丁寧に運転しろよ!」

ドラえもん「やってるよ!時空乱流が発生しているんだ!仕方がないだろ!」

のび太「時空乱流?」

ドラえもん「タイムホールに時々発生する嵐だよ」

しずか「時空乱流に落ちたら、どうなるの?」

ドラえもん「大変だよ。亜空間の中をずっと漂う事になる」

のび太「それだけ?」

ドラえもん「それだけって事はないよ!想像してご覧。上も下も右も左もない空間に自分一人だけの所を!」

のび太「!」

ドラえもん「運が良かったら、外に出られるかもしれないけど、それでもどこかの場所・時代に飛ばされるかは誰にも分からない」

ドラえもん「…これ以上、嵐が酷くなるようなら、一旦引き返す方が良いかも」

のび太「…その方が良いなら」

スネ夫「そんな事言って、やっぱり本当は『アフリカ園』の準備が出来てないんじゃないか?」

のび太「な!違うよ!」

スネ夫「どうだか?」

のび太「本当に、作ったんだって!」

しずか「…でももう直ぐなのよね?」

ドラえもん「うん」

ジャイアン「だったら、とっとと『アフリカ園』に行こうぜ!」

ドラえもん「うん!分かった!」

ドラえもん「みんな!しっかり掴まっててね!」

ビューンッ!!

【アフリカ・広原】

-100年前-

ジャイアン「おお…」

スネ夫「…」

しずか「…素敵」

ドラえもん「ふふ…」

ドラえもん「では、ウェルカムドリンクをどうぞ」

しずか「ありがとう。凄い森ね!」

ジャイアン「本当に本物みたいだな!」

スネ夫「だろうね。だって此処は本物のアフリカだもの」

ジャイアン「考えたじゃねぇか、のび太!」

しずか「…のび太さん?」

のび太「…」

のび太「う…うえっ…気持ち悪い」

ドラえもん「…酔っちゃったみたい」

ジャイアン「だらしない奴」

のび太「コホンッ…仕切り直して『のび太アフリカ園』へようこそ!」

スネ夫「ところで、動物は一体どこにいるの?」

のび太「今、呼ぶよ…おーい!みんなー!」

ガサガサ…

のび太「ほら!来た!」

ガサガサ…

パオオオ!

しずか「可愛い!この子象に触っても良い?」

のび太「どうぞ」

ジャイアン「じゃあ、俺も」

ジャイアン「あはは…くすぐったい。こいつ、人懐っこいな」

スネ夫「…」

スネ夫「まさか、これだけって訳じゃないよな?」

のび太「も、もちろん」

ドラえもん「…」

-30分後-

ジャイアン「…飽きたな?」

しずか「そうね。子象ちゃんは可愛いけど」

パオオ?

スネ夫「ほら?いつ、他の動物が来るんだよ?」

のび太「それは…」

ジャイアン「おい、のび太。子供の象だけじゃ、アフリカ園とは言えないぞ」

スネ夫「そうだそうだ!」

のび太「分かったよ…ちょっと待ってて」

ドラえもん「もしかしたら迷ってるのかもしれねよ…」コソッ

のび太「うん。探しに行こう」コソッ

【上空】

のび太「おーい!みんなーおいでよー」

ドラえもん「おかしいな?あんなに、きび団子を撒いたのに…」

ドラえもん「……あー!!」

のび太「何だよ!ビックリするじゃないか!」

ドラえもん「分かったよ!きび団子はあの子象しか食べてないんだ!」

のび太「何だって?!」

ドラえもん「他のきび団子は多分、雨で流されたんだよ!」

のび太「昨日は雨なんか降ってなかったじゃないか」

ドラえもん「僕らが帰ったから降ったんだよ。ほら、向こうの川を見て。濁ってて、とても流れが早いじゃないか」

のび太「本当だ」

のび太「どうしよう?困った事になったぞ」

ドラえもん「きび団子ももうないし…」

のび太「何か他の道具ないの?」

ドラえもん「他の道具ねえ…あった!」

ドラえもん「『ターザンパンツ』」

のび太「何それ?」

ドラえもん「この『ターザンパンツ』を履くと、動物と会話が出来るようになって、『あーあーあー』と雄叫びをあげると、動物を集められるんだ」

ドラえもん「おまけにターザンみたいに怪力になって、運動神経も良くなる」

のび太「へえ!ちょっと貸してみて!」

のび太「着替えたよ!さあ、動物を呼んでみよう」

ドラえもん「待って、最初にどんな動物を呼ぶの?」

のび太「そうだね…折角だから、ライオンがいいな」

ドラえもん「じゃあ、ライオンを呼ぶ雄叫びは…『あーあーあー』だよ」

のび太「ふうん。ワシだと?」

ドラえもん「『あーあーあー』」

のび太「…」

のび太「何が違うの?」

ドラえもん「全然違うじゃないか?」

のび太「うーん…分からないけど、取り敢えずやってみようか…」

【アフリカ・広原】

しずか「…遅いわね」

ジャイアン「俺様達を放っといて、何やってるんだ」

スネ夫「…」

スネ夫「ねえ、どうせ暇だし…あそこのジャングルを探検に行かない?」

ジャイアン「いいな。面白そうじゃねえか」

しずか「でも危険じゃない?」

スネ夫「大丈夫だって、余り奥には行かないし…僕らにはこいつがいるんだから」

パオオ?

ジャイアン「それに、俺もいるしな」

【ジャングル】

がさ…がさ…

スネ夫「凄いな…見た事のない植物がいっぱいだ」

ジャイアン「うおお!俺様の野生の血が騒ぐぜ!」

しずか「まあ、何て綺麗な蝶…」

ジャイアン「ライオンはどこだ!俺様も餌付けしてみたいぜ」

スネ夫「多分、ジャングルにはいないよ。それにライオンに会ったら、餌付けどころか、餌になっちゃうよ」ボソッ

スネ夫「あ、そうだ!」

スネ夫「『のび太アフリカ園』何かじゃなくて、此処に『スネ夫アフリカ園』を作ろうよ」

ジャイアン「何言ってるんだ。どう考えても『ジャイアンアフリカ園』の方が良いだろ?」

スネ夫「え?でも…」

ジャイアン「何か文句あっか?」

スネ夫「いや!『ジャイアンアフリカ園』で良いよ!」

しずか「あ、蝶さん待って…」

がさ…がさ…

しずか「まあ、沢山の蝶々…あら?みんなお友達なのね、うふふ」

しずか「こんなに素敵なお花畑に案内してくれてありがとうね…」

しずか「よーし。折角だから、これで花冠を作りましょう♪」

しずか「ふふーん♪ふふふーん♪」

がさがさ…

しずか「ふーん♪出ー来た。子象ちゃんの分も合わせて、後5つ作らなくちゃ」

がさがさ…

しずか「ん?何か物音が」クルッ

少年「…」

しずか「!」

しずか(同い年くらいの男の子?どうしたのかしら、こっちをじいっと見ているけど)

少年「…」

しずか「…なあに?」

少年「!!」

バッ…がさがさがさ…

しずか「あら?行っちゃった。何だったのかしら?」

パオオオ!

しずか「!」

パオオオ!!

しずか「たけしさん、スネ夫さん!どうしたの?」タタッ

スネ夫「分からないよ。急に子象が暴れ出して…」

ジャイアン「こら、大人しくしろ…あ、待て!何で急に走り出すんだよ!」

ダダダダダダッ

ジャイアン「くそ!象の癖に足が速いぞ!」タタタッ

スネ夫「待てよ!そんなに奥まで行ったら…」タタタッ

がさがさがさがさ…がさっ

しずか「きゃっ…危ない!」ピタッ

ゴオオオオオ…

しずか「茂みの向こうに川があったなんて…」

スネ夫「しかも…結構流れが早いぞ」

パオオオ!!

スネ夫「あ!あの、川の向こうにいるのって…」

ジャイアン「ゴリラだ!」

ジャイアン「川の向こうで、子供のゴリラがハイエナに追いかけられてる!」

スネ夫「危ないぞ!何で木に逃げないんだよ!」

しずか「怪我してるみたいよ!」

パオオ!パオオ!

ジャイアン「おい!象、止せ!危ないぞ!」

しずか「川に入ったら、流されちゃうわ!きゃああっ!」ドンッ

パオオオ!!

↑訂正

ジャイアン「川の向こうで、子供のゴリラがハイエナに追いかけられてる!」

スネ夫「危ないぞ!何で木に逃げないんだよ!」

しずか「怪我してるみたいよ!」

パオオ!パオオ!

ジャイアン「おい!象、止せ!危ないぞ!」

しずか「川に入ったら、流されちゃうわ!」

パオオオオオ!!!!

【上空】

のび太「いくよ。『あー…」

パオオオオオ!!!!

のび太「!」

ドラえもん「今の鳴き声って、もしかしてあの子象の…」

のび太「『危ない!』って言ってた!」

ドラえもん「しかもジャングルの中から聞こえたよ!」

のび太「行こう!」

【ジャングル】

のび太「ああ、もう…木を避けながらタケコプターで飛ぶんじゃ遅いよ…」ヒューン

ドラえもん「あ、のび太君!ターザンパンツを履いてるじゃないか!今の君なら、ターザンのようにツタを伝って、しずかちゃん達の元へ行けるぞ!」

のび太「そうか!よしっ…」がしっ

のび太「みんな!無事でいてくれよ!」ヒュンッ

のび太「思ったより、結構奥にいるみたいだ…」ヒュンッ

のび太「象以外の動物の悲鳴…それに水流の音がする…」

がさっ

のび太「しずかちゃん!」シュタッ

しずか「のび太さん!」

しずか「川の向こうでゴリラが、ハイエナに追いかけられてるの…」

子象「トントン!早く逃げるんだ!」

子ゴリラ「逃げられるなら、とっくに逃げてるよー!」

のび太「え?君達、知り合いなの?」

子象「僕の言ってる事が分かるの?」

のび太「分かるよ。ターザンパンツを履いてるからね」

スネ夫「ターザンパンツ?」

のび太「これを履けば、動物と会話も出来るし、ターザンみたいな運動神経になる!」

ジャイアン「すげえな。後で俺にも貸せよ」

子象「それより、トントンを助けて!僕の友達なんだ!」

スネ夫「あ!ゴリラが水際に追い詰められたぞ!」

子ゴリラ「う…」

ハイエナ「くくく…残念だったな。いつもならまだしも、昨日の雨のお陰で流れが早い…それにその怪我だ。川に飛び込んだら命はないだろう」

ハイエナ「大人しく、俺の腹に納まるといい!」タタッ

子象「トントーン!」

トントン「!」

ざっぱーん!

ハイエナ「何だと…」

ジャイアン「あのゴリラ!川に飛び込んだぞ!」

子ゴリラ「げほっごぽっ」バシャバシャ

スネ夫「溺れてるよ!」

しずか「のび太さん!」

子象「トントンを助けて!」

のび太「お安いご用さ!」

ざっぱーん

子ゴリラ「ごぽっ…うっ…」

子ゴリラ「もう…駄目だ…母ちゃん…姉ちゃん…」ブクブク…

ざぱーっ

のび太「諦めちゃ駄目だ!」ガシッ

子ゴリラ「!」

しずか「のび太さん!頑張ってー!」

ジャイアン「その調子だー!」

スネ夫「そのままこっちの岸まで泳いでくるんだー!」

子象「トントン!頑張れー!」

のび太「そうは言っても…これは本当に流れが急だ…」

ジャイアン「もうっちょっとだ!」

しずか「あと少しよ!」

のび太「う…あと一息ぃ…」

ドドドドド…

スネ夫「あ!危ない!!」

子象「流木だあ!」

のび太・子ゴリラ「!」

ガツーン!

のび太「」クラクラ…

しずか「のび太さん?!」

ジャイアン「起きろ!のび太!」タタタッ

スネ夫「目を覚ませー!!」タタタッ

ゴオオオオオ…

ジャイアン「…クソッ!流れが早くて追い付けない!」

しずか「はあ…はあ……のび太さーん!!」

ゴオオオオオ…

のび太「…」

続きは明日にします。

-数分後-

ドラえもん「はあはあ…やっと追い付いた…あれ?のび太君は?」

ジャイアン「遅い!」

スネ夫「のび太なら、川に流されちゃったんだよ!」

ドラえもん「何だって?!」

しずか「お願いドラちゃん!のび太さんを助けて!」

スネ夫「早く何か道具を出して!」

ジャイアン「そうだ!『取り寄せバック』だ!それで早くのび太を…」

ドラえもん「…ないんだ」

スネ夫「な、」

ジャイアン「ん、」

しずか「ですって?!」

ジャイアン「ないって、どういう事だよ!!」

ドラえもん「実は、今ポケットの調子が悪くて…余り道具を入れてないんだ」

ジャイアン「調子が悪いって、そんな時にどうして『アフリカ園』なんて来ようとするんだよ!」

ドラえもん「今更そんな事言ったって!仕方がないだろ!」

スネ夫「どこでもドアで先回りしよう!」

ドラえもん「この川はこの先、幾つもの川に分かれてる…」

ドラえもん「他の早い流れの川とも合流してるから、水流の早さも変わらないし」

しずか「じゃあ、尚更早くのび太さんを助けに行かなくちゃ」

しずか「タケコプターで手分けして探しに行きましょう!」

ドラえもん「うん」

パオオオ!

ゴオオオオオ…

ドラえもん「のび太くーん!」

しずか「のび太さーん!」

ゴオオオオオ…

ジャイアン「のっび太ー!!」

スネ夫「のび太ーどこだー!」







がさがさ…

ジャイアン「ん!」

がさがさ…

ジャイアン「の…」

ジャイアン「のび太!」ガシッ

サル「キキーッ?!」ガリッ

ジャイアン「ぎゃあっ」

スネ夫「ジャイアン!大丈夫ぶ?!」

ジャイアン「いてて…のび太じゃなくて、メガネザルだった…」

ドラえもん「おーい!」

ドラえもん「そっちはどう?」

スネ夫「見つからないよ」

ジャイアン「何でこんなに川が分かれてるんだよ…」

ドラえもん「のび太君、本当にどこ行っちゃったんだよ…」

ゲエェ…ゲエェ…

一同「?!」

スネ夫「な、なに今の不気味な声…」

ドラえもん「動物の鳴き声じゃないかな?ジャングルの動物は基本的に夜行性だし」

しずか「そう言えば何だか、暗くなってきたわね…」

ドラえもん「これ以上、探すのは危険だよ」

ジャイアン「…」

ジャイアン「分かった」

スネ夫「…そうだね。のび太は心配だけど、夜のジャングルは危ないもんね」

ジャイアン「俺一人で探しに行ってくる」

スネ夫「!」

ドラえもん「無茶だよ!道具もろくにないんだから!」

ジャイアン「俺が『アフリカ園』に連れてけなんか言わなければ、こんな事にはならなかった」

しずか「そんな…たけしさんの所為じゃ…」

スネ夫「ぐ…」

スネ夫「ぼ、僕も探しに行くよ!」

スネ夫「それを言うなら、のび太を挑発したのも、ジャングル探検に誘ったのも、僕だ!」

ジャイアン「スネ夫…」

ドラえもん「だから駄目だよ!二人とも!危険だ!」

ジャイアン「なら危険な所に、のび太一人放っとけるかよ!」

ドラえもん「そ、それは…」

しずか「心配なのは、ドラちゃんも一緒よ」

しずか「…のび太さんはドラちゃんの道具も持ってるし…私達が行ったら、逆に足手まといになっちゃうかも」

ドラえもん「そう。今ののび太君はターザンパンツを履いてるから、ずっと強いし、いざとなればツタを伝って逃げられるしね」

ジャイアン「…」

スネ夫「…」

しずか「のび太さんは大丈夫よ。悪運だけは人一倍、強いんだから」

ジャイアン「…そうだな」

スネ夫「うん。のび太は本当にビックリする程しぶといからな」

ドラえもん「もしかしたら自力で帰って来るかもしれないものね」

しずか「やっぱり、そうよね?」

【ジャングル・広原】

ドラえもん「じゃあ、のび太君が戻り易いように目印代わりにもなる…」ゴソゴソ

ドラえもん「『キャンピングカプセル』」

トン…ぐ…ぐぐぐぐ…

ドラえもん「はい。皆さん、中へどうぞ」ガチャ

ジャイアン「俺、この一番デカイ部屋!」

スネ夫「じゃあ、僕は二番目に大きな部屋!」

しずか「私はこっちで…」

ドラえもん「象君もどうぞ」

パオオ♪

ドラえもん「あ、食事はどうする?」

しずか「私は…先にシャワーを浴びてくるわ」

ドラえもん「分かったよ」

【しずかの部屋】

バタンッ

しずか「…のび太さん」









しずか「どうか…無事でいて」

【野比家】

ミーンミンミンミン…

たま子「のびちゃーん!」

たま子「のびちゃん、今から買い物に行くんだけど、何か食べたい物とか…」

ガラッ

たま子「…のび太?ドラちゃん?」

しーん…

たま子「!」

たま子「どういう事?誰もいないじゃない!」キョロキョロ

たま子「夏休みの宿題するとか言っておいて…遊びに行ったのね…」ゴゴゴ…

たま子「帰って来たら、容赦しないんだから!」

【急流】

ゴオオオオオ…

のび太「」ブクブク…

トントン「人間!」ガシッ

のび太「…」

トントン「気を失ってる…」

トントン「さっきの流木に掴まってと…いでで…怪我した所がまだ痛む…」

トントン「…はあ、流れが収まるまで…これ以上何もなければ良いけど」

のび太「…」

トントン「…それまで頑張ろうな。人間」

~~~~~~~~~~

しずか「きゃあ!誰か助けてー!」

のび太「今行くぞ!」シュタッ

のび太「我こそは!ジャングルの王者、ターザンのび太だ!」

悪人「訳の分からない事を…」

悪人「やっちまえ!」

のび太「来い!」

ボカ!スカ!

のび太「どうだ!参ったか!」

悪人「うへえ…参りました」

悪人「二度と悪い事はしません…」

のび太「なら、許す」

ジャイアン「すげえ!流石のび太!」

スネ夫「いつ見ても、痺れるねえ!」

のび太「ふふん…どんなもんだい!」

しずか「のび太さん、素敵!結婚して!」だきっ

のび太「うへへ」///

しずか「だけど…」

のび太「ん?」

しずか「のび太さんにはもう決まった結婚相手がいるのよね…」スッ…

のび太「え?結婚相手?」

トントン「いやあ!これはおいらの恩人のび太じゃないか!」

のび太「あ、あの時の…子供のゴリラ?」

トントン「お礼においらの姉ちゃんと、結婚さしたげるよ!」

のび太「君の…お姉ちゃん?」

トントン「ほら、姉ちゃんだよ!」

???「…」

のび太「?」

メスゴリラ「うっほ!うっほ!」

のび太「ひいい?!」

トントン「わあ、姉ちゃんも気に入ったって!」

のび太「い、いやだ…いやだあ!しずかちゃーん!」

↑訂正

メスゴリラ「うっほ!うっほ!」

のび太「ひいい?!」

トントン「わあ、姉ちゃんも気に入ったって!」

のび太「い、いやだ…いやだあ!しずかちゃーん!」

~~~~~~~~~~

のび太「いやだああ!」がばっ

???「!」ビクッ

のび太「はあ…はあ…夢?良かった…」

のび太「…あれ?僕溺れたんじゃ…」

???「う…うぅ!」

のび太「ん?」

???「うぅぅ…」

のび太(可愛い女の子だ!)

???「うぅ!がぅ!!」

のび太「ん?何て言ってんの?」

バッ!

トントン「うっほ!うぅ!」

???「うぅ?がうう!」

トントン「うぅ!!」

のび太(女の子と、子供のゴリラが言い争ってる?)

のび太「…あれ?」

のび太「おっかしいな…ターザンパンツを履いてるから、動物の言葉が分かる筈なのに…」

トントン「うほ!う……違うんだって、うっほ…姉ちゃん!」

???「何が違うって言うの?うぅ…お前、怪我してるじゃない!」

トントン「ちょっと罠にかかっちゃっただけ!」

???「罠って…やっぱり人間に何かされたんじゃないか!」

トントン「だーかーらー!」

のび太(あ!今度は何言ってるか、分かるぞ!)

トントン「おいらが溺れそうになった時、川に飛び込んで助けてくれたんだよ!」

???「…この人間が?」

トントン「そうだよ!だから、姉ちゃん」

のび太「姉ちゃん?!」

???「!」

???「この人間…私達の言葉が分かるの?」

トントン「そうなんだ…多分、この人間は普通の人間とは違うんだよ」

???「…」

トントン「ありがとう。助かったよ、人間。おいらは『トントン』」

のび太「僕は、野比のび太」

トントン「のびのびた?」

のび太「のび太でいいよ」

トントン「あっちで怖い顔してるのは、おいらの姉ちゃんで『タア』」

のび太「姉ちゃん?でも、あの子はどう見ても人間じゃない?」

トントン「あ…それは…」

タア「私のどこが人間だって?」ギロッ

のび太「!」

トントン「…言っちゃいけない言葉なのに」ボソッ

タア「弟を助けてくれた事には感謝する。しかし、私の事を二度と人間なんて言うな!」

のび太「わ、分かった…ごめんよ」

タア「…ふん!」

トントン「のび太。姉ちゃんがごめんな」

のび太「ううん…」

トントン「のび太、もし良かったら家に来ない?助けてくれたお礼がしたいんだ」

のび太「でもそろそろ戻らなくちゃ…友達も心配してると思うし…」

トントン「戻るって…もしかしておいら達が流された辺り?」

のび太「うん…そうだけど」

トントン「あの、大きな枯れ木分かる?」

のび太「ちょっと不気味な奴?」

トントン「そうそう」

トントン「おいら達が流された辺りは、枯れ木よりもずっと遠くだよ」

のび太「ええ!僕達よく無事だったね」

トントン「本当だよ」

トントン「それにもう直ぐ暗くなる。夜の森は危険だし、うちで朝を待った方が良いんじゃないか?」

のび太「大丈夫。僕にはこのパンツがあるからね」

トントン「パンツー?」

のび太「これは只のパンツじゃなくて『ターザンパンツ』って言ってね。本物のターザンみたいな怪力が出せたり、今みたいに動物と会話も出来るんだ」

トントン「ふーん」

のび太「だからツタからツタをひょいひょいっと伝えば、日暮れまでには戻れるさ」

のび太「見てて?このツタを掴んで、向こう岸に行くよ?せーの…よっ」

つるっ…ぼちゃん!

のび太「あっぷ!溺れる!助けて!」

トントン「此処、足がつくぞ?」

のび太「あ…本当だ」

タア「…」

ばしゃばしゃ…

のび太(おかしいな?さっきは上手くツタを伝えたのに…)

トントン「あ!何そのパンツ!おっかしいの!」

のび太「?」

トントン「お尻の所に穴があいてるぜ!」

のび太「ええ?!」

のび太「あ!見ないで!」

タア「…何を今更」

のび太「うぅ…通りでターザンパンツの調子が悪い訳だ。ターザンパンツの下に履いてたパンツにまで穴があいてる…」

トントン「戻れないんなら、やっぱり家に泊まった方が良いみたいだな」

のび太「良いの?」

トントン「良いよな、姉ちゃん?」

タア「…」

タア「人間を、私達の縄張りに入れるのは賛成できない」

タア「でも、トントンの命の恩人を無下にするつもりもない」

トントン「やったあ!」

のび太「そこって、遠いの?」

トントン「そんなに遠くないさ。ほら、のび太行くぞ!」

のび太「待って…」

トントン「あ、お尻を手で隠しながら歩いてると、転べば顔から…」

こけっ…べちゃっ

トントン「言わんこっちゃない」

トントン「別に良いじゃないか。お尻の一つや二つ」

のび太「女の子もいるんだから、そういう訳にはいかないよ!」

タア「…はあ」ちらっ

ぶちっ

タア「はい」

のび太「これは…葉っぱ?」

タア「布にくっつく葉っぱだよ。これで穴を塞げばいい。お尻を押さえて転ばれてたら、いつまで経っても家に帰れなくなる」

のび太「あ、ありがとう!」

タア「人間が私にお礼を言うな!」スタスタ

のび太「え?」

のび太「…何で怒ったんだろう?」

トントン「えっと、怒った訳じゃないんだよ」

トントン「姉ちゃん、照れ屋だから」

のび太「照れ屋って」

タア「何コソコソしてんの!置いてくぞ!」

のび太「えー!待ってよー!」







子ゴリラA「あ、タアとトントンだ!」

子ゴリラB「随分遅く帰ってきたけど…あれ?一緒にいるのって…」

子ゴリラAB「人間だ!」

【ゴリラの縄張り】

ゴリラ「おい、タア!トントン!どういうつもりだ!」

ゴリラ「人間を連れて来るなんて!」

トントン「この人間はおいらの命の恩人なんだ」

ゴリラ「命の恩人?」

タア「この人間は、自力で仲間の元へ帰れないようだから、朝まで家に居て貰うだけだ」

タア「みんなには迷惑かけないから」

ゴリラ「しかし…人間を縄張りに入れるのは…」

ゴリラ「そうだ!俺達が人間にどんなに酷い目に遭わされてると思ってるんだ!」

ゴリラ「そうだそうだ!」

トントン「でも!この人間は、見ず知らずのおいらの為に、流れが急な川に命を賭けて飛び込んでくれたんだよ!」

タア「夜の森は危険だから、放っておいたら、肉食獣の餌になる」

ゴリラ「放っておいたらいいじゃないか!」

ゴリラ「人間なんかどうなったって良いだろ!」

トントン「だから…」

??「よしなさい」

タア「長老!」

長老「この人間は、トントンなょ恩人と言うではないか?」

ゴリラ「しかし長老!」

長老「…人間にされた事を忘れろとは言わない」

長老「しかし、どうしても我々に危害を加える人間達と同じレベルまで自分達を落としたいと言うなら、止めないぞ」

ゴリラ「う…」

のび太「お爺さんゴリラなのに、かっこいい…」

長老「すまないな。人間の子供よ」

のび太「あ…いいえ。むしろ、人間が色々迷惑かけてるみたいでごめんなさい」

ざわっ

ゴリラ「今の聞いた?」

ゴリラ「あの人間!我々の言葉が分かるのか?」

長老「静まれ!」

長老「人間の子よ?我々の言葉が分かるのか?」

のび太「はい。僕、のび太って言います」

長老「そうか、のび太。驚いたぞ?お前も昔、動物に育てられたのか?」

のび太「え?違いますけど…『お前も』?」

どどどどど……どたーん!

のび太「?!」

タア「!」

トントン「!」

母ゴリラ「トントン!こんな時間までどこを遊び歩いてたんだい!」

母ゴリラ「あんたまで浚われたと思ったでしょう!」

トントン「ひっ…母ちゃん!ごめんよ!」ビクッ

母ゴリラ「タア、ありがとうよ。トントンを探してきてくれたんだね。流石、お姉ちゃんだよ」

タア「母さん。トントンは遊んでた訳じゃないよ」

タア「村の方からずーっと此処まで流されてきたのよ」

母ゴリラ「村から?!此処まで?!トントン大丈夫なの?あ、どうしたの!その怪我は!」

トントン「ちょっと罠にかかって…」

母ゴリラ「もう!だから村には近付かないようにってあれ程…あら?」

母ゴリラ「どうして人間がっ?!」ビクッ

タア「この人間は、トントンの命の恩人」

トントン「そう!のび太がいなくちゃ、おいら今頃どうなってたか…」

母ゴリラ「…」じぃ…

のび太「」ビクッ

母ゴリラ「ありがとうございます!」ぎゅうっ

母ゴリラ「こんな馬鹿な息子を助けてくれて!ありがとうございます!」ぎゅううっ

母ゴリラ「グスッ…何てお礼を言っていいか…」ぎゅううっ

のび太「う…うぐ…」ブクブク…

タア「母さん!」

トントン「やめろよ!のび太が潰れちまう!」

【タアの家】

母ゴリラ「おほほ…さっきはごめんなさいね」

のび太「い…いいえ」ビクビク

母ゴリラ「お腹減ったでしょう?その、お口に合うか分からないんですが」

のび太「うわ!美味しそうな果物!」

のび太「それも、こんなに沢山!」

タア「…こんなに出す必要はないんじゃない?」

トントン「でもおいらの恩人だもの。少ないくらいだよ」

母ゴリラ「そうよ。トントンの言う通り」

タア「はあ…ただでさえ食べ物が少なくなってるんだから…」ボソッ

のび太「?」

タア「まあ、良いわ」モグモグ

のび太「」じぃ

のび太(やっぱり、人間の女の子にしか見えないんだよなぁ)じぃ

タア「…なに?」

のび太「いや、えっと…綺麗なペンダントだなって」

タア「!」

のび太「拾ったの?」

タア「ち、違うこれは…」

「やーい!」

子ゴリラA「タアとのび太はあっつあつー!」

子ゴリラB「人間同士でお似合いだなー!」

タア「!」

トントン「あいつら、覗いてやがったな…」

子ゴリラA「もう結婚しちまえよー!」

子ゴリラB「ぎゃはははは!」

タア「この野郎ども!」ダッ

子ゴリラAB「にっげろー!」ダッ

母ゴリラ「ちょっと!タア!」

トントン「行っちゃった」

のび太「大丈夫かな?」

トントン「大丈夫大丈夫。いつもの事」モグモグ

母ゴリラ「もうタアったら…『人間』ってからかわれると、直ぐにムキになるんだから」

のび太「あの…」

のび太「タアは、その…人間ですよね?」

母ゴリラ「ええ、紛れもなく貴方と同じ人間よ」

トントン「姉ちゃんは、赤ん坊の頃に母ちゃんに拾われたんだ」

のび太「え?どういう事?」

母ゴリラ「…あれは嵐の日の事だったわ」

母ゴリラ「群からはぐれてしまった私は一匹で雨風をしのごうと、木陰でじっと耐えていました」

母ゴリラ「すると、雷の音に混じって人間の赤ん坊の泣き声がしたんです」

母ゴリラ「何故こんな日にこんな所で赤ん坊の泣き声がするのかと考えながら、じっとしていたんですが」

母ゴリラ「赤ん坊の泣き声がだんだん弱くなっていったんです」

のび太「!」

母ゴリラ「慌てて泣き声のした方を探しに行くと、木の根本で弱々しく泣く赤ん坊がいたんです」

のび太「その赤ちゃんは、その後どうなったの?」

トントン「元気になったよ。面倒見が良いけど、照れ屋で強がりでの面倒臭い女の子になったけどね」

母ゴリラ「こら、お姉ちゃんにそんな事言わないの」

のび太「姉ちゃんって、もしかして…」

トントン「その赤ん坊が、姉ちゃんだよ」

母ゴリラ「赤ん坊のタアを連れ帰った時、みんなに反対はされて…本当に一時はどうなる事かと思ったけど」

母ゴリラ「今じゃ、みんなに認められた立派な群の一員さ」

トントン「たまに年の近いゴリラ達にからかわれるけど…姉ちゃんも負けないしな」

母ゴリラ「でもいつかは…人間の元に返さなくちゃいけないんでしょうね」

のび太「本人は、帰りたくなさそうだけど?」

母ゴリラ「あの子の首にかかったペンダントは、赤ん坊の頃に唯一身に付けていた物なんです」

母ゴリラ「それを肌身離さず持っているという事は、本当は人間の元に帰りたいって事だと……」

タア「帰りたい訳、ないでしょう!」

のび太「タア!」

トントン「姉ちゃん!」

タア「母さん!なに勝手な事、話してるの!」

トントン「姉ちゃん、あいつらを懲らしめに行ったんじゃ」

タア「そんなのとっくに終わったよ!」

母ゴリラ「ああ、もうトントン。あなた女の子なんだから…」

タア「私がいつ帰りたいなんて言ったの!」

母ゴリラ「でもね、タア?あなたは人間なのよ。人間はいつまでも私達といちゃいけないの…」

タア「いやよ!みんなと一緒にいたいの!」

トントン「姉ちゃん…」

タア「第一、人間は悪い奴だよ!みんなで共有してきたこの森を、必要以上に伐採して、土地を奪うんだもの!」

のび太「どういう事?」

タア「人間はこの『生命の森』を自分達だけの物と思っているのよ」

タア「そして仲間を沢山浚っていった…勿論、人間だって生きてるし仕方がない部分だってあるわ。でもそう思える数をとっくに越してるわ!」

のび太「え…何でそんな事」

トントン「お金になるんだろう。食い物にしたり、見世物にしたり、何かの材料にしたりさ」

タア「必要以上の伐採の結果、土地が減って、食べ物も減った。それに大勢の仲間が浚われたから、殆どの動物が危険を感じて森の奥へと引っ越して行ったわ」

タア「だから時々、村を襲う動物達もいるけど…その土地だって、元々は森の一部だったのよ!」

タア「トントンの怪我だって、人間が仕掛けた罠の所為じゃない!」

のび太「う…」

母ゴリラ「やめなさい、タア。この人の所為じゃないでしょ」

タア「でもこの人も人間だもの、責任はあるでしょ!」

母ゴリラ「そんな事を言ったら、貴女だって」

タア「!」

タア「違う!私はゴリラよ!」

母ゴリラ「タア…」

タア「このペンダントだって…ちょっと綺麗だから気に入ってただけ。だけど…」ジャラ

タア「もう!要らない!」ポイッ

母ゴリラ「!」

ひゅーーーーん…

のび太「あ…」

ぱしっ

バッサ…バッサ…

のび太「大きな鳥がくわえて行ったぞ!」

トントン「姉ちゃん!追いかけよう!」

タア「う、うるさい!あんなのもう要らない!」

トントン「もう…姉ちゃんったら」

母ゴリラ「…どちらにせよ。もう暗いから、今探しに行く事は許しませんよ」

タア「…」

母ゴリラ「タア。ペンダントは…」

タア「私!もう、寝る!」ダッ

母ゴリラ「はあ、本当にあの子は…」

トントン「泣くくらいなら、捨てなきゃ良かったのに」

のび太「…」

-深夜-

のび太「眠れない…」ゴロッ

ざわざわざわ…
ゲーゲー…グルルル…

のび太「…」

のび太「ターザンパンツを履いてるから、色んな音が良く聞こえて…眠れないな…」

のび太「ターザンパンツを脱いで、ブリーフ一枚になるのはやっぱり恥ずかしいし…」

ぐす…うぅ…

のび太「!」ガバッ

のび太「誰かの泣き声がする」

【タアの家・裏】

タア「うぅ…」

がさ…

タア「だれ!」

のび太「ぼ、僕だよ!」

タア「…」

タア「何の用?」ゴシゴシ

のび太「その、別に用があった訳じゃ」

タア「嘘!笑いに来たんでしょ!」

のび太「そんな事ないよ!」

タア「!」

のび太「…えっと、僕もよくあるんだ。勢いで言っちゃったり、やっちゃったりする事」

のび太「明日、ペンダントを探しに行こう?」

タア「…」

のび太「人間が、色々酷い事をしてごめんよ」

タア「…こっちこそごめん。のび太の所為じゃないのに、八つ当たりして」

のび太「いいよ。仲間が浚われたり、住む場所を奪われたら、人間を嫌いになるのも仕方がないもの」

のび太「僕、このジャングルから抜け出したら、人間達に話してみるよ」

タア「!」

タア「でも『はい、そうですか』で済む話じゃないよ」

のび太「そんな事はないよ。僕だって、誰かに言われるまで分からなかったんだもん」

のび太「人間と動物は言葉が通じないからね。僕が代わりに言ったげるよ」

タア「…」

のび太「…それにね」

のび太「実は僕、未来から来たんだ」

タア「未来?」

のび太「百年後の未来から来たんだよ。この動物の言葉が分かる『ターザンパンツ』も未来の道具」

タア「…そうだったのか」

のび太「信じてくれる?」

タア「のび太って、嘘下手そうだし」

のび太「ガクッ…まあ、そうなんだけど」

のび太「それでね、百年後は…人間も森や動物を守っているんだよ」

タア「人間も?」

のび太「森自体は悪い人間達の所為で小さくなっちゃったけど、それも元に戻そうと、人間が頑張ってるんだ」

タア「…自分達のしてきた事にやっと気が付いて、後始末をしているだけじゃない」

のび太「そうだけど、自分のした事に気が付くってのが、重要じゃない?」

タア「…」

タア「…分かって、くれるのかな?」

のび太「僕でも分かったんだ。みんな分かってくれるに決まってるよ」

タア「いいの?お願いしても」

のび太「うん!大船に乗った気でいてくれ!」ドンッ

続きは明日にします。

チュンチュンチュン…

ドラえもん「うーん…どら焼き」

バタンッ

ジャイアン「ドラえもん!」

ドラえもん「え?うわあ!」ドタッ

スネ夫「外に沢山人が!」

ドラえもん「わあ、本当だ」

しずか「ドラちゃん、どうするの?」

ドラえもん「降りるしか、ないだろうね」

パオオ…

しずか「私、この子象ちゃんが心配だから、残るわね」

ドラえもん「分かった。待っててね」

ウィーン…

村人「×□○△◎▽!!」

ジャイアン「う…何て言ってるか分からない」

スネ夫「ドラえもん!翻訳こんにゃくは?」

ドラえもん「あるよ…丁度5つだ!後でのび太君としずかちゃんにも渡そう…」

ドラえもん「『翻訳こんにゃく』」

村人「お前達が誘拐犯か!」

ドラえもん「誘拐犯?」

スネ夫「何かの間違いじゃないんですか?」

???「ちょっと、通して!」

村長「よっと、いやいや初めまして。私はこの村の村長です」

村長「ちょっと皆さん方に聞きたい事がありまして」

ドラえもん「えっと、聞きたい事と言いますと?」

村長「最近、村人が行方不明になる事件が多発していまして…一応お聞きしますけど、あなた方は犯人ではないでしょうね?」

ドラえもん「なっ!」

ドラえもん「失敬な!僕達だって、仲間がいなくなったんだぞ」

村長「おや、お気の毒に…誘拐ですか?」

ジャイアン「違う。川に流されたんだ」

村長「へえ、もしかしてジャングルの川ですか?でしたら、もう助からないかもしれませんね」

ドラえもん「!」

ジャイアン「何だと、てめえ!」

スネ夫「ジャイアン落ち着いて!」

村長「一昨日の大雨で水かさは増していますし…」

村長「運良く流れの遅い所についたとしても、森には獰猛な動物がうじゃうじゃいます」

ドラえもん「獰猛な動物?」

村長「ええ、畑を荒らす象、家畜を襲うライオン、人を浚うゴリラなどか、うじゃうじゃいるんです」

ドラえもん「そんな所にのび太君が…」

村長「私達も動物にはほとほと困り果てていましてね。あなた方が犯人じゃないと言うと、やはりゴリラが誘拐犯で間違いないんですね…」

ドラえもん「でも、ゴリラが人を浚うなんて…」

女「私見たんです!主人が浚われる所を!」

男「うちの娘もだ…追いかけたのに、あっという間に森の中へ逃げていっちまった」

女「怖い思いをしていないかしら…うぅ…」

男「それに、女の子がゴリラと一緒にいたのを見た事があるぞ!」

村長「見た所、あなた方は不思議な力をお持ちのようだ」

村長「私達は土地勘があります。お友達を探すのをお手伝いしますので、どうか我らの村の者の捜索にもご協力頂けないでしょうか?」

ジャイアン「ドラえもん!」

スネ夫「協力した方が、早く見つかると思うよ」

ドラえもん「…分かった」

ドラえもん「では、よろしくお願いします」

村長「ええ、よろしくお願いします」

続きは明日にします。

【ジャングル・下流】

のび太「ふう…ふう…」

タア「だらしがないな。弟を助けたんじゃなかったの?」

のび太「それは…ターザンパンツが…壊れてなかったかし…」キョロキョロ

タア「言い訳するな。ジャングル出たら、人間に言う事があるんでしょ?」

タア「それにそんな余所見しながら歩いてると、また転ぶぞ」

のび太「でも…昨日、ペンダントを持ってった鳥がこっちの方に飛んで行ったし」

タア「!」

のび太「ペンダント探すってのも約束しただろう?鳥が落としたかもしれないなって、思って」キョロキョロ

タア「う…この…」

のび太「?」

タア「探すのはまず一度ジャングルを出てから!仲間が心配してんだろ!」

のび太「うん、折角だし…一緒に探した方が…」

タア「いいって言ってるだろ!もう!」

のび太「ちょっとぉ…待ってぇ」

トントン「…」

トントン「大丈夫か、のび太?」

のび太「君のお姉ちゃんって、スパルタだなあ」

トントン「あれはスパルタって言うか…うん、照れ隠しだな」

のび太「だからどこに照れる要素があったのさ?」

トントン「のび太は鈍いの?」

のび太「…鈍いって?」

トントン「うーん…」

トントン「そろそろ休もうか。姉ちゃんに言ってくるから」

のび太「うん…よろしく頼むよ…」

トントン「姉ちゃん!」

タア「なによ?」

トントン「ちょっと休もう。あと、ペースももっと緩めようぜ。のび太が死んじまう」

タア「…人間って軟弱」

タア「こんな事ならもっと早くに家を出るんだった。あーあ、全くのび太は駄目なんだから」

トントン「姉ちゃん。のび太は駄目なんかじゃないぞ。そんな事言うなら来なけりゃ良かったらだろ」

タア「で、でも!のび太は軟弱だし…治りかけとは言え怪我してるトントンだけじゃ心配なの!」

タア「私が…ついてなくちゃ…」

トントン「…姉ちゃん?やっぱりのび太の事」

タア「!」

タア「違う!あんたもまだ子供だし!子供みたいのが二人だけじゃ心配なだけ!姉として!」

トントン「姉ちゃんだって子供だろ」

タア「あんたとは違うの!もう!」

トントン「姉ちゃん!だから休もうって言ってるだろ!」

のび太「ひい…ひい…どこ行くのぉ…待ってよ…タアー、トントーン…」







ドラえもん「のび太くーん!」ガサッ

ジャイアン「のび太ー!」ガサッ

子象「トントーン!」ガサッ

【ジャングル・川岸】

ドラえもん「返事がない…」

スネ夫「聞こえないかもしれないよ?」

しずか「ドラちゃん、何か道具はある?」

ドラえもん「うーん」ゴソゴソ

ドラえもん「これで」

スネ夫「これは?」

ドラえもん「ただのメガホン…」

ジャイアン「じゃあ、貸せ」すぅ…

ジャイアン「のーびー太ー!!どこにいるー!!」

ジャイアン「返事しないとー!!ぶん殴るぞー!!」

ぞお…ぞお…ぞお…

ジャイアン「…」

ドラえもん「…やっぱりもっと川下に行った方が良いみたいだね」

しずか「ええ…私こっちを探してみる」

ドラえもん「余り遠くには行かないようにね」

しずか「大丈夫よ。この子象ちゃんも一緒だもん」

子象「うん!任せておいてよ!」

がさがさ…がさがさ…

しずか「のび太さーん!」

しずか「のび太さん、どこにいるのよ…」

少年「ねえ?のび太って誰?」にゅっ

しずか「きゃあ!」コケッ

少年「危ない!」がしっ

しずか「!」

少年「あ…うわああ!ごめん!」バッ

しずか「い…いいえ…その…ありがとう…」

少年「脅かす気はなかったんだ…」

しずか「私こそ、大きな声を出しちゃって…えっと」

子象「マサ!」

少年「ん?ああ!お前…久しぶりだな。最近、見ないと思ってたら」

子象「ちょっと家族と引っ越したからね」

しずか「あの…」

少年「俺、マサって言います。この子象とは何度か川で遊んだ事があって」

子象「マサは動物の言葉は分からないけど、友達なんだよ」

しずか「そうだったの」

少年「まさかこんな所でこいつと会えるとは…あ、そうだった」ゴソゴソ

しずか「?」

少年「その…君を追いかけて来たのは」

少年「君にこれをプレゼントしようかと思って!」バッ

しずか「まあ!綺麗なペンダント…」

少年「じゃあ、貰ってくれる?」

しずか「貰えないわ!こんな高そうな物…」

少年「いや!良いんだ!どうせ、タダだし」

しずか「タダって?」

少年「今朝捕まえた鳥が持ってたんだ。村人の物でもないから、どうせどこからか拾った物だろうし」

少年「俺は男だから、こんなの着けないし」

しずか「でも…」

少年「君みたいな可愛い子に持ってて貰いたくて!」///

しずか「!」

少年「だ、駄目かな?」

しずか「あの、じゃあ頂くわ…ありがとう」

がさがさ…

村長「いやあ、お待たせ」

ドラえもん「村長さん」

ジャイアン「今までどこに行ってたんだよ」

村長「いや…ちょっと用事が…」

スネ夫「それに大きな荷物を持ってるけど、何が入ってるんですか?」

村長「その…ジャングルだと何があるか分からないから。あ!そうだ!」

村長「もう一人お嬢さんがいると聞いていましたが、その子は?」

ドラえもん「向こうでのび太君を探しに行ったけど…」

スネ夫「ちょっと遅いね」

ジャイアン「しずかちゃんまでいなくなったら大変だ。見に行こう」

がさがさ…

ドラえもん「しずかちゃーん!」

しずか「あ、ドラちゃん」

村長「なっ!」

しずか「?」

村長「いや、ビックリして…その…」

少年「父さん…」

村長「…マサ?」

村長「マサ…親に黙って今までどこへ行っていたんだ?」

少年「父さんには関係ないだろ」ダッ

しずか「あ…行っちゃった」

ドラえもん「息子さん?」

スネ夫「仲が悪いんですか?」

村長「いや、お恥ずかしい。単なる反抗期でして」

村長「それよりお嬢さん…お名前は?」ジロジロ

しずか「え?源静香です」

村長「いやあ、綺麗なお名前だ。どちらに住んでいらっしゃるんで?年は?」ジロジロ

しずか「え?」

ドラえもん「そんな事、今は関係ないでしょ?」

ジャイアン「そうだ。それよりのび太や浚われた人達を探すんだろ」

村長「ちっ」

スネ夫「え?」

村長「いえ!何でもありませんよ!」

しずか「ドラちゃんの道具は使えないし…何か良い方法があればいいんだけど…」

村長「…」

村長「ゴリラを助けに川へ飛び込んだんですよね?」

ドラえもん「はい」

村長「もしかしたらそのままゴリラに浚われたのかもしれない」

ジャイアン「でも、のび太はゴリラを助けに行ったんだぞ?」

子象「そうだそうだ!」

村長「うわ!何だこの象は!」ビクッ

村長「お前達!棒を持って来なさい!」

村人「はい」

村長「ご苦労」

ドラえもん「その棒で何をするつもりなんですか?」

村長「そんなの決まってるだろ?」









村長「子象に悲鳴をあげさせて、こいつのお友達を誘い出すのさ」

一同「!!」

【ジャングル・下流】

のび太「ごくっごくっごくっ…ぷはー…」

のび太「生き返る…」

タア「のび太って、本当に軟弱だな」

のび太「う…僕だって好きで軟弱な訳じゃ」

タア「このままじゃ着く前に日が暮れるな」

トントン「せめて、ワシがいればなあ」

のび太「ワシ?」

トントン「ワシがいれば、ジャングルの外まで一っ飛びで運んでくれたのによ」

タア「そのワシも、殆ど浚われるか、森の奥に引っ越したからね」

のび太「…ちょっと待って。出来るかもしれない」

タア「出来るって?」

のび太「ワシを呼ぶ事だよ!」

のび太「このターザンパンツを履いて雄叫びをあげると、動物を呼べるんだ」

トントン「でもそのパンツ、壊れてるんだろ?」

のび太「そうだけど…今こうやって君達と喋れるように、動物が呼べるかもしれない!」すぅ…

のび太「『あーあーあー!!』」

トントン「!」

タア「…ねえ、今なんて言ったの?」

のび太「え?『ワシよ、来い!』って言ったつもりだったけど…違った?」

トントン「うん」

ドタドタドタ…

タア「今の言葉、『象よ、来い!』って意味だよ」

のび太「え?」

パオーン!!

のび太「うわあ?!」ドテッ

タア「こんにちは、おばさん」

母象「あら?タアにトントン、お久しぶりね…私、誰かに呼ばれた気がするんだけど」

タア「多分、この人間」

母象「え!人間?!」ビクッ

トントン「大丈夫。害のない人間だから」

トントン「突然で悪いけど、良かったら、背中にこの人間を乗せてあげてくれる?」

タア「この人間、トントンの恩人だからジャングルの外まで送ってあげたいの」

母象「お安いご用よ。はい、どうぞ」

のび太「ありがとうございます…よいしょっと」

母象「タアもトントンも乗りなさい」

トントン「え?ラッキー!」ピョンッ

タア「すみません。ありがとうございます」

がさがさ…

トントン「そう言えばおばさん、どうしてこの辺にいたの?」

タア「おじさんが行方不明になってから、ジャングルの奥に引っ越して行ったのに」

母象「実は、息子もいなくなってしまったのよ」

母象「村に仲の良い人間がいたから、もしかして会いに行ったんじゃないかと思って探しに来たのよ」

のび太「それって」

トントン「君達が一緒にいたの子象」

母象「え!やっぱり人間といたのね」

トントン「おばさん、心配しないで。のび太の仲間なら悪いようにはしないさ」

のび太「もちろん!」

パオオオオオ!!!!

一同「!」

のび太「今の悲鳴…」

トントン「ああ…助けてって…」

母象「坊やあああ!!」

ドドドドドド!!

【ジャングル・川岸】

しずか「やめて!!」バッ

ドラえもん「可哀想だろ!」

村長「ちょっと叩くだけでしょうに大袈裟な…これで悪いゴリラを誘き出せて、結果君達の仲間も見つかるかもしれないんですよ?」

村長「それに、子供のゴリラは高く売れるしな」ボソッ

子象「違う!トントン達はそんな事しないもん!」

ジャイアン「違うって言ってんじゃんか!」

スネ夫「そうだそうだ!」

村長「さて?私には何て言ってるか、さっぱり分からないがね?」

村長「これ以上、邪魔するようなら私にも考えがあ……ん?」

ドラえもん「何だ?」

しずか「…地震?」

ドドドドドドドドド!!!!

ドドドドドドドドド!!!!

ドドドドドドドドド!!!!

ドドドドドドドドド!!!!

がさっ

一同「!」

パオオオオオ!!!!

母象「うちの坊やに何するの!」

村人「象の親がやって来たぞー!」

村人「ぎゃあ!逃げろー!」

村長「逃げるな!静まれ!ひっ捕らえろー!」

バタバタ…

のび太「あ、ドラえもん!みんなあ!」

ドラえもん「のび太君!」ダッ

しずか「のび太さん!」

ジャイアン「良かった。無事だったんだな」

スネ夫「心配させるなよ」

のび太「みんな、ごめん」

子象「ママ!」

母象「坊や!ああ、大丈夫?」

子象「大丈夫だよ!」

母象「ずっとずっと探してたんだから!もう勝手にいなくならないで!」

子象「ごめんなさい」

タア「……」

ドラえもん「あ、その子は?」

のび太「この子は『タア』。こっちが『トントン』」

ドラえもん「僕、ドラえもんです」

ジャイアン「俺、ジャイアン」

スネ夫「僕、スネ夫」

しずか「私はしずか」

トントン「よろしく!」

タア「…そのペンダント!」

しずか「え…その、貰って」

タア「返せ!」

しずか「あ、痛い…」

ジャイアン「しずかちゃんに何すんだ!」

スネ夫「そうだ!やめろ!」

タア「うるさい、あれは私の…」

のび太「タア!乱暴にしないでよ!」

タア「のび太…」

のび太「ごめんね、しずかちゃん。それ、タアのペンダントなんだ」

トントン「昨日、鳥に持って行かれたんだ」

しずか「そうだったの?そういう事なら…」

ジリ… ジリ…

ドラえもん「やけに、静かじゃないか?」

ジリ… ジリ…

のび太「ドラえもん!」

タア「?!」

村長「今だ!網をかけろ!」

ばっ

のび太「うわあ!」

しずか「きゃあ!」

タア「こんな網なんて…ぐ、破けない」

村長「ははは、これは特注の網でね。君らみたいな凶暴な動物を捕獲するにはぴったりだろ?」

トントン「姉ちゃん!」

のび太「あ、トントンは逃げられたのか」

タア「トントン行きなさい!」

トントン「でも…」

タア「姉ちゃんの言う事が聞けないの!」

トントン「う…絶対助けに戻って来るから!」ヒュンッ

村長「追え!あのゴリラを逃がすな!」

村人「はっ!」

ダダダダダダ…

ドラえもん「村長!これは一体どういう事ですか?!」

村長「はは、動物の言葉が分かるなんて、君らも動物の仲間なんだろ!」

村長「連れて行け!」

村人「はい!」

続きは明日にします。

【牢屋】

ガチャン!

ジャイアン「クソ!この縄をほどきやがれ!」

スネ夫「出してよ!」

のび太「誤解だよ!動物達の事を誤解してるんだ!」

ドラえもん「ポケットを返せ!」

村長「くく…」

タア「おばさん達をどこへやった!」

村長「あの象の親子の事か?後で仲良くサーカスにでも売り飛ばそうかな。ぷくく…」

タア「何だと!こいつ!!」ガシャンッ

村長「おーっと…縛られたまま檻にタックルとは…怖い怖いw」

村長「あ、そうそう…」

村長「君はこっち」ぐいっ

しずか「きゃっ」

のび太「しずかちゃん!」

ドラえもん「何するんだ!」

村長「この子には色々聞きたい事があるんでね」

しずか「いや!放して!」

のび太「しずかちゃーん!」

カツン…カツン…カツン…

のび太「う…どうしよう」

ジャイアン「どうしようって言ったって…」

スネ夫「ポケットは取られたし、壁は岩だから脱出は到底無理だよ」

ドラえもん「そうだ!のび太君!ターザンパンツだよ。そのパンツの力なら、岩の壁も鉄の檻だって粘土みたいな物だよ!」

のび太「…実は壊しちゃって」

一同「何だって!」

のび太「ほら、この葉っぱの下…」ペラッ

ドラえもん「うわあ、穴あけちゃったのか」

ジャイアン「でも動物と話せてたじゃねえか」

のび太「出来る事と出来ない事があるみたいなんだ」

スネ夫「じゃあ、試してみたら?」

スネ夫「檻を押し開いてみてよ」

のび太「分かった。やってみるよ!」

のび太「うー…」グ…

のび太「ぐううううう…」ググ…

のび太「はあああああああ!」ググッ

のび太「ふんがあああああ!」グググッ

↑訂正

のび太「うー…」グ…

のび太「ぐううううう…」ググ…

のび太「はあああああああ!!」ググッ

のび太「ふんがあああああ!!」グググッ

のび太「ひい…ふう…」パタンッ

ジャイアン「やっぱ駄目か」

スネ夫「全く、のび太は使えないな」

ドラえもん「故障してるなら仕方がないよ」

のび太「そうだ。雄叫びで動物が呼べるかも!助けに来て貰おう『あー…」

タア「やめて!」

ジャイアン「何で邪魔すんだよ」

スネ夫「大きな象でも来てくれたら、こんな壁イチコロなのに!」

ドラえもん「…どうしてだい?」

タア「みんなを、危険な目に遭わせたくない」

のび太「で、でも…僕が呼ばなくても…トントンも助けを呼びに戻ったじゃないか…」

タア「…助けに来るかな?」

タア「私達は人間に散々酷い目に遭わされてきたから、わざわざ縄張りを離れて村の近づくとは思えない」

のび太「何言ってるんだ!タアが捕まってるんだぞ!きっと助けに来るに決まってる!」

タア「でも私は本当は…ゴリラじゃない。みんなの仲間じゃ、ないから…」

のび太「それはっ」

スネ夫「ちょっと待ってよ。酷い目に遭わされたって、どういう事?」

のび太「タアの仲間が何匹も人間に浚われたり、住処を追われたりしたんだって」

ドラえもん「おかしいな?僕らは人間が動物に浚われてるって聞いたよ?」

ジャイアン「じゃあ、どっちかが嘘ついてるって事か?」

タア「私達は嘘なんかついてない!」

ドラえもん「うーん…」

スネ夫「僕はあの『村長』さんが怪しいと思う」

ジャイアン「俺も」

ドラえもん「僕もだよ。動物達が悪いと強固に主張する態度やしずかちゃんの事と言い、何だかおかしいもんな」

カツン…

一同「!」

のび太「誰か来た!」

スネ夫「戻って来たのかな…」

タア「一人や二人の足音じゃない…」

ジャイアン「誰が何人来ようと、檻が開いたらぶん殴ってやる!」

スネ夫「ジャイアン、縛られた手でどうやって殴るのさ」

カツン…カツン…

少年「やあ…」

ドラえもん「君はさっきの…村長の息子の、『マサ』?」

マサ「うん。しずかは?」

ジャイアン「しずかちゃんなら、お前の親父に連れてかれたよ!」

マサ「何だって!」

スネ夫「それより何しに来たんだよ!他の村人まで引き連れて!」

マサ「しーっ!僕らは君達を助けに来たんだよ」

ドラえもん「え?」

ガチャ

村人「今、縄をほどきます」

ジャイアン「お、サンキュー!」

スネ夫「でも何で…」

マサ「あ、それからこれは君のだよね?たまたま『僕達の仲間』の村人が預かったみたいで」サッ

ドラえもん「僕のポケット!ありがとう!」

マサ「象の母子は森に逃がしたから、安心して」

のび太「ねえ、何て言ってるの?」

ドラえもん「そうだった。のび太君にも今…『翻訳こんにゃく』。最後の1個」

ドラえもん「それから『タイム風呂敷』」

のび太「言葉が分かるし、ターザンパンツも直った!」

タア「ふーん。それだけで?」

のび太「そう!これで怪力で運動神経だってよくなったんだから」

タア「クスッ…本当に?」

のび太「本当だよお!」

ドラえもん「助けてくれたのはありがたいんだけど、村長の息子の君が、どうして?」

マサ「…あの『村長』は、俺の父さんじゃないからだ」

【離れ・村長の部屋】

?「ご安心下さい。もう直ぐ、お送り致しますので」

男「本当に間違いないんだな?」

?「ええ、正真正銘の本物ですよ」

男「そうか…長かった。本当に長かった。これでやっと…」

?「…」

男「君に任せて正解だった…」

?「つきましては…報酬の方は…」

男「ああ、前金の三倍だったな?『未来銀行』に振り込んでおく」

?「ぷくく…ありがとうございます。これからもどうかご贔屓に…」ピッ

プツンッ…

?「くく…ぷくく…」

?「さて未来との通信も済んだし、お嬢さんの元へ戻らなければ」

スタスタスタ…ピタッ!

?「おっといけない忘れてた。アレをしなくちゃ…」

【離れ・応接室】

村長「ぷくく…お待たせ」

しずか「…何がおかしいんですか?」

村長「別におかしくはないよ。嬉しいんだよ。人助けが出来て、ぷくく…」

しずか「何言ってるの?私達や象さん達に酷い事をしておいて」

村長「酷い事?違う違う。私は囚われて洗脳された君を救って、本当の両親の元へ帰してあげようとしているだけだよ?」

しずか「いい加減な事言わないで下さい!私のパパやママは、本当のパパやママよ!」

村長「ところがどっこい。違うんだなあ」

しずか「違います!」

村長「証拠はそのペンダントだよ」

村長「これは身に付けた者自身にしか外せない。特別なペンダントなんだよ」

しずか「人違いです!これは貰い物で…あ!」

しずか(このペンダントは…タアのだ)

村長「貰い物?」

村長「いつ、どこで貰ったと言うんだ?」

しずか(正直に言った方がいいのかしら?でもこの人、何だかおかしいわ…)






【牢屋】

のび太「あの村長が偽物だって?」

マサ「3ヶ月くらい前だったかな?夜中、森に明かりが見えて、村長…僕の父さんが家事だといけないからって、心配して見に行ったんだ」

マサ「それから変わっちゃったんだよ」

ドラえもん「変わったって、どう?」

マサ「昔の父さんは<<『生命の森』は誰の物でもない。そしてただあるだけではなく、生きているのだから、大事にしていこう>>って言ってたんだよ」

マサ「なのに帰ってきたら<<『生命の森』は人間の物。危険な動物達はどうなったって良いじゃないか>>って言い出してね」

マサ「最初は村人達も『偽村長』の言う事に反対してたんだけど、実際に動物が村を襲ったり、人を浚ったりするようになってから、殆どの村人は『偽村長』に賛同するようになったんだ」

村人「ここにいる、私達以外の村人はな」

マサ「おかしいと思って、俺はこっそり『偽村長』の跡をつけたけど」

マサ「途中で見失ってしまった」

マサ「帰って来るのを、新しく建てた『離れ』の前で見張ってたら、知らない男が入って行った」

マサ「でも待っていたら、偽村長が出て来たんだ」

のび太「え?知らない男の人は?」

マサ「その日は誰も出て来なかったよ…それを母さんに言ったら、次の日母さんがいなくなってしまった」

マサ「次は俺の番だと思って、偽村長から逃げていたんだ」

ドラえもん「その村長の離れはどこにあるんだい?」

村人「森を切り開いた所です」

のび太「しずかちゃんも、そこにいるかも!」

マサ「ああ!助けに行こう!」

【離れ】

偽村長「私は君のご両親に頼まれて、君を探しに来たんだ」

しずか「人探しに来たなら、どうして森や動物に酷い事をしたの?」

偽村長「そりゃあ、金になるからだよ」

しずか「!」

偽村長「庶民の暮らしをしていたなら分かるだろ?何をするにも金が必要だろう?」

偽村長「だから過去に来たついでに、動物達を捕まえる事にした」

偽村長「今じゃ、みんな保護動物だから、きっと未来で高く売れるぞ。ぷくく…」

しずか「未来?!」

しずか「じゃあ、村の人を浚ったのも…」

偽村長「ああ、私だよ。みんなこの荷物の中さ」

しずか「そんな…どうして?」

偽村長「私の正体を知ったり、邪魔をした者を『新型・変身リング』で動物に変身して浚ったんだ」

偽村長「そうすれば、村人も動物が憎くなって、私に協力してくれるだろう?」

しずか「なんて自分勝手なの!」

偽村長「何とでも言うがいい」

しずか「第一、ペンダントだけでどうして私が探し人だと分かるの?」

しずか「ずーっと前に、どこかで拾っただけかもしれないじゃない!」

偽村長「そんな筈はない。何故ならこの『手がかりレンズ』など色んな道具を駆使して、やっとこの時代のアフリカで見付けられると分かったんだ」

偽村長「そして初めて会った時から、君の首にはペンダントが下がっていた。これを証拠と言わずして、何と言う?」

偽村長「邪魔な子供達をさっさと帰す為に、人探しの手伝いを申し出たが、君を見つける事が出来たなんて本当にラッキーだよ」

偽村長「まあ、万が一、人違いだったとしても私は全く構わないがね」

しずか「!」

偽村長「これは何だと思う?」

しずか「あ!『忘れな草』」

偽村長「ご名答。これを使ってすっかり今までの事を忘れてしまえば、何の問題もない。依頼人はペンダントを身に付けた娘を見て大喜び、私は依頼をこなせて金をたんまり貰える」

しずか「い、いや…」

しずか「誰か!助けてー!!」

偽村長「叫んだって、無駄だ…」

ドーンッ!!

偽村長「な?!扉が…」

しずか「…の」

しずか「のび太さん!」

のび太「しずかちゃん!」

ドラえもん「助けに来たぞ!」

ドタドタドタ…

ジャイアン「のび太の奴、ドアを蹴破りやがった」

スネ夫「のび太の癖にカッコいいぞ」

タア「…凄い」

偽村長「何だお前達まで…それにマサ!」

マサ「名前を呼ぶな!偽者め!」

偽村長「ぷく…じゃなくて、ははは…偽者?何を言っている」

しずか「そうよ!この人は偽者の村長よ!浚われた人達はみんな荷物の中にいるわ!」

偽村長「このっ、余計な事を!」ぐいっ

しずか「痛っ、髪を放して…」

ドラえもん「しずかちゃん!」

のび太「その手を放せ!」

偽村長「ええい!であえい!であえい!」

ドタドタドタ…

村人「村長どうなさいましたか?」

偽村長「反逆者だ!ひっ捕らえろ!」

村人「しかし…相手は同じ村人じゃないですか…」

偽村長「うるない!俺の言う事が聞けないのか!」

ガシャーンッ!

ひゅーーーん…ぱしっ

偽村長「ああ?!」
トントン「うっほっほ♪偽村長の大事な荷物は貰ったぜい!」

シュタッ

タア「トントン!戻って来てくれたの…」

トントン「言っただろ?絶対戻るってさ」

どしーん!

母ゴリラ「あんただね!私の娘を浚ってくれたのは!」

タア「母さん!」

ドコーンッ!

偽村長「か、壁に穴があ?!」

ゴリラ「タア!無事か?!」

タア「みんな…私、人間なのに…」

子ゴリラA「そんな事関係ないだろ!」

子ゴリラB「タアは僕らの仲間だ!」

タア「うっ…みんな…」

のび太「ありがとう!みんな助かったよ!」

ライオン「俺達も助けに来たぞ!」

カバ「よくも仲間を浚ってくれたな!」

ワシ「覚悟しろよ!」

ドラえもん「トントン!荷物を開けて!」

トントン「ほい、さっ」ベリッ

ドサドサドサ…

ドラえもん「『翻訳こんにゃく』、『手がかりレンズ』、『壁かけシェルター』、それに『変身リングとカード』…これは新型だな?」

ドラえもん「やっぱり未来人だったのか」

のび太「新型って、今までと何が違うの?」

ドラえもん「動物だけじゃなくて、特定の人物にも変身できる。それに服を脱ぐ必要がない」

のび太「へえ!便利になったね」

ドラえもん「そんな事より、壁かけシェルターだ!」

ドラえもん「その壁かけシェルターを開けて!」

ジャイアン「おう!とりゃあっ!!」

ガラガラガラガラッ!

「…眩しい。何だ?」

「シャッターが開いてるぞ!」

「待て何かの罠かもしれない。まず私が様子を見に行く…」

村長「…これは…一体?」

マサ「父さん?!」

「今の、マサの声?」

「あ、奥さん!」

タタタタタッ

夫人「マサ!」

マサ「母さん!ああ、良かった!この人達が助けてくれたんだよ!」

村長「そうでしたか…ありがとうございます」

のび太「へへへ…」

ドラえもん「まあ、大した事はしてませんが…」

村長「みんな、助かったぞ!早く出てくるんだあ!!」

ドタドタドタ…

男「あ!」

女「あ、娘!!」

娘「ママ!パパ!」

女「あなた!」

男「お前!」

女「…良かった。もう会えないかと思ったわ…グスッ」

ミシミシミシ…ギチギチ…

「後ろがつっかえてるぞ!象の旦那!」

「すまんすまん。今出るから…しかし狭いな」

父象「やっと出れたが…随分開放的な部屋だな」

わいわい…がやがや…

母象「あなた!」

子象「パパ!」

ゴリラ「わあ、みんな助けに来てくれたんだな!」

村人「…これはどういう事ですか?村長」

偽村長「ぐ…」

村長「そいつだ!その男が偽者の村長だ!」

ザッ…

村人「よくも我々を騙してくれたな!」

偽村長「う…待て、話せば分かる…」

ドラえもん「観念しろ!」

のび太「もう逃げられないぞ!」

偽村長「クソ…ここまでか…」









偽村長「なーんて、言うと思ったか?ぷくく」

ポチッ

ドカーン!!

マサ「今の爆発は?」

トントン「大変だ!森が!」

のび太「森が?」

子象「わああ!僕らの『生命の森』が燃えている!」

ドラえもん「何だってえ?!」

偽村長「本当は動物達を追い立てて一気に捕まえる為の罠だったが、ここで役に立つとはなあ」

ぎいい…

ドラえもん「足元にタイムホールが!」

偽村長「動物達を売り飛ばせないのは残念だが、私はこのガキを依頼人に引き渡して、大金を…ぷくくくく…」

しずか「いや!放して!」

のび太「しずかちゃん!」

マサ「しずか!」

偽村長「おーっと、待て」

偽村長「動くなよ?手元が狂って、ガキがタイムホールで行方不明になったら、お互い困るだろ?」

ジャイアン「ぐ…」

スネ夫「卑怯だぞ!」

偽村長「卑怯で結構、コケコッコー!」

ヴヴ…ヴ…

悪人「ざまあみろ!邪魔してくれたお前らの大事な森は、あっという間になっくなるぞー!ぷくく」

のび太「姿が変わった!」

ドラえもん「変身リングの効果が切れて、元の姿に戻ったんだよ!」

しずか「私の事はいいから!早く森の火を消して!」

悪人「そういう事だ、諸君!追ってこれるなら、こっこまでおいで。あっかんべー!」ピョンッ

シュタッ…ビューン!!

のび太「あ!タイムマシンに乗って行っちゃったよ!」

ジャイアン「何てふざけた野郎だ!」

タア「のび太!追うんだ!」

のび太「うん!あ、でも…」

タア「火事は私達で何とかするから」

トントン「そうだぞ、姉ちゃん」

トントン「姉ちゃんも行くんだ」ぐいぐいっ

タア「え?どうして私も…」

母ゴリラ「のび太達に、仲間を助け出して貰ったんだ。次はあんたが助けに行きなさい」

ジャイアン「俺達は残って火を消すのを手伝うぜ!」

スネ夫「僕も!」

ドラえもん「ちょっと待って、『雨雲製造機』と『パワー手袋』」

ジャイアン「パワー手袋かよ?こんな良いもんあったなら、のび太を探してる時に使わしてくれれば良かっただろ」

ドラえもん「このパワー手袋はパワーが強過ぎるから、逆に危ないから出さなかったんだよ」

スネ夫「でもそのパワーは今は必要って事だね」

ドラえもん「そういう事」

ドラえもん「これで。録な道具がなくてごめん」

ジャイアン「なに、こういう時に録な道具がないのはいつもの事だろ」

スネ夫「そうそう。それでこそドラえもんだよ」

のび太「二人とも、頼むよ」

ジャイアン「おう、任せとけ」

スネ夫「そっちこそ、必ずしずかちゃんを連れ戻してくれよ!」

続きは明日にします。

【タイムホール】

のび太「待てー!」

悪人「追って来やがったな」

ぐらぐら…

悪人「時空乱流が起きてるなんて…しかし条件は向こうも同じだ」

ドラえもん「止まれー!」

のび太「ドラえもん!もっとスピード出せないの?」

ドラえもん「無茶言うな!この嵐だ!これ以上は危険だよ!」

ガタガタ…

しずか「のび太さん!ドラちゃん!!」

悪人「ええい!大人しくしてろ!時空乱流に落ちたいのか?!」ぐいっ

しずか「うっ…」

のび太「しずかちゃんに乱暴するな!」

ドラえもん「ぐ…どうすれば…」

ビューンッ!!

【森】

村人「それっ!」バシャッ!

象「パオオオ!!」バシャア!

ゴオオオオ!!

村長「くっ…火の勢いが強い」

長老ゴリラ「これじゃあ、焼け石に水じゃ…」

ジャイアン「よし、スネ夫!」

スネ夫「ほい、来た!」

スネ夫「『雨雲製造機』!」

もくもくもく…ポツッ

トントン「あ」

ポツ…ポツポツ…

母ゴリラ「これは…」

ザアアアアア!!

マサ「雨だ!」

子ゴリラAB「やったあ!!」

ザアアアアア!!

スネ夫「よし、いいぞ」

ジャイアン「この調子で火を消すぞ!」

村長「いや、待て…」

ゴオオオオ!!

村長「火が衰えていない…」

ジャイアン「何でだよ!こんなに雨が降ってるのに!」

スネ夫「あ!」

スネ夫「未来人が仕掛けた爆発だもの、普通の火事とは違うんだよ!」

ジャイアン「くそ、あの野郎」

ゴオオオオ!!

村長「仕方ない」

マサ「…父さん?」

村長「森の木を切り倒そう」

ジャイアン「そんな事したら…」

スネ夫「いや、それしかないよ」

ゴリラ「どういうつもりだ!」

ゴリラ「生命の森をどこまで蹂躙すれば気が済むんだ!」

うほうほっ!!

村長「怒っている?彼らは何て言ってるのですか?」

スネ夫「木を切り倒すと聞いて、誤解してるみたいです…」

村長「そんな、違うと彼らに伝えてくだ…」

長老ゴリラ「静まれええ!!」

ゴリラ「」ビクッ

長老ゴリラ「彼らは木を切り倒して、火をこれ以上広がらせないようにしようと言ったのじゃ」

ゴリラ「しかし『生命の森』の木を切り倒すなんて」

長老ゴリラ「馬鹿者。切り倒さなければ、その『生命の森』が燃え尽きてしまうかもしれんのじゃろう」

長老ゴリラ「消火より、木を倒す方が我らも役に立つじゃろう。久しぶりに腕が鳴るわい」

長老ゴリラ「象達はそのまま消化活動を続行。無駄かもしれんが火の勢いを抑える事くらいは出来るじゃろう」

長老ゴリラ「ゴリラやオラウータン達は人間と共に木を倒して、燃え広がるのを防げ」

長老ゴリラ「ワシ達は森の燃え広がり具合を随時、報告」

長老ゴリラ「他の者達は、倒した木の運びだし、もしくは逃げ遅れる者がないように助け合って、迅速に避難するんじゃ」

スネ夫「…て、言ってます」

村長「た、助かります」

マサ「凄いリーダーシップ…」

続きは来週にします。

【タイムホール】

のび太「じゃあ、あと5m!5m距離を縮められない?」

タア「どうして?」

ドラえもん「まさか、のび太君」

のび太「…」

ドラえもん「あと5m…」

のび太「…」

ドラえもん「3m…2m…1m…」

のび太「…」

ドラえもん「0!」

ドラえもん「今だ!」

のび太「ふんっ!!」ピョンッ

タア「のび太!」

シュタッ

のび太「覚悟しろ!しずかちゃんを返すんだ!」

しずか「のび太さん!」

悪人「この距離をジャンプしてくるとは…」

ドラえもん「やったねのび太君!」

タア「……」

ドラえもん「ん?タア?何するつもり?」

タア「…のび太に出来たんだ。私に出来ない筈ないだろ」

ドラえもん「!」

タア「私も、あっちまで飛ぶ!」

ドラえもん「無茶だよ!!のび太君はターザンパンツを履いてたんだ!!生身の君にはっ」

タア「うるさい!のび太一人じゃ無理だ!」

タア「私が、行かないと…」

ドラえもん「え…」

悪人「しつこい奴め!こうしてやる!」

ぐらぁ…

しずか「きゃあ!」

のび太「危ないじゃないか!」

悪人「今ので落ちないとは…」

のび太「まあ、この『ターザンパンツ』があるからね」

悪人「ほう?じゃあ、これならどうだ?」サッ

のび太「!」

のび太「『忘れな草』を…それで何を……」

のび太「……」

のび太「…あれ?僕は何をしていたのかなあ?」

しずか「のび太さん!」

悪人「お前はここから下へジャンプするつもりだったんだ」

のび太「そっか。すっかり忘れてた」ピョンッ

しずか「!」

のび太「…あれ?いつまで経っても下に落ちないぞ?」

しずか「うー…」ぎゅうっ

のび太「しずかちゃん?どうして僕を抱えてるの?僕は下に落ちようとしたのに」

しずか「何バカな事言ってるの!下に落ちたら、二度と会えないかもしれないのよ?!」

のび太「んー?」

しずか「もう!のび太さん!しっかりして!」

悪人「ガキ!その小僧を放せ!」

しずか「嫌よ!放すくらいなら、私も一緒に落ちるわ!」

タア「しずか!そのまま放すなよ!!」

シュタッ…ぱしっ

タア「貰った!」

ドラえもん「凄い跳躍…ターザンパンツも履いてないのに…」

悪人「あ!『忘れな草』が!返せ!」

タア「お前が忘れろ!」ムギュウッ

悪人「あぐっ…う………」

悪人「……」

悪人「ん?」

悪人「此処は誰?私は何処?」

ドラえもん「しまった!悪い奴が操縦桿から手を放した!」

グラグラ…

しずか「タア!操縦桿を握って!」

タア「え?こう?」グッ

タア「何だこれ…重い…」

ドラえもん「気を付けろー!時空乱流がまたうねり出したぞー!!」

びゅおおおお!

しずか「きゃあ!」

のび太「うわあ…ターザンパンツが脱げちゃた?!あ、しずかちゃん!どうして?!」

しずか「正気に戻ったのね!」

しずか「う…」プルプル

のび太「しずかちゃん…」

しずか「ふふ…大丈夫よ」

のび太「…」

のび太「しずかちゃん、手を放して」

しずか「え?!」

タア「!」

のび太「このままじゃ、しずかちゃんまで落っこちちゃう」

しずか「嫌よ!絶対に…放さない…」

タア「…しずか」

ドラえもん「早まるなー!今、追い付くから!」

悪人「あれー?二人とも、何にしてるんですか?」ドンッ

ぐらっ

しずか「え?」

のび太「あ…」

ひゅうううう…

タア「のび太っ!!しずかああ!!」

【森】

ドンッ!バキバキッ…

ゴリラ「たあっ!」バキバキッ

ゴリラ「はあっ!」バキバキッ

子ゴリラA「ぐっ…」

子ゴリラB「無理だよ!僕達、子供だもん」

子ゴリラA「うぎぎ…俺だって、これくらい…」

ジャイアン「ふんっ!!」バキッ

バキバキバキッ…

子ゴリラAB「すげぇ…」

ジャイアン「パワー手袋のお陰だけどな」

トントン「おいら達、子ゴリラには木は倒せないぜ?」

子象「木を運ぶとか、出来る事をしようよ。ほら、手伝って」

子ゴリラAB「お、おう!」

ゴオオオオ!!

村人「せいっ!」ガツンガツン…

村人「とうっ!」ガツン…バキバキ…

村長「動物達の避難は済みましたか?」

長老ゴリラ「ええ、お陰様で。人間はどうですか?」

村長「此方も無事済みました」

スネ夫「だ、そうです」

村長「このまま火の勢いが収まれば良いのですが」

長老ゴリラ「そうですね…」

スネ夫「だ、そうです…はあ、通訳って大変だなぁ」

バッサバッサバッサ!!

ワシ「大変だ!大変だ!」

長老ゴリラ「どうした?」

ワシ「大変だ…南側で強い風が吹いた所為で…」

ワシ「火がどんどん燃え広がってる!!」

スネ夫「!!」

【タイムホール】

ひゅー…

悪人「あらら?わざとじゃないですよー?二人とも落っこちて行きましたねー?」

タア「貴様!」

ドラえもん「のび太君!しずかちゃーん!」

ビューン!

ドラえもん(しまった。二人の落ちる先にあるのは、時空乱流の中心!)

ドラえもん(そこに落ちてしまったら!二人がどこに行くか、全く分からなくなってしまう!)

ビューン!

のび太「しずかちゃん、ごめんね…」

しずか「ううん、いいの。助けにきてくれてありがとう」

のび太「でも僕しずかちゃんを、助けたかった…」

しずか「ううん、十分よ。のび太さん、私ね…」

ビューン!

ドラえもん「間に合え間に合え!」

ビューン!

ドラえもん「間に合え間に合えええ!!」

ビューン!

ドラえもん「間に合え間に合えええええ!!!」









スカッ

ドラえもん「あ…」

ドラえもん「間に…合わなかった…」

タア「そんな…」

悪人「ぷく、くくくくく……思い出したぞ!ざまあみろ!」

タア「この野郎!」

悪人「どうしてくれる!たんまり金が貰える筈だったのに!みんなパーじゃないか!」

ドラえもん「うわああ!!のび太くーん!!しずかちゃーん!!」

ドラえもん「こんな事になるなら…夏休みの宿題の事なんか言わずに…」

ドラえもん「もっと優しくしてやるべきだった…」グスッ

のび太「やったあ!本当だね?」

ドラえもん「!」

タア「え?!」

悪人「何だと?」

しずか「ドラちゃーん!」

ドラえもん「しずかちゃんも…一体どうして?」

のび太「それはね、この人のお陰だよ」

ドラえもん「あ、あなたは…あの時の…」

監視員「久しぶり」

ドラえもん「アフリカの国立公園でボランティアをしていた人!」

監視員「それは仮の姿」

のび太「本当は未来人で、『環境保護局の自然調査員』なんだって」

しずか「私達、時空乱流に巻き込まれて、出た先が『現代のアフリカ』だったの」

監視員「全く、こんなに悪運の強い奴は初めて見たよ…ある意味二度目だけど」

タア「?」

悪人「くそぉ…次から次へと…」

監視員「でも安心しろ。次で最後だ」

ファンファン…

悪人「げえ、タイムパトロール…」

ドラえもん「もう観念する事だな!」

悪人「うぅ…もう少しだったのに…」ガクッ

【アフリカ】

ー100年前ー

タア「これは…」

のび太「あ…」

しずか「酷い…」

ドラえもん「何て事だ…森が…」

タア「私達の『生命の森』が…なくなってる…」

監視員「……」

トントン「姉ちゃーん!」タタッ

ジャイアン「ドラえもーん!」タタッ

スネ夫「のび太もしずかちゃんも無事か?」タタッ

のび太「うん。君等は?」

スネ夫「何とか」

ジャイアン「ただパワー手袋が燃えちまった」

[たぬき]「そんな事どうでもいいよ。君等が無事なら」

マサ「この辺りや南の森は燃えてしまったけど、何とかこれだけで済んだよ」

タア「…でも、もう駄目だ」

のび太「うん。君等は?」

スネ夫「何とか」

ジャイアン「ただパワー手袋が燃えちまった」

ドラえもん「そんな事どうでもいいよ。君等が無事なら」

マサ「この辺りや南の森は燃えてしまったけど、何とかこれだけで済んだよ」

タア「…でも、もう駄目だ」

タア「この酷い臭い…燃えてしまった場所は、二度と草も生えないかもしれない…」

トントン「姉ちゃん…」

のび太「そんな事ないよ」

タア「でも、こんなに土がおかしくなっているもの」

のび太「昨日言っただろ?僕らは未来から来たって」

のび太「未来では悪い人間の所為で小さくなった森を元に戻そうと、人間も頑張ってるってね」

トントン「え?」

マサ「未来?」

ドラえもん「そうです。僕らは100年後の未来から来たんです」

のび太「そうだよね?監視員のお姉さん」

監視員「ああ、そうだよ」

監視員「マサやトントン達はこの時代から改めて森との共生を見直し始め、のび太達の時代には此処には大草原が広がる」

監視員「そして、タア。私達の時代には努力の甲斐あって、今と同じような『生命の森』が再生しているんだ」

タア「『私達』の、時代?」

のび太「どういう事ですか?」

監視員「…」

監視員「実は私も持ってるんだ。そのペンダント」

タア「!」

トントン「姉ちゃんのペンダントと一緒だ!」

しずか「え?タアのは私の首にかかっているのに…」

監視員「私は大人になった『タア』なんだ」ファサッ

一同「?!」

マサ「帽子とサングラスを取ったら…」

のび太「タアと同じ顔!」

トントン「姉ちゃんと同じにおい?!」

ドラえもん「一体、どういう事だ?」

監視員「…」

監視員「今から300年後、時空乱流が発生し、一人の女の赤ちゃんが巻き込まれ、行方不明になった」

監視員「唯一の手掛かりは身につけている者自身にしか外せないペンダント」

監視員「両親は血眼になって探したが、女の子の消息は掴めずにいた。それで色んな人にお願いしたんだ」

監視員「娘を探しだした人には沢山お礼をするって言ってさ」

タア「…」

監視員「まあ、私を見つけた人は結局悪い人だったけどな。その悪い人もやっつけて、私は大人になった自分と一緒に未来に帰れたのさ」

タア「そんなの!嘘!」

トントン「姉ちゃん」

タア「私が未来に帰る?違う!私が帰るのは此処!みんなと一緒の『生命の森』!」

のび太「…タア」

タア「何で、覚えてもいない両親の元へ帰らなくちゃいけないの!」

監視員「…うん。私も同じ様に思ったよ」

タア「何でもっと早く!私を見つけられなかったの?!」

ドラえもん「えっとね…時空乱流って言うのに巻き込まれたら、本当に何処へ行ってしまうか分からなくなるんだ」

タア「偽物の村長は、分かったじゃない!」

ドラえもん「でもしずかちゃんと君を間違えただろ?僕の生まれた300年後の未来でも、毎年何人か行方不明になってるんだよ」

タア「…」

監視員「それくらい、色々手を尽くして君を探してたんだ。今はまだ、分からないかもしれないけど」

監視員「此処から離れたくない気持ちは分かる。心配だものね。森の事が」

タア「…」

監視員「でも大丈夫だよ。彼らが森を支えてくれる」

マサ「うん、任せてよ」

トントン「姉ちゃん…おいら達、姉ちゃんの時代までには元の森に戻すように頑張るよ!」

タア「う…」

どどどどどど…

母ゴリラ「タアー!」

母ゴリラ「タア!大丈夫?!」

タア「母さん!」

母ゴリラ「貴女、なに泣いて………あ」

監視員「…」

母ゴリラ「ああ…そう……もしかして、貴女も『タア』?」

監視員「!」

監視員「どうして…分かったの?」

母ゴリラ「分かるわよ。母親ですもの」

監視員「…母さん」ジワッ

タア「…」

母ゴリラ「ごめんなさいね、のび太」

のび太「ん?」

母ゴリラ「昨日、聞くつもりじゃなかったけど、聞いちゃったんです。君達が未来から来たって」

母ゴリラ「タアも…本当は未来の人間って言う事なのかしら?」

監視員「ええ」

タア「母さん!」

タア「私、未来に行きたくない!ずっと此処に居たい!」

母ゴリラ「ワガママ言わないの。未来には本当のご両親もいるんでしょう」

タア「私の親は母さんだけ!」

トントン「強がるのは止せよ。姉ちゃん」

トントン「姉ちゃん、人間や動物の親子が再会した時、羨ましそうに見てただろ」

タア「違う!私は、ただ…」

トントン「ペンダントを見ながら、本当の両親の事を考えてた癖に」

タア「え!」

監視員「ご名答。流石、私の弟」

トントン「うお、こっちの姉ちゃんは何か素直な感じ」

監視員「まあ、年もとったからね」

タア「…」

監視員「タア、君には役目があるよ」

タア「…」

監視員「未来の両親の元で沢山勉強して、自然を人から保護したり、自然の回復を助ける環境保護局の調査員になる」

監視員「そして今から100年後のこの土地の動植物について調査をしながら、のび太達がこの時代にくるように誘導する」

のび太「あ、だからあの時、100年前の生命の森の話をしたんだね」

監視員「そう言う事」

監視員「そして、時空乱流から出て来たのび太としずかを助ける」

タア「!」

監視員「これは、君にしか出来ない事だ」

タア「…時々、この時代のアフリカに戻って来てもいい?」

監視員「もちろん。私もたまに母さんやトントン達に会いに来てたよ」

タア「…」

タア「…母さん、トントン」

母ゴリラ「タア」

トントン「姉ちゃん…」

タア「ごめんなさい!こんな大変な時に…いなくなるなんて…」

母ゴリラ「いいのよ。貴女には貴女のするべき事があるんだから」

トントン「たまに、遊びに来るんだろ?そんなに泣くなって」

タア「だって…」

トントン「おいらまで…グスッ…泣けてくるだろうが…」







のび太「でも良いんですか?」

監視員「ん?」

のび太「未来の道具なら、あっという間に森を元通りに出来るのに」

監視員「それじゃ意味がないんだ」

監視員「『生命の森』を人間と動物、協力して元に戻していく過程がとても大事なんだよ」

監視員「なかなか元に戻らないという事が分かった方が、自然がどんなに大事かも分かるだろう?」

のび太「うん…」

マサ「本当に行っちゃうの?」

しずか「ええ…助けてくれてありがとう」

マサ「…しずか」

しずか「はい?」

マサ「花畑で君を見かけた時からずっと好きだった!」

しずか「!!」

トントン「ひゅー!やるじゃん」

子象「マサ!カッコいい!」

のび太「あわあわ…ドラえもん!」

ドラえもん「凄いね。男らしい」

のび太「凄いね、じゃないだろ!」

ドラえもん「何も慌てる事じゃないだろ?」

のび太「で、でも!」

しずか「…とても嬉しいわ。でも」

マサ「分かってる。君は未来人だしそれに…」ちらっ

のび太「ふーふー!」

マサ「馬に蹴られたくないからね」

しずか「うふふ」

マサ「どうか元気で」

しずか「あなたも」

しずか「おまたせ」

のび太(最後の方、二人が何を言ってるかよく聞こえなかったな…)

のび太「な、何て返事したの?」

しずか「うーん…のび太さんには内緒」

のび太「そんなぁ…」

タア「…」

監視員「ねえ?」

タア「わっ…ビックリさせないで」

監視員「…君は言わなくてもいいの?」

タア「!!」

タア「な、ななななにを?!」

監視員「分かってる癖に」

監視員「のび太に言わなくても、いいの?」

タア「言う事なんてない!」

監視員「あのね?そうやって照れ屋が可愛いのは若い内だけだよ?」

監視員「ちゃんと言いたい事は言っておかないと、後々後悔するんだぞ?」

タア「そんな事ない…」

監視員「あるよ。何たって、私は大人になった君なんだ」

タア「……」

スタスタスタ…

タア「のび太」

のび太「ん?」

タア「ん」スッ

のび太「え?」

タア「握手って言うんだろ?人間の挨拶」

のび太「ああ、うん」ぎゅっ

タア「…元気で」

のび太「うん。お互い、頑張ろうね」

監視員「ふふ…我ながら素直じゃないな」

タア「あと、しずか」

しずか「え?私?」

しずか「あ、ペンダント返すわ。遅くなってごめんなさい」サッ

タア「いや…」

しずか「?」

タア「…のび太には、あんたがついてなくちゃ駄目みたいだ」ボソッ

しずか「!」

タア「よろしく頼む」スッ

しずか「ええ、任せておいて」ぎゅっ







ドラえもん「じゃあ、皆さん。準備はいいですか?」

一同「はーい」

村長「お世話になりました」

父象「あなた達のお陰で悪い奴がいなくなりました」

マサ「未来で草や木が生えるように、土地を耕すよ!楽しみにしておいて」

トントン「会いたくなったら、いつでも来いよ!」

母ゴリラ「風邪をひかないように、体には気を付けるんだよ」

村長「お世話になりました」

父象「あなた達のお陰で悪い奴がいなくなりました」

マサ「未来で草や木が生えるように、土地を耕すよ!楽しみにしておいて」

トントン「会いたくなったら、いつでも来いよ!」

母ゴリラ「風邪をひかないように、体には気を付けるんだよ」

ドラえもん「此方こそ、お世話になりました」

しずか「うん。二度と人間が酷い事をする事がないように、私達も努力するわ」

ジャイアン「悪い奴がいたら、また俺らがやっつけてやるよ!」

スネ夫「その時はもっと道具を持ってくるからね」

のび太「また遊びに来るよ!」

タア「みんな!元気でね!」

【タイムホール】

のび太「今回の冒険も危なかったね」

タア「今回もって、いつもこんな事してるのか?」

ジャイアン「ああ、そうだぞ」

スネ夫「何故かは分からないけどね」

ドラえもん「ふう、時空乱流が収まって良かった」

しずか「でも向こうではまだ収まってないみたいよ?…あら?」

監視員「どうした?」

しずか「今、何かが光って、小さな…人形みたいな何かが時空乱流に」

監視員「…」

ドラえもん「え?人だったら大変だ!戻ってみよう!」

監視員「大丈夫」

監視員「その子は落ちた先で逞しく成長するから」

しずか「え…じゃあ」

監視員「うん」

ドラえもん「そういう事ですか」

ドラえもん「じゃあ、僕達はこっちだから」

タア「え?一緒に行くんじゃないの?」

監視員「のび太達は100年後の未来だけど、私達は300年後の未来に行くからね」

タア「そう…」

のび太「じゃあ、此処でお別れか…」

ドラえもん「元気でね!」

しずか「じゃあね、タア!」

ジャイアン「今度、冒険の話聞かせてやるよ!」

スネ夫「僕の活躍とかもね」

のび太「タアに会えて、本当に良がっだよぉ」

ドラえもん「もうのび太君ったら…」

タア「…」グッ

タア「私も!私も会えて良かった!」

タア「私頑張るよ!自然や動物と人間が共生出来る様に!」

タア「そしていつか、のび太としずかを助けるから!」

のび太「僕も頑張るよ!」

のび太「未来にいるタアだけに、負担がかからないように!」

のび太「頑張るからーーーー!!」






タア「…行っちゃった」

監視員「よしよし、よく涙を堪えた」

タア「…」

監視員「また会えるよ」

タア「…本当の両親ってどんな人達?」

監視員「そうだな。優しいよ。それに私の事をとても大事にしてくれる」

タア「仲良くなれる?」

監視員「なれるよ」

監視員「友達も沢山できるし、勉強は忙しいし、寂しくはない」

タア「…本当に?」

監視員「ごめん。本当はちょっと寂しかったよ…」

タア「…ふふ」

監視員「寂しくなったら、タイムマシンで母さん達に会いに行けば良いんだからな?」

タア「うん」

ヒューン…

【野比家】

たま子「ふう、暑い…買い物から帰って来たけど、のび太達は戻ったかしら?」

ドタドタドタ…

ジャイアン「あ、おばさん!おじゃましましたー!」

しずか「失礼します」

スネ夫「長居してしまってすみません」

たま子「いえいえ、おほほ…」

バタンッ

たま子「…」

たま子「帰って来たのね、のび太…」

たま子「嘘をついてまで遊びに行って…」

たま子「今日と言う今日は…」

ガラッ

たま子「のび太!ドラちゃん!」

【のび太の部屋】

のび太「え?」

ドラえもん「ん?」

たま子「」ゴゴゴ…

たま子「のび太!あなた宿題すると嘘をついて…て、あれ?」

のび太「ママ、どうしたんだよ?」

たま子「…のび太、あなたの今書いているそれって?」

のび太「宿題だよ」

たま子「!」

たま子「な、何の宿題?」

のび太「作文だよ。『将来の夢』」

たま子「え?でも遊びに行ってたんじゃ…」

ドラえもん「い、いやだなあ…気の性だよ」

のび太「そうそう!気の性!ほら、今日も暑いもんね」

たま子「そう…だったかもしれないわね…」

たま子「のび太の将来の夢って、何を書いてるの?」

のび太「うわああ!!」バッ

たま子「何で隠すのよ?見せてくれてもいいでしょ?」

のび太「駄目!見ないでよ!」

たま子「…ふふ…はいはい、分かりましたよ」

たま子「ずっと勉強してたなら、疲れたでしょう?おやつがあるから、みんなで食べましょう」

のび太「おやつ?!」

たま子「ゼリーがあったわ。それとのびちゃん頑張ってるみたいだから、特別にアイスも」

のび太「やったあ!」

ドラえもん「ありがとママ!」

たま子「食べる前に手も洗いなさいね」

のび太「はーい!」

ドタドタドタドタ…










『僕の将来の夢』

 5年3組 野比のび太

僕の将来の夢。

それは『環境保護区の自然調査員』です。

最初は『布団研究家』になって、一日中寝て過ごしたかったけど、そんな仕事はないと言われました。

僕ら人間は生きる為に、どうしても他の動物や植物に迷惑をかけてしまいます。

動物や植物も人間に害を与えることはありますが、やっぱり今は人間の方が迷惑をかける割合が多くなってしまっています。

僕は元々自然が好きです。見るのも遊ぶのも楽しいです。

だから環境保護区の自然調査員となったら、自然が不必要に破壊されていないか、他の生き物に影響が出ていないか調べて、自然を支えて共生する手助けが出来る仕事に着きたいです。

そしてこの素晴らしい自然というバトンを、未来の人達により綺麗な状態で手渡したいと思います。

その為には沢山勉強しなくちゃいけないようです。

勉強は嫌だけど、ちょこっとずつ頑張ろうかなって思います。




終わり。

ありふれた話になってしまいましたが、最後まで書けて良かったです。

レス、支援ありがとうございました。

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